日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第9課「言葉を楽しむ」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること5つ(見つけた!・耳でキャッチ・こんなときどうする?・伝えてみよう・耳でキャッチ)

言葉そのものを話題にして、日本語の表現のおもしろさを味わい、自分の国の言葉と比べたり、自分の経験を話したりできるようになる課です。1 で詩の感想文を読み、2 で数字の語呂合わせの説明を聞き、3 で気持ちを表す擬音語・擬態語を友達とのやり取りで使い、4 で日本語を使った楽しさや苦労を発表し、5 で生活の中で耳にした日本語の疑問への答えを聞きます。読む素材の硬い文型(〜がたい・〜とともに・〜をもとに)と、友達どうしのくだけた文型(〜でしょう?・〜っけ・〜っこない・〜もん)が同じ課に並ぶので、どの文型がどの場面・どの相手に合うかを毎回はっきりさせるのが教えるときの芯です。第8課で気持ちを伝える言い方を広げたのを受けて、ここでは言葉そのものを楽しむ側に話題を移します。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目14時間90分×5コマ場面5

この課のねらい(Can-do)

  • 短い詩とその感想文を読んで、詩に何が書かれているか、書き手がどう受け止めたかを読み取れる
  • 数字の語呂合わせのような言葉遊びの説明を聞いて、なぜそう読めるのかがわかる
  • 気持ちを表す擬音語・擬態語を知り、友達との会話で自分の気持ちを生き生きと言える
  • 日本語を使っていてうれしかったことや失敗しかけたことを、経験にそって話せる
  • 生活の中で聞いた日本語について質問し、その答えの説明を聞いて理解できる

進め方と時間配分

目安は 90分×5コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入15分教師が「おなかがぺこぺこ」「わくわくする」のような語を言ってみせ、学習者の国にも似た言い方があるかを聞く。第8課の気持ちの言い方とつなぎ、この課は「言葉そのもの」が話題だと伝える
1 見つけた!90分自作の短い詩と感想文を配り、まず詩だけを読んで印象を言わせる → 感想文を読む →「〜をもとに」「〜ように」「〜とともに」「〜がたい」を感想文の中で確かめる → 自分の好きな歌や詩について一言感想を書く
2 耳でキャッチ80分数字の読み方(し・よ・よん、く・きゅう など)を先に確かめてから、語呂合わせの説明を聞く →「〜でしょう?」「〜っけ」「〜わけだ」を聞き取る → 学習者の国の数字の語呂合わせを日本語で説明し合う
3 こんなときどうする?75分気持ちの擬態語(どきどき・いらいら・ほっと など)を絵カードで導入 → 友達どうしのやり取りで「〜っこない」「〜もん」を使う → 自分の国の似た言い方と比べる
4 伝えてみよう90分日本語で通じた・通じなかった経験を思い出させる →「〜ほど/〜くらい」「〜ところだった」「〜てたまらない」で経験のメモを作る → 2分の発表と質疑
5 耳でキャッチ70分学習者が生活の中で聞いて意味がわからなかった言い方を集める → 日本人が答える説明を聞く →「〜わけではない」「〜くらい」を聞き取る → 集めた言い方をクラスで説明し合う
課のまとめ30分「日本語のおもしろい表現」を1つ選び、意味・使う場面・自分の国の似た言い方を3〜4文で紹介する。聞き手は「〜っけ?」「〜わけですね」で確かめながら聞く

1 見つけた!

できること短い詩と、その詩について書かれた感想文を読んで、詩の内容と書き手の受け止め方を読み取れる。

場面

教師が自作した4行ほどの短い詩と、それを読んだ人の感想文(200字ほど)を用意します。最初に詩だけを配って学習者に自由に印象を言わせ、そのあとで感想文を配り、「感想文の書き手はどこに心を動かされたか」を探しながら読ませます。

  • 詩:ことばは 川のように 流れていく
  • 詩:祖母の口ぐせも いつか 海に着く
  • 感想文:この詩は、作者が祖母との思い出をもとにして書いたものだそうだ。
  • 感想文:川が流れていくように、言葉も時代とともに少しずつ変わっていく、と詩は語っている。
  • 感想文:短い詩なのに、読み終えたあとの静かな気持ちは、言葉にしがたい。
  • 感想文:特に最後の一行が心に残った。祖母の声が聞こえてくるようだ。
学習項目 1 〜がたい

意味・はたらき

「そうすることが、気持ちの上でとても難しい・ほとんどできない」という意味で、信じる・理解する・忘れる・許す・言葉にするのような、心の動きにかかわる動詞と結びつきやすい形です。似た形の「Vにくい」は「読みにくい字」「歩きにくい道」のように物理的な難しさにも広く使い、「〜づらい」は話し手が感じる負担やつらさに重点があります。「〜がたい」はそれより硬い書き言葉で、感想文や評論のように、心を動かされた度合いを改まって言うときに使います。

接続

Vます形の語幹(V連用形)+がたい(い形容詞と同じように活用する)

形
信じがたい忘れがたい思い出言葉にしがたい理解しがたい

導入

  • 「にくい」との言い換えを比べる板書に「この字は読みにくい」「あの日のことは忘れがたい」の2文を並べ、「この字は読みがたい」と言えるかを学習者に考えさせる。「がたい」は心の中で受け入れたり手放したりすることが難しいときの言い方で、字や道具の使いにくさには使わない、と線を引く。板書は「Vます形の語幹+がたい」と、結びつきやすい動詞(信じる・忘れる・理解する・許す)の一覧にする。

板書案

Vます +〔赤〕がたい (信じます → 信じがたい)
〔青〕心の動きの動詞:信じる・理解する・許す・忘れる・言葉にする
あの日の夕焼けは、言葉にしがたい。
〔比べる〕左に「読みにくい字(物・条件)」、右に「信じがたい話(気持ち)」と分けて書く
〔下に小さく〕書き言葉。会話では「信じられない」

場面と発話(自作)

  • 映画の感想文に、強く心に残った場面のことを書く。主人公が最後に一人で歌う場面は、忘れがたい。
  • ニュースで聞いた出来事について、意見文を書く。子どもを狙った犯罪は、どんな理由があっても許しがたい。
  • 旅行先で見た景色の美しさを、ブログに書く。山の上から見た朝日の美しさは、言葉にしがたいものだった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「信じる」「忘れる」「理解する」などの動詞カードを出し、「〜がたい」の形にして短い感想の文を言わせる。そのあと、1 の素材のような短い詩や歌詞を一つ選ばせ、「〜は忘れがたい」「〜は言葉にしがたい」を使って感想を2文書かせる。

  1. 口頭教師が動詞カード(信じる・理解する・許す・忘れる・想像する)を見せ、全体で「〜がたい」に変えさせる。次に教師が状況を一言で言い(「10年前の約束を守り続けた友達」「何も言わずに帰った同僚」「子どもをねらった犯罪」)、個人に「〜は〜がたい」で評価を言わせる。最後に「この字は読み__」「あの行動は理解し__」のように「にくい」と「がたい」を選ぶ問いを口頭でまぜる。
  2. ペアA は自作のニュースの見出しカード(「80歳で初めてのマラソンを完走」「駅に忘れた財布が3年後に戻る」など)を読み上げ、B が「〜がたい」を使って一言感想を言う。A は B の使った動詞が心の動きの語になっているかを確かめ、合っていれば次のカードへ進む。4枚で役を交替する。
  3. 産出一行レビュー。最近見た映画・読んだ本・聞いた歌を一つ選び、「〜は〜がたい」を一つ入れた2〜3文の感想を短冊に書いて教室に貼り出す。教師は辞書形への接続(*信じるがたい)と、物の使いにくさに使っていないかを見て直し、よい例を2つ読み上げて共有する。

つまずきと手当て

  • 「*信じるがたい」「*忘れるがたい」と辞書形につける。「ます」を取った形につけることを、「信じます→信じがたい」の変形で毎回確かめる
  • 「このペンは書きがたい」「この道は歩きがたい」のように、物や道具の使いにくさに使ってしまう。こうした場合は「書きにくい」「歩きにくい」が自然だと、intro の2文で比べ直す
  • 友達との会話で「その話、信じがたいね」と使い、硬すぎる印象になる。会話では「信じられない」がふつうで、「がたい」は書くときの言い方だと伝える

既習の文型との違い

  • Vにくいです(初中級 第2課)「Vにくい」は字が小さくて読みにくい、道が狭くて歩きにくいのように、物や条件のせいでしにくいことに広く使え、会話でもふつうに使います。「〜がたい」は気持ちの上でそうできないことに限られ、書き言葉です。「このペンは書きがたい」と言う学習者には、主語が物なら「にくい」と戻させます。
  • 〜づらい(第11課)第11課の「〜づらい」は、話し手が感じる負担やつらさに重点があり(言いづらい・座りづらい)、会話で使えます。この課では「がたい=書く・改まる」と一言だけ押さえ、練習は「にくい」との対比に絞ると混乱しません。
関連する文型
学習項目 2 〜ように(同様)

意味・はたらき

「前に言ったこと・だれかが示したこと・よく知られていることと同じように」という意味で、文の初めに置いて、これから言う内容がそれと一致することを示します。「先ほど述べたように」「グラフが示すように」「ご存じのように」のように、説明文や発表で話の筋をつなぐのによく使います。感想文では「詩が語っているように」「タイトルが表しているように」と、作品の中の根拠を示してから自分の読みを述べるのに使えます。目的を表す「〜ように」(聞こえるように大きな声で話す)や、たとえを表す「Nのように」とは別の使い方です。

接続

V普通形(多くはタ形)+ように/Nの+ように

形
先ほど述べたようにグラフが示しているようにご存じのように前回の授業のように

導入

  • 発表の初めの一言から入る教師が簡単な表(例:クラスで好きな季節の人数)を黒板に貼り、「この表が示しているように、春が好きな人がいちばん多いです」と言ってみせる。そのあと「先週話したように」「みなさんも知っているように」と同じ形をいくつか続け、「〜ように」のあとに来る内容は、前のものと同じだという点を板書で矢印にして示す。

板書案

〔赤〕V(多くはタ形)+ように、〜 / Nの +ように、〜
先ほど述べたように、この言葉は若い世代から広まった。
〔青〕前に言ったこと・示されたこと = これから言うこと(等号で結ぶ)
〔比べる〕聞こえるように話す(目的)/先ほど述べたように(同じ)
よく使う形:述べたように・示すように・ご存じのように・〜にあるように

場面と発話(自作)

  • ゼミの発表で、前に説明したことを踏まえて結論を言う。先ほど述べたように、この言葉は若い世代から広がりました。
  • 詩の感想文で、題名を手がかりに自分の読みを書く。題名が表しているように、この詩のテーマは別れだと思う。
  • アルバイト先の朝礼で、店長が連絡をする。昨日お知らせしたように、今日から営業時間が変わります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「先生が言った」「表が示している」「みなさんが知っている」などのカードを出し、「〜ように、…」の前半を作らせてから後半を続けさせる。そのあと 1 の感想文から「〜ように」の文を探し、何と何が同じだと言っているのかを確かめる。

  1. 口頭教師がグラフや表の絵(クラスの好きな季節・朝ごはんの種類)を見せ、「グラフが示すように、」の前半を全体で言わせ、後半の内容を個人に言わせる。次にキューを「先週話しました」「表に書いてあります」「みなさん知っています」と変え、「先週話したように」「表にあるように」「ご存じのように」に言い換えさせる。
  2. ペアA と B に別々の自作の調査表を持たせ、互いに見せずに「私の表が示すように、〜」で内容を一つずつ伝え合う。聞いた側はメモを取り、最後に表を見せ合ってメモと合っているかを確かめる。2回ごとに表を交換する。
  3. 産出根拠つき感想リレー。1 の自作の詩を読み、「〜が語っているように」「題名が表しているように」で詩の中の根拠を一つ挙げてから、自分の読みを1文足して次の人に回す。教師は根拠の部分が詩の中の語になっているか、「Nの」の落ちがないかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*この詩ように」と名詞のあとの「の」を落とす。「Nの+ように」と板書の形を指して直す
  • 「聞こえるように話す」の目的の「ように」と区別がつかず、意味を取り違える。「〜ように」のあとに「同じだ」と言い換えられるかどうかで見分けさせる
  • 前に話したことを指すのに「先ほど述べるように」と言い、時がずれる。すでに言ったことを指すときはタ形の「述べたように」が自然だと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜のような/〜のように(例示)(第6課)第6課の「Nのように」は「富士山のように高い山」のように、例やたとえで後ろの様子を説明します。この課の「〜ように」は文の頭に置き、前に言ったことと後ろの内容が同じだと示します。後ろに「、」で文が一つ続き、「〜したのと同じく」と言い換えられれば同様の「ように」です。
  • Vるように、〜/Vないように、〜(初中級 第9課)初中級の「ように」は「遅れないように早く出る」のように目的を表し、前には話し手がめざす状態(無意志動詞・可能形・ない形)が来ます。同様の「ように」は前が「述べた・示す・知っている」のような伝える・知る動詞になりやすく、目的の読みでは意味が通りません。「先生が言ったように練習する」は「言われたとおりに」の意味だと言い換えで確かめます。
関連する文型
学習項目 3 〜とともに(変化)

意味・はたらき

「一方が変わるのに合わせて、もう一方も変わる」という意味で、時代・年齢・技術の進歩など、時間とともに進む変化を表すことばと結びつきます。「時代とともに言葉の意味は変わる」のように、後ろにも変化の内容が来ます。似た形の「〜につれて」「〜にしたがって」も同じような変化を表しますが、「〜とともに」はより硬い書き言葉で、評論や感想文に向いています。「友達とともに」(一緒に)や「卒業とともに帰国した」(同時に)の使い方もあるので、この課では「変化」の意味に絞って練習します。

接続

N+とともに/V辞書形+とともに

形
時代とともに年をとるとともに町が大きくなるとともに技術の進歩とともに

導入

  • 2本の矢印で変化を見せる板書に左から右へ「時代」の矢印を描き、その下に「言葉の意味」の矢印を並べて、上の矢印が進むと下の矢印も動くことを示す。教師が「時代とともに、言葉の意味は少しずつ変わります」と言い、学習者に「スマホの普及」「年齢」など別の矢印を出させて文を作らせる。

板書案

〔赤〕N +とともに/V辞書形 +とともに、〔青〕〜変わる・増える・減る
時代とともに、言葉の意味は少しずつ変わる。
〔矢印〕右上がりの矢印を2本並べる(前の変化 ↗・後ろの変化 ↗)
〔比べる〕〜につれて(会話でも)/〜とともに(書き言葉)
×後ろに「〜しよう」「〜してください」

場面と発話(自作)

  • 言葉についてのレポートで、若者言葉の変化を書く。時代とともに、よく使われる若者言葉も入れ替わっていく。
  • 祖父母と暮らした経験について、作文に書く。年をとるとともに、祖父の口ぐせが少し変わっていった。
  • ふるさとの町の様子をスピーチで紹介する。町に人が増えるとともに、店の数もどんどん多くなりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「時代」「年齢」「インターネットの普及」などの前半カードと「変わる」「増える」「減る」などの後半カードを出し、「〜とともに、〜」の文を作らせる。そのあと自分の国の言葉で時代とともに変わったものを一つ選び、2〜3文で書かせる。

  1. 口頭教師が変化の絵カード(スマートフォンの広がり・年齢・町の人口・気温)を見せ、「Nとともに、」の前半を全体で言わせ、後半の変化を個人に言わせる(「年齢とともに、好きな食べ物が変わった」)。最後に教師が「〜につれて」の文を言い、学習者に「〜とともに」へ言い換えさせて、書き言葉らしさを確かめる。
  2. ペアA は「昔と今」の比べるカード(手紙とメール、黒電話とスマートフォンなど)を持ち、B に「〜とともに、何が変わりましたか」と聞く。B は「〜とともに〜」で答え、A は後ろが変化の文になっているかを確かめる。3枚で交替する。
  3. 産出言葉の移り変わりメモ。自分の国の言葉で、時代とともに意味や使い方が変わった語を一つ選び、「〜とともに」を使って3文(もとの意味・変化のきっかけ・今の使い方)で書く。教師は「*時代のとともに」の「の」と、後ろに意志や依頼が来ていないかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*時代のとともに」と名詞のあとに「の」を入れる。「Nとともに」は「の」なしだと「〜ように」と並べて確かめる
  • 後ろに「〜しよう」「〜してください」のような意志や依頼を続け、文がまとまらなくなる。後ろも「変わる・増える」のような変化の文にする、と板書の下の矢印で示す
  • 友達との会話で使って硬く聞こえる。会話では「〜につれて」や「〜と、だんだん〜」で言えばよいと伝える

既習の文型との違い

  • 〜につれて(第5課)意味はほぼ同じで、どちらも前の変化に合わせて後ろも変わることを言います。「〜につれて」は会話でも使え、「〜とともに」は評論・感想文・ニュースのような書き言葉に寄ります。友達との会話で「年とともに〜」と言う学習者には、「年をとるにつれて」と言い換えを示します。
  • (〜ば)〜ほど(第3課)「練習すればするほど上手になる」は、前の程度が上がるほど後ろも上がるという比例を言います。「〜とともに」は時間の流れにそった変化で、「すればするほど」のような程度のくり返しは作りません。同じ絵で両方を言わせ、どちらが時間、どちらが程度に目を向けているかを確かめます。
関連する文型
学習項目 4 〜をもとに(して)/〜をもとにした

意味・はたらき

「〜を材料・手がかりにして、新しいものを作る・考える」という意味です。「経験をもとにして小説を書く」「アンケートの結果をもとに計画を立てる」のように、前のものから何か新しいものが生まれる関係を表します。名詞を説明するときは「〜をもとにしたN」になります。似た形の「〜に基づいて」は、法律・規則などをよりどころにして、それから外れないように行うことに重点があり、「法律に基づいて処分する」とは言っても「法律をもとに処分する」はあまり言いません。データや調査の結果なら「結果をもとに決める」も自然です。

接続

N+をもとに(して)、〜/N1+をもとにした+N2

形
思い出をもとにして書いた詩実話をもとにした映画調査の結果をもとに昔話をもとに作ったアニメ

導入

  • 「もと」と「できたもの」を線でつなぐ黒板の左に「おばあさんから聞いた話」「本当にあった事件」、右に「絵本」「映画」と書き、線でつなぎながら「おばあさんから聞いた話をもとにして、絵本を作りました」と言う。左が材料、右がそこから新しく作ったものだと示し、名詞につなぐ「実話をもとにした映画」の形も同じ図で書き足す。

板書案

〔赤〕N +をもとに(して)、〜作る・書く・考える
〔赤〕N1 +をもとにした +N2
祖母の話をもとにして、短い物語を書いた。 / 実話をもとにした映画
〔矢印〕材料(N)→ 新しいもの (もと=材料・手がかり)
〔比べる〕〜がきっかけで(始まりの出来事)/〜をもとに(中身の材料)

場面と発話(自作)

  • 好きな映画をクラスで紹介する。この映画は、実際にあった出来事をもとにして作られたそうです。
  • サークルで、旅行の行き先を決める話し合いをする。みんなのアンケートの結果をもとに、行き先を決めましょう。
  • 詩の感想文で、作者の経歴にふれる。作者は子どものころの思い出をもとに、この詩を書いたという。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「昔話」「本当の話」「自分の経験」などの材料カードと「映画」「歌」「小説」などの作品カードを出し、「〜をもとにした〜」「〜をもとにして〜を作った」の2つの形で言わせる。そのあと、自分の国で何かをもとにして作られた作品を一つ紹介させる。

  1. 口頭教師が「材料→作品」の組の絵(アンケート→計画、日記→小説、昔話→アニメ、写真→絵)を見せ、全体で「〜をもとにして〜を作った」と言わせる。次に同じ組を「〜をもとにした〜」の名詞の形にし、教師が「これは何ですか」と聞いて個人に「日記をもとにした小説です」と答えさせる。
  2. ペアA は作品名だけのカード(自作の架空の映画・歌・料理)、B はその「もと」が書かれたカードを持つ。A が「この映画は何をもとにしたものですか」と聞き、B が「〜をもとにした映画です」と答える。A は「どうしてそれをもとにしたと思いますか」と一つ質問を足す。4枚で交替する。
  3. 産出もとネタ紹介。好きな作品(映画・歌・料理・ゲーム)が何をもとに作られているかを調べるか想像し、「〜は〜をもとにした〜で、〜」の形で30秒で紹介する。教師は助詞「を」の取り違えと、「〜をもとにした」のあとの名詞の抜けを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 「*経験にもとにして」と助詞を取り違える。「を」をとることを、「〜を材料にして」と言い換えて確かめる
  • 法律や規則をよりどころにして罰する・処分する場面で「法律をもとに罰する」と言い、不自然になる。法律・規則による処分には「〜に基づいて」が合い、データや調査の結果をもとに決めるのは自然だと、二つを並べて比べる
  • 「〜をもとにした」のあとに名詞を入れ忘れ、「この映画は実話をもとにしたです」と言う。「〜をもとにした映画です」のように名詞が要る、と形の板書で示す

既習の文型との違い

  • 〜がきっかけで(第1課)「〜がきっかけで」は何かを始めた出来事を言い、後ろには始めたこと・変わったことが来ます。「〜をもとに」は前のものが材料として作品や計画の中身に入っています。「旅行をもとに小説を書いた」は旅の体験が中身になったこと、「旅行がきっかけで小説を書いた」は書き始めた理由だと、並べて見せます。
  • 〜に基づいて/〜に基づく/〜に基づいた(第20課)第20課の「〜に基づいて」は、法律・規則・データを判断のよりどころにして、それから外れないように行うことを言います。「〜をもとに」は材料から新しいものを作る側に重点があります。この課では「作る・書く・考える」の動詞と組ませ、「判断する・処分する」は第20課で扱うと区切ります。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 作品の感想を述べるときの表現感想文では「よかった」「おもしろかった」だけで終わらず、どこが・どう心に残ったかを言う表現を使います。読む段階では感想文の中からこうした表現に線を引かせ、書く段階では自分の好きな歌や詩について2つ以上使わせます。例:「最後の一行が心に残った」「情景が目に浮かぶ」「作者の気持ちに共感した」「読むたびに新しい発見がある」「〜という言葉が印象的だった」「胸がいっぱいになった」

2 耳でキャッチ

できること数字の語呂合わせについての説明を聞いて、どう読めばその言葉になるのかがわかる。

場面

日本人の先輩が留学生に、電話番号などに使われる数字の語呂合わせを説明する場面です。教師が先輩役の説明を録音するか読み上げ、黒板には数字だけ(4649・1182)を書いておきます。聞く前に数字の読み方(4=し・よ・よん、9=く・きゅう、8=はち・は など)を確かめておくと、説明の中心に集中できます。

  • 先輩:日本の電話番号には、覚えやすい語呂合わせがよくあるでしょう?
  • 留学生:あ、聞いたことがあります。4649で「よろしく」でしたっけ。
  • 先輩:そうそう。4は「よ」、6は「ろく」の「ろ」、4は「し」、9は「く」と読むだろう?
  • 先輩:歯医者さんが1182という番号を選ぶことがあるのも、「いい歯に」と読めるからなんだ。
  • 留学生:なるほど。それで番号を一度見ただけで覚えられるというわけですね。
  • 先輩:そういうこと。数字の読み方がいくつもある日本語ならではの遊びだね。
学習項目 1 〜でしょう?/〜だろう?(確認)

意味・はたらき

相手もそのことを知っているはずだと思って、上がり調子で言って同意を求め、話を先に進める言い方です。「4は『よ』とも読むでしょう?」のように、説明の途中で相手の知っていることを確かめてから次に進むのに使います。文末を下げて言う推量の「〜でしょう」(明日は雨でしょう)とは調子で区別されます。「〜ね」も同意を求めますが、「〜でしょう?」はもっと強く「知っているよね」と押す感じがあり、目上の人には使いにくい言い方です。くだけた会話では「でしょ?」、男性の友達どうしでは「だろう?」「だろ?」もよく使います。

接続

V・イA普通形+でしょう?/だろう?、ナA・N(「だ」を取る)+でしょう?/だろう?

形
知ってるでしょう?これ、便利でしょう?前にも話しただろう?あの店、安いでしょ?

導入

  • 調子の上げ下げを聞き比べる教師が「明日は雨でしょう」を下げ調子で、「ほら、雨でしょう?」を上げ調子で言い、どちらが天気予報で、どちらが相手に確かめているかを当てさせる。板書では文末に下向きと上向きの矢印をつけて2行に分け、上向きのほうが「相手も知っているよね」という確認だと示す。

板書案

〔赤〕普通形(ナA・Nは「だ」を取る)+でしょう?↗
4は「よ」とも読むでしょう?↗ → だから 4649 は「よろしく」
〔矢印〕文末の上がり(↗)=確認/下がり(↘)=推量 ← 2本並べて書く
〔青〕友達:〜でしょ?/〜だろ?  目上:〜ですよね

場面と発話(自作)

  • 友達に、駅前の新しい店のことを話す。駅の前に新しいパン屋ができたでしょう? あそこ、すごくおいしいよ。
  • ルームメートに、前に話したことを思い出させる。明日は早く出るって言っただろう? 静かに起きてね。
  • 後輩に、漢字の読み方を説明する。「生」って、「せい」とも「なま」とも読むでしょう? それと同じなんだよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「新しいカフェ」「先週の授業」「あのドラマ」などのカードを出し、上がり調子の「〜でしょう?」で話を切り出し、そのあとに一言続けさせる。そのあと 2 の素材のように、自分の国の言葉遊びを友達に説明する練習で、途中に「〜でしょう?」を2回以上はさませる。

  1. 口頭教師が同じ文(「この店、安いでしょう」)を上がり調子と下がり調子で言い、学習者に確認なら手を上げさせて聞き分けさせる。次にキュー(「この店、安い」「駅から近い」「あの人、留学生」「ここ、静か」)を言い、全体で上がり調子の「〜でしょう?」を言わせ、個人にナ形容詞・名詞の「だ」の抜き方を確かめさせる。
  2. ペアA は「説明したいこと」カード(数字の読み方、駅の乗り換え、学校の近くの安い店など)を持ち、B に説明する。途中で必ず1回「〜でしょう?」で B の知っていることを確かめ、B は「うん」か「えっ、そうなの?」で答える。B が知らなかったときは A が説明を足す。1枚ごとに交替する。
  3. 産出ミニ解説コーナー。自分の国の言葉遊びや数字の言い方を、友達に1分で説明する。「〜でしょう?」で相手の知識を1〜2回確かめてから先へ進める。教師は文末の上がり調子と、聞き手を目上役に変えたときに「〜ですよね」へ切り替えられるかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*静かだでしょう?」「*学生だでしょう?」と「だ」を残す。ナ形容詞と名詞は「だ」を取ってつなぐと、「静かだ→静かでしょう?」の変形で確かめる
  • 文末を下げてしまい、確認ではなく推量に聞こえる。intro の矢印を指しながら、上がり調子で言う練習をくり返す
  • 先生やアルバイト先の上司に「知ってるでしょう?」と言い、押しつけがましく聞こえる。目上には「ご存じですよね」「〜ですよね」のほうがやわらかい、と言い換えを示す

既習の文型との違い

  • 〜でしょう/〜だろう(第1課)第1課の天気予報の「〜でしょう」は話し手の推量で、文末を下げ、聞き手に答えを求めません。この課の「〜でしょう?」は相手も知っているはずのことを上がり調子で確かめ、うなずきを待ちます。文字では同じなので、板書では必ず↗と↘を書き分け、音で区別させます。
  • 〜よね(第1課)「〜よね」も相手に同意を求めますが、話し手が自分の記憶や考えを確かめる感じがやわらかく、目上にも「〜ですよね」で使えます。「〜でしょう?」は「知っているはずだ」と相手に押す感じが強く、目上には向きません。上司役に「でしょう?」を使った学習者には「〜ですよね」に言い換えさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜っけ

意味・はたらき

前に知っていたはずなのに思い出せないこと、はっきり覚えていないことを、相手に確かめたり、自分に問いかけたりする話し言葉です。「会議、何時だっけ」「あの人の名前、何だったっけ」のように使います。初めて聞くことを質問するときには使いません。「昔はよくこの公園で遊んだっけ」のように、昔のことをなつかしく思い出すときにも使います。丁寧に言うときは「〜でしたっけ」「〜ましたっけ」になります。

接続

Nだ・ナAだ/V・イAのタ形/〜んだ+っけ(丁寧には「〜でしたっけ」「Vましたっけ」)

形
何時だっけどこで会ったっけ明日、休みだったっけお名前、何でしたっけ

導入

  • 教師がわざと思い出せないふりをする教師が首をかしげながら「えっと、今日の宿題、何ページだっけ」と学習者に聞き、答えてもらう。続けて「あ、そうだった。〇〇さんの誕生日、何月だったっけ」と聞き、知っていたことを思い出そうとしているときの言い方だと示す。板書は「〜だっけ」「〜たっけ」「〜でしたっけ(丁寧)」の3行にする。

板書案

〔赤〕Nだ・ナAだ +っけ / V・イAのタ形 +っけ / 〜んだ +っけ
4649 は「よろしく」でしたっけ?
〔青〕前に知っていた → 思い出せない → 確かめる(記憶の雲の絵)
丁寧:〜でしたっけ/〜ましたっけ  友達:〜だっけ
×初めて聞くこと

場面と発話(自作)

  • 友達と待ち合わせの時間を確かめる。明日って、何時に駅だっけ。
  • アルバイト先で、前に一度聞いた先輩の名前を思い出せない。すみません、お名前、何でしたっけ。
  • 古いアルバムを見ながら、子どものころを思い出す。この川で、よく弟と魚をとったっけ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「待ち合わせの場所」「レポートの締め切り」「先輩の名前」などのカードを出し、「〜っけ」で聞かせ、もう一人に答えさせる。目上が相手のカードのときは「〜でしたっけ」に切り替えさせる。そのあと 2 のやり取りのように、語呂合わせの読み方を思い出しながら確かめ合う。

  1. 口頭教師がわざと思い出せないふりをして「あの映画の名前、何だっけ」と言い、場面をつかませる。次にキュー(会議の時間・先生の名前・宿題のページ・集合場所)を見せ、全体で「〜は何時だっけ」「〜はどこだったっけ」と言わせる。そのあと相手カード(友達/先生)を見せ、個人に「〜だっけ」と「〜でしたっけ」を言い分けさせる。
  2. ペアA は先週のクラスの予定表(自作)を持ち、B は持たない。B は「前に聞いたけれど忘れた」役で、「〜は何曜日だったっけ」と A に確かめ、A は表を見て答える。3問で交替し、2回目は A を先生役にして B に丁寧な形で聞かせる。
  3. 産出思い出しクイズ。グループで前の課までに習った言葉や出来事を、「〜って何だったっけ」「〜はいつだったっけ」で一人ずつ問いかけ、ほかの人が答える。教師は辞書形への直接の接続(「あるっけ」より「あるんだっけ」)と、先生役への「〜でしたっけ」を見て直す。

つまずきと手当て

  • 「明日、会議があるっけ」のように動詞の辞書形に直接つける。くだけた会話では聞く形だが、今のことや先のことは「あるんだっけ」「ありましたっけ」の形にすると自然だと示す
  • 初めて聞くことに「〜っけ」を使い、「前に言ったかな?」と相手を戸惑わせる。一度知っていたことを思い出すときの言い方だと、intro の場面に戻って確かめる
  • 先生に「〜だっけ」と言ってしまう。目上には「〜でしたっけ」「〜ましたっけ」と、カードで相手を変えて練習する

既習の文型との違い

  • 〜よね(第1課)「〜よね」は自分の記憶にある程度自信があって、相手に同意を求めます(会議は3時だよね)。「〜っけ」は記憶があいまいで、相手に教えてもらおうとする気持ちが強い言い方です。同じ予定表で「3時だよね」「何時だっけ」の両方を言わせ、自信の度合いで使い分けさせます。
  • 〜でしょう?/〜だろう?(確認)(この課 ST2)同じ ST2 の「〜でしょう?」は相手も知っているはずだと押して確かめ、「〜っけ」は自分が忘れたことを尋ねます。説明する側が「でしょう?」、思い出したい側が「っけ」になると、2 の聞き取りの役に当てはめて示します。
関連する文型
学習項目 3 〜というわけだ/〜わけだ

意味・はたらき

前に述べた事実や理由から、当然そうなるという結論や、「だからそうなのか」という納得を表します。「4649は『よろしく』と読めるから、覚えやすいわけだ」のように、理由を聞いてわかったことを言うのに使います。「〜というわけだ」は、それまでの話を「つまり〜ということだ」とまとめたり言い換えたりするときに多く使います。似た形の「〜はずだ」は、まだ確かめていないことを根拠から推し量る言い方で、理由がわかって納得する「〜わけだ」とは向きが違います。

接続

〜わけだ:V・イA普通形/ナAな/Nな(Nである)+わけだ、〜というわけだ:普通形(ナA・Nの「だ」は省けることが多い)+というわけだ

形
覚えやすいわけだそれで混んでいるわけだつまり、語呂合わせというわけだだから1182なわけですね

導入

  • 理由を聞いて「なるほど」と言う教師が「今日は駅前でお祭りがあるそうです」と言ったあと、写真で混んでいる電車を見せ、「なるほど、それで電車が混んでいるわけですね」と言ってみせる。板書は「理由 → なるほど、〜わけだ」の矢印にし、続けて「4は『よ』、9は『く』……つまり、4649は『よろしく』というわけです」とまとめの形も書き足す。

板書案

〔青〕理由・事実 →〔赤〕〜わけだ(だから当然/なるほど)
4は「よ」、6は「ろ」と読める。→ それで覚えやすいわけだ。
N:語呂合わせな わけだ/語呂合わせという わけだ
〔比べる〕時間の矢印の上に「〜はずだ(まだ確かめていない)」、下に「〜わけだ(理由がわかって納得)」
〔つまり〕〜というわけだ = まとめ・言い換え

場面と発話(自作)

  • 友達が昨夜遅くまでレポートを書いていたと聞く。それで今日はずっと眠そうなわけだ。
  • 語呂合わせの説明を聞いて、内容をまとめる。つまり、数字の読み方を組み合わせて言葉にするというわけですね。
  • 引っ越し先の家賃が安い理由を、不動産屋で聞く。駅から歩いて20分かかるんですか。それで家賃が安いわけですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が理由のカード(「昨日は祝日だった」「この店はテレビで紹介された」など)を読み、学習者に結果を想像させて「それで〜わけだ」と言わせる。そのあと、2 の素材の説明を聞いて、内容を「つまり〜というわけだ」で一文にまとめさせる。

  1. 口頭教師が理由を一文言い(「この店、駅の前なんです」「あの人は10年日本に住んでいました」「今日は祝日です」)、全体で「だから〜わけですね」と結論を言わせる(「いつも混んでいるわけですね」)。次に理由カードを引かせて個人に結論を言わせ、最後に「8時に出たから、もう着いている__」「事故があったのか。それで遅れた__」のように「はずだ」と「わけだ」を選ぶ問いを口頭で出す。
  2. ペアA は「ふしぎなこと」カード(「この道はいつも夕方に混む」)、B は理由カードを2枚(当てはまるものと当てはまらないもの)持つ。A がカードを読み、B が理由を一つ選んで言い、A が「それで〜わけだね」で納得を言う。理由が合わなければ A が「それは関係ないんじゃない?」と返す。3枚で交替する。
  3. 産出なるほど解説。日本で不思議に思ったこと(ごみの分け方、電車の中の静かさなど)を一つ挙げ、理由を調べるか人に聞いて、「〜。〜からです。つまり、〜というわけです」の形で1分間説明する。教師は名詞への接続(*語呂合わせわけだ)と、理由がまだわからない文に「わけだ」を使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*語呂合わせわけだ」と名詞に直接つける。名詞は「語呂合わせなわけだ」「語呂合わせというわけだ」にすると、接続の板書で確かめる
  • 理由がまだわかっていないのに「わけだ」を使い、推量のつもりで言ってしまう。根拠から推し量るのは「〜はずだ」、理由を聞いて納得するのが「〜わけだ」と、時間の順の図で区別する
  • 「〜というわけではない」(部分否定)と形が似ていて、意味を取り違える。5 で扱う形と並べて、否定がつくと「全部がそうではない」になると先に予告しておく

既習の文型との違い

  • 〜はずだ(第2課)「〜はずだ」は根拠から、まだ確かめていないことを推し量ります(8時に出たから、もう着いているはずだ)。「〜わけだ」は理由がわかったあとで「だからそうなのか」と納得します。着いたかどうかわからない場面では「わけだ」は使えないと、時間の流れの矢印で示します。
  • 〜わけではない/〜というわけではない(この課 ST5)同じ「わけ」でも、否定がつくと「全部がそうではない」という部分否定になり、意味の向きが変わります。ST2 で納得の「わけだ」を固めてから ST5 で否定の形を出し、二つを同じ板書に並べて区別させます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 理解を確認しながら、友達に説明するときに使う表現友達に何かを説明するときは、一方的に話さず、相手がついてきているかを確かめながら進める表現をはさみます。聞く段階では先輩がどこで確かめているかを聞き取らせ、そのあと学習者が自分の国の言葉遊びを説明するときに使わせます。例:「ここまではいい?」「〜って知ってるでしょう?」「つまり、〜ってこと」「たとえば〜」「わかる?」「だから〜なんだよ」

3 こんなときどうする?

できること気持ちを表す擬音語・擬態語を知り、友達とのやり取りの中で自分の気持ちを生き生きと伝えられる。

場面

スピーチ大会の前日に、留学生が日本人の友達に不安を打ち明ける場面です。教室ではどきどき・いらいら・ほっと・わくわく・がっかりなどの絵カード(表情の絵)を用意し、ペアで「明日は試験」「なくした財布が見つかった」のような状況カードを引いて、気持ちの語を入れて話させます。

  • 日本人の友達:明日のスピーチ、準備できた?
  • 留学生:うん。でも、今からもうどきどきしてるよ。
  • 日本人の友達:大丈夫だって。あんなに練習したんだもん。
  • 留学生:でも、原稿を見ないで最後まで話すなんて、できっこないよ。
  • 日本人の友達:途中で止まっても、にこっと笑って続ければいいんだよ。
  • 留学生:そうだね。終わったら、ほっとしてラーメンでも食べに行こう。
学習項目 1 〜っこない

意味・はたらき

「〜する可能性はまったくない」と強く打ち消す話し言葉で、友達や家族のような親しい相手に、感情をこめて言うときに使います。「そんなにたくさん、一日で覚えられっこない」「今から走っても間に合いっこないよ」のように、話し手の思い込みや不安・不満がこもることが多い形です。似た意味の「〜はずがない」「〜わけがない」は、理由をもとにした判断としても使え、書き言葉にも出ますが、「〜っこない」は会話だけで使います。

接続

Vます形の語幹(V連用形)+っこない(可能動詞にもつく:できっこない・わかりっこない)

形
できっこないわかりっこない間に合いっこない勝てっこない

導入

  • 無理な頼みに答えさせる教師が大げさに「明日までに漢字を500覚えてください」と言い、学習者に「無理です」と答えさせる。そのあと教師が友達の口調で「500なんて、覚えられっこないよ」と言い換え、「無理だ」をもっと強く、親しい人に言う形だと示す。板書は「Vます→Vっこない」の変形と、「友達・家族だけ」の注意書きにする。

板書案

Vます +〔赤〕っこない (できます → できっこない)
あと5分で駅まで? 間に合いっこないよ。
〔青〕動詞だけ(可能動詞もつく) ×高いっこない
〔くだけ度〕友達・家族 ○ / 先生・作文 × → 〜はずがない

場面と発話(自作)

  • 試験の前日に、友達に不安を話す。こんなに範囲が広いんだもん、全部覚えられっこないよ。
  • 兄弟でゲームをしていて、弟が負け続けている。お兄ちゃんには勝てっこないよ。
  • 大事なことを隠している友達に言う。そんなうそ、すぐばれるよ。隠しきれっこないって。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「一日でN1に合格する」「1時間で富士山に登る」のような無理な状況カードを出し、学習者に「〜っこない」で答えさせる。そのあと 3 の場面のように、緊張している友達とのやり取りで、不安を言う側と励ます側に分かれて話させる。

  1. 口頭教師が無理な状況カード(「1日で漢字を100覚える」「富士山に1時間で登る」「3分でカレーを作る」)を見せ、全体で「そんなの、〜っこないよ」と言わせる。次に動詞を可能動詞に変えたカードで「覚えられっこない」「わかりっこない」を個人に言わせ、ます形からの作り方を確かめる。
  2. ペアA が友達役で無理な計画を言い(「明日までにレポートを3本書くよ」)、B が「〜っこないよ」で強く打ち消して理由を一つ足す。A は「でも〜」で言い返す。3往復で交替し、最後は B を先生役にして、A に「〜はずがありません」へ言い換えさせる。
  3. 産出弱気と励ましロールプレイ。スピーチ前・試験前・面接前の場面カードを引き、一人が「〜っこない」で弱気を言い、もう一人が「〜もん」を使って励ます。教師は辞書形への接続(*できるっこない)と、目上が相手の場面に「っこない」が出ていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*できるっこない」「*わかるっこない」と辞書形につける。「ます」を取った形につけると、「できます→できっこない」で確かめる
  • 「*高いっこない」のように形容詞や名詞につける。「〜っこない」は動詞だけにつく、と形の板書で示す
  • 作文や先生への返事で「できっこないです」と使い、くだけすぎる。改まった場面では「〜はずがない」「〜とは思えない」を使うと言い換えを示す

既習の文型との違い

  • 〜はずがない(第3課)「〜はずがない」は理由をもとに「ありえない」と判断する言い方で、会話でも書き言葉でも使えます(鍵をかけたから、開いているはずがない)。「〜っこない」は理由より気持ちが先に立ち、親しい相手との会話でだけ使います。作文で「っこない」を使った学習者には「はずがない」に直させます。
  • 〜わけがない(第18課)第18課の「〜わけがない」も強い否定ですが、「〜っこない」と違って形容詞や名詞にもつきます(高いわけがない)。この課で「っこないは動詞だけ」と形の違いを押さえておくと、第18課で混ざりにくくなります。
関連する文型
学習項目 2 〜もん/〜んだもん

意味・はたらき

理由を言って、自分の言動や気持ちは当然だと相手にわかってもらおうとする話し言葉です。「だって」と一緒に使うことが多く、「だって、わからないんだもん」のように言い訳や甘え、不満の気持ちがこもります。子どもや若い人、親しい間柄で多く使われ、目上の人や仕事の場面では使いません。一方で 3 のやり取りのように、「あんなに練習したんだもん(だから大丈夫)」と、相手を励ます理由を言うのにも使えます。「〜ものですから」は丁寧な理由・言い訳で、「〜もん」はそのくだけた形と考えるとわかりやすい形です。

接続

V・イA普通形+もん、ナA・N+だ+もん/普通形(ナA・Nは「な」)+んだもん

形
だって、眠いんだもんまだ子どもだもん知らなかったもんあんなに練習したんだもん

導入

  • 子どもの言い訳を演じてみせる教師が母親役と子ども役を演じ分け、母親「どうして野菜を食べないの?」、子ども「だって、苦いんだもん」と言ってみせる。学習者に子どもの気持ち(自分は悪くない・わかってほしい)を言わせてから、板書に「だって、〜んだもん」と書き、親しい相手だけに使う形だと注意書きを添える。

板書案

〔赤〕普通形 +もん / ナA・N +だもん / 普通形(ナA・Nは「な」)+んだもん
だって、まだ眠いんだもん。
大丈夫だよ。毎日練習してたんだもん。(励ます理由)
〔青〕友達・家族 ○ 目上 × → 〜ものですから
〔比べる〕約束は守るものだ(常識)/だって〜もん(自分の理由)

場面と発話(自作)

  • 朝なかなか起きないのを、ルームメートに注意される。だって、昨日寝たの3時だったんだもん。
  • 友達に、どうしてその店ばかり行くのかと聞かれる。だって、あそこのラーメン、本当においしいんだもん。
  • スピーチの前で緊張している友達を励ます。大丈夫だよ。毎日練習してたんだもん。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「どうして宿題をしなかったの?」「どうしてまたケーキを買ったの?」のように問い詰める質問をし、学習者に「だって、〜んだもん」で言い訳させる。そのあと、同じ形で友達を励ます言い方も作らせ、使える相手を確かめる。

  1. 口頭教師が「どうして〜の?」と問いかけ(「どうして野菜を食べないの?」「どうして早く寝ないの?」「どうして傘を持ってこなかったの?」)、全体で「だって、〜んだもん」で答えさせる。次にナ形容詞・名詞のキュー(暇・雨・日曜日)で個人に「暇なんだもん」「雨なんだもん」と言わせ、「だ」「な」の抜けを確かめる。
  2. ペアA は親役、B は子ども役。A が「どうして〜の?」と注意し、B が「だって〜もん」で言い訳をし、A は一度「それでも〜しなさい」と返す。3往復で役を交替し、最後は A を店長役に変えて、B に「〜ものですから」で言い直させる。
  3. 産出言い訳の言い分けカード。状況カード(遅刻した・宿題を忘れた・約束の時間を変えたい)を引き、友達に言う版(〜んだもん)と、店長や先生に言う版(〜ものですから)の2つを書いて読み上げる。教師は接続の誤りと、目上の版にくだけた形が残っていないかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*雨もん」「*暇もん」とナ形容詞・名詞に直接つける。「雨だもん」「暇なんだもん」と、「だ」または「な+んだ」が要ると接続の板書で示す
  • アルバイト先の店長に遅刻の理由を「電車が遅れたんだもん」と言い、くだけすぎて失礼に聞こえる。目上には「電車が遅れたものですから」と言い換えを示す
  • 当然を表す「〜ものだ」(約束は守るものだ)と混ぜる。「〜もん」は自分の理由を言う形で、一般的な常識を言う形ではないと、二つを並べて比べる

既習の文型との違い

  • 〜ものですから/〜ものだから/〜もので(第8課)どちらも理由を言って相手にわかってもらおうとしますが、「〜ものですから」は目上にも使える丁寧な言い訳、「〜もん」は親しい相手へのくだけた言い方で、甘えや不満がこもります。「電車が遅れたんだもん」を店長に言った学習者には、第8課の形に戻して言い直させます。
  • 〜ものだ/〜ものではない(当然)(第5課)第5課の「〜ものだ」は「約束は守るものだ」のように、だれにでも当てはまる常識を言います。「〜もん」は自分の言動の理由だけを言い、常識の文には使いません。「もの」と「もん」の音が近いので、文の主語が「人はだれでも」か「わたし」かで見分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 気持ちを表す擬音語・擬態語気持ちを表すのは主に擬態語で、「どきどきする」「いらいらする」のように「する」をつけて動詞として使うものと、「ほっとする」「がっかりする」のように2拍のくり返しでない形のものがあります。絵カードで表情と結びつけてから、状況カードで使わせ、最後に自分の国の言葉と比べさせます(擬態語の数が日本語ほど多くない言語もあるので、比べる話題として扱いやすい)。例:「どきどきする」「わくわくする」「いらいらする」「ほっとする」「がっかりする」「むっとする」

4 伝えてみよう

できること日本語を使っていて楽しかったことや難しかったことを、自分の経験にそって話せる。

場面

クラスの発表会で、「日本語を使ってよかったこと・困ったこと」を2分ほどで話す場面です。発表の前に、通じてうれしかったとき・通じなくて困ったとき・失敗しかけたときを一つずつメモさせ、聞き手には発表のあとで一つ質問させます。

  • 留学生(発表):日本に来たばかりのころ、駅のアナウンスがほとんど聞き取れませんでした。
  • 留学生(発表):一度は、降りる駅を通り過ぎてしまうところでした。
  • 留学生(発表):でも半年たって、店員さんと冗談が言えたときは、飛び上がるほどうれしかったです。
  • 留学生(発表):今は、日本語でもっといろいろな人と話したくてたまりません。
  • 聞き手:言葉が通じなくて困ったときは、どうしましたか。
  • 留学生(発表):身ぶりで伝えたり、紙に書いたりしました。顔が赤くなるくらい恥ずかしかったですが、いい経験でした。
学習項目 1 〜ほど/〜くらい/〜ぐらい

意味・はたらき

気持ちや状態の程度がどのくらいかを、具体的な様子やたとえで表す言い方です。「飛び上がるほどうれしかった」「涙が出るくらい笑った」のように、前に「それほどの様子」を置いて、後ろの気持ちや状態の強さを伝えます。「ほど」はやや改まった言い方で、「死ぬほど」「信じられないほど」のような程度の高いことに使いやすく、「くらい/ぐらい」は会話的で、程度の高いことにも「少し恥ずかしいくらい」のような軽い程度にも使えます。経験の発表では、「とてもうれしかった」を「〜ほどうれしかった」と言い換えると、聞き手に気持ちが伝わりやすくなります。

接続

V普通形/イA普通形/ナAな/N+ほど・くらい・ぐらい

形
飛び上がるほどうれしかった涙が出るくらい笑った信じられないほど上手だ恥ずかしくて顔が赤くなるぐらいだった

導入

  • 「とても」を様子で言い換える教師が「試験に合格して、とてもうれしかったです」と言ったあと、両手を上げて跳ぶ動作をしながら「飛び上がるほどうれしかったです」と言い換える。学習者に「とても疲れた」「とても寒い」を自分の様子で言い換えさせ、板書に「[様子]ほど/くらい+気持ち・状態」の形を書く。

板書案

〔青〕様子(V・イA・ナAな・N)+〔赤〕ほど/くらい + 気持ち・状態
涙が出るほど 笑った。
声が出ないくらい 驚いた。
〔比べる〕ほど=程度が高い・やや改まる/くらい=会話的・軽い程度にも
〔注〕10分くらい(およその数)とは別

場面と発話(自作)

  • 初めて日本語で冗談が通じた経験を、発表で話す。みんなが笑ってくれて、泣きたくなるほどうれしかったです。
  • 引っ越しを手伝った次の日、友達に話す。昨日は、もう一歩も歩けないくらい疲れたよ。
  • 旅行先の料理について、ブログに書く。そのカレーは、口から火が出るほど辛かった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「うれしい」「疲れた」「恥ずかしい」「寒い」の気持ちカードを出し、学習者に様子を考えさせて「〜ほど/くらい〜」の文を作らせる。そのあと 4 の発表メモの「楽しかった・難しかった」を、この形で少なくとも一つ言い換えさせる。

  1. 口頭教師が気持ちの絵カード(うれしい・疲れた・おなかがすいた・寒い)を見せて「どのくらい?」と聞き、全体で前半の様子を考えさせる(「飛び上がる」「一歩も歩けない」「何でも食べられる」)。次に個人に「〜ほど〜」「〜くらい〜」の文を言わせ、様子と気持ちが合っているかを確かめる。
  2. ペアA は気持ちだけのカード(「眠い」「緊張した」「おいしかった」)、B は様子のカード(「目が開けられない」「手がふるえる」「三回もおかわりした」)を持つ。A が気持ちを言い、B が合う様子を選んで「〜ほど〜」の文にする。合わない様子のカードを1枚混ぜておき、B がそれに気づいたら交替する。
  3. 産出気持ちの温度計スピーチ。日本に来てからいちばんうれしかったことと困ったことを一つずつ選び、「〜ほど」「〜くらい」を1回ずつ入れて30秒で話す。聞き手は「どのくらい〜でしたか」と一つ質問する。教師は「*泣くのほど」の「の」と、様子と気持ちの組み合わせが合っているかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*泣くのほどうれしい」「*飛び上がるのくらい」と、動詞と「ほど・くらい」の間に「の」を入れる。動詞の形のまま直接つけると、形の板書で確かめる
  • 「10分くらい待った」のおよその数の「くらい」と混ざり、程度の意味がわかりにくくなる。前に数が来るか、様子が来るかで見分けさせる
  • 前に置く様子が後ろの気持ちと合わず、「眠くなるほどうれしかった」のように意味が通らない。その気持ちのときに実際に起きそうな様子を選ばせる

既習の文型との違い

  • (〜ば)〜ほど(第3課)第3課の「〜ば〜ほど」は、前の程度が上がるにつれて後ろも上がる比例の言い方です(読めば読むほどおもしろい)。この課の「〜ほど」は一つの気持ちの強さを、具体的な様子で示します。前に「〜ば」があるかで見分けさせ、同じ「おもしろい」で両方を言わせて比べます。
  • 〜くらい/〜ぐらい(最低限)(この課 ST5)ST5 の「〜くらい」は「あいさつくらいは言える」のように名詞について、最低限・大したことではないことを言います。程度の「くらい」は前に様子の文が来て、後ろに気持ちが続きます。二つを同じ板書の左右に書き、前に来る語の形で見分けさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜ところだった

意味・はたらき

「もう少しで〜という悪いことになりそうだったが、実際にはそうならなかった」という意味です。「もう少しで」「危うく」と一緒によく使い、失敗しかけた経験を、ほっとした気持ちとともに話すのに向いています。「乗り過ごしてしまった」が実際に起きたことを言うのに対し、「乗り過ごすところだった」は起きずにすんだことを言います。初中級で学んだ「Vるところです」(今まさにしようとしている)が過去になった形ですが、意味の中心は「起きずにすんだ」点にあります。

接続

V辞書形+ところだった(「Vないところだった」も使う:間に合わないところだった)

形
もう少しで乗り過ごすところだった危うく財布を落とすところだった遅刻するところだった間に合わないところだった

導入

  • 起きた・起きなかったを絵で分ける電車のドアが閉まる絵を2枚見せ、1枚は留学生が駅に降りられた絵、もう1枚は乗ったまま行ってしまった絵にする。1枚目を指して「もう少しで乗り過ごすところでした」、2枚目を指して「乗り過ごしてしまいました」と言い、どちらが本当に起きたかを学習者に答えさせる。板書は「〜ところだった=起きなかった」「〜てしまった=起きた」の2行にする。

板書案

〔赤〕(もう少しで・危うく)V辞書形 +ところだった
危うく、降りる駅を乗り過ごすところだった。
〔青〕起きそうだった → でも起きなかった(ほっ)← 途中で止まる矢印
〔比べる〕乗り過ごしてしまった(起きた)/乗り過ごすところだった(起きなかった)
〔注〕Vたところだ(直後)とは別

場面と発話(自作)

  • 経験の発表で、日本に来たばかりのころの失敗を話す。敬語を間違えて、もう少しで店長を怒らせるところでした。
  • 朝、目覚ましが鳴らなかったが、なんとか間に合った。危なかった。もう少しで授業に遅れるところだったよ。
  • スーパーで、似た袋の砂糖と塩を取り違えかけた。危うく塩を砂糖だと思って買うところだった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「財布を電車に忘れそうになった」「電話番号を間違えそうになった」などの状況カードを読み、学習者に「もう少しで〜ところだった」で言わせる。そのあと 4 の発表メモに、日本語で失敗しかけた経験を一つ加えさせ、ペアで話させる。

  1. 口頭教師が「あと一歩」の絵カード(皿を落としかける、階段で転びかける、財布を忘れかける、電車のドアにはさまれかける)を見せ、全体で「もう少しで〜ところだった」と言わせる。次に同じ場面の「本当に起きた」絵を見せ、個人に「〜てしまった」と「〜ところだった」を言い分けさせる。
  2. ペアA は「ひやっとした話」のカード(自作:寝坊した朝、パスポートを家に置いてきかけた日など)を持ち、B が「それでどうなったの?」と聞く。A は「もう少しで〜ところだったけど、〜」と、何が起きずにすんだかまで言う。B は「危なかったね」「よかったね」で受けてから交替する。
  3. 産出ひやっとした話の発表。日本語の失敗や生活の中で「もう少しで〜ところだった」経験を一つ選び、何が起きかけたか・何で助かったか・どう思ったかを3〜4文で1分間話す。教師はタ形にした形(「乗り過ごしたところだった」)と、本当に起きたことに使っていないかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 本当に起きたことに「〜ところだった」を使い、聞き手が「結局どうなったの?」と迷う。起きたことは「〜てしまった」、起きずにすんだことは「〜ところだった」と、intro の絵に戻って確かめる
  • 「乗り過ごしたところだった」とタ形にして、「ちょうど乗り過ごしたあとだった」のような別の意味になる。起きかけたことを言うときは辞書形につけると、形の板書で示す
  • 悪いことにしか使えないと思い込み、「もう少しで優勝するところだった」のような、よいことがあと一歩で起きなかった残念さを言えない。こちらも使えることを最後に一例だけ示し、練習は「悪いことを避けられた」場面を中心にする

既習の文型との違い

  • Vるところです/Vているところです/Vたところです(初中級 第10課)初中級では「今から出るところです」のように、動作の直前・最中・直後を言いました。「〜ところだった」はその直前の形を過去にしたものですが、意味は「起きかけたが起きなかった」になります。「もう少しで」「危うく」がつくと危なかった話、つかなければ「ちょうど出るところだった」という直前の話になると示します。
  • Vてしまいました(後悔)(初中級 第5課)「〜てしまいました」は実際に起きた失敗への後悔、「〜ところだった」は起きずにすんだ失敗への安心です。同じ絵カードで二つを言わせ、聞き手に「結局どうなったの?」と問わせると違いがはっきりします。
関連する文型
学習項目 3 〜てたまらない

意味・はたらき

気持ちや体の感覚がとても強くて、がまんできないほどだという意味です。「うれしくてたまらない」「会いたくてたまらない」「暑くてたまらない」のように、感情・欲求・感覚を表すことばにつきます。話し手自身の気持ちを言うのが基本で、他の人の気持ちを言うときは「〜てたまらないようだ」「〜がっている」などにします。似た形の「〜てしかたがない」「〜てしょうがない」はより会話的、「〜てならない」は気持ちが自然にわいてくる感じがあり、やや硬い言い方です。

接続

Vて(Vたい→Vたくて)/イAくて/ナAで+たまらない(丁寧には「〜てたまりません」)

形
話したくてたまらないうれしくてたまらない心配でたまらないのどが渇いてたまらない

導入

  • がまんしている様子を見せる教師が暑そうにあおぎながら「暑い、暑い……暑くてたまりません」と言い、続けて友達からの手紙を読むふりをして「早く会いたくてたまりません」と言う。どちらも「がまんできないくらい強い」気持ちだと確かめ、板書に「イAくて/ナAで/Vたくて+たまらない」の形と、使える語(うれしい・心配・会いたい・暑い・眠い)を書く。

板書案

〔赤〕Vたくて/イAくて/ナAで +たまらない
国の家族に会いたくて たまらない。
〔青〕感情・欲求・体の感覚:うれしい・心配・会いたい・暑い・かゆい
×広くてたまらない(気持ちでない語)
〔他の人〕〜てたまらないみたい/〜がっている

場面と発話(自作)

  • 経験の発表の最後に、これからの気持ちを話す。今は、日本語でもっといろいろな人と話したくてたまりません。
  • 家族が初めて日本に遊びに来る前の日、友達に話す。明日、母に会えるのがうれしくてたまらないよ。
  • 試験の結果発表を待っている。結果がどうなるか、心配でたまりません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「うれしい」「心配」「眠い」「家族に会いたい」のカードを出し、学習者に理由を一つ添えて「〜てたまらない」の文を作らせる。そのあと 4 の発表の締めくくりに、今の気持ちをこの形で一文言わせる。

  1. 口頭教師が気持ちや感覚の絵カード(のどが渇いた・眠い・試験の結果が心配・家族に会いたい)を見せ、全体で「〜てたまらない」と言わせる。次にイ形容詞・ナ形容詞・「〜たい」を混ぜたカードで個人に当て、「くて」「で」「たくて」の作り方を確かめる。最後に他の人の絵(さびしそうな友達)で「〜てたまらないみたい」と言わせる。
  2. ペアA は「今の気持ち」カードを3枚引き、B に「最近どう?」と聞かれて「〜てたまらないんだ」と答える。B は「どうして?」と聞き、A は理由を一つ言う。そのあと B が、聞いた内容を他の人に伝える形で「〜さんは〜てたまらないみたいです」と言い直す。交替して続ける。
  3. 産出いまの気持ちスピーチ。4 の発表の締めとして、日本語を学んでいて今「〜てたまらない」ことを一つ選び、理由とこれからしたいことを足して3文で言う。教師はテ形の作り間違い(*うれしいてたまらない)と、気持ちでない語に使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*うれしいてたまらない」「*心配てたまらない」とテ形を作り間違える。イ形容詞は「くて」、ナ形容詞は「で」、と形の板書で一つずつ確かめる
  • 「この部屋は広くてたまらない」のように、気持ちや感覚でない語に使う。体や心が感じることに使う形だと、使える語の一覧に戻って確かめる
  • 会話で友達のことを「佐藤さんは寂しくてたまらない」と言い切る。他の人のことは「寂しくてたまらないみたい」「寂しがっている」にすると言い換えを示す

既習の文型との違い

  • 〜ほど/〜くらい/〜ぐらい(この課 ST4)同じ ST4 の「〜ほどうれしい」は、気持ちの強さを具体的な様子で聞き手に見せる言い方です。「〜てたまらない」は様子を言わず、自分の中の強い気持ちをそのまま言います。発表では「〜ほど」で場面を見せ、締めに「〜てたまらない」で今の気持ちを言う、と役割を分けさせます。
  • 〜てならない(第14課)・〜てしかたがない/〜てしょうがない(第15課)このあとの課で、ほぼ同じ意味の「〜てならない」(やや硬く、気持ちが自然にわいてくる)と「〜てしかたがない/〜てしょうがない」(より会話的)を学びます。この課では「〜てたまらない」一つに絞り、気持ち・感覚の語につくという使える範囲を固めておくと、あとの課では違いを足すだけで済みます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 外国語を使ったときの楽しさや難しさを伝えることば経験を話すときは、「楽しかった」「難しかった」を具体的な出来事のことばで言い換えると聞き手に伝わります。メモを作る段階で次のような言い方を示し、自分の経験に合うものを選ばせます。例:「言いたいことが通じた」「話が弾んだ」「聞き返された」「言葉に詰まった」「ぴったりの言葉が出てこなかった」「冷や汗をかいた」

5 耳でキャッチ

できること生活の中で耳にした日本語について質問し、その答えの説明を聞いて理解できる。

場面

留学生が、コンビニで聞いた言い方の意味を日本人の先生に質問する場面です。授業の前に、学習者が生活の中で聞いて意味がわからなかった言い方を一人一つずつ集めておき、教師が答えの説明を読み上げて聞かせます。聞いたあとで、集めた言い方のいくつかをクラスで説明し合います。

  • 留学生:コンビニで「袋、大丈夫ですか」と聞かれたんですが、どういう意味ですか。
  • 先生:「袋はいりますか」という意味ですね。「大丈夫です」と答えると、たいてい「いりません」の意味になります。
  • 留学生:じゃあ、「大丈夫」はいつも「問題ない」という意味ではないんですね。
  • 先生:そうなんです。「大丈夫」がいつも断りになるというわけではありませんが、お店ではよくそう使いますね。
  • 留学生:「いりません」ぐらいは言えるので、そう答えてもいいですか。
  • 先生:もちろん。どちらで答えても通じますよ。
学習項目 1 〜わけではない/〜というわけではない

意味・はたらき

前の話や、ふつう考えられることを全部は打ち消さず、「必ずしもそうではない」と一部だけ否定する言い方です。「『大丈夫』がいつも断りになるわけではない」「日本人がみんな敬語を上手に使えるというわけではない」のように、「いつも」「みんな」「全部」「必ずしも」と一緒によく使います。強く打ち消す「〜わけがない」(そんなことはありえない)とは意味が大きく違うので注意が必要です。「〜というわけではない」は、相手の受け止め方を「そういうことではない」と言い直すときにも使います。

接続

〜わけではない:V・イA普通形/ナAな/Nな(Nである)+わけではない、〜というわけではない:普通形(ナA・Nの「だ」は省けることが多い)+というわけではない

形
いつも断りになるわけではない嫌いなわけではない全部が正しいというわけではない日本人なら誰でもわかるというわけではない

導入

  • 「全部」と「一部」を円で見せる黒板に大きな円を描き「日本人」と書く。教師が「日本人はみんな納豆が好きですか」と聞き、学習者に答えさせたあと、円の中を一部だけ塗って「好きな人も多いですが、みんなが好きなわけではありません」と言う。板書は「全部が〜わけではない=そうでない人・場合もある」とし、隣に「〜わけがない=ありえない」を並べて違いを示す。

板書案

〔赤〕普通形(ナAな・Nな/Nだという)+わけではない
辛い料理が全部苦手なわけではない。
〔図〕円の一部だけを塗る(部分否定)/円全体に×(〜わけがない)
いっしょに使う:いつも・みんな・全部・必ずしも
〔続け方〕〜わけではないけど、〜。

場面と発話(自作)

  • 日本人の先生が、留学生の質問に答えて言葉の使い方を説明する。「すみません」は、いつも謝っているわけではありません。お礼のときにも使います。
  • 友達に、パーティーに行かない理由を聞かれる。行きたくないわけじゃないんだけど、明日は朝早いんだ。
  • 日本語の授業で、敬語について話し合う。日本で生まれ育ったからといって、敬語が完璧というわけではないそうです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「日本人はみんな早起きだ」「高い店はいつもおいしい」のような言い切りのカードを読み、学習者に「〜わけではない」で一部だけ打ち消させ、例外を一言続けさせる。そのあと 5 の素材を聞いて、先生がどこで「必ずしもそうではない」と言っているかを聞き取らせる。

  1. 口頭教師が思い込みのカード(「日本人は毎日すしを食べる」「留学生はみんな漢字が苦手」「高い店はいつもおいしい」)を読み、全体で「〜わけではない」で一部だけ打ち消させる。次に個人に「〜けど、〜」で例外や事実を足させる(「みんな苦手なわけではないけど、書くのは大変です」)。最後に「わけではない」と「わけがない」を選ぶ問いを口頭で出す。
  2. ペアB が相手の国について聞いたことのある思い込みを一つ選び、「〜って本当?」と聞く。A は「〜わけではないけど、〜」で答え、B は聞いた内容を「つまり、〜というわけではないんですね」とまとめる。2問ごとに交替する。
  3. 産出それ、本当?コーナー。自分の国や日本についてよく聞く思い込みを一つ選び、「〜と言われますが、みんなが〜わけではありません。〜場合もあります」の形で3〜4文にして発表する。教師は名詞への接続、後ろに例外が続いているか、「わけがない」と取り違えていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「〜わけがない」と取り違え、「全部ではない」を「絶対にない」と受け取る。intro の円の図で、一部を塗るか全部を消すかの違いを確かめる
  • 「*日本人わけではない」と名詞に直接つける。名詞は「日本人だというわけではない」「日本人であるわけではない」の形にすると接続の板書で示す
  • 「〜わけではない」のあとに理由や例外を続けず、言いっぱなしになって相手が戸惑う。後ろに「〜けど、〜」「〜場合もある」を続ける練習をさせる

既習の文型との違い

  • 〜というわけだ/〜わけだ(この課 ST2)肯定の「〜わけだ」は理由から納得する結論で、否定がつくと「その結論が全部当てはまるのではない」という部分否定になります。「ということは、〜わけですね」と言われて「いえ、〜というわけではありません」と返すやり取りで、二つの形をつなげて練習させます。
  • 〜はずがない(第3課)「〜はずがない」は根拠から「ありえない」と全部を打ち消します。「〜わけではない」は一部を残します。「日本人が敬語を知らないはずがない」と「日本人がみんな敬語が得意なわけではない」を並べ、どちらが全部を打ち消しているかを円の図で確かめます。
関連する文型
学習項目 2 〜くらい/〜ぐらい

意味・はたらき

4 で学んだ程度の「くらい」とは別に、ここでは「それは大したことではない・少なくともそれだけは」という、軽く見る気持ちや最低限の範囲を表す使い方を扱います。「あいさつくらいは日本語で言える」「それぐらい自分でできるよ」「一回ぐらい失敗しても大丈夫」のように、「は」「なら」「でも」と一緒によく使います。名詞につくことが多く、「これくらい」「そのくらい」のようにこそあ言葉にもつきます。似た気持ちを表す「〜なんか」「〜なんて」は相手を軽く見る気持ちが強く出ることがあるので、「〜くらい」のほうが使いやすい場面が多い形です。

接続

N/こそあ(これ・それ・あれ)/V普通形+くらい・ぐらい(「くらいは」「くらいなら」「くらいで」の形で使うことが多い)

形
あいさつくらいは言えるそれぐらい自分でできる一回ぐらい失敗しても少し休むくらいならいいでしょう

導入

  • 「せめてそれだけは」を引き出す教師が「タイ語は話せますか」と聞かれた設定で、「話せませんが、『こんにちは』くらいは言えます」と答えてみせる。学習者に、自分の知らない言語について同じ形で「〜くらいは言える・わかる」と言わせ、板書に「N+くらい(は)=少なくともそれだけ・大したことではない」と書き、4 の程度の「くらい」と並べて違いを示す。

板書案

〔赤〕N(これ・それ)+くらい(は/なら/で)
自己紹介くらいは、日本語でできます。
これくらいなら、一人で直せるよ。
〔青〕大したことではない・少なくともそれだけは
〔比べる〕涙が出るくらい笑った(程度)/自己紹介くらいはできる(最低限)

場面と発話(自作)

  • コンビニで袋のことを聞かれたあと、先生に質問する。「いりません」ぐらいは言えるので、そう答えてもいいですか。
  • ルームメートに、皿洗いを頼まれて断られる。それくらい自分でやってよ。
  • 初めてのアルバイトで緊張している友達を励ます。最初は一回ぐらい間違えても、だれも怒らないよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「英語」「料理」「自転車の修理」などのカードを出し、学習者に「〜は苦手ですが、〜くらいはできます」と答えさせる。そのあと 5 のやり取りで、生活の中でよく聞く言い方について「これくらいは覚えておくと便利」というものを一つずつ紹介させる。

  1. 口頭教師が「できること」カード(ひらがなを読む・自己紹介をする・切符を買う・料理を温める)を見せ、全体で「〜くらいはできます」と言わせる。次に「これくらいなら」「一回くらい」のキュー(小さな傷・少しの遅れ・一度の失敗)を出し、個人に励ましや許しの文を言わせる(「一回くらい失敗しても大丈夫」)。
  2. ペアA は困っている役(「料理が全然できない」「日本語がまだ話せない」)、B は「〜くらいはできるでしょう?」「〜くらいなら〜」で軽く励ます役。A は「〜くらいはできるけど、〜」で答えを足す。3往復で交替する。
  3. 産出「これくらいはできる」自己紹介。日本語でできることを「〜くらいはできます。でも、〜はまだ難しいので、〜」の形で3文にまとめて話す。5 の聞き取りのあとなら、「〜くらいは知っていたけど、〜という意味は知りませんでした」と一言足させる。教師はこそあ言葉のあとの「の」(*これのくらい)と、相手の言ったことを軽く見る使い方になっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 4 の程度の「くらい」(涙が出るくらい)と区別がつかず、意味を取り違える。前に様子が来て後ろに気持ちが続くのが程度、前に名詞が来て「くらいは」「くらいで」になるのが最低限・軽く見る使い方、と並べて見分けさせる
  • 目上の人に「それくらい知っていますよ」と言い、相手の質問を軽く見たように聞こえる。相手の言ったことに使うと失礼になりやすいので、自分のことに使う練習を中心にする
  • 「*これのくらい」とこそあ言葉のあとに「の」を入れる。「これくらい」「そのくらい」のように直接つけるか、「この」の形を使うと示す

既習の文型との違い

  • 〜ほど/〜くらい/〜ぐらい(程度)(この課 ST4)程度の「くらい」は前に様子の文が来て、気持ちの強さを言い、「ほど」に言い換えられます。最低限の「くらい」は名詞について「は・なら・で」が続き、「ほど」に言い換えると意味が通らなくなります。「ほど」に言い換えられるかを見分けの手がかりにさせます。
  • 〜でも(極端な例)(第1課)第1課の「子どもでもわかる」の「でも」は、極端な例を出して「ほかはもちろん」と言います。「〜くらい」は「大したことではない」と小さく見る言い方です。「漢字くらい読める」は漢字を簡単なものと見る気持ち、「子どもでも読める」はだれでも読めるという気持ちになる、と並べて示します。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 生活の中で耳にする日本語について説明するときに使われることば・表現言葉の意味を説明する答えには、意味・使う場面・もとの形を示すきまった言い方がよく出ます。聞く前にこれらを板書しておくと、説明のどこに答えがあるかを聞き取りやすくなります。例:「〜という意味で使われる」「もともとは〜という意味だった」「〜を短くした言い方だ」「若い人の間でよく使う」「くだけた言い方だ」「お店でよく使う決まった言い方だ」

語彙の扱い

この課の語は、作品の感想を言うことば、数字の読み方、気持ちの擬音語・擬態語、外国語を使った経験のことば、言葉の意味を説明することばの5つのかたまりに分かれます。擬態語は意味をことばで説明するより、表情の絵や教師の動作と結びつけて体で覚えさせ、「〜する」「〜と」のどちらの形で使うかも一緒に示します。数字の読み方(し・よ・よん、く・きゅう、は・はち など)は語呂合わせを聞く前に必ず確かめておきます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 語呂合わせ(ごろあわせ) 数字や言葉を、別の言葉に読めるように合わせて、覚えやすくしたもの。 数字の〜・〜で覚える
    新しい電話番号をなかなか覚えられない友達に。
    この番号、語呂合わせで覚えると忘れないよ。
  • 擬態語(ぎたいご) 物の様子や人の気持ちを、音のような言葉で表したもの。 気持ちを表す〜・〜を使う
    作文を直してもらっているとき。
    ここは擬態語を使うと、気持ちがもっと伝わるよ。
  • わくわくする(わくわくする) 楽しいことを待っていて、うれしくて心が落ち着かない。 旅行の前に〜・〜気持ち
    旅行に出かける前の晩。
    明日から旅行だから、わくわくしてなかなか眠れない。
  • 照れる(てれる) ほめられたり注目されたりして、恥ずかしそうにする。 ほめられて〜・〜て笑う
    発表のあとで、みんなにほめられたとき。
    そんなにほめられると、照れちゃうよ。
  • 印象的(いんしょうてき) 強く心に残る様子。 〜な場面・〜だった
    映画を見たあとで、感想を話す。
    最後の場面が、いちばん印象的でした。
  • 口ぐせ(くちぐせ) その人がいつもよく言う、決まった言葉。 父の〜・〜になる
    家族の話をしているとき。
    「まあ、いいか」が、最近のわたしの口ぐせになっている。
  • 流行語(りゅうこうご) ある時期に、多くの人が使うようになった言葉。 今年の〜・〜になる
    友達との会話で、聞いたことのある言葉が出てきた。
    その言葉、去年の流行語だったっけ?
  • 通じる(つうじる) 言ったことの意味が、相手にわかる。 言葉が〜・気持ちが〜
    旅行先で道を聞いたとき。
    身ぶりを使ったら、やっと通じた。
  • 聞き返す(ききかえす) 聞いたことがわからなくて、もう一度言ってもらうように頼む。 何度も〜・〜される
    アルバイトの最初の日の夜、友達に話す。
    お客さんの注文を、三回も聞き返してしまったんだ。
  • 乗り過ごす(のりすごす) 降りるはずの駅を通り過ぎてしまう。 一駅〜・寝て〜
    朝の電車で、うとうとしていた。
    寝ていて、危うく乗り過ごすところだった。
  • 危うく(あやうく) もう少しで悪いことになるところだった、と言うときに使う。 〜忘れるところだった・〜間に合わないところだった
    空港に向かう途中で、忘れ物に気づいた。
    危うく、パスポートを家に忘れるところだった。
  • 言い換える(いいかえる) 同じ意味を、別の言葉で言う。 やさしい言葉に〜・〜と、〜
    先生の説明が難しくてわからないとき。
    もう少しやさしい言葉に言い換えていただけますか。

宿題と次のコマ

宿題は、日本語のおもしろいと思う表現(擬態語・語呂合わせ・生活の中で聞いた言い方など)を1つ選び、意味・使う場面・自分の国の似た言い方を4〜5文で書いてくること。次のコマの最初に何人かに紹介してもらい、聞き手には「〜っけ?」「〜わけですね」で確かめながら聞かせてから、第10課の 1「見つけた!」(旅行のパンフレットを読む)に入ります。この課で使った「作品の感想を述べる表現」が、第10課では「観光地の特徴を説明することば」に広がります。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第9課は何コマで終わりますか?

    90分なら5コマが目安です。1コマ目で導入と 1 の読み、2コマ目で 2 の聞き取りと「〜でしょう?」「〜っけ」「〜わけだ」、3コマ目で 3 のやり取り、4コマ目で 4 の発表の準備と発表、5コマ目で 5 の聞き取りと課のまとめを行います。学習項目が14と多いので、1 の硬い文型は読んで意味をつかむところまでにし、練習の時間は会話で使う文型に多く回します。

  • 「〜がたい」と「〜にくい」の違いはどう説明すればいいですか?

    「〜にくい」は字が小さくて読みにくいのように、物や条件のせいでしにくいことに広く使え、会話でもふつうです。「〜がたい」は信じる・理解する・許す・言葉にするのような心の動きの動詞について、気持ちの上でそうできないことを書き言葉で言います。主語が物なら「にくい」、心が動かされた度合いを改まって言うなら「がたい」と、板書を左右に分けて示すと伝わります。

  • 「〜わけだ」と「〜わけではない」は、どう区別させればいいですか?

    「〜わけだ」は理由がわかって「だからそうなのか」と納得する結論、「〜わけではない」はその結論が全部には当てはまらないという部分否定です。ST2 で肯定を固めてから ST5 で否定を出し、「つまり〜わけですね」「いえ、〜というわけではありません」とつなげて言わせると、一つのやり取りの中で区別できます。強く打ち消す「〜わけがない」は第18課なので、この課では円の図で「一部だけ」を見せるのにとどめます。

  • 硬い文型とくだけた文型が同じ課に並ぶのは、どう扱えばいいですか?

    1 の「〜がたい」「〜とともに」「〜をもとに」は読む・書くための文型、3 の「〜っこない」「〜もん」は友達や家族との会話の文型です。板書の端に「書き言葉 ←→ 友達との会話」の目盛りを書いておき、新しい文型を出すたびにどこに置くかを学習者に決めさせると、場面と相手を考えて選ぶ習慣がつきます。練習でも相手カード(友達/先生・店長)を必ず使い、くだけた形が目上に出たら言い換えさせます。

  • 「〜くらい」が ST4 と ST5 に2回出てくるのはなぜですか?

    同じ「くらい」でも、ST4 は「涙が出るくらい笑った」のように気持ちの強さを様子で表す程度の使い方、ST5 は「あいさつくらいはできる」のように最低限・大したことではないことを表す使い方で、意味が違うからです。程度の「くらい」は「ほど」に言い換えられ、最低限の「くらい」は名詞について「は・なら・で」が続く、という二つの手がかりで見分けさせます。ST5 では ST4 の板書を残したまま右に並べて書くと、違いが一目でわかります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。