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できる日本語 中級 第19課「科学の力」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること5つ(見つけた!・伝えてみよう・こんなときどうする?・耳でキャッチ・見つけた!)

毎日の生活を支えている科学や技術を入り口に、科学が社会の中で何をしているかを考え、自分の意見を持てるようになる課です。身近な道具のしくみを説明した読み物を読み(見つけた!)、介護にロボットを使うことの良し悪しを立場を変えて話し合い(伝えてみよう)、家電が壊れたときに状況を説明して修理を頼み(こんなときどうする?)、ある国のエネルギーの現状を聞き(耳でキャッチ)、医療の新しい技術を紹介した記事を読む(見つけた!)、という5つのできることが並びます。「〜に伴って」「〜を契機に」「〜をめぐって」「〜上の」のようなニュース・記事の硬いことばと、「〜(っ)きり」「〜最中に」「〜かけの」のような修理を頼む会話のことばが同じ課に出るので、どの場面のことばかを毎回確かめます。前の第18課で環境について考えたことを受けて、この課では技術の便利さと、その裏にある問題の両方に目を向けさせます。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目12時間90分×4コマ場面5

この課のねらい(Can-do)

  • 身近な道具のしくみを説明した読み物を読んで、生活の中の科学のおもしろさを知ることができる
  • 介護にロボットを使うことについて、使う側・使われる側などいくつかの立場や条件を考えて意見を言える
  • 家電が壊れたときに、いつ・何をしているときに・どうなったかを説明して修理を頼める
  • ある国のエネルギーの現状についての解説を聞いて、変化・理由・議論の中心といった基本の情報をつかめる
  • 医療の新しい技術を紹介した記事を読んで、その技術でできることと注意点を読み取れる

進め方と時間配分

目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入15分(1コマ目)「今日、家を出るまでに使った道具を三つ挙げてください」と聞き、電子レンジ・スマートフォン・水筒などを板書する。「この中で、しくみを説明できるものはありますか」と続け、便利なのに中身はよく知らない、という気づきから科学の話題に入る。第18課の環境の話(エネルギーを使いすぎない暮らし)ともつなげておく
1 見つけた!55分(1コマ目)自作の短い読み物(水筒が温度を保つしくみ)を配り、まず「何がふしぎで、答えは何か」を一文ずつ探させる。そのあと書き出しの「〜というと/〜といえば」に線を引き、読み手の思い込みを出してから「実は」で答えを示す解説の組み立てを確かめる
2 伝えてみよう90分(1コマ目の最後〜2コマ目の前半)介護ロボットを紹介した自作の記事を読み、働く人・介護される人・家族・施設の4つの立場カードを配る。自分のカードの立場から「〜べきだ/〜べきではない」「〜ほど〜はない」「〜ほかない」を使って意見を言い、最後は立場を離れて自分の意見を条件つきで述べる
3 こんなときどうする?70分(2コマ目の後半〜3コマ目の前半)洗濯機・パソコン・エアコンなどが壊れた状況カードを引き、修理窓口に電話するロールプレイ。「〜最中に」でいつ起きたか、「〜(っ)きり」でそのあとどうなったか、「〜かけの/〜かけている」で今の状態を言い、日時の約束まで進める
4 耳でキャッチ60分(3コマ目の後半〜4コマ目の最初)架空の国「A国」のエネルギーの現状を説明する解説(教師が読む自作の原稿・国名も内容も作り話)を2回聞く。1回目は「何が変わったか・なぜか・何が問題になっているか」をメモし、2回目で「〜に伴って」「〜ざるを得ない」「〜を契機に」「〜をめぐって」を聞き取って、メモを文に直す
5 見つけた!45分(4コマ目)腕時計型の機器で健康を記録する技術を紹介した自作の記事を読み、「できること」と「気をつけること」を表に分ける。「健康上」「安全上」「技術上」の「〜上」を探し、「〜の面で」と言い換えて意味を確かめる
課のまとめ25分(4コマ目の最後)この課で扱った技術(水筒・介護ロボット・家電・発電・健康を測る機器)から一つ選び、「どう役に立っているか」「どんな問題があるか」「これからどうすべきか」の3点を2分で発表する。聞き手は一つ質問し、発表者は条件をつけて答える

1 見つけた!

できること身近な道具のしくみを説明した読み物を読んで、何がふしぎで、その答えが何かを読み取り、生活の中の科学のおもしろさを知ることができる。

場面

科学館のパンフレットや、雑誌・ウェブの「身近な科学」のコラムを読む場面です。教室では、水筒が温かさや冷たさを長く保つしくみを説明した 6〜8 行の自作の読み物を用意し、読む前に「水筒のお茶は、どうして冷めにくいと思いますか」と予想を言わせます。予想を板書してから読ませると、読み物の「実は〜」の部分を自分の予想と比べながら読めます。

  • 記事:水筒の中はどうなっている?
  • 記事:冬の朝の温かいお茶、夏の冷たい麦茶。水筒といえば、飲み物の温度を長く保ってくれる便利な道具だ。
  • 記事:では、どうして中の温度は変わりにくいのだろうか。
  • 記事:実は、多くの水筒は壁が二重になっていて、そのあいだはほとんど空気のない状態になっている。
  • 記事:熱は、物から物へ伝わったり、空気の動きに乗って運ばれたりする。あいだに何もなければ、熱は外へ逃げにくい。
  • 記事:科学というと、実験室の中の難しい話だと思われがちだが、毎日使う道具の中にもその力は隠れているのだ。
学習項目 1 〜といえば/〜というと

意味・はたらき

ある語を話題として取り上げ、その語から多くの人が思い浮かべるものを続けて言う形です。身近な科学の読み物では、「科学というと難しいと思われがちだが、実は…」のように、読み手がふつう持っているイメージを先に出し、あとでそれをくつがえす書き出しによく使われ、読み手の興味を引きます。「〜といえば」は会話で前の人の話から連想して話題を変えるときにも使い、「〜というと」は「A国というと、南の国ですか」のように相手の言ったことを確かめる使い方もあります。どちらも話し言葉・書き言葉の両方で使えます。

接続

N+といえば/N+というと(確かめる使い方の「〜というと」は、相手の言った語や文を受ける)

形
水筒といえば、温度を保つ道具だ科学というと、難しい実験を思い浮かべる人が多い日本の冬といえば、こたつですね(確かめる)A国というと、南にある国ですか

導入

  • 連想ゲームから書き出しの文へ教師が「日本の夏といえば?」「ロボットというと?」と聞き、学習者が思い浮かべる語を次々に板書する。そのあと素材の書き出し「科学というと、実験室の中の難しい話だと思われがちだが」を示し、板書を「Nというと + よくあるイメージ → しかし、実は…」の2段にする。思い浮かべる語を言わせる段と、それをくつがえす段に分けて、解説の書き出しの型として見せる。

板書案

N + といえば/というと + よく思い浮かぶもの
科学というと、難しい実験を思い浮かべる人が多い。
→ しかし、実は 台所の道具にも科学がある。
〔赤〕Nに直接つく(*科学のといえば)
〔青〕確かめる:「A国というと、南の国ですか」は というと

場面と発話(自作)

  • 科学館のパンフレットの、磁石のコーナーの説明を読む。磁石というと、冷蔵庫にメモを留めるものを思い浮かべるかもしれません。でも、実はスマートフォンの中にも使われています。
  • ゼミの発表で、自分のテーマの話を始める。ロボットといえば、工場で働く大きな機械のイメージがありますが、今日は家の中で使われるロボットの話をします。
  • 友達との会話で、相手の話から別の話題に移る。ロボットといえば、駅の案内ロボット、もう見た?

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が語(雷・虹・電子レンジ・ロボットなど)を一つずつ出し、「〜といえば/〜というと、〜」で思い浮かぶものを言わせる。次に「でも、実は〜」を続けて2文にし、最後に自分の知っている身近な科学を一つ選んで、この型の書き出しで始まる3〜4文の短い解説を書かせる。

  1. 口頭教師が語のカード(雷・虹・電子レンジ・冷蔵庫・ロボット)を一枚ずつ見せ、全体で「〜といえば、〜」と思い浮かぶものを言わせる。次に個人を指名して「でも、実は〜」を足させ、2文の書き出しにする。最後に教師が「来週の発表は、A国についてです」とわざと短く言い、学習者に「A国というと、〜ですか」と確かめさせて、確かめる使い方にも切り替える。
  2. ペアA は道具の名前を表に、意外な事実を裏に書いたカード(例:電子レンジ/食べ物の中の水を揺らして温める)を持つ。A が「〜といえば?」と聞き、B が思い浮かぶものを答えたら、A が「実は〜」で裏の事実を伝える。B は「へえ、〜んですね」と受けて、3枚ずつで交替する。
  3. 産出「身近な科学コラム」:身の回りの道具を一つ選び、「〜というと〜と思われがちだが、実は〜」で始まる4〜5文のコラムを書いて、グループで読み合う。教師は名詞のあとに「の」を挟む誤りと、書き出しの問いかけのあとに「実は」の答えがきちんと来ているかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*科学のといえば」「*ロボットのというと」と、名詞のあとに「の」を入れる。名詞に直接つく形を板書で示し、「Nの」が要るのは後ろの名詞をくわしくするときだけと確かめる
  • 「*というば」「*といえると」と形を混ぜる。「言う」の「ば」の形が「いえば」、「と」の形が「いうと」であることを、「言えば/言うと」と並べて確かめる
  • 相手の言ったことを確かめるのに「明日といえば、土曜日ですか」と言う。通じるが、確かめるときは「明日というと、土曜日ですか」がふつうだと、二つの使い方を板書で分けて見せる

既習の文型との違い

  • 〜といえば/〜というと(第6課)第6課では、ふるさとの名物や季節の行事のように「いちばん代表的なもの」を紹介するのに使いました。この課では同じ形を、読み手のよくある思い込みを先に出し、あとで「実は」でくつがえす解説の書き出しとして使います。形は同じなので、新しく教えるのは後ろの「しかし、実は〜」との組み合わせだと伝えます。
  • 〜といっても(第11課)「〜といっても」は、相手が思い浮かべる程度を後ろで「それほどではない」と小さく言い直す形です(「料理ができるといっても、カレーぐらいです」)。「〜といえば」は思い浮かぶものを出すだけで、くつがえすのは後ろの「実は」の役目です。二つを混ぜて「科学といっても、難しい実験を思い浮かべる」と書くと、意味が通らなくなります。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 専門的な内容を興味・関心を引くように解説するときに使われる表現身近な科学の読み物は、いきなり答えを書かず、読み手に問いかけてから答えを出す組み立てになっていることが多いです。表現を一つずつ覚えさせるより、読み物の中で「問いかけ」「意外な答え」「身近な例」の3種類に色分けさせると、組み立てごとつかめます。自分で短い解説を書くときにも、この3種類を一つずつ入れさせます。例:〜をご存じだろうか/〜のはなぜだろうか/実は〜/意外なことに〜/身近な例でいえば〜/〜の秘密は〜にある

2 伝えてみよう

できること介護にロボットを使うことについて書かれた記事を読み、使う人・使われる人・家族など立場を変えて考え、条件をつけながら自分の意見を言える。

場面

授業やゼミで、新しい技術についての記事を読んで意見を出し合う場面です。教室では、介護の現場でロボットが体を支える仕事を手伝う様子を紹介した自作の短い記事(良い点と心配な点が両方書いてあるもの)を読ませ、働く人・介護される人・家族・施設の4つの立場カードを配ります。まず自分のカードの立場から意見を言い、次に別の立場の人の意見を聞いて、最後に「〜という条件なら」をつけて自分の意見をまとめさせます。

  • 日本人の学生:記事では、ロボットが体を支える仕事を手伝う例が紹介されていました。みなさんはどう思いますか。
  • 留学生A:働く人の立場から言えば、腰の負担が減るので、もっと使うべきだと思います。
  • 留学生B:確かにそうですね。でも、介護される人にとっては、人の手ほど安心できるものはないんじゃないでしょうか。
  • 日本人の学生:なるほど。全部をロボットに任せるべきではない、ということですね。
  • 留学生A:ええ。ただ、働く人がどうしても足りない施設では、ロボットに頼るほかない場合もあると思います。
  • 留学生B:それなら、ロボットを使うときは必ず人がそばにいる、という条件つきで賛成です。
学習項目 1 〜べきだ/〜べきではない/〜べき

意味・はたらき

話し手が「そうするのが当然だ・正しい」と判断していることを強く言う形です。「〜なければならない」が規則や必要から来る義務を言うのに対し、「〜べきだ」は話し手の考え(何が正しいか)を言い、「〜たほうがいい」より強く聞こえます。そのため、目上の人に向かって「先生は〜べきです」と言うと押しつけがましく、意見を言う場では「〜べきだと思います」「〜べきではないでしょうか」とやわらげるのがふつうです。「〜べきだった」は、しなかったことへの後悔を表します。話し言葉でも書き言葉でも使い、やや硬めです。

接続

V辞書形+べきだ(する→するべきだ/すべきだ)/否定は V辞書形+べきではない/イAく+あるべきだ・ナA/N+であるべきだ/V辞書形+べき+N

形
介護ロボットをもっと使うべきだ全部をロボットに任せるべきではないまず考えるべきことは安全だもっと早く相談するべきだった

導入

  • 3つの言い方を強さで並べる「部屋で一人のお年寄りが、重い荷物を持ち上げようとしている」絵を見せ、「どうしたらいいですか」と聞く。学習者の答えを「手伝ったほうがいい」「手伝わなければならない」「手伝うべきだ」の3つに整理して板書し、ほうがいい=助言、なければならない=規則や必要、べきだ=自分が正しいと思うこと、と矢印で強さと出どころの違いを示す。続けて否定は「べきではない」になることを、同じ絵で「一人で持つべきではない」と言って見せる。

板書案

V辞書形 + べきだ/べきではない
〔青〕Vたほうがいい(助言)→ Vなければならない(規則・必要)/べきだ(自分が正しいと思う)
ロボットをもっと使うべきだ。 全部を任せるべきではない。
〔赤〕する → するべき/すべき  *使わないべき
ナA・N + である べきだ イA + く ある べきだ

場面と発話(自作)

  • 授業の話し合いで、介護ロボットについて意見を言う。働く人の体を守るために、ロボットをもっと使うべきだと思います。
  • ニュースの記事を読んで、友達と感想を話す。便利でも、全部を機械に任せるべきじゃないよね。
  • レポートの締め切りに間に合わず、先輩に話す。もっと早く始めるべきでした。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「ロボット・使う」「スマホ・寝る前に見る」のような語のカードを出し、「〜べきだ」「〜べきではない」に変えて言わせる(「する」は「するべき/すべき」の両方を言わせる)。次に ST2 の立場カードを持たせ、「〜の立場から言えば、〜べきだと思います」の形で一人一つずつ意見を言い、ほかの人が「確かに〜。でも〜べきではないでしょうか」と返す。

  1. 口頭教師が語のカード(「ロボット・使う」「寝る前・スマホを見る」「ごみ・分ける」「約束・守る」)を出し、〇のカードでは「〜べきだ」、×のカードでは「〜べきではない」に全体で変えさせる。「相談する」「確認する」では「するべき」「すべき」の両方を言わせる。慣れたら個人を指名し、「〜べきだった」で後悔の言い方にも変えさせる。
  2. ペアST2 の立場カードを一人一枚持ち、相手のカードは見ない。A が「〜の立場から言えば、〜べきだと思います」と意見を言い、B は A の立場を当ててから「確かに〜。でも、〜べきではないでしょうか」と返す。2往復したらカードを交換して、別の立場で言い直す。
  3. 産出「立場カード討論」:4人のグループで介護ロボットについて自分の立場から意見を言い、最後に立場を離れて「〜という条件なら、〜べきだと思う」を一人一文ずつ言う。教師は否定をナイ形につける誤り(*使わないべき)と、目上の人に「〜べきです」と言い切っていないかを聞き、言い切りには「〜と思います」「〜ではないでしょうか」をつけ直させる。

つまずきと手当て

  • 「*使わないべきだ」とナイ形につける。否定は「使うべきではない」と、辞書形のあとで打ち消すことを板書の位置で示す
  • 「*しべきだ」「*するべくだ」と形が崩れる。「する」だけは「するべき」と「すべき」の二つがあり、ほかの形はないと確かめる
  • 「*ロボットは安全なべきだ」と形容詞や名詞に直接つける。「安全であるべきだ」「やさしくあるべきだ」と、「ある」をはさむ形を並べて見せる
  • 先生やアルバイト先の店長に「〜さんは〜べきです」と言い、強く聞こえてしまう。誤りではないが、意見の場では「〜べきだと思います」「〜べきではないでしょうか」をつける練習をする

既習の文型との違い

  • Vなければなりません(初中級 第3課)「なければならない」は規則・決まり・必要から来る義務で、自分の意見がなくても言えます(「ビザを更新しなければならない」)。「べきだ」は話し手が正しいと考えることなので、規則を伝える場面で「ビザを更新すべきだ」と言うと、決まりではなく自分の意見を言っているように聞こえます。
  • Vたほうがいいです/Vないほうがいいです(初級 第12課)「たほうがいい」は相手のためを思う助言で、言われた人に選ぶ余地が残ります。「べきだ」は選ぶ余地を残さないので、助言の場面で使うと強く聞こえます。否定も「ないほうがいい」はナイ形、「べきではない」は辞書形と、つく形が違うことを並べて見せます。
関連する文型
学習項目 2 〜ほど〜はない

意味・はたらき

「Nほど〜ものはない」で、Nがいちばん〜だと話し手が強く感じていることを表します。「Nがいちばん〜だ」と意味は近いですが、比べた結果を言うというより、気持ちをこめて言い切る形です。人のときは「〜ほど〜人はいない」と言います。「AはBほど〜ない」(AはBに及ばない、という比べた結果の打ち消し)と形が似ていて取り違えやすいので、ここで並べて区別します。会話でも文章でも使い、意見を言う場で自分の考えを強く出したいときに便利です。

接続

N+ほど+イA/ナAな/V辞書形・Vた+N(もの・こと・人)+はない(人は「はいない」)/V辞書形+ことほど+〜ことはない

形
人の手ほど安心できるものはない一人で介護することほど大変なことはない祖母ほど料理が上手な人はいない(比べる形と区別)ロボットは人ほど器用ではない

導入

  • 二つの「ほど」を並べる板書の左に「ロボットは人ほど器用ではない」、右に「人の手ほど温かいものはない」を書き、「どちらがいちばん?」と聞く。左は人のほうが上だと比べているだけ、右は人の手がいちばんだと強く言っている、と確かめてから、右の形を「Nほど + 〜もの/こと + はない」の枠にする。学習者に「あなたにとって、いちばん〜もの」を一つ思い浮かべさせ、枠に入れて言わせる。

板書案

N + ほど + 〜(もの・こと・人)+ は ない = Nがいちばん
人の手ほど安心できるものはない。
〔青〕比べる形:ロボットは 人ほど 器用ではない(人のほうが上)
〔赤〕ナA な+N(大変な仕事) 人 → はいない

場面と発話(自作)

  • 話し合いで、介護される人の気持ちを考えて意見を言う。お年寄りにとって、家族の声ほど安心できるものはないと思います。
  • 国に帰った友達に、日本の冬の話をする。寒い日に入るお風呂ほど気持ちのいいものはないよ。
  • 職場の休み時間に、同僚と暑い日の話をする。仕事のあとに飲む冷たい水ほどおいしいものはないですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「冬・こたつ・暖かい」のような3語のカードを出し、「〜ほど〜ものはない」の文にさせる。次に「AはBほど〜ない」の文と混ぜて読み上げ、学習者に「いちばんの文か、比べる文か」を手を挙げて答えさせる。最後に ST2 の話し合いで、自分の立場からいちばん大切だと思うことを「〜ほど〜はない」で一つ言わせる。

  1. 口頭教師が3語のカード(「冬・こたつ・暖かい」「雨の日・洗濯・面倒」「祖母・料理が上手(人)」)を出し、全体で「〜ほど〜ものはない/ことはない/人はいない」の文にさせる。次に教師が「いちばん」の文と「AはBほど〜ない」の比べる文を混ぜて読み上げ、個人を指名して「いちばんの文か、比べる文か」を答えさせる。
  2. ペアA が質問カード(「あなたにとっていちばん安心できるもの/うれしいこと/大変なこと」)を引いて聞き、B が「〜ほど〜ものはないですね」で答えて理由を一つ足す。A は「〜はどうですか」と別の候補を出して揺さぶり、B は言い直すか、理由を足して守るかを決める。3問で交替。
  3. 産出「いちばん大切なもの宣言」:ST2 の話し合いの最後に、自分の立場からいちばん大切だと思うことを「〜にとって、〜ほど〜ものはない。だから〜べきだ」の2文で発表する。教師は名詞の前の形容詞の形(*大変だ仕事)と、比べる形「AはBほど〜ない」との取り違えを見る。

つまずきと手当て

  • 「*介護ほど大変だ仕事はない」「*人の手ほど温かいなものはない」と、名詞の前の形容詞の形を誤る。ナAは「大変な」、イAは「温かい」と、名詞につなぐ形を確かめる
  • 「ロボットは人ほど器用ではない」を「ロボットがいちばん器用だ」の意味に取る。ほどの前がいちばんになるのは「〜はない」で終わる形だけ、と板書の左右を指して確かめる
  • 人について「彼ほど親切な人はない」と言う。昔の言い方としてはあるが、今の会話では「人はいない」がふつうだと伝える

既習の文型との違い

  • 〜ほど/〜くらい/〜ぐらい(第9課)第9課の「ほど」は「飛び上がるほどうれしかった」のように、程度を具体的な様子やたとえで示す形でした。この課は「〜はない」で終わって「いちばん」の意味になる決まった型です。「ほど」の前に来るのが程度のたとえか、いちばんのものかで分けさせます。
  • (〜ば)〜ほど(第3課)「続ければ続けるほど上手になる」は、片方が進むともう片方も進むという、いっしょに変わっていく形で、「いちばん」の意味はありません。前に「ば」の形や同じ語のくり返しが来るので、形の違いで見分けさせます。
関連する文型
学習項目 3 〜(より)ほかない/〜(より)ほかしかたがない

意味・はたらき

ほかに方法がないので、そうするしかない、というあきらめや覚悟を表します。意味は第13課の「〜しかない」と同じですが、少し硬く、「よりほかない」「ほかしかたがない」はさらに改まった言い方です。この課の ST4 の「〜ざるを得ない」も近い意味ですが、ざるを得ないは外の事情に追い込まれて、したくないことをする気持ちが強く、ほかないはほかに打つ手がないという結論のほうに重心があります。意見を言う場では、「ふつうは反対だが、この条件ならしかたがない」と条件つきで認めるときに使えます。

接続

V辞書形+(より)ほかない/V辞書形+(より)ほかしかたがない

形
人が足りないなら、ロボットに頼るほかない自分で調べるよりほかない電車が止まっているので、待つよりほかしかたがないここまで来たら、やるほかない

導入

  • 選べる道を一つずつ消していく「終電が出たあと、駅から家まで帰りたい」という状況で、教師がバス・タクシー・友達の車・歩く、の4枚のカードを黒板に貼る。「バスはもうない」「タクシーはお金が足りない」「友達は寝ている」と一枚ずつ外し、残った一枚を指して「歩いて帰るほかない」と言う。板書は「ほかの方法がない → V辞書形+ほかない」とし、「〜しかない」と同じ意味で少し硬いことを並べて書く。

板書案

ほかの方法がない → V辞書形 + (より)ほかない
人が足りないなら、ロボットに頼るほかない。
〔青〕会話:〜しかない やや硬い:〜ほかない 改まった:〜よりほかしかたがない
〔赤〕辞書形だけ(*頼ったほかない) *頼るしかほかない

場面と発話(自作)

  • 話し合いで、条件つきでロボットの利用を認める。働く人がどうしても集まらないなら、ロボットに頼るほかないと思います。
  • 大雨で電車が止まり、駅で友達にメッセージを送る。電車が動くまで、待つよりほかしかたがないみたい。
  • 保存したはずのレポートのファイルが開かず、先生に相談する。ファイルが壊れてしまったので、最初から書き直すほかありません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が状況カード(「財布を忘れた・友達にお金を借りる」「辞書がない・ネットで調べる」など)を出し、「〜ほかない」「〜よりほかない」の両方で言わせる。次に同じ状況を「〜しかない」でも言わせ、会話ならどれがふつうかを話し合わせる。最後に ST2 の立場カードで、「ふつうは〜べきではないが、〜なら〜ほかない」と条件をつけた意見を一つ言わせる。

  1. 口頭教師が状況カード(「財布を忘れた → 友達に借りる」「終電が出た → タクシーで帰る」「辞書がない → ネットで調べる」「傘がない → 雨がやむのを待つ」)を見せ、全体で「〜ほかない」、次に個人に「〜よりほかない」で言わせる。同じカードを「〜しかない」でも言わせ、三つの硬さの違いを手の高さで示す。
  2. ペアA は困った状況のカードと、提案を断る理由のカードを持つ(B には理由は見せない)。B が「〜はどう?」と方法を一つずつ提案し、A は理由のカードを使って「それは〜からだめなんだ」と断る。提案が尽きたところで二人で「じゃあ、〜ほかないね」と結論を言い、役を替えて別の状況で。
  3. 産出「最後の手段ディベート」:ST2 の話題で、「ふつうは〜べきではないが、〜という条件なら〜ほかない」と条件つきの意見を一人一つ言い、ほかの人がその条件に質問する。教師は辞書形以外への接続と、好きで選んだことに使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*頼ったほかない」「*頼りほかない」と辞書形以外につける。「頼るほかない」と辞書形だけにつくことを、カードの動詞を辞書形に直す練習で確かめる
  • 「*頼るしかほかない」と「しか」と「ほか」を重ねる。「頼るしかない」と「頼るほかない」は別々の言い方で、どちらか一つを選ぶと板書で分ける
  • 好きで選ぶことに使い、「ケーキが好きなので、毎日食べるほかない」と言う。誤りではないが、ほかに方法がないときの言い方なので、自分で選んだことには「〜ことにしている」などを使うと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜しかない(第13課)意味はほぼ同じで、「しかない」のほうが会話でふつうに使えます。「ほかない」はやや硬く、文章や改まった意見の場に合います。二つを重ねた「*頼るしかほかない」が出やすいので、どちらか一つを選ぶ形だと板書で分けます。
  • 〜ざるを得ない(第19課)「ざるを得ない」は外の事情に押されて、したくないことをする気持ちが強い形で、Vない形につきます。「ほかない」は辞書形につき、ほかに道がないという結論に重心があります。「頼るほかない/頼らざるを得ない」と接続を並べて書くと、形の混同も防げます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • さまざまな立場や条件などを考えて、意見を言うときに使う表現意見を言う練習では、賛成か反対かを先に決めさせるより、「誰の立場から言うか」と「どんな条件なら言えるか」を先に言わせると、一方的な意見になりにくくなります。相手の意見を一度受け止めてから自分の意見を出す「確かに〜。でも〜」の形も、ここで必ず使わせます。例:〜の立場から言えば/〜にとっては/確かに〜が、…/〜という点では/〜という条件つきで/一概には言えないが

3 こんなときどうする?

できること家電や機械が壊れたときに、何をしている最中に・どうなって・今どんな状態かを順に説明して、修理を頼める。

場面

家の洗濯機やパソコンが急に動かなくなり、メーカーの修理窓口や大家さんに電話する場面です。教室では「脱水の途中で止まった洗濯機」「画面が消えたパソコン」「変な音がするエアコン」などの状況カードを用意し、窓口の人の役は最初は教師がします。窓口の人が「いつから」「何をしているときに」「今はどうなっているか」と順に聞くので、その順に答えられるようにします。

  • 修理センターの人:お電話ありがとうございます。修理受付です。
  • 留学生:あの、洗濯機が動かなくなってしまったんですが。
  • 修理センターの人:どのような状態でしょうか。
  • 留学生:昨日の夜、脱水している最中に大きな音がして、止まったきり、ボタンを押しても動かないんです。
  • 修理センターの人:それはお困りですね。中に洗濯物は入っていますか。
  • 留学生:はい、洗いかけの服が入ったままで、ふたも開かないんです。
  • 修理センターの人:わかりました。では、係の者が伺います。ご都合のいい日はありますか。
  • 留学生:あさっての午前中ならいます。
学習項目 1 〜(っ)きり/〜(っ)きりだ(そのまま)

意味・はたらき

「Vたきり」で、ある動作や出来事のあと、続いて起こるはずのことが起こらず、そのままになっていることを表します。後ろには「〜ない」「連絡がない」のような内容が続くことが多く、困っている気持ちや心配が表れます。「〜たまま」もそのままの状態を言いますが、「たまま」がその状態で別のことをする・起こることを中立に言う(「窓を開けたまま寝た」)のに対し、「たきり」はそれ以来何も変わっていないことに重心があります。第17課の「〜(っ)きりだ(それだけ)」(二人きり・一度きり)とは意味が違います。「っきり」は話し言葉です。

接続

Vた+きり(だ)/Vた+っきり(だ)(話し言葉)

形
止まったきり、動かない修理に出したきり、連絡がない兄は朝出かけたきりだ買ったっきり、一度も使っていない

導入

  • 止まった画面を見せる画面が真っ暗なスマートフォンの絵を見せ、教師が「朝、急に画面が消えました。そのあと、何度ボタンを押しても、つきません」と話す。「短く言うと?」と聞いてから「画面が消えたきり、つかないんです」と言い、板書を「Vた+きり + 〜ない(それから変わらない)」にする。続けて「たまま」の文(「電気をつけたまま寝た」)を横に書き、何も変わらないことを言いたいときが「きり」だと比べる。

板書案

Vた + きり + 〜ない(それから変わらない)
止まったきり、動かない。
〔青〕Vたまま:窓を開けたまま寝た(その状態で別のことをする)
〔赤〕タ形だけ(*止まるきり) 話し言葉 → 〜たっきり
〔緑〕N・数 + きり=それだけ(二人きり・一度きり)第17課

場面と発話(自作)

  • パソコンが動かなくなり、修理窓口に電話する。更新のあと画面が固まったきり、何も押せないんです。
  • 修理に出したカメラがなかなか戻らず、店に問い合わせる。先月お願いしたきり、ご連絡をいただいていないのですが。
  • 寮の友達と、何日も見かけない人の話をする。隣の部屋の人、週末に出かけたっきり帰ってこないね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「電源が切れた・つかない」「メールを送った・返事がない」のような2つの文のカードを出し、「〜たきり、〜ない」の1文にさせる。次に ST3 の状況カードを引かせ、修理窓口への電話で「〜たきり、〜」を必ず1回入れて状況を説明させる。窓口役の学習者は「それから一度も〜ませんか」と確かめる。

  1. 口頭教師が2文のカード(「電源が切れた/つかない」「メールを送った/返事がない」「修理に出した/連絡がない」「出かけた/帰ってこない」)を読み、全体で「〜たきり、〜ない」の1文にまとめさせる。次に個人を指名して、くだけた「〜たっきり」に言い換えさせる。最後に後ろが変化する絵(すぐ動いた)を見せ、「きり」が使えないことを確かめる。
  2. ペアA は修理窓口の人、B は客。B は壊れた物と、その後の様子まで描いた絵カードを持ち、A は「その後はどうですか」「それから一度も〜ませんか」と聞く。B は「〜たきり、〜ない」で答え、A は聞いた内容を受付票に書いて読み上げる。合っていれば交替。
  3. 産出「困ったこと相談会」:「〜たきり、連絡がない/使っていない/戻ってこない」の形で自分が困っていることを一つ話し、グループの人が「〜たらどう?」と解決を勧める。教師は辞書形への接続と、第17課の「それだけ」の「きり」と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*止まるきり、動かない」と辞書形につける。この「そのまま」の意味は、もう起きたことのあとなので「止まったきり」とタ形だけ、と板書で確かめる
  • 後ろに変化が来る文で使い、「電源を入れたきり、すぐ動きました」と言う。誤りではないが意味がちぐはぐで、「きり」のあとは変わらない内容が来ると、絵の前後で確かめる
  • 第17課の「二人きり」「一度きり」(それだけ)と区別がつかない。名詞や数につくのが「それだけ」の「きり」、タ形につくのが「そのまま」の「きり」と、接続の違いで分けて板書する。「一度使ったきり」のように両方の意味が重なる文もあることにも触れる

既習の文型との違い

  • 〜(っ)きりだ(それだけ)(第17課)第17課の形は名詞や数について「それだけ・それ以上はない」を表しました(二人きり・一度きり)。この課の形はタ形について「それ以来変わらない」を表すので、前が名詞・数か、タ形かで見分けさせます。「一度会ったきり」のように両方の意味が重なる文も一つ見せておきます。
  • 〜まま(第5課)「たまま」は、ある状態のままで別のことをする・起こることを言い、後ろは何でもかまいません(「靴をはいたまま部屋に入った」)。「たきり」は後ろに変わらないこと・起こらないことが来て、困った気持ちや心配が出ます。同じ「窓を開けた」でも、「まま寝た」は状態の説明、「きり、閉めていない」はその後ずっとそのままだという心配になります。
関連する文型
学習項目 2 〜最中に

意味・はたらき

ある動作や出来事がいちばん盛んに行われているちょうどその時に、思いがけないこと(多くは困ること)が起こったことを表します。修理を頼む場面では「脱水している最中に止まった」のように、壊れたときに何をしていたかを伝えるのに使います。「〜ているときに」は時を中立に言うだけで、「〜最中に」のほうが「まさにその途中で」という強さがあります。第4課の「〜途中(で)」は、始めから終わりへ進んでいく過程のどこか(「帰る途中で」)を言い、移動にも使えるのに対し、「最中」は活動がさかんに行われている中を言います。「今、会議の最中だ」のように「〜最中だ」の形でも使います。

接続

Vている+最中に/Nの+最中に(「〜最中だ」「〜最中の+N」の形も)

形
脱水している最中に、止まった会議の最中に、電話が鳴ったデータを保存している最中に、電源が切れた今、料理の最中なので、あとでかけ直します

導入

  • いちばん大事な時に起きたことを話す教師が「昨日、レポートを書いていました。いちばん大事なところを書いているとき、パソコンが急に消えました」と、困った顔で話す。「いつ消えましたか」と聞いて「書いている時」を引き出し、「レポートを書いている最中に、パソコンが消えた」と言い直す。板書は「Vている/Nの + 最中に + 思いがけないこと」にし、「〜ているときに」と並べて、最中のほうが「まさにその途中」の強さがあることを示す。

板書案

Vている/Nの + 最中に + 思いがけないこと
脱水している最中に、止まった。
会議の最中に、電話が鳴った。
〔青〕〜ているときに(中立)→ 最中に(まさにその途中・困ったこと)
〔赤〕*保存する最中に 状態は「留守の間に」

場面と発話(自作)

  • エアコンの修理を頼む電話で、壊れたときの様子を言う。冷房を使っている最中に、急に変な音がして止まりました。
  • アルバイト先で、店長から電話がかかってきた。すみません、今、お客様の対応の最中なので、あとでかけ直します。
  • 授業のあと、先生に発表で困ったことを話す。発表の最中にパソコンの電源が落ちてしまって、本当に焦りました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「会議・電話が鳴る」「料理する・停電する」のようなカードを出し、名詞なら「Nの最中に」、動詞なら「Vている最中に」の文にさせる。次に ST3 の状況カードで、壊れたときに何をしていたかを「〜最中に」で言わせ、窓口役が「〜ているときですね」と言い換えて確かめる。

  1. 口頭教師が2枚の絵カード(「会議/電話が鳴る」「料理する/停電する」「データを保存する/電源が切れる」「試験を受ける/お腹が鳴る」)を出し、名詞なら「Nの最中に」、動詞なら「Vている最中に」で全体に言わせる。次に個人を指名し、「今、〜の最中なので、あとで〜」の断り方にも変えさせる。
  2. ペアA は電話をかける人、B はいま何かをしている人で、B だけが「今していること」のカード(料理・会議・運転・お客様の対応)を持つ。A が用件を言い、B は「すみません、今〜の最中なので」と断って、かけ直す時間を約束する。A は B が何をしていたかを言い当ててから交替。
  3. 産出「壊れた瞬間リポート」:ST3 の状況カードを引き、壊れたときに何をしていたかを「〜最中に」で、その後どうなったかを「〜たきり」で言う2文を作り、窓口への電話のロールプレイで使う。教師は辞書形への接続と、「最中に」のあとに思いがけないことが来ているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*保存する最中に」「*料理する最中に」と辞書形につける。動詞は「Vている最中に」、名詞は「料理の最中に」と、二つの形を板書で並べて確かめる
  • 予定どおりのことに使い、「授業の最中に、チャイムが鳴って授業が終わった」と言う。誤りではないが、「最中に」のあとには思いがけないこと・困ることが来るのがふつうだと確かめる
  • 「留守の最中に」のように、活動ではない状態に使う。状態には「留守の間に」を使うと、「〜ている間に」と並べて見せる

既習の文型との違い

  • Vている間に、〜(初中級 第7課)「間に」はその時間の中のどこかで何かが起こることを中立に言い、留守・休みのような状態にも使えます。「最中に」は活動がさかんに行われている中で、多くは困ることが起こったときに使います。状態に「最中」を使った「留守の最中に」は不自然です。
  • 〜途中(で)/〜途中(に)(第4課)「途中」は始まりから終わりへ進む過程の中ほどを言い、駅へ行く途中のような移動によく使います。「最中」は会議・食事・作業のような活動の中を言い、移動にはあまり使いません。「家へ帰る最中に」より「帰る途中で」がふつうです。
  • Vるところです/Vているところです/Vたところです(初中級 第10課)「ているところ」は今まさにしていることを伝えるだけで、困った出来事の意味はありません。「今、料理しているところです」と「料理の最中に電話が鳴った」を並べ、後ろに出来事が来るのが「最中に」だと見せます。
関連する文型
学習項目 3 〜かけだ/〜かけの/〜かける

意味・はたらき

「Vます形+かける」で、動作を始めて途中まで進んだが、まだ終わっていないことを表します(「読みかけの本」「書きかけのメール」)。後ろに名詞が来るときは「〜かけの+N」、文の終わりでは「〜かけだ」です。「壊れる・切れる・取れる」のような変化の動詞につくと、もう少しでそうなるところだという意味になり(「電池が切れかけている」)、壊れかけた物の状態を説明するのに使えます。「話しかける」「呼びかける」は「相手に向けて〜する」という別の動詞で、途中という意味はありません。

接続

Vます形+かける/Vます形+かけの+N/Vます形+かけだ

形
洗いかけの服書きかけのレポート電池が切れかけているドアの取っ手が取れかけている

導入

  • 途中の物を見せる半分食べたパンの絵と、途中まで書いたノートの実物を見せ、「全部食べましたか」「書き終わりましたか」と聞いて「まだ途中」を引き出す。「食べかけのパン」「書きかけのノート」と言い、板書を「Vます形+かけの+N(途中で止まっている)」にする。次に、取れそうなボタンの付いたシャツの絵で「ボタンが取れかけている」と言い、変化の動詞では「もう少しで〜する」になることを2段目に書く。

板書案

Vます形 + かけ(の+N/だ/ている)
洗いかけの服(途中で止まっている)
〔青〕変化の動詞:電池が切れかけている(もう少しで〜)
〔赤〕*読むかけ → 読み + かけ
〔緑〕話しかける・呼びかける=相手に向けて〜する(途中の意味なし)

場面と発話(自作)

  • 修理窓口に、洗濯機の中の様子を伝える。洗いかけの服が中に入ったままなんです。
  • 大家さんに、部屋の不具合を連絡する。玄関の電気が消えかけていて、ときどき暗くなります。
  • 図書館で、借りた本を返すかどうか友達と話す。まだ読みかけだから、もう一週間借りるよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が絵カード(半分のケーキ・途中のメール・取れそうなねじ・消えそうな電球)を見せ、「〜かけの+N」「〜かけている」で言わせる。次に ST3 の状況カードで、壊れた物の今の状態を「〜かけている」で一つ入れて窓口に説明させる。最後に「話しかける」の文と並べ、どちらが途中の意味かを答えさせる。

  1. 口頭教師が絵カード(半分のケーキ・途中のメール・半分塗った壁・取れそうなボタン・消えそうな電球)を見せ、全体で「〜かけの+N」「〜かけている」で言わせる。動詞はまずます形を言わせてから「かけ」を足す順にする。次に個人を指名し、その文が「途中」の意味か「もう少しで」の意味かを答えさせる。
  2. ペアA は物の様子を描いた絵カードを1枚、B は同じ物の様子違いの絵4枚を持つ。A は絵を見せずに「〜かけていて」「〜かけの〜が」を使って様子を説明し、B は説明に合う絵を4枚から選ぶ。当たったら交替。
  3. 産出「部屋の不具合メール」:大家さんあてに、部屋の中で壊れかけている物を二つ説明するメールを3〜4文で書く(「〜が取れかけていて」「〜が消えかけていて」)。教師は辞書形への接続と、「話しかける」を途中の意味で使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*読むかけの本」「*切れるかけている」と辞書形につける。「読み」「切れ」とます形にしてからつけることを、ます形を言わせてから「かけ」を足す順で練習する
  • 「友達に話しかけた」を「友達に途中まで話した」と取る。「話しかける・呼びかける」は相手に向けてする別の動詞だと、語として分けて覚えさせる
  • 「読みかけた」と「読み始めた」を同じだと思う。読み始めた=始めたことだけ、読みかけた=始めたが途中で止めた、と続きの文(「読みかけて、やめた」)で違いを見せる

既習の文型との違い

  • 〜途中(で)/〜途中(に)(第4課)「途中で」は、動作の途中で何かが起こる・やめるという時を言います。「〜かけ」は途中で止まっている物や状態そのものを言い、「読みかけの本」のように名詞をくわしくできます。
  • 〜まま(第5課)「洗いかけの服が入ったまま」のように一緒に使うことが多い形です。「かけ」は途中までしたこと、「まま」はその状態が変わらずに続いていることを言い、役割が違うので、一つの文の中でどちらが何を言っているかを確かめさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 物が壊れた状況を説明するときに使う表現壊れた様子は、電源・画面・音・水・部品の5つのかたまりに分けて覚えさせると、状況カードを見てすぐ言えるようになります。「急に」「〜たら」「何度〜ても」のように、いつ・どうしたらそうなったかを添える語も一緒に練習します。例:電源が入らない/画面が固まる・映らない/変な音がする/水が漏れる/ねじが外れる・取っ手が取れる/何度押しても反応しない

4 耳でキャッチ

できることある国のエネルギーの現状についての解説を聞いて、何が変わったか・その理由・何が議論になっているかという基本の情報をつかめる。

場面

ニュースの解説コーナーや、授業で見る解説動画を聞く場面です。教室では、架空の国「A国」の電気のつくり方の変化を説明する自作の原稿を教師が読みます。実在の国や数字と取り違えないよう、聞く前に「国の名前も内容も作り話です」と伝え、メモ用に「変化」「理由」「きっかけ」「議論」の4つの枠を書いた紙を配ります。

  • 解説:今日は、架空の国、A国のエネルギーの今についてお伝えします。
  • 解説:A国では、工業の発展に伴って、電気を使う量が年々増えてきました。
  • 解説:燃料の多くを外国から買っていたため、燃料の値段が上がると、電気代も上げざるを得ませんでした。
  • 解説:数年前の大きな停電を契機に、政府は国内で電気をつくる方法を増やす方針を打ち出しました。
  • 解説:今、特に注目されているのが、海の上に風力発電所をつくる計画です。
  • 解説:この計画をめぐっては、漁業への影響を心配する声もあり、住民の意見が分かれています。
学習項目 1 〜に伴って/〜に伴い/〜に伴う

意味・はたらき

一方が変わると、それにつれてもう一方も変わること、またはある出来事が起きることに合わせて別のことが起こることを表します。ニュース・解説・お知らせなどで使う硬い書き言葉で、「〜に伴い」は文章でさらに改まった形、名詞につなぐときは「〜に伴う+N」です。第5課の「〜につれて」も変化どうしを結びますが、につれては少しずつ進む変化どうしにしか使えないのに対し、に伴っては「工場の移転に伴い」のような一度きりの出来事にも使えます。「危険を伴う仕事」の「〜を伴う」(〜を含む)とは別の形です。

接続

N+に伴って/に伴い/に伴う+N/V辞書形+(の)に伴って

形
工業の発展に伴って、電気を使う量が増えた工場の移転に伴い、道路が新しくなった人口が増えるのに伴って開発に伴う問題

導入

  • グラフの二本の線で見せる右上がりの線を2本描いた簡単なグラフ(数字は入れない)を見せ、片方に「町の人口」、もう片方に「電気を使う量」と書く。「人口が増えると、電気は?」と聞いて「増える」を引き出し、「人口の増加に伴って、電気を使う量も増えた」と言う。板書は「N(変化・出来事)+に伴って + 別の変化」にし、横に「〜につれて(少しずつの変化だけ・会話でも)」を書いて、駅の開通のような一度の出来事には「に伴って」を使うことを比べる。

板書案

N(変化・出来事)+ に伴って/に伴い + 別の変化
工業の発展に伴って、電気を使う量が増えた。
N + に伴う + N(開発に伴う問題)
〔青〕〜につれて:少しずつの変化だけ/に伴って:一度の出来事にも
〔赤〕*発展を伴って(「〜を伴う」は「含む」の別の形)

場面と発話(自作)

  • 駅に、工事のお知らせが貼ってある。新しい駅ビルの工事に伴い、北口の出口は使えません。
  • 授業で聞いた解説の内容を、メモから文に直す。A国では、工業の発展に伴って、電気を使う量が増えたそうです。
  • 大学のお知らせを読んで、図書館の変更を知る。図書館の改修工事に伴い、来月から閲覧室の利用時間が変わります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「気温が上がる・エアコンを使う人が増える」「店の移転・駐車場が広くなる」のような2つのカードを出し、「〜に伴って」「〜に伴い」で1文にさせる。次に「〜につれて」でも言えるかを考えさせ、一度の出来事のカードではにつれてが使えないことを確かめる。最後に ST4 の解説のメモ(変化の枠)を「〜に伴って」の文にして発表させる。

  1. 口頭教師が2枚のカード(「気温が上がる/エアコンを使う人が増える」「店の移転/駐車場が広くなる」「人口が減る/バスの本数が減る」「工場の建設/道路が新しくなる」)を見せ、全体で「〜に伴って」、次に個人で「〜に伴い」の文にさせる。後ろが名詞のカード(「問題」「変化」)では「〜に伴う+N」に変えさせる。
  2. ペアA は駅や役所のお知らせの文(「〜に伴い、〜」の硬い文)のカードを持って読み上げ、B はそれを友達に伝えるつもりで「〜から、〜んだって」とくだけた言い方に直す。次は B がくだけた文を言い、A がお知らせの文に戻す。硬い形と会話の形を行き来させる。
  3. 産出「町の変化ニュース原稿」:自分の国や住んでいる町で起きた変化を一つ選び、「〜に伴って」「〜に伴う」を使ったニュース原稿を3文で書いて読み上げる。教師は「伴う/伴って」の使い分けと、助詞が「に」になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*発展に伴う、電気を使う量が増えた」と、文を続けるのに「伴う」を使う。後ろが文なら「伴って/伴い」、名詞なら「伴う+N」と、矢印の向きで見せる
  • 「*発展を伴って、電気が増えた」と助詞を「を」にする。「〜を伴う」は「危険を伴う(含む)」という別の形なので、この意味では「に」だと二つの例文を並べて確かめる
  • 一度の出来事に「駅の開通につれて、町がにぎやかになった」と言う。誤りとまでは言わないが不自然で、一度の出来事は「開通に伴って」がふつうと、グラフの線(少しずつ)と点(一度)で比べる
  • 友達との会話で「引っ越しに伴って、自転車を買ったよ」と言い、硬すぎて浮く。誤りではないが、会話では「引っ越したから」「引っ越しのときに」がふつうだと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜につれて(第5課)「につれて」は少しずつ進む変化どうしにだけ使い、会話でも使えます。「に伴って」は移転・開通・改正のような一度の出来事にも使える書き言葉です。グラフの線(少しずつ)と点(一度)で分けて見せます。
  • 〜とともに(変化)(第9課)「とともに」も変化どうしを結び、硬さも近い形です。ただ「とともに」には「家族とともに暮らす」のように人と一緒の意味もあるのに対し、この課の「〜に伴って」は出来事や変化につけて使います。お知らせの文で出来事を受けるときは「に伴い」がよく選ばれる、と素材で確かめます。
関連する文型
学習項目 2 〜ざるを得ない

意味・はたらき

本当はしたくないが、まわりの事情から、そうするしかないという気持ちを表します。硬い言い方で、ニュースや解説、改まった会話で使い、友達との会話では「〜しかない」「〜なきゃいけない」がふつうです。ST2 の「〜ほかない」が「ほかの方法がない」という結論を言うのに対し、ざるを得ないは不本意さ・追い込まれた感じが強く出ます。「〜なければならない」は規則や義務を言うので、気持ちの重さが違います。「認めざるを得ない」は、認めたくないが認めるしかない、という意味でよく使われます。

接続

Vない形+ざるを得ない(する→せざるを得ない、来る→来(こ)ざるを得ない)

形
電気代を上げざるを得ない計画を変えざるを得ない雨が強いので、中止にせざるを得ないその意見の正しさは認めざるを得ない

導入

  • したくないのに、する教師がお店の店長の役で「材料の値段が上がりました。お客さんは減ってほしくない。でも、このままでは店がつぶれます」と困った顔で話し、「どうしますか」と聞いて「値段を上げる」を引き出す。「上げたくないけれど、上げざるを得ません」と言い、板書を「Vない(「ない」をとる)+ざるを得ない=したくないが、するしかない」にする。「する→せざる」「来る→こざる」は赤で書く。

板書案

Vない(「ない」をとる)+ ざるを得ない = したくないが、するしかない
上げない → 上げ + ざるを得ない
電気代を上げざるを得なかった。
〔赤〕する → せざるを得ない 来る → こざるを得ない
〔青〕ほかない(ほかに道がない)/ざるを得ない(事情に押されて・不本意)

場面と発話(自作)

  • 解説を聞いて、A国の電気代の話をメモから文にする。燃料の値段が上がったので、電気代も上げざるを得なかったそうです。
  • サークルの代表として、雨の日の行事について連絡する。雨が強くなってきたので、今日のバーベキューは中止にせざるを得ません。
  • 会社の会議で、課長が予定の変更を伝える。担当者が体調を崩したので、来週の説明会は延期せざるを得ません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が動詞のカード(上げる・やめる・待つ・する・来る)を出し、「〜ざるを得ない」の形に変えさせる(「する」「来る」を多めに出す)。次に「したくないこと」と「その理由」の状況カードで、「〜ので、〜ざるを得ない」の文を作らせる。最後に ST4 の解説の「理由」の枠のメモを、この形を使って説明させる。

  1. 口頭教師が動詞カード(上げる・やめる・待つ・認める・する・来る・中止する)を出し、全体で「〜ざるを得ない」に変えさせる。「する」「来る」は個人を指名して多めに当てる。次に「したくないこと+理由」のカード(「店を閉める/客が減った」「旅行をやめる/台風が来る」)で、「〜ので、〜ざるを得ない」の文を作らせる。
  2. ペアA は店長やサークルの代表の役で、「したくないけれどすること」のカードを持つ。A が「申し訳ないんですが、〜ので、〜ざるを得ません」と事情を説明し、B は「それはしかたがないですね」か「ほかの方法はないんですか」で返す。B が別の方法を出したら、A は「それも〜ので」と答える。交替して別のカードで。
  3. 産出「苦しい決断の説明」:ST4 の A国 の解説メモから「理由」と「したくないのにしたこと」を一組選び、「〜ため、〜ざるを得なかった」の文でクラスに説明する。教師は「する→せざる」「来る→こざる」の形と、自分がしたいことに使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*しざるを得ない」「*こないざるを得ない」と「する」「来る」の形を誤る。「せざる」「こざる」は特別だと、表にして赤で確かめる
  • 「*上げないざるを得ない」と、ナイ形の「ない」を残す。「上げない」から「ない」をとって「ざる」をつけると、カードの「ない」を手で隠して見せる
  • 自分がしたいことに使い、「好きな歌手が来るので、コンサートに行かざるを得ない」と言う。誤りではないが、冗談でない限り「したくないのに」の意味が伝わってしまうと確かめる
  • 「得ない」を「とくない」「えない」と読み迷う。「ざるをえない」と一続きで読む練習をする

既習の文型との違い

  • 〜しかない(第13課)「しかない」は会話でふつうに使い、したくないという気持ちはそれほど強く出ません。「ざるを得ない」は硬い言い方で、事情に追い込まれて、本当はしたくないという気持ちがはっきり出ます。友達との会話では「しかない」に言い換えさせます。
  • Vなければなりません(初中級 第3課)「なければならない」は規則や義務を言い、話し手の気持ちは入りません。「ざるを得ない」は「したくない」という気持ちが前提にあるので、決まりを伝えるだけの場面(「毎日出席を取らなければならない」)に使うと、話し手がいやがっているように聞こえます。
関連する文型
学習項目 3 〜を契機に(して)/〜を契機として

意味・はたらき

ある出来事を転機として、大きな変化や新しい動きが始まったことを表します。ニュース・解説・論文などの硬い書き言葉で、国や社会、組織の方針が変わるような話によく使います。第1課の「〜がきっかけで」は個人的なことにも会話にも広く使えるのに対し、「〜を契機に」は改まった文章向けで、日常の小さなことに使うと大げさに聞こえます。後ろには「方針を変えた」「〜が始まった」「関心が高まった」のような変化・始まりの内容が来ます。「〜が契機となって」の形もあります。

接続

N+を契機に(して)/N+を契機として/Vた+のを契機に

形
大きな停電を契機に、方針が変わった留学を契機として、環境問題に関心を持った工場ができたのを契機に、町の人口が増えた(別の形)事故が契機となって

導入

  • 「きっかけ」を硬く言い直す学習者に「日本語を始めたきっかけは何ですか」と聞き、「アニメがきっかけで」の答えを引き出す。そのあと ST4 の解説の文「数年前の大きな停電を契機に、政府は方針を打ち出した」を見せ、「きっかけ」と同じ意味で、国や社会の大きな変化を文章で言うときの言い方だと伝える。板書は「〜がきっかけで(会話・個人)」「〜を契機に(ニュース・社会)」の2段にし、助詞が「が」と「を」で違うことを赤で示す。

板書案

N + を契機に(して)/を契機として + 変化・始まり
大きな停電を契機に、方針が変わった。
Vた + のを契機に(工場ができたのを契機に)
〔青〕〜がきっかけで(会話・個人)/〜を契機に(ニュース・社会)
〔赤〕*停電が契機に → 停電が契機となって

場面と発話(自作)

  • ゼミの発表で、自分の国の町の変化を説明する。新しい鉄道が開通したのを契機に、町には多くの店が集まるようになりました。
  • 奨学金の申請書に、研究テーマを選んだ理由を書く。日本への留学を契機として、エネルギーの使い方に関心を持つようになった。
  • ニュースで、ある町の取り組みを紹介する。去年の水害を契機に、町は住民向けの防災訓練を年に二回行うようになりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「〜がきっかけで」の会話の文を言い、「〜を契機に」の文章の言い方に書き換えさせる(「地震がきっかけで、防災の意識が変わった」→「地震を契機に、防災の意識が高まった」)。次に ST4 の解説の「きっかけ」の枠のメモを、この形で文にする。最後に、自分の考え方が変わった出来事を、作文の一文として「〜を契機に」で書かせる。

  1. 口頭教師が会話の文(「地震がきっかけで、防災の意識が変わった」「留学がきっかけで、料理を始めた」「新しい駅ができたのがきっかけで、店が増えた」)を言い、全体で「〜を契機に」の文章の言い方に書き換えさせる。動詞の文は「〜たのを契機に」になることを、個人を指名して確かめる。
  2. ペアA は出来事のカード(大きな台風・新しい法律・駅の開通・国際大会の開催)、B はその後の変化のカードを持つ。A が出来事を読み上げ、B は合う変化を選んで「〜を契機に、〜」の1文にする。合っていれば A が「〜が契機となって、〜」と別の形で言い直す。交替して全部のカードを組にする。
  3. 産出「わたしの転機」作文:自分の考え方や生活が大きく変わった出来事を一つ選び、「〜を契機に」を使って作文の段落(4〜5文)を書く。教師は助詞の「を」と、小さな出来事に使って大げさになっていないかを見て、必要なら「〜がきっかけで」に戻させる。

つまずきと手当て

  • 「*停電が契機に」と助詞を「が」にする。「を契機に」か「が契機となって」のどちらかで、「が契機に」はないと、二つの形を並べて確かめる
  • 「*停電を契機で」と「で」をつける。「契機に」「契機として」の形で覚えさせ、「きっかけで」と混ざっていないか確かめる
  • 友達との会話で「この前の旅行を契機に、写真を始めたんだ」と言い、大げさに聞こえる。誤りではないが、会話では「〜がきっかけで」がふつうだと、場面のカードで分ける

既習の文型との違い

  • 〜がきっかけで(第1課)「がきっかけで」は個人的なことにも会話にも使え、自己紹介でも自然です。「を契機に」は社会や組織の大きな変化を文章で言う形で、助詞も「が」と「を」で違います。会話の文を文章の文に書き換える練習で、二つを結びつけて覚えさせます。
関連する文型
学習項目 4 〜をめぐって/〜をめぐり/〜をめぐる

意味・はたらき

あることを中心に、いくつかの立場の人が議論したり、対立したり、争ったりすることを表します。後ろには「議論する」「意見が分かれる」「対立する」「問題が起こる」のような語が来ます。「〜について」は話題を中立に示すだけで、説明する・話すなどにも広く使えますが、「〜をめぐって」は人々の考えがぶつかり合っている場合に使い、一人がする説明には使いません。第15課の「〜に関して」も硬い話題の示し方ですが、対立の意味はありません。ニュースや解説で使う硬い言い方で、「〜をめぐり」はさらに文章的、名詞につなぐときは「〜をめぐる+N」です。

接続

N+をめぐって/をめぐり/をめぐる+N

形
発電所の計画をめぐって、意見が分かれている電気代の値上げをめぐり、議論が続いている資源をめぐる争い建設の場所をめぐる問題

導入

  • 真ん中の一つを囲む矢印黒板の真ん中に「海の上の風力発電所の計画」と書いて丸で囲み、まわりに「電気が増えてうれしい(住民)」「魚がとれなくなる(漁業の人)」「景色が変わる(観光の人)」と書いて、それぞれから真ん中へ矢印を向ける。「何について意見がぶつかっていますか」と聞いてから、「この計画をめぐって、意見が分かれています」と言う。板書の下に「〜について(中立・説明にも)」と並べ、ぶつかり合いがあるときが「めぐって」だと示す。

板書案

N(話題の中心)+ をめぐって/をめぐり + 議論・対立
〔図〕真ん中に「風力発電所の計画」を丸で囲み、まわりの立場から矢印
この計画をめぐって、意見が分かれている。
N + をめぐる + N(資源をめぐる争い)
〔青〕〜について(中立・説明にも)/をめぐって(意見がぶつかる)

場面と発話(自作)

  • ニュースの解説で、計画への反応を伝える。新しいごみ処理場の場所をめぐり、住民の話し合いが続いています。
  • 授業で、聞いた解説の内容をクラスに報告する。A国では、風力発電所の計画をめぐって、住民の意見が分かれているそうです。
  • ゼミの話し合いで、読んだ記事の内容を説明する。介護ロボットの導入をめぐっては、費用の面から慎重な意見も出ています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が話題のカード(駅前の再開発・学校の制服・新しい道路)を出し、「〜をめぐって、〜」で、誰と誰の意見がどう分かれているかを言わせる。次に「〜について」の文と混ぜて、どちらが自然かを選ばせる(「エネルギーについて説明します」「計画をめぐって議論が続く」)。最後に ST4 の解説の「議論」の枠のメモを、「〜をめぐる+N」と「〜をめぐって」の両方の文にする。

  1. 口頭教師が話題のカード(駅前の再開発・学校の制服・新しい道路・ごみの出し方の規則)を出し、全体で「〜をめぐって、意見が分かれている」の文にする。次に個人を指名して、誰と誰の意見が分かれているかを足させ(「住民と店の人の間で」)、名詞につなぐ「〜をめぐる問題」にも言い換えさせる。
  2. ペアA と B が同じ話題について、別々の立場のカード(賛成の理由・反対の理由)を持ち、相手の理由は見ない。互いに理由を一つずつ伝えたあと、二人で「〜をめぐっては、〜という意見と〜という意見がある」の1文にまとめて発表する。次の話題では立場を入れ替える。
  3. 産出「対立マップ発表」:自分の国や町で意見が分かれている話題を一つ選び、板書の図と同じ形のマップ(真ん中に話題・まわりに立場と理由)を描いて、「〜をめぐって」「〜をめぐる」を使って1分で説明する。教師は一人の説明に「めぐって」を使っていないかと、名詞の前の形を見る。

つまずきと手当て

  • 「*計画のめぐって」と助詞を「の」にする。「をめぐって」で一つの形だと板書し、「〜を中心に」と同じく「を」をとることを確かめる
  • 「*計画をめぐって問題」と、名詞につなぐのに「めぐって」を使う。名詞の前は「めぐる問題」、文が続くなら「めぐって」と、矢印の向きで見せる
  • 一人の説明に使い、「これからエネルギーをめぐって説明します」と言う。誤りとまでは言わないが不自然で、説明には「〜について」を使い、「めぐって」は意見がぶつかるときだけと、黒板の矢印の図で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜に関して/〜に関する(第15課)「に関して」は話題を硬く示す形で、説明・質問・お知らせに広く使い、対立の意味はありません。「をめぐって」は複数の立場の考えがぶつかる場合に使います。「この件に関してご質問はありますか」の「に関して」を「をめぐって」に替えると不自然になる例で確かめます。
  • 〜を中心に(して)/〜を中心として(第6課)どちらも「を」をとる形ですが、「を中心に」は範囲の真ん中(駅を中心に店が並ぶ)を言い、争いの意味はありません。板書の図で、真ん中に向かって矢印がぶつかるのが「めぐって」、真ん中から外へ広がるのが「中心に」と分けます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • エネルギー問題について説明するときに使われることば・表現エネルギーの解説には、硬い漢語が続けて出てきます。聞く前に、「つくる・使う・買う」の3つの動きに分けて語を板書しておくと、知らない語が出ても文の流れを追えます。数字は聞き取りの中心にせず、「増えた・減った・頼っている」という向きをつかむことを優先させます。例:発電する/電力の需要と供給/燃料を輸入に頼る/再生可能エネルギー/〜の割合を占める/方針を打ち出す

5 見つけた!

できること医療の新しい技術を紹介した記事を読んで、その技術で何ができるようになったかと、使うときの注意点を読み取れる。

場面

新聞の科学欄や、病院の待合室の情報誌で、話題の医療技術の記事を読む場面です。教室では、腕時計のような機器で脈や睡眠を記録し、診察の参考にする技術を紹介した自作の記事を用意します。読む前に表の左に「できること」、右に「気をつけること」と書いた紙を配り、記事の文を左右に分けて書き込ませると、良い点だけを読んで終わることを防げます。

  • 記事:腕時計で健康を記録する時代
  • 記事:最近は、腕時計のような小さな機器で、脈や睡眠の様子を毎日記録できるようになった。
  • 記事:記録を医師に見せれば、ふだんの体の様子がわかり、診察の参考にもなる。
  • 記事:ただし、機器が示す数字だけで病気かどうかを決めることはできず、診断上の判断はあくまで医師が行う。
  • 記事:また、体の記録は大切な個人の情報なので、安全上の対策も欠かせない。
  • 記事:技術上はさらに多くのことが測れるようになりつつあり、これからの使い方が注目されている。
学習項目 1 〜上の/〜上

意味・はたらき

主に漢語の名詞について、「〜の点から見て」「〜の面で」という意味を表します(健康上の理由・安全上の注意・技術上の問題)。読みは「じょう」です。医療の記事では「診断上」「治療上」「管理上」のような語がよく出ます。名詞につなぐときは「〜上の+N」、文の中では「技術上は可能だ」「健康上、問題はない」のように副詞のように使います。「健康的な生活」の「〜的」は「健康によい・健康らしい」という意味で、「健康上の問題」(健康の面での問題)とは違います。会話では「健康の面で」「安全のために」のように言うことが多く、「〜上」は文章や改まった話し方の言い方です。第18課の「〜上(に)」(うえに=それに加えて)とは読みも意味も違います。

接続

N(主に漢語)+上(じょう)+の+N/N(主に漢語)+上(じょう)、〜

形
健康上の理由で休む安全上の対策が欠かせない技術上は可能だデータの管理上、問題がある

導入

  • 記事の「〜上」を「〜の面で」に戻すST5 の記事から「診断上の判断」「安全上の対策」「技術上は」の3か所に線を引かせ、「〜の面で」に言い換えると意味が通るか確かめさせる。板書は「N+上(じょう)=Nの面で(文章)」とし、読みを「じょう」と大きく書く。そのあと「健康上の問題」と「健康的な生活」を並べ、どちらが「健康の面で」で、どちらが「健康によい」かを聞いて区別させる。

板書案

N(漢語)+ 上(じょう)= Nの面で(文章)
健康上の理由/安全上の対策/技術上は可能だ
〔赤〕読みは じょう *健康上な問題 → 健康上の問題
〔青〕健康上の問題(健康の面で)⇔ 健康的な生活(健康によい)
〔緑〕第18課「〜上(に)」=うえに(それに加えて)

場面と発話(自作)

  • 病院の案内に、検査の前の注意が書いてある。安全上の理由から、検査の前日の夜九時以降は食事をしないでください。
  • アルバイトを休むことになり、メールで店長に伝える。健康上の理由で、来週のシフトをお休みさせていただけないでしょうか。
  • 工場の見学で、案内の人が注意を伝える。衛生上の理由から、見学の前に手を洗って、帽子をかぶってください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が漢語のカード(健康・安全・技術・法律・管理・教育)を出し、「〜上の+N」を作らせる(「安全上の注意」「教育上の目的」など)。次に「〜の面で」「〜のために」を使った会話の文を、記事の文に書き換えさせる。最後に ST5 の表の「気をつけること」の欄から一つ選び、「〜上」を使った一文で書かせる。

  1. 口頭教師が漢語のカード(健康・安全・技術・法律・管理・教育・衛生)を出し、全体で「〜上の+N」(安全上の注意・教育上の目的)を作らせる。次に会話の文(「体のことで休みます」「安全のために、ヘルメットをかぶってください」)を個人に読ませ、「〜上」を使った文章の言い方に書き換えさせる。
  2. ペアA は「〜上」の入った掲示や記事の文のカード、B は「〜の面で」「〜のために」を使った会話の文のカードを持ち、同じ意味の組を探して読み合う。組ができたら、A が会話の文を、B が掲示の文を言い直して交替する。
  3. 産出「注意書きを作ろう」:ST5 の「気をつけること」の表から二つ選び、「〜上の理由から」「〜上、〜」を使って、病院や施設に貼る注意書きを2〜3文で書く。教師は読みが「じょう」になっているか、「な」でつないでいないか、和語につけていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「健康上」を「けんこううえ」と読む。この「上」は「じょう」と読み、第18課の「〜上(に)」は「うえ」と、読みの違う二つを並べて確かめる
  • 「*健康上な問題」「*安全上な対策」と、ナ形容詞のように「な」をつける。「〜上」は名詞なので「〜上の+N」と、「の」でつなぐことを確かめる
  • 「健康的な問題」と「健康上の問題」を同じだと思う。「〜的」は「〜によい・〜らしい」、「〜上」は「〜の面で」と、言い換えで意味の違いを確かめる
  • 和語の名詞につけて「からだ上」と言う。「〜上」は主に漢語につくので、和語は「体の面で」と言うと伝える

既習の文型との違い

  • 〜上(に)(第18課)第18課の「〜上(に)」は「うえに」と読み、「安いうえに、おいしい」のように付け加えを表しました。この課の「〜上」は「じょう」と読み、漢語の名詞について「〜の面で」の意味です。読みと、前に来るのが文か漢語の名詞かで見分けさせます。
  • 〜上(で)(第1課)第1課の「〜上(で)」も「じょう」と読み、「ホームページ上で」「地図上では」のように、画面・紙・情報の中という場を表しました。この課の「〜上」は「健康上」「技術上」のように物事を見る面を表します。前の名詞が場(画面・地図)か、観点(健康・安全)かで分けます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 医療技術に関する記事などでよく使われることば医療の記事の語は、病院へ行く流れ(症状→診察→診断→治療→予防)の順に並べて板書すると、語どうしの関係がつかみやすくなります。学習者の母語で知っている語が多いので、漢字の読みと、どの段階の語かを確かめることに時間を使います。例:症状/診察と診断/治療と予防/副作用/体への負担/遠隔で行う

語彙の扱い

この課の語は、身近な道具のしくみ(熱・空気・温度)、介護と意見のことば(立場・負担・条件)、壊れた物の様子、エネルギー(発電・燃料・需要と供給)、医療(症状・診断・治療)の5つのかたまりに分かれます。エネルギーと医療の語は硬い漢語が多いので、語を一覧で覚えさせるより、解説や記事の中で「何が増えた・何に頼っている・何に気をつける」という流れに置いて確かめます。科学の話題は学習者の専門や母語の知識で差が出るので、得意な学習者には自分の分野の語を一つ紹介させ、クラス全体で覚える語は少なめにします。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 仕組み(しくみ) 物がどのように動くか、どのように作られているかという中のつくりのことです。 〜を説明する・〜がわかる・〜になっている
    科学館で、子どもに水筒のことを聞かれる。
    水筒が冷めにくい仕組みは、壁と壁の間にあるんだよ。
  • 保つ(たもつ) 温度や状態などを、変わらないように同じに続けることです。 温度を〜・健康を〜・きれいに〜
    店で、新しい水筒の説明を聞く。
    この水筒なら、朝入れたお茶の温度を夕方まで保てます。
  • 負担(ふたん) 仕事やお金などが重く、体や心が苦しくなることです。 〜が減る・体への〜・〜をかける
    介護の仕事をしている人が、新しい機械について話す。
    この機械を使うと、腰への負担がずいぶん減りました。
  • 立場(たちば) その人が置かれている位置や役目、そこから見た考え方のことです。 〜から言えば・相手の〜に立つ・〜が違う
    授業の話し合いで、自分の意見の前置きをする。
    家族の立場から言えば、少し心配な点もあります。
  • 故障する(こしょうする) 機械や道具が壊れて、正しく動かなくなることです。 機械が〜・〜した部分・〜の原因
    エアコンが動かず、大家さんに連絡する。
    エアコンが故障したようで、冷たい風が出ないんです。
  • 修理(しゅうり) 壊れた物を直して、また使えるようにすることです。 〜を頼む・〜に出す・〜代
    電気屋で、壊れたパソコンについて相談する。
    修理にはどのくらい時間がかかりますか。
  • 電源(でんげん) 機械に電気を送るところ、また機械を動かすためのスイッチのことです。 〜が入る・〜を切る・〜が落ちる
    修理の窓口に、パソコンの様子を伝える。
    ボタンを押しても、電源が入らないんです。
  • 発電(はつでん) 風・水・太陽の光・燃料などを使って電気をつくることです。 〜所・風力〜・太陽光で〜する
    解説を聞いて、メモを友達に説明する。
    その国では、海の上で風力発電をする計画があるそうです。
  • 燃料(ねんりょう) 燃やして熱や力を出すための物で、石油・ガス・石炭などのことです。 〜を輸入する・〜の値段・〜が足りない
    ニュースで、電気代が上がった理由を聞く。
    燃料の値段が上がったため、電気代も上がりました。
  • 方針(ほうしん) 国や会社などが、これからどう進むかを決めた考え方のことです。 〜を打ち出す・〜を変える・会社の〜
    ゼミで、ある国の取り組みを説明する。
    政府は、国内で電気をつくる方法を増やす方針を打ち出しました。
  • 診断(しんだん) 医者が体を調べて、どんな病気か、どんな状態かを判断することです。 〜を受ける・医師の〜・〜結果
    健康を記録する機器について、友達と話す。
    機器の数字だけで決めないで、ちゃんと医者の診断を受けたほうがいいよ。
  • 注目する(ちゅうもくする) 大事なことや新しいことだと思って、よく見たり関心を持ったりすることです。 〜を集める・〜されている・世界が〜
    新聞の科学欄の見出しを読む。
    体の記録を診察に使う新しい技術が、いま注目されています。

宿題と次のコマ

宿題は、身の回りの道具や技術を一つ選び、「〜というと/〜といえば」で始まる4〜5文の短い解説を書いてくること。あわせて、その技術について「〜べきだ/〜べきではない」を使った自分の意見を一文添える。次のコマの最初に何人かに解説を読んでもらい、聞いた人に「その技術にはどんな問題がありますか」と一つずつ質問させてから、第20課「豊かさと幸せ」の最初の ST「伝えてみよう」に入ります(この課で考えた「技術が便利になることは本当に幸せか」という問いが、第20課の豊かさと幸せについて意見を言う話題につながります)。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第19課「科学の力」は何コマで終わりますか?

    90分なら4コマが目安です。1コマ目に導入と1つ目の「見つけた!」、2コマ目に「伝えてみよう」の話し合いと「こんなときどうする?」の前半、3コマ目に修理を頼むロールプレイと「耳でキャッチ」、4コマ目に2つ目の「見つけた!」と課のまとめを置きます。立場を変えた話し合いが長引くクラスでは、課のまとめの発表を次の課の最初に回してもかまいません。

  • 「〜ほかない」「〜ざるを得ない」「〜しかない」の違いは、どう説明すればいいですか?

    三つとも「それ以外に方法がない」という意味では同じなので、硬さと気持ちの二つの軸で分けます。会話でふつうなのが「しかない」、少し硬いのが「ほかない」、硬く、したくないのに事情に押されてするという気持ちが強いのが「ざるを得ない」です。接続も「頼るしかない/頼るほかない/頼らざるを得ない」と違うので、三つを縦に並べて板書すると、意味と形を同時に確かめられます。

  • 「〜たきり」と「〜たまま」、第17課の「〜きり(それだけ)」はどう教え分けますか?

    まず前につく形で分けます。名詞や数につく「二人きり・一度きり」は「それだけ」、タ形につく「止まったきり」は「それから変わらない」です。次に「たまま」との違いは後ろの文で見せ、「たまま」はその状態で別のことをする中立の言い方、「たきり」は後ろに変わらないこと・起こらないことが来て困った気持ちが出る、と修理を頼む場面の例で確かめます。

  • 「〜に伴って」「〜を契機に」「〜をめぐって」のような硬い形は、会話でも使わせるべきですか?

    この課ではエネルギーの解説を聞いて理解することが目標なので、まず聞いて・読んでわかることを優先します。産出させるときは、ニュース原稿・発表・作文のような改まった場面にとどめ、友達との会話では「〜から」「〜がきっかけで」「〜について意見が分かれている」に言い換えさせます。会話で使っても誤りではありませんが、硬く聞こえることは伝えておきます。

  • 「〜べきだ」を目上の人に使うのは失礼ですか?

    文法の誤りではありませんが、話し手が正しいと思うことを強く言う形なので、先生やアルバイト先の店長に「〜べきです」と言い切ると押しつけがましく聞こえます。意見を言う場では「〜べきだと思います」「〜べきではないでしょうか」とやわらげる形をセットで練習させます。自分の後悔を言う「〜べきだった」は、目上の人の前でも使いやすい形です。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。