できる日本語 中級 第7課「世代を超えた交流」の教案
『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること4つ(見つけた!・こんなときどうする?・耳でキャッチ・伝えてみよう)
年齢や育った環境の違う人々との交流を通して、自分のものの見方を広げることをめざす課です。4つの場面は、参加する前に体験談を読む(見つけた!)→ 友達を誘う(こんなときどうする?)→ 世代や性別で違う話し方を聞く(耳でキャッチ)→ 交流の体験を話す(伝えてみよう)と、一つの交流活動に参加する流れで並べて教えると組み立てやすくなります。学習項目には「〜ものだ(回想)」「〜につけ」「〜ながら(も)」など、年配の人の語りや体験談によく出る硬めの形が多いので、読む・聞く素材で意味をつかませてから、自分の体験を話す場面で使わせます。第2課で学んだ「〜うちに」「〜につき」も、この課の場面で使い方を改めて確かめます。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目14時間90分×4コマ場面4
この課のねらい(Can-do)
- 新しい活動に参加する前に、参加した人の体験談を読んで、活動の中身や雰囲気をつかめる
- 相手の予定や好みに気を配りながら、自分が参加するイベントに相手を丁寧に誘える
- 年代や性別によって違う話し方を聞いて、話の内容を理解できる
- 出会った人々との交流の体験を、きっかけや自分の変化を入れて話せる
進め方と時間配分
目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入 | 10分 | 教師が年の離れた人との思い出(祖父母・近所の人・アルバイト先の年配の同僚など)を短く話し、学習者に「年の離れた人と話して、驚いたことや学んだことはあるか」を聞く。課の題「世代を超えた交流」の意味を確かめ、4つの場面が一つの活動に参加する流れになっていることを示す |
| 1 見つけた! | 80分 | 体験談を読む前に活動の中身を予想 → 読んで日時・内容・雰囲気を表にまとめる →「〜どころではない」「〜たところ」「〜ことになった」「〜限り」を体験談の中で確かめる → 参加の前とあとの気持ちの表現を2列に整理 |
| 2 こんなときどうする? | 80分 | 自作のチラシを読む(「〜につき」)→ 誘いの最初の一言「〜かなと思って」→ イベントのよさを「〜にしては」で伝える → 相手役のカードでロールプレイ |
| 3 耳でキャッチ | 90分 | インタビューの音声を2回聞く(1回目は内容、2回目は話し方)→ 呼び方と文末から話し手の年代・性別を推測 →「〜もんだ」「〜ながら(も)」「〜につけ」「〜さえ」を聞き取って意味を確かめる |
| 4 伝えてみよう | 80分 | きっかけ・したこと・出会った人の印象・自分の変化の4つの枠でメモ作り →「予想に反して」「〜うちに」「〜からして」を入れて発表 → 聞き手が必ず1つ質問する |
| 課のまとめ | 20分 | 発表を聞いて心に残った交流の体験を一つ選び、200字ほどの感想文に書く。読む・誘う・聞く・話すの4つの場面で使った表現を、表にしてふり返る |
1 見つけた!
できること初めての活動に参加する前に、参加した人の体験談を読んで、どんなことをするのか、どんな雰囲気なのかをつかめる。
場面
初めて地域の交流活動(お年寄りと子どもが一緒に昔の遊びをする会など)に参加する前に、主催団体のホームページや会報に載っている参加者の体験談を読む場面です。教室では、教師が自作した400字ほどの体験談(参加前の不安 → 参加してわかったこと → 今の気持ち)を配り、読む前に「この会に参加したら、どんなことをすると思うか」を話し合わせてから読ませます。読んだあとは、活動の日時・内容・雰囲気を表にまとめさせます。
- 案内:昔あそびの会 毎月第2土曜日 10時〜12時 公民館2階 和室 参加費無料
- 体験談:大学のレポートに追われていて、初めは地域の活動どころではありませんでした。
- 体験談:先輩に誘われて一度顔を出してみたところ、参加者の半分以上が70代の方でした。
- 体験談:けん玉もお手玉もうまくできず、最初は少し気まずかったです。
- 体験談:でも、帰るころには、すっかり打ち解けていました。
- 体験談:今年からは、わたしが小学生にこま回しを教える係を担当することになりました。
- 体験談:この会が続く限り、参加し続けたいと思っています。
学習項目 1 〜どころではない/〜どころじゃない
意味・はたらき
ほかにもっと大事なことや大変なことがあって、〜をする余裕がまったくないと強く言う形です。体験談では「最初は〜どころではなかった」の形で、参加する前や始めたばかりのころの余裕のなさを伝えるのによく使われます。「〜どころじゃない」は話し言葉、「〜どころではない」は書き言葉や改まった話で使います。似た「〜どころか」(第14課)は文の途中に来て「〜はもちろん、もっと…」と後ろに続ける形で、文の終わりで「それをする状況にない」と言う「〜どころではない」とは違います(「寒いどころではない」のように、形容詞について程度の強さを言う使い方もありますが、この課では「余裕がない」の使い方を中心にします)。
接続
V辞書形+どころではない/N(「勉強」「旅行」「それ」など、することやできごとを表す名詞)+どころではない
形
試験の前で、遊びに行くどころではない引っ越しの準備で、旅行どころじゃない緊張して、話すどころではありませんでした
導入
- 忙しい週の予定を見せて誘ってみる教師が黒板に「来週:テスト3つ・レポート2つ・アルバイト4日」と書き、「週末、カラオケに誘われました。行けますか」と聞いて「行けない」「忙しすぎる」を引き出す。そのうえで「カラオケどころじゃない」と大きく首を振って言ってみせ、「行けません」より気持ちが強いことを確かめる。板書は「[大変な理由]て、[V辞書形/N]どころではない」。
板書案
[大変な事情]て、+ V辞書形/N + どころではない
〔青〕話し言葉:どころじゃない 〔赤〕書き言葉:どころではない
来週は試験で、旅行どころじゃない。
初めての日は緊張して、話を楽しむどころではなかった。
〔赤〕過去は後ろだけ:〜どころではなかった(前は辞書形のまま)
場面と発話(自作)
- アルバイト先で、店長に週末のシフトを増やせるか聞かれたが、来週は大学の試験がある。来週は試験なので、正直、バイトを増やすどころじゃないんです。
- 交流会に参加した感想文で、初回の自分をふり返る。初めての日は緊張して、相手の話を楽しむどころではありませんでした。
- 台風で電車が止まって駅で待っているとき、友達から夕飯に誘うメッセージが来る。電車が止まって帰れなくて、今はご飯どころじゃないんだ。ごめんね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が状況カード(熱が39度ある・財布をなくした・明日から期末試験)と誘いのカード(映画・飲み会・旅行)を組み合わせて出し、「〜て、〜どころじゃない」で断らせる。次に、1 の体験談の書き手になったつもりで、「最初は〜どころではなかった。でも〜」の2文を書かせる。
- 口頭教師が事情のカード(高熱・財布をなくした・引っ越しの前日)を見せ、誘いの語(カラオケ・花見・飲み会)を言う。学習者は全体で「〜て、〜どころじゃない」と断り、次に個人で。キューの例: 「熱が39度/映画」→「熱が39度もあって、映画どころじゃない」、「レポートが3つ/アルバイト」→「レポートが3つもあって、バイトどころじゃない」、「財布をなくした/買い物」。最後に同じ文を「〜どころではありませんでした」に言い換えて、過去と改まった形を口に慣らす。
- ペアAは誘う人、Bは事情カードを伏せて1枚持つ人。Aが「週末、〜に行かない?」と誘い、Bはカードの事情を使って「〜どころじゃないんだ」と断り、Aが「大変だね。じゃあ、また今度」で受ける。3回やったら役を交替。Bのカードに軽い事情(少し眠い)を1枚混ぜ、Aが「それなら行けるでしょ」と返す練習も入れて、大げさに聞こえる感覚をつかませる。
- 産出活動名「あのころの余裕のなさ」。自分が日本に来たばかりのころ、または新しいことを始めたころをふり返り、「最初は〜どころではなかった。でも〜」の2文をノートに書いて、グループで読み合う。教師は、前が辞書形か名詞か、後ろが過去形になっているか、事情がそれだけ重いかの3点を見て直す。
つまずきと手当て
- 「*旅行に行くのどころではない」と「の」を入れる。動詞の辞書形にじかに「どころではない」がつくと、枠の板書で確かめる
- 過去のことを言うのに前を過去にして「旅行に行ったどころではない」と言う。過去のことは前は辞書形のまま、後ろを「どころではなかった」にする、と2つの文を並べて見せる
- 軽い理由にも使う(「ちょっと眠くて、宿題どころじゃない」)。誤りではないが大げさに聞こえる。もっと大事なことや大変な状況があるときの言い方だと、状況カードの重さを比べて確かめる
既習の文型との違い
- 〜どころか(第14課)「〜どころか」は文の途中に来て「〜はもちろん、もっと…」「〜とは反対に…」と後ろへ続ける形で、「〜どころではない」は文の終わりで「それをする状況にない」と言い切る形です。学習者は「旅行どころか、出かける時間もない」と「旅行どころではない」を同じ意味だと思いがちなので、文がそこで終わるかどうかで見分けさせます。
- 〜ている場合ではない「遊んでいる場合じゃない」も余裕がないことを言いますが、「今それをするのはふさわしくない」という注意や反省の気持ちが強く、自分を戒める場面で使います。「どころではない」は事情が大きすぎて手が回らないことを言うので、誘いを断るときの理由にはこちらが自然です。
関連する文型
学習項目 2 〜たところ
意味・はたらき
「〜してみたら、こういう結果になった・こういうことがわかった」と、ある行動とその結果を続けて述べる形です。体験談や報告の文で、「参加してみたところ、思っていたより〜だった」のように、やってみて初めてわかったことを伝えます。「〜たら」にも似た使い方がありますが、「〜たところ」は少し改まった書き言葉寄りで、後ろには過去の事実(わかったこと・起きたこと)が来て、自分の意志や相手への頼みは来ません。「Vたところです(ちょうど〜したばかり)」とは別の形なので、文がそこで終わるか「、」で後ろに結果が続くかで見分けます。
接続
Vた+ところ、〜(後ろは過去の事実)
形
先輩に聞いてみたところ、だれでも参加できるそうだ参加してみたところ、思ったより若い人が多かった問い合わせたところ、すぐに返事が来た
導入
- 教師の「行ってみた」話の結果を予想させる教師が「先週、公民館で『将棋の会』のポスターを見ました。わたしは将棋ができません。でも、行ってみました。すると……」と話を止め、学習者に結果を予想させる。「初心者に一から教えてくれた」と言ってから、板書で「行ってみた + ところ、→ 初心者に一から教えてくれた(わかったこと・起きたこと)」と矢印でつなぐ。同じ内容を「行ってみたら」で言った文と並べ、書き言葉では「たところ」が多いと示す。
板書案
Vた + ところ、→ [わかったこと・起きたこと](過去の事実)
先輩に聞いてみたところ、だれでも参加できるそうだ。
〔青〕話し言葉:〜てみたら 〔赤〕書き言葉:〜てみたところ
〔赤〕✕ 後ろに希望・依頼・意志
Vたところです。(ちょうど〜したばかり)→ 文がそこで終わる
場面と発話(自作)
- 留学生センターに地域のボランティアに参加できるか電話で聞き、その結果を友達にメールで伝える。センターに問い合わせたところ、留学生も参加できるそうです。
- 交流会の報告書に、参加して気づいたことを書く。実際に参加してみたところ、参加者の年齢の幅が想像以上に広かった。
- サークルの会議で、会場の予約について担当者が報告する。市民センターに確認したところ、来月の第1土曜日なら空いているとのことでした。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、行動のカード(聞いてみる・調べてみる・行ってみる・食べてみる)と結果のカードを組み合わせ、「〜てみたところ、〜」を作らせる。次に、1 の体験談の形で、自分が初めて何かに参加したときのことを「〜てみたところ、〜。」で1文書かせ、ペアで読み合う。
- 口頭教師が行動のカード(問い合わせる・試食する・調べる・行ってみる)と結果のカード(すぐ返事が来た・思ったより辛かった・定員がいっぱいだった)を1枚ずつめくり、学習者が「〜たところ、〜」でつなぐ。全体→個人の順。キューの例: 「店に電話した/今日は休みだった」「辞書で調べた/2つの意味があった」「先生に相談した/締め切りを延ばしてくれた」。次に同じ文を「〜てみたら」に言い換え、話し言葉と書き言葉の対を作る。
- ペアAは「何かを試した人」、Bは「結果を聞く人」。Aが行動だけを言い(「近くの公民館に行ってみたんだ」)、Bが「それで?」と聞くと、Aが「行ってみたところ、〜」で結果を話す。BはAの結果を「つまり〜ということですね」と要約して返す。結果のカードはAだけが持つ情報差にする。3回で交替。
- 産出活動名「やってみた報告メール」。地域の活動や大学の窓口に問い合わせたという設定で、先生かゼミの先輩に送る短いメール(3〜4文)を書く。「〜に問い合わせたところ、〜。」を必ず1文入れる。教師は、前がタ形か、後ろが過去の事実になっているか、後ろに「〜たい」「〜てください」が直接来ていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*参加したところ、また行きたい」と後ろに自分の希望を置く。後ろは「わかったこと・起きたこと」で、気持ちを言うなら「また行きたいと思った」と過去の事実の形にする、と板書の矢印の右側で確かめる
- 「*行ってみるところ、〜」と辞書形につける。結果を言うこの形は必ずタ形だと確かめる
- 「行ってみたところです」で文を終え、「ちょうど行ったばかり」の意味になってしまう。誤りではないが言いたいことと違うので、「、」で後ろに結果が続く形と並べて見せる
既習の文型との違い
- Vるところです/Vているところです/Vたところです(初中級 第10課)「Vたところです」は動作が終わったばかりの時点を言う文末の形で、「Vたところ、〜」は行動とその結果を続ける接続の形です。「、」があって後ろに文が続くかどうかで見分けます。「着いたところ、だれもいなかった」を「着いたばかりで」と取ってしまう誤りが出るので、2つを上下に並べて見せます。
- Vたら、〜た(発見)(初中級 第5課)「Vたら、〜た」は発見を言う話し言葉の形で、「〜たところ」とほぼ同じ場面で使えます。違いは硬さで、報告書やメールでは「たところ」、友達との会話では「たら」が自然です。「たら」は後ろに意志や依頼も置けますが(「着いたら電話して」)、「たところ」は置けません。
関連する文型
学習項目 3 〜ことになった
意味・はたらき
自分の意志だけで決めたのではなく、まわりの事情や話し合い、ほかの人の決定で「〜することに決まった」と伝える形です。体験談では「教える係を担当することになった」のように、活動の中で起きた変化を伝えます。自分で決めたことでも「〜ことになりました」と言うと、控えめに報告する感じが出ます。自分で決めたことをはっきり言うときは「〜ことにした」(初中級で学習)を使い、「〜ことになっている」は規則や予定が今も続いている状態を言います。
接続
V辞書形/Vない+ことになった
形
来月から、子ども向けの会も手伝うことになった雨のため、外での活動は行わないことになった4月から大阪の支店で働くことになりました
導入
- 決めた人の絵で「にした」と「になった」を分ける教師が2つの話をする。「わたしは来年、留学したいです。自分で決めました → 留学することにしました」「会社がわたしに大阪へ行ってほしいと言いました → 大阪に行くことになりました」。板書で「自分で決めた:〜ことにした」「まわりが決めた・決まった:〜ことになった」の2行に分け、横に決めた人の絵(自分/会社のビル)を置く。
板書案
V辞書形/Vない + ことになった
〔青〕自分で決めた → ことにした
〔赤〕まわりが決めた・決まった → ことになった
来月から、わたしが司会をすることになりました。
〔緑〕今も続く決まり・予定 → ことになっている
場面と発話(自作)
- ボランティアの会で次の担当を話し合いで決めたあと、家族に電話で報告する。来月の会では、わたしが司会をすることになったよ。
- 先生に、アルバイトの予定が変わったことを伝える。店の事情で、来週から夜のシフトに入ることになりました。
- アルバイト先で、店の方針が変わったことを新人に説明する。来月から、この店では現金が使えないことになったんです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、決めた人のカード(会社・クラスの話し合い・自分)とできごとを組み合わせて出し、「ことにした」か「ことになった」かを選んで言わせる。次に、1 の体験談の続きとして、活動の中で決まったことを「〜ことになりました」で2つ書かせる。
- 口頭教師が決めた人の絵カード(自分・会社・クラスの話し合い・天気)とできごとを出し、学習者が「ことにした」か「ことになった」かを選んで言う。キューの例: 「自分/毎朝走る」→「毎朝走ることにした」、「会社/大阪に行く」→「大阪に行くことになった」、「雨/運動会をしない」→「運動会はしないことになった」。最後は全部を「〜ことになりました」で丁寧に報告させる。
- ペアAは会の係、Bは欠席していた会員。Aは話し合いのメモ(次回の場所・係・持ち物が決まった)を持ち、Bは何も知らない。Bが「この前の会で、何か決まった?」と聞き、Aが「〜ことになったよ」で3つ伝える。Bはメモを取り、最後に「じゃあ、わたしは〜すればいいんだね」と確かめる。役を替えて別のメモで。
- 産出活動名「近況報告スピーチ」。自分の生活で最近決まったこと(引っ越し・アルバイトの時間・ゼミの発表の順番)を1分で報告する。自分で決めたこと1つ・まわりで決まったこと1つを入れ、「ことにした」と「ことになった」を言い分ける。教師は、決めた人と形が合っているか、決まったばかりのことに「ことになっている」を使っていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*行くのことになった」「*行きますことになった」と形を崩す。前は辞書形かナイ形だけ、と枠で示す
- 「〜ことになっている」と混ぜて、決まったばかりのことに「ことになっています」を使う。「ことになった」は決まった時点、「ことになっている」は今の決まり、と時間の線で見せる
- 自分で強く決めたことにも「ことになった」を使い、人ごとのように聞こえる。誤りではないが、決意を伝えたいなら「ことにした」にする、と板書の2行で確かめる
既習の文型との違い
- Vることにします/Vないことにします(初中級 第12課)「ことにする」は自分の意志で決めたことを言い、「ことになる」は事情やほかの人の決定で決まったことを言います。自分で決めたことを「ことになりました」と言うと控えめで改まった報告になりますが、決意を伝えたいときは人ごとのように聞こえます。
- Vることになっています/Vないことになっています(規則)・Vることになっています(予定)(初中級 第9課)「ことになっている」は決まりや予定が今も効いている状態を言うので、決まった時点を報告するなら「ことになった」です。決まったばかりのことを「来週から夜のシフトに入ることになっています」と言うと、知らせというより決まりを説明する感じに聞こえます。
関連する文型
学習項目 4 〜限り/〜限りは
意味・はたらき
「〜という状態が続いているあいだは、ずっと…」と、条件が変わらない範囲を強く言う形です。体験談では「この会が続く限り、参加したい」「元気でいる限りは、教え続けたい」のように、続けたい気持ちや決意を表すのに使われます。「〜ない限り」は「〜しなければ、(ずっと)…ない」という意味になり、条件がとても強くなります。似た「〜うちは」は時間の幅を言うだけですが、「〜限り」は「その条件がある以上は必ず」という強さがあり、やや硬い言い方です。「わたしの知る限り」のように、知っている範囲を言う使い方もあります。
接続
V辞書形/Vている/Vない+限り(は)、イAい・ナAな/ナAである・Nである+限り(は)
形
体が動く限り、ボランティアを続けたい参加者がいる限りは、会はなくならない申し込まない限り、参加できない学生である限り、学割が使える
導入
- おばあさんの言葉を完成させる教師が、子どもたちにお手玉を教えているおばあさんの絵を見せ、「80歳のおばあさんが言います。『元気でいる___、ずっと教えたい』」と空欄を見せる。学習者から「あいだは」「うちは」などを出させてから「元気でいる限り」と入れ、板書で「条件(元気でいる)→ ずっと(教えたい)」と囲む。次に「申し込まない限り、参加できない」を並べ、「ない限り」は「〜しなければ」の意味になると示す。
板書案
[条件が続く]限り(は)、→ ずっと〜
体が動く限り、ボランティアを続けたい。
〔赤〕〜ない限り → 〜ない(〜しなければ、…ない)
申し込まない限り、参加できない。
〔青〕わたしの知る限り(知っている範囲)
場面と発話(自作)
- 地域の昔あそびの会の代表が、新聞の取材でこれからのことを話す。子どもたちが来てくれる限り、この会は続けていきます。
- 交流イベントの案内を読んで、友達に参加の条件を説明する。前もって申し込まない限り、当日は入れないみたいだよ。
- サークルの先輩が、新しく入った後輩に決まりを話す。このサークルにいる限りは、年に関係なく、みんな名前に「さん」をつけて呼ぶんだ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、条件のカード(雨が降らない・元気でいる・ルールを守る・メンバーがいる)と結果を組み合わせて「〜限り、〜」を作らせ、次に「〜ない限り、〜ない」に言い換えさせる。最後に、1 の活動について「〜限り、〜たい」で自分の決意を1文書かせる。
- 口頭教師が条件のカード(元気でいる・雨が降らない・メンバーがいる・ルールを守る)を見せ、学習者が「〜限り、〜」で続ける。全体→個人。次に否定のカード(予約しない・練習しない・本人が来ない)で「〜ない限り、〜ない」を作らせる。キューの例: 「予約しない/入れない」「本人が来ない/受け取れない」「毎日練習しない/上手にならない」。前後の否定がそろっているかを声に出して確かめる。
- ペアAは交流会の受付係、Bは参加したい人。Aは参加の条件カード(事前の申し込み・名札・小学生は保護者と一緒)を持ち、Bは「当日行けば入れますか」のように聞く。Aは「〜ない限り、〜できないんです」で条件を説明し、Bは「わかりました。じゃあ〜します」と返す。条件カードを替えて交替。
- 産出活動名「続ける宣言カード」。自分がこれから続けたいこと(日本語の勉強・地域の活動・スポーツ)を1つ選び、「〜限り、〜たい」で宣言を1文、さらに「〜ない限り、〜ない」でやめない理由を1文、カードに書いて掲示する。教師は前の形(辞書形・ている・ない)と、短い時間の話に使っていないかを見る。
つまずきと手当て
- 条件の「限り」で「*続けた限り」とタ形につける。条件の使い方では前は辞書形・ている形・ない形だと確かめる。ただし「見た限り」「調べた限りでは」のように知っている範囲を言う使い方ではタ形も言えるので、2つを分けて示す
- 「ない限り」の後ろを肯定にして「申し込まない限り、参加できる」と言い、意味が逆になる。「ない限り → ない」の組み合わせを板書で対にして見せる
- すぐ終わる短い時間にも使う(「ご飯を食べている限り、テレビを見る」)。誤りではないが不自然になる。短い時間なら「〜あいだ」「〜うちは」で、「限り」は条件が続く限りずっと、という強い言い方だと確かめる
既習の文型との違い
- 〜うちに(第2課)「若いうちに旅行したい」の「うちに」は、状態が変わる前に何かをするという時間の幅を言います。「限り」は「その条件がある以上は必ず」と条件の強さを言い、時間がどれだけ続くかは問題にしません。「元気なうちに」と「元気な限り」を並べ、前者は「元気でなくなる前に」、後者は「元気であればずっと」だと確かめます。
- 〜に限り(第2課)/〜限り/〜限りの(第17課)「本日に限り半額」の「に限り」は「〜だけ」と範囲を絞る形で、名詞にじかにつきます。この課の「限り」は動詞や状態につく条件の形です。第17課の「できる限りの努力」は「最大限まで」の意味で、別に扱います。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 活動に参加する前とあとでの気持ちの変化を表すときの表現体験談は「参加する前の気持ち → 参加してわかったこと → 今の気持ち」の順で書かれることが多いので、読む前に、前とあとを対にした表現を板書で2列にして見せます。前の気持ちには「〜か不安だった」「〜だろうと思っていた」、あとの気持ちには「思っていたより〜」「いつの間にか〜」「今では〜」が来ることを押さえると、読む方向がつかみやすくなります。例: 最初は、うまく話せるか不安でした/正直、あまり気が進みませんでした/思っていたより、ずっと気楽な会でした/いつの間にか、時間を忘れていました/今では、毎月の楽しみになっています/思い切って参加してよかったです
2 こんなときどうする?
できること相手の予定や好みを考えながら、自分が楽しみにしているイベントに相手を丁寧に誘える。
場面
1 で読んだ活動に自分も参加することにして、日本人の友達やゼミの先輩を誘う場面です。教室では、自作のチラシ(日時・場所・参加費・持ち物)を配り、相手役のカード(午後は予定がある・人が多い場所が苦手・甘いものが好き など)を引いたペアでロールプレイをさせます。相手の都合を先に聞いたか、断りやすさを残して誘えたかを、見ている学習者に評価させます。
- 留学生:あの、今度の土曜日の午前中って、何か予定ありますか。
- 日本人の友達:土曜? 午後はバイトだけど、午前なら空いてるよ。
- 留学生:公民館で昔あそびの会があるんです。前に子どものころの遊びの話をしてたから、興味あるかなと思って。
- 日本人の友達:へえ、面白そう。お金はかかるの?
- 留学生:参加費は1人につき100円だそうです。100円にしては、お茶とお菓子まで付くらしいですよ。
- 日本人の友達:いいね。じゃあ、一緒に行こうかな。
- 留学生:無理はしないでくださいね。お昼にはバイトに行けるように終わりますから。
学習項目 1 〜かなと思って
意味・はたらき
誘ったり、何かを渡したり、声をかけたりするときに、「(相手は)〜かもしれないと思ったので」と理由をやわらかく添える形です。「興味があるかなと思って」と言うと、相手の気持ちを決めつけずに、相手のことを考えて声をかけたことが伝わり、断る余地も残せます。後ろの「誘いました」「声をかけました」は言わずに「〜かなと思って。」で止めることが多いです。「〜と思って」だけだと理由をはっきり言う感じになります。くだけた話し言葉なので、目上の人には「〜かと思いまして」のほうが丁寧です。
接続
V・イAの普通形+かなと思って/ナA・N+かなと思って(「だ」はつけない)
形
こういうの、好きかなと思って週末なら空いてるかなと思って興味があるかなと思って、声をかけたんですご興味がおありかと思いまして(目上に)
導入
- チラシを渡してみせる教師がチラシを1枚持って学習者の一人に近づき、「料理が好きって言ってたよね。これ、料理教室のチラシ。好きかなと思って」と渡してみせる。何のために渡したか、なぜ「好きです」ではなく「好きかな」と言ったかを学習者に聞き、「相手のことを考えた」「決めつけていない」を引き出す。板書は「[相手のこと]+かな と思って(誘う・渡す)」。
板書案
[相手のこと]+ かな と思って(誘う・渡す・声をかける)
〔赤〕ナA・N に「だ」は入れない:✕ 暇だかなと思って
前に好きって言ってたから、興味あるかなと思って。
〔青〕友達:〜かなと思って 〔紫〕目上:〜かと思いまして
→ よかったら、一緒にどうですか。
場面と発話(自作)
- 日本人の友達に、自分が手伝う地域のお祭りのボランティアを紹介する。前にお祭りが好きって言ってたから、興味あるかなと思って。
- 研究室の先輩に、留学生会の交流イベントのチラシを渡す。先輩、こういうイベントがお好きかと思いまして、お持ちしました。
- 隣に住む年配の人に、作りすぎた料理をおすそ分けする。作りすぎてしまって。甘いものがお好きかと思いまして、少しお持ちしました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、相手のカード(料理が好き・写真が趣味・最近ひまそう)とイベントのカードを組み合わせて、「〜かなと思って、誘ったんだ」を作らせる。次にペアで、2 の誘いの最初の一言に「〜かなと思って」を入れたロールプレイをする。友達同士と先輩相手の2回にして、「かなと思って」と「かと思いまして」を言い分けさせる。
- 口頭教師が相手のカード(料理が好き・写真が趣味・最近ひまそう・日本の歴史に興味がある)を見せ、学習者が「〜かなと思って」で一言を作る。キューの例: 「料理が好き」→「料理、好きかなと思って」、「最近ひま」→「最近ひまかなと思って」、「歴史に興味がある」→「歴史に興味あるかなと思って」。次に同じ文を先輩向けに「〜かと思いまして」に言い換える。ナ形容詞と名詞で「だ」が抜けているかを全員で確かめる。
- ペアAは誘う人で、チラシを1枚とBの好みのメモを持つ。Bは誘われる人で、自分の予定カードを持つ。Aは「〜かなと思って」で声をかけ、チラシを見せて誘い、Bは予定カードを見て受けるか断るかを決める。1回目は友達同士、2回目は先輩と後輩にして、Aの言い方を変える。
- 産出活動名「おすすめ声かけロールプレイ」。自分が本当に行きたいイベントを1つ決め、クラスの中で誘う相手を一人選んで、その人の好みに触れながら誘う。周りの学習者は、相手の好みに触れたか・決めつけていないか・断る余地を残したかの3点で評価する。教師は「だ」の混入と、目上への言い方を見る。
つまずきと手当て
- 「*暇だかなと思って」「*学生だかなと思って」と「だ」を入れる。ナA・Nには「だ」をつけないと、板書で「だ」を消して見せる
- 目上の人にも「〜かなと思って」で止め、なれなれしく聞こえる。目上には「〜かと思いまして」と最後まで丁寧に言う
- 「〜かなと思って」と理由だけ言って、何を頼みたいのかが伝わらない。初めて誘う相手には、そのあとに「よかったら一緒にどうですか」を続けさせる
既習の文型との違い
- 〜かな/Vようかな(初中級 第14課)「〜かな」は自分に向けた独り言のような疑問で、「明日、雨かな」のように使います。「〜かなと思って」はそれを理由として相手に差し出す形で、声をかけたわけを伝えます。「興味ある?」と直接聞くより相手に気を配った言い方になる、と比べて見せます。
- 〜ていただけないかと思って(第17課)同じ「〜かと思って」の形でも、第17課は自分の頼みをやわらかく切り出す言い方で、この課は相手の気持ちを推し量って誘う言い方です。どちらも後ろを言わずに止められますが、頼みのときは何を頼みたいのかを続けて言わないと伝わりません。
関連する文型
学習項目 2 〜にしては
意味・はたらき
「〜という条件から普通に予想されることと比べると、意外にも…」と評価する形です。誘うときには「無料のイベントにしては内容が充実している」「初心者向けにしては本格的だ」のように、イベントのよさを伝えるのに使えます。後ろには予想と違う評価が来ます。似た「〜わりに」(第2課)はイ形容詞やナ形容詞にも広くつき、「程度のつり合いがとれていない」ことを言うのに対し、「〜にしては」は「(条件・立場)であることを考えると」という前提を、名詞や動詞で示すことが多いです。話し言葉でも書き言葉でも使います。
接続
N+にしては(「だ」はつけない)/V普通形+にしては(「初めて作ったにしては」)
形
無料のイベントにしては、内容が充実している初めてにしては、上手に話せた留学して半年にしては、日本語が自然だ練習していないにしては、よくできた
導入
- 作った人を明かしてから評価する教師が手作りのケーキの絵を見せ、「これは小学生が作りました」と言って、学習者から「上手」「すごい」を引き出す。そのうえで「小学生が作ったにしては、上手ですね」と言い、板書で「[小学生が作った]→ 普通の予想:あまり上手じゃない/本当:上手 → にしては」と、予想と事実のずれを矢印で示す。
板書案
[条件・立場]にしては、→ [予想と違う評価]
〔青〕予想:あまり上手じゃない 〔赤〕実際:上手 → ずれ
初めてにしては、上手に話せた。
入場料300円にしては、出し物が多い。
〔赤〕✕ 学生だにしては(N にじかに)
場面と発話(自作)
- 友達を地域の夏祭りに誘うとき、入場料が安いのに出し物が多いことを伝える。入場料300円にしては、出し物がけっこう多いみたいなんだ。
- 交流会で、日本に来て半年の留学生の日本語をほめる。来て半年にしては、本当に自然な日本語ですね。
- 駅前の店に初めて入った友達同士が話す。駅前の店にしては静かで、ゆっくり話せるね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、条件のカード(初めて・3歳の子ども・無料・駅から近い)を出し、「〜にしては、〜」で意外な評価を言わせる。そのあと 2 のロールプレイで、イベントのよさを伝える一言として「〜にしては」を入れさせる。
- 口頭教師が条件のカード(初めて・3歳の子ども・無料・来て半年)と事実のカード(上手・内容が多い・自然な日本語)を出し、学習者が「〜にしては、〜」で評価する。キューの例: 「3歳/字がきれい」「無料/料理が豪華」「来て半年/方言がわかる」。次に、予想どおりの組み合わせ(「プロの料理人/料理が上手」)を混ぜ、「にしては」が使えないものを手を挙げて言わせる。
- ペアAはイベントのチラシ(安い・近い・初心者向け などの条件が書いてある)を持ち、Bはチラシを見ていない友達。Aは「〜にしては、〜みたい」でよさを1つ伝えて誘い、Bは「へえ、〜にしては、〜なんだ」と繰り返して確かめる。チラシを替えて交替。
- 産出活動名「ほめ上手インタビュー」。クラスメートに日本に来てからの期間や、始めた趣味の年数を聞き、「〜にしては、〜ですね」で相手をほめる一言を言う。ほめられた側は「いえいえ、まだまだです」と返す。教師は名詞に「だ」が入っていないか、予想とのずれがあるか、目上の人を評価する言い方になっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*学生だにしては」「*無料だにしては」と「だ」を入れる。名詞にはじかに「にしては」がつくと確かめる
- 予想どおりの評価を後ろに置く(「プロの料理人にしては、料理が上手だ」)。形の誤りではないが、意外さがないので不自然になる、と板書の「ずれ」の矢印で確かめる
- イ形容詞につけて「暑いにしては」と言う。不自然に聞こえることが多いので、イ形容詞なら「暑いわりに」がふつうだと、2つを並べて見せる
既習の文型との違い
- 〜わりに(第2課)「〜わりに」はイ形容詞・ナ形容詞・名詞「の」に広くつき、程度のつり合いがとれていないことを言います(「値段のわりにおいしい」)。「〜にしては」は「〜という立場・条件であることを考えると」と前提を立てる言い方で、名詞と動詞によくつきます。イ形容詞なら「暑いわりに」が自然で、「暑いにしては」は不自然に聞こえることが多いです。
- 〜だけあって/〜だけのことはある(第10課)「〜だけあって」は「〜だから、予想どおりやはり…」と評価する形で、「にしては」とは向きが反対です。「プロだけあって上手」「初めてにしては上手」を対にすると、予想どおりか予想とのずれかで使い分けられます。
関連する文型
学習項目 3 〜につき
意味・はたらき
名詞について、お知らせ・チラシ・張り紙などの書き言葉で使う硬い形です。使い方は2つあり、「1人につき500円」のように「〜ごとに・〜あたり」を表す使い方と、「雨天につき中止」「改装中につき」のように理由(〜のため)を表す使い方があります。イベントに誘うときは、チラシの「参加費:1人につき〜円」などを読み取って相手に伝えることになるので、聞く相手にわかるように話し言葉に言い直す力も要ります。会話では「1人500円」「雨だから」と言うのがふつうです。
接続
N+につき(「1人」「1回」「1枚」など数量を表す名詞、または「雨天」「工事中」などのできごとを表す名詞)
形
参加費は1人につき300円1家族につき2枚まで雨天につき、中止とします工事中につき、この入口は使えません
導入
- チラシと張り紙で2つの意味に分ける教師が自作のチラシ(「もちつき大会 参加費:1人につき200円」)と、店の張り紙(「本日、臨時休業につき、ご迷惑をおかけします」)を見せる。それぞれの「につき」を何と言い換えられるか学習者に聞き、板書で「ごとに・あたり」と「のため」の2つに分ける。最後に「友達に話すときは?」と聞いて、「1人200円だって」「今日は休みなんだって」と言い直させる。
板書案
N + につき
① 〜ごとに・〜あたり:参加費は1人につき300円
② 〜のため(理由):雨天につき中止
〔赤〕お知らせ・チラシ・張り紙の書き言葉
〔青〕話すとき:1人300円だって/雨だから中止だって
場面と発話(自作)
- 地域のもちつき大会のチラシを見ながら、友達に参加費を説明する。参加費は1人につき200円って書いてあるから、二人で400円だね。
- 交流会館の入口に、張り紙がある。本日は館内点検につき、午後3時で閉館いたします。
- 地域のお祭りのチラシの注意書き。記念品は、1家族につき1つまでとさせていただきます。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、チラシや張り紙の一部(「1人につき」「改装中につき」)を見せて、「〜ごとに」か「〜のため」かを答えさせ、話し言葉に言い直させる。そのあと 2 のロールプレイで、チラシを見ながら相手に参加費や注意を伝えさせる。
- 口頭教師がチラシや張り紙の一部を見せ、学習者が①(ごとに)か②(のため)かを声で答え、続けて話し言葉に言い直す。キューの例: 「1家族につき2枚まで」→「1家族2枚までだって」、「改装中につき休業」→「改装中だから休みだって」、「1回につき500円」→「1回500円だって」。最後に、名詞のあとに「の」や動詞を入れた誤りの札を見せ、どこが違うかを言わせる。
- ペアAはチラシを持つ人、Bは持たない友達。Bが「いくらかかるの?」「何人まで?」「いつ休み?」と聞き、Aはチラシの「〜につき」の部分を見ながら話し言葉で答える。Bは答えをメモし、最後にチラシと見比べて合っているかを確かめる。チラシを替えて交替。
- 産出活動名「張り紙をつくろう」。自分たちの交流会や教室の行事を想定し、参加費・人数の制限・中止の知らせを入れた張り紙を、グループで1枚つくる。「〜につき」を2つの意味で1回ずつ使う。つくった張り紙を別のグループが読んで、友達に口で伝える。教師は名詞にじかについているか、話し言葉への言い直しが自然かを見る。
つまずきと手当て
- 「*雨が降るにつき」「*雨天のにつき」と動詞や「の」につける。「につき」は名詞にじかにつく、と板書で示す
- 会話で「雨につき、行けないんだ」と言い、硬すぎて不自然になる。話すときは「雨だから」「1人〜円」に言い直す
- 「〜について」(話題)と混同して読む。張り紙の「工事中につき」は「工事について」ではなく「工事中のため」だと、言い換えで確かめる
既習の文型との違い
- 〜について「〜について」は話題を表し、「工事について説明する」のように使います。「工事中につき」は理由の「につき」で、「工事について」ではありません。読む練習で取り違えやすいので、張り紙の文を「〜のため」に言い換えて意味が通るかで確かめます。
- 〜につき(第2課)第2課で学んだ同じ形を、この課ではチラシを読み取って相手に伝える場面で使い直します。書かれた「につき」を口では「1人〜円」「〜だから」に言い換える、という読みと話しの往復がこの課での狙いです。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 相手の都合や好みを考えて丁寧に誘うときの表現誘うときは、相手が断りやすいことがそのまま丁寧さになります。都合を先に聞く表現、相手の好みに触れる表現、無理をさせない一言の3つに分けて練習し、親しい友達と目上の人で言い方を変えさせます。例: 今度の土曜日って、何か予定ある?/ご都合はいかがでしょうか/前に〜が好きって言ってたよね/もしよかったら、一緒にどうですか/無理にとは言わないけど/また今度でも全然大丈夫だから
3 耳でキャッチ
できること年代や性別によって違いのある話し方を聞いて、だれが何を話しているのかを理解できる。
場面
交流会で録音した、年代や性別の違う人たち(70代の男性・60代の女性・20代の男性・聞き手の若い女性)が昔の遊びや暮らしについて話すインタビューを聞く場面です。教室では、教師が自作の台本をもとに、同僚や知り合いに読んでもらって録音した2〜3分の音声を用意します。1回目は話の内容、2回目は呼び方や文末(〜もんだ・〜わね・〜っす など)に注目して聞かせ、だれが話しているかを当てさせます。
- 年配の男性:おれたちが子どものころは、日が暮れるまで外で遊んだもんだ。
- 聞き手(若い女性):へえ、そうなんですね。ゲームとかはなかったんですか。
- 年配の男性:ゲームなんて。うちにはテレビさえなかったよ。
- 年配の女性:うちも貧しいながらも、家族みんなでよく笑ってたわね。
- 年配の女性:今でも古いアルバムを見るにつけ、あのころを思い出すのよ。
- 若い男性:へえ、マジっすか。おれ、そういう話、けっこう好きっす。
学習項目 1 〜もんだ/〜ものだ
意味・はたらき
ここでは、年配の人が昔をなつかしんで「(昔は)よく〜したものだ」と語るときの形を中心に扱います。「Vたものだ」は過去に何度もくり返していたことを、なつかしい気持ちを込めて言う言い方で、1回だけの経験には使いません(その場合は「〜たことがある」)。また「月日がたつのは早いものだ」のように、しみじみと感じたことを言う使い方もあります。「もんだ」はくだけた話し言葉の形で、年配の人の語りでよく聞きます。「〜ものだ」には「人には親切にするものだ」という当然・忠告の使い方(第5課)もあり、回想の使い方では前がタ形になる点で区別できます。
接続
Vた+ものだ(回想)/V辞書形・イAい・ナAな+ものだ(しみじみとした感想)
形
子どものころは、よく川で遊んだもんだ昔はこの道を毎日歩いて学校に通ったものです月日がたつのは早いものだ
導入
- 教師の子どものころの話教師が子どものころの写真(または絵)を見せ、「小学生のころ、毎日、夕方まで公園でサッカーをしました。毎日です。なつかしいです」と話す。それを遠くを見るような表情で「毎日、夕方までサッカーをしたもんです」と言い直してみせる。板書は「(昔)よく・毎日 + Vた + ものだ = くり返し・なつかしい」とし、その下に「1回だけ:〜たことがある」を対にして書く。
板書案
(昔は)よく・毎日 + Vた + ものだ = くり返し・なつかしい
子どものころは、よく川で遊んだもんだ。
〔青〕1回だけ → 〜たことがある
〔緑〕しみじみ:月日がたつのは早いものだ
〔赤〕もんだ=くだけた話し言葉 ものです=改まった場
場面と発話(自作)
- 地域の交流会で、80代の男性が子どもたちに昔の遊びの話をする。昔は、竹とんぼを自分で作って遊んだもんだよ。
- 卒業して10年ぶりに母校を訪ねた人が、同級生と話す。この坂、毎朝走って上ったものだよね。
- 祖母が、久しぶりに会った孫の成長に驚いて言う。ついこの間まで赤ちゃんだったのに、子どもが大きくなるのは早いものだねえ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、昔の暮らしの絵カード(たき火・駄菓子屋・ラジオ体操・手紙)を見せ、年配の人になったつもりで「昔はよく〜たもんだ」と言わせる。次に 3 の聞く素材で「もんだ」が出たところを聞き取らせ、「回想」か「しみじみとした感想」かを答えさせる。最後に、自分の子どものころの習慣を「〜たものです」で1つ話させる。
- 口頭教師が昔の暮らしの絵カード(たき火・駄菓子屋・ラジオ体操・手紙・銭湯)を見せ、学習者が年配の人になったつもりで「昔はよく〜たもんだ」と言う。全体→個人。キューの例: 「駄菓子屋」→「学校の帰りに、よく駄菓子屋に寄ったもんだ」、「手紙」→「友達とよく手紙を書いたもんだ」、「銭湯」→「毎晩、家族で銭湯に行ったもんだ」。次に、1回だけの経験のカード(富士山に一度登った)を混ぜ、「〜たことがある」に切り替えさせる。
- ペアAは聞き手(若い人)、Bは年配の人の役で、子どものころの暮らしのメモ(遊び・食べ物・学校までの道)を持つ。Aが「子どものころ、どんな遊びをしていましたか」と聞き、Bは「〜たもんだよ」で答え、Aはあいづちと質問で話を広げる。メモを替えて交替。
- 産出活動名「わたしの子ども時代3枚」。自分の子どものころにくり返していたことを3つ選び、それぞれ1文ずつ「〜たものです」で書いて、写真や絵を1枚添えて小グループで話す。聞き手は1つ質問する。教師は、前がタ形か、くり返したことか、場に合った「もんだ/ものです」を選んでいるかを見る。
つまずきと手当て
- 1回だけの経験に使う(「去年一度、富士山に登ったものだ」)。誤りではないが回想の意味にならず不自然。くり返したことにだけ使い、1回なら「〜たことがある」と板書の対で確かめる
- 回想のつもりで辞書形を使い、「昔はよく遊ぶものだ」と言う。辞書形だと「遊ぶべきだ」に近い当然の意味に聞こえるので、回想はタ形だと確かめる
- 「もんだ」を発表や作文、目上の人との改まった会話で使う。くだけた話し言葉なので、改まった場では「ものです」にする
既習の文型との違い
- Vていました(過去の習慣)(初中級 第13課)「Vていました」は過去の習慣を事実として述べる形で、「〜たものだ」はそこになつかしい気持ちを込めて語る形です。どちらもくり返しに使いますが、「たものだ」は話し手が昔をふり返っている感じが強く出ます。
- 〜ものだ/〜ものではない(当然)(第5課)第5課の「人には親切にするものだ」は辞書形について、当然・忠告を言います。回想は前がタ形になる点で見分けられます。「昔はよく遊ぶものだ」と言うと当然の意味に聞こえる、と2つを並べて見せます。
- 〜ものだ/〜もんだ(第16課)第16課でも同じ形がもう一度出てきます。この課では年配の人の語りを聞いてわかることと、自分の子どものころを語ることに絞り、使い方を広げすぎないようにします。
関連する文型
学習項目 2 〜ながら(も)
意味・はたらき
「〜という状態なのに、それでも…」と、前と後ろが予想に反してつながる(逆接の)形です。初中級で学んだ「Vながら(同時に2つのことをする)」とは意味が違い、ここでは「狭いながらも」「知っていながら」のように、状態を表すことばにつくのが特徴です。「〜のに」と比べると不満や驚きの気持ちは弱く、やや硬い書き言葉寄りの言い方で、「も」をつけると「それでも」の気持ちが強まります。「残念ながら」「勝手ながら」などの決まった言い方は会話でもよく使います。
接続
Vます形(状態を表す動詞。「Vている」は「Vていながら」)・イAい・ナA(「な」を取る)・N+ながら(も)
形
小さいながらも、温かい雰囲気の会だ年は離れていながらも、すぐに打ち解けた不便ながらも、昔の暮らしには工夫があった残念ながら、今回は参加できません
導入
- 「狭い。でも幸せ」を一文にする教師が古い小さな家の絵を見せ、「この家は狭いです。でも、家族はみんな幸せです」と話す。「狭い。でも幸せ」を一文にすると?と聞いて「狭いのに」を引き出してから、「狭いながらも、幸せな家」と言う。板書で「Vながら(同時:歌いながら歩く)」と「Aながらも(でも:狭いながらも幸せ)」を上下に並べ、前に来ることばが動作か状態かを色分けする。
板書案
Vながら(同時):歌いながら歩く(〔青〕動作)
Aながら(も)(でも):狭いながらも、幸せな家(〔赤〕状態)
接続:イAい/ナA(な を取る)/N/Vていながら
年は離れていながらも、すぐに打ち解けた。
決まった言い方:残念ながら・勝手ながら
場面と発話(自作)
- 交流会の感想で、年配の参加者との関係を話す。年は50歳も離れていながら、話してみると共通の趣味がたくさんありました。
- 祖父が、昔の暮らしについてインタビューに答える。貧しいながらも、家族で食卓を囲むのが楽しみだったよ。
- 交流イベントの主催者が、申し込みを断るメールを書く。残念ながら、定員に達したため、今回はお受けできません。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、2つの状態のカード(経験が少ない/一生懸命、体が小さい/力が強い)を組み合わせて「〜ながら(も)、〜」の一文にさせる。そのあと 3 の聞く素材から「ながら」を聞き取らせ、「同時」か「でも」かを手を挙げて答えさせる。
- 口頭教師が対になった2枚の状態カード(体が小さい/力が強い、経験が少ない/一生懸命、古い家/住みやすい)を見せ、学習者が「〜ながら(も)、〜」で一文にする。全体→個人。キューの例: 「狭い/居心地がいい」「不便/工夫があった」「知っている/言わなかった」。そのあと「同時」の文(音楽を聞きながら勉強する)を混ぜて読み上げ、学習者が「同時」か「でも」かを手で示す。
- ペアAは聞き手、Bは昔の暮らしを語る年配の人の役で、「貧しかった・家が狭かった・テレビがなかった」などのメモを持つ。Aが「大変でしたか」と聞き、Bは「〜ながらも、〜」でよかったことを答える。Aは「〜ながらも、〜んですね」と言い直して確かめる。交替して別のメモで。
- 産出活動名「ふるさと紹介の一文」。自分のふるさとや今住んでいる町について、欠点とよさを組み合わせた紹介文を2文書く(「小さいながらも〜」「不便ながらも〜」)。教師は、ナ形容詞の「な」、後ろに頼みや意志を置いていないか、「のに」に言い換えたときに不満の強さが変わることに気づいているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*静かなながらも」とナ形容詞の「な」を残す。ナ形容詞は「な」を取って「静かながらも」と確かめる
- 後ろに頼みや意志を置く(「*忙しいながらも、来てください」)。後ろはその状態に反して実際にあること・起きたことだと、板書の上下の文で確かめる
- 聞き取りで「知っていながら黙っていた」を「同時に2つのこと」と取り、「知っているのに黙っていた」という非難の意味を聞き落とす。前が状態の動詞なら「でも」の意味だと見分けさせる
既習の文型との違い
- Vながら、〜(同時進行)(初中級 第11課)同時のながらは動作を表す動詞につき、2つのことを同じ時にします。逆接のながら(も)は状態を表すことばにつき、「それでも」の意味になります。「知っていながら」のように動詞でも状態なら逆接になるので、前が動作か状態かを見分けさせます。
- 〜のに、〜(初中級 第10課)「〜のに」は不満・驚き・残念な気持ちが強く、話し言葉でよく使います。「〜ながら(も)」は気持ちが弱く、やや硬い書き言葉寄りです。「狭いのに家賃が高い」は不満、「狭いながらも居心地がいい」は評価、と後ろの向きの違いも見せます。
- 〜つつ(も)(第18課)「〜つつ(も)」は逆接の「ながら(も)」と近い意味の、さらに硬い書き言葉の形です。第18課で扱うときに、この課の文を「つつも」に言い換えてつなぎます。
関連する文型
学習項目 3 〜につけ(て)
意味・はたらき
「〜するたびに、いつも自然に(ある気持ちになる・思い出す)」と表す形です。前には「見る」「聞く」「考える」など何かに触れる動詞が来ることが多く、後ろには「思い出す」「なつかしくなる」「心配になる」のような自然にわき上がる気持ちが来ます。「〜たびに」(第8課)はくり返すたびに何かが起きることを広く言えますが、「〜につけ」はやや硬く、気持ちの動きに使うことが多いです。「何かにつけて(何かあるたびに)」「いいにつけ悪いにつけ(いいときも悪いときも)」は決まった言い方として会話でも聞きます。
接続
V辞書形+につけ(て)/決まった言い方「何かにつけて」「AにつけBにつけ」
形
古い写真を見るにつけ、子どものころを思い出すニュースを聞くにつけ、ふるさとの家族が心配になる祖母は何かにつけて、昔の話をする
導入
- 何度も見るたびに同じ気持ちになる教師がふるさとの祭りの写真を見せ、「この写真を見ると、いつもなつかしくなります。見る→なつかしい、見る→なつかしい」と、手で何度もくり返す動作をする。そのうえで「この写真を見るにつけ、ふるさとがなつかしくなります」と言い、板書で「[見る・聞く・考える]につけ → [思い出す・なつかしい・心配になる]」の型を示す。
板書案
[見る・聞く・考える]+ につけ(て)→ [自然にわく気持ち]
古い写真を見るにつけ、子どものころを思い出す。
〔赤〕✕ 後ろに意志:〜につけ、電話しよう
決まった言い方:何かにつけて/いいにつけ悪いにつけ
〔青〕〜たびに(広く使える) 〔赤〕〜につけ(硬い・気持ち)
場面と発話(自作)
- 年配の女性が、地域の交流会で若い人に昔の暮らしの話をする。今の子どもたちを見るにつけ、自分の小さいころを思い出しますよ。
- 留学生が、ホストファミリーのおじいさんのことを友達に話す。おじいさん、何かにつけて「ちゃんと食べてるか」って聞いてくれるんだ。
- 留学生が、ふるさとの母と電話で話したあと、友達に話す。母の声を聞くにつけ、早く一度帰りたいなと思っちゃう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、きっかけのカード(ふるさとの料理・昔の歌・祖父母の写真)を出し、「〜を〜につけ、〜」と気持ちを続けさせる。そのあと 3 の聞く素材で年配の話し手が「〜につけ」を使ったところを聞き取らせ、何を見て何を思うのかを答えさせる。
- 口頭教師がきっかけのカード(ふるさとの料理・昔の歌・祖父母の写真・事故のニュース)と気持ちのカード(なつかしい・思い出す・心配になる)を出し、学習者が「〜を〜につけ、〜」で一文にする。キューの例: 「ふるさとの料理を食べる/母を思い出す」「昔の歌を聞く/学生時代がなつかしい」「事故のニュースを見る/家族が心配になる」。次に「何かにつけて」を使って、口うるさい家族のまねを一言ずつ言わせる。
- ペアAは聞き手、Bは留学中の自分の役。Aが「ふるさとのことを思い出すのは、どんなとき?」と聞き、Bは「〜につけ、〜」で2つ答える。Aは「〜たびに、〜んだね」と「たびに」で言い直して返す。言い直しで2つの形を往復させる。交替。
- 産出活動名「思い出スイッチ」。自分にとって何かを思い出すきっかけ(におい・音・物)を1つ選び、「〜につけ、〜」で始まる短い文章(3文)を書いて、クラスで紹介する。教師は前が辞書形か、後ろが自然にわく気持ちになっているか、一回きりの出来事に使っていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*写真を見たにつけ」とタ形につける。前は辞書形だと確かめる
- 後ろに自分の意志を置く(「*写真を見るにつけ、電話しよう」)。後ろは自然にわく気持ち・思いだと、型の板書で示す
- 「何かにつけて」を「何かについて」と聞き間違える。「何かあるたびに」という決まった言い方として、音のまま覚えさせる
既習の文型との違い
- 〜たびに(第8課)「〜たびに」はくり返すごとに何かが起きることを広く言い、「行くたびに道に迷う」のように気持ち以外にも使えます。「〜につけ」はやや硬く、後ろは「思い出す」「なつかしい」など自然にわく気持ちに限られることが多いです。「行くにつけ道に迷う」は不自然だと比べて見せます。
- Vると、〜(初級第14課)「この歌を聞くと、高校時代を思い出す」も同じ場面で言えますが、「と」はきっかけと結果を淡々と結ぶだけです。「につけ」は「そのたびにいつも」という気持ちが乗る、と並べて確かめます。
関連する文型
学習項目 4 〜さえ
意味・はたらき
「(あたりまえのことや、いちばん簡単なことでも)〜も」と、極端な例を一つ挙げて、ほかはもちろんだと伝える形です。「名前さえ知らない」「水さえ飲めなかった」のように、否定の文で「最低限のこともできない・ない」と言うときに多く使います。「が」「を」のところでは助詞が消えて「さえ」だけになり、主語は「Nでさえ」(「先生でさえ知らない」)の形になることが多いです。「に」「と」などは残して後ろに「さえ」をつけます(「子どもにさえ」)。「〜も」より強く驚きや意外さが出ます。「〜さえ〜ば」(第12課)は「それだけあれば十分」という条件の形で、別に学びます。
接続
N+さえ(「が」「を」は消える)/N+に・と など+さえ/主語は「Nでさえ」も多い/Vます形+さえする
形
最初は、あいさつの言葉さえわからなかった日本人でさえ、この方言は聞き取りにくい忙しくて、家族と話す時間さえない
導入
- いちばん簡単なことばもわからなかった話教師が「日本に来たばかりの留学生の話です。難しいことばはもちろん、『ありがとう』もわかりませんでした」と話し、指で「いちばん簡単な『ありがとう』」を示して「『ありがとう』さえわかりませんでした」と言う。板書は「[いちばん簡単・あたりまえのこと]+さえ + ない → ほかはもちろん」とし、横に「が・を は消える」「主語は でさえ」の例を並べる。
板書案
[いちばん簡単・あたりまえのこと]+ さえ + 〜ない → ほかはもちろん
最初は、あいさつの言葉さえわからなかった。
〔赤〕が・を は消える:✕ 日本人がさえ
主語は Nでさえ:日本人でさえ聞き取りにくい。
〔青〕に・と は残す:子どもにさえ
場面と発話(自作)
- 留学生が、地域のお年寄りの集まりに初めて行ったときのことを話す。方言が強くて、最初は「こんにちは」さえ聞き取れませんでした。
- 年配の男性が、インタビューで子どものころの暮らしを話す。うちにはテレビさえなかったから、毎晩ラジオを聞いたもんだ。
- 地域の方言について、交流会の担当者が説明する。地元の若い人でさえ、お年寄りの言葉がわからないことがあるそうです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「いちばん簡単なこと」のカード(ひらがな・自分の名前・水)を出し、「〜さえ〜ない」の文を作らせる。次に主語の練習として「日本人・先生・大人」を使って「〜でさえ〜」を言わせる。最後に 3 の聞く素材で、話し手が何を「さえ」で強めたかを答えさせる。
- 口頭教師が「いちばん簡単なこと」のカード(ひらがな・自分の名前・水・あいさつ)を見せ、学習者が「〜さえ〜ない」の文を作る。キューの例: 「来たばかり/ひらがな」→「来たばかりのころは、ひらがなさえ読めなかった」、「熱がある/水」→「熱が高くて、水さえ飲めなかった」。次に主語のカード(日本人・先生・大人)で「〜でさえ〜」、助詞のカード(子どもに・家族と)で「〜にさえ」「〜とさえ」を言わせる。
- ペアAは聞き手、Bは日本に来たばかりのころの自分の役で、困ったことのメモ(バスの乗り方・コンビニの支払い・あいさつ)を持つ。Aが「来たばかりのころ、大変だった?」と聞き、Bは「〜さえ〜なくて」で答え、Aは「それは大変だったね。今は?」と続ける。交替。
- 産出活動名「ビフォー・アフター発表」。日本に来たばかりのころの自分と今の自分を比べて、「最初は〜さえ〜なかった。でも今は〜」を軸に1分で話す。教師は、「が・を」が消えているか、主語に「でさえ」を使えているか、強める必要のない文に入れていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*日本人がさえ知らない」と「が」を残す。「が」は消えて「さえ」、主語は「でさえ」にすることが多い、と板書で確かめる(「名前をさえ」は古い書き言葉の形で、ふつうは「名前さえ」)
- 「さえ〜ば」と混ぜて、「時間さえない」を「時間があれば」の意味に取る。否定の文の「さえ」は「〜も(ない)」だと、2つの文を並べて示す
- 強める必要のない文に入れる(「今朝はコーヒーさえ飲みました」)。誤りではないが大げさで不自然になる。「いちばん簡単なこと」か「いちばん意外なこと」に使うと確かめる
既習の文型との違い
- 〜でも(極端な例)(第1課)「子どもでもわかる」の「でも」も極端な例を挙げますが、肯定の文で「〜でも…できる(だからほかは当然)」と言うことが多く、さえよりやわらかい話し言葉です。「さえ」は否定の文で「最低限のことすらない」と驚きや意外さを強く出します。
- 〜さえ〜ば(第12課)「時間さえあれば行ける」は「それだけあれば十分」という条件の形で、意味が逆の方向に見えます。否定の「さえ〜ない」と並べて、後ろに「ば」があるかないかで見分けさせます。
- [〜個、〜時間、〜杯…/N]しか〜ない(初中級 第12課)「水しか飲めなかった」は「水だけは飲めた」、「水さえ飲めなかった」は「水も飲めなかった」で、事実がまったく違います。学習者がよく取り違えるので、絵で並べて確かめます。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 自分や相手を呼ぶときのことば日本語では、自分や相手の呼び方で、話し手の年代や性別、相手との関係がわかることがあります。聞くときの手がかりとして、どんな人がどんな呼び方を使う傾向があるかを紹介しますが、実際には地域や人によって違い、ドラマやアニメの言い方がそのまま日常で使われているわけではないことも伝えます。学習者自身は、まず「わたし」と「名前+さん」を使えば失礼にならないと確かめます。例: わたし・わたくし(改まった場)/僕・俺(男性に多い)/あたし(くだけた話し言葉の女性に多い)/うち(関西などの若い人に聞かれる)/〜さん・〜くん・〜ちゃん/おじいちゃん・お姉さん(家族でない人を呼ぶときにも使う)
4 伝えてみよう
できること活動を通して知り合った人たちとのことを、きっかけや自分の気持ちの変化を入れて話せる。
場面
交流活動に参加したあと、クラスやゼミで2〜3分の体験発表をする場面です。教室では、発表の前に「きっかけ・したこと・出会った人の印象・自分が変わったこと」の4つの枠のメモを作らせ、メモを見ながら話させます。聞く側には、発表のあとに質問を1つ必ずするという役を与えます。
- 留学生:わたしは半年前から、地域の高齢者施設で、月に一度、話し相手のボランティアをしています。
- 留学生:最初は、年の差があるから話が合わないだろうと思っていました。でも、予想に反して、すぐに打ち解けることができました。
- 留学生:特に仲良くなったおばあさんは、あいさつの仕方からして、とても上品な方でした。
- 留学生:何度も会ううちに、昔の料理の作り方を教えてもらうようになりました。
- 留学生:この活動を通して、年齢や国が違っても心は通じるということを知りました。
- 聞いている学生:そのおばあさんとは、今も会っているんですか。
学習項目 1 〜に反し(て)/〜に反する/〜に反した
意味・はたらき
「予想・期待・希望・規則などとは反対に」と表す形です。交流の体験を話すときには「予想に反して、すぐに仲良くなれた」のように、思っていたことと実際が逆だったことを伝えるのに使えます。「規則に反する行為」のように、決まりを破ることを言う使い方もあります。硬い言い方で発表や作文に向き、ふだんの会話では「思っていたのと違って」と言うことが多いです。「〜と違って」はどんな違いにも使えますが、「〜に反して」は予想や期待、決まりなど、前もってあった考えや基準と逆になる場合に使います。
接続
N(予想・期待・意図・規則 など)+に反して/に反し、〜/に反する+N/に反した+N
形
予想に反して、参加者の大半は若者だった親の期待に反し、彼は音楽の道に進んだ規則に反する行為予想に反した結果
導入
- 予想と実際を黒板に並べる教師が「交流会に行く前、わたしは『お年寄りとは話が合わないだろう』と思っていました」と言い、黒板に「予想:話が合わない」と書く。「でも実際は……」と間を置いて「とても楽しかった」と書き、2つの間に大きな✕をつけて「予想に反して、とても楽しかった」と言う。板書で「に反して(文の途中)」「に反するN・に反したN(名詞の前)」の3つの形を並べる。
板書案
予想・期待・意図・規則 + に反して/に反し、〜
〔青〕予想:話が合わない ✕ 〔赤〕実際:とても楽しかった
予想に反して、すぐに打ち解けた。
名詞の前:規則に反する行為/予想に反した結果
〔緑〕会話では:思っていたのと違って
場面と発話(自作)
- 留学生が、ゼミで地域交流の体験を発表する。予想に反して、年配の方々のほうから積極的に話しかけてくださいました。
- 交流会の運営スタッフが、会のあとのふり返りで話す。参加者は予想に反して少なかったのですが、満足度はとても高かったです。
- マンションの掲示板の注意書き。決まりに反して出されたごみは、回収しません。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「予想」と「実際」のカードを組にして出し(予想:寒い/実際:暖かい、予想:難しい/実際:簡単)、「予想に反して、〜」を作らせる。次に「予想に反した結果」のように名詞の前の形に言い換えさせる。最後に 4 の発表の中で、自分の予想と実際が違ったことを1つ入れさせる。
- 口頭教師が予想と実際の組カード(予想:寒い/実際:暖かい、予想:難しい/実際:簡単、予想:人が少ない/実際:満員)を出し、学習者が「予想に反して、〜」で言う。全体→個人。次に名詞「期待」「希望」「意図」に替えて言い、最後に「予想に反した結果」「規則に反する行為」の名詞の前の形に言い換える。助詞は必ず「に」であることを声で確かめる。
- ペアAは発表の練習をする人、Bは聞いて質問する人。Aは「交流会に行く前に思っていたこと」と「実際」のメモを持ち、「予想に反して、〜」で一文を言う。Bは「どうして予想と違ったと思いますか」と質問し、Aが理由を答える。交替。
- 産出活動名「予想外ベスト3」。日本に来て予想と違ったことを3つ選び、ランキング形式で発表する(「第3位、予想に反して〜」)。2つ目からは会話の言い方「思っていたのと違って」も使ってよい。教師は助詞の誤り、ただ比べるだけの違いに使っていないか、硬い言い方を続けすぎていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*予想が反して」「*予想を反して」と助詞を誤る。いつも「に反して」だと確かめる
- ただ比べるだけの違いに使う(「兄に反して、弟は背が高い」)。不自然になるので、比べるだけなら「〜と違って」で、「に反して」は予想・期待・決まりと逆になるとき、と例を並べる
- 会話で「予想に反して」を何度も使い、硬く聞こえる。友達に話すときは「思っていたのと違って」も使えるようにする
既習の文型との違い
- 〜に比べ(て)(第6課)「〜に比べて」は2つのものを並べて程度を比べる形で、「兄に比べて弟は背が高い」のように使います。「〜に反して」は前もってあった予想や期待、決まりと逆になることを言うので、ただ比べるだけなら「に比べて」か「と違って」にします。
- 〜とおり(に)/〜どおり(に)(第5課)「予想どおり」は予想と同じになったことを言う、「予想に反して」とは反対の形です。発表で「予想どおりだったこと」と「予想に反したこと」を1つずつ言わせると、2つの形を対で使えます。
関連する文型
学習項目 2 〜うちに
意味・はたらき
ここでは「〜しているあいだに、いつの間にか(気づかないうちに)変化が起きた」という使い方を扱います。「話しているうちに、緊張がほぐれた」「何度も会ううちに、仲良くなった」のように、交流の中で関係や気持ちが少しずつ変わっていったことを話すのに合う形です。後ろには「〜ようになった」「〜てきた」「〜くなった」など変化を表す文が来ることが多く、自分の意志の文は来ません。第2課で学んだ「温かいうちに食べる」(変わる前に)とは、同じ形でも意味が違います。「〜間に」は時間の幅の中のできごとを広く言い、「いつの間にか変わった」という感じはありません。
接続
Vている/V辞書形(くり返す動作)+うちに(後ろは変化)
形
話しているうちに、緊張がほぐれた何度も会ううちに、冗談を言い合える仲になった続けているうちに、地域の人の名前を覚えた
導入
- 線の上に「話す」を重ねる教師が黒板に横線を1本引き、左端に「初めて会った日(緊張)」、右端に「今(友達)」と書く。線の上に「話す・話す・話す…」と小さく何度も書き、「何度も話しているうちに、友達になりました」と言う。板書で「Vている/V辞書形(くり返し)+うちに → いつの間にか[変化]」と示し、その下に第2課の「温かいうちに(変わる前に)」を並べて意味の違いを確かめる。
板書案
Vている/V辞書形(くり返し)+ うちに → いつの間にか[変化]
何度も会ううちに、冗談を言い合える仲になった。
〔緑〕後ろ:〜ようになった/〜てきた/〜くなった
〔赤〕✕ 後ろに意志:〜うちに、仲良くなろう
〔青〕第2課:温かいうちに食べる(変わる前に)
場面と発話(自作)
- ホームステイの体験を、ゼミで発表する。毎晩一緒に夕ご飯を食べているうちに、家族の一員のように感じるようになりました。
- 地域の将棋の会に通っている留学生が、友達に話す。通ううちに、おじいさんたちが名前で呼んでくれるようになったんだ。
- 日本料理教室に通っている人が、近況を話す。毎週作っているうちに、だしの取り方が自然に身についてきました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、線の左端と右端の状態(始め:知らない/今:友達、始め:苦手/今:好き)と動作を出し、「〜ているうちに、〜ようになった」を作らせる。そのあと 4 の発表の中心の文として、交流の中で自分の気持ちが変わったことを「〜うちに」で話させる。
- 口頭教師が黒板の横線の左端に始めの状態、右端に今の状態を書いたカードを貼り(知らない人/友達、苦手/好き、わからない/わかる)、動作の語を言う。学習者は「〜ているうちに、〜ようになった」で言う。キューの例: 「話す/緊張がほぐれた」「通う/名前で呼んでくれるようになった」「聞く/方言がわかってきた」。最後に第2課の「〜うちに(変わる前に)」の文を混ぜ、どちらの意味かを答えさせる。
- ペアAは聞き手、Bは交流活動を続けている人の役で、始めと今の状態を書いたメモを持つ。Aが「最初からそうだったの?」と聞き、Bは「ううん、〜ているうちに〜ようになったんだ」と答える。Aは「何がきっかけで変わったの?」と1つ質問を足す。交替。
- 産出活動名「変化の線グラフ」。自分の日本での生活で変わったこと(日本語・人間関係・食べ物の好み)を1つ選び、横線に始めと今を書いた図を見せながら「〜ているうちに、〜」で30秒話す。教師は前が「ている」か辞書形か、後ろが自然に起きた変化か、意志や命令を置いていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*話したうちに」とタ形につける。前は「ている」か辞書形だと確かめる
- 後ろに意志を置く(「*話しているうちに、仲良くなろう」)。後ろは自然に起きた変化だと、線の図で示す
- 第2課の「〜うちに(変わる前に)」と取り違える。後ろが「変化」か「今のうちにすること」かで見分けさせる
既習の文型との違い
- 〜うちに(第2課)第2課の「温かいうちに食べて」は「変わる前に、今のうちにする」使い方で、後ろに意志や依頼が来ます。この課の「話しているうちに仲良くなった」は「している間に、いつの間にか変わった」使い方で、後ろは自然に起きた変化です。後ろの文の種類で見分けさせます。
- Vている間に、〜(初中級 第7課)「〜間に」は時間の幅の中で何かが起きたことを広く言い、「寝ている間に雨が降った」のように変化の感じはありません。「うちに」は「気づかないうちに少しずつ変わった」という感じがあり、交流の体験を語るときに合います。
関連する文型
学習項目 3 〜からして
意味・はたらき
「〜からして」には主に2つの使い方があります。1つは「いちばん基本的なところや最初の部分がもう〜だから、ほかはもちろん」という使い方で、「名前からして面白い」「話し方からして違う」のように、一つの例で全体の印象を言います。もう1つは「〜から判断すると」という使い方で、「あの口ぶりからして、何か知っているようだ」のように判断の根拠を表します。交流の体験を話すときには、出会った人の第一印象を伝えるのに使えます。マイナスの評価にもよく使われます。「〜から見ると」(第11課)は立場や視点を言う形で、「一つの例から全体を言う」この使い方とは違います。
接続
N+からして
形
あの人は、服装からしておしゃれだその会は、雰囲気からして和やかだったあの口ぶりからして、何か知っているようだ
導入
- 店の名前から全体を想像させる教師が昔ながらの喫茶店の看板の絵(自作の店名「純喫茶 ひだまり」)を見せ、「名前を見てください。どんな店だと思いますか」と聞く。「古そう」「落ち着いていそう」を引き出してから、「この店は名前からして、落ち着いた感じがしますね」と言う。板書で「[最初・いちばん基本のところ]からして〜 → 全体も〜」と囲み、もう1つの「判断の根拠」の使い方を下に書く。
板書案
① [最初・いちばん基本のところ]からして〜 → 全体も〜
あの人は、あいさつの仕方からして丁寧だ。
② [手がかり]からして、〜ようだ(判断の根拠)
あの口ぶりからして、何か知っているようだ。
〔赤〕N にじかに:✕ 名前がからして
場面と発話(自作)
- 交流会で出会った人について、友達に話す。あの人、あいさつの仕方からして、すごく丁寧なんだよ。
- 地域の祭りに参加した体験を発表する。町内会の会長さんは、話し方からして、いかにも下町の人という感じの方でした。
- 新しくできた店の前を通った友達同士が話す。この店、入口からして高そうだから、今日はやめておこうか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、人や店の絵カードを見せ、名前・服装・話し方・入口などを手がかりに「〜からして、〜」で第一印象を言わせる。次に 4 の発表の中で、出会った人の印象を「〜からして」で1つ入れさせる。
- 口頭教師が人や店の絵カード(看板の古い喫茶店・制服をきちんと着た店員・派手な服の人)を見せ、手がかりの語(名前・服装・入口・話し方)を言う。学習者は「〜からして、〜」で第一印象を言う。キューの例: 「店の名前/落ち着いた店」「服装/おしゃれな人」「あいさつ/丁寧な人」。次に判断の使い方として「顔色/疲れているようだ」「口ぶり/何か知っているようだ」を作らせる。
- ペアAは交流会に行った人、Bは行かなかった友達。Aは会った人の絵カードを伏せて持ち、「〜からして、〜な人だった」で1人ずつ紹介する。Bは聞いてどんな人か想像を言い、Aがカードを見せて当たったかを確かめる。交替。
- 産出活動名「第一印象スケッチ」。最近会った人(店員・先生・アルバイト先の人)を1人選び、「〜からして」を使って第一印象を2文で書き、実際はどうだったかを1文足す。教師は名詞にじかについているか、理由の「から」と取り違えていないか、悪口に聞こえる言い方になっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 理由の「から」と取り違えて、「名前からして面白い」を「名前が理由で面白い」と読む。「最初の例から全体を言う」と、板書の囲みで確かめる
- 「*名前がからして」と助詞を残す。名詞にじかに「からして」がつくと確かめる
- 悪い評価で使ったときの響きに気づかない(「話し方からして失礼な人だ」)。誤りではないが、一つの点から人全体を決めつける強い言い方になるので、本人の前や目上の人について言うときは避ける、と場面を比べて確かめる
既習の文型との違い
- 〜からすると/〜からすれば/〜から見ると/〜から見れば(第11課)「〜から見ると」は立場や視点を表し、「親から見ると心配だ」のように使います。この課の「〜からして」は一つの例や手がかりから全体を言う形で、「名前からして面白い」は「名前の立場から見ると」ではありません。判断の根拠の使い方は「からすると」に近いので、言い換えられるかで確かめます。
- 〜でも(極端な例)(第1課)「名前からして」は「名前のようないちばん基本の部分がもう〜だから、ほかはなおさら」と、一つの例を挙げて全体を言う働きがあります。「子どもでもわかる」と同じく、例を一つ挙げてほかを推させる仲間だと見せると整理しやすくなります。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 交流の体験を述べるときに使うことば・表現発表は「きっかけ → したこと → 出会った人 → 変わったこと」の順に組むと話しやすいので、それぞれの段で使えることばを板書で分けて示します。学習項目の「予想に反して」「〜うちに」「〜からして」と組み合わせると、体験を具体的に語れます。例: 〜がきっかけで、〜に参加しました/〜を通して、〜と知り合いました/年の差をまったく感じませんでした/すっかり打ち解けました/〜に刺激を受けました/視野が広がったと思います
語彙の扱い
この課の語は、交流活動(ボランティア・公民館・町内会・世代・高齢者 など)、気持ちの変化(打ち解ける・気が進まない・刺激を受ける など)、昔の暮らしや遊びに関する語の3つのかたまりに分かれます。昔の遊びや道具の名前は実物や写真で見せれば十分で、全員に書けるようにさせる必要はありません。呼び方や文末の違いは、聞いてわかればよい語(俺・〜っす・〜わね など)と、自分でも使う語(わたし・〜さん)を分けて扱います。
この課の練習で使う語(10語・意味・連語・例文)
- 打ち解ける(うちとける) 初めは緊張していた相手と、気持ちが通じて親しく話せるようになることです。 みんなと〜・すっかり〜
交流会のあと、友達に感想を話す。最初は緊張したけど、お茶を飲んでいるうちに、みんなと打ち解けたよ。
- 世代(せだい) 同じころに生まれて育った人たちのまとまりです。 〜を超える・若い〜・〜の違い
町の交流会のポスターの説明をする。これは、世代を超えて楽しめるイベントです。
- 交流(こうりゅう) 人と人、地域と地域が行き来して、知り合ったり考えを伝え合ったりすることです。 〜を深める・地域との〜・〜会
留学生センターの人が、新しい活動を紹介する。地域の方との交流を深めるために、月に一度の会を始めました。
- 顔を出す(かおをだす) 集まりや会に、ちょっと参加することです。 会に〜・たまには〜
先輩が後輩を集まりに誘う。忙しかったら、最初の30分だけでも顔を出してみない?
- 気が進まない(きがすすまない) 何かをしようという気持ちになれないことです。 あまり〜・どうも〜
友達に、誘われた会に行くか迷っていると話す。知らない人ばかりだから、正直あまり気が進まないんだ。
- 年の差(としのさ) 二人の年齢がどれくらい離れているかです。 〜を感じない・〜がある
ボランティアで知り合ったお年寄りについて話す。50歳も離れているのに、年の差をまったく感じませんでした。
- なつかしい(なつかしい) 昔のことを思い出して、もう一度戻りたいようなあたたかい気持ちになるようすです。 〜写真・〜味・〜思い出
古いアルバムを見ながら家族と話す。この写真、なつかしいね。毎年この川で遊んだもんだ。
- 刺激(しげき) 人や出来事から受ける、気持ちを動かすような影響で、「受ける」と一緒に「自分もがんばろうと思う」意味でよく使います。 〜を受ける・よい〜になる・大きな〜
交流の体験を発表の最後でまとめる。80歳を過ぎても勉強を続ける方に会って、大きな刺激を受けました。
- 担当する(たんとうする) ある仕事や役目を、自分の受け持ちとして引き受けることです。 係を〜・受付を〜
会の準備で、役割を決める。当日の受付は、わたしが担当することになりました。
- 視野(しや) 物事を考えたり判断したりするときに、目を向けられる範囲のことです。 〜が広がる・〜が狭い・〜に入れる
留学生が、ゼミで1年をふり返る。いろいろな年代の人と話すうちに、視野が広がったと思います。
宿題と次のコマ
宿題は、4 の発表をもとに、自分の交流の体験を400字ほどの作文にしてくること(「予想に反して」「〜うちに」を必ず1回ずつ使う)。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞き手に「その人に今、何と伝えたいか」を質問させてから、第8課「気持ちを伝える」に入ります。交流の中で生まれた感謝やおわびの気持ちを、相手に伝える場面へとつなげます。
よくある質問
『できる日本語 中級』第7課は何コマで終わりますか?
学習項目が14と多いので、90分×4コマを目安にしています。1コマ目に導入と「見つけた!」、2コマ目に「こんなときどうする?」、3コマ目に「耳でキャッチ」、4コマ目に「伝えてみよう」とまとめを当てると、4つの場面が一つの交流活動の流れのまま進みます。時間が足りないときは、聞いてわかればよい「〜につけ」や「〜からして」の判断の使い方を短くします。
第2課の「〜うちに」と第7課の「〜うちに」はどう教え分けますか?
後ろの文の種類で見分けさせます。第2課の「温かいうちに食べて」は変わる前に今することで、後ろに意志や依頼が来ます。第7課の「話しているうちに仲良くなった」はしている間にいつの間にか変わったことで、後ろは「〜ようになった」「〜てきた」などの変化です。黒板に横線を引き、線の上で変化が起きる図と、線が切れる前に何かをする図を並べると伝わりやすくなります。
「〜ことになった」と「〜ことにした」の違いはどう見せればいいですか?
決めた人を絵で示して2行に分けるのがわかりやすいです。自分で決めたなら「ことにした」、会社や話し合い、天気などまわりの事情で決まったなら「ことになった」と板書します。自分で決めたことを「ことになりました」と言うと控えめな報告になることも、改まった場面の例として添えます。
「〜にしては」と「〜わりに」の違いは?
「〜わりに」は形容詞にも広くつき、程度のつり合いがとれていないことを言います。「〜にしては」は「〜という立場や条件であることを考えると」と前提を立てて評価する形で、名詞や動詞によくつきます。イ形容詞なら「暑いわりに」が自然で、「暑いにしては」は不自然に聞こえることが多い、と並べて見せます。
「〜もんだ」「〜につけ」「〜ながらも」のような硬い形は、学習者に話させる必要がありますか?
全部を同じように使わせる必要はありません。この課の場面は、年配の人の語りを聞いてわかることと、自分の体験を話すことに分かれるので、「〜もんだ」「〜につけ」は聞いて意味がとれることを先にし、自分の子どものころを語る活動で少し使わせる程度にします。「〜ながらも」は作文や発表で使えると表現が広がるので、書く活動で使わせます。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。