日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第16課「学校生活」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること5つ(耳でキャッチ・伝えてみよう・見つけた!・こんなときどうする?・見つけた!)

国や地域によって違う学校生活や、受験・教育についてよく話題になることを取り上げ、自分の国の学校や自分の経験と比べながら、意見を言えるようになる課です。1 で日本人が中学・高校時代を懐かしむ話を聞き、2 で学校生活をめぐるネットの書き込みに自分の意見を言い、3 で入試の日の記事を読み、4 で受験に迷う友達を自分の経験を交えて励まし、5 で教育の新しい考え方の解説を読みます。思い出(過去)→ 意見 → 受験(いま)→ 新しい学び(これから)と時間の流れでつながっているので、どのできることでも「自分の国ではどうだったか」を一言添えさせると、課の目標である比較につながります。第15課でネットの情報との付き合い方を扱ったことを受け、2 の書き込みはその読み方の続きとして使えます。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目13時間90分×3コマ場面5

この課のねらい(Can-do)

  • 日本人が中学・高校時代の思い出を話すのを聞いて、部活や行事など日本の学校生活の様子と、話し手の懐かしむ気持ちを聞き取れる
  • 学校生活についてのネットの書き込みを読み、ほかの人の意見を一部認めながら、自分の国の例を挙げて意見を言える
  • 入試や受験を伝える記事を読んで、いつ・どこで・何があったか、例年と比べて何が違ったかを読み取れる
  • 受験や進学で迷っている友達に、自分の経験を話しながら、やってみようと思えるように背中を押せる
  • 教育について話題になっている新しい考え方の解説を読んで、どんな考え方か、従来とどこが違うか、期待と課題は何かを読み取れる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入10分「中学や高校の思い出で、いちばん覚えていることは何ですか」と聞き、部活・行事・制服・校則・試験などを出させて、国ごとの違いを黒板の表にまとめる。アニメやドラマで見た日本の学校のイメージも出させ、この課で本当はどうなのかを確かめていくと伝える
1 耳でキャッチ40分日本人が高校時代を振り返るインタビュー(教師が読む自作の原稿)を2回聞く。1回目は話題(部活・勉強・行事)、2回目はその人の得意だったことと懐かしんでいることをメモ →「〜ものだ/〜もんだ」「〜にかけては」「〜はともかく」を取り出す → 学習者が自分の中学・高校時代を一言ずつ話す
2 伝えてみよう40分制服についての自作のネットの書き込み(賛成と反対)を読み、意見の幅を「〜も〜ば〜も」でまとめる。そのあと「〜ないことはない」で反対側の意見を一部認めてから、自分の国の例を挙げて自分の意見を1分で述べる
3 見つけた!45分入試の日の自作の記事を読み、「いつ・どこで・何が・例年と違う点・受験生の声」を表にする。「〜にわたって」「〜きる/〜きれない」「〜にもかかわらず」を見つけて、会話ならどう言うかに言い換える。最後に自分の国の受験の時期・方法と比べて話す
4 こんなときどうする?45分大学院の受験を迷っている友達を励ますロールプレイ。友達役の不安(「受けるとなると……」)に、「〜からいうと」で根拠を、「〜次第で」で結果は変えられることを伝え、自分の経験を一つ入れて後押しする。友達役と励ます役を交代する
5 見つけた!55分教育の新しい考え方(探究学習)を説明する自作の解説を読み、「定義・従来との違い・期待されること・課題」の4つに分ける。「〜ぬく」「〜つつ」を「〜きる」「〜ながら」と比べて確かめ、自分の国の学校で取り入れられそうかを話し合う
課のまとめ35分「理想の学校」をテーマに、グループで自分の国と日本の学校のよいところを一つずつ出し合い、2分で発表する。思い出(〜たものだ)・意見(〜ないことはないが)・これからの学び(〜つつ・〜ぬく)のうち2つ以上を入れることを条件にする

1 耳でキャッチ

できること日本人が中学・高校時代の思い出を話すのを聞いて、部活や行事など日本の学校生活の様子と、話し手の気持ちを聞き取れる。

場面

ラジオ番組やインタビュー動画で、日本人のゲストが高校時代を振り返って話している場面です。教室では教師が自作の原稿を、司会とゲストの2役で読み上げるか、録音して流します。メモの紙は「話題(部活・勉強・行事)」「得意だったこと」「懐かしんでいること」の3欄に分けて配っておきます。

  • 司会:高校時代は、どんな生徒でしたか。
  • ゲスト:勉強はともかく、部活は一生懸命でしたね。サッカー部だったんです。
  • ゲスト:毎朝6時に起きて、朝練に行ったもんです。
  • 司会:それは大変でしたね。
  • ゲスト:ええ。でも、走ることにかけては、チームの誰にも負けませんでした。
  • ゲスト:試合に負けた日は、帰り道にみんなでよくラーメンを食べたもんです。今思えば、懐かしいですね。
学習項目 1 〜ものだ/〜もんだ

意味・はたらき

「Vたものだ」は、過去によくくり返していたことを、懐かしい気持ちをこめて思い出す言い方です。「よく」「毎日のように」「子どものころは」と一緒に使うことが多く、話し言葉では「〜たもんだ」「〜たもんです」になります。初中級の「Vていました」(過去の習慣)は事実をそのまま述べるだけですが、「〜たものだ」には「あのころは〜だったなあ」という話し手の感慨が入ります。一度だけの出来事や、ごく最近のことには使いません。第5課の「V辞書形+ものだ」(当然・一般的な傾向)とは前の形が違うので、タ形かどうかで見分けさせます。

接続

Vた形+ものだ(話し言葉は「〜たもんだ」)。過去の状態は イAかった・ナAだった+ものだ

形
部活のあと、よく友達とラーメンを食べたものだ毎朝、駅まで走ったもんですあのころは毎日が楽しかったものだ(第5課)学生は勉強するものだ=当然

導入

  • 事実の文を、懐かしむ文に言い直す教師が高校生の絵(または自分の昔の写真)を見せ、「高校のとき、毎日部活で走っていました」と事実だけを言う。次に遠くを見るような表情で「毎日、暗くなるまで走ったもんです。懐かしいなあ」と言い直す。板書は2行を並べて「ていました=事実」「たものだ=懐かしい気持ち」と書き分け、「よく」「毎日のように」を枠で囲む。

板書案

[よく/毎日のように/〜ころは]+Vた+ものだ(話すとき:〜たもんだ)
高校のころは、毎日のように部室に集まったものだ。
〔赤〕Vた 〔青〕よく・毎日のように・〜ころは に波線
〔緑〕V辞書形+ものだ(第5課・当然)は右の欄に分けて書く
吹き出し「あのころは〜だったなあ」=懐かしい気持ち

場面と発話(自作)

  • 同窓会で、昔の先生と高校時代を振り返っている。先生には、よく職員室に呼ばれたものです。
  • 祖父が孫に、自分の子どものころの話をしている。昔は、この川で毎日のように泳いだもんだよ。
  • 留学生が友達に、国の高校時代のことを話している。試験の前は、友達の家に集まって朝まで勉強したもんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、昔の生活の絵カード(部活・自転車通学・放課後の買い食い・夜遅くまでの電話)と「よく」「毎日のように」のカードを組み合わせ、「〜たものです」を言わせる。次に教師が「Vていました」の文を言い、学習者が懐かしい気持ちをこめて「〜たもんです」に言い換える。最後にペアで「中学・高校のころよくしたこと」を3つずつ話し合う。

  1. 口頭昔の習慣の絵カードを見せ、全体→個人で「〜たものです」と言わせる。キューの例:「自転車・駅まで・毎朝」→「毎朝、駅まで自転車で通ったものです」、「部活・暗くなるまで」→「暗くなるまで練習したものです」、「友達・電話・夜遅くまで」→「夜遅くまで友達と電話したものです」。次に教師が「Vていました」の文を言い、学習者が文末を下げた懐かしい調子の「〜たもんです」に言い換える。
  2. ペアA は「中学時代」、B は「高校時代」のカードを持ち、よくしたことを3つずつメモする。A が「〜のころは、よく〜たもんだよ」と話し、B は「へえ、懐かしいね。私の国では〜」と自分の国の例で返す。1つ話すごとに役を替え、最後に相手との違いを一つ言う。
  3. 産出「あのころ思い出トーク」:自分の中学・高校時代によくしたことを、写真か絵を1枚見せながら1分で話す。「〜たものだ」を2回以上入れ、1回だけの出来事は「〜たことがある」で言い分ける。教師は前がタ形になっているか、1回きりの出来事やごく最近のことに使っていないか、話す場面で「もんだ」が自然に出ているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「去年、一度だけ京都に行ったものです」と一度だけの出来事に使う。回想の「ものだ」はくり返していたことに使うので合わない。「よく」「毎日のように」が入るかどうかで確かめさせる
  • 「先週はよく図書館に行ったものです」と最近のことに使う。形は作れても、懐かしむほど昔のことではないので不自然に聞こえる。「先週はよく図書館に行きました」でよい
  • 「昔はよく泳ぐものだ」と辞書形にしてしまい、第5課の当然の意味になって言いたいことが伝わらない。思い出なら必ずタ形、と板書の2つの形を並べて確かめる
  • 目上の人との改まった場で「〜たもんです」を使い、くだけて聞こえる。改まった場では「〜たものです」に

既習の文型との違い

  • 〜もんだ/〜ものだ(中級第7課)第7課でも、昔をなつかしんで語る形として出ており、意味は同じです。第7課は年配の人の昔話を聞く側でしたが、この課では学習者が自分の学校時代を語る側に回るので、言う練習を中心にします。忘れている学習者には「昔の話を聞く(第7課)→自分の思い出を話す(第16課)」と役を替えて復習させます。
  • 〜ものだ/〜ものではない(当然)(中級第5課)前が辞書形なら「人の話は最後まで聞くものだ」のような当然・忠告、前がタ形なら回想です。学習者が「子どものころは、よく川で泳ぐものだ」と言ったら、過去の思い出なのでタ形に直し、板書の左右の欄で二つを見比べさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜にかけては

意味・はたらき

「Nにかけては」は、ある分野や能力を取り上げて、その点では誰にも負けない・とても優れていると評価する言い方です。後ろには「誰にも負けない」「自信がある」「〜がいちばんだ」のようなプラスの評価が来ます。「Nについては」「Nに関しては」はただ話題を示すだけで、後ろに何が来てもよいのに対して、「にかけては」は能力や腕前をほめるときに限られます。第1課の「〜から〜にかけて」(時間や場所の範囲)とは別の表現です。やや改まった言い方で、会話では自分や人の得意なことを話すときに使います。

接続

N+にかけては(動詞は「Vこと+にかけては」)

形
数学にかけては、クラスで彼女にかなう人はいなかった足の速さにかけては、自信がある人を笑わせることにかけては、兄がいちばんだ

導入

  • クラスの「得意なこと」を紹介し合う学習者に「クラスで歌がいちばん上手な人は?」「料理が得意な人は?」と聞いて名前を挙げさせ、教師が「歌にかけては、〇〇さんがいちばんですね」と言い換える。板書では「[分野・能力]にかけては + 誰にも負けない/自信がある」と後ろの部分を必ず一緒に書き、プラスの評価だけが来ることを+の印で示す。

板書案

N(分野・能力)+にかけては、[プラスの評価]
後ろ:誰にも負けない/自信がある/〜がいちばんだ
暗記にかけては、クラスの誰にも負けません。
〔赤〕にかけては 〔青〕後ろは「ほめる」だけ(「苦手だ」は来ない)
〔緑〕〜から〜にかけて(第1課)=時間・場所の範囲。別の表現

場面と発話(自作)

  • インタビューで、元野球部の人が高校時代の自分を語る。打つのは下手でしたが、走ることにかけては誰にも負けませんでした。
  • アルバイトの面接で、自分の強みを聞かれる。人の顔と名前を覚えることにかけては、自信があります。
  • 部活の先輩が、新しく入った部員にメンバーを紹介する。山本さんは、ボールのコントロールにかけては、うちの部でいちばんだよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、分野のカード(料理・暗記・ゲーム・早起き・道を覚えること)を引き、「〜にかけては、誰にも負けません」「〜にかけては、〜さんがいちばんです」を言わせる。次に ST1 の聞き取りのあと、クラスメートの得意なことを紹介し合い、紹介された人が「いえいえ、そんな」と謙遜して返すところまでやる。

  1. 口頭分野のカードを引かせ、全体→個人で言わせる。キューの例:「料理」→「料理にかけては、誰にも負けません」、「道を覚えること」→「道を覚えることにかけては、自信があります」、「早起き・田中さん」→「早起きにかけては、田中さんがいちばんです」。途中で「数学・苦手」のようなマイナスのカードを混ぜ、「にかけては」が使えないことを全体で確かめる。
  2. ペアA は友達や家族の得意なことを3つ書いたメモを持ち、B は聞き手。A が「〜さんは、〜にかけてはすごいんですよ」と紹介し、B が「へえ、どのくらい?」と一つ質問する。紹介された人の役は「いえいえ、そんな」と謙遜して返す。3分で交替。
  3. 産出「得意自慢インタビュー」:クラスを回って3人に得意なことを聞き、そのうち1人を「〜さんは〜にかけてはクラス一です。たとえば〜」と根拠つきで紹介する。教師は後ろがプラスの評価になっているか、動詞のときに「こと」を入れているか、自分のことを言うときに言い過ぎて聞こえていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*料理にかけては下手です」と悪い評価に使う。後ろはプラスの評価だけ、と板書の+の印に戻る。苦手なことは「料理は苦手です」で言わせる
  • 「*走るにかけては」と動詞を直接つける。「走ることにかけては」と「こと」を入れる形を、名詞の行と並べて板書する
  • 「2月から3月にかけては雪が多い」の「にかけて」と同じだと思い、意味が取れない。前が時間・場所の範囲か、分野・能力かで見分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜から〜にかけて(中級第1課)「北から南にかけて」は時間・場所のだいたいの範囲で、「にかけては」は能力の分野です。「は」があるかないか、前が範囲か分野かで分かれます。「料理から掃除にかけて得意だ」のように範囲の言い方を能力に使ってしまったら、得意な分野を一つにして「にかけては」で言い直させます。
  • 〜に関して/〜に関する(中級第15課)「受験に関しては、まだ決めていない」のように、「に関しては」はただ話題を示し、後ろは評価でなくてもかまいません。「にかけては」は後ろがほめる評価に限られるので、言い換えられるのは後ろがプラスの評価のときだけです。
関連する文型
学習項目 3 〜はともかく(として)

意味・はたらき

「Nはともかく(として)」は、Nのことは今は問題にしないで脇に置き、後ろのもっと大事なことについて言う表現です。「成績はともかく、毎日楽しかった」のように、前の点は十分でなくても後ろの点で評価する使い方が多いです。第10課の「Nはもちろん」(Nは当然として、さらに後ろも)は前を含めて足していく言い方なのに対して、「はともかく」は前を外して後ろに注目させます。「〜かどうかはともかく」「いつ行くかはともかく」のように疑問の節にもつきます。会話でも書き言葉でも使え、「として」をつけるとやや改まります。

接続

N+はともかく(として)、〜か(どうか)+はともかく(として)

形
勉強はともかく、部活はよく頑張った見た目はともかく、味はおいしい勝てるかどうかはともかくとして、最後まで戦おう

導入

  • 形の崩れたケーキで比べる形の崩れた手作りケーキの絵を見せて「どうですか」と聞き、「形が……」を引き出す。教師が「形はともかく、味はおいしいんですよ」と言い、板書で「形」に横線を引いて脇に寄せ、「味」に丸をつける。次に「形はもちろん、味もおいしい」を並べて書き、「もちろん」は両方に丸、「ともかく」は後ろだけに丸、と比べる。

板書案

[脇に置くこと]はともかく(として)、[大事なこと]
成績はともかく、部活は3年間がんばった。
〔赤〕はともかく 〔青〕前に△、後ろに◎
〜かどうか/いつ〜か + はともかく
〔緑〕はもちろん(第10課)=前も後ろも ○+○

場面と発話(自作)

  • 卒業して何年かたち、高校時代を振り返って話す。成績はともかく、友達には本当に恵まれた3年間でした。
  • 文化祭の出し物を決める話し合いで、細かいことは後回しにする。費用はともかくとして、まず何をやりたいか決めましょう。
  • 友達が、新しく始めたアルバイトについて話す。給料はともかく、店長がいい人だから働きやすいよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、物や人についてのマイナスとプラスの2枚のカード(例:値段が高い/品質がいい)を見せ、「〜はともかく、〜」で後ろのプラスを強調する文を作らせる。次に「〜かどうかはともかく」で、迷っている計画について「できるかどうかはともかく、やってみたい」と言わせる。最後に自分の中学・高校時代を「〜はともかく」を使って一言でまとめる。

  1. 口頭マイナスとプラスの2枚のカードを見せ、全体→個人で言わせる。キューの例:「値段・高い/味・いい」→「値段はともかく、味はいい」、「場所・不便/雰囲気・いい」→「場所はともかく、雰囲気はいい」、「合格できる・わからない/挑戦したい」→「合格できるかどうかはともかく、挑戦してみたい」。慣れたら、前に置く点を学習者自身に選ばせる。
  2. ペアA は学校・店・アルバイト先などの「よくない点とよい点」を1つずつ書いたカードを持ち、B が「〜はどうだった?」と聞く。A は「〜はともかく、〜はよかったよ」と答え、B は「じゃあ、〜は気にしなくていいんだね」と確かめる。交替して2回ずつ。
  3. 産出「わたしの学校ひとこと評」:自分が通った中学か高校を「〜はともかく、〜」の一文でまとめ、理由を2文つけて発表する。教師は前に置いた点と後ろの評価が比べられる関係になっているか、後ろが「も」になって「はもちろん」と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「勉強はともかく、スポーツもできた」と後ろに「も」を使い、「はもちろん」と混ぜてしまう。前を外す言い方なので、後ろは「スポーツは」のように「は」で対比させる、とケーキの板書に戻る
  • 後ろに前より軽いことを置き、「成績はともかく、給食はおいしかった」のように話の重みが逆になる。「ともかく」のあとが言いたいこと、と確かめてから文を作らせる
  • 「*勉強はともかくに」「*勉強はともかくして」と形を崩す。「ともかく」か「ともかくとして」の2つだけ、と板書で固定する
  • 文頭の副詞「ともかく、行ってみよう」(とにかく)と同じだと思い、「Nはともかく」の意味が取れない。前に「Nは」があるかどうかで見分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜はもちろん/〜はもとより(中級第10課)「勉強はもちろん、部活もがんばった」は前を当然のこととして含め、後ろを足していく言い方です。「はともかく」は前を外して後ろだけに注目させます。学習者が「勉強はともかく、部活もがんばった」と「も」で続けると、外したはずの前を足していることになって意味がぶれるので、「部活は」に直すか「はもちろん」に替えさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 中学、高校生活の思い出を話すときに使うことば・表現学校生活のことばは、国によってあるものとないもの(部活・制服・校則・文化祭など)が違うので、語の意味だけでなく「自分の国にもあったか」を一言ずつ言わせると、課の目標である比較につながります。思い出を話すときは、時を示す言い方と気持ちを示す言い方をセットにして板書します。例:部活(朝練・引退)/文化祭・体育祭・修学旅行/制服・校則/先輩・後輩・同級生/「〜のころは」/「今思えば」/「懐かしいなあ」

2 伝えてみよう

できること学校生活についてのネットの書き込みを読み、ほかの人の意見を一部認めながら、自分の国の例を挙げて意見を言える。

場面

「高校に制服は必要か」という質問サイトの書き込みを読んで、クラスで自分の意見を言う場面です。教室では賛成と反対の短い書き込みを4〜5件自作してA4 1枚にまとめ、賛成には○、反対には×をつけさせてから話し合いに入ります。意見を言うときは「相手の意見を認める一言 → 自分の意見 → 理由(自分の国の例)」の順で話すよう、型を板書しておきます。

  • 書き込み:制服なんていらない。毎日同じ服なんてつまらないし、自分らしさが出せない。
  • 書き込み:制服があれば、朝、服で悩まなくてすむ。家計にもやさしいと思う。
  • 留学生:確かに、制服がつまらないという気持ちも、わからないことはないです。
  • 留学生:でも、私の国の高校は私服でしたが、毎朝服で悩む友達もいれば、服にお金がかかって困っている家庭もありました。
  • 留学生:ですから、私は制服にもいいところがあると思います。
  • クラスメート:じゃあ、制服と私服を選べるようにするのはどうですか。
  • 留学生:それなら、着たい人も着たくない人も困らないので、いい考えだと思います。
学習項目 1 〜ないことはない/〜ないこともない

意味・はたらき

否定を2つ重ねて、まったく〜ないわけではないという、部分的で控えめな肯定を表します。「行けないことはない」は「条件が合えば行ける。でも積極的ではない」というためらいを含みます。ST2 では、相手の意見を全部は否定せずに少し認めるときに使い、「〜気持ちもわからないことはないですが、〜」と自分の意見につなげます。「〜ないこともない」は「〜ないことはない」より少しやわらかく、ためらいが強めです。第8課の「V辞書形+ことはない」(〜する必要はない)とは形が似ていますが意味がまったく違い、近い表現の「〜わけではない」は「全部がそうだというのではない」と前の判断を打ち消す言い方です。

接続

Vない形・イAくない・ナAじゃない(ではない)・Nじゃない(ではない)+ことはない/こともない

形
その気持ちも、わからないことはない急げば、今日中に終わらないこともない厳しい校則にも、意味がないことはない(第8課)心配することはない=必要ない

導入

  • ためらいながら答える教師が学習者に「辛い料理、食べられますか」と聞いてもらい、少し間を置いて「食べられないことはないですけど……」と答え、表情で「本当は得意じゃない」を伝える。板書は「食べられる(100)」「食べられないことはない(60くらい)」「食べられない(0)」と目盛りの線を引いて位置を示す。続けて「わからないことはない」を、相手の意見を少し認める言い方として ST2 の書き込みにつなぐ。

板書案

V・イA・ナA・N の否定形+ことはない(こともない)
制服が便利だという意見も、わからないことはない。
〔赤〕ない+ことはない 〔青〕否定×否定 → 弱い肯定
0% ――△(ないことはない)――― 100% の線で位置を示す
〔緑〕V辞書形+ことはない(第8課)=〜する必要はない

場面と発話(自作)

  • ネットの書き込みに対して、半分だけ賛成する意見を言う。部活は自由参加にしたほうがいいという意見も、わからないことはありません。
  • 友達に、週末に引っ越しを手伝えるか聞かれる。土曜日なら、行けないこともないけど……何時ごろ?
  • 先生に、レポートを1日早く出せるか聞かれる。急げば、間に合わないことはないと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「〜できますか」「〜と思いますか」と聞き、学習者が「〜ないことはないです(けど)」で、全部ではないが少しは認める答え方をする。キューは能力(泳ぐ・料理する)、予定(土曜日に来る)、意見(制服は必要だ)の3種類。次に ST2 の書き込みを読み、「〜という意見もわからないことはないですが、私は〜」で自分の意見につなげさせる。

  1. 口頭教師が質問し、学習者が「〜ないことはないです(けど)」で答える。キューの例:「辛い料理、食べられますか」→「食べられないことはないですけど……」、「駅から歩けますか」→「歩けないことはないですけど、20分かかります」、「制服は必要だと思いますか」→「必要じゃないこともないですが……」。文末の「けど」をのばして、ためらいを声で出させる。
  2. ペアA は頼む役で、「今度の土曜日、引っ越しを手伝ってくれない?」のような依頼カードを3枚持つ。B は「〜ないことはないけど、〜」と条件をつけて答え、A はその条件に合わせて頼み方を変える(時間を短くする・別の日にする)。交替する。
  3. 産出「半分賛成ディベート」:ST2 の話題(制服・校則・宿題)から一つ選び、反対側の意見を「〜という意見もわからないことはないですが」で一度認めてから、自分の国の例を使って1分で意見を述べる。教師は否定形の作り方(ナA・N の「じゃない」)と、認める一言のあとに自分の意見がきちんと続いているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「心配することはない」(必要がない)と混同し、意味を取り違える。「ことはない」の前がナイ形かどうかで見分ける、と板書の4行目を指して確かめる
  • 「*便利ないことはない」「*静かないことはない」とナ形容詞に「ない」を直接つける。ナAは「便利じゃないことはない」と「じゃ」を入れる
  • 面接などではっきり言うべき場面で「日本語は話せないことはないです」と言い、自信がないように聞こえる。控えめに認めたいときの形だと、使う場面を限って練習する
  • 二重否定の意味が取れず、「行けないことはない」を「行けない」と受け取る。目盛りの板書で、0ではなく60くらいだと毎回確かめる

既習の文型との違い

  • 〜ことはない(中級第8課)前が辞書形の「心配することはない」は「その必要はない」という励まし・忠告で、前が否定形の「〜ないことはない」は控えめな肯定です。励ますつもりで「心配しないことはないよ」と言うと「心配しないわけではない」という別の意味になるので、前が辞書形か否定形かを並べて確かめます。
  • 〜わけではない/〜というわけではない(中級第9課)「わけではない」は「日本の高校生がみんな部活に入るわけではない」のように、一般的な判断や相手の思い込みを部分的に打ち消します。「ないことはない」は自分ができる・認める度合いを控えめに言う形で、「わからないことはない」には相手の気持ちに少し歩み寄る響きがあります。
  • 〜ことは〜が(中級第14課)「行くことは行くが、あまり楽しみではない」は、実際にそうすることを認めてから留保をつける言い方です。「ないことはない」はそうできる可能性を認める言い方で、どちらもためらいを表せますが、事実を認めるか可能性を認めるかが違います。
関連する文型
学習項目 2 〜も〜ば〜も/〜も〜なら〜も

意味・はたらき

2つのことを「AもBも」と並べる言い方で、使い方は2つあります。1つは同じ方向の評価を重ねて強める使い方(「駅も近ければ、家賃も安い」=とても条件がいい)、もう1つは違う人や場合を並べて「いろいろある」と示す使い方(「賛成する人もいれば、反対する人もいる」)です。ST2 では後者で、意見がいろいろあることを認めてから自分の意見を言うのに使います。「〜し、〜し」は理由を並べる言い方、初中級の「〜だけじゃなくて、〜も」は後ろを強調する言い方で、「〜も〜ば〜も」は2つを同じ重さで並べます。動詞・イ形容詞は「ば」、ナ形容詞・名詞は「なら」を使い、会話でも書き言葉でも使えます。

接続

N1も V条件形(〜ば)・イAければ、N2も〜/N1も ナAなら・Nなら、N2も〜

形
勉強もできれば、スポーツもできる制服に賛成の人もいれば、反対の人もいる先生も親切なら、クラスの雰囲気もいい値段も安ければ、量も多い

導入

  • クラスの中の違いを並べる「朝ごはんを食べてきた人は?」と手を挙げさせ、食べた人と食べていない人がいることを確かめてから、教師が「食べてきた人もいれば、食べていない人もいますね」と言う。板書は「[食べてきた人]も いれば、[食べていない人]も いる」と、同じ動詞「いる」がくり返される形にする。次に「駅も近ければ、家賃も安い」を2行目に書き、プラスを重ねる使い方もあることを示す。

板書案

N1も V-ば/イA-ければ、N2も〜
N1も ナA/N+なら、N2も〜
駅も近ければ、家賃も安い。(+と+を重ねる)
賛成する人もいれば、反対する人もいる。(いろいろある)
〔赤〕も・も に丸 〔青〕「ば」の行と「なら」の行を分ける

場面と発話(自作)

  • ネットの書き込みを読んで、意見が分かれていることをまとめる。宿題は多いほうがいいと言う人もいれば、少ないほうがいいと言う人もいます。
  • 留学生が友達に、新しく入った寮のことを話す。駅も近ければ家賃も安いし、本当にラッキーだったよ。
  • 先輩が後輩に、部活を紹介する。練習も楽しければ、先輩も優しいから、ぜひ見学に来てね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、2組の語のカード(駅・近い/家賃・安い)を見せて「〜も〜ば、〜も〜」を作らせ、次にナ形容詞・名詞のカード(先生・親切/食堂・きれい)で「なら」に切り替える。そのあと ST2 の意見の分かれる話題(制服・部活・宿題)で「〜人もいれば、〜人もいる」と意見の幅をまとめ、「私は〜」と自分の意見を続けさせる。

  1. 口頭語のカードを2組ずつ見せ、全体→個人で作らせる。キューの例:「駅・近い/家賃・安い」→「駅も近ければ、家賃も安い」、「先生・親切/食堂・きれい」→「先生も親切なら、食堂もきれいだ」、「制服・賛成する人/反対する人」→「賛成する人もいれば、反対する人もいる」。最初の2つでは、カードの品詞を指して「ば」か「なら」かを先に言わせる。
  2. ペアA は意見の分かれる話題カード(宿題は必要か・部活は全員参加か・学校にスマホを持ってきてよいか)、B は「クラスで聞いた意見メモ」(賛成2つ・反対2つ)を持つ。B が「〜人もいれば、〜人もいる」でまとめ、A が「Bさん自身はどう?」と聞いて意見を言わせる。交替。
  3. 産出「わたしの学校、ここが自慢」:自分の通った学校のよいところを「〜も〜ば、〜も〜」で2つ重ねて言い、聞き手に「よくないところは?」と聞かれたら「〜と言う人もいれば、〜と言う人もいる」で答える。教師はナA・N に「ければ」をつけていないか、重ねる2つの評価の向きがそろっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*先生も親切ければ」とナ形容詞に「ければ」をつける。ナAとNは「なら」と、板書で行を分けて見せる
  • 「*勉強もできるば」と条件形の作り方を誤る。「できる→できれば」を条件形の表で確かめてから入る
  • 初めの「も」を落とし「勉強ができれば、スポーツもできる」と言うと、「もし〜なら」の条件の文に聞こえてしまう。並べるときは両方に「も」、と板書で2つの「も」に丸をつける
  • プラスを重ねるつもりで「駅も近ければ、家賃も高い」と方向の違う評価を並べ、ほめているのかどうか伝わらない。重ねるときは同じ方向、違いを示すときは「人もいれば、人もいる」の型、と使い方を分けて練習する

既習の文型との違い

  • 〜だけじゃなくて、〜も〜(初中級第15課)「勉強だけじゃなくて、スポーツもできる」は後ろに驚きや強調が置かれる言い方です。「勉強もできれば、スポーツもできる」は2つを同じ重さで並べます。後ろを目立たせたいときは「だけじゃなくて」、同じ重さで並べたいときは「も〜ば〜も」と使い分けさせます。
  • 〜やら〜やら(中級第12課)「レポートやら試験やらで忙しい」は名詞の例を挙げて「いろいろあって大変だ」というマイナスの気持ちになりやすい言い方です。「も〜ば〜も」は文の形で並べ、プラスにもマイナスにも使えます。並べた結果が大変さなら「やら」、評価を重ねるなら「も〜ば〜も」と見分けます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 相手の考えを受け入れながら、自分の意見を述べるときの表現意見を言うとき、いきなり反対すると強く聞こえるので、「認める → でも → 自分の意見 → 理由」の順で話す型を教えます。認める一言は軽いものから重いものまで並べ、書き込みへの返信(書き言葉)と話し合い(話し言葉)で使い分けさせます。例:「確かに〜けど」/「〜という意見もわかります。ただ…」/「〜にも一理ありますね」/「〜気持ちもわからないことはないですが」/「私としては〜」/「〜という点では賛成ですが」

3 見つけた!

できること入試や受験を伝えるニュース記事を読んで、いつ・どこで・何があったか、例年と比べて何が違ったかを読み取れる。

場面

毎年冬になるとニュースや新聞で取り上げられる、入学試験の日の記事を読む場面です。教室では見出しと本文10行ほどの自作の記事を配り、「いつ・どこで・何が・例年と違う点・受験生の声」の5つの欄の表を埋めさせます。見出しや本文の硬い言い方は、読み終わったあとに会話の言い方に直させます。

  • 見出し:大雪の中、入試始まる 受験生「力を出しきった」
  • 記事:今年も入学試験の季節を迎えた。
  • 記事:市内の大学では、きのうから2日間にわたって一般入試が行われた。
  • 記事:大雪にもかかわらず、受験生の多くは予定の時間までに会場に到着した。
  • 記事:会場の前には、中に入りきれない家族が受験生を見送る姿も見られた。
  • 記事:試験を終えた受験生からは「最後まで力を出しきった」という声が聞かれた。
  • 記事:合格発表は来月中旬に行われる予定だ。
学習項目 1 〜にわたって/〜にわたり/〜にわたる

意味・はたらき

期間・範囲・回数を表す名詞について、その全体に広く及ぶことを表します。「3日間にわたって試験が行われた」「全国にわたる大雪」のように、期間や範囲が長い・広いことを印象づける硬い書き言葉で、ニュースや記事でよく使います。第1課の「〜から〜にかけて」は始まりと終わりを示して、だいたいその間という幅を言うのに対して、「にわたって」は全体を通して切れずに続く・広がることに重点があります。第6課の「〜を通じて」(「一年を通じて暖かい」)は期間中ずっと同じ状態であることを言います。「にわたり」は書き言葉で文を続ける形、名詞の前は「にわたる+N」です。

接続

N(期間・範囲・回数)+にわたって/にわたり、N+にわたる+N

形
2日間にわたって入学試験が行われた10年にわたり、調査を続けている全国にわたる大雪数回にわたる面接

導入

  • カレンダーと地図で「全体」を見せる黒板にカレンダーを描き、2月1日から3日まで線を引く。教師が「試験は2月1日から3日まででした」と言ってから、ニュースの調子で「試験は3日間にわたって行われました」と言い直す。次に日本地図の全体を色で塗って「全国にわたって雪が降った」と書き、時間にも場所にも使えることを示す。最後に見出しの形「3日間にわたる試験」を書き、名詞の前は「にわたる」になることを確かめる。

板書案

N(期間・範囲・回数)+にわたって/にわたり、〜
N+にわたる+N(見出しの形)
入学試験は、2日間にわたって行われた。
〔赤〕にわたって 〔青〕カレンダーに始めから終わりまで途切れない線
〔緑〕〜から〜にかけて(第1課)=だいたいの幅(点線)

場面と発話(自作)

  • 入試のニュースで、試験の日程を伝えている。入学試験は、きのうから2日間にわたって行われました。
  • 大学の案内に、留学プログラムの長さが書いてある。1年にわたるプログラムで、現地の大学の授業を受けます。
  • 記事が、長く続いた研究を紹介している。この研究チームは、20年にわたり、子どもの読書の習慣を調べてきた。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、期間・範囲・回数のカード(3日間・全国・5回・半年)と出来事のカード(試験・調査・説明会・工事)を組み合わせ、「〜にわたって〜が行われた」を言わせる。次に同じ内容を「〜にわたる〜」の見出しの形に直す。最後に ST3 の記事の中から「にわたって」の文を探し、何が・どのくらい続いたかを答えさせる。

  1. 口頭期間・範囲・回数のカードと出来事のカードを組み合わせて言わせる。キューの例:「3日間・試験」→「試験は3日間にわたって行われた」、「全国・大雪」→「全国にわたって大雪が降った」、「5回・説明会」→「説明会は5回にわたって開かれた」。言えたら同じ内容を見出しの形(「3日間にわたる試験」)に直させる。
  2. ペアA は自作のニュースの見出しカード(「半年にわたる工事、終わる」など)を持ち、B が「どのくらい続いたんですか」「どこで?」と質問する。A は「〜にわたって」で答え、B はメモを見て友達に話す言い方(「半年ずっと工事してたんだって」)に直して言う。交替。
  3. 産出「ニュース原稿づくり」:自分の国の大きな行事か学校の行事(体育祭・試験週間・卒業式の準備など)を、「〜にわたって」「〜にわたる」を1回ずつ入れた3文の原稿にし、アナウンサーの調子で読む。教師は前の名詞が期間・範囲・回数になっているか、一点の日付につけていないか、会話の文体が混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*2月1日にわたって試験があった」と一点の日時に使う。前には必ず長さや広がりのある語(〜間・〜年・全国・〜回)が来る、とカレンダーの線で確かめる
  • 「*3日間にわたる行われた」と、名詞の前の形を動詞の前に使う。動詞の前は「にわたって/にわたり」、名詞の前は「にわたる」と、板書で2行に分ける
  • 「5分にわたって話した」のように短い時間に使い、大げさに聞こえる。長い・広いことを強調したいときの言い方だと、例の数字を大きくして練習する
  • 友達との会話で「週末、2日間にわたって遊んだよ」と言い、ニュースのように聞こえる。会話なら「週末はずっと遊んでた」と言い換えさせる

既習の文型との違い

  • 〜から〜にかけて(中級第1課)「夜から朝にかけて雨が降るでしょう」は始まりと終わりのだいたいの幅を示し、その間のどこかで起こることにも使えます。「にわたって」は範囲全体を通して切れずに続く・広がることに重点があります。学習者が「*2月1日にわたって」と一点の日付につけたら、範囲になる語(〜日間・〜か月・全国)に直します。
  • 〜を通じて/〜を通して(中級第6課)「一年を通じて暖かい」は期間中ずっと同じ状態であることを言い、「一年にわたって調査した」は出来事がその長さに及ぶことを言います。状態なら「を通じて」、行われた出来事なら「にわたって」と分けると、学習者が選びやすくなります。
関連する文型
学習項目 2 〜きる/〜きれる/〜きれない

意味・はたらき

「Vます形+きる」は、最後まで全部する・残りがないことを表します(「全部食べきる」「お金を使いきる」「力を出しきる」)。「疲れきる」「困りきる」のように状態の動詞につくと「すっかり・完全に」の意味になります。「きれる」はその可能形で「全部〜できる」、「きれない」は量が多すぎたり気持ちが強すぎたりして「最後までできない」ことを表し、「数えきれない」「食べきれない」「待ちきれない」のように使います。「〜てしまう」も終わりまでを表しますが、残念な気持ちが入ることがあり、「きる」は全部・最後までに重点があります。ST5 の「〜ぬく」は、困難を乗り越えてやりとおす意志に重点がある点で違います。

接続

Vます形+きる/きれる/きれない

形
最後の問題まで解ききった持っている力を出しきる会場に入りきれないほどの人数えきれないほど練習した

導入

  • 大盛りのラーメンで3つの形を出す大盛りのラーメンの絵を見せて「全部食べられますか」と聞き、教師が「食べきれます」「食べきれません」と2通りに答えてみせる。最後に空のどんぶりの絵を出して「食べきった!」と言う。板書は「食べ+きる(全部した)/きれる(全部できる)/きれない(多すぎて全部はできない)」の3行にし、「食べます→食べ」と矢印で「ます」を取った形につくことを示す。

板書案

Vます形+きる/きれる/きれない
お弁当を全部食べきった。 量が多くて、食べきれない。
〔赤〕きる=100% 〔青〕きれない=最後までできない(多すぎる・強すぎる)
疲れきる・困りきる = すっかり
〔緑〕〜てしまう:残念な気持ちが入ることも

場面と発話(自作)

  • 入試を終えた受験生が、記者に感想を聞かれる。緊張しましたが、最後まで力を出しきりました。
  • 誕生日にケーキを買いすぎて、友達に声をかける。一人じゃ食べきれないから、一緒に食べない?
  • 記事が、合格発表の会場の様子を伝えている。掲示板の前には、発表を待ちきれない受験生が朝早くから集まっていた。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、動詞のカード(食べる・使う・読む・数える・入る)と量の絵(少し・たくさん・多すぎる)を組み合わせ、「〜きった」「〜きれる」「〜きれない」を言い分けさせる。次に ST3 の記事から「きる」のついた語を探し、全部したのか、できなかったのかを答えさせる。最後に試験を終えたときの気持ちを「〜きった」で一言言わせる。

  1. 口頭動詞のカードと量の絵を組み合わせ、すばやく言い分けさせる。キューの例:「ケーキ・全部」→「ケーキを全部食べきった」、「小説・1日で」→「1日で小説を読みきった」、「星・多い」→「星が多くて、数えきれない」、「発表・あした」→「あしたの発表が待ちきれない」。全体で言ったあと、量の絵だけを指して個人に「きった/きれない」を選ばせる。
  2. ペアA は「やったことカード」(時間内に問題を全部解いた・夏休みの宿題が終わらなかった・お小遣いを1週間で使った など)を引き、B が「全部できた?」と聞く。A は「〜きった」「〜きれなかった」で答え、B は「すごいね」か「残念だったね」で返す。交替して3枚ずつ。
  3. 産出「試験のあとのひとこと日記」:最近受けた試験やがんばったこと(模試・面接・発表)について、「〜きった」「〜きれなかった」を1回ずつ使って3〜4文の日記を書き、ペアで読み合って感想を一言返す。教師はます形への接続(*食べるきる)と、「きれない」の理由(量が多い・気持ちが強い)が文の中にあるかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*食べてきる」とテ形につける。「ます」を取った形につく、とラーメンの板書の矢印に戻る
  • 量が多くて全部は無理だと言いたいのに「食べきらない」と言ってしまう。「できない」の意味なので可能の「きれない」になる、と3行の板書で確かめる
  • 書き言葉で「出し切る」と漢字で書かれていると、はさみで「切る」の意味だと思って取れない。記事では漢字で書くこともあると、読みの練習で一度見せておく

既習の文型との違い

  • Vてしまいます(完了)(初中級第9課)「食べてしまった」は終わったことに加えて「残念だ・やってしまった」という気持ちが出ることがありますが、「食べきった」は量を全部終えたことに重点があり、満足や達成の響きになります。大盛りの料理を最後まで食べた話で「てしまった」を使うと後悔に聞こえる場合がある、と気持ちの違いで見せます。
  • 〜ぬく(中級第16課)「きる」は量や状態が100%になること、「ぬく」は困難を乗り越えてやりとおす意志に重点があります。「マラソンを走りきった/走りぬいた」はどちらも言えますが、「ぬいた」には苦しさに負けなかったという評価が入ります。「ご飯を食べぬいた」のように日常の動作に使うと不自然なので、量の話なら「きる」と戻します。
関連する文型
学習項目 3 〜にもかかわらず

意味・はたらき

前のことから予想されることと反対の結果になったことを表す逆接で、意味は初中級の「〜のに」に近い表現です。「のに」は話し手の不満や意外な気持ちが強い話し言葉ですが、「にもかかわらず」は事実を客観的に伝える硬い書き言葉で、ニュース・記事・レポートや、改まったあいさつ(「お忙しいにもかかわらず」)に使います。第4課の「Nにかかわらず」(〜に関係なく)とは「も」があるかないかで意味が変わります。後ろに命令・依頼・意志の文は来にくいです。

接続

V・イAの普通形+にもかかわらず、ナA・N+(である)+にもかかわらず(「だ」はつけない)

形
大雪にもかかわらず、多くの受験生が会場に来た十分準備したにもかかわらず、思うような結果が出なかった平日であるにもかかわらず、説明会は満員だったお忙しいにもかかわらず、ありがとうございます

導入

  • 「のに」の文を記事の文に書き換える教師が「雨が降っていたのに、試合をしたんですよ」と会話の調子で言い、学習者に「どんな気持ちですか」と聞いて「びっくり」「不満」を出させる。次に記事の調子で「雨にもかかわらず、試合は予定どおり行われた」と書き、「のに(話す・気持ち)」「にもかかわらず(書く・事実)」と2行を並べる。最後に第4課の「天候にかかわらず、試合を行う」を3行目に書き、「も」一つで意味が変わることを確かめる。

板書案

[予想されること]にもかかわらず、[反対の結果]
V・イA 普通形/ナA・N(である)+にもかかわらず
大雪にもかかわらず、受験生のほとんどが時間どおりに集まった。
〔赤〕にもかかわらず=のに(書き言葉) 〔青〕「だ」✕・「である」○
〔緑〕にかかわらず(第4課)=関係なく 「も」に丸

場面と発話(自作)

  • 入試のニュースで、雪の日の試験の様子を伝えている。大雪にもかかわらず、ほとんどの受験生が時間どおりに到着しました。
  • 学校の説明会の初めに、司会が参加者にお礼を言う。本日は、お忙しいにもかかわらず、お集まりいただきありがとうございます。
  • レポートで、調査の結果を説明する。練習時間が短いにもかかわらず、成績が大きく上がった学生もいた。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、予想と結果の2枚のカード(大雨→観客が多い/よく勉強した→不合格)を見せ、まず「〜のに」で言わせ、次に記事の文として「〜にもかかわらず」に書き換えさせる。名詞・ナ形容詞のカード(平日・不便)を混ぜて「である」の入れ方を確かめる。最後に ST3 の記事で「にもかかわらず」の前と後ろを線で分け、何が予想外だったかを言わせる。

  1. 口頭予想と結果の2枚のカードを見せ、まず「〜のに」で言わせてから書き言葉に言い換えさせる。キューの例:「大雨・観客が多い」→「大雨にもかかわらず、観客が多かった」、「よく勉強した・不合格」→「よく勉強したにもかかわらず、不合格だった」、「平日・会場が混んでいる」→「平日であるにもかかわらず、会場は混んでいた」。名詞・ナ形容詞のカードで「である」の入れ方を全体で確かめる。
  2. ペアA は自作のニュースの事実メモ(「試験日・大雪・欠席者は例年並み」など)を持ち、B は記者役。A がメモを話し言葉で伝え(「大雪だったのに、休んだ人は少なかったんだって」)、B が「〜にもかかわらず」で記事の一文に直して読み上げる。交替して2枚ずつ。
  3. 産出「ミニ記事を書こう」:自分の国か学校であった予想外の出来事を一つ選び、見出し1行と本文3文の記事にする。「にもかかわらず」を1回入れ、後ろは事実だけで書く(「〜てください」「〜たい」は入れない)。教師は「だ」のつけ方、後ろに依頼・意志が来ていないか、予想と結果が本当に逆の関係になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*雨だにもかかわらず」「*不便なにもかかわらず」と「だ」「な」をつける。名詞・ナ形容詞はそのままか「である」、と板書の接続の行で確かめる
  • 「年齢にもかかわらず、どなたでも参加できます」と、第4課の「にかかわらず」の場面で「も」を入れてしまい、意味が通らなくなる。「関係なく」なら「も」なし、「〜のに」なら「も」あり、と言い換えで確かめる
  • 友達に「テスト勉強したにもかかわらず、点が悪かったよ」と言い、硬く聞こえる。会話なら「勉強したのに」と、場面で形を選ばせる
  • 「雨にもかかわらず、来てください」と後ろに依頼を続けて不自然になる。頼むときは「雨でも来てください」と「ても」を使わせる

既習の文型との違い

  • 〜のに、〜(初中級第10課)「せっかく作ったのに、食べてくれない」のように、「のに」は話し手の不満や意外な気持ちがにじむ話し言葉です。「にもかかわらず」は事実を客観的に伝える硬い言い方で、友達との会話で使うと記事を読み上げているように聞こえます。記事は「にもかかわらず」、会話に直すと「のに」、と言い換えで覚えさせます。
  • 〜にかかわらず/〜にかかわりなく(中級第4課)「年齢にかかわらず参加できる」は「関係なく」、「雨にもかかわらず参加した」は「雨なのに」で、「も」一つで意味が変わります。前が「年齢・天気・経験の有無」のような幅のある語なら「にかかわらず」、「大雨」のような一つの事実なら「にもかかわらず」と見分けさせます。
  • 〜ものの/〜とはいうものの(中級第11課)「合格したものの、まだ実感がない」は前を認めてから、後ろが思ったとおりでないことを言う言い方で、話し手の気持ちが入りやすいです。「にもかかわらず」は予想に反した結果を事実として述べる点で、記事向きです。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 受験の話題でよく使われることば受験のことばは、試験の種類、手続き、結果の3つに分けて覚えさせると記事が読みやすくなります。国によって制度が違うので、日本の語に自分の国の言い方を書き添えさせ、どれが同じでどれが違うかを話し合わせます。例:一般入試・推薦入試/出願・受験票・志望校/倍率・定員/合格発表・合否/浪人・滑り止め/模試・過去問
  • 毎年取り上げられる話題を伝えるニュースや記事で使われる表現毎年同じ時期に出る記事は、季節を告げる書き出し、例年との比較、現場の様子、関係者の声、今後の予定、というほぼ決まった流れで書かれています。表現を流れの順に並べて板書し、記事を読む前に「次に何が書いてあるか」を予想させると速く読めます。例:「今年も〜の季節を迎えた」/「例年どおり」/「昨年に比べ」/「〜が行われた」/「〜姿が見られた」/「〜という声が聞かれた」

4 こんなときどうする?

できること受験や進学で迷っている友達に、自分の経験を話しながら、やってみようと思えるように背中を押せる。

場面

日本語学校や大学で、友達が「大学院を受けたいけれど、自信がない」と相談してくる場面です。教室では友達役に「不安カード」(自信がない・準備が間に合わない・お金が心配・家族が反対)を1枚ずつ持たせ、励ます役はカードを見ずに相手の話を聞いて返します。励ます役には、自分の経験(試験・面接・引っ越しなど何でもよい)を一つ入れることを条件にします。

  • 友達:大学院、受けてみようか迷ってるんだ。でも、受かる自信がなくて。
  • 留学生:そうなんだ。でも、今の成績からいって、十分チャンスはあると思うよ。
  • 友達:でも、受けるとなると、研究計画書も書かなきゃいけないし……。
  • 留学生:わたしも去年書いたけど、最初は全然書けなかったよ。先生に何回も見てもらって、やっとできたんだ。
  • 留学生:わたしの経験からいうと、書き方は練習次第でちゃんと上達するよ。
  • 友達:そっか……。じゃあ、やるだけやってみようかな。
  • 留学生:うん、応援してる。わからないことがあったら、いつでも聞いてね。
学習項目 1 〜からいうと/〜からいって/〜からいえば

意味・はたらき

「Nからいうと」は、Nの立場・観点・根拠から判断するとという意味で、後ろに話し手の判断や意見が来ます(「経験からいうと」「費用の面からいえば」)。「からいって」は「あの成績からいって、合格は間違いない」のように、根拠から推し量る判断によく使います。ST4 では、自分の経験や相手の今の状況を根拠に挙げて、相手を後押しするのに使います。第11課の「〜からすると/〜から見ると」も近い意味ですが、「親からすると」のように人に直接つけられるのに対して、「からいうと」は人に直接つけにくく、「親の立場からいうと」のように「立場」「目」などを入れます。

接続

N+からいうと/からいって/からいえば

形
わたしの経験からいうと、模試の点は本番で上がることが多い今の成績からいって、十分合格できると思う費用の面からいえば、国公立の大学のほうがいい

導入

  • 教師の経験を根拠にして判断する教師が「去年わたしが教えたクラス」の話として、合格した学生の数を黒板に書き、「わたしの経験からいうと、この時期に過去問を3回解いた人は、たいてい合格しています」と言う。板書は「[根拠・立場]からいうと → 判断」の矢印にし、根拠の欄に「経験」「成績」「費用の面」を入れ替えて見せる。

板書案

N(立場・観点・根拠)+からいうと/からいえば、[判断・意見]
N+からいって、[根拠から推し量る判断]
わたしの経験からいうと、面接はそんなに怖くないよ。
〔赤〕からいうと 〔青〕「親からいうと」✕ →「親の立場からいうと」
〔緑〕からすると(第11課)は人に直接つけられる

場面と発話(自作)

  • 受験に迷っている友達を励ます。今の点数からいって、あと3か月あれば十分間に合うよ。
  • 進学先を選ぶとき、先輩に相談する。通いやすさからいえば、駅に近いほうの大学がいいと思うよ。
  • 日本語学校の先生が、学生に面接の練習をすすめる。これまでの例からいうと、練習を重ねた人ほど本番で落ち着いて話せていますよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、根拠のカード(経験・成績・費用・時間・距離)と相談のカード(大学院を受けるか迷っている・アルバイトを増やすか迷っている)を組み合わせ、「〜からいうと、〜と思う」で意見を言わせる。次に ST4 のロールプレイで、友達の不安に対して根拠を一つ挙げて後押しさせる。

  1. 口頭根拠のカードと判断の文をつなげさせ、全体→個人で言わせる。キューの例:「経験」→「私の経験からいうと、早めに願書を出したほうがいい」、「今の成績」→「今の成績からいって、合格できると思う」、「費用の面」→「費用の面からいえば、国内の大学院のほうがいい」。人のカード(「親」「先生」)を混ぜ、「〜の立場から」を入れて言い直させる。
  2. ペアA は迷っている人のカード(大学院を受けるか・アルバイトを増やすか・寮を出るか)を持って相談し、B は根拠カード(経験・時間・お金・距離)から一つ選んで「〜からいうと、〜と思う」と意見を言う。A は「でも〜」と一度反論し、B がもう一つ別の根拠を足して答える。交替。
  3. 産出「先輩アドバイス・ボード」:これから日本の学校を受ける後輩に向けて、自分の経験や知っていることを根拠にしたアドバイスを「〜からいうと」「〜からいって」で2文書き、カードにして掲示板に貼る。読んだ人は質問を一つ付箋で残す。教師は前に人をそのまま置いていないか、後ろが判断・意見になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*先生からいうと、この大学がいいです」と人に直接つける。「先生の立場からいうと」「先生の話からいうと」と、間に語を入れる形を板書する
  • 「*経験だからいうと」「*経験のからいうと」と名詞のあとに「だ」「の」を入れる。名詞に直接「からいうと」、と矢印の板書で確かめる
  • 理由の「から」と区別できず、「経験から、いうと」と区切って意味が取れない。「からいうと」で一つのまとまりだと、読みの練習で区切りに線を引かせる

既習の文型との違い

  • 〜からすると/〜からすれば/〜から見ると/〜から見れば(中級第11課)意味は近く、多くの文で言い換えられます。違いは前に人を直接置けるかで、「親からすると」は自然ですが、「からいうと」は「親の立場からいうと」のように「立場・目」などをはさみます。学習者が「先生からいうと」と言ったら、「先生の立場からいうと」か「先生からすると」に直します。
  • 〜にとって(中級第3課)「留学生にとって、面接は難しい」のように、「にとって」は評価する人の立場を示し、後ろは「大切だ・難しい」のような評価が来ます。「経験からいうと、面接は練習すれば大丈夫だ」の「からいうと」は判断の根拠を示します。人なら「にとって」、根拠なら「からいうと」と分けます。
関連する文型
学習項目 2 〜となると/〜となれば/〜となったら

意味・はたらき

「〜となると」は、ある状況が実際にそうなる場合、そうなった場合を取り上げて、それならこうなる・こうしなければならないと判断する言い方です(「大学院を受けるとなると、準備が大変だ」「いざ本番となると、緊張する」)。相手から聞いた話や、新しく決まったことを受けて言うことが多いです。初中級の「〜なら」も相手の話を受けますが、「となると」には「それが本当にそうなったら事情が変わる」という重みがあります。「となったら」は話し言葉で、「やるとなったら、最後までやる」のような決意にも使い、「となれば」は「〜しかない」「話は別だ」と結びやすい言い方です。ST4 では友達の不安(「受けるとなると……」)を聞き取って返すのに使います。

接続

V・イA・ナA・Nの普通形+となると/となれば/となったら(ナA・Nは「だ」をつけないことが多い:「本番となると」)

形
大学院を受けるとなると、研究計画書が必要だいざ本番となると、やっぱり緊張する留学するとなれば、早めに準備するしかないやるとなったら、最後までやろう

導入

  • 決まったことから、必要なことを考える教師が「来月、クラスで日本語のスピーチ大会をします」と発表し、学習者の反応を待つ。「スピーチ大会をするとなると、何が必要ですか」と聞いて「原稿」「練習」「会場」を出させ、板書で「[〜する]となると → 必要なこと・大変なこと」と矢印でつなぐ。次に「いざ本番となると」を書き、実際にその時になると気持ちが変わることを確かめる。

板書案

[そうなる場合・決まったこと]+となると/となれば/となったら、[判断・覚悟]
大学院を受けるとなると、研究計画書を書かなければならない。
〔赤〕となると=それが本当なら事情が変わる 〔青〕後ろ:大変だ/〜なければ
やるとなったら、最後までやる。(決意) 〜となれば、〜しかない
〔緑〕Nなら(初中級第1課)=相手の話を軽く受けて助言

場面と発話(自作)

  • 大学院の受験を迷っている友達と話す。受けるとなると、今から準備しないと間に合わないね。
  • 国に帰るか日本で働くか迷っている友達に言う。日本で就職するとなったら、ビザのことも調べておかないとね。
  • 面接の練習のあと、先輩が後輩に言う。練習では話せても、いざ本番となると頭が真っ白になるものだよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、決めることのカード(大学院を受ける・引っ越す・車を買う・国に帰る)を引き、「〜となると、〜しなければならない/〜が大変だ」を言わせる。次に「やるとなったら」「〜となれば、〜しかない」で決意を表す文に変える。ST4 のロールプレイでは、友達の「でも〜となると……」という不安を受けて、後押しの一言を返す練習をする。

  1. 口頭決めることのカードを引かせ、全体→個人で言わせる。キューの例:「大学院を受ける」→「大学院を受けるとなると、準備が大変だ」、「来月引っ越す」→「来月引っ越すとなると、すぐ部屋を探さなければならない」、「あしたが本番」→「あしたが本番となると、緊張する」。次に同じカードで「やるとなったら、最後までやる」「〜となれば、〜しかない」の決意の文に変える。
  2. ペアA は「決まったことカード」(来月から夜のシフトが入る・国から家族が来る・面接が来週に早まった)を読み上げ、B が「〜となると、〜ね」と、そこから起こる大変さや必要なことを言う。A は「そうなんだよ」と受け、次のカードへ進む。3枚で交替。
  3. 産出「決意表明30秒」:自分がこれから挑戦すること(試験・就職・引っ越しなど)を一つ選び、「〜となると、〜が大変だ。でも、やるとなったら〜」の流れで30秒話す。聞き手は一つ質問する。教師は「となると」の後ろが判断・覚悟になっているか、「となったら」の決意の文まで言えているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*受けるになると」と「Nになると」と混ぜる。動詞の普通形には「となると」、と板書の矢印で確かめる
  • 「春となると桜が咲く」のように、毎回決まって起きる自然なことに使う。そういうときは「春になると」でよく、「となると」は実際にそうなる場合の判断に使う、と場面を分ける
  • 改まった文章で「進学するとなったら」と書き、くだけて見える。書くときは「となると」「となれば」に

既習の文型との違い

  • Nなら〜(初中級第1課)「京都に行くなら、春がいいよ」のように、「なら」は相手の話を受けて助言を足す軽い言い方です。「となると」は、それが実際にそうなると事情が大きく変わるという重みがあり、後ろは「大変だ・〜なければならない」のような判断になりやすいです。助言だけなら「なら」、負担や覚悟を言うなら「となると」と分けます。
  • 〜としたら/〜とすれば/〜とすると(中級第15課)「としたら」は「もし本当にそうなら」と仮に考えてみる言い方で、まだ決まっていないことや実現しそうにないことにも使えます。「となると」は決まったことや現実になりそうなことを受けることが多く、「宝くじが当たったとしたら」を「となると」にすると、当たったことを前提に話している響きになります。
  • 〜から(に)は(中級第14課)「受けるからには、合格したい」は、そうすると決めた以上は、という決意や責任を表します。「やるとなったら」も決意を表せますが、「からには」のほうが義務・責任の響きが強く、前は自分で決めたことが中心です。
関連する文型
学習項目 3 〜次第だ/〜次第で

意味・はたらき

「N次第だ」は、物事の結果がNによって決まることを表します(「合格できるかどうかは努力次第だ」「やり方次第で、成績は伸びる」)。後押しの場面では、結果は相手の頑張りで変えられると伝えるのに使えます。第2課の「〜によって(さまざまだ)」は「国によって違う」のように違いがあることを言うだけですが、「次第」はNが決め手になることに重点があります。第4課の「Vます形+次第」(〜したらすぐ)とは別の表現です。「N次第では」は「Nによっては(そうなる場合もある)」という意味です。

接続

N+次第だ/次第で(次第では)、〜か(どうか)は N次第だ

形
結果は努力次第だやり方次第で、点数はまだ伸びる天気次第では、試合は中止になる受けるかどうかは、あなた次第だよ

導入

  • 何で決まるかを選ばせる黒板に「合格」と書き、その前に「頭のよさ?」「運?」「努力?」の3枚のカードを貼って、学習者にどれで決まるかを聞く。教師が「努力」を選んで「合格できるかどうかは、努力次第です」と言い、板書で「[結果]は[決め手]次第だ」の形にする。次に「やり方次第で、〜」と後ろに結果を続ける形を2行目に書き、第4課の「わかり次第(すぐ)」を3行目に並べて、前が名詞かます形かで意味が違うことを確かめる。

板書案

N+次第だ/N+次第で、〜
〜か(どうか)は N次第だ
合格できるかどうかは、これからの努力次第だ。
〔赤〕次第=決め手 〔青〕矢印 N → 結果
〔緑〕Vます形+次第(第4課)=〜したらすぐ

場面と発話(自作)

  • 模試の結果が悪くて落ち込んでいる友達を励ます。まだ3か月あるんだから、これからの勉強次第で十分逆転できるよ。
  • 週末の旅行の計画を立てている。行くかどうかは、天気次第だね。
  • 先生が進路相談で学生に言う。面接は、準備次第で印象がずいぶん変わりますよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、結果のカード(合格・試合・旅行・成績)と決め手のカード(努力・天気・練習・やり方)を組み合わせ、「〜は〜次第だ」「〜次第で、〜」を言わせる。次に ST4 のロールプレイで、不安そうな友達に「〜次第で、〜できるよ」と後押しの一言を入れさせる。

  1. 口頭結果のカードと決め手のカードを組み合わせて言わせる。キューの例:「合格・努力」→「合格できるかどうかは努力次第だ」、「試合・天気」→「試合があるかどうかは天気次第だ」、「やり方・成績」→「やり方次第で、成績は伸びる」。最後に「次第では」で「やり方次第では、1か月で話せるようになる」と可能性を広げる文も言わせる。
  2. ペアA は不安カード(「日本語がなかなか上手にならない」「面接がこわい」など)を1枚ずつ出して弱音を言い、B は決め手カード(練習・準備・気持ち・やり方)から一つ選び「〜次第で、〜できるよ」と後押しする。A は「そうかな」と受けて、自分でできることを一つ言う。交替。
  3. 産出「背中押しメッセージ」:受験や進学で迷っている知り合い(架空でよい)に、「〜次第で」「〜からいうと」を入れた4〜5文の励ましのメッセージを書き、自分の経験を一つ入れる。ペアで交換して、もらった側が一番心に残った一文を言う。教師は「次第」の前が結果を左右する要素になっているか、ます形の「次第」(すぐ)と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*努力の次第だ」と「の」を入れる。名詞に直接「次第」、と板書で確かめる
  • 「*天気次第、出発します」と「で」を落とし、第4課の「〜次第(すぐ)」と混ぜる。「天気次第で」と「で」を入れ、名詞につく「次第」は「〜によって決まる」だと3行の板書に戻る
  • 「国次第で、文化が違う」と違いを言うだけの文に使う。違いを言うなら「国によって」、決め手を言うなら「次第」と使い分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜次第(中級第4課)「準備ができ次第、出発します」の「Vます形+次第」は「〜したらすぐ」で、お知らせやメールで使います。「出発できるかどうかは準備次第だ」の「N次第」は結果を決めるものを示します。前がます形か名詞か、後ろが「すぐする行動」か「結果」かで見分けさせます。
  • 〜によって(さまざまだ)(中級第2課)「国によって違う」は違いがあることを言うだけで、どうすればよいかには触れません。「次第」はNが結果の決め手で、変えられる・選べるという含みが出るので、励ましの場面に向きます。「結果は努力によって違う」より「結果は努力次第だ」のほうが後押しになる、と比べて見せます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 相手の気持ちを後押ししたいときの表現後押しは、相手の不安を受け止める一言から始めて、根拠を示し、最後に応援の言葉で締めると押しつけに聞こえません。友達には話し言葉、先輩や先生にはていねいな形と、相手によって形を変える練習も入れます。例:「不安になるのもわかるよ」/「〜なら大丈夫だって」/「やるだけやってみたら?」/「だめでもともとだよ」/「せっかくだから」/「応援してるね」

5 見つけた!

できること教育について話題になっている新しい考え方の解説を読んで、どんな考え方か、従来とどこが違うか、期待と課題は何かを読み取れる。

場面

教育関係のウェブ記事やパンフレットで、最近学校に取り入れられている新しい学び方を解説している文章を読む場面です。教室では「探究学習」を説明する自作の解説(6〜8文)を配り、「定義」「従来との違い」「期待されること」「課題」に4色の線を引かせます。読み終わったら、自分の国の学校で同じことができそうか、理由をつけて話し合います。

  • 解説:最近、多くの学校で「探究学習」と呼ばれる学び方が注目を集めている。
  • 解説:探究学習とは、生徒が自分で問いを立て、その答えを自分たちで探していく学び方を指す。
  • 解説:先生が正しい答えを教える従来の授業とは異なり、答えが一つとは限らない。
  • 解説:生徒は、地域の人に話を聞いたり資料を調べたりしつつ、自分なりの答えをまとめていく。
  • 解説:途中でうまくいかなくても、最後まで考えぬく経験が、社会に出てから役に立つと期待されている。
  • 解説:一方で、準備に時間がかかり、先生の負担が大きいという課題も指摘されている。
学習項目 1 〜ぬく

意味・はたらき

「Vます形+ぬく」は、苦しいことや難しいことがあっても、最後までやりとおすことを表します(「最後まで走りぬく」「やりぬく」「守りぬく」)。「考えぬく」「悩みぬく」のように「とことん・徹底的に」の意味にもなります。ST3 の「〜きる」も最後までを表しますが、「食べきる」「使いきる」のように量を全部終えることにも使える中立的な言い方なのに対して、「ぬく」は困難を乗り越える意志や努力に重点があり、食べる・飲むのような日常の動作にはあまり使いません。解説やスピーチなど、やや改まった場面でよく使います。

接続

Vます形+ぬく

形
最後までやりぬく考えぬいて決めた42キロを走りぬいた自分で考えぬく力

導入

  • マラソンの絵で「きる」と比べるマラソンの絵(途中の苦しそうな顔とゴール)を見せ、「途中でやめたくなりますね。でも、ゴールまで……」と言って「走りぬきました」を板書する。同じ絵で「走りきりました」も書き、「きる=最後まで(距離を全部)」「ぬく=苦しくても最後まで」と、苦しそうな顔の絵を「ぬく」の横に貼って違いを見せる。次に「考えぬく」を出し、「とことん考える」の意味もあることを確かめる。

板書案

Vます形+ぬく
3年間、つらい練習の多い部活を続けぬいた。
〔赤〕ぬく=困難を乗り越えて最後まで 〔青〕上り坂の絵と頂上の旗
考えぬく・悩みぬく = とことん
〔緑〕きる:量が100%(食べきる ○)

場面と発話(自作)

  • 教育の新しい考え方を紹介する解説を読んでいる。答えのない問いを、最後まで考えぬく力が求められている。
  • 卒業式で、校長先生が卒業生に話す。苦しいときも3年間部活をやりぬいた経験は、きっと皆さんの力になります。
  • 友達が、悩んだ末に進路を決めたことを話す。何か月も悩みぬいて、やっぱり専門学校に行くことにしたんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、目標のカード(マラソン・研究・3年間の部活・自分の考え)と動詞(走る・やる・続ける・守る・考える)を組み合わせ、「〜ぬいた」で言わせる。次に「〜きる」と「〜ぬく」のどちらが合うかを選ぶ問題(ケーキを全部食べ__/つらい練習をやり__)を出し、理由を言わせる。最後に ST5 の解説で、なぜ「考えぬく」が使われているかを話し合う。

  1. 口頭目標のカードと動詞を組み合わせて言わせる。キューの例:「マラソン・最後まで」→「最後まで走りぬいた」、「3年間・部活」→「3年間、部活を続けぬいた」、「自分の考え・最後まで」→「最後まで自分の考えを守りぬいた」、「一晩・考える」→「一晩考えぬいて決めた」。言えたら「つらかったけど、」を前につけて言い直させ、困難とのつながりを意識させる。
  2. ペアA は「きる」「ぬく」の空欄カード(「ケーキを全部食べ__」「つらいリハビリをやり__」「お金を使い__」など)を出し、B がどちらかを選んで理由を言う。A は答えを見て正誤を伝え、迷ったものは二人で「量の話か、困難の話か」で考える。交替して5枚ずつ。
  3. 産出「やりぬいたことスピーチ」:自分がつらくても最後までやりとおしたこと(部活・受験・アルバイト・日本語の勉強)を、「〜ぬいた」を入れて1分で話す。途中でぶつかった困難を一つ必ず入れる。教師は困難の部分が話に入っているか、「ぬく」を食べる・飲むのような日常の動作に使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「ジュースを飲みぬいた」のように日常の動作に使い、大げさで不自然になる。量を全部終えるだけなら「飲みきった」、と選ぶ問題で確かめる
  • 「*最後までやってぬく」とテ形につける。「ます」を取った形につく、と「〜きる」と同じ板書で確かめる
  • 「抜く」(取り出す・追い越す)の意味だけを知っていて、「考えぬく」の意味が取れない。書き言葉では「考え抜く」と漢字で書くこともあると見せ、動詞のあとについたら「最後まで・とことん」と覚えさせる

既習の文型との違い

  • 〜きる/〜きれる/〜きれない(中級第16課)同じ課の3で出た形です。「きる」は量や状態が100%になる中立的な言い方、「ぬく」は困難を乗り越える意志や努力に重点があります。「やりきった」は全部終えた達成感、「やりぬいた」は途中の苦しさに負けなかった評価で、スピーチで苦労を語るなら「ぬく」が合う、と場面で選ばせます。
関連する文型
学習項目 2 〜つつ

意味・はたらき

「Vます形+つつ」は、初中級の「〜ながら」と同じく、同じ人が一つの動作をしながら、同時に別の動作をすることを表します(「楽しみつつ学ぶ」「意見を聞きつつ計画を立てる」)。「ながら」より硬い書き言葉で、解説・レポート・パンフレットなどで使い、会話で「テレビを見つつ、ご飯を食べた」と言うと硬すぎて聞こえます。第18課の「〜つつ(も)」(「悪いと知りつつ」=逆接)や第11課の「〜つつある」(変化の途中)と形が同じなので、後ろの続き方で見分けさせます。

接続

Vます形+つつ(前と後ろは同じ人の動作)

形
生徒は話し合いつつ、答えを探していく楽しみつつ学ぶ地域の人の意見を聞きつつ、計画を立てる(第18課)いけないと知りつつ=逆接

導入

  • 「ながら」の文と並べて硬さを比べるまず「音楽を聞きながら勉強します」を会話の例として板書し、全員で言う。次に ST5 の解説の一文を見せ、「調べたりしつつ、答えをまとめていく」の「つつ」に線を引いて、「ながら」と同じ意味で、書いた文章で使う形だと伝える。板書は「ながら(話す)」「つつ(書く)」の2列にし、同じ内容の文を両方の列に書いて、声に出して硬さの違いを比べる。

板書案

Vます形+つつ、〜(同じ人が同時に)
地域の人の話を聞きつつ、調べる内容を決める。
〔赤〕つつ=ながら(書き言葉) 〔青〕人の絵は1つだけ(主語が同じ)
〔緑〕つつ(も)(第18課)=のに / つつある(第11課)=変化の途中
会話では「ながら」

場面と発話(自作)

  • 教育の解説記事で、新しい授業のやり方を説明している。生徒は、地域の人に話を聞きつつ、町の課題を調べていく。
  • 大学のレポートで、調査の進め方を書く。これまでの研究を参考にしつつ、独自のアンケート調査を行った。
  • 学校のパンフレットが、授業の特徴を紹介している。本校では、楽しみつつ学べる授業を大切にしています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「〜ながら」の文のカード(調べながら考える・話を聞きながらメモする)を「〜つつ」の書き言葉に言い換えさせる。次に主語が違う文(先生が話す/学生がメモする)を混ぜ、「つつ」が使えるかどうかを判断させる。最後に ST5 の解説を読んだあと、その考え方の特徴を「〜つつ」を一つ入れて2〜3文で書かせる。

  1. 口頭「ながら」の文のカードを「つつ」に言い換えさせる。キューの例:「調べる・考える」→「調べつつ考える」、「楽しむ・学ぶ」→「楽しみつつ学ぶ」、「先輩の意見を聞く・計画を立てる」→「先輩の意見を聞きつつ計画を立てる」。次に「先生が話す・学生がメモする」のように主語が違うカードを混ぜ、全体で「つつ」が使えるかを手で○×させる。
  2. ペアA は「ながら」の会話文カード(「音楽を聞きながら勉強する」など)を読み、B はそれをパンフレットに載せる文として「つつ」に言い換える。A が「パンフレットなら?」「友達に言うなら?」と場面を指定し、B はそのたびに「つつ」と「ながら」を切り替える。交替。
  3. 産出「新しい学び紹介パンフレット」:ST5 で読んだような新しい学び方を自分の国の学校で取り入れるとしたらどうなるかを、パンフレットの紹介文として3〜4文で書く。「〜つつ」を1回入れ、ほかの文も書き言葉で統一する。教師は前と後ろが同じ人の動作か、「〜ね」「〜よ」のような会話の文末が混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*先生が説明しつつ、学生がメモする」と前と後ろの主語を変える。「つつ」は同じ人の2つの動作、と主語に下線を引かせて確かめる
  • 「*調べるつつ」と辞書形につける。「ます」を取った形、と「ながら」の板書の列で確かめる
  • 友達との会話で「歩きつつ話そう」と言い、硬く聞こえる。話すときは「ながら」、書くときは「つつ」と場面で選ばせる
  • 第18課の「〜つつ(も)」や第11課の「〜つつある」と同じだと思って意味を取り違える。後ろに「も」や「ある」が続くかどうかを見る習慣をつけさせる

既習の文型との違い

  • Vながら、〜(同時進行)(初中級第11課)意味は同じですが「つつ」は書き言葉で、会話で「テレビを見つつご飯を食べた」と言うと硬すぎます。また「ながら」は「歩きながら話す」のような体の動きにも気軽に使えるのに対して、「つつ」は「考えつつ」「配慮しつつ」のような頭や心の働きと相性がよいです。
  • 〜つつ(も)(中級第18課)「悪いと知りつつ、やってしまった」は「のに」の意味の逆接で、前は「知る・思う・わかる」のような認識の動詞が多いです。この課の「つつ」は同時の意味で、後ろが前と対立していません。後ろが前と逆の内容なら逆接、と読ませます。
  • 〜つつある(中級第11課)「増えつつある」は文末で、変化が進んでいる途中を表します。文の途中にあって後ろに別の動作が続くなら同時の「つつ」です。形だけで判断せず、どこにあるか(文末か途中か)で見分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 話題になっている新しい考え方の解説で使われる表現新しい考え方の解説は、名前の紹介、定義、従来との違い、期待、課題の順に書かれることが多いので、それぞれの段落で使われる表現に印をつけて読み取らせます。定義の表現は、ほかの話題(環境・働き方)でも使える型として、自分で一文作らせます。例:「〜とは、〜ことを指す」/「〜と呼ばれる」/「〜が注目を集めている」/「従来の〜とは異なり」/「〜ことが期待されている」/「一方で、〜という課題もある」

語彙の扱い

この課の語は、学校生活(部活・行事・制服・校則)、意見の言い方、受験(出願・倍率・合格発表)、教育の考え方(探究・主体的・評価)の4つのかたまりに分かれます。学校や受験の制度は国によって違うので、語を覚えさせるだけでなく、自分の国に同じものがあるか、呼び方がどう違うかを話させます。記事や解説の硬い語は、読めればよい語と、自分の意見を言うときに使えるようにする語を分けて扱います。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 部活(ぶかつ) 学校で授業のあとに、同じスポーツや趣味の仲間と続けて行う活動。「部活動」を短くした言い方。 〜に入る・〜をやめる・〜の先輩
    高校時代の思い出を友達に話す。
    高校のときは、毎日暗くなるまで部活をしたもんだよ。
  • 校則(こうそく) 学校で、生徒が守るように決められている決まり。 〜が厳しい・〜を守る・〜を破る
    制服についてのネットの書き込みに、自分の意見を言う。
    校則が厳しすぎるという意見も、わからないことはないです。
  • 行事(ぎょうじ) 決まった時期に行う催し。学校では運動会や文化祭、修学旅行など。 学校の〜・〜に参加する・年に一度の〜
    自分の国の学校と日本の学校を比べて話す。
    私の国の学校には、運動会のような行事はありませんでした。
  • 懐かしい(なつかしい) 昔のことを思い出して、そのころにもう一度戻りたいような気持ちになる。 〜思い出・〜く思う・〜曲
    卒業アルバムを見ている。
    この写真、懐かしいなあ。修学旅行で行った海だ。
  • 受験(じゅけん) 入学試験などの試験を受けること。 大学院を〜する・〜生・〜勉強
    大学院に行きたい友達の相談を聞く。
    大学院を受験するとなると、研究計画書も要るよね。
  • 願書(がんしょ) 入学などを申し込むときに出す書類。 〜を出す・〜の締め切り・〜を取り寄せる
    去年受験した先輩にアドバイスを聞く。
    経験からいうと、願書は締め切りの1週間前には出したほうがいいよ。
  • 例年(れいねん) いつもの年。ふだんの年と同じくらいであること。 〜並み・〜より多い・〜どおり
    入試の日の記事を読んで、表に書き込む。
    今年の受験者数は、例年より1割ほど少なかった。
  • 志望(しぼう) そこに入りたい、そうなりたいと望むこと。 第一〜・〜校・〜の理由
    面接の練習で、先生に質問される。
    第一志望の大学に入れるかどうかは、これからの勉強次第です。
  • 背中を押す(せなかをおす) 迷っている人を励まして、やってみようという気持ちにさせる。 友達の〜・そっと〜・〜一言
    受験を決めたきっかけを話す。
    先輩の一言が、迷っていた私の背中を押してくれました。
  • 主体的(しゅたいてき) 人に言われてするのではなく、自分で考えて自分から進んで行うようす。 〜に学ぶ・〜に取り組む・〜な姿勢
    新しい学び方の解説を読む。
    この学び方では、生徒が主体的に問いを立てつつ、調べ方を考えていく。
  • 従来(じゅうらい) これまで。前から今まで続いてきたこと。 〜の方法・〜どおり・〜と比べて
    解説を読んで、新しい考え方との違いをまとめる。
    従来の授業は、先生の説明を聞くことが中心だった。

宿題と次のコマ

宿題は、自分の国の学校生活と日本の学校生活の違いを一つ選び、「〜たものだ」で自分の経験を、「〜ないことはないが」で日本のやり方への意見を入れて、400字ほどの意見文を書いてくること。次のコマの最初に数人に読んでもらい、聞いた人に賛成か反対かを一言ずつ言わせてから、第17課「働くということ」の1「伝えてみよう」に入ります(学校を出たあとの進路として、仕事に対する考えを聞く話につなぎます)。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第16課「学校生活」は何コマで終わりますか?

    90分なら3コマが目安です。1コマ目に導入と1の聞き取り・2の意見、2コマ目に3の入試の記事と4の励ましのロールプレイ、3コマ目に5の解説と課のまとめを置きます。学習項目が13と多いので、記事や解説で読めればよい硬い形(〜にわたって・〜にもかかわらず・〜つつ)は意味の理解を先にし、言う練習は短くとどめると時間に収まります。

  • 「〜たものだ」は第7課にも出てきましたが、第16課ではどう扱えばいいですか?

    昔をなつかしむ意味は第7課と同じです。第7課は年配の人の昔話を聞く側でしたが、この課では学習者が自分の中学・高校時代を語る側に回るので、言う練習を中心にします。第5課の当然の「〜ものだ」とは前がタ形かどうかで見分ける、と最初に板書で確かめておくと混乱が少なくなります。

  • 「〜きる」と「〜ぬく」の違いはどう教えればいいですか?

    「〜きる」は量や状態が100%になる中立的な言い方、「〜ぬく」は困難を乗り越えて最後までやりとおす意志に重点がある言い方です。「走りきった/走りぬいた」はどちらも言えますが、「ぬいた」には苦しさに負けなかったという評価が入ります。食べる・飲むのような日常の動作は「きる」です。空欄の選択問題で「量の話か、困難の話か」と理由を言わせると定着しやすいです。

  • 「〜にもかかわらず」と「〜のに」の違いは?

    意味は近いですが、「のに」は不満や意外さがにじむ話し言葉、「にもかかわらず」は事実を客観的に伝える書き言葉です。この課では入試の記事の中で「にもかかわらず」を見つけ、会話に直すと「のに」になる、という言い換えで練習します。第4課の「〜にかかわらず」(関係なく)とは「も」の有無で意味が変わるので、板書で「も」に丸をつけて区別します。

  • 「〜となると」と「〜としたら」「〜なら」はどう使い分けますか?

    「〜なら」は相手の話を受けて助言を足す軽い言い方、「〜としたら」はまだ決まっていないことを仮に考える言い方です。「〜となると」は、決まったことや現実になりそうなことを受けて「それなら事情が変わる・こうしなければならない」と判断する重みがあります。ST4 では友達の「受けるとなると……」という不安を聞き取って返す形なので、まず後ろに「大変だ・〜なければ」が来ることを押さえます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。