日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第17課「働くということ」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること5つ(伝えてみよう・見つけた!・耳でキャッチ・こんなときどうする?・こんなときどうする?)

卒業後の進路を考え始めた留学生が、働くことについての考えを人と話し、就職活動に必要な情報を集め、目上の人に連絡して動き出せるようになる課です。1 で仕事選びについての意見を交わし、2 で就職活動のパンフレットを読み、3 で先輩の体験談を聞いて、何をいつ始めればよいかをつかみます。そのうえで 4 で知り合いの先生にメールで依頼し、5 で紹介された社会人に電話して会う約束をする、という「考える→調べる→頼む」の流れで5つのできることがつながっています。第16課の学校生活の話を受けて学校の先にある「働くこと」に進み、意見の文の「〜にすぎない」、案内の「〜にあたって」、話し言葉の「〜というか」、敬語の依頼の「〜ていただけないでしょうか」と、硬さの違う形を場面ごとに使い分けるのがこの課の芯です。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目13時間90分×4コマ場面5

この課のねらい(Can-do)

  • 仕事を選ぶときに大事にしたいことについて、ほかの人の考えを聞き、必要な条件を挙げながら自分の意見を言える
  • 留学生向けの就職活動のパンフレットを読んで、準備の手順や参加の条件など、自分に必要な情報を取り出せる
  • 先輩の就職活動の体験談を聞いて、いつ何を始めたか、どんな助言をしているかを聞き取れる
  • 知り合いの目上の人に、事情を説明して丁寧な依頼のメールを書ける
  • 初めての人に電話をかけて用件を伝え、相手の都合を聞きながら会う約束ができる

進め方と時間配分

目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入15分(1コマ目)「アルバイトなどで働いてみて、驚いたことはありますか」「卒業したら、どんな仕事をしたいですか」と聞き、仕事を選ぶときに大事にしたいこと(給料・やりがい・人間関係・場所・休み)を黒板に挙げさせる。第16課の学校生活の話を受けて、この課は「学校の次=働くこと」について考え、情報を集め、人に頼むまでを追うと伝える
1 伝えてみよう75分(1コマ目)「仕事を選ぶとき、何がいちばん大切か」の話し合い。教師が意見の見本を見せてから「〜(っ)きりだ」「〜てはじめて」「〜にすぎない」を取り出し、必要な条件を足して意見を補強する形を板書する。3〜4人のグループで一人ずつ意見を言い、ほかの人の意見に一言返す
2 見つけた!75分(2コマ目の前半〜中ほど)自作の「留学生のための就職活動ガイド」を配り、まず「いつ・何をする・だれが参加できるか」を時間を区切って探させる。そのあと「〜にあたって」「〜を問わず」「〜上で」「〜反面」を素材の中で確かめ、会話ならどう言うかに言い換える
3 耳でキャッチ60分(2コマ目の最後15分〜3コマ目の前半)先輩の体験談(教師が読む自作の原稿)を2回聞く。1回目は「いつ何を始めたか」、2回目は「どんな助言をしているか」をメモ →「〜というか」「〜以上(は)」「〜限り」を取り出す → 例を出す表現を使って、助言と例をつないで言い直す
4 こんなときどうする?60分(3コマ目の後半〜4コマ目のはじめ)日本語学校のときの先生に、エントリーシートを見てほしいと頼むメールを書く。件名・あて名・名乗り・依頼・結びの欄に分けた用紙で「お忙しいところ(を)」「〜ていただけないでしょうか」を入れ、ペアで読み合って足りない情報(締め切り・方法)を指摘し合う
5 こんなときどうする?45分(4コマ目)キャリアセンターに紹介された卒業生に電話をかけるロールプレイ。名乗りと紹介者を言い、「〜ていただけないかと思って」で用件を伝え、相手の都合を聞いて日時と場所を復唱するまで。社会人役は教師から始め、ペアで交代
課のまとめ30分(4コマ目の後半)自分が受けてみたい仕事を一つ決め、①その仕事を選ぶ理由を条件つきで話す ②パンフレットからその仕事に必要な準備を一つ探す ③その仕事をしている人に話を聞くための電話をかける、を続けて行う。最後に「働く」ことについて、課の初めと考えが変わったかを一人一言ずつ言う

1 伝えてみよう

できることほかの人の仕事についての考えを聞いて、必要な条件を挙げながら自分の意見を言える。

場面

ゼミや日本語の授業で、「仕事を選ぶとき、何がいちばん大切か」について3〜4人で話し合う場面です。教室では「給料・やりがい・人間関係・休み・場所・会社の名前」のカードを配り、一人が一番大切なものを選んで理由を言い、ほかの人がそれに賛成か反対かを、自分の経験や条件をつけて返します。

  • 司会:「仕事を選ぶとき、何がいちばん大切か」について、意見を聞かせてください。
  • 留学生A:私は給料だと思います。生活できなければ、好きな仕事も続けられませんから。
  • 留学生B:でも、給料は仕事を選ぶ理由の一つにすぎないんじゃないでしょうか。
  • 留学生B:アルバイトをしてはじめてわかったんですが、職場の人間関係がよくないと、毎日行くのがつらくなるんです。
  • 留学生C:私も人間関係は大事だと思います。それに、人生は一度きりですから、やりがいを感じられる仕事を選びたいです。
  • 留学生A:なるほど。ただ、やりがいがあっても、長く続けられる条件がそろっていないと難しいと思います。
学習項目 1 〜(っ)きりだ(それだけ)

意味・はたらき

「Nきり/Nっきり」は、数や範囲がそれだけで、ほかにはないことを表します。「一度きり」「二人きり」「これっきり」のように、数量の語や「これ・それ・あれ」につくことが多く、話し言葉では「っきり」になります。「だけ」と意味は近いですが、「だけ」がいろいろな語につく中立の限定なのに対して、「きり」は「それで終わり・それ以上はない」という気持ちが強く、「一度きりの人生」のように大事さを強める言い方にもなります。「しか〜ない」は否定と組んで少なさを言い、「きり」は肯定の文で使えます。意見の話し合いでは、機会の少なさを根拠にして「だから〜たい」と言うのに使えます。

接続

数量の語(一度・一回・二人など)/これ・それ・あれ+(っ)きり(だ)、名詞の前は「〜きりの+N」

形
人生は一度きりだ二人きりで話す残っているのはこれっきりだ一回きりのチャンス

導入

  • 「だけ」の文を言い換える教師が「面接のチャンスは1回だけです」と板書し、「もう一度はありません」と手で×を作りながら「1回きりです」と言い直す。続けて「人生は一度きりだから、好きな仕事をしたい」と自分の考えを言い、「きり」が「それで終わり」の気持ちを強めていることを確かめる。板書は「数・これ/それ+(っ)きり(だ)」「〜きりの+N」の2行。

板書案

数の語・これ/それ +(っ)きり(だ)
人生は 一度きりだ。
一回きりの チャンス
〔赤〕きり=それで終わり・もうない 〔青〕だけ=ふつうの限定
〔×〕動詞には つけない → 働くだけだ

場面と発話(自作)

  • 就職について友達と話していて、日本にいられる時間の短さを言う。日本にいられるのはあと一年きりだから、今のうちにいろいろ経験したい。
  • 面接の前に、先輩から一言アドバイスされる。第一印象は一回きりだからね。最初のあいさつははっきりね。
  • アルバイト先の最後の日に、店長にあいさつする。この店で働くのは今日きりですが、本当にお世話になりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「一度・一回・二人・これ」のカードと「チャンス・人生・話・残り」のカードを組み合わせて、「〜きりだ」「〜きりの〜」を言わせる。次に ST1 の話し合いで、「〜は一度きりだから、〜たい」の形で自分の意見を一文言わせ、理由の部分に「きり」を入れる。

  1. 口頭教師が数の語のカードと名詞のカードを1枚ずつ出し、学習者が一文にする。キューは「一度・人生」→「人生は一度きりだ」、「一回・面接のチャンス」→「面接のチャンスは一回きりだ」、「二人・話す」→「二人きりで話す」、「これ・残り」→「残りはこれっきりだ」。全体→列→個人の順で言わせ、最後に「だけ」の文を「きり」に言い換える練習も入れる。
  2. ペアA だけが数字の入ったカード(日本にいられるのはあと1年・その試験は年1回・説明会は今年1回)を持つ。B が「どうしてそんなに急いでいるの?」と聞き、A はカードを見て「〜は〜きりだから」と理由を答え、B は「じゃあ、〜たほうがいいね」と返す。カードを替えて役を交代する。
  3. 産出「一度きりスピーチ」。働くことについて「〜は一度きりだから、〜たい」を入れた30秒の意見を、グループの中で一人ずつ言う。教師は、「きり」が数の語や「これ・それ」についているか、書いて発表する人が「っきり」を使っていないかを見て、終わってから一言ずつ返す。

つまずきと手当て

  • 「*給料のために働くきりだ」と動詞の辞書形につける。この課の「きり」は数の語や「これ・それ」につく、と板書で確かめ、動詞のときは「働くだけだ」と言わせる
  • 仕事の打ち合わせを「二人きりでした」と言い、ほかの人がいない特別な感じに聞こえる。打ち合わせなら「二人だけで」がふつうと伝える
  • 作文やレポートで「っきり」を使い、くだけて見える。書くときは「〜だけ」「〜のみ」に替えさせる
  • 後の課で出る「出かけたきり帰ってこない」(そのまま)の「きり」と同じ意味で取る。こちらは「それだけ」、あちらは「そのまま変わらない」と、出てきたときに並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〜だけ/〜だけの(第1課)「だけ」は名詞にも動詞にも、どんな数の語にもつく中立の限定で、会話でも書き言葉でも使えます。「きり」は主に数の語と「これ・それ・あれ」につき、「それで終わり、もうない」という気持ちが加わります。学習者が「だけ」の代わりにどこでも「きり」を使うと「パンきり食べた」のような不自然な文になるので、数の語のときに絞って使わせます。
  • [〜個、〜時間、〜杯…/N]しか〜ない(初中級 第12課)「しか〜ない」は否定と組んで、数が少ない・足りないという気持ちを出します。「きり」は肯定の文で「それで最後」を言い、「一度しかない人生」は少なさ、「一度きりの人生」は後がないことに重心があります。二つを混ぜて「*一度きりない」とする誤りが出るので、「きり」だけでは否定と直接組まない(「一度きりしかない」のように「しか」と重ねる言い方はある)、と板書で並べます。
関連する文型
学習項目 2 〜てはじめて

意味・はたらき

「Vてはじめて」は、あることを実際にして、そのときになって初めて何かがわかったり、できるようになったりしたことを表します。後ろには「わかる・気づく・知る・〜ようになる」など、気づきや変化の言い方が来ることが多く、依頼・命令や「〜よう」のような意志の言い方は来ません。「Vてから」は出来事の順番を言うだけですが、「てはじめて」は「それまではわからなかった」という気づきに重さがあります。意見の話し合いでは、自分の経験を根拠にして「経験しないとわからない」と条件を示すのに使えます。「Nがあってはじめて」の形もあります。

接続

Vて形+はじめて、N+があってはじめて

形
働いてはじめて、お金をかせぐ大変さがわかった病気になってはじめて、健康のありがたさに気づいた先輩の話を聞いてはじめて、仕事のイメージができた経験があってはじめて言えること

導入

  • 「いつわかりましたか」と聞く教師が「私は日本語を教えてはじめて、日本語の難しさがわかりました」と自分の経験を話す。学生に「アルバイトを始める前と後で、考えが変わったことはありますか」と聞き、答えを「アルバイトをしてはじめて、〜がわかった」に言い直して板書する。「Vてから」の文と並べ、「それまで知らなかった」の気持ちが入っているのはどちらかを選ばせる。

板書案

Vて + はじめて、〜(わかる・気づく・〜ようになる)
働いて はじめて、お金の 大切さが わかった。
N が あって はじめて
〔青〕Vてから=順番だけ 〔赤〕Vてはじめて=それまで知らなかった
〔×〕後ろに 〜てください・〜よう は来ない

場面と発話(自作)

  • ゼミで「働くこと」について話し合い、自分の経験を言う。コンビニで働いてはじめて、立ち仕事がどれだけ疲れるかわかりました。
  • 日本の会社でインターンシップをした感想を書く。実際に職場に入ってはじめて、報告や連絡がどれほど大切かに気づきました。
  • 後輩に、インターンシップに行く意味を話す。実際の職場を見てはじめて、自分に合うかどうかがわかると思うよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「アルバイトをする・一人暮らしをする・日本に来る・インターンシップに行く」のカードを引かせ、「〜てはじめて、〜がわかった/〜に気づいた」で自分の経験を言わせる。次に ST1 の話し合いで、意見のあとに「〜てはじめてわかったんですが」と経験を根拠として足させる。

  1. 口頭教師が「したこと」と「わかったこと」の2枚組のカードを出し、学習者が「〜てはじめて、〜がわかった」にする。キューは「一人暮らしをする・料理の大変さ」「日本に来る・自分の国のよさ」「アルバイトをする・敬語の難しさ」「インターンシップに行く・報告の大切さ」。続けて「経験・言える」のカードで「Nがあってはじめて」の形も言わせる。
  2. ペア「前と後インタビュー」。A が「〜する前は、どう思っていましたか」「実際に〜して、どうでしたか」と2つ聞き、B は自分の経験で「〜てはじめて、〜に気づきました」と答える。A は B の答えを一文にまとめて言い返し、B が合っているかを確かめる。役を交代する。
  3. 産出「気づきリレー」。グループで「働くこと」について、自分の経験から「〜てはじめて〜に気づいた」を一人一文ずつ言い、次の人は前の人の文に「私もです」「私は反対で」と一言返してから自分の文を言う。教師は、後ろが気づき・変化になっているか、「働きはじめて」と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「働きはじめて(働き始める)」と「働いてはじめて」を混同する。マス形の語幹+はじめる は「スタートする」、テ形+はじめて は「そのとき初めて」と、板書で並べて見せる
  • 「働いてはじめて、貯金してください」のように、後ろに依頼や命令を置く。後ろは「わかる・気づく」などの気づきや変化だと、例文の後半に色をつけて確かめる
  • 「朝ご飯を食べてはじめて、学校に行きました」と、ただの順番に使う。気づきがないときは「Vてから」と言い換えさせる

既習の文型との違い

  • Vてから、〜(初級 第12課)「Vてから」は「Aのあと B」という順番だけを言い、後ろに依頼や意志の文も来ます(「食べてから行きましょう」)。「てはじめて」は「Aをするまでは B がなかった」という気づきや変化に重心があり、後ろに依頼・意志は来ません。「*説明会に行ってはじめて、メールを送ってください」のように、順番の文にそのまま使う誤りが出ます。
  • 〜てからでないと/〜てからでなければ(第15課)「〜てからでないと〜ない」は「Aをしなければ B はできない」と、これからのことについての条件を言います。「てはじめて」は多く、実際に経験したあとの気づきを振り返る文に使います。同じ内容でも、助言なら「経験してからでないとわからない」、体験談なら「経験してはじめてわかった」と言い分けさせます。
関連する文型
学習項目 3 〜にすぎない

意味・はたらき

「〜にすぎない」は、「ただ〜というだけで、それ以上のものではない」と、程度や価値が小さいことを言います。話し手が「大したことではない」と評価を下げる気持ちが入り、意見の文やレポートで使う硬めの言い方です。「だけだ」と意味は近いですが、「だけだ」は事実の限定にも使える中立の言い方なのに対して、「にすぎない」は相手の考えを小さく見せて自分の意見を押し出すときに向いています。会話では「〜だけだよ」と言うのがふつうです。

接続

N(である)/ナA(である)/V普通形/イA普通形+にすぎない

形
給料は仕事を選ぶ理由の一つにすぎないそれは一つの例にすぎない私はただ手伝ったにすぎない面接で話せる時間は、わずか10分にすぎない

導入

  • 相手の意見を小さく見せる教師が「給料がいちばん大事」と書いたカードを見せ、「たしかに大事です。でも、給料は理由の一つにすぎないと思います」と言いながら、カードを小さく折りたたんで見せる。「理由の一つなだけです」と言い換えた文と並べ、どちらが自分の意見を強く押し出しているかを聞く。板書は「N(である)/普通形+にすぎない」。

板書案

N(である)/普通形 + にすぎない
給料は 理由の 一つに すぎない。
〔青〕だけだ=事実の限定 〔赤〕にすぎない=小さく見せる(評価)
〔×〕Nの にすぎない
会話では → 〜だけだよ

場面と発話(自作)

  • ゼミの話し合いで、ほかの人の意見に反論する。有名な会社かどうかは、会社を選ぶ基準の一つにすぎないと思います。
  • レポートで、アンケートの結果を説明する。「やりがい」を一番に選んだ学生は、全体の2割にすぎなかった。
  • 面接で、リーダーをした経験を控えめに話す。リーダーといっても、みんなの意見をまとめる役をしたにすぎません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「給料・会社の名前・休みの数・場所」のカードを1枚引かせ、「〜は〜の一つにすぎない」で評価を下げる文を言わせる。次に ST1 で相手の意見を受けて、「たしかに〜。でも、〜にすぎないんじゃないでしょうか」と反論の一文をつなげさせる。

  1. 口頭教師が「もの」と「評価」の2枚組カードを出し、学習者が「〜は〜にすぎない」にする。キューは「給料・理由の一つ」「会社の名前・基準の一つ」「やりがいを選んだ学生・全体の2割」「私・手伝っただけ」。次に「〜だけだ」の文を「にすぎない」に、その逆にと言い換えさせ、どちらが評価を下げているかをそのつど聞く。
  2. ペア「反論キャッチボール」。A が意見カード(給料がいちばん大事/有名な会社がいい/休みが多いほうがいい)を読み上げ、B は「たしかに〜。でも、〜は〜の一つにすぎないんじゃないでしょうか」で受けて理由を一つ足す。A はもう一度言い返してから、カードを替えて役を交代する。
  3. 産出「ミニ・ディベート『会社の名前は大事か』」。賛成と反対の2組に分かれ、一人1回は「にすぎない」で相手の根拠を小さく見せてから、自分の根拠を足す。教師は名詞の接続(「の」が入っていないか)と、「たしかに〜」で一度相手を認めてから使っているか(相手を見下す強さになっていないか)を見る。

つまずきと手当て

  • 「*ただの感想のにすぎない」と名詞のあとに「の」を入れる。名詞には直接つくか「である」をはさむ、と板書で確かめる
  • 友達との会話で「それは冗談にすぎないよ」と言い、硬く聞こえる。会話なら「冗談だよ」「冗談で言っただけだよ」に
  • 評価を下げる気持ちに気づかず、ほめたい相手や大事に思っているものに使う。「小さく見せる」言い方だと、使う前に確かめさせる

既習の文型との違い

  • 〜だけ/〜だけの(第1課)「だけだ」は「あと一人だけだ」のように事実の範囲を言う中立の形で、会話でも書き言葉でも使えます。「にすぎない」は「その程度で大したことはない」という話し手の評価が入る硬い形で、意見の文やレポートに向きます。友達に「それは冗談にすぎない」と言うと、硬いうえに相手の話を軽く扱っているように聞こえます。
  • [〜個、〜時間、〜杯…/N]しか〜ない(初中級 第12課)「しか〜ない」は否定の形で数の少なさを言い、「2割しかいなかった」のように驚きや不足の気持ちが出ます。「にすぎない」は肯定の形で「2割にすぎなかった」と、その数を小さいものとして評価します。レポートでは「にすぎない」、会話では「しか〜ない」が自然です。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 必要な条件を言うことで自分の意見を補強したいときに使う表現意見を言うだけでなく、「これがないと成り立たない」という条件をつけると、相手が納得しやすくなります。話し合いの前に条件を言う形をいくつか板書しておき、自分の意見のあとに条件を一つ足すことを話し合いの決まりにします。例:〜がなければ、〜は続けられない/〜ないと、〜できない/〜てはじめて、〜がわかる/〜ためには、〜が欠かせない/〜さえあれば、〜/〜ことが前提だ

2 見つけた!

できること留学生向けの就職活動のパンフレットを読んで、準備の手順や参加の条件など、自分に必要な情報を取り出せる。

場面

大学のキャリアセンターの前に置いてある「留学生のための就職活動ガイド」を手に取って読む場面です。教室では A4 1〜2枚の自作のパンフレット(就職活動の流れの図・説明会の案内・注意点)を配り、「いつ」「何をする」「だれが参加できる」に色を分けて線を引かせてから、細かい表現に入ります。

  • パンフレット:留学生のための就職活動ガイド(キャリアセンター)
  • パンフレット:就職活動を始めるにあたって、まず自分の強みと興味のある仕事を整理しましょう。
  • パンフレット:学内の合同企業説明会には、学部・学年を問わず参加できます。
  • パンフレット:応募する企業は、仕事の内容や働き方をよく調べた上で決めてください。
  • パンフレット:インターンシップは実際の仕事を体験できる反面、授業と日程が重なることもあるので、早めに計画を立てましょう。
  • パンフレット:エントリーシートの書き方は、キャリアセンターで個別に相談できます(予約制)。
学習項目 1 〜にあたって/〜にあたり

意味・はたらき

「〜にあたって」は、何か大事なことを始める・行う、その機会にという意味で、後ろに前もってする準備や心構え、あいさつが続きます。お知らせや案内、式のあいさつで使う改まった言い方で、「にあたり」はさらに書き言葉らしくなります。「〜際(に)」(第5課)はくり返し起こる場面にも使えますが、「にあたって」は就職活動・入学・開店のような節目になる出来事に使うのがふつうです。「〜とき」は日常の何でもない場面にも使える中立の言い方です。

接続

N/V辞書形+にあたって/にあたり、名詞の前は「〜にあたっての+N」

形
就職活動を始めるにあたって留学にあたり説明会の開催にあたって応募にあたっての注意

導入

  • パンフレットの最初の見出しを読む自作のパンフレットの1行目「就職活動を始めるにあたって」を見せ、「これは、いつのことを書いていますか」と聞く。「始める前・始めるとき」という答えを引き出し、板書で「〜とき(ふつう)」「〜際(に)(改まった・何度でも)」「〜にあたって(改まった・大事な節目)」の3段に並べる。続けて入社式や開店のあいさつの例を一つずつ言う。

板書案

N/V辞書形 + にあたって(にあたり)、〜
就職活動を 始めるにあたって、自分の 強みを 整理しましょう。
〔3段〕とき(ふつう)/際に(改まった)/にあたって(大事な節目)
〔赤〕後ろ=準備・心構え・あいさつ
N の前 → 〜にあたっての注意

場面と発話(自作)

  • 大学のキャリアセンターの案内を読む。説明会への参加にあたっては、事前の予約が必要です。
  • 会社の入社式で、社長があいさつする。新しい生活を始めるにあたり、皆さんに一つお願いしたいことがあります。
  • アパートの契約のとき、不動産会社の人の説明を聞く。ご入居にあたって、ごみの出し方について説明させていただきます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「就職活動・引っ越し・留学・アルバイトの開始」のカードを引かせ、「〜にあたって、〜ておきましょう」とパンフレットの一文を作らせる。次に、作った文を友達に話す設定にして「〜とき」「〜前に」に言い換えさせ、硬さの違いを確かめる。

  1. 口頭教師が節目の出来事のカードを出し、学習者が「〜にあたって、〜ておきましょう/〜が必要です」にする。キューは「入学」「留学する」「一人暮らしを始める」「新しい店を開く」「説明会に参加する」。次に、同じ文を「〜とき」「〜前に」に言い換えて、硬さが下がることを耳で確かめる。
  2. ペア「案内係と友達」。A は案内を書く係で、出来事カード(説明会・寮に入る・インターンシップ)を見て「〜にあたって、〜てください」と案内の一文を言う。B はそれを友達に伝える設定で「〜前に〜しといてね」とくだけた形に言い直す。言い直しが合っているかを A が確かめ、役を交代する。
  3. 産出「スピーチの書き出し作り」。自分がこれから始めること(就職活動・新しいアルバイト・帰国)について、あいさつの最初の一文を「〜にあたり、」で書き、続けて抱負を2文書いて読み上げる。教師は、節目と言える出来事か、動詞のあとに「の」を入れていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*就職活動をするのにあたって」と動詞のあとに「の」を入れる。動詞は辞書形に直接、名詞にも直接つく、と板書で確かめる
  • 「コンビニに行くにあたって、財布を持った」のように日常の小さなことに使い、大げさに聞こえる。節目になる出来事かどうかを考えさせる
  • 「この日は祝日にあたる」の「あたる」(当てはまる)と混同する。こちらは「〜の機会に」で、後ろに準備やあいさつが来るかどうかで見分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜際(に)(第5課)「際(に)」は「お帰りの際は」「緊急の際」のように、くり返し起こる場面にも一回の場面にも使える改まった「とき」です。「にあたって」は入学・就職・開店のような一度の大事な節目を前にした準備や心構えに使います。「お帰りにあたって、忘れ物にご注意ください」は大げさに聞こえるので「お帰りの際は」にします。
  • Vる前に、〜/Nの前に、〜/[時間]前に、〜(初級 第12課)「前に」は時間の順番を言う日常の形で、「寝る前に歯をみがく」のように何にでも使えます。「にあたって」は「その機会に」の意味で、後ろに準備・心構え・あいさつが続き、案内や式で使います。案内文の内容を友達に話すときは「〜前に」「〜とき」に戻させます。
関連する文型
学習項目 2 〜を問わず

意味・はたらき

「Nを問わず」は、「Nがどうであっても関係なく」という意味で、募集や案内の条件によく出る書き言葉です。前に来るのは「国籍・年齢・経験・学部・男女」のように中にいくつかの違いを含む名詞や、「経験の有無」「昼夜」「文系・理系」のような対になる語です。「〜にかかわらず」(第4課)とほぼ同じ意味ですが、「にかかわらず」は「行くかどうかにかかわらず」のように文の形も受けやすく、「を問わず」は名詞につくことが多い言い方です。「〜に限らず」(第14課)は「〜だけでなく、ほかも」と範囲を広げる言い方で、意味の向きが少し違います。

接続

N(国籍・年齢・経験・学年など)+を問わず、N1・N2(対になる語)+を問わず

形
学部・学年を問わず参加できる国籍を問わず応募できる経験の有無を問わず昼夜を問わず

導入

  • 募集の条件を表にする説明会の案内の一部「学部・学年を問わず参加できます」を見せ、黒板に「文学部・経済学部・工学部」「1年〜4年」の表を描いて全部のますに丸をつける。「どの学部でも、どの学年でも大丈夫」と言い換え、「〜を問わず=〜がどうでも関係ない」と板書する。「にかかわらず」の文を一つ並べて、前につく形の違いを示す。

板書案

N + を問わず
学部・学年を 問わず 参加できます。
〔表〕文学部/経済学部/工学部 × 1年〜4年 … 全部に ○
〔青〕にかかわらず(第4課)=文の形も受けやすい
〔×〕経験があるを問わず → 経験の有無を問わず

場面と発話(自作)

  • アルバイトの求人サイトで、応募の条件を確かめる。未経験の方も歓迎します。年齢・国籍を問わず、どなたでも応募できます。
  • 留学生向けの合同説明会のチラシを読む。文系・理系を問わず、さまざまな業種の企業が参加します。
  • 大学の図書館の掲示を読む。試験期間中は、学年を問わず、学習室を夜10時まで利用できます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「年齢・国籍・経験の有無・学年・文系理系」のカードと「参加できる・応募できる・利用できる」のカードを組み合わせて、お知らせの一文を作らせる。次に、パンフレットの条件の文を読み、「留学生の自分は参加できるか」を「〜を問わずと書いてあるから、大丈夫」と理由つきで答えさせる。

  1. 口頭教師が「条件」と「できること」の2枚組カードを出し、学習者がお知らせの一文にする。キューは「年齢・応募できる」「国籍・参加できる」「経験の有無・歓迎します」「昼夜・営業しています」「文系・理系・説明を聞ける」。続けて「経験があってもなくても」を「経験の有無を問わず」に、のように会話の形を書き言葉に直させる。
  2. ペア「応募できる?クイズ」。A は自作の募集のチラシ(条件が書いてある)を、B は人物カード(留学生・2年生・経験なし)を持つ。B が「〜でも応募できますか」と聞き、A はチラシを見て「はい、〜を問わずと書いてあるので大丈夫です」か「いいえ、〜に限りと書いてあります」と答える。チラシを替えて交代する。
  3. 産出「求人チラシ作り」。グループで架空のアルバイトの求人を作り、「を問わず」を1つ以上入れて条件を書く。ほかのグループがそれを読んで、自分が応募できるかどうかを理由つきで言う。教師は、前の名詞が中に違いを含む語か(「留学生を問わず」になっていないか)、文に直接つけていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*経験があるを問わず」と動詞の文に直接つける。「経験の有無を問わず」のように名詞にしてからつける、と板書で言い換えを見せる
  • 「留学生を問わず」のように、中に違いを含まない名詞につけて意味が通らない。「留学生か日本人かを問わず」「国籍を問わず」と、幅のある語に直させる
  • 友達との会話で「年齢を問わず、だれでも来ていいよ」と言い、案内文のように聞こえる。会話なら「何歳でも」「だれでも」に

既習の文型との違い

  • 〜にかかわらず/〜にかかわりなく(第4課)どちらも「〜に関係なく」ですが、「にかかわらず」は「参加するかどうかにかかわらず」「天候にかかわらず」のように、「〜かどうか」の形も受けやすい言い方です。「を問わず」は「年齢・国籍・経験」のような幅を含む名詞に直接つくのが中心で、募集や案内の条件によく出ます。文を受けたいときは「にかかわらず」、名詞一つなら「を問わず」と覚えさせると迷いが減ります。
  • 〜に限らず(第14課)「に限らず」は「留学生に限らず、日本人学生も」のように一つを挙げて範囲をほかへ広げる言い方で、前に幅のない名詞が来ても使えます。「を問わず」は中の違いを全部まとめて「どれでも同じ」と言います。「留学生に限らず参加できます」と「国籍を問わず参加できます」を並べると違いが見えます。
関連する文型
学習項目 3 〜上で

意味・はたらき

「Vた上で」は、あることをきちんと済ませてから、それを土台にして次のことをするときに使います。「よく調べた上で応募する」のように、前のことが後ろのことに必要な手順であることを示し、案内や説明の文でよく見る改まった言い方です。「Vてから」は順番を言うだけですが、「た上で」には「前のことをしてからでないといけない」という重さがあります。「V辞書形+上で」は「〜するときに・〜する過程で」という意味で、「就職活動を進める上で大切なこと」のように、後ろに「大切だ・必要だ・役に立つ」が来ます。第1課の「ホームページ上(じょう)で」とは読みも意味も別です。

接続

Vた形+上で、N(する動詞の名詞)+の+上(で)、V辞書形+上で(〜するときに)

形
よく調べた上で応募する家族と相談の上で決める内容をご確認の上、お申し込みください就職活動を進める上で大切なこと

導入

  • 手順の矢印を描くパンフレットの「仕事の内容をよく調べた上で、応募先を決めてください」を読み、黒板に「調べる → 決める」の矢印を描く。矢印の前の箱を太くして「これをしないと次に行けない」と示し、「調べてから決める」と並べてどちらが案内らしいかを聞く。そのあと「就職活動を進める上で大切なことは何ですか」と聞き、「V辞書形+上で」は「〜するときに」の意味だと別の行に書く。
  • 「うえで」と「じょうで」を読み分ける第1課の「ホームページ上(じょう)で申し込む」を板書の端に書き、今日の「調べた上(うえ)で」と並べて声に出させる。前に来るのが名詞(画面・ネット)か、動詞のタ形・辞書形かで読みと意味が分かれることを確かめる。

板書案

Vた + 上で、〜(手順)
よく 調べた 上で、応募してください。
N の 上(で):ご確認の上、お申し込みください
V辞書形 + 上で 大切なのは〜(〜するときに)
〔赤〕調べる ━→ 決める(前の箱を太く)
〔読み〕上(うえ)で ⇔ ホームページ上(じょう)で(第1課)

場面と発話(自作)

  • キャリアセンターの職員が、応募の手順を説明する。募集要項をよく読んだ上で、エントリーシートを書いてください。
  • 申し込みのウェブページの注意書きを読む。利用規約をご確認の上、「同意する」を押してください。
  • ゼミで、日本で働くときに大事なことを話す。日本で働く上で大切なのは、わからないことをそのままにしないことだと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「調べる→応募する」「相談する→決める」「読む→書く」の手順カードを見せ、「〜た上で、〜てください」と案内の文を言わせる。次に、「日本で働く・面接を受ける・一人暮らしをする」のカードで「〜上で大切なのは〜です」を言わせ、二つの意味を口で分けさせる。

  1. 口頭教師が手順の2枚組カードを矢印でつないで見せ、学習者が「〜た上で、〜てください」にする。キューは「読む→書く」「相談する→決める」「確認する→申し込む」「調べる→応募する」。次に名詞の形「ご相談の上」「ご確認の上」に言い換え、最後に「日本で働く・面接を受ける・一人暮らしをする」のカードで「〜上で大切なのは〜です」を言わせて、二つの意味を口で分ける。
  2. ペア「手順ならべ」。A はばらばらにした就職活動の手順カード(自己分析・説明会・エントリーシート・面接)を B に渡し、B は並べながら「〜た上で、〜します」と説明する。A は手元の正解の流れ図と比べて違う所を指摘する。次はアパートを借りる手順のカードで役を交代する。
  3. 産出「わたしの就活アドバイス」。後輩向けに、就職活動を進める上で大切なことを3つ、「〜た上で」を1回、「〜上で大切なのは」を1回入れて書き、グループで読み合う。教師は、手順を言いたいのに辞書形にしていないか、「の」の付け方が逆になっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*調べたの上で」「*相談上で」と、「の」の付け方を逆にする。動詞のタ形には直接、名詞には「の」を入れる、と板書の2行で確かめる
  • 手順を言いたいのに「調べる上で、応募してください」と辞書形にして、「〜するときに」の意味になってしまう。手順なら「た上で」と、矢印の図で確かめる
  • 第1課の「ホームページ上(じょう)で」と同じ字なので読み方を混ぜる。動詞につく「上で」は「うえで」と読む、と声に出させる

既習の文型との違い

  • Vてから、〜(初級 第12課)「Vてから」は順番を言う日常の形です。「Vた上で」は前のことを済ませることが後ろの土台・条件になっていて、案内や手続きの説明で使います。「調べてから決めた」は出来事の順番、「調べた上で決めた」は「きちんと調べたことにもとづいて決めた」という慎重さが出ます。
  • 〜上(で)(第1課)第1課の「〜上(で)」は「ネット上で」「地図上では」のように名詞について「その場・その面で」を表し、「じょう」と読みます。この課の「た上で」「辞書形+上で」は動詞について手順や過程を表し、「うえ」と読みます。前に来るのが名詞か動詞かで、読みと意味を分けさせます。
関連する文型
学習項目 4 〜反面/半面

意味・はたらき

「〜反面」は、同じ一つのものごとに、ある面とそれと反対の面があることを言います。「給料が高い反面、残業が多い」のように、前と後ろで同じ仕事・同じ会社・同じ人の違う面を並べ、説明文や意見の文で使う硬めの言い方です。「〜が」「〜けれど」は二つのことの対比に広く使えますが、「反面」は一つのものの表と裏を言うのに向いていて、二つの別のものを比べるときは「〜一方(で)」(第13課)を使います。「半面」の字も使われ、「その反面」のように文の初めに置いて前の文を受けることもできます。

接続

V普通形/イA普通形/ナAな・ナAである/Nである+反面

形
給料が高い反面、残業が多い便利な反面、お金がかかる大企業は安定している反面、若いうちは任される仕事が限られるその反面、〜

導入

  • 一枚のカードの表と裏カードの表に「インターンシップ:仕事を体験できる」、裏に「授業と日程が重なる」と書いて見せ、表から裏へひっくり返しながら「仕事を体験できる反面、授業と重なることもある」と言う。板書で「同じもの(インターンシップ)」に丸をつけ、前と後ろが同じものの話であることを確かめる。

板書案

普通形/ナAな・Nである + 反面、〜
給料が 高い反面、残業が 多い。
〔丸〕同じもの(この会社)の 表と裏
〔青〕一方(で)(第13課)=二つの別のものも比べられる
〔×〕便利の反面 → 便利な反面

場面と発話(自作)

  • 就職先の候補を比べたメモを見ながら、友達に話す。この会社は家から近い反面、給料はあまり高くないんだよね。
  • パンフレットで、規模の小さい会社の特徴を読む。小さな会社は若いうちから仕事を任される反面、一人一人の責任が重くなりがちです。
  • レポートで、SNS を使った就職活動について書く。SNS は会社の情報をすぐに得られる反面、内容が正しいかどうかを自分で確かめる必要がある。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「大企業・小さな会社・地方で働く・在宅勤務」のカードを引かせ、表と裏の両方を「〜反面、〜」で一文にさせる。次に、ST2 のパンフレットの中から「反面」の文を探し、前と後ろがどの点の話かを表にまとめさせる。

  1. 口頭教師が表と裏に書いたカードを見せ、ひっくり返しながら学習者に「〜反面、〜」の一文を言わせる。キューは「大企業:安定している/自由が少ない」「在宅勤務:通勤しなくていい/運動不足になる」「地方の会社:家賃が安い/交通が不便だ」「インターンシップ:仕事を体験できる/授業と重なる」。ナ形容詞と名詞のカードも混ぜて接続を確かめる。
  2. ペア「裏を当てよう」。A は表だけを読み上げ、B は裏を予想して「〜反面、〜んじゃないですか」と一文で言う。A は手元の裏を見せて、合っていれば「そうなんです」、違えば「〜反面、〜んです」と言い直す。5枚で役を交代する。
  3. 産出「仕事の表と裏を話そう」。自分が考えている仕事について、よい面と大変な面を「反面」で1文、続けて「それでも私は〜」で自分の判断を1文、グループで発表する。教師は、前後が同じものの両面になっているか、評価の向きが反対になっているか、ナ形容詞・名詞の接続を見る。

つまずきと手当て

  • 「*便利の反面」とナ形容詞に「の」をつける。「便利な反面」「便利である反面」と板書で確かめ、名詞は「学生である反面」と見せる
  • 「兄は背が高い反面、弟は低い」と別々の人を比べる。二人を比べるなら「一方(で)」と、前と後ろが同じものかどうかに丸をつけて見分けさせる
  • 前と後ろがどちらもよいこと(「給料が高い反面、休みも多い」)になる。反対の面を言うときだけ使う、と表と裏のカードで確かめる

既習の文型との違い

  • 〜一方(で)(第13課)「一方(で)」は「兄は理系に進んだ一方で、弟は文系を選んだ」のように、別々の二つを比べるのにも使えます。「反面」は一つのものの表と裏に限られ、前後で評価が反対になります。二人の人や二つの会社を比べる文では「一方(で)」を使わせます。
  • 〜が、〜(初級 第4課)「が」は「高いですが、おいしいです」のように逆接に広く使う日常の形です。「反面」は同じものの長所と短所を並べる硬い形で、評価の向きが反対でないと使えません。「この店は安いが、遠い」は会話でも自然ですが、「安い反面、遠い」は説明文らしい言い方になります。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 就職活動のパンフレットに出てくることば・表現パンフレットには漢語の名詞が多く、読めても「就職活動のどの段階のことか」がわからない語がよくあります。語を一つずつ覚えさせるより、「説明会→エントリー→選考→内定」の流れの図を黒板に描き、語のカードをその図に貼らせると、全体の中での位置がわかります。例:合同企業説明会/エントリーシート/書類選考/適性検査/一次面接・最終面接/内定/インターンシップ/応募資格

3 耳でキャッチ

できること先輩の就職活動の体験談を聞いて、いつ何を始めたか、どんな助言をしているかを聞き取れる。

場面

留学生向けの就職活動の座談会で、日本の会社で働いている卒業生が自分の体験を話す場面です。教室では教師が自作の原稿を、くだけた話し言葉の調子で読み上げるか録音して流し、「時期・したこと・助言」の3列のメモ用紙を配っておきます。

  • 先輩:私が就職活動を始めたのは、3年生の秋でした。
  • 先輩:最初は不安というか、何がわからないのかもわからない状態でしたね。
  • 先輩:たとえば、エントリーシートの「自己PR」なんかは、10回以上書き直しました。
  • 先輩:でも、日本で働くと決めた以上は、日本語の面接から逃げるわけにはいかないと思って。
  • 先輩:キャリアセンターの模擬面接は、できる限り予約して受けました。
  • 先輩:私の知る限り、早めに動いた人ほど、落ち着いて会社を選べていましたよ。
学習項目 1 〜というか

意味・はたらき

「〜というか」は、今言ったことばがぴったりではないと感じて、より合う言い方に言い直すときの話し言葉です。「うれしいというか、ほっとした」のように後ろに言い直しが来る形と、「AというかBというか」のように二つ並べて、どちらとも決めにくい気持ちを表す形があります。「〜というより(も)」(第11課)は「AよりBのほうが正確だ」とはっきり比べて選びますが、「というか」はそこまで比べず、考えながら話している感じが出ます。くだけると「〜っていうか」になり、面接や目上の人へのメールでは避けたほうがよい言い方です。先輩の話では、気持ちや状態をうまく言えないところに出てくるので、聞き取りの目印になります。

接続

N/ナA語幹/イA普通形/V普通形+というか(くだけて「っていうか」)

形
不安というか、何をしたらいいかわからなかった緊張したというか、頭が真っ白になったまじめというか、かたいというかっていうか(くだけた言い方)

導入

  • 気持ちを言い直してみせる教師が自分の初めての面接の話をし、「怖かったです……怖いというか、自分が何を言っているのかわからなくなりました」と、言いよどみながら言い直してみせる。板書で「怖い」に線を引き、矢印で「わからなくなった」へつないで、「というか=もっと合うことばに言い直す」と書く。

板書案

〜というか、〜(もっと合うことばに言い直す)
不安というか、何も わからなかった。
A というか B というか(どちらとも決めにくい)
〔青〕というより(第11課)=比べて選ぶ
〔赤〕友達・座談会 ○ 面接・メール ✕

場面と発話(自作)

  • 就職活動の座談会で、先輩が内定が出たときの気持ちを話す。内定の連絡が来たときは、うれしいというか、とにかくほっとしました。
  • 友達に、会社の説明会の印象を話す。あの会社の人たち、まじめというか、かたいというか、ちょっと緊張する感じだった。
  • 友達に、アルバイトを辞めた理由を聞かれる。辞めたというか、契約の期間が終わったんだよね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

聞き取りでは、ST3 の先輩の話を流し、「というか」が出たら手を挙げさせて、前と後ろのことばをメモさせる。口頭では、「アルバイトの初日・初めての面接・日本に来た日」の気持ちを、「〜というか、〜」で一度言い直しながら話させる。

  1. 口頭教師が少しためらいながら言い直してみせたあと、気持ちの語の2枚組カードで学習者に言わせる。キューは「うれしい・ほっとした」「怖い・頭が真っ白になった」「大変・新しいことばかりだった」「緊張した・声が出なかった」。「AというかBというか」は「まじめ・かたい」「静か・さびしい」のカードで、どちらとも言えない気持ちとして言わせる。
  2. ペア「初めての日インタビュー」。A が「初めてのアルバイトの日(日本に来た日・初めての面接)は、どうでしたか」と聞き、B は「〜というか、〜」で一度言い直しながら答える。A は「どうしてですか」と一つ聞き返し、B が理由を言ったら役を交代する。
  3. 産出「座談会ロールプレイ」。一人が先輩役になり、自分の体験を1分話して「というか」を自然に1〜2回入れる。聞き手は「というか」の前と後のことばをメモして質問を一つする。教師は、くだけた話の場面で使っているか、はっきり比べる文に使っていないか、言い直しが後ろに続いているかを見る。

つまずきと手当て

  • 面接で「っていうか、私の強みは〜」と話し始め、失礼に聞こえる。面接やメールでは「言い換えると」「〜というよりも」に替えさせる
  • 「というより」と同じだと思い、はっきり比べて選ぶ文に使う(「バスというか、タクシーで行ったほうが早い」)。比べて選ぶときは「というより」と、二つの文を並べて見せる
  • 「というか」を言うたびに後ろの言い直しがなく、口ぐせのように聞こえる。後ろには必ずもっと合うことばを一つ続ける、と板書の矢印で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜というより(も)(第11課)「AというよりB」は「AよりBのほうが正確だ」と二つを比べてBを選びます。「Aというか(B)」は比べて選ぶほどはっきりせず、話しながら合うことばを探している感じが出ます。「AというかBというか」は、どちらとも決めきれないときにだけ使えます。
関連する文型
学習項目 2 〜以上(は)/〜上は

意味・はたらき

「〜以上(は)」は、「〜という立場や事情になったのだから、当然〜」という意味で、後ろに「〜なければならない・〜べきだ・〜つもりだ・〜しかない」のような決意・義務・当然の判断が来ます。「〜から」はただ理由を言うだけですが、「以上」は「もう変えられない事実」を前に置いて、そこから逃げられない結論を言う強さがあります。「〜から(に)は」(第14課)とほぼ同じ意味で、「上は」はさらに硬く、「こうなった上は」のように決意を述べる改まった場面で使われます。先輩の話では、考え方や助言の芯になる部分に出てくることが多いです。

接続

V普通形(辞書形・タ形)+以上(は)/上は、N・ナA+である以上(は)

形
日本で働くと決めた以上は、敬語から逃げられない受けると言った以上、最後まで準備する社会人である以上、時間は守るべきだこうなった上は、やるしかない

導入

  • 決めたことと、そこから出てくること教師が「日本で働くと決めた」と書いた紙を黒板に貼り、「決めたんだから、何をしなければなりませんか」と聞く。学生の答え(面接の練習をする・ビジネスマナーを学ぶ)を紙の後ろに並べ、「決めた以上は、〜なければならない」と一文にする。後ろに来るのが「〜なければならない・〜つもりだ・〜しかない」であることを色で示す。

板書案

V普通形 + 以上(は)、〜なければならない/〜つもりだ
N・ナA + である以上(は)
日本で働くと 決めた以上は、敬語から 逃げられない。
〔赤〕後ろ=決意・義務・当然の判断
〔硬さ〕からには ≒ 以上は < 上は

場面と発話(自作)

  • 座談会で、先輩が就職活動中の心構えを話す。エントリーした以上は、その会社のことを人に説明できるくらい調べておいたほうがいいですよ。
  • 内定をもらった留学生が、友達に決意を話す。内定をもらった以上、卒業までにもっと敬語を勉強するつもりだよ。
  • アルバイトの先輩が、新しく入った人に仕事の心構えを話す。お金をもらっている以上は、学生でもプロだと思って働いてね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「応募した・リーダーになった・約束した・留学生である」のカードを引かせ、「〜以上(は)、〜なければならない/〜つもりだ」で決意や義務の文を作らせる。次に、ST3 の先輩の話を聞いて「以上」の前の事情と後ろの結論をメモさせ、自分のことばで言い直させる。

  1. 口頭教師が前半を言い、学習者が後半に義務や決意をつけて完成させる。キューは「応募した以上は、…」「約束した以上、…」「リーダーになった以上は、…」「社会人である以上、…」。後ろは「〜なければならない・〜つもりだ・〜しかない・〜べきだ」のカードから選ばせ、全員→個人の順で言わせる。
  2. ペア「決めたらどうする?」。A は決定カード(日本で就職する・大学院に進む・国に帰って会社を作る)を引き、B が「じゃあ、何をしなければなりませんか」と聞く。A は「〜と決めた以上は、〜」で答え、B は「それなら〜も必要だね」と一言足す。カードを替えて役を交代する。
  3. 産出「決意表明」。課のまとめで選んだ仕事について、「〜と決めた以上は、〜」で自分の決意を2〜3文にまとめてクラスで発表する。教師は、前が変えられない事実になっているか、後ろが話し手の判断や決意になっているか、名詞・ナ形容詞に「である」が入っているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*学生の以上は」と名詞に「の」をつける。名詞とナ形容詞は「である以上」、と板書で確かめる
  • 後ろにただの出来事を置く(「日本に来た以上、毎日雨が降った」)。後ろは話し手の判断や決意だと、色をつけた部分で確かめる
  • 「上は」をふだんの会話で使い、ずいぶん硬く聞こえる。会話は「以上は」か「からには」でよいと伝える

既習の文型との違い

  • 〜から(に)は(第14課)意味はほとんど同じで、どちらも後ろに決意・義務・当然の判断が来ます。「からには」は話し言葉でも使いやすく、「以上(は)」は少し硬く、規則や論説の説明(「契約した以上、守る義務がある」)にも向きます。「上は」はさらに硬く、日常の会話ではほとんど使いません。
  • 〜ので、〜(初中級 第1課)「ので」は理由をやわらかく述べる形で、後ろに出来事も依頼も来ます(「雨なので、中止になりました」)。「以上」は変えられない事実を前に置き、後ろは話し手の判断や決意に限られます。「雨が降った以上、中止になった」のように後ろがただの出来事だと不自然になります。
関連する文型
学習項目 3 〜限り/〜限りの

意味・はたらき

「〜限り」は、できる範囲いっぱいに・その範囲の中ではという意味です。「できる限り早く」「力の限り走る」のように最大限を表す使い方と、「私の知る限り」「調べた限りでは」のように、話し手の判断がどの範囲の情報にもとづくかを示す使い方があります。名詞の前では「できる限りの準備」のように「限りの」になります。第7課の「〜限り/〜限りは」(「学生である限り」=その状態が続くあいだは)や、第2課の「〜に限り」(それだけ)とは別の用法なので、前に来る語と後ろの意味で見分けます。先輩の話では、助言(できる限り〜)や、自分の経験の範囲(私の知る限り)を示すところに出ます。

接続

V辞書形/Vている形/Vた形+限り(では)、N+の+限り、名詞の前は「〜限りの+N」

形
できる限り早く始めるできる限りの準備をする私の知る限り調べた限りでは

導入

  • 自分の情報の範囲を円で示す教師が黒板に大きな円を描き、その中に小さな円を描いて「私が知っていること」と書く。「私の知る限り、この大学の留学生の多くは3年生の秋から準備を始めています」と言い、小さな円の中の話だと示す。次に「できる限り」を両手を大きく広げる動作で見せ、「限界まで」の意味を確かめる。板書は「範囲の中で(知る限り)」「範囲いっぱい(できる限り)」の2行。

板書案

V辞書形 + 限り/N の 限り(範囲いっぱい)
できる限り 早く 始める。 できる限りの 準備
私の 知る限り/調べた限りでは(情報の範囲)
〔円〕大きな円=全部 小さな円=私が知っていること
〔青〕学生である限り(第7課)=そのあいだは

場面と発話(自作)

  • 座談会で、先輩が後輩に助言する。模擬面接は、できる限り本番と同じ服装で受けてみてください。
  • 友達に、ある会社の採用について聞かれる。私が調べた限りでは、留学生の採用は毎年あるみたいだよ。
  • ゼミで、留学生の就職について調べた結果を発表する。今回調べた限りでは、留学生の採用を増やしている会社が多いようです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「できる限り〜」で就職活動の準備の助言を一つずつ言わせ、次に「私の知る限り/調べた限りでは、〜」と情報の範囲をつけて報告させる。最後に ST3 の聞き取りで、先輩の話の「限り」がどちらの使い方かを分けさせる。

  1. 口頭二つの使い方を分けて練習する。まず「できる限り」に「早く・たくさん・丁寧に・本番と同じように」のカードをつけて助言の文を言わせる。次に教師が情報カード(その会社は毎年留学生を採用している・説明会は春と秋)を見せ、「私の知る限り」「見た限り」「聞いた限りでは」「調べた限りでは」のどれかをつけて報告させる。
  2. ペア「うわさの確かめ合い」。A は一部だけ書いてある情報カード(ある会社の採用・面接の回数)を持ち、B の質問に「私が調べた限りでは〜けど、全部はわからない」と範囲をつけて答える。B は「じゃあ、できる限り〜たほうがいいね」と助言を返す。カードを替えて役を交代する。
  3. 産出「先輩からの3つの助言」。先輩役になって、就職活動の助言を「できる限り〜」で2つ、「私の知る限り〜」で1つ入れた1分の話を作り、グループで話す。教師は、二つの使い方(範囲いっぱい・情報の範囲)を区別できているか、動詞のあとに「の」を入れていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*できるの限り」と動詞のあとに「の」を入れる。動詞には直接、名詞には「の」(力の限り)、と板書で確かめる
  • 第7課の「学生である限り」(そのあいだは)と同じ意味で取り、「私の知る限り」を「知っているあいだは」と理解する。前に来る語(できる・知る・見る・調べる)で範囲の意味だとわかると伝える
  • 「私の知っている限り」と「私の知る限り」のどちらが正しいか迷う。どちらも使えるが、「知る限り」は決まった言い方としてそのまま覚えさせる

既習の文型との違い

  • 〜限り/〜限りは(第7課)第7課の「学生である限り」「ここに住んでいる限り」は「その状態が続くあいだは」という条件の意味です。この課の「できる限り」は「範囲いっぱい」、「知る限り」は「その範囲の中で」を表します。前の語が「できる・知る・見る・調べる」なら範囲、「〜である・〜ている」なら状態の条件、と見分けさせます。
  • 〜に限り(第2課)「〜に限り」は「先着10名に限り無料」のように「それだけ」と対象を絞る言い方で、名詞に「に」がつきます。この課の「限り」は動詞に直接つくか「Nの限り」で、範囲を表します。「本日に限り」と「力の限り」を並べて、前の形の違いを見せます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • わかりやすくするために例を出して説明するときに使う表現先輩の話は、「準備は早いほうがいい」のような助言のすぐあとに例が来ることが多いので、例を出す表現を聞き取りの目印にします。聞くときは例の表現の前の助言と後ろの例を線でつないでメモさせ、話すときは助言に例を一つ足して言わせます。例:たとえば、〜/〜とか〜とか/〜なんか(は)/〜みたいな〜/具体的に言うと、〜/例を挙げると、〜

4 こんなときどうする?

できること知り合いの目上の人に、事情を説明して丁寧な依頼のメールを書ける。

場面

就職活動中の留学生が、以前通っていた日本語学校の先生に、エントリーシートの日本語を見てほしいとメールで頼む場面です。先生は自分のことを知っているが、しばらく連絡していない目上の人で、頼むことは先生の仕事ではない「好意のお願い」です。教室では件名・あて名・名乗り・依頼・結びの欄に分けた用紙を配り、欄ごとに書かせます。

  • 件名:エントリーシートについてのお願い
  • メール:〇〇先生 ご無沙汰しております。2年前に日本語学校でお世話になった〇〇です。
  • メール:今、就職活動をしていて、来週の金曜日までにエントリーシートを提出しなければなりません。
  • メール:お忙しいところ恐縮ですが、一度目を通していただけないでしょうか。
  • メール:特に、自己PRの日本語が自然かどうかを見ていただけると、大変助かります。
  • メール:ファイルを添付いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
学習項目 1 〜ていただけないでしょうか

意味・はたらき

「Vていただけないでしょうか」は、目上の人に相手の手間になることを、断る余地を残してお願いする、とても丁寧な依頼の形です。「Vてください」は指示に近く、「Vてもらえませんか」「Vていただけませんか」と丁寧さが上がり、そこに「〜ないでしょうか」と疑問の形を重ねることで、さらに控えめになります。メールでは、前に事情と「お忙しいところ恐縮ですが」を置き、後ろに締め切りや方法をはっきり書くと、丁寧でありながら用件がきちんと伝わります。友達や後輩に使うと、かえって距離を感じさせます。

接続

Vて形+いただけないでしょうか、お/ご+(Vます形の語幹・する動詞の名詞)+いただけないでしょうか

形
一度目を通していただけないでしょうか推薦状を書いていただけないでしょうかご都合を教えていただけないでしょうかご確認いただけないでしょうか

導入

  • 丁寧さのはしごを作る黒板に階段を描き、下から「見てください」「見てもらえませんか」「見ていただけませんか」「見ていただけないでしょうか」と書く。「友達に・アルバイトの先輩に・先生に・初めての会社の人に」のカードを、どの段で使うかを学生に置かせる。最後に、いちばん上の段の前に「お忙しいところ恐縮ですが」を足して読み、メールの依頼の文の形にする。

板書案

Vて + いただけないでしょうか
〔はしご〕見てください → 見てもらえませんか → 見ていただけませんか → 見ていただけないでしょうか
お忙しいところ 恐縮ですが、一度 見ていただけないでしょうか。
〔赤〕いただく → いただける → いただけない
〔型〕事情 → 依頼 → 締め切り・方法 → お礼

場面と発話(自作)

  • 日本語学校のときの先生に、エントリーシートを見てほしいとメールを書く。お忙しいところ恐縮ですが、自己PRの日本語を一度見ていただけないでしょうか。
  • ゼミの先生に、推薦状をお願いする。来月の応募に推薦状が必要なのですが、書いていただけないでしょうか。
  • アルバイト先の店長に、シフトを替えてもらいたいと頼む。来週の土曜日に面接が入ってしまったのですが、シフトを替えていただけないでしょうか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「見る・書く・教える・確認する」の動詞カードで「〜ていただけないでしょうか」に変える練習をし、「ご確認いただけないでしょうか」のような「お/ご〜いただく」の形も入れる。次に相手(友達・先輩・先生)のカードを引かせて、はしごのどの段の言い方を使うかを選ばせ、ST4 のメールの依頼の一文を書かせる。

  1. 口頭教師が動詞カードを出し、学習者が「〜ていただけないでしょうか」に変える。キューは「見る」「書く」「教える」「送る」、する動詞は「確認」→「ご確認いただけないでしょうか」、「相談に乗る」→「相談に乗っていただけないでしょうか」。次に相手のカード(友達・アルバイトの先輩・先生・初めての会社の人)を引かせ、はしごのどの段を使うかを選んで言わせる。
  2. ペア「お願いと返事」。A は留学生役で、頼みごとカード(推薦状を書く・エントリーシートを見る・アンケートに答える)を見て、事情を一言言ってから依頼する。B は先生役で、予定の入った手帳カードを見て引き受けるか、「今週はちょっと……」と断る。断られたら A は「では、来週はいかがでしょうか」と続ける。役を交代する。
  3. 産出「依頼メール1通」。ST4 の欄つき用紙で、自分が本当に頼みたいこと(先生・アルバイト先の店長など)を件名から結びまで書く。ペアで読み合い、「何を・いつまでに・どうやって返せばよいか」がそろっているかをチェック表で確かめる。教師は「いただけない」の作り方、「ご確認して」の形、依頼の前の事情の書き方を見る。

つまずきと手当て

  • 「*見ていただかないでしょうか」と、「いただける」の否定を作り間違える。「いただく→いただける(可能)→いただけない」と板書で順に作って見せる
  • 依頼の文だけを書き、何を・いつまでに・どうやって返せばよいかが抜ける。メールの型(事情→依頼→締め切りと方法→お礼)を板書し、依頼の前後に足させる
  • 「ご確認していただけないでしょうか」と書く。相手の動作には「ご確認いただけないでしょうか」「確認していただけないでしょうか」がよいとされている、と二つの形を並べて示す

既習の文型との違い

  • Vていただけませんか(初中級 第5課)「〜ていただけませんか」は目上の人への丁寧な依頼で、口頭でもよく使います。「〜ていただけないでしょうか」は「ない」と「でしょうか」でさらに控えめにした形で、引き受けるかどうかを相手にまかせる気持ちが強く、メールや手間の大きい頼みごとに向きます。どんな小さな頼みにも最上段を使うと、かえって大げさに聞こえます。
  • 〜ていただきたいんですが(第4課)「〜ていただきたいんですが」は自分の希望を述べて相手の反応を待つ形で、窓口などで用件を切り出すのに向きます。「〜ていただけないでしょうか」は相手ができるかどうかを尋ねる形で、相手の好意に頼むお願いに向きます。相手の仕事として当然の対応を頼むのか、好意のお願いかで選ばせます。
関連する文型
学習項目 2 〜ところ(を)

意味・はたらき

「〜ところ(を)」は、相手が〜という状況にあるのに、そこに入りこんで、と相手の事情に気をつかう言い方で、後ろに「すみません・恐縮ですが・ありがとうございました」のようなおわびやお礼が続きます。「お忙しいところ」「お休みのところ」「お疲れのところ」のように、相手の状況を表す決まった言い方として使うことが多く、メールや電話の最初と最後に置きます。「を」はあってもなくても使えます。第5課の「〜ところを(見られた)」は「ちょうどそのとき」という場面の意味で、ここでは相手の状況への気づかいの意味です。

接続

イA普通形/Vている形/Nの+ところ(を)

形
お忙しいところ(を)すみませんお休みのところ申し訳ありませんお疲れのところ、ありがとうございましたご多忙のところ恐縮ですが

導入

  • 相手の状況を先に言う相手役の学生にパソコンを打つふりをさせておき、教師がそばに行って「すみません、ちょっといいですか」とだけ言う。次に「お忙しいところすみません、ちょっといいですか」と言い直し、どちらが相手の状況に気づいているかを聞く。板書は「お忙しい/お休みの/お疲れの+ところ(を)+すみません・恐縮ですが・ありがとうございました」の表にする。

板書案

お忙しい/お休みの/お疲れの + ところ(を)
お忙しいところ(を)+ すみません/恐縮ですが/ありがとうございました
〔赤〕イA → そのまま N → の
〔位置〕メール:書き出し・依頼の前 電話:最初・最後

場面と発話(自作)

  • メールの依頼の文の前に一言入れる。お忙しいところ恐縮ですが、ご確認いただけますと幸いです。
  • 面接のあと、会社の人にお礼を言う。本日はお忙しいところ、お時間をいただき、ありがとうございました。
  • 休みの日に、ゼミの先輩に電話で質問する。お休みのところすみません。明日の説明会のことで一つ伺いたいんですが。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「忙しい・休み・疲れ・多忙」のカードで「お/ご〜ところ(を)すみません/ありがとうございました」を言わせる。次に、ST4 のメールの書き出しと結び、ST5 の電話の最初と最後のどこに入れるかを選ばせ、実際に一文ずつ入れて読ませる。

  1. 口頭教師が相手の状況を表す絵カードを見せ、学習者が「〜ところ(を)すみません/恐縮ですが」をつけて話しかける。キューは「パソコンに向かっている先生」→「お忙しいところ」、「休日の先輩」→「お休みのところ」、「仕事帰りの人」→「お疲れのところ」、「会議の多い部長」→「ご多忙のところ」。同じカードで、別れぎわのお礼「〜ところ、ありがとうございました」も言わせる。
  2. ペア「声かけとお礼」。A は状況カード(研究室で仕事中の先生・休みの日の先輩)を持って相手役になり、B は「〜ところ(を)すみません」で声をかけて用件を一つ言う。A が答えたら、B は「〜ところ、ありがとうございました」で終える。役を交代する。
  3. 産出「最初の一言・最後の一言」。ST4 のメールの書き出しと依頼の前、ST5 の電話の最初と切る前に入れる一言を自分で書き、ペアで声に出して読む。教師は、イ形容詞に「の」を入れていないか、自分の状況に使っていないか、一通のメールに何度も入れていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*お忙しいのところ」とイ形容詞のあとに「の」を入れる。イ形容詞には直接、名詞(お休み・お疲れ)には「の」と、表の2列で確かめる
  • 「私も忙しいところを、すみません」と自分の状況に使う。相手の状況に気づかう言い方だと確かめる
  • 一通のメールで「お忙しいところ」を何度も使い、くどくなる。書き出しか依頼の前の1回でよいと伝える

既習の文型との違い

  • 〜ところへ/〜ところに/〜ところを(第5課)第5課の「〜ところへ/ところに/ところを」は「ちょうど〜しているそのとき」という場面の意味で、「寝ているところを起こされた」のように出来事を述べます。この課の「お忙しいところ(を)」は相手の状況への気づかいを述べ、後ろはおわびやお礼の決まった言い方になります。同じ「ところを」でも、後ろがおわび・お礼かどうかで見分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 丁寧な依頼のメールを知り合いに送るときに使う表現知り合いへのメールは、初めての人へのメールと違い、「ご無沙汰しております」や以前お世話になったことを書いて、関係を思い出してもらうところから始めます。件名・あて名・名乗り・依頼・結びの欄ごとに表現を板書し、欄の順番どおりに入れさせると、依頼の前後に必要なことが抜けにくくなります。例:〇〇先生/ご無沙汰しております/以前〜でお世話になった〇〇です/お忙しいところ恐縮ですが/〜ていただけますと幸いです/どうぞよろしくお願いいたします

5 こんなときどうする?

できること初めての人に電話をかけて用件を伝え、相手の都合を聞きながら会う約束ができる。

場面

キャリアセンターに紹介された、興味のある会社で働く卒業生(初めて話す目上の社会人)に、仕事の話を聞かせてもらう約束をするために電話をかける場面です。教室では二人を背中合わせに座らせて顔が見えない状態を作り、留学生役には自分の空いている日時を書いたカード、社会人役には予定の入った手帳のカードを持たせます。

  • 留学生:お忙しいところ失礼いたします。〇〇大学3年の〇〇と申します。〇〇様でいらっしゃいますか。
  • 社会人:はい、そうです。
  • 留学生:キャリアセンターの方からご紹介いただきました。実は、お仕事のお話を聞かせていただけないかと思って、お電話したんですが……。
  • 社会人:ああ、聞いていますよ。いいですよ。
  • 留学生:ありがとうございます。〇〇様のご都合に合わせます。来週でしたら、平日の午後はいつでも大丈夫です。
  • 社会人:じゃあ、来週の水曜日の4時はどうですか。
  • 留学生:水曜日の4時ですね。会社の受付に伺えばよろしいでしょうか。
学習項目 1 〜ていただけないかと思って

意味・はたらき

「Vていただけないかと思って(お電話しました)」は、電話やメールの最初に、用件を直接のお願いではなく「〜と考えて連絡した」という理由の形で伝える言い方です。「〜ていただけないでしょうか」と直接頼むより一歩引いて、引き受けるかどうかを相手が決める余地を残すので、初めての人や目上の人への最初の一言に向いています。会話では「〜と思って……」と文を途中で止めて相手の返事を待つことが多く、改まると「〜と思いまして」、メールでは「〜と思い、ご連絡いたしました」になります。「〜かなと思って」(第7課)は友達どうしで使う、くだけた形です。

接続

Vて形+いただけないかと思って(お電話しました/ご連絡しました)、Vさせて+いただけないかと思って

形
お話を聞かせていただけないかと思って、お電話しました職場を見学させていただけないかと思いまして資料を送っていただけないかと思い、ご連絡いたしました(メール)

導入

  • 用件をいきなり頼まない教師が電話をかける動作で、まず「来週、会ってください」と言い、学生に「相手はどう感じますか」と聞く。次に「〇〇大学の〇〇と申します。お仕事のお話を聞かせていただけないかと思って、お電話したんですが……」と言い直し、最後を下げて止め、相手役の「はい、いいですよ」を待ってみせる。板書は「名前 → だれの紹介か → 〜ていただけないかと思って → 相手の返事を待つ」の順。

板書案

Vて + いただけないかと 思って(お電話しました)
名前 → 紹介者 → 用件(〜ていただけないかと思って)→ 間
お話を 聞かせて いただけないかと 思って……
〔改まると〕〜と思いまして 〔メール〕〜と思い、ご連絡いたしました
〔矢印〕だれの動作か:相手が話す → 聞かせていただく

場面と発話(自作)

  • キャリアセンターに紹介された卒業生に、初めて電話をかける。実は、会社でのお仕事についてお話を聞かせていただけないかと思って、お電話いたしました。
  • 興味のある会社の採用担当の人に、メールで見学をお願いする。一度、職場を見学させていただけないかと思い、ご連絡いたしました。
  • 大学の先輩に、先輩の会社の人を紹介してほしいと電話で頼む。先輩の会社の方をどなたかご紹介いただけないかと思って、お電話しました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「話を聞かせる・会う・職場を見学させる・資料を送る」のカードを引かせ、「〜ていただけないかと思って、お電話しました」の形にさせる。次に ST5 の電話のロールプレイで、名乗り→紹介者→この形での用件→相手の都合を聞く、までを続けて言わせ、相手役は「いつがいいですか」「その日はちょっと……」と返す。

  1. 口頭教師が用件のカードを出し、学習者が「〜ていただけないかと思って、お電話しました」にする。キューは「話を聞かせる」「職場を見学させる」「資料を送る」「一度会う」「先輩を紹介する」。次に同じ用件を、改まった電話の「〜と思いまして」、メールの「〜と思い、ご連絡いたしました」に言い換えさせる。
  2. ペア「背中合わせの電話」。留学生役は空いている日時を書いたカード、社会人役は予定の入った手帳カードを持ち、背中合わせに座る。名乗り→紹介者→用件→(間)→相手の都合を聞く→日時と場所の復唱、までを通す。社会人役はときどき「その日はちょっと……」と返し、留学生役は別の日を出す。役を交代する。
  3. 産出「アポイントの電話」。課のまとめで選んだ仕事の人に電話する設定で、教師が社会人役を演じ、予定外の返事(「今週は無理なんですが」「メールで送ってもらえますか」)も入れる。教師は、用件のあとで相手の返事を待つ間がとれているか、だれの動作に「ていただく」をつけているか、日時を復唱しているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*会っていただかないかと思って」と否定の形を作り間違える。ST4 と同じく「いただける→いただけない」の順で作らせる
  • 「お話を伺っていただけないかと思って」のように、自分がする動作に「ていただく」をつけてしまう。自分が聞くなら「お話を伺えないかと思って」「お話を聞かせていただけないかと思って」と、だれの動作かを矢印で確かめる
  • 用件を言ったあと、相手の返事を待たずに日時まで一気に話す。「と思って……」のあとで間をとり、相手の「はい」を聞いてから都合を聞く、と手の合図で練習する

既習の文型との違い

  • 〜かなと思って(第7課)「〜かなと思って」は「手伝おうかなと思って」のように、自分の考えを軽く言う友達どうしの形です。「〜ていただけないかと思って」は目上の人への用件の切り出しで、依頼を理由の形に包みます。目上の人に「お話を聞きたいかなと思って」と言うと、くだけて聞こえるうえ依頼にもなりません。
  • 〜ていただけないでしょうか(第17課)「〜ていただけないでしょうか」は相手に直接問いかける依頼で、答えを求めます。「〜ていただけないかと思って(お電話しました)」は連絡した理由を述べる形で、相手が自分から「いいですよ」と言える余地を残します。電話の最初は「かと思って」で切り出し、相手の反応を見てから具体的なことを「〜ていただけないでしょうか」で頼む、という順で教えるとよいでしょう。
  • 〜(さ)せていただけませんか(第8課)自分がしたいことを許してもらう依頼は「見学させていただけませんか」のように使役の形を使います。この課でも、話を聞くのは自分なので「お話を聞かせていただけないかと思って」と「聞かせて」になります。「お話を聞いていただけないかと思って」とすると相手が聞くことになってしまうので、だれの動作かを確かめさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 目上の人や初めての人に電話をかけるときに最初に言う表現電話は顔が見えないので、最初の数秒で「だれが・だれの紹介で・何の用で」を伝えることが大切です。最初に言う表現を順番どおりのカードにして並べ、カードを見ずに言えるまでくり返させてから、用件のロールプレイに入ります。例:突然のお電話失礼いたします/〇〇大学の〇〇と申します/〇〇様でいらっしゃいますか/〇〇の紹介でお電話いたしました/今、少しお時間よろしいでしょうか

語彙の扱い

この課の語は、仕事についての考え(やりがい・待遇・人間関係・安定)、就職活動の段階(説明会・エントリー・選考・内定)、パンフレットの漢語(応募資格・募集要項・適性検査)、メールと電話の改まった表現の4つのかたまりに分かれます。パンフレットの漢語は読んで意味がわかればよい語が多く、自分で言えるようにするのは、意見を言うための語とメール・電話の決まった表現です。就職活動の段階の語は流れの図に貼ったまま残しておき、3 の先輩の話や 5 の電話でも同じ図を見ながら使わせると、ばらばらの語がつながって残ります。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 就職活動(しゅうしょくかつどう) 会社などで働くために、説明会に行ったり応募したりする活動です。話し言葉では「就活」と短く言います。 〜を始める・〜中・〜にあたって
    先輩に、準備をいつ始めたかを聞く。
    就職活動は、いつごろから始めましたか。
  • やりがい(やりがい) その仕事をしていて、意味がある・してよかったと感じられることです。 〜がある・〜を感じる・〜のある仕事
    仕事選びの話し合いで、自分の考えを言う。
    給料よりも、やりがいを感じられる仕事を選びたいです。
  • 人間関係(にんげんかんけい) 職場や学校で、人と人とがどんなふうにつきあっているかということです。 職場の〜・〜がいい・〜に悩む
    アルバイトの経験から、大事だと思うことを話す。
    働いてはじめて、職場の人間関係がどれほど大切かわかりました。
  • 条件(じょうけん) 何かを決めたり、何かができたりするために必要なことです。 〜がそろう・応募の〜・〜をつける
    会社を選ぶときに大事にしたいことを言う。
    家から通えることが、私にとっていちばん大事な条件です。
  • 応募(おうぼ) 募集に対して、参加したい・採用してほしいと申し込むことです。 〜する・〜資格・〜の締め切り
    パンフレットで、応募できるかどうかを確かめる。
    この会社には、学部を問わず応募できるそうです。
  • 説明会(せつめいかい) 会社や学校が、自分たちのことを知ってもらうために開く集まりです。 会社〜・合同企業〜・〜に参加する
    友達を説明会に誘う。
    来週の合同企業説明会、一緒に行かない?
  • 内定(ないてい) 会社が、正式に入社する前に「この人を採用します」と決めることです。 〜をもらう・〜が出る・〜者
    先輩が、就職活動の結果を話す。
    4年生の6月に、第一志望の会社から内定が出ました。
  • 締め切り(しめきり) 書類などを出さなければならない最後の日や時間です。 〜に間に合う・〜を守る・〜が近い
    先生へのメールで、いつまでに必要かを書く。
    締め切りが来週の金曜日なので、それまでに見ていただけないでしょうか。
  • 添付(てんぷ) メールに、書類や写真などのファイルをつけて送ることです。 ファイルを〜する・〜ファイル・〜資料
    依頼メールの最後に書く。
    エントリーシートを添付いたしましたので、ご確認いただけますと幸いです。
  • 都合(つごう) 予定や事情から見て、それができるかどうかということです。相手の都合は「ご都合」と言います。 〜がいい・〜が悪い・ご〜に合わせる
    電話で、会う日を相手に決めてもらう。
    〇〇様のご都合のよい日を教えていただけないでしょうか。
  • 伺う(うかがう) 「行く・訪ねる」「聞く」の謙譲語で、目上の人のところへ行くときや、話を聞くときに使います。 会社に〜・お話を〜・〜ってもよろしいでしょうか
    電話の最後に、行く場所を確かめる。
    では、水曜日の4時に1階の受付に伺います。
  • 恐縮(きょうしゅく) 相手に手間をかけて申し訳ない、ありがたいと感じる気持ちを、改まって言うことばです。 お忙しいところ〜ですが・大変〜です
    依頼メールで、頼む前に一言入れる。
    お忙しいところ恐縮ですが、一度目を通していただけないでしょうか。

宿題と次のコマ

宿題は、課のまとめで選んだ仕事について、その仕事をしている人に話を聞かせてもらうお願いのメールを、件名から結びまで書いてくること(「お忙しいところ」「〜ていただけないかと思い」「〜ていただけないでしょうか」のうち2つ以上を入れる)。次のコマの最初にペアで読み合い、相手のメールで足りない情報を一つ指摘してから、第18課「地球に生きる」の1「耳でキャッチ」に入ります(働き方の話から、身近な暮らしと環境の問題に話題を広げ、ニュースを聞き取ります)。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第17課「働くということ」は何コマで終わりますか?

    90分なら4コマが目安です。1コマ目に導入と1(意見の話し合い)、2コマ目に2(パンフレット)と3の聞き取りの準備、3コマ目に3の残りと4(依頼メール)、4コマ目にメールの仕上げ・5(電話)・課のまとめを置きます。メールの清書を宿題に回せば、4コマ目に電話のロールプレイの時間を十分に取れます。

  • 「〜にすぎない」と「〜だけだ」はどう教え分ければいいですか?

    「だけだ」は事実の範囲を言う中立の形、「にすぎない」は「その程度で大したことはない」と話し手が評価を下げる硬い形、と分けます。導入では同じ内容の二文を並べ、どちらが自分の意見を強く押し出しているかを聞くとわかりやすくなります。会話では「だけだよ」、意見の文やレポートでは「にすぎない」と、使う場面も一緒に示します。

  • 「〜以上(は)」と「〜からには」の違いは何ですか?

    意味はほぼ同じで、どちらも前に変えられない事実を置き、後ろに決意・義務・当然の判断が来ます。違いは硬さで、「からには」は会話でも使いやすく、「以上(は)」は少し硬く規則や説明文にも向き、「上は」はさらに改まった言い方です。後ろにただの出来事を置く誤りはどちらにも共通なので、後ろの部分に色をつけて確かめます。

  • 「〜ていただけないでしょうか」と「〜ていただけませんか」は、どちらを教えればいいですか?

    両方を「丁寧さのはしご」の上の2段として並べて教えます。「いただけませんか」は口頭の丁寧な依頼、「いただけないでしょうか」は相手に断る余地を多く残す形で、メールや手間の大きい頼みごとに向きます。どの依頼にも最上段を使うと大げさになるので、相手と頼みの大きさのカードで段を選ばせる練習を入れます。

  • 就職活動をする予定のない学習者には、この課をどう扱えばいいですか?

    「働くこと」の意見の話し合いはアルバイトや国での仕事の経験から話せるので、そのまま扱えます。パンフレットと先輩の話は、進学の説明会や大学院の先輩の話に置き換えても同じ表現が使えます。目上の人への依頼メールと初めての人への電話は進路にかかわらず日本で必要になる場面なので、頼む相手と用件だけを学習者に合わせて変えます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。