日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第13課「トレンドに乗ってつながる」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること5つ(見つけた!・伝えてみよう・耳でキャッチ・こんなときどうする?・耳でキャッチ)

いま流行っていることや話題の物事を知り、自分の興味と結びつけて周りの人と話す課です。「見つけた!」で同じ趣味を持つ人の体験談を読み、「伝えてみよう」で好きな作品のあらすじと見どころを紹介し、1つ目の「耳でキャッチ」で話題の物事が社会に広がる様子をニュースで聞きます。続く「こんなときどうする?」では思い入れのある物の修理を店に頼み、2つ目の「耳でキャッチ」でイベント会場からのリポートを聞き取ります。第12課の「〜一方だ」(変化が一方向に進む)とこの課の「〜一方で」(二つの面を並べる)の違いをはっきりさせ、「〜のみならず」「〜に先立ち」のような硬い形を、読む・聞く素材の中で見分けられるようにします。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目12時間90分×4コマ場面5

この課のねらい(Can-do)

  • 同じことに夢中になっている人の体験談を読んで、始めたきっかけや楽しみ方の情報をつかめる
  • 好きな映画・ドラマ・アニメなどの筋をかいつまんで話し、どこがおもしろいかを伝えられる
  • 話題になっている物事が、だれの間でどのように広まっているかをニュースから聞き取れる
  • 思い入れのある物の修理を、直してほしい気持ちと受け入れられる条件を伝えて店に頼める
  • イベント会場からのリポートを聞いて、催しの内容や会場の様子をつかめる

進め方と時間配分

目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入15分第12課の「〜一方だ」の例(「最近、運動不足になる一方だ」)を一つ思い出させてから、教師が「最近はまっていること」を一つ話し、クラスで「いま何がはやっているか」を出し合って黒板に書く。この課の素材の話題は、ここで出たものに差し替えてもよい
1 見つけた!60分(1コマ目)フィルムカメラにはまった人の体験談(自作・400字ほど)を読む → 始めたきっかけ・楽しみ方・苦労を表に整理 → 本文から「〜とともに」「〜しかない」「〜ずにはいられない」を探して意味を確かめる → 自分の熱中していることを3文で書く
2 伝えてみよう70分(2コマ目の前半〜半ば)好きな作品を1つ選び、あらすじ(結末は言わない)→ 見どころ → 勧めたい人、の3段のメモを作る → 「〜(さ)せられる」「〜一方で」を入れて1分で紹介 → 聞き手が質問を1つする
3 耳でキャッチ60分(2コマ目の後半〜3コマ目の前半)昔ながらの喫茶店が若い世代に広がっているというニュース(自作・1分ほど)を2回聞く。1回目はだれの間で・何がきっかけで広がったか、2回目は「〜のみならず」「〜と同時に」「〜によって」の前後を聞き取る
4 こんなときどうする?70分(3コマ目の後半〜4コマ目の前半)祖父の形見のカメラ(または思い出の腕時計)を修理店に持ち込むロールカード → 「〜だけに」で思い入れを、「〜としても」で受け入れられる条件を伝えて頼む → 店員役が時間・費用・部品の問題を出し、客役が頼み直す
5 耳でキャッチ50分(4コマ目)商店街のレトロまつりの現地リポート(自作)を聞き、開催期間・催し・客層・会場の様子をメモ → 「〜に先立って」「どちらかというと」が出たところで止め、何が先か・どちら寄りかを確かめる
課のまとめ35分(4コマ目の最後)自分が気になっているトレンドを1つ選び、どこで知ったか・どう広がっているか・自分はどう楽しんでいるかを2分で話す。聞き手は「やってみたい/行ってみたい」かどうかと、その理由を一つ返す

1 見つけた!

できること自分と同じことに夢中になっている人の体験談を読んで、始めたきっかけや楽しみ方をつかめる。

場面

SNS やブログで、自分と同じ趣味の人が書いた体験談を読む場面です。教室では、フィルムカメラにはまった会社員の体験談を教師が400字ほどで自作し、カメラ・フィルム・プリントした写真の画像を添えて配ります。読む前に「古い物で、いままた人気がある物」を聞き、始め方と楽しみ方を知るという読む目的を決めておきます。

  • 体験談:フィルムカメラを始めて、もうすぐ二年になる。
  • 体験談:きっかけは、実家の押し入れで見つけた父の古い一台だった。
  • 体験談:一本のフィルムで撮れるのは三十枚ほど。やり直しがきかないから、一枚ずつよく考えて撮るしかない。
  • 体験談:現像が仕上がったと連絡が来ると、仕事の帰りに店に寄らずにはいられない。
  • 体験談:いまは同じ趣味の仲間とともに、月に一度、知らない町を歩いて撮影している。
  • 体験談:スマホの写真とは違う、少しやわらかい色がたまらなく好きだ。
学習項目 1 〜とともに(一緒に)

意味・はたらき

「N+とともに」で、人や物と一緒に行動したり、一緒にある状態だったりすることを表します。意味は「〜と一緒に」とほぼ同じですが、書き言葉や改まった話し言葉で使う硬い形で、体験談・スピーチ・記事によく出ます。友達との会話で使うと大げさに聞こえるので、話すときは「〜と一緒に」を使います。第9課の「〜とともに(変化)」(「年をとるとともに〜」)とは形が同じで意味が違うので、前が人・仲間・家族などで後ろが行動なら「一緒に」、前後とも変化を表すなら「変化」と見分けさせます。

接続

N+とともに(人・仲間・家族・物などの名詞に直接つく)

形
仲間とともに町を歩く家族とともに日本に来た地元の人々とともに祭りを準備する

導入

  • 「一緒に」を書き言葉に言い換える教師が「友達と一緒に写真を撮りに行きました」と話し言葉で言ったあと、同じ内容を体験談の文として板書し、「友達とともに」に書き替える。「話す → と一緒に/書く・スピーチ → とともに」と2段に並べ、体験談の本文から「とともに」を探させる。

板書案

N + とともに(=と一緒に・書き言葉)
話す:友達と一緒に、写真を撮りに行った。
書く:仲間とともに、港町を歩いた。
〔赤〕名詞に直接つく(*友達がとともに)
〔青〕前が人・仲間で後ろが行動 → 一緒に/前後とも変化 → 第9課の「とともに」

場面と発話(自作)

  • 趣味のブログに、仲間との撮影会のことを書く。同じ趣味の仲間とともに、港町を一日かけて歩いた。
  • 地域のイベントで、ボランティアの代表としてあいさつする。地元の皆さんとともに、この祭りを続けていきたいと思います。
  • 会社の創立記念の式典で、代表があいさつする。社員の皆さんとともに、次の十年も歩んでいきたいと考えております。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「家族と一緒に住んでいる」のような話し言葉の文を言い、学習者が「〜とともに」の書き言葉に言い換える。キューは「仲間・家族・チーム・地域の人」の語カード。次に、自分の熱中していることを体験談ふうに書く中で、だれとともに何をしているかを1文入れさせる。

  1. 口頭教師が話し言葉の文を言い、学習者が書き言葉の「〜とともに」に言い換える。キューは「家族と一緒に暮らしている」「チームと一緒に優勝を目指す」「地域の人と一緒に公園を掃除した」「仲間と一緒に撮影に出かける」。全体で → 一人ずつ、と回し、名詞に直接ついているかを毎回聞く。
  2. ペア「話す人と書く人」。A が週末にだれと何をしたかを「〜と一緒に」で2文話し、B がそれを体験談の文に直して「〜とともに」で読み上げる。A は内容が合っているかを確かめ、役を交代して2回まわす。
  3. 産出「体験談の3行」。自分が熱中していることを体験談の形で3文書き、そのうち1文にだれとともに何をしているかを入れる。教師は、名詞に直接ついているか、会話文の中に「とともに」が混ざって硬くなっていないか、「結婚する」のような相手が要る動詞に使っていないか、の3点を見る。

つまずきと手当て

  • 「*友達がとともに」「*仲間のとともに」と、前に助詞を足す。「とともに」は名詞に直接つくと、板書の枠「N+とともに」で確かめる
  • 友達との雑談で「とともに」を使い、硬く聞こえる。誤りではないが、話すときは「〜と一緒に」と場面で使い分けさせる
  • 「結婚する」「けんかする」のように相手が要る動詞に付け、相手のつもりで「彼とともに結婚した」と言う。「とともに」は二人がそろって同じことをする意味になるので、相手を言うなら「と」だけでよいと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜とともに(変化)(第9課)第9課の形は「年をとるとともに、体力が落ちる」のように前後とも変化を表し、片方の変化にもう片方がついていく意味です。この課の形は前が人・仲間・物の名詞で、後ろがいっしょにする行動です。「経済の発展とともに町が変わった」を「一緒に」の意味で読む学習者がいるので、前の名詞が変化を表す語かどうかを確かめさせます。
  • 〜と同時に(第13課)「とともに」は「同じ時に」の意味でも使えますが、この課の「一緒に」の意味は「と同時に」では言い換えられません。「友達と同時に町を歩いた」は、二人が別々に同じ時刻に歩いたように聞こえます。だれかといっしょに行動するときは「とともに/と一緒に」、二つの出来事が重なるときは「と同時に」と分けます。
関連する文型
学習項目 2 〜しかない

意味・はたらき

「V辞書形+しかない」で、ほかに方法がないので、そうするより仕方がないという気持ちを表します。あきらめ(「待つしかない」)にも、覚悟(「やるしかない」)にも使います。初中級の「Nしか〜ない」(「三十枚しか撮れない」=それだけ)は数や名詞につく限定で、この課の形は動詞の辞書形につく点が違います。同じ意味の「〜ほかない」(第19課)はやや硬く、「〜ざるを得ない」はさらに書き言葉的で、気が進まないことを仕方なくするときに使います。「しかない」は会話でも文章でも使えます。

接続

V辞書形+しかない(ていねいには「しかありません」)

形
待つしかない自分でやってみるしかないあきらめるしかありません

導入

  • 困った状況から答えを出させる教師が「フィルムが一本しかありません。撮れるのは三十枚だけです。どうしますか」と聞き、「よく考えて撮る」などの答えを引き出す。それを「よく考えて撮るしかない」と言い直して板書する。板書は「Nしか〜ない(それだけ)」と「V辞書形+しかない(ほかに方法がない)」の2行にし、上が初中級の形、下がこの課の形だと見せる。

板書案

V辞書形 + しかない(ほかに方法がない)
N・数 + しか〜ない(それだけ)=初中級
フィルムは一本しかない。→ 一枚ずつよく考えて撮るしかない。
〔赤〕前は辞書形だけ(*並んだしかない)
〔青〕しかない → ほかない → ざるを得ない(右へ行くほど硬い)

場面と発話(自作)

  • 人気のカメラが、店でも通販でも売り切れていた。次の入荷まで待つしかないね。
  • 始めたばかりの趣味で、教えてくれる人が周りにいない。動画を見ながら、自分で何度も試すしかありませんでした。
  • 終電に乗り遅れ、駅前にタクシーも見当たらない。もう歩いて帰るしかない。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が困った状況カード(「チケットは当日券だけ」「説明書が英語だけ」「部品がもう作られていない」)を出し、学習者が「〜しかない」で答える。次にペアで、自分の熱中していることで困ったことを1つ話し、相手が「それは〜しかないね」と返す。

  1. 口頭教師が困った状況カードを出し、学習者が「〜しかない」で答える。キューは「チケットは当日券だけ」「説明書が英語だけ」「部品がもう作られていない」「終電が出てしまった」。最初は全員で、次に一人ずつ、ていねい形「しかありません」も混ぜる。
  2. ペア「困りごと相談」。A が困りごとカードを読み、B が「それは〜しかないね」と返す。A は「でも、〜はどう?」と別の方法を一度だけ出し、B がもう一度「〜しかない」で答える。カードを替えて役を交代する。
  3. 産出「熱中の壁」。自分の趣味で困ったことと、それをどう乗り越えたかを「〜しかなかった」を使って体験談に2文書き、ペアに読む。教師は、辞書形についているか、「Nしか〜ない」と混ざっていないか、目上への返事で投げやりに聞こえていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*並んだしかない」「*並ばないしかない」と、辞書形以外につける。「しかない」の前は辞書形だけ、と板書で固定する
  • 「三十枚しか撮れない」(それだけ)と「撮るしかない」(ほかに方法がない)の意味を取り違える。数や名詞についていれば限定、動詞の辞書形についていれば方法がない、と例を対にして読ませる
  • 目上の人に仕事を頼まれて「やるしかないですね」と答え、仕方なく引き受けたように聞こえる。誤りではないが、引き受けるときは「やってみます」などを使うと場面で確かめる

既習の文型との違い

  • [〜個、〜時間、〜杯…/N]しか〜ない(初中級第12課)初中級の形は数や名詞について「それだけ」と限り、後ろの動詞は否定形になります。この課の形は動詞の辞書形について「その方法しか残っていない」と言い、「ない」は動詞ではなく「しか」のあとに来ます。「三十枚しか撮れない」と「撮るしかない」を対にして、どこに「ない」があるかを丸で囲ませます。
  • 〜(より)ほかない/〜(より)ほかしかたがない(第19課)意味はほぼ同じですが、「ほかない」のほうが硬く、文章や改まったスピーチに向きます。会話では「しかない」が自然で、「待つほかないね」は友達どうしでは少し大げさに聞こえます。
  • 〜ざるを得ない(第19課)「ざるを得ない」は、気が進まないことを事情に押されて仕方なくする言い方で、さらに書き言葉的です。「やるしかない」は覚悟を決める前向きな場面にも使えますが、「やらざるを得ない」はいやいやする響きになります。
関連する文型
学習項目 3 〜ないではいられない/〜ずにはいられない

意味・はたらき

そうしたい気持ちを抑えられず、どうしてもしてしまうことを表します。体験談では、熱中している人の気持ちの強さを伝える表現としてよく出ます(「新しいレンズが出ると、見に行かずにはいられない」)。「ずにはいられない」のほうが硬く書き言葉的で、「ないではいられない」はやや話し言葉寄りです。似た形の「〜わけにはいかない」(第15課)は義務や事情から「しないことはできない」という意味、「〜てしかたがない」(第15課)は気持ちの状態(「気になってしかたがない」)を言う形で、この課の形は気持ちに押されて行動してしまう点が違います。主語はふつう話し手で、他の人のことは「〜ずにはいられないようだ」のように外から見た形で言います。

接続

Vない形+ではいられない(行かないではいられない)/Vない形の「ない」を取って+ずにはいられない(行かずには)。する→せずには、来る→来ずには(こずには)

形
見に行かないではいられない見に行かずにはいられないひとこと言わずにはいられない確かめずにはいられない

導入

  • 教師の「つい、してしまうこと」教師が「わたしは本屋の前を通ると、どうしても中に入ってしまいます」と話し、「入りたくない?——いいえ、入りたい気持ちが止まらない」と確かめてから、「本屋の前を通ると、入らずにはいられない」と板書する。その下に「入らないではいられない」も書き、上が硬い・下がやわらかい、と矢印で示す。「する→せずに」「来る→こずに」は別の色で書く。

板書案

Vない + ではいられない/Vない(ない を取る)+ ずにはいられない
本屋の前を通ると、入らずにはいられない。
〔赤〕する → せずに 来る → こずに
〔青〕気持ちが止まらない → してしまう(義務ではない)
上:ずには(硬い) 下:ないでは(やわらかい)

場面と発話(自作)

  • 好きなバンドの新曲が出た日、同僚に話す。発売日だと思うと、朝から聞かずにはいられなかったんです。
  • 体験談に、撮影に出かける理由を書く。天気のいい日は、カメラを持って外に出ないではいられない。
  • 駅で、困っている様子の観光客を見かけた。地図を見て立ち止まっていたので、声をかけずにはいられなかった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず「ない形 → ずに」の変換を速く回す(行かない→行かずに、しない→せずに、来ない→こずに)。次に「〜を見ると/〜と聞くと」の状況カード(「セールの看板」「好きな作家の新刊」「限定の味」)を出し、「〜ずにはいられない」で答えさせる。最後に自分の熱中していることで1文作り、体験談の文に入れる。

  1. 口頭まず「ない形 → ずに」の変換を速く回す(行かない・食べない・言わない・しない・来ない)。次に状況カード「セールの看板」「好きな作家の新刊」「限定の味」「SNS の通知の音」を出し、「〜を見ると/〜を聞くと、〜ずにはいられない」で答えさせる。
  2. ペア「つい、してしまうこと」インタビュー。A が「〜を見ると、どうしますか」と3つ聞き、B が「〜ずにはいられません」で答えて理由を一つ足す。A は聞いた内容を「B さんは〜ずにはいられないそうです」とクラスに報告し、主語が他の人のときの言い方を練習する。
  3. 産出「熱中度チェック」。自分の趣味について「〜ずにはいられない」を使った文を2つ書き、体験談の本文に入れる。教師は、する・来るの形、他の人が主語のときに「〜ようだ/そうだ」がついているか、義務の意味で使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*しずにはいられない」「*きずにはいられない」と、する・来るの形を誤る。「せずに」「こずに」だけ別に練習する
  • 「*行きたいずにはいられない」と「たい」に付けたり、「*行かなくてはいられない」と別の形と混ぜたりする。前は「ない形」だけ、と板書の枠で確かめる
  • 他の人のことを「彼は笑わずにはいられない」とそのまま言う。主語が他の人なら「〜ずにはいられないようだ/〜ずにはいられなかったそうだ」と、外から見た形をつけさせる
  • 宿題があるから、という義務の意味で「毎日勉強せずにはいられない」と言う。義務なら「〜なければならない」「〜わけにはいかない」、気持ちが止まらないときだけこの形、と理由を聞いて確かめる

既習の文型との違い

  • 〜わけにはいかない/〜わけにもいかない(第15課)「わけにはいかない」は、事情や義務があって「することはできない」(休むわけにはいかない)、否定につけば「しないことはできない」という意味です。この課の形は、気持ちに押されて行動してしまうことを言います。「仕事だから行かずにはいられない」と言うと、仕事に行きたくてたまらないように聞こえるので、理由が義務か気持ちかを聞いて形を選ばせます。
  • 〜てしかたがない/〜てしょうがない(第15課)「〜てしかたがない」は「気になってしかたがない」のように気持ちの状態を言い、行動までは言いません。この課の形は、その気持ちから出る行動を言います。「結果が気になってしかたがない。だから、何度も確かめずにはいられない」と2文を続けると、両方の違いが見えます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 熱中していることを紹介するときに使う表現体験談の中から夢中になっている気持ちを表す表現を拾わせ、どのくらい夢中かの強さの順に並べます。「はまる」のような話し言葉は友達との会話向き、「〜の魅力に取りつかれる」は文章向きと、硬さも添えます。例:「〜にはまっている」「すっかり〜のとりこだ」「気がつくと〜のことばかり考えている」「〜を始めてもう二年になる」「時間を忘れて〜」「〜の魅力に取りつかれた」

2 伝えてみよう

できること好きな映画・ドラマ・アニメなどのあらすじをかいつまんで話し、見どころを伝えられる。

場面

友達やクラスメートに、最近おもしろかった作品を勧める場面です。学習者が自分で作品を選び、「あらすじ(結末は言わない)→ 見どころ → どんな人に勧めたいか」の3段のメモを作ってから1分で紹介します。教師は先に、架空の作品で見本の紹介をしてみせます。

  • 留学生:最近見たドラマで、すごくよかったのがあるんです。
  • クラスメート:へえ、どんな話?
  • 留学生:地方の小さな町で、閉館しそうな古い映画館を高校生たちが立て直す話です。
  • 留学生:明るいコメディーである一方で、町から人が減っていくさびしさもちゃんと描かれていて。
  • クラスメート:おもしろそう。見どころは?
  • 留学生:最終回の上映会の場面ですね。町の人どうしのつながりについて、考えさせられました。
  • クラスメート:今度見てみる。
学習項目 1 〜(さ)せられる

意味・はたらき

使役受身(初中級第13課)の形で、ここでは作品に触れて自然とそういう気持ちや考えになったことを表します。「考えさせられる」「感動させられる」「驚かされる」「泣かされる」のように感情・思考の動詞と結びつき、気持ちを起こしたのは作品のほうだという言い方です。「感動した」は自分の気持ちを言うだけですが、「感動させられた」には作品の力で、思った以上に心が動いたという評価がこもり、作品をほめる言い方になります。受身の「考えられる」(=そう考えることもできる・可能性がある)とは意味がまったく違います。

接続

1グループ:Vない形(「ない」を取る)+せられる(驚かせられる/短い形 驚かされる。話す→話させられる のようにサ行は短い形にしない)/2グループ:Vない形(「ない」を取る)+させられる(考えさせられる)/3グループ:する→させられる、来る→こさせられる

形
考えさせられる作品主人公の強さに驚かされた最後の場面には泣かされました感動させられるラスト

導入

  • 「だれが気持ちを起こしたか」を矢印で教師が架空の映画の一場面を話し、「わたしは泣きました」と言ってから、黒板に「映画 → わたし(泣く)」と矢印を描く。「映画がわたしを泣かせた」と使役で言い、それを「わたし」の側から言うと「映画に泣かされた」になると書き替える。最後に「考えさせられる」「驚かされる」を作品紹介でよく使う言い方として並べる。

板書案

使役受身:Vない(ない を取る)+(さ)せられる
映画 → わたし(泣く) 映画に 泣かされた。
考える → 考えさせられる 驚く → 驚かされる
〔赤〕させ・ら・れる(*考えさせれる)
〔青〕作品をほめる言い方:考えさせられる作品

場面と発話(自作)

  • 友達に、最近見たドキュメンタリーを勧める。働き方について、いろいろ考えさせられたよ。
  • アニメの感想を SNS に書き込む。最終話は、まさかの展開に驚かされました。
  • 授業の発表で、好きな小説を紹介する。主人公のとぼけた一言には、何度も笑わされました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず「考える・驚く・泣く・笑う・感動する」を使役受身にする変換を口頭で回す。次に作品の場面カード(「意外な犯人」「別れの場面」「社会の問題を描いた場面」)を出し、「〜に〜させられた」で感想を言わせる。最後に自分の作品紹介の「見どころ」の部分に1文入れる。

  1. 口頭感情・思考の動詞「考える・驚く・泣く・笑う・感動する・反省する」を使役受身にする変換を口頭で回す。次に作品の場面カード「意外な犯人」「別れの場面」「社会の問題を描いた場面」「主人公の失敗」を出し、「〜に〜させられた」で感想を言わせる。
  2. ペア「感想カード交換」。互いに架空の作品のポスター(題と一行のあらすじ)を見せ、A が「どうだった?」と聞き、B が使役受身で感想を1文+理由を1文で答える。交代するときは、前と違う動詞を使う決まりにする。
  3. 産出「見どころ1分紹介」。ST2 の作品紹介の「見どころ」の部分に「〜させられた」を1文入れて、クラスの前で話す。教師は、「ら」を落としていないか、受身の「考えられる」と混ざっていないか、いやなことをさせられた意味に聞こえていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*話さされた」「*待たさせられた」のように、サ行に短い形を使ったり、短い形と長い形を混ぜたりする。この課では感情・思考の動詞に絞り、「考えさせられる」「驚かされる」「泣かされる」をまとまりとして覚えさせる
  • 「*考えさせれる」と「ら」を落とす。「させ・ら・れる」と3つに区切って板書する
  • 「考えさせられる映画」のつもりで「考えられる映画」と言う。「考えられる」は「そう考えることもできる」の意味になると、2つの文を対にして見せる
  • 初中級で学んだ「(いやなことを)させられた」の意味だけで理解し、作品をほめる言い方だと気づかない。「考えさせられる作品」はほめ言葉になると、紹介の例で確かめる

既習の文型との違い

  • 使役受身(初中級第13課)初中級では「先輩に掃除をさせられた」のように、いやなことを人に無理にさせられた意味で習っています。この課の使い方は、作品や出来事の力で自然とそういう気持ちになった意味で、作品をほめる言い方になります。前に人がいて後ろが行動なら強制、前が作品・出来事で後ろが感情・思考の動詞なら気持ちが起きた、と見分けさせます。
  • 受身(初中級第10課)「考えられる」は受身・可能・自発のどれにも読める形で、文の中では「そう考えることもできる」「可能性がある」という意味になりがちです。「考えさせられる映画」を「考えられる映画」と言うと意味が通らなくなるので、2つの文を並べて違いを確かめます。
関連する文型
学習項目 2 〜一方(で)

意味・はたらき

「A一方(で)、B」で、同じ物事の二つの面や、二つのものの違いを並べて示します。作品紹介では「笑える一方で、泣ける場面もある」のように、作品の別の面を足して奥行きを伝えるのに使います。「〜が」「〜けど」より改まった言い方で、発表や文章に向いています。「〜に対して」(第11課)は二つの違うものをはっきり対比するときに使い、同じ作品の二つの面を言うなら「一方で」が自然です。第12課の「〜一方だ」(変化が一方向に進むばかり)は文末に来る別の形なので、混同させないようにします。

接続

V・イA普通形+一方(で)/ナAな・ナAである+一方(で)/Nである+一方(で)。文の初めでは「その一方で」

形
笑える一方で、泣ける場面もある映像が美しい一方、話は少し難しい主人公は仕事に厳しい上司である一方で、家では料理好きの父親だその一方で

導入

  • 作品の「表」と「裏」教師が架空の作品のポスターの絵を黒板に貼り、左に「明るい・笑える」、右に「さびしい・考えさせられる」と2つの面を書く。「この作品は笑える。でも、さびしい場面もある」と2文で言ってから、「笑える一方で、さびしい場面もある」と1文につなげる。接続は品詞ごとに表にし、ナAとNの「な/である」を赤で書く。

板書案

A 一方(で)、B(同じ物事の二つの面)
笑える 一方で、泣ける場面もある。
〔赤〕ナA:きれいな/きれいである 一方で N:コメディーである 一方で
〔青〕第12課の「〜一方だ」=文の終わり・変化が進むばかり
文の初めでは「その一方で、〜」

場面と発話(自作)

  • 発表で、好きなアニメの魅力を話す。子どもも楽しめる一方で、大人が見るとまた違う意味がわかる作品です。
  • 友達に、話題の映画の感想を聞かれる。映像はすごくきれいな一方、話はちょっとわかりにくかったかな。
  • 作品紹介の文章で、主人公の人物像を書く。主人公は気が強い一方で、誰よりも仲間思いだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、作品カードの2つの面(「こわい/家族の話」「派手なアクション/静かな恋愛」)を見せ、「〜一方で」で1文にさせる。接続の練習として、ナA・Nのカードを混ぜる。最後に自分の作品紹介に、作品の別の面を「一方で」で1文足す。

  1. 口頭作品カードの二つの面を見せ、「〜一方で」で1文にさせる。キューは「こわい/家族の話」「派手なアクション/静かな恋愛」「子ども向け/大人が泣ける」「映像がきれい/話が難しい」。ナA・N のカードを混ぜて接続を確かめ、文の初めの「その一方で」も言わせる。
  2. ペア「表と裏」。A が作品・店・町の良い面を1文言い、B が「その一方で、〜」で別の面を足す。次は B が先に言う。最後に2人の文を「〜一方で、〜」の1文にまとめて言わせる。
  3. 産出「作品のもう一つの顔」。ST2 の作品紹介に、作品の別の面を「一方で」で1文足して発表する。教師は、ナA・N の接続、「一方で」のあとに二つ目の面が続いているか、並べた二つが本当に同じ物事の二つの面になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*きれいの一方で」「*コメディーの一方で」と、ナA・Nの接続を誤る。ナAは「な/である」、Nは「である」をはさむと表で確かめる
  • 第12課の「〜一方だ」と混ぜて「*人気が出る一方で。」と文を終える。「一方で」のあとには必ずもう一つの面が続くと、文の後ろに枠を書いて示す
  • 「主人公は高校生である一方で、舞台は東京だ」のように、二つの面になっていないことを並べる。同じ物事の二つの面か、比べられる二つのものを並べると、ポスターの左右で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜ばかりだ/〜一方だ(第12課)第12課の「一方だ」は文の終わりに来て、「人が減る一方だ」のように変化が一方向に進むばかりであることを言います。この課の「一方で」は文の途中で二つの面を並べ、後ろにもう一つの文が続きます。「*人気が出る一方で。」と文を終える誤りは、2つの形が混ざったしるしです。
  • 〜に対して(第11課)「に対して」は「兄は外で遊ぶのが好きなのに対して、弟は家で本を読むのが好きだ」のように、違う二つのものをはっきり対比するときに使います。同じ作品の二つの面を言うときは「に対して」より「一方で」が自然です。違う二つのものを比べるときは、どちらも使えます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 好きな作品とその見どころを紹介するときに使うことば・表現紹介の3段(あらすじ → 見どころ → 勧めたい人)に合わせて、使う表現を分けて板書します。あらすじは「〜が〜する話です」と短くまとめさせ、結末を言わないときの断り方もここで教えます。例:「〜を舞台にした作品です」「主人公の〜が〜する話です」「見どころは何といっても〜です」「ネタバレになるので詳しくは言えませんが」「〜な人にはぜひ見てほしいです」「原作の漫画も人気があります」

3 耳でキャッチ

できることいま話題になっている物事が、だれの間で、どのように社会に広まっているかを聞き取れる。

場面

テレビやネットのニュースで、流行の広がりを伝える短い特集を見る場面です。教室では、昔ながらの喫茶店が若い世代に広がっているというニュース原稿を教師が1分ほどで自作し、録音するか読み上げます。聞く前に店内の写真やクリームソーダの絵を見せ、「どんな人が行くと思うか」を予想させておきます。

  • アナウンサー:昔の雰囲気が残る喫茶店が、いま若い世代の間で人気を集めています。
  • アナウンサー:きっかけは SNS です。客が投稿した店内の写真によって、店の名前が一気に広まりました。
  • アナウンサー:古くからある店のみならず、昔風の内装にした新しい店も増えています。
  • 大学生:古いものって、かえって新しく感じるんですよね。
  • 店主:お客さんが増えてうれしいと同時に、昔からの常連さんが座れなくなるのが心配で。
  • アナウンサー:ブームによる行列が、この町の新しい風景になりつつあります。
学習項目 1 〜のみならず

意味・はたらき

「AのみならずB(も)」で、Aだけでなく、それより範囲の広いBにも及ぶことを表します。ニュースや記事で、流行が広がっている様子を伝えるときによく使われます(「若者のみならず、中高年にも」)。意味は初中級の「〜だけじゃなくて〜も」と同じですが、かなり硬い書き言葉で、会話では「〜だけでなく」「〜だけじゃなくて」を使います。後ろには「も」「まで」が来ることが多く、Bのほうが意外な内容や広い範囲になります。

接続

N+のみならず/V・イA普通形+のみならず/ナA・N の述語は「である」をはさむ(便利であるのみならず)

形
若者のみならず、中高年にも人気だ国内のみならず、海外からも客が来る値段が安いのみならず、味もいい便利であるのみならず、環境にもやさしい

導入

  • ニュースの言い方に言い換える教師が「この店は若い人だけじゃなくて、お年寄りにも人気です」と会話の文で言い、ニュースの読み上げの口調で「この店は若者のみならず、高齢者にも人気です」と言い直す。板書は「会話:〜だけじゃなくて〜も」「ニュース・記事:〜のみならず〜も」の2段にし、後ろの「も」に下線を引く。

板書案

A のみならず、B(も/まで)
若者 のみならず、中高年 にも 人気だ。
会話:〜だけじゃなくて〜も ニュース・記事:〜のみならず〜も
〔赤〕N に直接(*若者ののみならず) ナA・N の述語は「である」
〔青〕小さい円 → 大きい円(B のほうが広い・意外)

場面と発話(自作)

  • ニュースで、地方の菓子がよく売れている様子を伝える。地元のみならず、全国から注文が寄せられています。
  • レポートに、ある運動の広がりを書く。この体操は高齢者のみならず、若い世代にも取り入れられている。
  • 会社の会議で、新しいサービスの利用者が広がっていることを報告する。学生のみならず、子育て中の方にも多く利用されています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が会話体の「〜だけじゃなくて〜も」の文を言い、学習者がニュース体の「〜のみならず〜も」に言い換える。次にニュースの音声で「のみならず」が出たら手を挙げさせ、AとBが何かをメモさせる。

  1. 口頭教師が会話体の文を言い、学習者がニュース体の「〜のみならず〜も」に言い換える。キューは「地元だけじゃなくて全国から」「子どもだけじゃなくて大人も」「国内だけじゃなくて海外でも」「安いだけじゃなくて味もいい」。最後のカードで、形容詞にも使えることを確かめる。
  2. ペア「ニュースキャスター」。A が友達口調の情報カード(「この店、学生だけじゃなくて会社員にも人気なんだって」)を読み、B がそれをニュースの口調に直して読み上げる。A は「のみならず」と後ろの「も」が入っているかを聞き、交代する。
  3. 産出「1分ニュース原稿」。自分の国でいま流行っていることを3〜4文のニュース原稿に書き、「のみならず」を1回入れて読み上げる。教師は、「の」を重ねていないか、後ろが前より広い・意外な内容になっているか、会話の部分にまで硬い形が入っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*若者ののみならず」と「の」を重ねる。名詞には直接つき、ナAとNの述語は「である」をはさむと表で確かめる
  • 友達との会話で「のみならず」を使い、硬く聞こえる。誤りではないが、話すときは「だけじゃなくて」に戻させる
  • 「日本中のみならず、東京でも人気だ」のように、後ろに範囲の狭いことを置く。後ろが前より広い・意外な内容になるよう、小さい円から大きい円へ広がる図で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜だけじゃなくて、〜も〜(初中級第15課)意味はほぼ同じですが、「だけじゃなくて」は会話の形、「のみならず」は書き言葉・ニュースの形です。学習者が話すときは「だけじゃなくて」、ニュースや記事を読む・書くときは「のみならず」と、場面で選ばせます。
  • 〜ばかりでなく/〜ばかりか(第14課)「ばかりでなく」は「だけでなく」とほぼ同じでやや硬い言い方です。「ばかりか」は「Aだけでも大変なのに、Bまで」という驚きが強く、悪いことが重なるときにもよく使います。「のみならず」はこの中でいちばん硬く、驚きよりも範囲が広がることを伝えます。
  • 〜に限らず(第14課)「に限らず」は「週末に限らず、平日も混んでいる」のように、Aという枠を外して、それを含む広い範囲全体を言います。「のみならず」はAにBを積み上げる言い方です。どちらも後ろに「も」が来やすいので、違いは「枠を外す」か「足す」かで説明します。
関連する文型
学習項目 2 〜と同時に

意味・はたらき

二つのことが同じ時に起こること(「発売と同時に売り切れた」)と、一つの物事が二つの面を同時に持つこと(「うれしいと同時に、心配でもある」)を表します。ニュースでは、流行が起きた瞬間や、良い面と困った面の両方を伝えるのに使います。「〜とともに」も同じ時に起こる意味で使えますが、より硬い書き言葉です。第14課の「〜たとたん(に)」は、直後に思いがけないことが起きた驚きを表すので、予定どおりのことには使いません(「開店と同時に客が入った」は事実を伝えるだけ、「開店したとたん客が押し寄せた」は驚きがこもる)。

接続

V辞書形+と同時に/N+と同時に/二つの面を言うとき:イA普通形・ナAである・Nである+と同時に

形
発売と同時に売り切れた店が開くと同時に、行列ができたうれしいと同時に、少しさびしい趣味であると同時に、仕事にもなっている

導入

  • 二つの絵を同時に見せる教師が「ドアが開く」絵と「客が入る」絵を2枚同時に黒板に貼り、「店のドアが開くと同時に、お客さんが入りました」と言う。次に笑顔と困った顔の絵を並べて「客が増えてうれしいと同時に、心配もある」と言い、板書を「① 同じ時に起こる」「② 二つの面がある」の2つに分ける。

板書案

① V辞書形・N + と同時に(同じ時に起こる)
店が開く と同時に、行列ができた。
② イA・ナAである・Nである + と同時に(二つの面)
客が増えてうれしい と同時に、心配もある。
〔赤〕N に直接(*発売のと同時に)

場面と発話(自作)

  • ニュースで、限定商品の売れ行きを伝える。販売開始と同時に、ネットの注文が殺到しました。
  • 人気の店の店主が、取材に答える。注目されるのはありがたいと同時に、責任も感じています。
  • 友達に、試験が終わった日の気持ちを話す。ほっとすると同時に、なんだか力が抜けちゃった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、2枚の絵カード(「チャイムが鳴る/学生が立つ」「発表がある/予約が始まる」)を見せて①の文を作らせ、次に気持ちの2枚(「うれしい/不安」)で②の文を作らせる。ニュースの音声では、「と同時に」が①②のどちらかを聞き分けさせる。

  1. 口頭2枚の絵カードを同時に貼って①の文を作らせる。キューは「チャイムが鳴る/学生が立つ」「発表がある/予約が始まる」「ドアが開く/客が入る」。次に気持ちの2枚「うれしい/不安」「ほっとする/さびしい」で②の文を作らせる。
  2. ペア「①か②か」。A が「と同時に」の文を1つ言い、B がそれが①(同じ時)か②(二つの面)かを答えてから、同じ番号の文を自分で1つ作って返す。正しければ交代し、5往復する。
  3. 産出「ブームの光と影」。ST3 のニュースを聞いたあと、店主・昔からの常連客・若い客のどれかの立場になり、取材に答えるロールプレイで「〜と同時に〜」を使って気持ちを2文話す。教師は、名詞に「の」をつけていないか、②で「である」が入っているか、驚きを言う場面で使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*発売のと同時に」と名詞に「の」をつける。名詞には直接つくと確かめる
  • 思いがけない出来事の驚きを言いたいのに「と同時に」を使い、驚きが伝わらない。驚きなら第14課の「〜たとたん」があると予告しておく
  • ②の意味で「である」を落とし、「学生と同時に作家でもある」とする。二つの面を言うときは「学生であると同時に」と、「である」をはさませる

既習の文型との違い

  • 〜たとたん(に)(第14課)「たとたん」は「ドアを開けたとたん、猫が飛び出してきた」のように、直後に思いがけないことが起きた驚きを表し、後ろに話し手が意志でする行動は来ません。「と同時に」は二つのことが重なった事実を伝えるだけで、予定どおりのことにも使えます。
  • 〜とともに(一緒に)(第13課)「とともに」も「発売とともに売り切れた」のように同じ時を表せますが、さらに硬い書き言葉です。この課では「とともに」を主に「一緒に」の意味で扱うので、「同じ時」には「と同時に」を使わせると混乱が少なくなります。
関連する文型
学習項目 3 〜によって/〜により/〜による

意味・はたらき

ここでは、物事が広がった手段・きっかけ(「SNS によって広まった」)と、受身の文でだれがしたか(「若い店主によって始められた」)を表します。第5課の「原因」、第2課の「〜によって(さまざまだ)」と形は同じなので、前後の文から意味を決めさせます。手段は「〜で」でも言えますが、「によって」は改まった言い方で、ニュースや記事に多く出ます。「により」はさらに硬く、名詞を修飾するときは「〜による+N」(「SNS による宣伝」)になります。情報の出どころを言う「〜によると」とは別の形です。

接続

N+によって/N+により(文をつなぐ)/N+による+N(名詞を修飾する)

形
口コミによって広まったSNS により、一気に知られるようになった若者による投稿地元の人によって守られてきた店

導入

  • 広がり方の図を描く黒板の中央に「昔ながらの喫茶店」と書き、矢印で「SNS」「口コミ」「テレビ」と結ぶ図を描く。教師が「SNS で広がりました」と言ったあと、ニュースの口調で「SNS によって広がりました」と言い直す。次に「SNS による宣伝」と名詞につなげる形を図の下に書き、「によって・により=文につなぐ/による=名詞の前」と2つに分ける。

板書案

N + によって/により + 文(文をつなぐ)
N + による + N(名詞の前)
SNS によって 広まった。/SNS による 宣伝
〔赤〕受身の動作主:この店は 若い店主 によって 始められた。
〔青〕原因(第5課)・さまざま(第2課)/出どころは「によると」(別の形)

場面と発話(自作)

  • ニュースで、ある言葉が流行した経緯を伝える。この言葉は、動画サイトによって若者の間に広まりました。
  • 町の紹介記事で、古い祭りの歴史を書く。この祭りは、地元の人々によって百年以上受け継がれてきた。
  • 授業の発表で、流行の広がり方をまとめる。口コミによる人気が、テレビの取材につながりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、手段カード(SNS・口コミ・テレビ・雑誌)と結果カード(広まる・知られる・人気になる)を組み合わせて「〜によって〜」を言わせ、次に「〜による+N」に言い換えさせる。最後にニュースを聞いて、「によって」が手段・原因・受身の動作主のどれかを分けさせる。

  1. 口頭手段カード(SNS・口コミ・テレビ・雑誌)と結果カード(広まる・知られる・人気になる)を組み合わせて「〜によって〜」を言わせ、次に「〜による+N」(SNS による人気)に言い換えさせる。最後に「建てる・始める・発見する」の受身で動作主を言わせる。
  2. ペア「広がり方の図」。ペアに流行のカード(ある言葉・ある体操・ある食べ物など)を1枚渡し、A が紙に広がり方を矢印で描き、B がその図を見て「〜によって〜」で説明する。A は同じ内容を「〜による〜が〜」の形で言い直し、図を替えて交代する。
  3. 産出「流行の広がりレポート」。自分の国の流行を一つ選び、何によって・だれの間に広がったかを3文で発表する(宿題の作文の下ごしらえになる)。教師は、名詞の前で「による」になっているか、「によると」と混ざっていないか、生み出す動詞の受身の動作主に「に」を使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*SNS によってのブーム」と名詞の前に「によって」を置く。名詞の前は「による」と、2つに分けた板書で確かめる
  • 「*ニュースによって、あしたは雨が降るそうです」と、情報の出どころに「によって」を使う。伝聞の出どころは「〜によると」と、別の形として並べる
  • 作る・始める・発見するなど何かを生み出す動詞の受身で、「この店は若い店主に始められた」と「に」を使う。生み出す動詞の受身では動作主を「によって」で言うと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜によって/〜により/〜による(原因)(第5課)第5課の形は「台風によって電車が止まった」のように、よくない結果の原因を言います。この課は広がった手段と、受身の文の動作主です。形は同じなので、前の名詞が道具・方法か、人か、出来事かを見て意味を決めさせます。
  • 〜によって(さまざまだ)(第2課)第2課の形は「人によって考え方が違う」のように、違いが生まれる観点を言い、後ろに「違う・さまざまだ・変わる」が来ます。後ろの述語を見れば見分けられる、と3つの意味を表に並べておくと、聞き取りで迷いにくくなります。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 話題になっていることが広がっていく様子を表すことば・表現ニュースの中から、広がりの「始まり → 広がる → 定着する」の段階を表す表現を拾わせ、時間の矢印の上に並べます。「火がつく」のような比喩は、字のとおりの意味ではないことを確かめます。例:「SNS で火がつく」「口コミで広がる」「話題を呼ぶ」「若い世代の間で人気を集める」「一気に拡散する」「ブームとして定着しつつある」

4 こんなときどうする?

できること大切にしている物を修理店に持ち込み、直してほしい気持ちと受け入れられる条件を伝えて頼める。

場面

祖父からもらった古いカメラや、家族の思い出がある腕時計が壊れ、修理店に持ち込む場面です。客役には「物の由来・壊れた様子・どうしても直したい理由・出せる費用や待てる期間」を書いたロールカード、店員役には「部品がない・時間がかかる・費用が高い・見た目が少し変わる」などの事情カードを渡します。店員が難しい事情を出し、客が気持ちを伝えて頼み直す、というやり取りにします。

  • 客:すみません、このカメラ、シャッターが下りなくなってしまって。
  • 店員:拝見します。……かなり古い型ですね。部品が残っているかどうか。
  • 客:祖父が若いころに使っていたものなんです。形見だけに、どうしても直したくて。
  • 店員:部品を探すとなると、一か月以上かかるかもしれませんが。
  • 客:時間がかかるとしても構いません。なんとか直していただけないでしょうか。
  • 店員:わかりました。お見積もりを出してから、ご連絡しますね。
学習項目 1 〜だけに

意味・はたらき

「Aだけに、B」で、Aという事情があるのだから、それにふさわしく/その分いっそうBだということを表します。修理を頼む場面では、物への思い入れの強さを伝えるのに使えます(「父の形見だけに、捨てられない」)。ただの理由を言う「〜から」「〜ので」と違い、「Aなのだから当然・よけいに」という気持ちが入ります。第10課の「〜だけあって」はほめる・感心するときに使いますが、「〜だけに」は良い結果にも残念な結果にも使えます(「期待していただけに、がっかりした」)。

接続

V・イA普通形+だけに/ナAな+だけに/N・Nである+だけに

形
祖父の形見だけに、どうしても直したい長く使ってきただけに、愛着がある期待していただけに、がっかりした人気があるだけに、予約が取りにくい

導入

  • 思い出の品を見せる教師が自分の古いペンケースなど思い出のある物を見せ、「中学のときから二十年使っています」と由来を話す。「だから、壊れたら、ふつうの物よりもっと悲しいです」と言ってから、「二十年使ってきただけに、壊れたらとても悲しい」と1文にする。板書では「A(事情)→ だから当然・その分いっそう → B」と矢印を描く。

板書案

A だけに、B(A なのだから・その分いっそう B)
祖父の形見 だけに、どうしても直したい。
〔赤〕V・イA普通形/ナAな/N + だけに
〔青〕良い結果にも残念な結果にも:期待していただけに、がっかりした。
だけあって(第10課)=ほめる・感心するときだけ

場面と発話(自作)

  • 修理店で、思い出のある時計を直してほしいと伝える。結婚の記念にもらった時計だけに、また使えるようにしたいんです。
  • 楽しみにしていたイベントが中止になった。半年前から楽しみにしていただけに、本当に残念です。
  • 友達に、人気のラーメン店に行った話をする。テレビで紹介されただけに、平日でも行列だったよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が事情カード(「十年使っている」「手作り」「祖母にもらった」)を出し、学習者が「〜だけに」で思い入れの文を作る。次に残念な結果のカード(「期待していた」「何か月も練習した」)で「〜だけに、残念だ」を作らせ、良い結果にも残念な結果にも使えることを確かめる。最後に ST4 のロールプレイで、客役が1回使う。

  1. 口頭教師が事情カード(「十年使っている」「手作り」「祖母にもらった」「有名な店のケーキ」)を出し、学習者が「〜だけに」で文を作る。次に残念な結果のカード(「期待していた」「何か月も練習した」)で「〜だけに、残念だ」を作り、両方の結果に使えることを確かめる。
  2. ペア「思い出の品インタビュー」。A が自分の大切な物(実物か写真)を見せ、B が「どうしてそんなに大切なんですか」と聞く。A は「〜だけに、〜」で答え、B は「それは〜ですね」と気持ちを受けて返す。交代する。
  3. 産出「修理店ロールプレイ(前半)」。ST4 のロールカードで、客役が物の由来と思い入れを「〜だけに」で伝え、店員役が状態を確かめる。教師は、イAのあとに「の」を入れていないか、ただの理由に使っていないか、「どうしても直したい」のような気持ちの後半が続いているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*古いのだけに」とイAのあとに「の」を入れる。イAには直接、ナAは「な」でつなぐと表で確かめる
  • 「雨だけに、傘を持っていく」のように、ただの理由に使う。「その事情だから当然・よけいに」という気持ちがあるときだけ使い、ただの理由は「〜から」と言い分けさせる
  • 「〜だけあって」と同じだと思い、残念なことには使えないと考える。「期待していただけに、がっかりした」の例で、「だけに」は残念な結果にも使えると見せる

既習の文型との違い

  • 〜だけあって/〜だけのことはある(第10課)「だけあって」は「プロだけあって、仕上がりがきれいだ」のように、評価・感心するときにだけ使います。「だけに」はそれに加えて、「期待していただけに、がっかりした」のような残念な結果にも使えます。「期待していただけあって、がっかりした」は意味がかみ合わない、と2つを並べて見せます。
関連する文型
学習項目 2 〜としても

意味・はたらき

「Aとしても、B」で、仮にAだと考えても、Bは変わらないことを表します。修理を頼む場面では、店員が出した難しい条件(時間・費用)を受け入れたうえで、それでも頼みたいという気持ちを伝えます(「時間がかかるとしても、お願いしたい」)。初級の「〜ても」に「仮にそうだと考えて」という仮定の気持ちが強く加わった形で、事実よりも想定を言うときに使います。第11課の「〜にしても」もほぼ同じ意味で使えますが、「にしても」は会話寄りの言い方です。第6課の「Nとして」(立場)に「も」がついた「Nとしても」(「趣味としても楽しめる」)とは意味が違います。

接続

V・イA普通形+としても/ナA・N+だ+としても

形
時間がかかるとしても、直してほしい費用が高いとしても、構いません元どおりにならないとしても、使える状態にしたい無理だとしても、一度見ていただきたい

導入

  • 店員の条件を受けて答える教師が店員役になり「一か月かかりますよ」「三万円かかりますよ」と条件を出し、学習者に「それでもいいですか」と聞いて「いいです」を引き出す。それを「一か月かかるとしても、お願いします」と言い直して板書する。「〜ても」との違いとして、「としても」には「もしそうだと考えても」という仮定の気持ちが強いと、前に「仮に」を足して読ませる。

板書案

A としても、B(仮に A でも、B は変わらない)
時間がかかる としても、お願いします。
〔赤〕V・イA普通形 + としても ナA・N + だ + としても
〔青〕Nとして(第6課)+も = 立場:趣味としても楽しめる
店員:一か月かかります → 客:一か月かかるとしても、構いません。

場面と発話(自作)

  • 修理店で、見積もりの金額を聞いて答える。少し高くなるとしても、ぜひお願いしたいです。
  • 友達に、行ってみたいイベントの話をする。チケットが取れなかったとしても、会場の近くまでは行ってみたい。
  • 会議で、新しい企画について意見を言う。今年は準備が間に合わないとしても、来年に向けて始めるべきだと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、店員役の条件カード(時間・費用・部品・見た目が変わる)を出し、客役が「〜としても、〜」で受けてから頼む。ナA・Nのカード(無理・難しい作業)を混ぜて「だとしても」を練習する。最後に ST4 のロールプレイの頼み直す部分で使わせる。

  1. 口頭教師が店員役になって条件カード(「一か月かかる」「三万円かかる」「部品が新しい物になる」「見た目が少し変わる」)を出し、学習者が客役で「〜としても、〜」と受けてから頼む。ナA・N のカード(「無理」「難しい作業」)を混ぜて「だとしても」も言わせる。
  2. ペア「条件のかけ合い」。A(店員)が条件を一つずつ重ね、B(客)は「〜としても、構いません/お願いしたいです」で受け入れる。三つ目の条件だけは受け入れられないことにして、B は「〜となると、少し考えさせてください」と答える。役を交代する。
  3. 産出「修理店ロールプレイ(後半)」。ST4 のロールカード全体を通して、客役が店員の条件を「としても」で受け、頼み直して見積もりの連絡を約束してもらうまで行う。教師は、「だ」の入る位置、前半だけで止めていないか、「Nとしても」(立場)と取り違えていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*高いだとしても」とイAに「だ」を入れる。イA・Vは普通形にそのまま、ナA・Nは「だ」を入れると表で確かめる
  • 「Nとしても」(立場)と混同し、「留学生としても」を「仮に留学生だとしても」の意味で読む。名詞の直後の「としても」は立場、「だとしても」は仮定と、例を並べて見分けさせる
  • 「時間がかかるとしても……」と前半だけで止め、頼みが伝わらない。修理の場面では「〜としても、〜していただけますか/構いません」まで言い切らせる

既習の文型との違い

  • 〜ても(初級第15課)「ても」は「雨が降っても行く」のように、実際にそうなる場合にも仮の場合にも使う逆接です。「としても」は「仮にそうだと考えても」という仮定の気持ちを強めた形で、まだ決まっていないことに使います。すでに事実になっていることには「ても」のほうが自然です。
  • 〜にしても/〜にしろ/〜にせよ(第11課)「にしても」は「としても」とほぼ同じ意味で使え、会話でもよく使います。「にしろ・にせよ」はさらに硬い言い方です。修理を頼む場面では、店員への改まった返事として「としても」が使いやすいと伝えます。
  • 〜として(第6課)「留学生としても」の「としても」は、立場を表す「として」に「も」がついたもので、仮定ではありません。名詞の直後に来ていれば立場、「だとしても」の形なら仮定、と例を並べて見分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 実現したい気持ちを伝えて依頼するときに使う表現頼みにくいことを頼むときの流れ(事情を話す → 気持ちを伝える → 頼む → 条件を受け入れる)に分けて表現を並べます。「なんとか」「どうしても」は気持ちの強さを、「無理を承知で」は相手の負担をわかっていることを示すと、はたらきも添えます。例:「思い出のある物なので、どうしても直したくて」「なんとか直していただけないでしょうか」「無理を承知でお願いするんですが」「できるだけ元の状態に近づけていただけると助かります」「時間がかかっても構いません」「お見積もりをうかがってから決めてもいいですか」

5 耳でキャッチ

できることイベント会場からのリポートを聞いて、催しの内容や会場の様子をつかめる。

場面

地域のニュースや情報番組で、リポーターが会場から祭りやイベントの様子を伝える場面です。教室では、商店街の「レトロまつり」の現地リポートを教師が1分半ほどで自作し、会場の写真(屋台・昔のおもちゃ・浴衣の人)と一緒に聞かせます。聞く前に「開催期間・催し・どんな人が来ているか・会場の雰囲気」のメモ欄を配っておきます。

  • リポーター:こちら、駅前の商店街に来ています。きょうからレトロまつりが始まりました。
  • リポーター:開幕に先立ち、けさは地元の小学生による行進が行われました。
  • リポーター:会場には、昔のおもちゃや駄菓子の店がずらりと並んでいます。
  • リポーター:お客さんは、どちらかというと若い家族連れが多いようですね。
  • 来場者:自分が小さいころの遊びを、子どもに見せたくて来ました。
  • リポーター:まつりはあさってまでです。以上、会場からお伝えしました。
学習項目 1 〜に先立って/〜に先立ち

意味・はたらき

「Aに先立って、B」で、大事な催しや行事Aの前に、その準備や関係のあるBを行うことを表します。イベントのリポートやお知らせで、開幕・発売・公開などの前に行われたことを伝えるのによく出ます。「〜前に」はどんなことにも使えますが、「に先立って」は公式の行事や改まった場面に使う硬い言い方で、日常の小さなこと(「寝るに先立って歯をみがく」)には使いません。「に先立ち」はさらに硬く、名詞を修飾するときは「〜に先立つ+N」(「開幕に先立つ記者会見」)になります。

接続

N+に先立って/に先立ち・V辞書形+に先立って/に先立ち/N+に先立つ+N

形
開幕に先立って、式典が行われた映画の公開に先立ち、試写会が開かれた工事を始めるに先立って、説明会を開く大会に先立つ練習試合

導入

  • 行事の予定表で順番を見せる黒板に架空のまつりの1日目の予定表(9時 開幕式/10時 開幕)を書き、教師が「10時の開幕の前に、開幕式があります」と言う。それをリポートの口調で「開幕に先立って、開幕式が行われます」と言い直し、「〜前に=何にでも」「〜に先立って=大事な行事の前」と書き分ける。

板書案

N・V辞書形 + に先立って/に先立ち
N + に先立つ + N
開幕 に先立って、式典が行われた。
〔赤〕「に」を使う(*開幕を先立って)
〔青〕〜前に=何にでも/〜に先立って=大事な行事の前
予定表:9:00 開幕式 → 10:00 開幕(先立つほうが前)

場面と発話(自作)

  • ニュースで、新しい駅の開業前の様子を伝える。開業に先立ち、地元の人を招いた見学会が開かれました。
  • 会社の会議で、新商品の発売の予定を説明する。発売に先立って、来月から店頭で試食会を行います。
  • 大会の会場アナウンスで、始まる前の予定を知らせる。試合開始に先立ちまして、選手の紹介を行います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、行事カード(開幕・発売・公開・開業)と準備カード(式典・試写会・説明会・見学会)を組み合わせて「〜に先立って〜が行われた」を言わせる。次に「〜前に」と比べるため、日常のこと(食事・出かける)のカードを混ぜ、どちらが自然かを判断させる。リポートの音声では、何が先で何があとかをメモさせる。

  1. 口頭行事カード(開幕・発売・公開・開業)と準備カード(式典・試写会・説明会・見学会)を組み合わせて「〜に先立って〜が行われた」を言わせる。日常のカード(食事・出かける・寝る)を混ぜ、「〜前に」と「〜に先立って」のどちらが自然かを手を挙げて答えさせる。
  2. ペア「イベントの進行表」。A には時刻つきの架空のイベントの進行表、B には空欄のある表を渡す(情報差)。A が「〜に先立って、〜が行われます」で説明し、B は聞いて表を埋め、最後に2人で表を見比べる。別のイベントで交代する。
  3. 産出「開会アナウンス」。クラスで行う架空の催し(発表会・料理大会など)の開会アナウンスを作り、「〜に先立ちまして、〜」を入れて読み上げる。教師は、助詞が「に」になっているか、日常の小さなことに使っていないか、前後の順番を逆に言っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*開幕を先立って」「*開幕の先立って」と助詞を誤る。「Nに先立って」の「に」を赤で板書する
  • 「出かけるに先立って、かぎを確かめた」のように日常の小さなことに使う。改まった行事にだけ使い、日常のことは「〜前に」と言い分けさせる
  • 「〜に先立って」を「〜のあとで」の意味に取り、リポートの順番を逆に聞き取る。予定表の矢印で、先立つほうが前だと確かめる

既習の文型との違い

  • Vる前に、〜/Nの前に、〜/[時間]前に、〜(初級第12課)「前に」はどんなことにも使えますが、「に先立って」は開幕・発売のような公式の行事や改まった場面に使います。「寝る前に歯をみがく」は自然でも、「寝るに先立って」は大げさです。また名詞では「開幕の前に」と「の」が要るのに対して、「開幕に先立って」は「に」でつながります。
関連する文型
学習項目 2 どちらかというと/どちらかといえば

意味・はたらき

二つのうちはっきりどちらとは言えないが、比べればこちらに近いという、やわらかい判断を表します。リポートでは「お客さんはどちらかというと若い人が多い」のように、全体の傾向を言い切りすぎずに伝えるのに使います。会話でも「どちらかといえば甘い物が好き」のように、自分の好みを控えめに言うときに便利です。「むしろ」は予想と反対のほうをはっきり言う語、「比較的」は他と比べた程度を言う語で、「どちらかというと」は二つを比べて少しこちら寄りという点が違います。「といえば」のほうがやや改まった響きです。

接続

文の初めや述語の前に置く(どちらかというと+N・A・V の文)

形
どちらかというと、家族連れが多いどちらかといえば、夜のほうが混んでいますわたしはどちらかというと、家で過ごすのが好きです

導入

  • 好みの線の上に立たせる黒板の左端に「コーヒー」、右端に「紅茶」と書いて線で結び、学習者に自分の好みの位置にしるしをつけさせる。真ん中より少し左にしるしをつけた学習者に「どちらが好きですか」と聞き、教師が「どちらかというと、コーヒーですね」と代わりに答えてみせる。端に近い人は「コーヒーが好きです」、真ん中に近い人は「どちらかというと」と、線の上で使い分けを見せる。

板書案

どちらかというと/どちらかといえば + 文
コーヒー ●――――――――― 紅茶
(真ん中より少しコーヒー寄り)→ どちらかというと、コーヒーです。
〔赤〕形は2つだけ(というと/といえば)
〔青〕むしろ=予想と反対のほう 比較的=程度

場面と発話(自作)

  • イベントのリポートで、客層を伝える。どちらかといえば、地元の人より観光客が多い印象です。
  • 友達に、休みの日の過ごし方を聞かれる。どちらかというと、家でのんびりしたいタイプかな。
  • 職場の打ち合わせで、二つの案のどちらがよいか意見を聞かれる。どちらかといえば、B案のほうが進めやすいと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、二択の質問カード(「山と海」「朝型と夜型」「にぎやかな店と静かな店」)を出し、線の上の位置に合わせて「〜が好きです」か「どちらかというと〜です」で答えさせる。リポートの音声では「どちらかというと」のあとに何が来たかを聞き取り、メモ欄の客層に書かせる。

  1. 口頭二択の質問カード(「山と海」「朝型と夜型」「にぎやかな店と静かな店」「映画館と配信」)を出し、黒板の線の上の位置に合わせて、はっきり好きなら「〜が好きです」、少し寄っているだけなら「どちらかというと〜です」で答えさせる。
  2. ペア「好みの線インタビュー」。A が二択を3つ聞き、B は紙の線の上を指しながら答える。A は線に B の位置を書き込み、「B さんはどちらかというと〜派です」とクラスに報告する。交代する。
  3. 産出「客層リポート」。ペアで集めたクラスの好みの結果を使い、教室をイベント会場に見立てて「会場のお客さんは、どちらかといえば〜が多いようです」と ST5 のリポートの型で30秒伝える。教師は、形が崩れていないか、はっきり決まったことに使っていないか、どちら寄りかまで言い切っているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*どちらかというのは」「*どちらかといって」と形を崩す。決まった形として「というと/といえば」の2つだけ練習する
  • 「どちらかというと、きょうは日曜日です」のように、はっきり決まっていることにも使う。比べて少しこちらに寄っていることにだけ使うと、線の図で確かめる
  • 質問に「どちらかというと……」とだけ言って止め、どちらなのかが伝わらない。誤りではないが、「どちらかというと、〜のほうです」まで言い切らせる

既習の文型との違い

  • 〜と〜とどちらがAですか/〜のほうがAです(初級第6課)初級の比較は「コーヒーのほうが好きです」とはっきり言う形です。「どちらかというと」は差が小さいことを示して答えをやわらげます。強い好みなら「〜のほうが」、迷うけれど少し寄るなら「どちらかというと〜のほうが」と、線の位置で使い分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • イベントの現地リポートでよく聞く表現現地リポートには「場所の紹介 → 様子 → 人の声 → 締め」の決まった流れがあるので、その順に表現を並べて、聞く前に耳を慣らします。「〜ています」「〜が行われています」のように、いまそこで起きていることを伝える形が多いことにも気づかせます。例:「こちら、〜に来ています」「会場は大勢の人でにぎわっています」「ご覧ください、〜が並んでいます」「〜が行われています」「会場は熱気に包まれています」「以上、〜からお伝えしました」

語彙の扱い

この課の語は、流行や話題を表す語(ブーム・話題・口コミ・拡散・人気を集める)、作品紹介の語(あらすじ・主人公・見どころ・結末)、修理の語(見積もり・部品・形見・愛着)、イベントの語(開幕・会場・来場者・客層)のかたまりに分かれます。流行を扱う課なので、教師が用意した素材の語よりも、学習者が実際に見聞きしている流行の語を優先して取り上げます。カタカナ語やネットの言い方は移り変わりが速いので、全員が覚える語と、話題として知っておけばよい語を分けて示します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • はまる(はまる) ある趣味や物事に夢中になって、やめられなくなることです。くだけた話し言葉です。 〜にはまる・すっかり〜
    休み時間に、友達に最近の趣味を聞かれる。
    最近、パズルゲームにはまっていて、毎晩遅くまでやってるんだ。
  • 口コミ(くちこみ) 使った人や行った人が、まわりの人やネットで評判を伝えることです。 〜で広がる・〜を見る・いい〜
    新しくできたパン屋が、なぜか毎日混んでいる。
    宣伝はしていないのに、口コミで客が増えたそうです。
  • 拡散する(かくさんする) 情報や写真が、ネットなどを通して一気に多くの人に広がることです。 SNS で〜・情報が〜
    ニュースで、ある動画が話題になったことを伝える。
    投稿された動画が拡散し、店に問い合わせが相次ぎました。
  • ブーム(ブーム) ある物事が、一時的に多くの人の間で流行することです。 〜になる・〜が去る・〜に乗る
    友達と、数年前に流行った飲み物の話をする。
    あのブームのとき、どの店にも行列ができていたよね。
  • 定着する(ていちゃくする) 一時の流行で終わらず、生活や社会の中にずっと残るようになることです。 習慣として〜・すっかり〜
    レポートに、ある流行のその後を書く。
    始めは一時の流行だったが、いまでは秋の行事として定着している。
  • あらすじ(あらすじ) 映画や小説などの話の流れを、短くまとめたものです。 〜を話す・簡単な〜
    友達に、見てほしい映画を勧める。
    あらすじだけ言うと、記憶をなくした男が自分の家族を探す話なんだ。
  • 見どころ(みどころ) 作品や場所の中で、特に見る価値があるところです。 〜は〜だ・最大の〜
    作品紹介の発表で、いちばん伝えたい場面を言う。
    この映画の見どころは、何といっても最後の十分間です。
  • 形見(かたみ) 亡くなった人が残した物で、その人を思い出す大切な物です。 祖父の〜・〜の時計
    修理店で、古い腕時計を見せる。
    祖母の形見なので、できれば元の形のまま直したいんです。
  • 愛着(あいちゃく) 長く使ったり大事にしたりして、その物から離れたくないと思う気持ちです。 〜がある・〜がわく
    同僚に、古いかばんをまだ使っている理由を話す。
    大学のときから使っているので、愛着があって捨てられないんです。
  • 見積もり(みつもり) 修理や工事などに、どのくらいのお金や時間がかかるかを前もって計算したものです。 〜を出す・〜をとる・お〜
    修理店で、費用を先に知りたいと伝える。
    お見積もりをいただいてから、お願いするかどうか決めてもいいですか。
  • 開幕(かいまく) 祭りや大会、展示会などの催しが始まることです。 〜する・〜に先立つ・〜式
    地域のニュースで、祭りの初日の様子を伝える。
    きょう開幕した花火大会には、朝から大勢の人が集まりました。
  • 客層(きゃくそう) 店や催しに来る客を、年齢・性別などのまとまりで見たものです。 〜が広い・若い〜
    イベントのリポートで、来ている人の様子を伝える。
    家族連れから年配の夫婦まで、客層がとても広いのが特徴です。

宿題と次のコマ

宿題は、自分が気になっている流行を一つ選び、「何が・だれの間で・どう広がっているか」を、この課の形(〜のみならず・〜によって・〜と同時に など)を2つ以上使って200字ほどで書くこと。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、「日本に来て、自分の国と違うと驚いたこと」を一人ずつ聞いてから、第14課「カルチャーショック」の最初の「見つけた!」(自分と違う習慣についての投書を読む)に入ります。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第13課「トレンドに乗ってつながる」は何コマで終わりますか?

    90分なら4コマが目安です。1コマ目に導入と「見つけた!」、2コマ目に「伝えてみよう」と1つ目の「耳でキャッチ」の前半、3コマ目に「耳でキャッチ」の残りと「こんなときどうする?」、4コマ目に2つ目の「耳でキャッチ」と課のまとめを置きます。作品紹介の発表に時間がかかるクラスでは、発表を次のコマの最初に回してもかまいません。

  • この課の「〜一方で」と第12課の「〜一方だ」は、どう教え分ければいいですか?

    文のどこに来るかで分けるのがいちばん早い方法です。「一方だ」は文の終わりで変化が進むばかりであること、「一方で」は文の途中で同じ物事の二つの面を並べ、後ろにもう一つの文が続きます。導入で第12課の例を一つ思い出させてから、この課の例を並べて板書し、「一方で」のあとに枠を書いて二つ目の面を入れさせると混同が減ります。

  • 「〜のみならず」「〜に先立って」のような硬い形は、会話でも練習させるべきですか?

    この課の硬い形は、まずニュースやリポートを聞いて・読んで見分けることが目標です。産出させるときは、ニュース原稿や開会アナウンスのような書き言葉・改まった場面にとどめ、友達との会話では「だけじゃなくて」「〜前に」に言い換えさせます。会話で使っても誤りではありませんが、硬く聞こえることは伝えておきます。

  • 作品紹介の「考えさせられる」は、使役受身のどこから説明すればいいですか?

    初中級で習った「いやなことをさせられた」の意味を一度思い出させてから、「作品がわたしを考えさせた」という使役の文を作り、それを「わたし」の側から言い直す順が分かりやすいです。そのうえで、この使い方は作品の力で気持ちが動いたことを言い、ほめ言葉になると確かめます。活用の練習は「考える・驚く・泣く・笑う・感動する」に絞ると負担が軽くなります。

  • 「〜によって」がいくつもの意味で出てきて学習者が混乱します。どう整理しますか?

    第2課(さまざまだ)・第5課(原因)・この課(手段・受身の動作主)の例を一つずつ表に並べ、後ろの述語と前の名詞で見分けさせます。後ろが「違う・さまざまだ」なら観点、よくない出来事なら原因、「広まる・知られる」なら手段、受身の動詞で前が人なら動作主です。情報の出どころは「〜によると」という別の形として、同じ表の外に書いておきます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。