できる日本語 中級 第14課「カルチャーショック」の教案
『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること4つ(見つけた!・こんなときどうする?・耳でキャッチ・伝えてみよう)
知らない土地で暮らすなかで「あれ?」と思った習慣や考え方の違いを、まわりの人に伝えて分かち合い、その違いごと生活を楽しめるようになる課です。1 で新聞の投書を読んで自分とは違う習慣の受け止め方を知り、2 でアルバイト先の客から無理な注文を受けたときに、できない事情を説明して代わりの案を出す練習をします。3 では異文化に慣れていく心の動きをグラフつきの解説で聞き、4 で自分の出身地と日本との違いを、驚いたときの様子まで添えて語ります。〜ばかりか・〜どころか・〜に限らずのように「範囲を広げる・予想をひっくり返す」形と、〜たとたん・〜(か)と思うとのように「直後に意外なことが起きる」形が多いので、似た形どうしを並べて違いを確かめながら進めます。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目13時間90分×4コマ場面4
この課のねらい(Can-do)
- 新聞の投書を読んで、書き手が自分と違う習慣をどう受け止め、どんな意見を持っているかをつかめる
- 客の無理な注文に対して、応じられない理由を説明し、代わりの案を出しながら丁寧に応対できる
- 異文化に慣れていく過程の解説を、グラフと照らし合わせながら聞いて、気持ちの移り変わりを理解できる
- 出身地や前に住んだ場所と日本との違いを、そのときの様子や自分の驚きを交えて具体的に話せる
進め方と時間配分
目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入 | 10分 | 「日本に来てびっくりしたこと」を一人一つずつ付箋に書いて黒板に貼り、似たものを集める。第13課で流行を話題にしたやり取りを思い出させ、今回は「違い」を話題にすると伝える |
| 1 見つけた! | 80分 | 自作の投書(外国から来た人が日本の習慣について書いたもの)を読み、書き手の驚き・疑問・意見を分ける →「〜ばかりでなく」「〜(か)と思うと」「〜てならない」 |
| 2 こんなときどうする? | 90分 | 飲食店・ホテルのアルバイトで客から無理な注文を受ける役割カードでロールプレイ →「〜ことは〜が」で一部を認めつつ事情を言い、「〜によっては」で条件つきの案を出す |
| 3 耳でキャッチ | 90分 | 異文化適応の4つの段階を示した自作のグラフを配り、教師が読む解説を聞いてグラフに段階の名前を書き込む →「〜から(に)は」「〜どころか」「〜得る」「〜に限らず」 |
| 4 伝えてみよう | 65分 | 出身地と日本の違いを一つ選び、着いたときの場面から語る1分間スピーチ →「〜げ」「〜たとたん(に)」「なんて〜んだろう」「〜以来」 |
| 課のまとめ | 25分 | 導入の付箋を見直し、4 のスピーチを聞いた人が「〜ばかりか」「〜どころか」を使って感想を返す。最後に、違いに気づいて今は楽しんでいることを一文ずつ書かせる |
1 見つけた!
できること新聞の投書を読んで、自分と違う習慣を書き手がどう感じ、何を言いたいのかを読み取れる。
場面
地方紙の読者投稿欄に載った投書を読む場面です。教材は自作の投書(400字ほど・日本で暮らす外国出身の人が、近所づきあいやごみの出し方などで驚いたことと、それについての意見を書いたもの)を1枚用意し、段落ごとに「出来事」「気持ち」「意見」の色ペンで線を引かせます。読み終えたら、自分が同じ立場ならどう書くかを話し合います。
- 見出し:「静かな電車」に戸惑って
- 投書:来日して三か月。通勤の電車が静かなことに驚いた。話し声がしないばかりか、電話に出る人も小声で手短に済ませる。
- 投書:ある朝、隣の若者がイヤホンを外したかと思うと、すぐに音量を確かめてまた付けた。
- 投書:周りへの気づかいは見事だと思う。一方で、困っている人に声をかけにくい空気になってはいないかと気になってならない。
- 投書:静かさと助け合いは両立できないものだろうか。皆さんはどうお考えだろうか。
学習項目 1 〜ばかりでなく/〜ばかりか
意味・はたらき
「Aだけでなく、Bも」と範囲を広げる形です。「〜ばかりでなく」は「〜だけでなく」を少し硬くした言い方で、書き言葉やスピーチに向きます。「〜ばかりか」はさらに強く、後ろに「Bまで・Bさえ」のような意外で程度の大きいことが来て、書き手の驚きや非難がこもります。そのため「〜ばかりか」の後ろには「〜しよう」「〜してください」のような意志や依頼は来にくく、事実を述べる文になります。投書では、驚いた事実を重ねて書くときによく使われます。
接続
N/ナAな・である/イA普通形/V普通形+ばかりでなく・ばかりか(Nに「だ」はつけない)
形
話し声がしないばかりでなく、電話にも出ない道を教えてくれたばかりか、駅まで送ってくれた子どもばかりでなく、大人にも人気がある便利なばかりか、値段も安い
導入
- 驚いた体験を二段で言わせる教師が「道に迷ったとき、近くの人が道を教えてくれました。それに、駅まで一緒に歩いてくれました」と二文で話し、学習者に「どちらがもっと驚きましたか」と聞いて後ろの文を指させる。そのうえで「道を教えてくれたばかりか、駅まで一緒に歩いてくれた」と一文にまとめる。板書は「A(ふつうのこと)ばかりか、B(もっと驚くこと)まで」と矢印で程度が上がる向きを示し、その下に「ばかりでなく=だけでなく(硬い)」を書き添える。
板書案
A ばかりでなく B も = Aだけでなく Bも(硬い)
A ばかりか B まで/さえ 〔赤〕Bはもっと驚くこと
道を教えてくれた ばかりか、駅まで送ってくれた。
〔青〕A(ふつう)→ B(驚き)へ上向きの矢印
〔赤〕N・ナAな + ばかりか(Nに「だ」は付けない)
場面と発話(自作)
- 投書で、隣人の親切に驚いたことを書く。隣の方は、ごみの出し方を教えてくれたばかりか、分別の表まで作ってくださった。
- スピーチで、自分の町の祭りを紹介する。この祭りは地元の人ばかりでなく、海外からの観光客にも親しまれています。
- レポートで、新しい制度の問題点を指摘する。手続きが複雑なばかりか、窓口で説明を受ける時間もほとんどない。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「A:日本語が話せる/B:漢字も読める」のような二つの語句カードを出し、「〜ばかりでなく」でつなげさせる。次に「B」を「新聞の社説まで読める」のような驚く内容に替えたカードを出し、「〜ばかりか〜まで」で言わせて、驚きの差を感じさせる。最後に、投書の段落を読んだあと、書き手が驚いた点を「〜ばかりか」を使って一文でまとめさせる。
- 口頭教師が語句カードを2枚ずつ出す(「安い/おいしい」「日本語が話せる/方言までわかる」「雨が降った/雷まで鳴った」「宿題を忘れた/教科書も持ってこなかった」)。1周目は全体で「〜ばかりでなく、〜も」、2周目は後ろのカードを驚く内容に替えて個人に「〜ばかりか、〜まで」と言わせ、驚きの差を声の調子でも出させる。
- ペア「びっくり体験インタビュー」。A が「日本で人に親切にされて驚いたことはありますか」と聞き、B は出来事を二文で答える。A はそれを「〜ばかりか、〜まで〜てくれたんですね」と一文にまとめて返し、B が合っているかを確かめる。3人に聞いたら役を替える。
- 産出「驚きの二段重ね投書」。自分が日本で驚いたことを、投書の一段落(3〜4文)に書く。最初の文に「〜ばかりか」を入れ、最後に自分の意見を一文足す。教師は、N・ナA の接続、後ろの B が A より程度の大きいことになっているか、後ろに依頼や誘いを置いていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*子どもだばかりか、大人も」と名詞に「だ」をつける。名詞はそのまま「子どもばかりか」、ナ形容詞は「便利なばかりか」と、接続の表で確かめる
- 「〜ばかりか」のあとに「ぜひ参加してください」のような依頼を続けて、ぎこちない文になる。依頼や誘いを言いたいときは「〜だけでなく」「〜ばかりでなく」を使うと示す
- 「〜ばかりか」を「〜ばかり(〜だけ)」と取り違え、「それだけしかない」と読んでしまう。「ばかりか」「ばかりでなく」は後ろに必ずもう一つ続くことを、文の後半を隠して当てさせる練習で確かめる
既習の文型との違い
- 〜だけじゃなくて、〜も〜(初中級第15課)意味は同じく範囲を広げる形ですが、「〜だけじゃなくて」は話し言葉で、驚きの含みはありません。後ろに依頼や誘いも置けるので、「見学の人だけじゃなくて、ご家族もぜひ来てください」は自然でも、「〜ばかりか」にすると落ち着きません。「ばかりでなく」はその硬い言い換え、「ばかりか」は驚きを足した形、と三段で並べます。
- 〜のみならず(中級第13課)「のみならず」は三つの中でいちばん硬く、論説や報告書向きです。意味は「ばかりでなく」に近く、書き手の驚きはあまり表しません。作文で硬さをそろえたいときの言い換えとして示します。
- NばかりVています/Vてばかりいます(初中級第13課)「ばかり」だけだと「それだけ」と範囲を狭める意味になり、「ばかりか」は反対に範囲を広げます。学習者が「ゲームばかりか」を「ゲームだけ」と読むことがあるので、後ろにもう一つ続くかどうかで見分けさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜(か)と思うと/〜(か)と思ったら
意味・はたらき
「Vた(か)と思うと/思ったら」で、ある出来事が起きたすぐあとに、続けて別の、多くは意外なことが起きた様子を表します。話し手が外から見た他人や物の動きに使い、自分の動作には使いません。後ろは実際に起きたことなので、意志・命令・依頼は来ません。「と思ったら」は話し言葉でもよく使い、「静かだと思ったら、みんな寝ていた」のように「どうしてだろうと思っていたら、実はこうだった」という発見を表す使い方もあります。同じく直後を表す「〜たとたん(に)」は自分の動作にも使える点が違います。
接続
Vた+(か)と思うと・(か)と思ったら(発見の意味では 普通形+と思ったら)
形
空が暗くなったかと思うと、急に雨が降り出した子どもは泣いたと思ったら、もう笑っているやけに静かだと思ったら、みんな出かけていた
導入
- 教師の動きを実況させる教師が教室のドアを開けてすぐ閉める、座ったかと思うとすぐ立つ、などの動作を見せ、学習者に「先生は何をしましたか」と聞く。「座りました。すぐ立ちました」の答えを受けて、「先生は座ったかと思うと、すぐに立ち上がった」と一文にまとめる。板書は「(他の人・物)Aた かと思うと、すぐB(意外)」として、主語が自分でないことを人の絵で示す。
板書案
(他の人・物が)Vた(か)と思うと、すぐ B(意外なこと)
空が暗くなったかと思うと、急に雨が降り出した。
〔赤〕主語=わたし × 後ろ=意志・命令・依頼 ×
静かだと思ったら、みんな寝ていた。(発見)
〔青〕2コマの絵を矢印でつなぎ、間に「すぐ」
場面と発話(自作)
- 投書で、電車の中で見かけた人の様子を書く。向かいの男性は席に座ったかと思うと、すぐに目を閉じて眠ってしまった。
- 友達に、山の天気が変わりやすかったことを話す。晴れたと思ったら、十分もしないうちにまた霧が出てきたんだよ。
- 寮の部屋が静かな理由がわかった。今日は静かだと思ったら、隣の人は帰国していたんだ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、天気・赤ちゃん・犬などが短い時間で変わる様子を2コマの絵カードで見せ、「〜かと思うと、〜」で説明させる。次に「静かだ → 寝ていた」「人が多い → セールだった」のような発見のカードで「〜と思ったら」を言わせる。最後に、投書の中で書き手が見た他人の行動を見つけて、同じ形で言い直させる。
- 口頭2コマの絵カードを見せる(「赤ちゃんが泣く→もう笑う」「犬が走って行く→すぐ戻る」「電気がつく→また消える」「バスが来る→止まらずに行く」)。全体で「〜かと思うと、〜」を言い、個人に当てる。続けて発見のカード(「静かだ→留守だった」「人が多い→セールだった」)で「〜と思ったら」に替える。
- ペア「窓の外の実況」。A は人や天気が次々に変わる4コマのシートを持ち、B には見せない。A は「〜たかと思うと、〜」で順に伝え、B は聞いてばらばらの絵カードを順番に並べる。並べ終わったら答え合わせをして、別のシートで役を替える。
- 産出「電車の中のスケッチ」。通学の途中や町で見かけた人の動きを、投書の一場面として2〜3文で書き、隣の人と読み合う。教師は、前が「Vた」の形か、主語が自分になっていないか、後ろが実際に起きた過去の事実か、を見て直す。
つまずきと手当て
- 「*わたしは家に着いたかと思うと、すぐに寝た」と自分の動作に使う。自分のことなら「着いたとたん」「着いてすぐ」を使うと、主語を替えた文と並べて確かめる
- 「*雨がやんだかと思うと、散歩に行こう」と後ろに意志の文を置く。後ろは目の前で起きた事実だけ、と過去形の文に限って練習する
- 「〜と思ったら」を自分の考えの「〜と思ったので」と取り違え、理由の文として読む。発見の例を「(どうして?と思ったら)実は〜」と補って読ませ、意味を確かめる
既習の文型との違い
- Vたら、〜た(発見)(初中級第5課)「ドアを開けたら、猫がいた」の「たら」は、自分の動作のあとに何かを見つけた形です。発見の「〜と思ったら」は、その前に話し手の思い込み(静かだ、など)があり、それが外れたことまで言う点が違います。「すぐあとに続けて変わる」意味の「〜かと思うと」は「たら」では言えません。
- Vてから、〜(初級第12課)「〜てから」は順番を言うだけで、間の短さや意外さはありません。「座ってから、目を閉じた」と「座ったかと思うと、もう眠っていた」を並べると、後者の驚きがわかります。
関連する文型
学習項目 3 〜てならない
意味・はたらき
自然にわいてくる気持ちや感覚を、抑えられないほど強く感じることを表します。「気になってならない」「心配でならない」「残念でならない」のほか、「〜ように思えてならない」「〜気がしてならない」のように、自然とそう感じてしまう意味の語とよく結びつきます。書き言葉寄りでやや硬く、投書や作文で自分の思いを述べるときに向きます。似た「〜てたまらない」は「暑くてたまらない」「会いたくてたまらない」のように体の感覚や強い望みに使いやすく話し言葉でも使いますが、「思えてならない」を「思えてたまらない」と言い換えるのは不自然です。
接続
Vて/イAくて/ナAで+ならない(気持ち・感覚を表す語に限る)
形
将来のことが心配でならないこのままでいいのか気になってならない何か大事なことを忘れている気がしてならないあの日のことが悔しくてならない
導入
- 気持ちの強さを並べる教師が「試験の結果が少し心配です」「とても心配です」「心配で心配で、考えないようにしても考えてしまう」と三段階で話し、最後の状態を「心配でならない」と言う。板書は「気持ち・感覚+てならない=自然にそう感じて止められない」とし、「思える」「気がする」「気になる」「心配だ」「残念だ」を語のカードで並べて、どれにつくかを示す。
板書案
気持ち・感覚の語 + てならない = 自然にそう感じて止められない
将来のことが 心配で ならない。
〜ように思えて/〜気がして ならない
〔青〕少し → とても → てならない の目盛り
〔赤〕×勉強してならない(動作の語には付かない)
場面と発話(自作)
- 投書で、町の変化について意見を書く。商店街の店が次々に閉まるのを見ると、町が元気を失っていくように思えてならない。
- 作文で、留学を決めたときの気持ちを振り返る。出発の前の晩は、家族のことが気がかりでならなかった。
- 日記に、帰国した友達のことを書く。あの人がいない教室は、なんだか広く感じられてならない。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「将来・心配だ」「試合に負けた・悔しい」「誰かに見られている・気がする」などの語のカードを出し、「〜てならない」の文にさせる。次に、話し言葉で「〜て仕方ない」と言っていた文を、投書の文体に書き直す練習をする。最後に、読んだ投書の書き手が一番気にしていることを「書き手は〜てならないと感じている」とまとめさせる。
- 口頭語カードを出す(「心配だ」「残念だ」「気になる」「誰かに見られている気がする」「不思議に思える」)。全体で「心配でならない」「気になってならない」と接続の形をそろえ、個人には「将来」「試験の結果」など話題のカードを足して一文にさせる。
- ペア「町の写真で一言意見」。A は町の写真カード(シャッターの閉まった商店街・歩きながらスマホを見る人・空き家)を見て、投書の書き手になったつもりで「〜ように思えてならない」と一文言う。B は「どうしてそう感じるんですか」と聞いて理由を引き出す。2枚ずつで役を替える。
- 産出「ひとこと投書」。自分の町や日本の生活で気になっていることを一つ選び、理由を2文書いてから、結びを「〜てならない」で書く。教師は、前の語が気持ち・感覚の語か、他人の気持ちを言い切っていないか、文全体が書き言葉にそろっているかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*毎日、日本語を勉強してならない」と気持ち以外の動作の語につける。「てならない」の前には気持ち・感覚の語だけが来ると、語のカードを仕分けさせて確かめる
- 「*友達は心配でならない」と他人の気持ちを言い切る。他人には「心配でならないようだ」「心配でならないそうだ」と、見たことや聞いたことの形をつけさせる
- 会話で「〜てならない」を使い、硬く聞こえる。友達との会話では「すごく気になる」「気になってしょうがない」のほうが自然だと、場面ごとに言い換えさせる
既習の文型との違い
- 〜てたまらない(中級第9課)どちらも抑えられない強い気持ちですが、「たまらない」は「暑くて」「会いたくて」のような体の感覚や強い望みに使いやすく、会話でも使います。「てならない」は「思えて」「気がして」のように自然にわいてくる思いと結びつきやすく、書き言葉寄りです。「思えてならない」を「思えてたまらない」にすると不自然です。
- 〜ないではいられない/〜ずにはいられない(中級第13課)「ずにはいられない」は抑えられない行動(笑わずにはいられない)、「てならない」は抑えられない気持ち(おかしくてならない)です。後ろに来る語が動作か気持ちかで分けさせます。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 新聞の投書で使われる疑問や意見を表す表現投書では、書き手が自分の意見を強く言い切らず、問いかけの形で読者に考えさせることが多いと教えます。「〜のではないだろうか」は「〜と思う」をやわらげた意見、「〜ものだろうか」は「本当にそれでいいのか」という疑い、と働きで分けて線を引かせます。会話では「〜んじゃないかな」に当たる、と話し言葉と並べると硬さがわかります。例:「子どもにも役割を任せてよいのではないだろうか」「すべてを規則で決める必要があるものだろうか」「もう少し柔軟に考えてはどうだろうか」「そう感じているのは私だけだろうか」「疑問に思わずにはいられない」
2 こんなときどうする?
できること客の無理な注文に、できない事情をていねいに説明し、代わりの案を勧めて納得してもらえる。
場面
レストランやホテルでアルバイトをしている留学生が、客から店の決まりや設備ではすぐに応じられない注文を受ける場面です。話し手は店員(下)と客(上)なので、店員は尊敬語・謙譲語を使い、断るときも「できません」で終わらせず代わりの案を出します。教室では「閉店間際に大人数で入りたい」「メニューにない料理を作ってほしい」「チェックアウトを夕方まで延ばしたい」などの客の役割カードを配り、店員役は事情カードを見て応じます。
- 客:すみません、このコース、肉を全部魚に替えてもらえますか。
- 店員:申し訳ございません。替えられることは替えられるのですが、今日は魚の仕入れが少なく、全部は難しい状況でございます。
- 客:えっ、そうなんですか。
- 店員:はい。メインのお料理だけでしたら、魚に替えられます。
- 店員:それから、季節によっては魚の前菜もご用意できますので、次回はご予約の際にお申し付けいただければと思います。
- 客:じゃあ、今日はメインだけお願いします。
学習項目 1 〜ことは〜が
意味・はたらき
同じ語をくり返して「AことはAが、〜」と言い、Aであることは一応認めるが、十分ではない・問題があると後ろで留保をつける形です。客の注文に「できることはできますが、時間がかかります」と答えると、頭ごなしに断らずに事情を伝えられます。似た「〜けど」は前と後ろの関係を問いませんが、「〜ことは〜が」は前を部分的に認めることに重点があります。「行ったことは行ったが」のように過去形でも使え、会話では「〜ことは〜けど」とも言います。二重否定の「〜ないことはない」とは別の形です。
接続
V辞書形・Vたことは+同じV(です/ます)が/イAいことは+イAいが/ナAなことは+ナAだ(です)が
形
できることはできますが、少しお時間をいただきます辛いことは辛いですが、食べられないほどではありません便利なことは便利ですが、値段が高めです説明書は読んだことは読んだが、よくわからなかった
導入
- 「はい」と「でも」を一文にする教師が客役になり「この料理、辛いですか」と聞き、学習者の「はい、辛いです。でも、少しだけです」を引き出す。それを「辛いことは辛いですが、少しだけです」と言い直し、前半で「はい」を、後半で「でも」を言っていることを板書の二色で示す。板書は「Aことは Aが、〜(でも十分ではない)」とし、Aに同じ語が二回入る枠を作る。
板書案
A ことは A が、〜(でも十分ではない)
できる ことは できます が、少しお時間をいただきます。
〔赤〕前と後ろは同じ語 〔青〕前=「はい」、後ろ=「でも」
ナA:便利な ことは 便利です が、〜
〔赤〕後ろに必ず「何が問題か」を言う
場面と発話(自作)
- ホテルの受付で、遅い時間のチェックアウトを頼まれる。延長できることはできますが、別に料金がかかってしまいます。
- 友達に、新しく買った自転車の感想を聞かれる。軽いことは軽いけど、坂道はちょっときついんだよね。
- 先輩に、頼まれた資料を確認したか聞かれる。一通り見たことは見たんですが、細かいところまではまだです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「できる → 時間がかかる」「安い → 量が少ない」「近い → 坂が急だ」の語の組を出し、品詞に合わせて「〜ことは〜が」の文を作らせる。次に客の役割カードで無理な注文を出し、店員役に「〜ことは〜が、〜」で事情を言わせ、続けて代わりの案を言わせる。
- 口頭語の組のカードを出す(「できる/時間がかかる」「辛い/食べられる」「便利だ/高い」「読んだ/わからなかった」「安い/量が少ない」)。品詞ごとに全体で枠に入れて言い、次に個人に当てる。ナ形容詞の「な」と過去形の組は板書の枠に戻って確かめる。
- ペア「店員と客の注文ロールプレイ」。客役は無理な注文カード、店員役は店の事情カード(客には見せない)を持つ。店員は「〜ことは〜が、〜」で一部を認めて事情を言い、続けて代わりの案を出す。客は納得するか、別の案を頼む。3往復で役を替える。
- 産出「お断り上手コンテスト」。アルバイト先・寮・サークルなど自分の場面で頼まれごとを一つ決め、「おわび → 〜ことは〜が → 事情 → 代わりの案」の4文の応対を作って発表する。聞き手はいちばん感じのよい応対を選ぶ。教師は、同じ語のくり返し、「な」の有無、尊敬語・謙譲語の一貫、後ろの留保が言えているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*便利ことは便利ですが」とナ形容詞の「な」を落とす。「便利なことは便利です」と、前は「な」、後ろは「です」と枠で分けて示す
- 「*できることは可能ですが」と前後で違う語にする。前と後ろには同じ語が入ることを、枠に同じカードを二枚置いて見せる
- 「〜ことは〜が」で終わり、後ろの留保を言わないために、相手には承諾したように聞こえてしまう。後ろには必ず「でも何が問題か」を言うことを、ロールプレイで客役に聞き返させて確かめる
既習の文型との違い
- 〜が、〜(初級第4課)「できますが、時間がかかります」はただの逆接です。「できることはできますが」にすると「できるにはできる」と前を一応認める念押しが入り、断りに近い留保だと相手に伝わります。応対では後者のほうが角が立ちにくい、と二つを読み比べさせます。
- 〜ものの/〜とはいうものの(中級第11課)前を認めて後ろで反することを言う点は同じですが、「ものの」は語のくり返しがなく書き言葉向きです。会話の応対では「〜ことは〜が」、報告や作文では「〜ものの」と場面で分けます。
関連する文型
学習項目 2 〜によっては
意味・はたらき
「Nによっては」で、Nのうちのある場合にはこうなる、と一部の場合を取り出して言います。「〜によって(さまざまだ)」が「Nごとに違う」と全体の違いを言うのに対して、「〜によっては」は「中にはこういう場合もある」と特定の結果を示すのが違いです。そのため後ろには「〜こともある」「〜場合がある」「〜できる」のような可能性の表現がよく来ます。応対の場面では「日によっては」「お部屋によっては」と条件をつけて代わりの案を出すのに使えます。
接続
N+によっては
形
日によっては満席になることもありますお部屋によっては早めにご案内できます人によっては辛く感じるかもしれません場合によっては、お断りすることがございます
導入
- 表の一部に丸をつける曜日ごとの店の混み具合の表を黒板に貼り、まず「曜日によって混み具合が違います」と全体を指して言う。次に金曜と土曜だけに丸をつけ、「曜日によっては、一時間待つこともあります」と言って、全体ではなく一部を指していることを見せる。板書は「Nによって=Nごとに違う(全体)」「Nによっては=その中のある場合は〜(一部)」と二行で並べる。
板書案
N によって = Nごとに違う(全体)
N によっては = そのうちのある場合は〜(一部)
曜日によっては、一時間待つこともあります。
〔青〕曜日の表の金・土だけに丸
〔赤〕後ろ:〜こともある/〜場合がある/〜できる
場面と発話(自作)
- レストランで、予約なしで来た団体客に説明する。時間帯によっては、お席をおつなぎしてご用意できる場合もございます。
- 留学生の相談窓口で、奨学金の条件を説明する。学校によっては、申し込みの締め切りが早いところもあります。
- 薬局で、薬の飲み方について説明を受ける。人によっては眠くなることがありますので、車の運転の前は控えてください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「日・満席になる」「地域・雪が多い」「人・アレルギーがある」の語のカードを出し、「〜によっては〜こともある」の文を作らせる。次に、同じカードで「〜によって〜が違う」の文も作らせ、二つを並べて意味の違いを言わせる。最後に、ST2 のロールプレイで、断ったあとに「〜によっては〜できます」と条件つきの案を足させる。
- 口頭語のカードを出す(「日/満席になる」「地域/雪が多い」「人/アレルギーがある」「お部屋/海が見える」「季節/営業時間が変わる」)。まず全体で「〜によって〜が違います」、次に同じカードで個人に「〜によっては〜こともあります」と言わせ、二つを続けて言わせる。
- ペア「ホテルの問い合わせ窓口」。客役は質問カード(「早めにチェックインできますか」「ペットと泊まれますか」)を読み、受付役は部屋ごと・日ごとの○×の表(客には見せない)を見て「〜によっては〜できます」「〜によっては〜場合がございます」と答える。客は条件を聞き返してメモする。4問で役を替える。
- 産出「わたしの町の観光案内」。自分の出身地を紹介する案内文を3〜4文で書き、「季節によっては〜」「場所によっては〜」を一つずつ入れて読み上げる。教師は、後ろが一部の場合や可能性の文になっているか、全体の違いを言う「によって」と混ざっていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「曜日によっては、混み具合がさまざまです」のように、全体の違いを言う語(さまざまだ・違う)と組んで、落ち着かない文になる。全体の違いには「によって」、一部の場合には「によっては〜こともある」と、表の丸のつけ方で区別する
- 「*曜日だによっては」「*曜日のによっては」と名詞に何かをつける。「によっては」の前は名詞だけ、と枠で示す
- 「〜によっては」を原因の「〜によって(台風によって)」と取り違えて読む。後ろが「〜こともある」「〜場合がある」になっているかを手がかりにさせる
既習の文型との違い
- 〜によって(さまざまだ)(中級第2課)「によって」は全体の違い(曜日によって混み具合が違う)、「によっては」はその中の一部の場合(曜日によっては一時間待つ)です。「〜によっては、〜がさまざまです」のように全体を言う語と組むと落ち着かないので、後ろの語で見分けさせます。
- 〜によって/〜により/〜による(原因)(中級第5課)同じ「によって」の形でも、「台風によって電車が止まった」は原因です。「は」が付いて後ろが「〜こともある」になっていれば一部の場合、と読み分けの手がかりを先に渡しておきます。
- 〜場合(中級第4課)「〜場合」は条件そのものを示す形で、「雨の場合は中止します」と決まりを言います。「によっては」は条件の種類の中から一つを取り出す言い方で、決まりより可能性を言う文になります。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 無理な注文に丁寧に対応し、代案を出して勧めるときに使う表現応対は「おわび → できない事情 → 代わりの案 → 相手に選んでもらう」の順に組み立てると、断っても失礼になりにくいと教えます。「できません」と言い切らず、「〜かねます」「〜は難しい状況でございまして」のように事情に理由を持たせる言い方を使わせます。代案は「〜でしたら」で条件を示し、「〜はいかがでしょうか」で相手に決めてもらいます。例:「あいにく〜でございまして」「〜いたしかねます」「〜でしたらご用意できますが」「〜という形でもよろしければ」「〜はいかがでしょうか」「ご希望に添えず申し訳ございません」
3 耳でキャッチ
できること異文化に慣れていく過程の解説を聞き、グラフのどこがどの気持ちに当たるかを理解できる。
場面
留学生向けのオリエンテーションで、カウンセラーが異文化適応の心の動きをグラフで説明する場面です。教材は自作の解説(2分ほど)を教師が読み、横軸が滞在の期間、縦軸が気持ちの浮き沈みを表すU字型のグラフ(段階の名前は空欄)を配ります。1回目は空欄に段階の名前を書き込み、2回目は各段階でよく起きることをメモさせます。
- 解説:こちらのグラフをご覧ください。横軸は来日してからの期間、縦軸は気持ちの状態を表しています。
- 解説:来てすぐは何もかもが新鮮で、気持ちは上向きです。ところが数か月たつと、違いを楽しむどころか、小さなことにも疲れを感じるようになります。
- 解説:これがカルチャーショックの時期で、ここが曲線のいちばん低いところです。
- 解説:留学生に限らず、海外に赴任した会社員や家族にも起こり得ることです。
- 解説:その後、少しずつ慣れて、気持ちは再び上がっていきます。新しい土地で暮らすからには、この谷があることを先に知っておくと安心です。
学習項目 1 〜から(に)は
意味・はたらき
「AからにはB」で、Aという立場や決定になった以上、当然Bすべきだ・Bするつもりだと言います。後ろには「〜なければならない」「〜べきだ」「〜つもりだ」「〜たい」「〜てください」「〜はずだ」のような義務・決意・希望・推量が来て、ただの理由の「〜から」より強い覚悟や当然さが出ます。「からには」と「からは」は意味がほぼ同じで、「からには」がよく使われます。似た「〜以上(は)」と言い換えられることが多く、「〜上は」はさらに硬い言い方です。
接続
V普通形/Nである/ナAである+から(に)は
形
日本に住むからには、地域の決まりを知っておきたい引き受けたからには、最後までやり通すつもりだ留学生であるからには、学業を第一に考えるべきだ
導入
- 決意の宣言を書かせる教師が「わたしはマラソン大会に申し込みました」と言い、学習者に「では、これから何をしなければなりませんか」と聞いて、「毎日走る」「早く寝る」などを引き出す。それを受けて「申し込んだからには、毎日走らなければなりません」と言う。板書は「A(決めた・立場になった)からには → B(しなければならない/するつもりだ)」とし、後ろの枠に義務や決意の語尾だけを並べる。
板書案
A(決めた・立場になった)からには → B
引き受けたからには、最後までやるつもりだ。
〔赤〕B:〜なければならない/〜べきだ/〜つもりだ/〜たい/〜てください
〔青〕理由の「から」より強い覚悟
N:留学生 である からには
場面と発話(自作)
- オリエンテーションで、カウンセラーが新入生に話す。新しい土地で暮らすからには、困ったときに相談できる場所を知っておいてください。
- サークルの代表を引き受けた学生が、仲間に言う。代表になったからには、みんなが参加しやすい会にしたいと思います。
- 親が、留学する子どもに声をかける。自分で決めたからには、途中で投げ出さないでね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「日本の会社に就職する」「チームのキャプテンになる」「一人暮らしを始める」などの状況カードを出し、「〜からには、〜なければならない/〜つもりだ」を言わせる。次に、聞き取りの解説の最後の部分を思い出させ、カウンセラーが何を勧めていたかを「〜からには」で言い直させる。
- 口頭状況カード(「日本の会社に就職する」「チームのキャプテンになる」「一人暮らしを始める」「約束した」「高いお金を払った」)と語尾カード(「〜なければならない」「〜つもりだ」「〜たい」)を組み合わせて出す。全体で一度言い、次に個人に状況カードだけを渡して語尾を自分で選ばせる。
- ペア「決意の宣言と応援」。A が状況カードを見て「〜ことになりました」と報告し、B は「〜からには、〜なきゃね」と励ます。A は「はい、〜つもりです」と決意で返す。3枚で役を替える。
- 産出「留学生活の誓い」。自分が日本に来た理由・今の学校に入った理由を一文で書き、「〜からには」で始まる決意を3つ書いてクラスで発表する。教師は、後ろが義務・決意・希望・推量になっているか、名詞に「である」を付けているか、過去の感想を置いていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*日本に来たからには、楽しかった」と後ろに過去の事実や感想を置く。後ろは義務・決意・希望・推量に限ると、語尾のカードを選ばせて確かめる
- 「*留学生からには」と名詞に直接つける。名詞は「留学生であるからには」「留学生になったからには」と形を整えて示す
- 「からには」と「からは」の違いを気にして使えなくなる。意味はほぼ同じで、「からには」のほうがよく使われるので、まずはそちらで言えればよいと伝える
既習の文型との違い
- 〜ので、〜(初中級第1課)「ので」「から」はただの理由で、後ろに事実も感想も置けます。「からには」は前が決定や立場で、後ろは「当然こうすべきだ・こうするつもりだ」に限られます。「日本に来たので、楽しかった」は言えても「からには」には替えられない、と比べさせます。
- 〜んだから/〜のだから(中級第11課)「のだから」も当然の判断を導きますが、前は相手も知っている事実で、後ろには「早く寝なさい」のような判断や命令が来ます。「からには」は前が自分の決定や立場で、自分の決意や義務を言うのに向きます。
関連する文型
学習項目 2 〜どころか
意味・はたらき
「AどころかB」で、Aではなく、実はAとは反対のBだと予想をひっくり返す形です(「慣れるどころか、ますます疲れた」)。もう一つ、「漢字どころか、ひらがなも読めない」のように、程度の高いAはもちろん、もっと基本的なBさえという使い方もあります。どちらも話し手の意外さや不満がこもります。「〜ばかりか」は前のAも成り立ったうえで足すのに対し、反対の向きの「〜どころか」はAを打ち消すのが違いです。似た形の「〜どころではない」は「忙しくて旅行どころではない」のように、それをする余裕がないという意味です。
接続
N/ナA(な)/イA普通形/V普通形+どころか(Nとナ形容詞に「だ」はつけない)
形
楽になるどころか、前より忙しくなった静かどころか、夜中までにぎやかだ漢字どころか、ひらがなもまだ書けない得をするどころか、損をしてしまった
導入
- 予想と結果を矢印で逆にする教師が「薬を飲みました。熱が下がると思いました。でも、熱はもっと上がりました」と話し、黒板に「予想:下がる ↓」「結果:上がる ↑」と逆向きの矢印を描く。それを「熱が下がるどころか、もっと上がってしまった」と一文にする。次に「漢字」「ひらがな」の大小の箱を描き、大きい箱を消して「漢字どころか、ひらがなも」と、もう一つの使い方を見せる。
板書案
予想 A どころか、実は 反対の B
楽になる どころか、前より忙しくなった。
〔青〕予想 ↓ / 結果 ↑ の逆向きの矢印
A(大)どころか、B(小)も〜ない
漢字 どころか、ひらがなも 書けない。
〔赤〕Aは成り立たない(「ばかりか」との違い)
場面と発話(自作)
- 異文化適応の解説で、ショックの時期を説明する。この時期には、違いを楽しむどころか、毎日の買い物さえ負担に感じる人がいます。
- 友達に、引っ越した部屋のことを話す。駅から近いって聞いてたのに、近いどころか、歩いて二十分もかかるんだよ。
- 同僚に、休みが取れたか聞かれる。休めるどころか、今週は土曜日も出勤なんです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「予想」と「結果」が逆になっている2枚のカード(「やせる → 太った」「雨がやむ → 強くなった」)を出し、「〜どころか」で言わせる。次に「大きいもの・小さいもの」の組(「旅行 → 近所の散歩」「ステーキ → パン」)で「Aどころか、Bも〜ない」を言わせる。最後に、聞き取りのグラフの谷の部分を「〜どころか」を使って説明させる。
- 口頭予想と結果が逆の2枚のカード(「やせる→太った」「雨がやむ→強くなった」「静かだ→にぎやかだ」「得をする→損をした」)で全体・個人に「〜どころか」を言わせる。次に大小の組(「旅行→近所の散歩」「ステーキ→パン」「漢字→ひらがな」)で「Aどころか、Bも〜ない」に替える。
- ペア「期待はずれ報告」。A は期待を聞く質問カード(「新しい部屋、広い?」「休み、ゆっくりできた?」)を読み、B は結果カードを見て「〜どころか、〜」と答える。A は「えっ、本当?」と反応して理由を一つ聞く。4枚で役を替える。
- 産出「適応グラフの谷を語る」。3 のグラフを見ながら、自分がいちばん疲れた時期のことを「〜どころか」を一回入れて30秒で話す。教師は、A が本当に打ち消されているか、名詞・ナ形容詞に「だ」を付けていないか、「どころではない」と混ざっていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*静かだどころか」とナ形容詞や名詞に「だ」をつける。「静かどころか」「静かなどころか」、名詞は「漢字どころか」と、接続の表で確かめる
- 「〜どころか」と「〜ばかりか」を同じに使い、Aが成り立っている文で「どころか」を使ってしまう。Aが本当かどうかを「はい/いいえ」で答えさせ、「いいえ」なら「どころか」と判断させる
- 「〜どころか」と「〜どころではない」を混同し、「*試験の前で、遊ぶどころかだ」とする。「どころではない」は余裕がない、「どころか」は後ろに反対のことが続く、と文の後半の有無で区別する
既習の文型との違い
- 〜どころではない/〜どころじゃない(中級第7課)「どころではない」は「それをする余裕がない」で、文はそこで終わります(忙しくて旅行どころではない)。「どころか」は後ろに反対のことや程度の低いことが続きます。文の後半があるかどうかで見分けさせます。
- 〜さえ(中級第7課)二つめの使い方では「Aどころか、Bさえ〜ない」と組むことが多く、「さえ」がBの程度の低さを強めます。既習の「さえ」を先に思い出させると、「どころか」の後半が組み立てやすくなります。
- 〜ばかりでなく/〜ばかりか(第14課の1)「ばかりか」はAも成り立ったうえでBを足し、「どころか」(一つめの使い方)はAを打ち消してBを言います。Aは本当かと聞いて「はい」なら「ばかりか」、「いいえ」なら「どころか」と判断させます。
関連する文型
学習項目 3 〜得る/〜得ない
意味・はたらき
「V得る」で、そういうことが起こる可能性がある、「V得ない」で可能性がないことを表します。「起こり得る」「あり得る」「考え得る」のように、人の能力ではなく物事の可能性に使うのが特徴で、「泳げる」のような能力の可能形とは違います。書き言葉や解説、ニュースで使う硬い表現で、会話では「〜ことがある」「〜かもしれない」「〜可能性がある」と言うことが多いです。「得る」は「うる」とも「える」とも読みますが、「得ない」「得ます」「得た」は「え」の読みだけです。
接続
Vます形(ます を取った形)+得る(うる/える)・得ない(えない)
形
誰にでも起こり得ることだそんなことはあり得ない考え得るすべての方法を試したこの方法で解決し得る問題も多い
導入
- ニュースの言い方に言い換える教師が「この地震は、どこでも起きるかもしれません」と話し言葉で言い、次にニュースのアナウンサーのまねをして「この規模の地震は、どの地域でも起こり得ます」と言い換える。板書は「Vます+得る(うる・える)=起こる可能性がある(硬い)」「Vます+得ない(えない)=可能性がない」とし、「あり得る」「起こり得る」「考え得る」を代表として並べる。
板書案
Vます + 得る(うる・える)= そうなる可能性がある
Vます + 得ない(えない)= 可能性がない
誰にでも 起こり得る ことだ。
〔赤〕起こり〔ます〕→ 起こり+得る(「ます」を線で消す)
〔青〕人の力=泳げる / 物事の可能性=起こり得る
場面と発話(自作)
- 異文化適応の解説で、誰にでも起きることを伝える。気持ちの落ち込みは、留学生だけでなく、誰にでも起こり得るものです。
- 会議で、計画の危険を指摘する。この日程だと、資料が間に合わないことも十分あり得ます。
- 友達の話にあきれる。財布を二回も同じ店に忘れるなんて、あり得ないよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「誰にでも起きるかもしれない」「そんなことは起きるはずがない」のような話し言葉の文を出し、「〜得る」「〜得ない」を使った硬い文に言い換えさせる。次に、読み方の練習として「あり得る・あり得ない・起こり得ます」を速く読ませ、「え」と「う」の読みを確かめる。
- 口頭話し言葉の文カード(「誰にでも起きるかもしれない」「そんなことは起きるはずがない」「考えられる方法を全部試した」「この問題は解決できる可能性がある」)を出し、全体で硬い言い方に言い換える。続けて「あり得る・あり得ない・起こり得ます」を速く読み、「う」と「え」の読みを個人に確かめる。
- ペア「アナウンサーの言い換え」。A は日常の心配ごとを話し言葉で言い(「地震って、ここでも起きるのかな」「電車、止まったりする?」)、B はニュースのアナウンサーになったつもりで「〜得ます」「〜得ません」を使った文で答える。4つで役を替える。
- 産出「先輩からのアドバイス」。3 の解説を聞いたあと、新しく来る留学生に向けて、気をつけてほしいことを「〜得る」を使って一文ずつ書き、グループで1枚の案内にまとめる。教師は、ます形につけているか、人の能力に使っていないか、読みを「うる/える」で正しく言えるかを見る。
つまずきと手当て
- 「*わたしは百メートル泳ぎ得る」と人の能力に使う。能力は「泳げる」「泳ぐことができる」、物事の可能性は「得る」と、主語が人か出来事かで分けさせる
- 「あり得ない」を「*ありうない」と読む。否定・ます形・た形は「え」の読みだけと、活用の表で示す
- 「*起こる得る」と辞書形につける。「ます」の前の形(起こり)につくことを、「起こります → 起こり+得る」と線で消して見せる
既習の文型との違い
- Nができます/Vることができます(状況)(初級第10課)「ことができる」や可能動詞は、人や物がある状況でそうできることを言います。「得る」は物事が起こる可能性で、人の能力には使いません。「この池で泳げる」と「事故は起こり得る」を並べ、主語が人か出来事かで分けます。
- 〜おそれがある(中級第5課)「おそれがある」は悪いことの可能性に限られ、書き言葉です。「得る」はよいことにも悪いことにも使えるので、「解決し得る」は言えても「解決するおそれがある」とは言えません。
- 〜かもしれません(初中級第5課)「かもしれない」は話し手の推量で、会話で広く使います。「得る」は話し手の気持ちよりも、一般にそういう可能性があるという客観的な言い方で、解説や報道で使います。
関連する文型
学習項目 4 〜に限らず
意味・はたらき
「Nに限らず」で、Nだけでなく、ほかの人や物にも同じことが言えると範囲を広げます。後ろには「〜も」「誰でも」「どこでも」「広く」などが来ることが多いです。「〜だけでなく」に近いですが、「Nに限ったことではない・Nを代表として全体に当てはまる」という含みが強く、解説や案内でよく使うやや硬い表現です。同じ課の「〜ばかりでなく」が二つの事柄を並べて足すのに対し、「〜に限らず」はNを一つの例にして範囲全体へ広げる言い方です。「〜に限り(Nだけ)」とは意味が反対になるので注意が要ります。
接続
N+に限らず
形
留学生に限らず、誰でも参加できます週末に限らず、平日も混んでいるこの悩みは日本に限らず、どこの国でも聞く話だ
導入
- 対象の円を広げる黒板に小さな円「留学生」を描き、「この相談室は留学生が使えます」と言う。そのあと外側に大きな円「日本人の学生・先生・家族」を描き足して、「この相談室は留学生に限らず、誰でも使えます」と言う。板書の横に「〜に限り=Nだけ(小さい円)」「〜に限らず=Nだけでなく全体(大きい円)」と並べ、矢印で範囲が広がる向きを示す。
板書案
N に限らず = Nだけでなく、全体に
留学生 に限らず、誰でも 使えます。
〔青〕小さい円(N)から大きい円(全体)へ矢印
〔赤〕〜に限り = Nだけ(範囲が逆)
後ろ:〜も/誰でも/どこでも/一年中
場面と発話(自作)
- 異文化適応の解説で、対象が広いことを伝える。こうした心の変化は、留学生に限らず、海外で働く人やその家族にも見られます。
- 大学のお知らせで、イベントの参加者を募る。この交流会は日本語学習者に限らず、どなたでもご参加いただけます。
- 先輩が、新入生にアルバイトの心得を話す。飲食店に限らず、どこの職場でも最初のあいさつは大事だよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「子ども → 大人も楽しめる」「夏 → 一年中人気だ」「東京 → 地方都市でも」の組のカードを出し、「〜に限らず、〜も」の文を作らせる。次に、お知らせの文で「〜に限り」と「〜に限らず」のどちらが合うかを選ばせ、意味の違いを確かめる。
- 口頭語の組のカード(「子ども→大人も楽しめる」「夏→一年中人気だ」「東京→地方の町でも」「留学生→日本人の学生も」「平日→週末も混む」)で、全体・個人に「〜に限らず、〜も〜」を言わせる。続けて「本日に限り」「会員に限り」のカードを混ぜ、どちらの形かを即答させる。
- ペア「お知らせの問い合わせ」。A はイベントの参加条件カード(「会員だけ割引」「どなたでも参加可」など)を持ち、B は「〜でも参加できますか」「〜も安くなりますか」と聞く。A は「〜に限らず、〜」か「〜に限り、〜」で答える。B は聞いた条件をメモし、最後にカードと照らし合わせる。
- 産出「交流会のお知らせづくり」。グループで交流会を企画し、参加者・日時・持ち物などを書いたお知らせを作る。「〜に限らず」と「〜に限り」を一つずつ必ず入れる。教師は、範囲の向きが内容と合っているか、名詞に直接つけているかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「〜に限らず」と「〜に限り」を混同し、「本日に限らず割引です」と書いてしまい、意味が逆になる。小さい円・大きい円の板書に戻って、どちらの範囲かを言わせる
- 「*若い人だに限らず」と名詞に「だ」をつける。「に限らず」の前は名詞だけと枠で示す
- 「留学生に限らず、参加できます」のように後ろに「も」「どなたでも」がなく、範囲が広がったことが伝わりにくい。後ろに広がった先(日本人の学生も、どなたでも)をはっきり言わせる
既習の文型との違い
- 〜に限り(中級第2課)「に限り」は「Nだけ」と範囲を狭め、「に限らず」は「Nだけでなく」と広げるので、意味が逆になります。お知らせで取り違えると、割引の対象などが反対に伝わります。
- 〜に限る(中級第6課)「夏はかき氷に限る」の「に限る」は「それがいちばんいい」という意味で、範囲の話ではありません。形が似ている三つを、円の図と「いちばん」の印で板書に並べます。
- 〜ばかりでなく/〜ばかりか(第14課の1)「ばかりでなく」は二つの事柄を並べて足し、「に限らず」はNを一つの例にしてもっと広い範囲へ広げます。「に限らず」の前は名詞だけで、動詞や形容詞にはつきません。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 図や表を見ながら説明するときに使われる表現聞き取りの前に、グラフのどこを指しているかを示す言い方を先に入れておくと、解説の流れについていけます。「軸」「曲線」「山・谷」などの語を、配ったグラフの上で教師が指さしながら確かめます。聞いたあとは、学習者が同じ表現でグラフを説明し返す練習にします。例:「横軸は〜、縦軸は〜を表しています」「このグラフをご覧ください」「〜をピークに下がり始めます」「ここが最も低い時期です」「再び上向きになります」「〜から〜にかけて」
4 伝えてみよう
できること出身地や前に住んだ場所と日本との違いを、そのときの様子や自分の驚きを入れて具体的に話せる。
場面
日本語クラスや地域の交流会で、自分の出身地と日本の違いを1分ほどで話す場面です。教室では「着いた日」「初めての買い物」「冬の暮らし」などのテーマカードから一つ選ばせ、まず「どこで・何が起きたか」を書き、次に周りの人の様子と自分の気持ちを足していきます。聞き手は、話の中で一番驚いた点を一つ質問します。
- 留学生:わたしの国は一年中暑いので、日本の冬には本当に驚きました。
- 留学生:去年の十二月、寮の外に出たとたん、耳が痛くなるほど冷たい風が吹いてきたんです。
- 留学生:ふと見ると、近所の子どもたちが半ズボンで楽しげに走り回っていて、なんて元気なんだろうと思いました。
- 留学生:それ以来、冬になると、あの子たちを思い出します。
- 日本人の友達:それで、今は寒さに慣れましたか。
- 留学生:いえ、まだです。でも、こたつのよさはわかるようになりました。
学習項目 1 〜げ
意味・はたらき
形容詞などについて、人の様子からそういう気持ちが感じられることを表します。「楽しげ」「寂しげ」「不安げ」「得意げ」のように、外から見た人の表情や態度に使い、ナ形容詞のように「〜げな顔」「〜げに話す」と使います。様態の「〜そう」は「おいしそう」「雨が降りそう」のように物や天気にも広く使えますが、「〜げ」は主に人の気持ちに限られ、使える語も決まっていて、やや書き言葉的です。描写のスピーチで、見かけた人の様子を一言で生き生きと伝えるのに役立ちます。
接続
イA語幹(楽し)/ナA語幹(不安)+げ(「〜たい」は「〜たげ」(言いたげ)、「ない」は「なげ」(自信なげ)。話し言葉では「なさげ」とも言う)
形
楽しげに話す寂しげな後ろ姿不安げな顔何か言いたげな様子
導入
- 写真の人の気持ちを言わせる笑っている人、うつむいている人、胸を張っている人の写真(またはイラスト)を見せ、「この人はどんな気持ちだと思いますか」と聞いて「楽しそう」「寂しそう」を引き出す。それを「楽しげに笑っている」「寂しげにうつむいている」と言い換え、板書に「人の様子 → 気持ちが見える = 〜げ(〜そうより書き言葉的)」とまとめる。続けてケーキの写真を見せ、「おいしそう」は言えても「おいしげ」とは言わないことを確かめる。
板書案
イA・ナA語幹 + げ = 人の様子に気持ちが見える
楽し〔い〕→ 楽しげ に走り回る
寂しげな 後ろ姿 / 言いたげな 顔
〔青〕人の絵には ○、ケーキ・空の絵には ×
〔赤〕物・天気は「〜そう」
場面と発話(自作)
- スピーチで、日本の公園で見た子どもたちの様子を話す。寒い中、子どもたちは楽しげに走り回っていました。
- 小説の感想文で、登場人物の様子を書く。主人公は駅のホームで、何か言いたげな顔をしていた。
- 作文で、駅で見かけた家族の見送りの場面を書く。改札の前で、母親は寂しげにいつまでも手を振っていた。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、表情の絵カードを見せて「〜げな顔」「〜げに〜」で言わせ、同じカードで「〜そう」も言わせて硬さの違いを感じさせる。次に、スピーチの原稿の中で人の様子を描く文を一つ選び、「〜げ」を使って書き直させる。
- 口頭表情の絵カード(笑っている子ども・うつむいている人・胸を張っている学生・何か言いかけてやめる人)を出し、まず「〜そうです」を言わせてから「〜げな顔」「〜げに〜ている」に言い換えさせる。全体のあと個人に当て、ケーキや空の絵を混ぜて「げ」が使えないものを選ばせる。
- ペア「写真の人はだれ?」。A は人物写真を1枚選び、「〜げに〜ています」「〜げな顔で〜」と二文で描写する。B は机の上の4枚の中からどの写真かを当てる。当たったら役を替える。
- 産出「一場面スケッチ」。4 のスピーチで、周りの人の様子を描く文を一つ選び、「〜げ」を使って書き直して原稿に入れる。教師は、人の気持ちの描写に限っているか、「い」を取っているか、「〜げな+N」「〜げに+V」の形が合っているかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*このケーキはおいしげだ」「*雨が降りげだ」と物や天気に使う。「〜げ」は人の気持ちが外に見えるときだけ、物や天気は「〜そう」と、写真で仕分ける
- 「*楽しいげ」と辞書形につける。「い」を取った語幹につくことを、「楽しい → 楽し+げ」と線で消して示す
- 使える語が限られることを知らず、「*大きげ」「*高げ」のように気持ちを表さない語にまで広げる。「楽しげ・寂しげ・不安げ・得意げ・満足げ・言いたげ」のように、よく使う語をまとまりで覚えさせる
既習の文型との違い
- Aそうです(様態)(初中級第2課)「そう」は「おいしそう」「雨が降りそう」のように物や天気にも使い、会話でもふつうに使います。「げ」は人の気持ちが外に見える様子に限られ、使える語も決まっていて書き言葉的です。同じ写真で両方を言わせると、使える範囲の差がわかります。
- Aがっています(初中級第14課)「寂しがっている」は第三者が気持ちを態度や言葉に出していることを動作として述べ、「寂しげだ」は外から見た様子の描写です。描写の文には「げ」、だれが何を感じているかを伝える文には「がる」と分けます。
関連する文型
学習項目 2 〜たとたん(に)
意味・はたらき
「Vたとたん(に)」で、ある動作が終わったまさにその瞬間に、予想していなかったことが起きたことを表します。後ろは話し手の意図とは関係なく起きた事実で、「〜しよう」「〜してください」のような意志や依頼は来ません。同じ課の「〜(か)と思うと」と違い、自分の動作にも使え、「外に出たとたん、雨が降ってきた」のように驚きの体験を語るのに向いています。「〜てすぐ」は意志の文にも使える中立の言い方です。
接続
Vた+とたん(に)
形
ドアを開けたとたん、冷たい風が入ってきた空港に着いたとたんに、湿った空気に包まれた立ち上がったとたん、めまいがした
導入
- 教師の失敗談を演じる教師が傘を閉じる動作をして「駅に着いて、傘を閉じました。そのすぐあとで、また雨が強くなりました」と話し、手をたたいて「その瞬間!」を強調する。それを「傘を閉じたとたん、また雨が強くなった」と一文にする。板書は「Vた とたん(に) → (予想外のこと)が起きた」とし、後ろは過去の事実の文だけになることを点線の枠で示す。
板書案
Vた とたん(に)→ 予想外のことが起きた
ドアを開けた とたん、冷たい風が入ってきた。
〔赤〕前は Vた の形だけ(×着くとたん)
〔赤〕後ろ:意志・依頼 ×(起きた事実だけ)
〔青〕手をたたく=「その瞬間」の印
場面と発話(自作)
- スピーチで、初めて日本に着いた日のことを話す。飛行機を降りたとたん、思ったよりずっと寒くて驚きました。
- 友達に、買ったばかりのスマホの話をする。保証期間が切れたとたんに、画面が映らなくなったんだよ。
- 家族に、子どもの様子を伝える。あの子、布団に入ったとたん、寝ちゃったよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、2コマの絵(「電車に乗る → ドアが閉まる」「お風呂に入る → 電話が鳴る」)を見せて「〜たとたん、〜」で言わせる。次に、自分のことで「日本に来たとたん、〜」の文を一つずつ作らせ、スピーチの最初の場面に使わせる。
- 口頭2コマの絵カード(「電車に乗る→ドアが閉まる」「お風呂に入る→電話が鳴る」「席を立つ→名前を呼ばれる」「家を出る→雨が降り出す」)を見せ、教師が手をたたく合図に合わせて「〜たとたん、〜」を全体で言う。次に個人に当て、主語を「わたし」にした文も言わせる。
- ペア「ハプニング話リレー」。A が「この前、〜たとたん、〜んです」と短い出来事を話し、B は「それで、どうしたんですか」と続きを聞く。A が結末を一文で答えたら、B が自分の話をする。3話ずつ。
- 産出「着いた日のスピーチの書き出し」。日本に着いた日、初めて寮に入った日などの最初の一文を「〜たとたん」で作り、1分スピーチの冒頭に使う。教師は、前が「Vた」の形か、後ろに意外さがあるか、意志の文になっていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*家に帰ったとたん、宿題をしよう」と後ろに意志の文を置く。意志があるなら「帰ったらすぐ」と言い換え、後ろは起きてしまった事実だけと確かめる
- 「*着くとたん」と辞書形につける。「とたん」の前は必ず「た」の形と、形の表で示す
- ただ順番に起きたことに使い、驚きのない文になる(「朝ご飯を食べたとたん、歯をみがいた」)。「予想外」「驚き」があるかを聞き返し、なければ「〜てから」「〜てすぐ」にさせる
既習の文型との違い
- 〜(か)と思うと/〜(か)と思ったら(第14課の1)どちらも直後に意外なことが起きる形ですが、「かと思うと」は外から見た他人や物の動きに使い、「たとたん」は自分の動作にも使えます。「わたしは外に出たとたん」は言えても「わたしは外に出たかと思うと」とは言いにくい、と主語を替えて比べます。
- Vたら、〜た(発見)(初中級第5課)「窓を開けたら、雪が積もっていた」の「たら」は、動作のあとで前からあった状態に気づく発見です。「たとたん」は動作の直後に新しいことが起きる変化で、「窓を開けたとたん、雪が吹き込んできた」となります。
- Vてから、〜(初級第12課)「てから」は順番を言うだけで、意志の文にも使えます(帰ってから宿題をしよう)。驚きのない順番の文に「たとたん」を使うと大げさになるので、意外さがあるかを聞き返して選ばせます。
関連する文型
学習項目 3 なんて〜んだろう/なんて〜だろう
意味・はたらき
目の前のものや出来事に強く心を動かされたとき、「なんて〜んだろう」で「本当に〜だ」という驚きや感動を表します。疑問の形ですが質問ではないので、文の終わりは上げずに下げて言います。「なんて〜んだろう」は形容詞・動詞の文でよく使い、「なんていい天気だろう」「なんて親切な人だろう」のように名詞で終わるときは「なんて〜だろう」の形になります。書き言葉では「何と〜ことだろう」とも言います。前に習った(第3課)「〜なんて(驚き:〜なんて知らなかった)」とは位置も働きも違い、ここでは「なんて」が文の頭に来ます。
接続
なんて+イA・V普通形/ナAな+んだろう、なんて+(修飾語+)N/ナA語幹+だろう
形
なんてきれいなんだろうなんて大きいんだろうなんて親切な人だろうなんてよく笑う子なんだろう
導入
- 景色の写真に感動してみせる教師が紅葉や夜景の写真を一枚ずつ見せ、大げさに「わあ、なんてきれいなんだろう」と下がる調子で言う。学習者に「先生は質問していますか」と聞き、答えを求めていないことを確かめる。板書は「なんて+A・V+んだろう(↘ 感動)」と「なんて+N+だろう」の二行にし、文の終わりに下向きの矢印を書く。
板書案
なんて + A・V + んだろう(↘)
なんて + N + だろう(↘)
なんて きれい なんだろう。
なんて 親切な人 だろう。
〔赤〕文末を下げる=質問ではない(下向きの矢印)
場面と発話(自作)
- スピーチで、日本の秋の景色を見たときの気持ちを話す。山が真っ赤に色づいているのを見て、なんてきれいなんだろうと思いました。
- 道に迷ったとき、親切にしてもらった。わざわざ駅まで送ってくれるなんて、なんて親切な人なんだろう。
- 初めて満員電車に乗った日のことを日記に書く。こんなに人がいるのに、なんて静かなんだろうと驚いた。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、景色や人の写真カードを見せて「なんて〜んだろう」「なんて〜だろう」で感動を言わせ、文の終わりを下げる言い方を何度もまねさせる。次に、スピーチの原稿の中で一番驚いたところに、この形で自分の気持ちを一文入れさせる。
- 口頭写真カード(紅葉・夜景・大きな寺・満員なのに静かな電車・重い荷物を運ぶ小さな子ども)を見せ、教師の下がる調子をまねて全体で言う。個人に当てるときは、形容詞・動詞の写真と名詞で終わる写真を交互に出し、「んだろう」と「だろう」を切り替えさせる。
- ペア「写真で感動ごっこ」。A は自分の旅行や町の写真(スマホの中のものでよい)を見せて「これ、〜で撮ったんです」と説明し、B は「なんて〜んだろう」と反応してから質問を一つする。2枚ずつで役を替える。
- 産出「驚きの一文を入れたスピーチ」。4 の原稿の中でいちばん心が動いた場面に「なんて〜んだろうと思いました」を一文入れて発表する。教師は、ナ形容詞・名詞の形、文末を下げて言えているか、引用の「と思いました」につなげられているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*なんてきれいだんだろう」とナ形容詞に「だ」を残す。ナ形容詞は「きれいなんだろう」、名詞は「いい天気だろう」「いい天気なんだろう」と形の表で確かめる
- 文の終わりを上げて言い、相手に質問していると受け取られる。感動のときは下げる、と手の動きで示しながらくり返す
- 名詞で終わる文で「*なんていい天気んだろう」と「な」を落とす。名詞のあとは「だろう」か「なんだろう」と、形の表に戻って確かめる
既習の文型との違い
- 〜なんて(驚き)(中級第3課)第3課の「なんて」は「〜なんて知らなかった」「あの人が来るなんて」のように、驚いた内容のあとに付きます。ここでの「なんて」は文の頭に来て、後ろの「んだろう」と組んで程度の大きさに感動する形です。位置の違いを板書で上下に並べます。
- 〜なあ(中級第3課)「きれいだなあ」は独り言の感嘆で、気軽に使えます。「なんてきれいなんだろう」は感動の強さが一段上で、スピーチや作文でその瞬間を伝えるのに向きます。
- 〜んだろう/〜のだろう(中級第5課)「どうして遅れたんだろう」は理由を考える疑問や推量です。前に「なんて」があるかどうかと、文末が上がるか下がるかで、感動か疑問かを聞き分けさせます。
関連する文型
学習項目 4 〜以来
意味・はたらき
「Vて以来」「N以来」で、ある時からあと、今までずっとある状態が続いていることを表します。後ろには「ずっと〜ている」「〜ていない」「〜ようになった」のような継続や変化の文が来て、一回だけの出来事は来ません。「〜てから」が順番を表す中立の言い方で一回の出来事にも使えるのに対し、「〜以来」は「その時がきっかけで、今も続いている」という含みがあり、少し改まった言い方です。「それ以来」の形でもよく使います。
接続
Vて+以来/N+以来(Vたには付かない)
形
日本に来て以来、ずっと寮に住んでいるあの映画を見て以来、北海道に行きたいと思っている卒業以来、一度も会っていないそれ以来、冬になると思い出す
導入
- 時間の線に印をつける黒板に左から右へ時間の線を引き、ある点に「日本に来た」と旗を立てる。その旗から「今」まで太い線を引き、「日本に来て以来、ずっと自転車で通っています」と言う。比べるために、旗のあとに一つだけ点を打って「日本に来てから、富士山に登りました」と言い、「以来」は旗から今までの太い線、「てから」は一つの点にも使えることを見せる。
板書案
Vて 以来 / N 以来 → 今まで ずっと〜
日本に来て 以来、ずっと寮に住んでいる。
〔青〕時間の線:旗(来た)から今まで太い線
〔赤〕×来た以来 後ろ:ずっと〜ている/〜ていない/〜ようになった
それ以来、〜
場面と発話(自作)
- スピーチで、日本で変わった自分の習慣を話す。日本に来て以来、毎朝お茶を飲むようになりました。
- 同窓会の案内を見て、友達と話す。高校の卒業以来、みんなとは一度も会っていないんだ。
- けがをした経験を話す。スキーで足を痛めて以来、急な坂道は避けるようにしています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、時間の線の絵カード(旗:「引っ越す」「料理教室に通い始める」「入学」)を出し、「〜て以来、ずっと〜ている」「N以来、〜ていない」を言わせる。次に、スピーチの最後に「それ以来」で今の自分につなげる文を一つ足させる。
- 口頭時間の線の絵カード(旗:「引っ越す」「料理教室に通い始める」「入学」「あの映画を見る」「けがをする」)を出し、全体で「〜て以来、ずっと〜ています」と言う。個人には「卒業」「去年の春」などの名詞の旗も混ぜ、「N以来、〜ていません」まで言わせる。
- ペア「変化インタビュー」。A が「日本に来て、変わったことはありますか」と聞き、B は「〜て以来、〜ようになりました」で答える。A は「どうしてですか」と一つ掘り下げ、B が理由を言う。2人に聞いたら役を替える。
- 産出「それ以来で締めるスピーチ」。4 のスピーチの最後を「それ以来、〜」で今の自分につなぐ一文にし、書き出しから通して1分で発表する。教師は、テ形につけているか、後ろが継続や変化の文か、ごく短い期間に使っていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「*日本に来た以来」とタ形につける。動詞は「来て以来」とテ形につくと、形の表で示す
- 「日本に来て以来、一度富士山に登った」のように、一回だけの出来事を後ろに置いて不自然になる。後ろには「ずっと〜」「〜ていない」「〜ようになった」が来ると、時間の線で確かめる
- ごく最近のことに使い、「昨日以来、頭が痛い」のように大げさな言い方になる。短い期間なら「昨日から」と言うほうが自然だと、期間の長さで比べる
既習の文型との違い
- Vてから、〜(初級第12課)「てから」は順番を言う中立の形で、一回だけの出来事にも使えます(来てから富士山に登った)。「以来」は起点からずっと続く状態や変化を言い、一回の出来事は後ろに来ません。時間の線の「点」と「太い線」で分けます。
- Vてきました(初中級第15課)「〜てきた」は今までの変化の流れを表し、「以来」は変化が始まった起点をはっきり示します。「日本に来て以来、少しずつ慣れてきました」のように組み合わせると、スピーチの締めが自然になります。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 驚きや感動、疑問などを述べるときに使う表現違いを伝える話は、出来事だけを並べると説明で終わってしまうので、そのとき自分がどう感じたかを一言足すと聞き手が引き込まれると教えます。驚き・感動・疑問の3つに分けて表現を板書し、スピーチの原稿のどこに入れるかを学習者に決めさせます。「〜には驚きました」のように「には/のには」を使うと、何に驚いたかがはっきりします。例:「〜のにはびっくりしました」「信じられないくらい〜」「思わず〜てしまいました」「〜ことに感動しました」「どうして〜のか、今でも不思議です」「〜って、どういうことなんだろうと思いました」
語彙の扱い
この課の語は、投書や解説に出る「習慣・価値観・戸惑い・適応」などの抽象的な語と、スピーチで様子を描く「表情・天気・におい」の語の二つに分かれます。抽象的な語は、導入で集めた学習者自身の「びっくりしたこと」に結びつけて意味を確かめ、読む・聞く素材の中では漢字の読みよりも文の中での働きを優先します。描写の語は、4 のスピーチで自分が本当に言いたい語がそれぞれ違うので、全員に覚えさせる語と本人だけが覚える語を分けます。
この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)
- 戸惑う(とまどう) どうしたらいいかわからず、迷ってしまう。 〜に戸惑う・習慣の違いに〜・少し〜
投書で、初めての町内会の集まりのことを書く。決まりの多さに戸惑ったばかりか、あいさつの順番までわからなかった。
- 習慣(しゅうかん) その土地の人や自分が、いつも決まってすること。 〜がある・〜に慣れる・生活〜
スピーチで、出身地の食事の様子を話す。わたしの国には、食事の前に家族全員がそろうのを待つ習慣があります。
- 価値観(かちかん) 何を大切だと思うかという、その人の考え方。 〜が違う・〜を押しつける・〜の違い
投書を読んだあと、クラスで意見を言う。価値観が違うのは当然で、どちらが正しいかを決める必要はないと思います。
- 受け止める(うけとめる) 出来事や相手の言葉を、自分なりに理解して受け入れる。 意見を〜・前向きに〜・真剣に〜
投書の書き手の考えをまとめる。書き手は、静かな電車を周りへの気づかいの表れとして受け止めている。
- 気づかい(きづかい) 相手が困らないように、先回りして気を配ること。 周りへの〜・細かい〜・〜をする
アルバイト先の先輩のことを友達に話す。先輩の細かい気づかいのおかげで、最初の一週間を乗り切れたんだ。
- 応じる(おうじる) 相手の頼みや注文に合わせて、そのとおりにする。 注文に〜・要望に〜・〜かねる
ホテルの受付で、客の頼みを丁寧に断る。申し訳ございませんが、そのご要望には応じかねます。
- 代わり(かわり) 前のものの役目をする、別のもの。 〜の案・〜に〜する・〜を用意する
レストランで、客に別の料理を勧める。本日は肉料理が難しいので、代わりに魚料理はいかがでしょうか。
- 慣れる(なれる) 何度も経験して、特別だと感じなくなる。 生活に〜・寒さに〜・〜てくる
日本に来て半年たった留学生が話す。日本に来て以来、少しずつ朝の満員電車にも慣れてきました。
- 落ち込む(おちこむ) 気持ちが沈んで、元気がなくなる。 気分が〜・〜時期・すっかり〜
異文化適応の解説を聞いたあと、自分の経験を話す。来て三か月ごろがいちばん落ち込んで、外に出るどころか、電話に出るのもいやでした。
- 新鮮(しんせん) 初めてで、目新しく生き生きと感じられる様子。 〜に感じる・〜な驚き・〜さ
来日したばかりのころを振り返る。来たばかりのころは、コンビニの棚を見るだけでも新鮮に感じました。
- 驚く(おどろく) 思っていなかったことに出会って、心が大きく動く。 〜に驚く・思わず〜・〜ほど
スピーチで、初めて見た日本の景色を話す。駅のホームの列がまっすぐなのには、本当に驚きました。
宿題と次のコマ
宿題は、4 のスピーチの原稿を「着いたときの場面 → 周りの人の様子(〜げ) → 自分の驚き(なんて〜んだろう) → それ以来の変化」の順に、400字ほどで書いてくること。次のコマの最初に原稿をペアで読み合い、「情報をどこから得ているか」を質問し合ってから、第15課「情報社会に生きる」の 1「伝えてみよう」(メディアの使い分けを理由とともに話す)に入ります(この課の「違いを伝える」話し方が、次の課の「自分の使い方とその理由を述べる」話し方につながります)。
よくある質問
『できる日本語 中級』第14課「カルチャーショック」は何コマで終わりますか?
90分なら4コマが目安です。1コマ目に導入と1「見つけた!」の投書、2コマ目に2「こんなときどうする?」のロールプレイ、3コマ目に3「耳でキャッチ」の解説とグラフ、4コマ目に4「伝えてみよう」のスピーチと課のまとめを置きます。学習項目が13と多いので、「〜得る」「〜に限らず」のように意味がつかみやすいものは短くし、「〜ばかりか」と「〜どころか」、「〜(か)と思うと」と「〜たとたん」の比べ合わせに時間を取ります。
「〜ばかりか」と「〜どころか」の違いはどう教えますか?
前のAが本当かどうかで分けます。「ばかりか」はAも成り立ったうえで、もっと驚くBを足す形、「どころか」はAを打ち消して反対のBを言う形です。「道を教えてくれたばかりか、駅まで送ってくれた」と「楽になるどころか、忙しくなった」を並べ、Aは本当かと聞いて「はい」なら「ばかりか」、「いいえ」なら「どころか」と判断させると混乱が減ります。
「〜(か)と思うと」と「〜たとたん(に)」はどう使い分けますか?
どちらも直後に意外なことが起きる形ですが、「かと思うと」は外から見た他人や物の動きに使い、自分の動作には使いません。「たとたん」は自分の動作にも使えるので、「わたしは外に出たとたん、雨に降られた」は言えても「わたしは外に出たかと思うと」は不自然です。1の投書では他人の描写、4のスピーチでは自分の体験、と使う場面を分けておくと定着しやすくなります。
「〜によって」と「〜によっては」の違いは?
「によって」はNごとに違うという全体の違い、「によっては」はその中のある場合だけを取り出す形です。曜日ごとの表を板書して、全体を指して「曜日によって違う」、金・土だけに丸をつけて「曜日によっては一時間待つこともある」と見せると伝わります。後ろに「〜こともある」「〜場合がある」が来るのが「によっては」の目印です。
「〜てならない」と「〜てたまらない」は同じですか?
強い気持ちを抑えられない点は同じですが、「たまらない」は暑さ・痛さ・強い望みに使いやすく会話でも使い、「てならない」は「思えて」「気がして」のように自然にわいてくる思いと結びつきやすく、書き言葉寄りです。この課では投書の結びで使うので、「〜ように思えてならない」「〜気がしてならない」をまとまりで覚えさせるのが近道です。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。