できる日本語 中級 第12課「心と体の健康」の教案
『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること4つ(こんなときどうする?・耳でキャッチ・見つけた!・伝えてみよう)
慣れない土地で勉強や仕事を続けるために、気持ちと体の調子を自分で整え、困ったときは人に相談できるようになる課です。1 では落ち込んでいる状況を身近な人に話してアドバイスをもらい、2 では運動と体力の関係を説明する番組を聞き、3 では睡眠についての記事を読んで役に立つ情報を拾い、4 では健康についての投書を読んで自分の意見を述べます。「相談する→聞いて知る→読んで知る→意見を言う」と、自分の体験から社会の考え方へ話を広げていく流れです。第11課で扱った「〜にしても」(一つの場合を認める形)と「〜に対して」(対比)が、この課では「〜にしても〜にしても」(どちらの場合も)と「〜に対して」(対象)という別の使い方で出てくるので、違いを並べて見せます。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目12時間90分×4コマ場面4
この課のねらい(Can-do)
- 気分が沈んでいるときに、今の状況と困っていることを身近な人に話して、助言を求められる
- 健康についての情報番組を聞いて、運動の習慣と体力がどう結びついているかを聞き取れる
- 睡眠についての記事を読んで、自分の生活に役立つ情報を選び出せる
- 健康をめぐる投書を読んで、書き手の意見を受け止めたうえで、自分の考えを理由とともに述べられる
進め方と時間配分
目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入 | 15分 | 教師が「最近、よく眠れていますか」「運動していますか」と聞き、日本に来てから心や体の調子で変わったことを一人一つずつ言わせる。出た話題(睡眠・運動・食事・ストレス)を黒板の4つの枠に分けて書き、この課の4つの活動につなげる |
| 1 こんなときどうする? | 75分 | 落ち込んだ状況を相談するやり取り。「〜にしても〜にしても」で迷っている二つを並べ、「〜ばかりだ/〜一方だ」で悪くなっていく様子を、「〜気味」で今の体の調子を言う。役割カードで先輩に相談するロールプレイ |
| 2 耳でキャッチ | 75分 | 教師が自作した2分ほどの情報番組の音声を聞く。1回目は運動と体力の関係の大筋、2回目は「〜からといって」「〜に応じて」「〜さえ〜ば」の文に注意して条件と助言を聞き取る |
| 3 見つけた! | 60分 | 自作の睡眠の記事(600字ほど)を読む。「〜に対する」で何に向けた話かをつかみ、「〜やら〜やら」で眠れない原因の並べ方を読み取る。自分に役立つ情報に線を引いて、ペアで紹介し合う |
| 4 伝えてみよう | 100分 | 自作の投書(健康法についての意見)を読み、「〜なんて」「〜として〜ない」「〜というものだ」「〜とは限らない」で書き手の主張の強さを確かめる。そのあと、相手の意見を受けて自分の意見を述べる短い話し合い |
| 課のまとめ | 35分 | 「留学生が心と体の健康を保つために大切なこと」を一つ選び、相談・番組・記事・投書で知ったことを材料にして、1分で意見を述べる。聞き手は一つ質問をする |
1 こんなときどうする?
できること気持ちが沈んでいるとき、今の状況と困っていることを身近な人に話し、どうすればいいか助言をもらえる。
場面
留学生が、進学の準備とアルバイトで疲れがたまり、気分が晴れないことを、同じ学校の先輩に相談する場面です。教室では「状況カード」(困っていること・続いている期間・体の調子)を配り、相談する側とアドバイスする側に分かれてロールプレイをします。相手が親しい先輩なので、ていねい体を基本にしながら、話の途中で少しくだけた言い方が混ざってもよいとします。
- 留学生:先輩、ちょっと相談したいことがあるんですけど、今いいですか。
- 先輩:うん、いいよ。どうしたの?
- 留学生:最近、何をしても疲れが取れなくて……。レポートは増える一方だし、夜も眠れないし。
- 先輩:それはつらいね。体の調子はどう?
- 留学生:少し風邪気味です。アルバイトを減らすにしても続けるにしても、店長に話さなきゃいけないんですけど、言い出せなくて。
- 先輩:一人で考えてると、不安になるばかりだよ。まず店長に今の状況を正直に話してみたら?
- 留学生:そうですね。話してみます。聞いてもらって、少し楽になりました。
学習項目 1 〜にしても〜にしても/〜にしろ〜にしろ/〜にせよ〜にせよ
意味・はたらき
二つ(または対になる二つの場合)を並べて、「どちらの場合でも後ろのことは同じだ」と言う形です。相談の場面では、迷っている二つの選択肢を並べて、「どちらに決めても、まずこれをしなければならない」と状況を整理するのに使います。「〜にしても〜にしても」は話し言葉でも書き言葉でも使い、「〜にしろ〜にしろ」「〜にせよ〜にせよ」はより硬く、書き言葉や改まった話で使います。第11課の「〜にしても」が一つの場合を仮に認めて「それでも」と続けるのに対し、こちらは二つの場合を両方挙げる点が違います。「〜ても〜ても」は「どんなにしても」のくり返しの意味になりやすく、対になる二つの選択肢を整理するのはこの形の役目です。
接続
N/V普通形/イA普通形+にしても(にしろ・にせよ)を対にして二つ並べる(ナAは「ナAであるにしても」が硬い形、話し言葉では語幹に付けることもある)
形
行くにしても行かないにしても、早めに連絡したほうがいい勉強にしてもアルバイトにしても、無理は続かない進学するにせよ就職するにせよ、準備は今から必要だ
導入
- 迷っている二つを黒板に並べる教師が「来月の旅行に行こうか、やめようか、まだ決められないんです」と話し、黒板の左右に「行く」「行かない」を書く。「でも、どちらでも、ホテルのキャンセルの期限までに決めなければなりません」と続け、二つの間に「にしても」を書き入れて「行くにしても行かないにしても、〜までに決めなければならない」と板書する。後ろの部分を指して「どちらの場合でも同じ」ことを確かめる。
板書案
N/V普通形 + にしても、N/V普通形 + にしても、〔後ろ=どちらにも当てはまること〕
行くにしても 行かないにしても、金曜までに 返事を する。
〔青〕左右の枠「行く」「行かない」 〔赤〕二本の矢印を一つにまとめて「金曜までに返事」
話す:にしても | 書く・改まった:にしろ/にせよ
場面と発話(自作)
- 引っ越しを迷っている友達に話す。引っ越すにしても今の部屋に住むにしても、一度家賃を比べてみたら?
- 進路の説明会で、職員が学生に話す。大学にしろ専門学校にしろ、出願の書類は早めにそろえておいてください。
- 体調を崩した同僚に、先輩が声をかける。休むにしても出てくるにしても、まず病院に行ったほうがいいよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「ラーメン/うどん」「電車/バス」のような対のカードを出し、学習者が「〜にしても〜にしても、〜」と後ろを自分で考えて言う。慣れたら「にしろ」「にせよ」に替えて、改まった連絡の文に言い直させる。最後に、ST の状況カードで迷っていることを二つ挙げて相談するやり取りに入れる。
- 口頭教師が対のカード(「電車/バス」「進学する/就職する」「休む/出る」)を出し、後ろの文(「早めに連絡する」)を黒板に示して全体で「〜にしても〜にしても、〜」と言う。次に個人で、後ろの文を自分で考えて言わせる。慣れたら同じ文を「にしろ」「にせよ」に替え、お知らせや連絡の文として言い直させる。
- ペアAは「迷いカード」(二つの選択肢と事情が書いてある)を持って相談し、Bは「どちらに決めても必要なこと」を「〜にしても〜にしても」で助言する。Aは、Bの後ろの文がどちらの場合にも当てはまっているかを確かめてから「そうだね」と返す。2往復したら役を交替する。
- 産出「二択アドバイス」:学習者が自分がいま迷っている二択を一つ紙に書いて出し、クラスで回して、受け取った人が「〜にしても〜にしても、〜」で一文の助言を書き添える。最後に本人がいちばん役に立った助言を読み上げる。教師は、後ろが一方の場合だけの内容になっていないか、並べた二つが同じ種類の対になっているか、文体(にしても/にせよ)が場面に合っているかを見て直す。
つまずきと手当て
- 後ろに一方の場合だけの内容を言う(「行くにしても行かないにしても、楽しんできてね」)。後ろはどちらの場合にも当てはまることだと、左右の枠から矢印を一つにまとめる板書で確かめる
- 対にならない二つを並べる(「寿司にしても雨にしても」)。同じ種類の選択肢か、肯定と否定の対を並べると示す
- 友達との会話で「にせよ〜にせよ」を使い、硬く聞こえる。会話は「にしても」、書類やお知らせは「にしろ・にせよ」と、場面で使い分けさせる
既習の文型との違い
- 〜にしても/〜にしろ/〜にせよ(第11課)第11課の形は、一つの場合を仮に認めて「それでも〜」と続けます(「忙しいにしても、連絡ぐらいはできるはずだ」)。第12課の形は二つの場合を並べ、どちらでも後ろが同じだと言います。二つ目を落として「行くにしても、早めに連絡して」と言うと「仮に行くとしても」という第11課の意味になり、迷いの整理にはならないことを示します。
- 〜ても(初級 第15課)「〜ても」は一つの条件を挙げて逆接で続けます(「雨が降っても行く」)。「降っても降らなくても」のように二つ並べることもできます。「洗っても洗っても落ちない」のように同じ動詞をくり返すと「何度〜ても」の意味になるので、選択肢を整理する文は「〜にしても〜にしても」で言わせます。
関連する文型
学習項目 2 〜ばかりだ/〜一方だ
意味・はたらき
変化が一つの方向にだけ進み続けていることを言う形です。「不安になるばかりだ」「仕事がたまる一方だ」のように、相談の場面で、状況がどんどん悪くなっていくことを伝えるのに使います。「〜ばかりだ」はほとんど悪い方向の変化に使い、話し手の困った気持ちが強く出ます。「〜一方だ」も悪い変化に多く使いますが、「利用者は増える一方だ」のように良し悪しを言わない変化にも使え、ニュースや説明文にもよく出ます。第11課の「〜つつある」は変化が進んでいる途中を落ち着いて述べる書き言葉で、止まらずに進み続けるという話し手の受け止め方は「〜一方だ」のほうが強く出ます。
接続
V辞書形+ばかりだ/V辞書形+一方だ(「増える・減る・悪くなる・たまる」など変化を表す動詞に付く)
形
不安になるばかりだやることが増える一方だ体重が減る一方で、心配だ症状は悪くなるばかりだった
導入
- 右肩下がりの線を描く黒板に、上から下へ下がり続ける線を描き、教師が「先月から、部屋のごみが……」と言って、線に沿って「たまる、たまる、たまる」と指でなぞる。「ごみがたまる一方です。全然減りません」と言い、線の横に「V辞書形+一方だ/ばかりだ」と板書する。次に、気持ちの線を描いて「考えれば考えるほど、不安になるばかりです」と続け、「ばかりだ」には困った気持ちが強く出ることを、教師の表情で見せる。
板書案
V辞書形(変化の動詞)+ 一方だ/ばかりだ
仕事が たまる 一方だ。
一人で 考えると、不安に なる ばかりだ。
〔赤〕右下がりの矢印 ↘(止まらない) 〔青〕なる・増える・減る・たまる に丸
忙しいばかりだ(=ただ忙しいだけ) ↔ 忙しく なる ばかりだ(=変化)
場面と発話(自作)
- 先輩に、日本語の勉強の悩みを相談する。覚える漢字が増える一方で、全然追いつかないんです。
- 家族に、最近の体の調子を電話で話す。夜遅くまでスマホを見ていたら、目の疲れがひどくなるばかりで。
- 町の説明会で、職員が自転車の利用について話す。駅前の自転車の数は、この数年で増える一方です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が変化のカード(「物価が上がる」「貯金が減る」「宿題がたまる」)を見せ、学習者が「〜一方だ」「〜ばかりだ」で言う。そのあと、ST の状況カードの「困っていること」を、「〜ばかりで、〜」の形で相談の最初の一言にして言わせる。
- 口頭教師が変化のカード(「物価が上がる」「貯金が減る」「宿題がたまる」「眠れなくなる」)と、右上がり・右下がりのグラフの絵を見せ、全体で「〜一方です」と言う。次に個人で「〜ばかりで、困っています」と相談の切り出しの形にして言わせる。形容詞のカード(「寒い」「忙しい」)も混ぜ、「寒くなる一方だ」と「〜くなる」を入れる練習をする。
- ペアAが「最近どう?」と聞き、Bは状況カード(悪くなっていること)を見て「〜一方で/〜ばかりで、〜」と答える。Aはあいづちを打ち、「それは大変だね。〜たらどう?」と一言助言する。カードを替えて役を交替する。
- 産出「お悩みグラフ」:自分の最近の変化(睡眠時間・出費・やること)を簡単な折れ線に描き、それを見せながら30秒で先輩への相談の切り出しを言う。聞き手は一つ質問をする。教師は、辞書形に付いているか、変化を表す動詞になっているか、良い変化に「ばかりだ」を使っていないかを見る。
つまずきと手当て
- 変化を言うつもりで「忙しいばかりだ」と形容詞に付ける。これは「ただ忙しいだけだ」という別の意味になるので、変化を表すには「忙しくなるばかりだ」と「〜くなる」の動詞にして付けると、変化の線の板書で確かめる
- 「〜たばかりだ」(〜したすぐあと)と混同して「引っ越したばかりだ」の意味で「引っ越すばかりだ」と言う。辞書形に付くと「変化が続く」、タ形に付くと「すぐあと」と、形を並べて示す
- 良い変化を喜んで「日本語が上手になるばかりだ」と言う。誤りではないが「ばかりだ」は困った響きになりやすいので、良い変化を喜ぶときは「どんどん上手になっている」のような言い方を勧める
既習の文型との違い
- 〜つつある(第11課)「〜つつある」は変化が進んでいる途中を落ち着いて述べる書き言葉で、止まるかどうかは言いません。「回復しつつある」のように良い変化にも自然に使えます。相談で「疲れがたまりつつあります」と言うと報告のように聞こえ、困った気持ちが伝わらないので、相談では「〜一方で」「〜ばかりで」を使わせます。
- Vたばかりです(初中級 第11課)タ形に付く「〜たばかり」は「したすぐあと」で、変化の続きではありません(「来たばかり」)。辞書形に付く「〜ばかりだ」は悪くなり続けること(「増えるばかり」)です。動詞の形一つで意味が変わるので、二つを縦に並べて板書します。
- NばかりVています/Vてばかりいます(初中級 第13課)こちらは「同じことだけをしている」という行動の偏りです(「ゲームばかりしている」)。「〜ばかりだ」は状態の変化なので、「スマホを見てばかりいて、目が悪くなるばかりだ」のように一文に両方入れて違いを見せると整理しやすくなります。
関連する文型
学習項目 3 〜気味
意味・はたらき
「少しそういう傾向がある」「そういう感じがする」と、程度が軽いことを表します。「風邪気味」「疲れ気味」のように、体や気持ちの調子が少し悪いことを伝えるときに使い、相談の場面で今の調子をやわらかく伝えるのに向いています。ほとんど望ましくない状態に使い、「元気気味」「健康気味」とは言いません。第6課の「〜がち」は「そうなることが多い」とくり返しや回数を表すのに対し、「〜気味」は今その状態が少し出ていることを表します(「遅れがち」はよく遅れる、「遅れ気味」は今少し遅れている)。
接続
N+気味/Vます形+気味(「気味だ」「気味で」「気味のN」の形で使う)
形
少し風邪気味です最近、疲れ気味で寝不足気味の日が続く予定より遅れ気味だ
導入
- 教師がのどを押さえて話す教師がのどを押さえて小さく咳をし、「熱はないんですが、のどが少し痛くて……ちょっと風邪気味なんです」と言う。「風邪です」と「風邪気味です」を並べて板書し、温度計の絵で「風邪」は完全に、「風邪気味」は少しだけ、と線の長さで見せる。続けて、あくびをしながら「疲れ気味」と言い、「Vます形+気味」の形を書き足す。
板書案
N + 気味 / Vます形 + 気味
風邪 → 風邪気味です。 疲れます → 疲れ気味です。
〔赤〕温度計の絵:「風邪」=いっぱい、「風邪気味」=少し
気味だ・気味で・気味の N
場面と発話(自作)
- アルバイト先で、店長に体の調子を伝える。今日はちょっと風邪気味なので、早めに上がってもいいですか。
- 友達に、最近の様子を聞かれる。テストが続いて、ちょっと寝不足気味なんだ。
- 日本語学校の先生に、作文が遅れている理由を話す。最近ちょっと疲れ気味で、作文が少し遅れています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、体の調子の絵カード(くしゃみ・あくび・体重計・時計)を見せ、「風邪気味」「疲れ気味」「太り気味」「遅れ気味」を言わせる。そのあと、ST の相談のやり取りで、先輩に「体の調子はどう?」と聞かれたら「〜気味で」と答える部分を入れて練習する。
- 口頭教師が体の調子の絵カード(くしゃみ・あくび・体重計・遅れている時計)を見せ、全体で「風邪気味」「疲れ気味」「太り気味」「遅れ気味」と言う。次に動詞の語カード(「疲れます」「太ります」)を見せて個人でます形から作らせ、「〜気味なので、〜」の文に広げる。
- ペア「体調チェック」:Aが保健室の人、Bは調子カード(のどが少し痛い・最近よく眠れない など)をもらう。Aの「どうしましたか」にBが「〜気味で、〜」と答え、Aは「いつからですか」と一つ質問する。役を交替する。
- 産出「今週のわたしの天気予報」:自分の心と体の調子を天気にたとえ、「月曜は少し疲れ気味、…」と3文で書いて発表する。教師は、ます形に付いているか、良い状態に使っていないか、「〜がち」と混ざっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*疲れる気味」「*太る気味」と辞書形に付ける。動詞はます形に付けると、「疲れます→疲れ気味」の書き換えで確かめる
- 「〜がち」と取り違えて、よく遅刻する人について「遅刻気味の人」と言う。回数が多いなら「遅刻しがち」、今の状態が少しそうなら「気味」と、カレンダーの絵(何度も)と温度計の絵(少し)を並べて区別させる
- 良い状態に使って「元気気味」「上手気味」と言おうとする。「気味」はほとんど望ましくない状態に使う、と使える語を一覧にして渡す
既習の文型との違い
- 〜がち(第6課)「〜がち」はそうなることが多いという傾向や回数を言い、「〜気味」は今その状態が少し出ていることを言います。「休みがちな学生」はよく休む学生、「風邪気味の学生」は今少し風邪の感じがある学生です。よく遅刻する人を「遅刻気味の人」と言う誤りが出たら、カレンダーの絵と温度計の絵を並べて区別させます。
- 〜っぽい(第1課)「〜っぽい」は「〜のように見える・〜の感じがする」で、性質や見た目にも使える話し言葉です。「風邪っぽい」と「風邪気味」は近い意味ですが、「子どもっぽい」「白っぽい」は「気味」に言い換えられません。体の調子をていねいに伝える場面では「気味」を勧めます。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 友達からアドバイスをもらいたいときに使う表現相談は「切り出す→状況を話す→助言を求める→お礼を言う」の4つの段階に分けて板書し、段階ごとの表現をまとめて練習します。いきなり本題に入らず、相手の都合を聞いてから話すこと、最後に聞いてもらったお礼を言うことを、やり取りの型として身につけさせます。相手との距離に合わせて、ていねいさを一段上げ下げした言い方も並べて見せます。例:「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」「今、時間ある?」「実は、最近〜で困ってて」「どうしたらいいと思う?」「〜さんだったら、どうする?」「話を聞いてもらって、すっきりした」
2 耳でキャッチ
できること健康についての情報番組を聞いて、運動の習慣と体力がどう関係しているのかを理解できる。
場面
テレビの朝の情報番組で、司会者が専門家に運動の習慣について質問するコーナーを聞く場面です。教師が司会者と専門家の2役の台本を書き、2人で録音した2分ほどの音声を用意します(同僚に一役を頼んでもよい)。聞く前に「運動しない理由」を学習者に挙げさせ、番組がそれにどう答えるかを予想させてから聞かせます。
- 司会:忙しくて運動する時間がない、という方も多いですよね。
- 専門家:はい。でも、ジムに通っていないからといって、体力がつかないわけではないんです。
- 司会:というと?
- 専門家:駅まで少し速く歩く、階段を使う。こうしたことを毎日続けさえすれば、体力は少しずつ上がっていきます。
- 司会:運動の量はどのくらいがいいんでしょうか。
- 専門家:年齢や体の状態に応じて変えることが大切です。無理をすると、かえってけがのもとになりますから。
学習項目 1 〜からといって
意味・はたらき
「〜という理由だけで、後ろのことがいつも当てはまるわけではない」と、ある理由から当然出てきそうな結論を打ち消す形です。後ろには「〜わけではない」「〜とは限らない」「〜ない」などの否定や、「〜のはおかしい」のような批判が来ます。番組の中では、「ジムに通っていないからといって、体力がつかないわけではない」のように、聞き手の思い込みを正すときによく使われます。単に理由を言う「〜から」とは違い、理由と結論の結びつきを否定するのがこの形の役目です。話し言葉では「〜からって」と縮まります。この課の「〜とは限らない」とよく組み合わさります。
接続
普通形+からといって(ナA・N は「〜だからといって」)
形
忙しいからといって、運動しなくていいわけではない若いからといって、無理をしてはいけない薬を飲んだからといって、すぐに治るとは限らない学生だからって、遊んでばかりはいられない
導入
- 思い込みを矢印で切る黒板に「高いジムに通う」→「体力がつく」と矢印で書き、学習者に「そう思いますか」と聞く。「通っても行かない人もいますね」と言って矢印に×を付け、「高いジムに通っているからといって、体力がつくとは限りません」と板書する。「〜から」の文(理由→結論)と並べ、「からといって」は矢印を切るときに使う、と見せる。
板書案
普通形(ナA・N は 〜だ)+ からといって、〜わけではない/とは限らない
若いからといって、無理を して いい わけではない。
〔青〕A → B(思い込みの矢印) 〔赤〕矢印に ×
話し言葉:〜からって
場面と発話(自作)
- 体重を気にする友達に話す。太ったからといって、ご飯を抜くのは体によくないよ。
- 健康診断の結果について、保健室の人が学生に話す。今回の数値が良かったからといって、安心はできませんよ。
- 情報番組で、専門家が視聴者に話す。若いからといって、睡眠時間を削ってもいいわけではありません。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「思い込みカード」(「日本人だ→漢字が全部読める」「たくさん寝た→疲れが取れる」)を出し、学習者が「〜からといって、〜とは限らない/わけではない」で打ち消す。そのあと、番組の音声で「からといって」が出たところを止め、後ろに何が来るかを予想させてから続きを聞かせる。
- 口頭教師が思い込みカード(「日本に住んでいる→日本語が上手」「値段が高い→おいしい」「たくさん寝た→元気になる」)を見せ、全体で「〜からといって、〜とは限りません」と言う。次に個人で、後ろを「〜わけではありません」「〜のはおかしいです」に替えて言わせる。ナA・N のカード(「静か」「学生」)では「だからといって」を声に出して確かめる。
- ペアAが思い込みを一つ言い(「留学生なら、毎日日本語で日記を書くべきだよ」)、Bが「〜からといって」で打ち消して理由を一つ足す。Aは納得したら「なるほど」、納得しなければもう一言反論する。交替する。
- 産出「思い込みバスター」:二人で番組の司会と専門家になり、自分の国でよく聞く健康の思い込みを一つ取り上げて30秒のコーナーを作る。司会が思い込みを言い、専門家が「〜からといって」で正して、正しいやり方を一つ勧める。教師は、後ろが否定や批判で終わっているか、ナA・N の「だ」が落ちていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*運動したからといって、健康になります」と後ろを肯定で終える。後ろは否定か批判が来る、と矢印に×を付ける板書で確かめる
- 「〜から」と同じ意味だと思い、理由を言うだけの場面で使う(「雨が降ったからといって、試合が中止になりました」)。結論を打ち消すときだけ使うと、「から」の文との対で示す
- ナA・N で「*静かからといって」「*学生からといって」と「だ」を落とす。「だからといって」の形を板書で固定する
既習の文型との違い
- どうして/〜から(初級 第5課)「〜から」は理由から結論をそのまま認めます(「雨だから、試合は中止です」)。「〜からといって」は理由と結論の結びつきを否定します(「雨だからといって、中止とは限らない」)。理由を言うだけの場面で「からといって」を使う誤りには、二つの文を矢印の図で並べて見せます。
- 〜わけではない/〜というわけではない(第9課)「〜わけではない」は単独でも「全部がそうではない」と説明を打ち消せます。「〜からといって」は前に理由を立てるだけで、打ち消しは後ろに任せるので、「〜からといって、〜わけではない」と組み合わせて使うのがふつうです。
関連する文型
学習項目 2 〜に応じ(て)/〜に応じた
意味・はたらき
前の名詞(年齢・体力・目的など)の違いや変化に合わせて、後ろのことを変えることを表します。番組では「年齢や体の状態に応じて運動の量を変える」のように、一人一人に合ったやり方を勧めるときに使われます。名詞の前では「〜に応じた+N」になり、「〜に応じ」は書き言葉や改まった話で使う形です。第2課の「〜によって(さまざまだ)」は「違いがある」ことを述べるだけですが、「〜に応じて」は違いに合わせて何かを変える・選ぶという動きがあります。「〜に合わせて」と近い意味ですが、「〜に応じて」のほうが硬く、説明や案内の言葉らしく聞こえます。
接続
N+に応じて+V/N+に応じ、〜(書き言葉)/N+に応じた+N
形
体力に応じて、運動の量を決める目的に応じたコースを選ぶ利用時間に応じ、料金が変わります
導入
- 人物カードに合う運動を選ぶ黒板に3人の人物カード(大学生・会社員・お年寄り)を貼り、その下に運動カード(ジョギング・水泳・散歩・ストレッチ)を並べる。学習者に「この人にはどれがいいですか」と選ばせ、教師が「年齢や体力に応じて、合う運動は違いますね」とまとめる。続けて「年齢に応じた運動」と書き、名詞の前では「応じた」になることを板書で並べて見せる。
板書案
N + に応じて + V(変える・選ぶ・決める)
N + に応じた + N
体力に 応じて、運動の 量を 変える。
〔青〕人物カード3枚 〔赤〕それぞれに合う運動へ矢印
〔赤〕「に」に丸(×体力を応じて)
場面と発話(自作)
- スポーツジムの受付で、スタッフが説明する。体力に応じて、メニューを一人一人ご用意します。
- 学校の保健室の案内を読む。症状に応じた相談先を、こちらの表から選んでください。
- アルバイトの面接で、店長が勤務の日について話す。授業の予定に応じて、シフトは週ごとに決めていいよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「レベル」「季節」「人数」「予算」のカードを出し、学習者が「〜に応じて〜」「〜に応じた〜」で文を作る。そのあと、番組の音声を聞いて、専門家が何に応じて運動を変えると言ったかをメモさせ、ペアで確かめる。
- 口頭教師がキューのカード(「レベル→クラスを分ける」「人数→部屋を選ぶ」「季節→服を変える」「予算→店を決める」)を出し、全体で「〜に応じて〜」と言う。次に個人で「〜に応じた〜」の名詞句に言い換えさせる(「レベルに応じたクラス」)。最後に「〜に応じ、〜」の書き言葉の形で、お知らせの一文として言わせる。
- ペア「ジムの受付」:Aは利用者カード(年齢・目的・使える時間)を持ち、Bはスタッフとして自作のメニュー表を見る。Aが自分の条件を言い、Bが「〜に応じて」「〜に応じた」でメニューを勧める。カードの中身は相手に見せない(情報差)。交替する。
- 産出「わたしに合う運動プラン」:自分の体力・時間・目的を書き出し、「〜に応じて」を2回使って1週間の運動計画を書いて発表する。教師は、後ろに「変える・選ぶ・決める」の動きがあるか、名詞の前が「応じた」になっているか、「〜によって」と混ざっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*体力を応じて」と助詞を取り違える。「〜に応じる」の「に」を赤で板書して固定する
- 名詞の前で「体力に応じて運動」のように「て」を残す。名詞の前は「応じた」と、「応じて+V」「応じた+N」の2行を並べて示す
- 「〜によって」と同じだと思い、違いを述べるだけの文に使う(「国に応じて習慣が違う」)。違いがあるだけなら「によって」、それに合わせて何かを変えるなら「に応じて」と、後ろの動詞(変える・選ぶ・決める)で見分けさせる
既習の文型との違い
- 〜によって(さまざまだ)(第2課)「〜によって」は違いがあることを述べるだけです(「国によって習慣が違う」)。「〜に応じて」は違いに合わせて人が何かを変えたり選んだりします(「国に応じて資料を変える」)。後ろの動詞が「違う・さまざまだ」なら「によって」、「変える・選ぶ」なら「に応じて」と見分けさせます。
- 〜につれて(第5課)「〜につれて」は一方が変わると、もう一方も自然に変わっていくことを言います(「年をとるにつれて、体力が落ちる」)。「〜に応じて」は違いや変化に合わせて人が調整することなので、「年齢に応じて運動を変える」のように意志的な動詞が後ろに来ます。
関連する文型
学習項目 3 〜さえ〜ば
意味・はたらき
「それだけ満たせば、後ろのことが実現する」と、必要な条件が一つだけで、ほかはいらないことを強く言う形です。番組では「毎日続けさえすれば、体力は上がる」のように、聞き手が始めやすいように条件の少なさを強調するときに使われます。第7課の「〜さえ」(「水さえ飲めなかった」=極端な例を挙げて、ほかはなおさらだと言う)とは意味が違い、「〜ば」と組み合わせて最低限の条件を表す点に注意します。「〜だけ〜ば」より、「それさえあれば十分だ」という気持ちが強く出ます。
接続
Nさえ+Vば/イAければ/ナA・Nなら、Vます形+さえ+すれば、Vて+さえ+いれば
形
時間さえあれば、毎日歩きたい毎日続けさえすれば、体力はつく体さえ丈夫なら、どこでも働けるよく寝てさえいれば、たいてい治る
導入
- 必要なものを一つにしぼる教師が「ジョギングを始めたい。でも、ウェア、時計、ジム……全部いりますか」と聞き、黒板に必要そうな物を書き出す。学習者と話しながら一つずつ消していき、最後に「くつ」だけを残して「くつさえあれば、明日からでも始められます」と言う。残った一つを丸で囲み、「Nさえ〜ば」と板書し、動詞の場合は「歩きさえすれば」になることを続けて書く。
板書案
N さえ + Vば/イAければ/ナA・Nなら
Vます形 + さえ + すれば / Vて + さえ + いれば
くつ さえ あれば、明日から 走れる。
〔青〕書き出した物を一つずつ消す 〔赤〕残った一つに丸
場面と発話(自作)
- 体力が落ちたと悩む友達に話す。一日20分歩きさえすれば、だいぶ違うと思うよ。
- 病院で、医者が患者に話す。この薬さえ忘れずに飲めば、すぐに良くなりますよ。
- ルームメイトに、朝の習慣について話す。朝ごはんさえ食べれば、午前中は眠くならないんだ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が目標カード(「日本語が上手になる」「よく眠れる」「体力がつく」)を出し、学習者が「〜さえ〜ば」で必要な条件を一つ言う。名詞の型→動詞の型(「〜さえすれば」)の順に替えていく。最後に、番組の音声でこの形が出た文を聞き取り、条件と結果を2列に書かせる。
- 口頭教師が目標カード(「よく眠れる」「日本語が上手になる」「体力がつく」)を出し、全体で名詞の型「〜さえあれば」を言う。次に動詞の語カード(「歩きます」「寝ます」「続けます」)を見せ、個人で「歩きさえすれば」「続けさえすれば」の型に替える。最後に「〜てさえいれば」も加える。
- ペア「これだけで大丈夫」:Aが悩みを言い(「朝なかなか起きられない」)、Bが条件を一つだけ「〜さえ〜ば、〜よ」で言う。Aは「本当にそれだけ?」と聞き返し、Bが理由を一つ足す。交替する。
- 産出「ワンポイント健康法」:自分が続けていて効果があったことを一つ選び、番組の専門家になったつもりで「〜さえ〜ば」を使って30秒で紹介する。教師は、ます形+さえすれば の形、条件が一つにしぼれているか、後ろが結果の文になっているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*歩くさえすれば」「*飲むさえすれば」と辞書形に付ける。動詞は「ます形+さえ+すれば」と、「歩きます→歩きさえすれば」の書き換えで確かめる
- 「〜さえ」(極端な例)と取り違え、「水さえあれば」を「水もない」の意味に取る。後ろに「〜ば」があれば「それだけでいい」と、「ば」に印を付けて読ませる
- 「さえ」と「ば」の間に条件をいくつも並べ、「一つだけでいい」という意味が薄れる(「くつとウェアと時計さえあれば」)。条件は一つにしぼると伝わりやすいことを、板書の丸一つで示す
既習の文型との違い
- 〜さえ(第7課)「〜さえ」単独は極端な例を挙げて「〜も」を強めます(「名前さえ書けなかった」)。「〜ば」と組むと「それだけで十分」という最低限の条件になります。後ろに「ば」があるかないかで意味が変わるので、読むときは「ば」に印を付けさせます。
- 〜だけ/〜だけの(第1課)「これだけあれば大丈夫」とも言えますが、「〜さえ〜ば」のほうが「ほかは何もいらない」という気持ちが強く出ます。助言で相手の不安を減らしたいときは「さえ」が向いている、と場面で示します。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 運動習慣の大切さについて話すときに使うことば・表現番組を聞く前に、運動の種類・続け方・体の変化に関わる語をかたまりで導入し、聞き取りの手がかりにします。語は「習慣をつくる」「体力が落ちる/上がる」のように動詞とのセットで覚えさせ、聞いたあとに自分の運動の習慣を話すときにもそのまま使わせます。数字や効果の大きさは番組の中の作り話として扱い、事実として覚えさせないようにします。例:「運動不足」「体力が落ちる」「習慣を身につける」「無理なく続ける」「適度な運動」「体を動かす」
3 見つけた!
できること睡眠についての記事を読んで、自分の生活に役立つ情報を見つけ出せる。
場面
生活情報のウェブ記事で、よく眠るための工夫を紹介したものを読む場面です。教師が600字ほどの記事を自作し、見出し・小見出し・箇条書きのある実際の記事に近いレイアウトで印刷して配ります。読む前に自分の睡眠についてのアンケート(寝る時間・寝る前にすること)に答えさせ、自分に関係のある情報を探す目的を持たせます。
- 記事(見出し):「なかなか眠れない」を変える、夜の過ごし方
- 記事:睡眠に対する関心は年々高まっています。
- 記事:眠れない原因は、仕事の悩みやら寝る前のスマホやら、人によってさまざまです。
- 記事:まずは、寝る前の1時間を「明かりを落とす時間」にしてみましょう。
- 記事:寝る前に画面の光を浴びると、眠りにくくなると言われています。
- 記事:眠れないことに対する不安が、さらに眠りを浅くすることもあります。
学習項目 1 〜に対して/〜に対する(対象)
意味・はたらき
前の名詞が、気持ち・態度・行動などが向けられる相手や対象であることを表します。記事では「睡眠に対する関心」「眠れないことに対する不安」のように、何に向けた気持ちや考えかを示すのに使われます。名詞の前は「〜に対する+N」(「〜に対してのN」とも)になります。第11課の「〜に対して」は「AはBだ。それに対してCはDだ」と二つを比べる使い方で、同じ形でも役目が違うので並べて確かめます。「〜について」は話や考えの中身(話題)を示し、「〜に対して」は気持ちや行動が向かう先を示します(「睡眠について書く」/「質問に対して答える」)。「〜にとって」は「その人の立場から見ると」という評価の基準で、これとも区別します。
接続
N+に対して+V・A/N+に対する+N(「N+に対してのN」とも)
形
睡眠に対する関心が高まっている子どもに対して厳しい質問に対して、ていねいに答える病気に対する不安
導入
- 矢印で「向かう先」を示す黒板に人の絵を描き、そこから矢印を伸ばして先に「健康」と書く。教師が「最近、多くの人が健康を気にしています。健康に対する関心が高いですね」と言い、矢印の先が対象だと示す。次に、別の矢印で「先生→学生」と書き「先生は学生に対してやさしい」と言う。最後に、第11課の「対比」の例文を横に並べ、同じ「に対して」でも矢印が一本(対象)か、二つを並べるか(対比)で違うことを確かめる。
板書案
N + に対して + V・A / N + に対する + N
睡眠に 対する 関心が 高まって いる。
質問に 対して、ていねいに 答える。
〔赤〕人 →(矢印)→ 対象 〔青〕第11課:A ⇔ B(二つを比べる)
場面と発話(自作)
- 健康についての記事の一文を読む。若い世代の、食事に対する考え方が変わってきている。
- アルバイト先で、先輩が新人に話す。お客様に対しては、いつもていねいな言葉で話してね。
- 眠れないことを友達に相談する。眠れないことに対する不安で、ますます目が覚めちゃうんだ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「関心」「不安」「意見」「態度」の名詞カードと、「睡眠」「将来」「お客様」の対象カードを組み合わせて「〜に対する〜」を作らせ、次に「〜に対して〜」の文に言い換えさせる。そのあと、記事の中の「に対して/に対する」に線を引き、それぞれ何に向けた気持ちかを答えさせる。最後に第11課の対比の文を混ぜて、どちらの使い方かを当てさせる。
- 口頭教師が名詞カード(関心・不安・意見・態度・感謝)と対象カード(睡眠・将来・お客様・家族)を一枚ずつ組み合わせ、全体で「〜に対する〜」と言う。次に個人で「〜に対して〜」の文に言い換えさせる(「将来に対する不安」→「将来に対して不安を感じる」)。
- ペア「記事の矢印さがし」:AとBが別々の短い自作記事(2〜3行)を持ち、相手に「何に対する何が書いてあるか」を口で伝える。聞いた人はメモして、人から対象への矢印の図を描く。図が合っているか記事を見せ合って確かめ、交替する。
- 産出「わたしの不安と関心マップ」:自分の健康や生活について「〜に対する不安」「〜に対する関心」を一つずつ書き、理由を付けて3文の短い文章にする。教師は、「〜について」「〜にとって」と混ざっていないか、名詞の前が「に対する」になっているか、第11課の対比の用法と混ざっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 話題を示すつもりで「*睡眠に対して調べた」と言う。調べる・話す・書く の中身は「について」、気持ちや行動が向かう先は「に対して」と、動詞の一覧で使い分けさせる
- 評価の基準を言うつもりで「*私に対して、この記事は難しい」と言う。「その人から見ると」は「にとって」と、二つの文を並べて示す
- 名詞の前で「*睡眠に対して関心」と「て」を残す。名詞の前は「に対する」と、「に対して+V」「に対する+N」の2行で確かめる
既習の文型との違い
- 〜に対して(第11課)第11課は二つを比べる対比の使い方で、「兄が背が高いのに対して、弟は低い」のように節+「のに対して」になることが多いです。第12課の対象の使い方は、名詞+「に対して」で気持ちや行動の向かう先を示します。前が節(〜のに対して)か名詞かを見ると見分けやすい、と板書で並べます。
- 〜にとって(第3課)「〜にとって」は「その人の立場から見ると」という評価の基準です(「私にとって、この記事は難しい」)。「〜に対して」は向かう先なので、評価の基準には使えません。後ろが「難しい・大切だ」のような評価なら「にとって」、と後ろの語で確かめさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜やら〜やら
意味・はたらき
いくつかの例を挙げて、「ほかにもいろいろあって」という気持ちを込める形です。記事では「仕事の悩みやら寝る前のスマホやら」のように、眠れない原因がたくさんあることを表すのに使われています。あれもこれもあって大変だ、整理がつかない、という話し手の気持ちが出やすく、「〜やら〜やらで大変だ/忙しい」の形でよく使います。「うれしいやら恥ずかしいやら」のように、入り混じった気持ちを言うこともできます。第1課の「〜とか〜とか」は話し言葉で中立に例を挙げ、「〜や〜など」は書き言葉で整然と挙げるのに対し、「〜やら〜やら」は雑多さ・煩わしさの響きがある点が違います。
接続
N/V辞書形・タ形/イA+やら、N/V辞書形・タ形/イA+やら(「〜やら〜やらで、〜」の形が多い)
形
レポートやら試験やらで、毎日忙しい引っ越しの準備やら手続きやらで、寝る時間がないうれしいやら恥ずかしいやら、変な気持ちだ
導入
- かばんから次々に出す教師がかばんから、プリント・教科書・お知らせの紙・弁当箱を次々に出して机に積み、「今週は会議やら試験の準備やらで、本当に大変なんです」と言う。「〜や〜など」の文と並べて板書し、「やら」には「いろいろあって大変」という気持ちが入ることを、教師のため息とともに見せる。
板書案
N/V辞書形・タ形/イA + やら、〜 + やら(で)、〜
課題やら アルバイトやらで、休む 時間が ない。
〔赤〕「やら」に波線=あれこれあって大変
話す:〜とか〜とか | 書く:〜や〜など | 大変さ:〜やら〜やら
場面と発話(自作)
- 最近疲れている理由を、友達に話す。アルバイトやら課題やらで、ゆっくり休む時間がないんだ。
- 合格の知らせを受けたときの気持ちを、先生に話す。うれしいやらほっとしたやらで、昨日はなかなか眠れませんでした。
- 引っ越したばかりの同僚が、職場で週末の話をする。荷物の片づけやら役所の手続きやらで、週末がつぶれました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「忙しい」「疲れている」「部屋が散らかっている」などの状況を言い、学習者が「〜やら〜やらで、〜」で理由を二つ挙げる。そのあと、記事で眠れない原因が並べてある部分を読み、自分が眠れなかった日の原因を「〜やら〜やら」で言わせる。
- 口頭教師が状況(「部屋が散らかっている」「お金がない」「毎日忙しい」)を言い、原因の絵を2枚ずつ見せる。全体で「〜やら〜やらで、〜」と言い、次に個人で自分の場合の原因に替えて言わせる。最後に「うれしいやら恥ずかしいやら」のような気持ちの組み合わせも一つ言わせる。
- ペア「忙しい自慢」:AとBが交互に「先週は〜やら〜やらで大変だった」と言い、聞いた人は「それは大変だったね。どっちが大変だった?」と一つ聞く。答えたら役を交替する。
- 産出「眠れない夜の原因リスト」:記事を読んだあと、自分が眠れなかった夜を思い出し、原因を「〜やら〜やら」で挙げてから、記事から選んだ対策を一つ書く(3文)。教師は、楽しい話を中立に並べるのに使っていないか、改まった文書の文体に混ぜていないか、後ろに結果を続けているかを見る。
つまずきと手当て
- 良いことを中立に並べるときに使う(「京都やら奈良やらに行って、楽しかった」)。誤りではないが「あれこれあって大変」の響きが出やすいので、楽しい話は「〜とか〜とか」が自然だと勧める
- 改まった文書の中で例を並べるのに使う。レポートや発表では「〜や〜など」を使うと、文体の違う例文を並べて示す
- 「課題やらアルバイトやら。」と例を並べたところで止めてしまい、何が大変なのかが伝わらない。後ろに「〜で、時間がない/大変だ」と結果を続けると、例の枠から結果の枠へ矢印を引く板書で示す
既習の文型との違い
- 〜とか〜とか(第1課)「〜とか〜とか」は話し言葉で、気持ちを込めずに例を挙げます。「〜やら〜やら」は「あれこれあって大変」という響きがあるので、楽しい旅行の話では「とか」のほうが自然です。同じ内容を二つの形で言わせ、聞いた印象の違いを話し合わせます。
- NやNなど(初級 第3課)「〜や〜など」は書き言葉でも使える整った並べ方で、レポートや発表に向きます。「〜やら〜やら」は話し手の気持ちが出るくだけた言い方なので、記事の中でも筆者の実感を書く部分に出てくる、と読み分けさせます。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 睡眠に関係があることば・表現記事を読む前に、眠りの状態を表す語(眠りが浅い・寝つきが悪い)と、睡眠の習慣を表す語(夜ふかし・寝不足)を、良い状態と悪い状態の2列に分けて板書します。漢字語は読みと意味をセットで確かめ、記事の中で見つけたら線を引かせます。読んだあとは、自分の睡眠をこれらの語で説明させ、語が使える段階まで持っていきます。例:「寝つきが悪い」「眠りが浅い」「ぐっすり眠る」「夜ふかしをする」「寝不足」「目が覚める」
4 伝えてみよう
できること新聞の読者の投書を読んで、書き手の意見を受け止めたうえで、健康について自分の意見を述べられる。
場面
新聞の読者投稿欄に載った、健康法についての意見(自作)を読み、クラスで意見を言い合う場面です。教師が「毎日の健康法」について、はっきりした主張を持つ投書を400字ほどで書き、賛成も反対もできる内容にしておきます。読んだあと、書き手の意見を一文でまとめさせてから、「賛成の立場」「反対の立場」のカードを配って話し合わせます。
- 投書:健康のためなら何でもいい、という人がいる。しかし、体に良いと聞いたものを何でも試すのは、かえって危険というものだ。
- 留学生A:この人は、健康法をよく調べずに試すのはよくない、と言っていますね。
- 留学生B:そうですね。でも、新しい方法を試すなんて意味がない、とまでは言えないと思います。
- 留学生A:たしかに。人気がある健康法が、誰にでも合うとは限らないですけど。
- 留学生B:ええ。だから、まず自分の体に合うかどうかを確かめることが大切だと思います。
学習項目 1 〜なんて/〜なんか/〜など
意味・はたらき
ある物事を「たいしたものではない」「価値が低い」と軽く扱ったり、低く見たり、自分のことを控えめに言ったりする形です。投書や話し合いでは、「新しい方法を試すなんて意味がない」「サプリなんかに頼るのは」のように、ある考えを退けたり批判したりするときに使われます。「など」は書き言葉や改まった場面、「なんか」「なんて」は話し言葉です。「なんて」は「毎日10キロ走るなんて無理だ」のように文にも付けられます。第3課の「〜なんて(驚き)」は意外さに驚く使い方で、こちらは軽く見る・否定する評価が中心です。「お茶なんかどう?」のように例を挙げてやわらかく勧める使い方もあるので、文脈で見分けさせます。目上の人やその持ち物に使うと失礼になります。
接続
N+なんて/なんか/など、普通形+なんて(「なんか」「など」を文に付けるときは「Vるのなんか」「Vることなど」)
形
健康法なんて、自分に合えば何でもいいサプリなんかに頼らないほうがいい毎日10キロ走るなんて、私には無理だ私などにはとてもできません
導入
- 広告を見て首を振る教師が「1週間で5キロやせる!」と書いた自作の広告の紙を見せ、首を振りながら「1週間で5キロなんて、無理ですよね」「こんな広告なんか、信じないほうがいいです」と言う。板書で「Nなんて/なんか/など」「普通形+なんて」の2行を書き、会話の「なんて・なんか」と、投書のような書き言葉の「など」を左右に分けて並べる。
板書案
N + なんて/なんか/など 普通形 + なんて
1週間で 5キロ やせる なんて、無理だ。
サプリ なんかに 頼らない ほうが いい。
〔青〕話す:なんて・なんか 〔緑〕書く:など
〔赤〕後ろ:無理だ・意味がない・信じない
場面と発話(自作)
- 健康法の話をしている友達に言う。そんな高い水なんか買わなくても、水道の水で十分だよ。
- 新聞の投書を読む。流行の健康法など、すぐに忘れられてしまうものだ。
- 先輩にスピーチ大会に出るよう勧められる。私なんか、まだまだです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「1日1食だけ」「3時間睡眠」「高いサプリ」などのカードを出し、学習者が「〜なんて〜」「〜なんか〜」で否定的な意見を言う。次に同じ内容を、投書の文として「〜など」を使って書かせる。最後に、話し合いで相手の意見を退けるときに使い、すぐに理由を続ける練習をする。
- 口頭教師がカード(「1日1食」「3時間睡眠」「高い水」「毎朝10キロ走る」)を見せ、全体で「〜なんて、無理です」と言う。次に個人で「〜なんか〜ないほうがいい」の形に替え、最後に同じ内容を投書の文として「〜など、〜」で言い直させる。
- ペア「本当? うそ?」:Aが自作の健康広告を読み上げ、Bが「〜なんて」で疑って理由を一つ言う。Aは広告を出す側として一言だけ反論する。広告を替えて交替する。
- 産出「広告にひとこと」:自作の怪しい健康広告3枚から一つ選び、投書欄に出す80字の意見を「など」を使って書く。そのあと話し合いでは同じ意見を「なんて」で言う。教師は、文に「なんか」を直接付けていないか、目上の人や相手の物に使っていないか、後ろが評価の文になっているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*走るなんか体に悪い」と、動詞にそのまま「なんか」を付ける。文に付けるなら「なんて」、「なんか」を使うなら「走るのなんか」と「の」を入れると、2つの形を並べて示す
- 先生や相手の物に使って失礼になる(「先生の本なんか」)。自分のことを控えめに言うときと、何かを軽く見るときの使い分けを、言われた人の気持ちを考えさせて確かめる
- 第3課の驚きの「なんて」と混同し、意見を述べる場面で何を言いたいのかが伝わらない。後ろに「無理だ・意味がない」などの否定の評価が来ているかを見させる
既習の文型との違い
- 〜なんて(驚き)(第3課)第3課の「なんて」は意外さに驚く使い方で、「こんなに早く着くなんて」のように後ろが省かれたり「驚いた」が来たりします。第12課は後ろに「無理だ・意味がない」などの否定的な評価が来ます。後ろの語を見て、驚きか軽視かを判断させます。
- Nなんかどうですか(初中級 第14課)「お茶なんかどう?」の「なんか」は例を挙げてやわらかく勧める使い方で、軽く見る意味はありません。同じ「なんか」でも後ろが勧めか否定の評価かで役目が変わるので、二つの文を並べて区別させます。
関連する文型
学習項目 2 〜として〜ない
意味・はたらき
「一+助数詞」に付いて、「一つも(一人も・一日も)〜ない」と全面的に否定することを強く言う形です。投書では「一日として休まずに続けてきた」「一人として同じ体の人はいない」のように、主張を強めるのに使われます。「一日も休まなかった」と意味は近いですが、「〜として〜ない」のほうが硬く、書き言葉や改まったスピーチで使います。「誰一人として」「何一つとして」の形もよく使います。第6課の「〜として」(「留学生として」=立場・資格)とは別の使い方です。
接続
一+助数詞+として+Vない(「誰一人として」「何一つとして」の形も)
形
一日として休まなかった一人として同じ人はいない何一つとして無駄なものはない誰一人として反対しなかった
導入
- カレンダーの丸を数える1か月のカレンダーの全部の日に丸が付いた紙を見せ、教師が「祖父は毎朝、散歩をしています。一日として休んだことがありません」と言う。「一日も休まない」と並べて板書し、「として」のほうが硬く、強い言い方だと説明する。次にクラス全員の写真を指して「一人として同じ顔の人はいませんね」と続け、「一+助数詞」に付くことを示す。
板書案
一 + 助数詞 + として + 〜ない
一日として 休まなかった。
誰一人として 遅れなかった。
〔赤〕「として」と「ない」を線で結ぶ
〔青〕会話:一日も〜ない | 書く・硬い:一日として〜ない
場面と発話(自作)
- 新聞の投書を読む。この十年、一日として欠かさずに体操を続けてきた。
- 卒業式のスピーチで、校長が話す。皆さんの中に、一人として休んだ人はいません。
- ボランティアの炊き出しの報告を、町の会報に書く。準備した百食のうち、一食として残りませんでした。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「一日も〜ない」「一人も〜ない」「一つも〜ない」の文を言い、学習者が「〜として〜ない」に言い換える。そのあと、自分が続けている習慣や、クラスの共通点について、投書の一文として書かせる。
- 口頭教師が「一日も休まなかった」「一人も来なかった」「一つも分からなかった」「一度も言わなかった」と言い、全体で「〜として〜ない」に言い換える。次に個人で「誰一人として」「何一つとして」の形にして言わせる。数字のカード(一・三・五)を替えて、「一」にだけ付くことを確かめる。
- ペア「記録自慢インタビュー」:Aが記者、Bは記録カード(「10年間 毎朝体操」「3年間 遅刻なし」)を持つ。Aの「休んだ日はありますか」にBが「一日として〜ません」で答え、Aは「どうして続けられたんですか」と一つ質問する。交替する。
- 産出「続けてきたこと」:自分が続けてきたこと(または家族や町の誰か)について、投書の一文として「〜として〜ない」を入れた3文を書く。教師は、後ろが否定になっているか、「一」以外の数に付けていないか、会話の場面で使っていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*一日として休んだ」と、後ろを肯定で終える。後ろは必ず否定、と「として」と「ない」を線で結ぶ板書で確かめる
- 「*三日として休まなかった」と、一以外の数に付ける。「一日・一人・一つ」の「一」にだけ付くと、数字を差し替えるカードで確かめる
- 友達との会話で使い、大げさに聞こえる。会話は「一日も休まなかった」、作文やスピーチでは「一日として」と使い分けさせる
既習の文型との違い
- 〜として(第6課)第6課の「〜として」は「留学生として」のように立場や資格を表し、後ろは否定でなくてもかまいません。第12課は「一+助数詞」に付いて後ろが必ず否定になる、別の形です。前が「一日・一人」か、人や役割の名詞かで見分けさせます。
- [〜個、〜時間、〜杯…/N]しか〜ない(初中級 第12課)「一日しか休まなかった」は一日は休んだ、つまり少なさを言います。「一日として休まなかった」は一日も休まなかったという全面的な否定です。二つの文を並べて、カレンダーの丸の数で違いを見せると誤解が防げます。
関連する文型
学習項目 3 〜というものだ
意味・はたらき
ある物事について、「それがまさに〜だ」「〜と言うのが当然だ」と、話し手が一般的な道理として言い切る形です。投書では「何でも試すのは、かえって危険というものだ」のように、自分の意見を、誰もが認めるはずの考えとして強く述べるときに使われます。個人の好みや感想ではなく、社会の常識や道理に照らした判断に使うのが特徴で、硬く、書き言葉や改まった意見文に多い形です。第5課の「〜ものだ(当然)」は「本来そうするべきだ」と一般的な性質や心がけを言い、「〜というものだ」は目の前の事柄を一つの評価にまとめて断定する点が違います。第20課の「〜というものではない」は「いつもそうだとは言えない」と部分的に否定する形なので、対にして覚えさせます。
接続
V・イA普通形+というものだ/ナA・N(「だ」を付けない形がふつう)+というものだ
形
体を壊してまで働くのは、無理というものだ体に良いと聞いたものを何でも試すのは、危険というものだ毎日続けてこそ、健康法というものだ
導入
- 「それは〜だ」と評価の札を貼る教師が「寝ないで勉強して、テストの日に倒れた人がいます」と話し、学習者に「どう思いますか」と聞く。意見を受けて、黒板の話の横に「それでは意味がないというものだ」と評価の札を貼るように書く。「と思う」で言う文と並べ、「というものだ」は自分の感想ではなく「誰が見てもそうだ」という言い切りになることを示す。
板書案
V・イA普通形/ナA・N(だ なし)+ というものだ
寝ないで 働くのは、無理 というものだ。
〔青〕〜と思う=私の感想 〔赤〕〜というものだ=だれが見てもそうだ
⇔ 〜というものではない(第20課)
場面と発話(自作)
- 新聞の投書を読む。検査の結果だけを見て一喜一憂するのは、もったいないというものだ。
- 夜遅くまで働き続ける同僚について、先輩が話す。毎日終電まで残業するのは、無理というものだよ。
- 試験の前の日に徹夜すると言う友達に話す。一晩で全部覚えようなんて、無理というものだよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「朝ごはんを抜いて走る」「風邪なのに出勤する」などの行動カードを出し、学習者が「〜のは、〜というものだ」で評価する。そのあと、投書の中の主張の文を「〜と思う」に言い換えさせ、言い切りの強さがどう変わるかを話し合う。最後に、自分の意見文の結論の一文に使わせる。
- 口頭教師が行動カード(「朝ご飯を抜いて走る」「熱があるのに出勤する」「一晩で教科書を全部覚える」)を見せ、全体で「〜のは、〜というものだ」と言う。次に個人で、後ろの評価の語(無理・危険・わがまま・もったいない)を自分で選んで言わせる。
- ペア「ひとこと評価」:Aが行動を一つ言い、Bが「〜というものだ」で評価する。Aは「どうしてそう言えるの?」と聞き、Bは理由を一つ言う。理由がだれにでも当てはまる道理になっているかを二人で確かめ、交替する。
- 産出「投書の結び」:宿題の意見文の最後の一文を「〜というものだ」で書き、前の文の理由と結論がつながっているかペアで読み合って確かめる。教師は、個人の好みや感想に使っていないか、ナA・N に「だ」を入れていないか、結論の前に理由があるかを見る。
つまずきと手当て
- 自分の好みや感想に使って「私は運動が好きというものだ」と言う。不自然になるので、個人の気持ちは「〜と思う」、誰もが認める道理として言い切るときに「というものだ」と、二つを並べて区別させる
- ナA・N に「だ」を入れて「危険だというものだ」と言う。ふつうは「危険というものだ」の形で使うと、例文の形をそろえて覚えさせる
- 第20課の「〜というものではない」と意味を取り違える。「というものだ」は言い切り、「というものではない」は「いつもそうとは限らない」と、肯定・否定の対で板書する
既習の文型との違い
- 〜ものだ/〜ものではない(当然)(第5課)第5課の「〜ものだ」は「人に会ったら挨拶するものだ」のように、本来そうするべきだという一般的な心がけを言います。「〜というものだ」は目の前の行為や事柄を「それは〜だ」と一つの評価にまとめて言い切ります。前に「〜のは」が来て評価の語で終わる形かどうかで見分けさせます。
- 〜と思います(推量)(初級 第15課)「〜と思う」は話し手個人の考えとして控えめに述べます。「〜というものだ」はだれもが認めるはずの道理として断定するので、強く聞こえます。話し合いでいきなり使うと押しつけに聞こえることもあるので、投書や意見文の結論で使わせます。
関連する文型
学習項目 4 〜とは限らない
意味・はたらき
「いつも〜だとは言えない」「〜でない場合もある」と、一般に正しいと思われていることに例外があることを示す形です。話し合いでは「人気がある健康法が、誰にでも合うとは限らない」のように、相手の意見を一部認めながら、別の見方を示すときに使います。「必ずしも」「〜からといって」「〜ても」と一緒に使われることが多く、この課の「〜からといって」と組み合わせると、思い込みを正す文が作れます。第9課の「〜わけではない」は「全部がそうだというわけではない」と話し手の説明を打ち消すのに対し、「〜とは限らない」は例外の可能性を示します。第3課の「〜はずがない」は「絶対にない」と強く否定するので、強さの違いを並べて示します。
接続
普通形+とは限らない(ナA・N は「だ」を付けても付けなくてもよい)
形
高い薬がよく効くとは限らない長く寝れば疲れが取れるとは限らない有名な病院が自分に合うとは限らない必ずしも毎日運動する必要があるとは限らない
導入
- 例外を一つ見つける教師が「日本人は、みんな早く寝る」と黒板に書き、学習者に「本当ですか」と聞く。「夜遅くまで働く人もいる」などの例外を出させ、教師が「日本人がみんな早く寝るとは限りません」と言い直す。「〜はずがない」(絶対ない)、「〜とは限らない」(例外もある)を強さの目盛りの上に並べて板書する。
板書案
普通形 + とは 限らない(ていねい:限りません)
(必ずしも)高い 薬が よく 効くとは 限らない。
〔赤〕強さの目盛り:はずがない(ゼロ)― とは限らない(例外もある)
〜からといって、〜とは限らない
場面と発話(自作)
- 健康法について話し合いの中で意見を言う。テレビで紹介された方法が、誰にでも合うとは限らないと思います。
- 眠れないと悩むルームメイトに話す。早く布団に入っても、すぐ眠れるとは限らないよ。
- 薬局で、薬剤師が客に説明する。たくさん飲めば早く治るとは限りませんので、量を守ってください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「一般の考えカード」(「野菜ジュースは体に良い」「若い人は体力がある」)を出し、学習者が「必ずしも〜とは限らない」で例外を示し、理由を一つ続ける。そのあと、投書の主張に対して「たしかに〜。でも、〜とは限らないのではないでしょうか」と、相手を受け止めてから意見を述べる形で使わせる。
- 口頭教師が一般の考えカード(「野菜ジュースは体に良い」「若い人は元気だ」「有名な病院はいい」)を出し、全体で「必ずしも〜とは限りません」と言う。次に個人で、例外の理由を一つ足して言わせる。「限りない」と言う誤りが出たら、その場で「限らない/限りません」を全体でくり返す。
- ペア「たしかに、でも」:Aが投書の主張を一文読み、Bが「たしかに〜。でも、〜とは限らないのではないでしょうか」と受け止めてから返す。Aは例外の具体例を一つ求め、Bが答える。交替する。
- 産出「健康の常識を疑う」ミニ討論:グループで健康の常識を一つ選び、「そのとおり」の側と「〜とは限らない」の側に分かれて1分ずつ意見を言う。教師は、活用(限らない)、「〜はずがない」との強さの取り違え、例外の具体例があるかを見る。
つまずきと手当て
- 「*効くとは限りない」と否定の形を崩す。「限る」の否定は「限らない」、ていねいには「限りません」と、活用を板書で確かめる
- 「〜はずがない」と同じ強さだと思い、相手の意見を完全に否定してしまう。「とは限らない」は例外があるというだけで、相手の意見を全部否定してはいない、と強さの目盛りで示す
- 「〜わけではない」と区別がつかない。どちらも部分的な否定だが、「とは限らない」は一般の考えに例外がある場合に使いやすい、と例文を並べて比べさせる
既習の文型との違い
- 〜わけではない/〜というわけではない(第9課)「〜わけではない」は「全部がそうだというわけではない」と、話し手の説明や前の文から出る推測を打ち消します。「〜とは限らない」は一般に正しいと思われていることに例外の可能性を示します。「日本人だからといって、みんな早く寝るとは限らない」のように、一般論を相手にするときは「とは限らない」が使いやすいと示します。
- 〜はずがない(第3課)「〜はずがない」は「絶対にない」と強く否定し、「〜とは限らない」は「そうでない場合もある」と一部を否定するだけです。相手の意見に「そんなはずがない」と言うと全否定になるので、話し合いでは「とは限らない」で角を立てずに返す練習をします。
関連する文型
この場面のことば・表現
- 他の人の意見を受けて自分の意見を述べるときに使う表現意見を述べるときは、いきなり自分の考えを言うのではなく、まず相手の意見をまとめて受け止め、それから賛成・一部賛成・反対を述べる、という順番を型として練習します。「受け止める」「一部認める」「自分の考えを述べる」の3段に分けて表現を板書し、話し合いの中で一つずつ使わせます。反対するときも相手の意見を一度受け止めると角が立たないことを、言い方の比較で見せます。例:「〜さんの意見は〜ということですね」「たしかに〜とは思いますが」「その点には賛成です。ただ、〜」「私は少し違う考えです」「〜という見方もあるのではないでしょうか」
語彙の扱い
この課の語は、心の調子(落ち込む・気分が晴れない・ストレスがたまる)、体の調子と運動(体力・運動不足・適度な)、睡眠(寝つき・眠りが浅い・夜ふかし)、意見の述べ方の4つのかたまりに分かれます。体と心の語は、学習者が自分の調子を話すのにそのまま使える語なので、意味だけでなく「ストレスがたまる」「体力が落ちる」のように動詞とのセットで覚えさせます。記事や番組に出る漢字語は読めればよい語と、話し合いで使えるようにする語を分けて示します。
この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)
- 落ち込む(おちこむ) 悲しいことや失敗があって、気持ちが沈んで元気がなくなることです。 気分が〜・試験に落ちて〜
先輩が、元気のない後輩に声をかける。最近元気ないね。何か落ち込むことでもあった?
- 疲れがたまる(つかれがたまる) 休んでも疲れが取れず、少しずつ重なって大きくなることです。 仕事で〜・〜一方だ
友達に週末の予定を聞かれる。今週は疲れがたまっているから、土曜はゆっくり寝るよ。
- 寝不足(ねぶそく) 必要なだけ眠れていないことです。 〜が続く・〜気味・〜で頭が痛い
授業中にあくびをして、先生に聞かれる。すみません、ゆうべ寝不足で……。
- 寝つき(ねつき) 布団に入ってから眠るまでの具合のことで、すぐ眠れるなら「寝つきがいい」と言います。 〜がいい・〜が悪い
睡眠の記事を読んだあと、ペアで話す。私は寝つきが悪くて、布団に入っても一時間ぐらい眠れません。
- 夜ふかし(よふかし) 夜遅くまで起きていることです。 〜をする・〜が続く
母親に電話で注意される。夜ふかしばかりしていると、体を壊すよ。
- 運動不足(うんどうぶそく) 体を動かすことが足りない状態です。 〜になる・〜を解消する
家で仕事をすることが多い同僚と話す。家で仕事をするようになってから、すっかり運動不足です。
- 体力(たいりょく) 体を動かし続けたり、病気に負けなかったりする体の力です。 〜がつく・〜が落ちる・〜に自信がある
スポーツジムのスタッフに相談する。最近体力が落ちてきたので、軽い運動から始めたいです。
- 適度な(てきどな) 多すぎず少なすぎず、ちょうどいい程度のという意味です。 〜運動・〜休み
保健室の人が学生に話す。適度な運動は、ストレスを減らすのにも役立ちますよ。
- 無理をする(むりをする) 体や時間の限界を超えて、できないことをしようとすることです。 つい〜・あまり〜な
体調が悪い友達に言う。熱があるなら、無理をしないで休んだほうがいいよ。
- 相談に乗る(そうだんにのる) 人の悩みを聞いて、いっしょに考えたり助言したりすることです。 親身に〜・友達の〜
学校の先輩に話しかける。ちょっと相談に乗ってもらえませんか。
- 健康法(けんこうほう) 健康を保つためにする方法や習慣です。 〜を試す・自分なりの〜
投書を読んだあとの話し合いで言う。私の健康法は、毎朝コップ一杯の水を飲むことです。
- 症状(しょうじょう) 病気やけがのときに体に出る、痛みや熱などの具体的な様子です。 〜が出る・〜が軽い/重い・〜を伝える
病院の受付で言われる。どんな症状か、こちらの紙に書いてください。
宿題と次のコマ
宿題は、自分の健康のために続けていること、または続けたいことについて、投書の形で400字の意見文を書いてくること。「〜からといって」「〜とは限らない」「〜というものだ」のうち二つ以上を使わせます。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞き手に一つずつ意見を返させてから、第13課の「見つけた!」に入ります。夢中になっていることについての体験談を読む活動なので、「続けていること」の話から「熱中していること」の話へとつなげます。
よくある質問
『できる日本語 中級』第12課は何コマで終わりますか?
90分×4コマが目安です。1コマ目に導入と「こんなときどうする?」、2コマ目に「耳でキャッチ」と記事を読む前の準備、3コマ目に「見つけた!」の残りと「伝えてみよう」の文型、4コマ目に投書をもとにした話し合いと課のまとめを置きます。「伝えてみよう」は文型が4つあるので、いちばん時間を取ります。
第12課の「〜にしても〜にしても」と第11課の「〜にしても」の違いはどう教えればいいですか?
第11課は一つの場合を仮に認めて「それでも〜」と続ける形、第12課は二つの場合を並べて「どちらでも後ろは同じ」と言う形です。黒板の左右に二つの選択肢を書き、矢印を一つにまとめて後ろの文につなぐと違いが目で分かります。二つ目を落とした文を言わせて、意味が第11課のほうに変わることを確かめるのも効果的です。
「〜ばかりだ」と「〜一方だ」はどう使い分けますか?
どちらも辞書形に付いて変化が一つの方向に進み続けることを言いますが、「〜ばかりだ」はほとんど悪い変化に使い、話し手の困った気持ちが強く出ます。「〜一方だ」は悪い変化に多いものの「利用者は増える一方だ」のように中立の変化にも使え、ニュースや説明文にも出ます。相談の場面では両方使えると伝え、形容詞には「〜くなる」を入れることを必ず確かめます。
「〜に対して」の対象の使い方と対比の使い方が混ざらないようにするには?
前に来るものを見させます。対象は名詞+「に対して」で、気持ちや行動が向かう先(「睡眠に対する関心」)を示します。対比は「〜のに対して」と節が来ることが多く、二つを比べます。矢印一本の図(対象)と左右を比べる図(対比)を並べて板書し、記事の中の「に対して」をどちらかに分けさせる練習が役立ちます。
「〜からといって」と「〜とは限らない」はいっしょに教えたほうがいいですか?
この課では「耳でキャッチ」と「伝えてみよう」に分かれていますが、どちらも思い込みを正す働きなので、つなげて扱うと定着します。「耳でキャッチ」では番組の中で聞き取る形として、「伝えてみよう」では自分の意見として言う形として使わせます。「〜からといって、〜とは限らない」を一文で言えるようにしておくと、話し合いで反論するときにそのまま使えます。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。