日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第15課「情報社会に生きる」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること4つ(伝えてみよう・見つけた!・耳でキャッチ・こんなときどうする?)

情報がどんな道を通って自分に届くのか、その途中にどんな危うさがあるのかを考え、自分の情報の使い方について意見を持つことをめざす課です。1で自分のメディアの使い分けを理由つきで発表し、2の記事と3のラジオでソーシャルメディアや個人情報のマイナス面を読み・聞いて、4では自分だけでは決められない頼みを断る、という流れで進めます。「〜といった」「〜を通して」は第6課の例示や経由の表現の続きで、4の断り方は第14課の「できない事情を説明する」やり取りを、「〜かねない」は形が似た第10課の「〜かねます」と対比させます。課の終わりには、便利さと引きかえに何を差し出しているかを、自分の言葉で話せる状態をめざします。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目12時間90分×4コマ場面4

この課のねらい(Can-do)

  • 情報を集めるとき、目的に応じてメディアをどう使い分けているかを、理由と一緒に話せる
  • 記事を読んで、ソーシャルメディアを使うことのよくない面をつかむことができる
  • ラジオ番組を聞いて、個人情報の扱いについて自分で考える手がかりを得ることができる
  • 自分ひとりでは決められない頼みに対して、理由を伝えて断ることができる

進め方と時間配分

目安は 90分×4コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入10分スマホの画面(ニュースアプリ・SNS・動画サイト・地図)の写真を見せ、「今日、最初に見た情報は何で知ったか」を一人ずつ言わせる。出たメディアを黒板で「昔からあるもの」と「インターネットのもの」に分けて貼り、課の題「情報社会に生きる」を示す
1 伝えてみよう80分目的別(ニュース・天気・買い物・アルバイト探し)のメディア表を書く →「〜といった」でメディアをまとめ、「〜を通して」で情報の届き方を言う → 理由をつけて2分の発表、聞き手が一つ質問する
2 見つけた!90分見出しだけで内容を予想する(〜に関する)→ 自作の記事を読み、SNS のマイナス面を3つ探す →「〜ばかりに」「〜か〜ないかのうちに」「〜ことだ」を記事の中で確かめ、自分の経験を話す
3 耳でキャッチ90分聞く前に個人情報で心配なことを出し合う → 自作のラジオ番組を2回聞く(1回目は話題、2回目は専門家の注意)→「〜てしかたがない」「〜としたら」「〜かねない」「〜代わりに」で内容を言い直す
4 こんなときどうする?60分「できない」と「わけにはいかない」の区別 →「〜てからでないと」で先に必要なことを言う → 店員とお客さんのロールプレイで、理由を言って断り、代わりにできることを伝える
課のまとめ30分「便利な代わりに、何を渡しているか」をテーマに、自分がよく使うサービスを一つ選び、使い分け・心配な点・これからの使い方を1分で話す

1 伝えてみよう

できること情報を集めるとき、目的に合わせてどのメディアをどう使い分けているかを、理由と一緒に話せる。

場面

クラスで「私の情報の集め方」を2分ほどで発表する場面です。前もって、ニュース・天気・買い物・アルバイト探しなど目的ごとに、自分が使うメディアとその理由を表に書かせておき、表を見ながら話させます。発表のあと、聞き手が一つずつ質問して、理由をもう一歩説明させます。

  • 発表者:私は、ニュースは新聞やテレビといったマスメディアより、スマホのニュースアプリで読むことが多いです。
  • 発表者:電車の中でも、短い時間で読めるからです。
  • 発表者:一方、アルバイトの情報は、インターネットではなく、学校の先輩を通して知ることがほとんどです。
  • 発表者:実際に働いた人の話のほうが、信頼できると思うからです。
  • 聞き手:ネットの情報は、あまり信じていないんですか。
  • 発表者:信じていないわけではないんですが、一つの情報だけで決めないようにしています。
学習項目 1 〜といった

意味・はたらき

「AやBといったN」で、N の中身をいくつか例として挙げます。挙げたもの以外にもあることを含み、後ろには必ずそれらをまとめる名詞(メディア・方法・サービスなど)が来ます。「AやBなどのN」とほぼ同じ意味ですが、「〜といった」のほうが改まっていて、発表や文章に向きます。会話では「〜とか〜とか」「〜みたいな」のほうがふつうです。メディアの使い分けを話すとき、種類をまとめて示すのに使います。

接続

N1(や/、N2)+といった+N(V辞書形を並べることもある:「調べる、比べるといった作業」)

形
新聞やテレビといったマスメディアSNS や動画サイトといったネットのサービス調べる、比べるといった作業

導入

  • メディアの写真を分類する教師がテレビ・新聞・ラジオ・SNS の画面・動画サイトの写真を黒板に貼り、「昔からあるもの」「インターネットのもの」の二つに分けさせる。分けた列の下に「マスメディア」「ソーシャルメディア」と書き、教師が列の写真を指しながら「新聞やテレビといったマスメディア」と読む。板書は「[例]や[例]といった[まとめの名詞]」で、最後の名詞に線を引く。

板書案

〔青〕N1 や N2 + といった +〔赤〕まとめの名詞
新聞や テレビ といった マスメディア
SNS や 動画サイト といった ネットのサービス
〔赤〕最後の名詞 に二重線 →「〜などの」より改まった言い方
〔×〕テレビや新聞といった。(名詞で終わらない)

場面と発話(自作)

  • ゼミの発表で、自分の情報源を紹介する。私は、ニュースサイトや動画サイトといったインターネットのメディアで情報を集めることが多いです。
  • 留学生向けの説明会で、先輩が生活情報の調べ方を話す。市役所のホームページや地域の掲示板といった公的な情報も、ぜひ見てください。
  • レポートの書き出し。近年、SNS やブログといった、個人が発信できる媒体が増えている。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「新聞・ラジオ/マスメディア」「掃除・洗濯/家事」のように例とまとめの名詞のカードを出し、「〜や〜といった〜」の名詞句を作らせる。次に「よく使うメディア」「最近使わなくなったメディア」を「〜といった」で言わせ、1の発表の最初の文に入れる。

  1. 口頭教師が例とまとめの名詞のカードを2枚ずつ出す(「新聞・ラジオ/マスメディア」「掃除・洗濯/家事」「地図・天気/アプリ」「電車・バス/交通機関」)。全体で「新聞やラジオといったマスメディア」と名詞句を言い、次に個人を当てて、まとめの名詞のカードだけ伏せて言わせる。最後に名詞句を文に入れて「私は〜といった〜をよく使います」まで言わせる。
  2. ペアA は目的のカード(ニュース・天気・料理の作り方・アルバイト探し)を引き、B に「〜を調べるとき、何を使いますか」と聞く。B は「〜や〜といった〜を使います」と答え、A がそのうち一つについて「どうしてですか」と聞き返す。カード4枚で役を替える。
  3. 産出私のメディア地図:目的ごとに使うメディアを表に書き、その表を見ながら「〜といった」でまとめて1分で話す。教師は、まとめの名詞が落ちていないか、例がまとめの名詞より小さい種類になっているか、友達向けの部分で硬すぎる言い方を続けていないかを見て、終わったあとに一つずつ伝える。

つまずきと手当て

  • 「*私はテレビや新聞といった。」と、後ろの名詞を落として文を終える。「〜といった」は名詞の前にしか置けないので、カードの最後の名詞を手で隠して「何といった?」と聞き返す
  • 例とまとめの名詞の大きさがずれ、「テレビといったテレビ番組」のように言う。例はまとめの名詞より小さい種類で、ふつう二つ以上挙げることを、分類の表で確かめる
  • 友達との会話で「SNS といったものをよく見るよ」と言い、硬く聞こえる。誤りではないが、会話では「SNS とか」「SNS みたいなの」のほうが自然だと、同じ内容を言い換えて聞かせる

既習の文型との違い

  • NやNなど(初級 第3課)どちらも例を挙げますが、「〜など」は例の後ろで切って文を終えられるのに対し、「〜といった」は必ず後ろにまとめの名詞が要ります。意味の差は小さく、違いは硬さと形です。「*テレビや新聞といったをよく見る」のように「など」と同じ位置で使う誤りが出たら、後ろに入る名詞を聞き返します。
  • 〜のような/〜のように(例示)(中級 第6課)「NのようなN」も例示ですが、例を一つだけ挙げることが多く、会話でも使えます。「〜といった」はふつう例を二つ以上並べ、発表や文章に向く言い方です。「新聞のようなメディア」と「新聞やテレビといったメディア」を並べて、例の数と場面の違いを見せます。
  • 〜をはじめ(として)/〜をはじめとする(中級 第6課)「〜をはじめ」は代表的な一つを先頭に立てて、そのほかも含めます。「〜といった」は並べた例のあいだに順位がありません。「東京をはじめとする大都市」と「東京や大阪といった大都市」の違いを、先頭の扱いで説明します。
関連する文型
学習項目 2 〜を通して/〜を通じて

意味・はたらき

「Nを通して」で、情報や人とのつながりが、N というなかだち(人・メディア・活動)を経て届くことを表します。第6課で出た形のくり返しで、この課では「SNS を通して知った」「先輩を通じて紹介してもらった」のように、メディアや人を経て情報を得る使い方を中心にします。「Nで」は道具・手段を広く表しますが、「〜を通して」はそれを経て何かが伝わる・つながる場合に使い、はさみや箸のような道具には使いません。「〜を通じて」のほうがやや硬く、「一年を通じて(ずっと)」のように期間の全体を表す使い方もあります。

接続

N+を通して/を通じて(名詞を修飾するときは「Nを通してのN」「Nを通じたN」)

形
ニュースサイトを通して知る知人を通じて紹介してもらうSNS を通じた交流一年を通じて

導入

  • 情報が届く道をたどる黒板の左に「できごと」、右に学習者の絵を描き、あいだに「テレビ」「SNS」「友達」のカードを置いて矢印でつなぐ。教師が矢印をなぞりながら「私は、この大雨のことをテレビを通して知りました」と言う。学習者に最近知ったニュースを一つ挙げさせ、どのカードを経由したかを指させてから、「〜を通して知った」で言わせる。板書は「[情報]を [なかだち]を通して 知る/得る」。

板書案

〔青〕情報・人 → 〔赤〕なかだち(人・メディア・活動)→ 自分
N + を通して + 知る/知り合う/伝える
先輩を通して アルバイトのことを知った。
〔青〕N を通じた N / N を通しての N(名詞の前)
〔×〕はさみを通して切る → はさみで切る(道具は「で」)

場面と発話(自作)

  • サークルにどうやって入ったか聞かれる。同じ寮の先輩を通じて、このサークルのことを知りました。
  • 発表で、地域の情報の集め方を説明する。地域のことは、町内会の掲示板やメッセージアプリのグループを通して知ることが多いです。
  • 国の家族との連絡について話す。家族とは、ビデオ通話を通して毎週話しています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「アルバイトの情報/友達」「台風のニュース/ラジオ」のように情報となかだちのカードを出し、「〜を通して〜を知った」を作らせる。次にペアで最近知ったことを3つ挙げ、それぞれ何を通して知ったかを聞き合い、1の発表の材料にする。

  1. 口頭教師が情報となかだちのカードを組みで出す(「台風のニュース/ラジオ」「アルバイトの情報/先輩」「今の部屋/不動産屋のサイト」「このサークル/寮の友達」)。全体で「〜を通して〜を知りました」と言い、次に個人で、なかだちのカードを学習者に選ばせて言わせる。最後に名詞の前の形「SNS を通じた交流」も同じカードで作らせる。
  2. ペアA は「最近知ったこと」を3つメモし、B に「〜って知ってる?」と話しかける。B は「それ、何を通して知ったの?」と聞き、A は「〜を通して」で答える。メモが終わったら役を替え、2人で「人を通して知ったこと」と「メディアを通して知ったこと」に分けて表にする。
  3. 産出情報の道すじ発表:自分にとって大切な情報を一つ選び、どんな道を通って届いたかを矢印の図にして、「〜を通して」「〜といった」を使って1分で説明する。教師は、道具の「で」と取り違えていないか、名詞の前で「を通じた」になっているか、「を通じて」を会話の部分で続けすぎていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*SNS に通して知りました」と助詞を取り違える。「を通して」で一つのかたまりと、カードに助詞ごと書いて見せる
  • 道具や乗り物に使い、「はさみを通して切った」「電車を通して来た」のように言う。道具や手段そのものは「で」、それを経て情報や人が届くときが「〜を通して」と、矢印の図で確かめる
  • 名詞の前で「*SNS を通して交流」と言う。名詞を修飾するときは「SNS を通じた交流」「SNS を通しての交流」になると、板書に2行並べる

既習の文型との違い

  • 〜を通じて/〜を通して(中級 第6課)第6課で出た同じ形を、この課ではメディアや人を経て情報が届く使い方に寄せて使い直します。新しい形ではないので、導入は短くし、第6課の例を一つ思い出させてから情報の話に移ります。「一年を通じて」のような期間の使い方は、ここでは深追いしません。
  • 〜によって/〜により/〜による(中級 第13課)「〜によって」は手段・方法そのものを言い、「アンケートによって調べる」のように使えます。「〜を通して」は、それを経て人や情報がつながる流れに目が向きます。学習者が混ぜても意味が通ることは多いので、「なかだちの矢印が描けるか」で選ばせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 情報メディアを表すことばメディアの名前は、「マスメディア(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)」と「ソーシャルメディア(SNS・動画サイト・ブログ)」の二つに大きく分け、それぞれの下に具体的なものを書く表にして覚えさせます。発表では「〜といった〜」でまとめの名詞と組み合わせて使わせます。カタカナ語は「アプリ」「SNS(エスエヌエス)」のように略して言うことが多いので、正式な言い方と会話での言い方を並べて示します。例:「新聞やテレビといったマスメディア」「動画サイトで料理の作り方を調べる」「ニュースアプリの通知で知る」「口コミサイトで店の評判を見る」「検索して公式サイトを確かめる」

2 見つけた!

できること記事を読んで、ソーシャルメディアを使うことのよくない面をつかめる。

場面

素材は「SNS 疲れ」をテーマにした自作の短い記事(400字ほど・見出し、本文3段落、専門家の助言で結ぶ形)です。教室では最初に見出しだけを見せて内容を予想させ、次に本文を読んで、記事が挙げているマイナス面を3つ探させます。読み終わったら、自分が使ってみて気づいたことを話し合います。

  • 見出し:若者の SNS 利用に関する調査 4割が「疲れ」を感じる
  • 記事:ある大学の調査で、SNS を毎日使う学生のおよそ4割が「使っていて疲れる」と答えた。
  • 記事:返信の速さを気にするばかりに、食事中も通知が頭から離れないという声が多い。
  • 記事:写真を投稿するかしないかのうちに「いいね」の数を確かめてしまう、という学生もいた。
  • 記事:便利なつもりで始めたのに、思ったより時間をとられていた、と話す人も少なくない。
  • 記事:専門家は「疲れを感じたら、まず通知を切り、使わない時間を決めることだ」と話す。
学習項目 1 〜に関して/〜に関する

意味・はたらき

「Nに関して」で、話や文章の内容が N についてであることを表し、「Nに関するN」の形で名詞を修飾します。意味は「〜について」とほぼ同じですが、より改まった書き言葉で、記事の見出し・アンケート・お知らせによく出ます。会話では「〜について」がふつうです。記事を読むときは、「〜に関する」の前を見れば何の話かがつかめます。

接続

N+に関して(述語にかかる)/N+に関するN・N+に関してのN(名詞にかかる)

形
個人情報に関して注意するSNS の使い方に関する調査この件に関しては著作権に関してのお知らせ

導入

  • 見出しだけを読む教師が自作の記事の見出しを3つ(「大学生のスマホ利用に関する調査」「ネットの買い物に関して消費者に注意」など)だけ配り、何についての記事かを答えさせる。答えを「〜について」で言わせたあと、見出しの「〜に関する/〜に関して」に線を引き、「について」と同じ意味の書き言葉の形だと示す。板書は「Nに関して+述語」「Nに関する+名詞」の2行。

板書案

N + に関して + 述語   N + に関する +〔赤〕名詞
個人情報に関して 注意する。
SNS の使い方に関する 調査
〔青〕=「〜について」の書き言葉(見出し・お知らせ・アンケート)
〔×〕SNS に関して問題 → SNS に関する問題

場面と発話(自作)

  • 大学からのメールで、アンケートへの協力を頼まれる。学生のスマートフォン利用に関するアンケートにご協力ください。
  • アルバイト先の研修で、店長が注意点を話す。お客様の情報に関しては、絶対に外で話さないでください。
  • レポートの書き出し。本レポートでは、SNS の利用時間に関して調べた結果を述べる。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が話題のカード(「寮のルール」「アルバイトの時給」など)を見せ、見出しの形「〜に関する〜」と、文の形「〜に関して〜」の両方を作らせる。次に、2の記事を読む前に、見出しだけから内容を予想して話し合わせる。

  1. 口頭教師が話題のカードを出す(「寮のルール」「アルバイトの時給」「図書館の利用時間」「スマホの使い方」)。全体で見出しの形「〜に関するお知らせ」を言い、次に文の形「〜に関して質問があります」に直させる。最後に教師が「〜についての」で言った文を、個人に「〜に関する」で言い直させる。
  2. ペアA は自作の見出しカード(「大学生の睡眠に関する調査」など)を持ち、見出しだけを読み上げる。B は「何について書いてあると思う?」に答える形で、記事の中身を2つ予想する。A は答えを見せずに「たぶん〜に関して書いてあるね」とまとめ、カードを替えて交替する。
  3. 産出クラスアンケートづくり:グループで「〜に関するアンケート」の題を決め、質問を3つ書く。題には「〜に関する」、説明文には「〜に関して」を1回ずつ入れる。教師は、名詞の前と述語の前で形を選べているか、「について」と重ねていないか、口頭で結果を言うときに会話の言い方へ戻せているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*SNS に関して問題」と、名詞の前でも「に関して」を使う。名詞の前は「に関する」と、板書の2行を指して形を選ばせる
  • 「について」と混ぜて「*SNS について関する記事」と言う。どちらか一つを選ぶと確かめる
  • 友達との会話で「昨日の映画に関して話そうよ」と言い、硬く聞こえる。誤りではないが、会話では「〜について」「〜のこと」がふつうだと、言い換えて聞かせる

既習の文型との違い

  • 〜に対して/〜に対する(対象)(中級 第12課)「〜に対して」は気持ちや行動が向かう相手を表し、「お客様に対して丁寧に話す」のように使います。「〜に関して」は話や文章の内容が何についてかを表すので、相手には使いません。「お客様に関して丁寧に話す」のような言い方が出たら、「話す相手か、話の中身か」を聞いて選ばせます。
関連する文型
学習項目 2 〜ばかりに

意味・はたらき

「〜ばかりに」で、ただそれだけのことが原因で、よくない結果になったという、話し手の後悔や残念な気持ちを表します。「写真を一枚投稿したばかりに、住所が知られてしまった」のように、原因は小さなことで、結果は困ったことになります。「〜せいで」も悪い結果の原因を言いますが、「ばかりに」は「それさえなければ」という悔しさが強く、文章や改まった話でよく使います。よい結果には「〜おかげで」を使います。また「〜たいばかりに」は「どうしても〜したくて(無理なことをした)」という意味になります。

接続

V・イA普通形+ばかりに/ナAな・ナAである+ばかりに/Nである+ばかりに

形
投稿したばかりに知らなかったばかりにパスワードが簡単なばかりに注目されたいばかりに

導入

  • 小さな原因と大きな結果を並べる黒板の左に小さく「位置情報をオンにしたまま写真を投稿した」、右に大きく「家の場所が知られた」と書き、矢印でつなぐ。教師が「たったこれだけのことで、こんなことに……」と悔しそうな表情で言ってから、「写真を投稿したばかりに、家の場所が知られてしまった」と言い直す。後ろに「〜てしまった」が来やすいことも板書で示す。

板書案

〔青〕小さな原因 + ばかりに、〔赤〕よくない結果(〜てしまった)
写真を一枚 投稿したばかりに、家の場所が 知られてしまった。
〔青〕=「それさえしなければ」という くやしさ
〔×〕よい結果 → 「〜おかげで」
〔青〕V普通形/ナAな・ナAである/Nである + ばかりに

場面と発話(自作)

  • 友達に、SNS での失敗を話す。冗談のつもりで書いたばかりに、知らない人からたくさん批判されちゃって……。
  • 記事の一部。無料のアプリを気軽に入れたばかりに、連絡先がすべて流出したという例もある。
  • 先輩が後輩に、自分の経験を話す。日本語がよくわからなかったばかりに、契約の内容を確かめずにサインしてしまったんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「パスワードを誕生日にした/アカウントを乗っ取られた」のような原因と結果のカードを組みで出し、「〜ばかりに、〜てしまった」を作らせる。次に、2の記事のテーマに合わせて「ネットで起こりそうな失敗」をグループで考え、この形で言わせる。

  1. 口頭教師が原因と結果のカードを組みで出す(「パスワードを誕生日にした/乗っ取られた」「確かめずにサインした/高いお金を払った」「寝坊した/試験に遅れた」「有名人である/どこへ行っても見られる」)。全体で「〜ばかりに、〜てしまった」を言い、個人では悔しそうな表情まで付けて言わせる。最後に名詞・ナ形容詞のカードで接続を確かめる。
  2. ペアA は結果のカードだけ(「財布をなくした」「友達とけんかした」)を持ち、B に「それで、どうしたの?」と聞かれたら原因を作って「〜ばかりに……」と答える。B は「それさえしなければね」とあいづちを返す。2枚ごとに交替し、出た原因が小さなことになっているかを2人で確かめる。
  3. 産出ネット失敗談:自分か知り合いの、ネットやスマホでの小さな失敗を一つ選び、「〜ばかりに」を使って3文で話す。聞き手は「次はどうすればいい?」と聞き、話し手は「〜ことだ」で答える。教師は、結果がよくないことになっているか、「Vたばかり」の意味と混ざっていないか、名詞の接続を見る。

つまずきと手当て

  • 「Vたばかりです」(〜したすぐあと)と混同し、「投稿したばかりに」を「投稿した直後に」と読み取る。「ばかりに」の後ろには結果の文が続き、残念な気持ちがあると、2つの文を並べて違いを見せる
  • よい結果に使い、「毎日練習したばかりに合格できた」と言う。「ばかりに」は悪い結果に使い、よい結果は「〜おかげで」と、結果の欄に〇×をつけて区別させる
  • 名詞に「な」をつけて「*有名人なばかりに」と言う。名詞は「有名人であるばかりに」、ナ形容詞は「簡単なばかりに」と、接続の表で品詞ごとに確かめる

既習の文型との違い

  • 〜せいで/〜せいか/〜せいだ(中級 第8課)どちらも悪い結果の原因を言いますが、「せいで」は原因を責める言い方、「ばかりに」は原因が小さなことなのに大きな結果になった、という後悔が中心です。自分の失敗には「ばかりに」が合いやすく、他人や天気を責めるときは「せいで」が合いやすい(「彼が一言言ったばかりに」のように他人の行為にも「ばかりに」は使える)と、主語を変えた例で比べます。
  • 〜おかげで/〜おかげだ(中級 第8課)「おかげで」はよい結果の原因に使い、感謝の気持ちが入ります。「毎日練習したばかりに合格できた」のような誤りが出たら、結果の欄に〇か×かを書かせてから形を選ばせます。
  • Vたばかりです(初中級 第11課)「Vたばかりです」は「したすぐあと」という時間の意味で、後ろに結果の文は続きません。「投稿したばかりです」と「投稿したばかりに、〜」を並べ、「に」があると後ろに困った結果が来ると見せます。
関連する文型
学習項目 3 〜か〜ないかのうちに

意味・はたらき

「AかAないかのうちに」で、A が終わるか終わらないかというほとんど同時のタイミングで次のことが起こったことを表します。SNS の記事なら「投稿するかしないかのうちにコメントがつき始めた」のように、反応の速さを言うのに使えます。「〜たとたん」は「〜したすぐあとに意外なことが起きた」と意外さが中心で、「〜とすぐ」はただ続けて起こることですが、「か〜ないかのうちに」は A がまだ終わりきっていないくらい速いことを強調します。後ろには実際に起きたことを述べる文が来て、「〜しよう」「〜してください」のような意志や依頼は来ません。

接続

V辞書形・Vタ形+か+同じ動詞のVない形+かのうちに

形
投稿するかしないかのうちにベルが鳴るか鳴らないかのうちに席に着いたか着かないかのうちに

導入

  • 通知の速さを動作で見せる教師がスマホで写真を投稿するまねをし、親指で「投稿」を押すのとほぼ同時に、スマホが震えるまねをする。「投稿した……と思ったら、もう通知!」と驚いてみせてから、「投稿するかしないかのうちに、通知が来た」と板書する。同じ動詞を2回使うこと、前が肯定・後ろが否定であることに色をつける。

板書案

〔赤〕V(辞書形/タ形)か +〔赤〕同じV ない かのうちに、〜た
投稿するか しないかのうちに、通知が来た。
〔青〕前が終わりきらないうちに → ほとんど同時
〔×〕後ろに「〜ましょう」「〜てください」は来ない
来る(くる)か 来ない(こない)かのうちに

場面と発話(自作)

  • 記事の一部。人気の店の情報は、公開されるかされないかのうちに、何千回も共有される。
  • 友達に、ネットのチケット販売の話をする。発売が始まるか始まらないかのうちに、全部売り切れちゃったよ。
  • 授業のあとの教室の様子を話す。チャイムが鳴るか鳴らないかのうちに、みんなスマホを見始めた。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が動詞のカード(「座る」「始まる」「開く」「来る」)を出し、「〜か〜ないかのうちに」の前半だけを速く作らせる。次に「家に着く/雨が降り出した」のような組みのカードで文にし、最後に2の記事に出てくるような、ネットの反応の速さの例を自分で作らせる。

  1. 口頭教師が動詞のカードを出し、前半だけを速く言わせる(「座る→座るか座らないかのうちに」「始まる」「開く」「来る」「着いた」)。次に後半の結果カード(「電話が鳴った」「雨が降り出した」「売り切れた」)と組ませて文にする。全体のあと、個人で教師が手をたたく速さに合わせて言わせ、「ほとんど同時」の感じをつかませる。
  2. ペアA は動作のまねをし(座る・ドアを開ける・スマホの画面を押す)、その途中で B が「〜か〜ないかのうちに、〜た」と、続けて起きたことを言う。A は B の文の後ろに意志や依頼が入っていないかを確かめ、3回ずつで役を替える。
  3. 産出あっという間ニュース:「発売」「公開」「投稿」など、ネットの反応が速かった出来事を一つ取り上げ、ニュース番組の記者のつもりで「〜か〜ないかのうちに」を使って3文で伝える。教師は、前後で同じ動詞を使っているか、「来る」のナイ形の読み、後ろが実際に起きたことの文になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 後ろの動詞を変えて「*投稿するか見ないかのうちに」と言う。前と後ろは同じ動詞と、色をつけた板書で確かめる
  • 後ろに意志や依頼を置いて「*授業が終わるか終わらないかのうちに、帰りましょう」と言う。後ろは実際に起きたことを述べる文にすると確かめる
  • 「来る」のナイ形を誤って「*来るか来らないかのうちに」と言う。「来る(くる)か来ない(こない)か」と、読みを添えてくり返させる

既習の文型との違い

  • 〜たとたん(に)(中級 第14課)「〜たとたん」は前のことが終わった直後に、思いがけないことが起きたという意外さが中心です。「〜か〜ないかのうちに」は前のことがまだ終わりきらないほどの速さを言います。「ドアを開けたとたん、猫が飛び出した」と「ドアを開けるか開けないかのうちに、猫が飛び出した」を並べ、どちらが速いかを聞きます。
  • 〜(か)と思うと/〜(か)と思ったら(中級 第14課)「〜と思ったら」は、話し手が見ていた変化がすぐに起きたことを言い、「泣いていたと思ったら、もう笑っている」のように前後が対照的なこともよくあります。「〜か〜ないかのうちに」はそうした対照は言わず、時間の近さだけを強めます。
関連する文型
学習項目 4 〜ことだ

意味・はたらき

「Vることだ/Vないことだ」で、「〜するのがいちばんいい」という助言・忠告を表します。記事の最後で「知らない人からのメッセージには返信しないことだ」のように、読者への忠告をまとめるのによく使われます。「〜たほうがいい」より言い切りが強く、経験や知識のある人が相手に向けて言う形なので、目上の人には使いません。「〜べきだ」は社会的・道徳的にそうするのが当然という意味で、個人に向けた助言の「ことだ」とは向きが違います。

接続

V辞書形+ことだ/Vない形+ことだ

形
設定を確かめることだすぐに返信しないことだまずは落ち着くことです

導入

  • 記事の最後の一文を読む自作の短い記事の最後の段落だけを配り、「書いた人は読者に何をすすめていますか」と聞く。答えを「〜たほうがいいと言っている」で言わせたあと、記事の「〜ことだ」に線を引き、助言を強く言い切る形だと示す。続けて教師が先輩の顔で「日本語がうまくなりたいなら、毎日話すことだよ」と言ってみせ、誰が誰に言える形かを確かめる。板書は「Vる/Vない+ことだ = 〜するのがいちばんいい」。

板書案

〔青〕V辞書形 + ことだ  V ない + ことだ
〔赤〕= 〜するのが いちばんいい(助言・忠告)
疲れたら、まず 通知を切ることだ。
〔青〕上 → 下(先輩・専門家・記事) 〔×〕下 → 上(先生・上司)
〔×〕確かめるのことだ

場面と発話(自作)

  • 記事の結び。トラブルを防ぐには、写真を投稿する前に、写っているものをよく確かめることだ。
  • 先輩が後輩に、アルバイト探しの助言をする。条件がよすぎる求人には、すぐに応募しないことだね。
  • 部活の先輩が、試合前の後輩に。緊張したときは、まず深呼吸することだよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が悩みのカード(「スマホを見すぎる」「夜眠れない」)を出し、先輩の立場で「〜ことだ」を使った助言を言わせる。次に2の記事を読んだあと、記事の忠告を自分の言葉でもう一度「〜ことだ」でまとめさせる。

  1. 口頭教師が悩みのカードを出す(「スマホを見すぎる」「夜眠れない」「日本語の聞き取りが苦手」「知らない人からメッセージが来る」)。全体で「〜ことだ」の助言を言い、次に個人で、同じ悩みにナイ形の助言「〜ないことだ」も言わせる。最後に教師が先生役になり、学習者が同じ助言を「〜たほうがいいかもしれません」に言い換える。
  2. ペアA は後輩役、B は先輩役。A が悩みのカードを読んで相談し、B は「〜ことだね」で助言を一つ、理由を一つ言う。A は「わかりました、やってみます」で受ける。次に A を先輩、B を先生役に変え、相手が目上になったときに形を言い換えられるかを確かめる。
  3. 産出先輩からのひとこと:日本に来たばかりの後輩に向けて、ネットやスマホで気をつけることを「〜ことだ」「〜ないことだ」で3つ書き、カードにして教室に貼る。教師は、助言の相手が目下か同じ立場になっているか、辞書形・ナイ形に直接ついているか、驚きの「ことだ」と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 先生や上司に「先生、早く休むことです」と言ってしまう。文法の誤りではないが、上から言う形なので、目上には「〜たほうがいいかもしれません」などに言い換えると確かめる
  • 「のこと」とまぜて「*確かめるのことだ」と言う。動詞の辞書形・ナイ形に直接「ことだ」がつくと、接続の表を見せる
  • 「なんと便利なことだ」のような驚き・感心の「ことだ」と混同する。形容詞につくものは気持ち、動詞の辞書形・ナイ形につくものは助言、と例を並べて区別させる

既習の文型との違い

  • Vたほうがいいです/Vないほうがいいです(初級 第12課)どちらも助言ですが、「ほうがいい」は選択肢の一つとしてすすめる、相手との上下をあまり問わない言い方です。「ことだ」は「これがいちばん」と言い切るので、目上には使いません。先輩と後輩、学生と先生のカードで、同じ内容をどちらで言うかを選ばせます。
  • Vたらどうですか(初中級 第12課)「Vたらどうですか」は相手に提案して返事を待つ形で、会話の中でやわらかく使えます。「ことだ」は返事を待たずに助言をまとめる形で、記事の結びや先輩の言葉に向きます。学習者には「質問の形か、言い切りか」で区別させます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 利用してみて気が付いた予想外のことを述べるときの表現期待と結果のずれを言う表現は、「思っていたこと」と「実際」の2つの欄に分けて板書すると、どの表現がどちら側につくかがわかりやすくなります。記事を読んだあと、自分の SNS やアプリの経験を話すときに使わせます。例:「思ったより時間をとられていた」「便利なつもりが、意外と疲れる」「こんなに個人情報が集められているとは思わなかった」「使ってみて初めて、通知の多さに気づいた」「気がついたら、2時間も見ていた」

3 耳でキャッチ

できることラジオ番組を聞いて、個人情報の扱いについて自分で考える手がかりを得られる。

場面

素材は、生活情報のラジオ番組(3分ほど)を自作し、教師2人で録音するか、教師が声色を変えて読み上げたものです。パーソナリティがリスナーのメールを紹介し、専門家が個人情報で気をつけることを話す構成にします。聞く前に「個人情報で心配なこと」を出し合っておき、1回目は話題、2回目は専門家の注意を聞き取らせます。

  • パーソナリティ:今日はリスナーの方からのメールです。『最近、知らない会社から私の名前入りのメールが届いて、気になってしかたがありません』。
  • 専門家:どこかで登録した情報が使われているのかもしれませんね。
  • パーソナリティ:もし情報が漏れていたとしたら、どんなことが心配ですか。
  • 専門家:同じパスワードを使い回していると、ほかのサービスまで乗っ取られかねません。
  • 専門家:無料のアプリやポイントカードは便利な代わりに、名前や買い物の記録を渡しているんです。
  • パーソナリティ:便利さと引きかえだということを、意識しておきたいですね。
学習項目 1 〜てしかたがない/〜てしょうがない

意味・はたらき

気持ちや体の感じが強くて、自分ではおさえられないことを表し、「心配でしかたがない」「気になってしょうがない」のように感情・感覚のことばにつきます。「しょうがない」のほうが話し言葉で、ラジオに届くリスナーのメールや友達との会話によく出ます。「〜てたまらない」も強い気持ちを表しますが、うれしい・ほしいなど気持ちそのものの強さに重点があり、「〜てならない」は「気がしてならない」「思えてならない」のように自然にそう感じてしまうことを言う、やや硬い言い方です。主語はふつう話し手で、ほかの人のことは「〜てしかたがないようだ/らしい」にします。

接続

Vて+しかたがない・しょうがない/イAくて+しかたがない・しょうがない/ナAで+しかたがない・しょうがない

形
心配でしかたがない気になってしょうがない眠くてしかたがない不安でしょうがない

導入

  • リスナーのメールを先に聞かせる教師がラジオのパーソナリティのまねをして、自作のメールを読む。「先月、SNS に写真を載せてから、知らない人にフォローされていて、気になってしょうがないんです」。「この人の気持ちは?」と聞き、「すごく気になる」「止められない」を引き出してから、「〜てしかたがない/〜てしょうがない」を板書し、前に来るのが気持ち・感覚のことばであることを確かめる。

板書案

〔青〕気持ち・感覚のことば + て + しかたがない/しょうがない
心配でしかたがない  気になってしょうがない  眠くてしかたがない
〔赤〕ナA + で イA + くて V + て
〔青〕しょうがない = 話し言葉
〔×〕姉は不安でしかたがない → 不安でしかたがないようだ

場面と発話(自作)

  • ラジオ番組に送るメール。自分の名前で検索したら昔の写真が出てきて、気になってしかたがありません。
  • 友達に、発表の前の日の気持ちを話す。明日の発表、緊張してしょうがないよ。
  • 昼休みのあと、同僚に。お昼ご飯のあとは、眠くてしかたがないんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が気持ち・感覚のカード(「不安」「眠い」「気になる」「のどがかわく」)を出し、テ形に変えて「〜てしかたがない」を作らせる。次にペアで「最近、気になってしょうがないこと」を話し、3のラジオ番組に送るメールを一文書かせる。

  1. 口頭教師が気持ち・感覚のカードを品詞ごとに色分けして出す(「心配(ナ)」「眠い(イ)」「気になる(動詞)」「のどがかわく(動詞)」「不安(ナ)」)。全体でテ形に変えて「〜てしかたがない」を言い、個人では表情を付けて「〜てしょうがない」に替えさせる。最後に教師が「お姉さんは?」と主語を替え、「〜ようだ」を付けさせる。
  2. ペアA は「最近、気になってしょうがないこと」を一つ考え、B に話す。B は「どうして?」「いつから?」と2つ聞いてから、自分の場合を「私も〜てしかたがないことがある」で返す。終わったら、相手の話を第三者に伝えるつもりで「〜さんは〜てしかたがないそうです」と言い直す。
  3. 産出ラジオへのお便り:3のラジオ番組に送るつもりで、ネットや個人情報について気になっていることを「〜てしかたがない」を使って3〜4文のメールに書く。読み上げたあと、ほかの学習者が専門家役で一言答える。教師は、品詞ごとの接続、気持ちのことばにつけているか、ほかの人の気持ちを言い切っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 接続を誤って「*心配てしかたがない」「*眠いでしかたがない」と言う。ナ形容詞は「で」、イ形容詞は「くて」と、品詞ごとに色を変えた表で確かめる
  • ほかの人のことを「*姉は不安でしかたがない」と言い切る。他人の気持ちは「不安でしかたがないようだ/らしい」と、外から見た形にさせる
  • 気持ちと関係のない様子に使い、「この部屋は広くてしかたがない」と言う。広すぎて困っているという気持ちがなければ「とても広い」で十分だと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜てたまらない(中級 第9課)「〜てたまらない」も強い気持ちを表し、多くの場合「〜てしかたがない」と入れ替えられます。違いは、「たまらない」がうれしい・ほしいなど気持ちそのものの強さに目が向くのに対し、「しかたがない」はおさえられなくて困っている感じが出やすいことです。どちらを使っても誤りにならない例が多いので、細かく区別させすぎないようにします。
  • 〜てならない(中級 第14課)「〜てならない」は「気がしてならない」「思えてならない」のように、自然にそう感じてしまう心の動きにつきやすく、やや硬い言い方です。「眠くてならない」より「眠くてしかたがない」のほうが会話では自然なことを、話し言葉と書き言葉の2列で示します。
関連する文型
学習項目 2 〜としたら/〜とすれば/〜とすると

意味・はたらき

本当かどうかわからないこと、まだ起きていないことを仮に事実だと考えて、そのときどうなるかを述べます。ラジオで「もしパスワードが知られていたとしたら」のように、心配な状況を仮定して話を進めるのに使います。「〜たら」はふつうの条件にも使えますが、「〜としたら」は「仮にそうだとすると」という仮定の気持ちが強く、人から聞いた話を前提にするとき(「その話が本当だとしたら」)にもよく使います。「〜とすれば」「〜とすると」も同じ意味で、話の筋から結論を導く言い方になりやすく、少し硬めです。会話では「〜としたら」がいちばん広く使えます。

接続

V・イA普通形+としたら・とすれば・とすると/ナA・N+だ+としたら・とすれば・とすると

形
情報が漏れたとしたらその話が本当だとすれば来月引っ越すとすると仮に無料だとしたら

導入

  • 「もし本当なら?」から考える教師が「友達から『このアプリは位置情報を勝手に送っている』と聞きました。本当かどうかはわかりません」と前置きし、「もし本当なら、どうなる?」と聞く。出た答えを板書し、教師が「本当だとしたら、使うのをやめたほうがいいですね」とまとめる。「だ」を入れることと、前にはまだわからないことが来ることに印をつける。

板書案

〔青〕まだわからないこと + としたら、〜
その話が 本当だとしたら、使うのをやめたほうがいい。
〔赤〕ナA・N + だ + としたら(「だ」を落とさない)
としたら(会話・広い)/とすれば・とすると(結論を導く・硬め)
〔×〕春になるとしたら → 春になったら

場面と発話(自作)

  • ラジオの専門家が、リスナーの質問に答える。もし同じパスワードをほかのサイトでも使っているとしたら、すぐに変えたほうがいいですね。
  • 友達と旅行の計画を話す。来月行くとしたら、どこがいいと思う?
  • レポートで調査の結果を考察する。この結果が正しいとすれば、学生の多くはニュースを SNS で読んでいることになる。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「宝くじが当たった」「明日から日本語しか使えない」のような仮定のカードを出し、「〜としたら、〜」で答えさせる。次に3のラジオに出てくるような「もし〜が漏れていたとしたら」を、心配な状況と対処の組みにしてペアで言わせる。

  1. 口頭教師が仮定のカードを出す(「宝くじが当たった」「明日から日本語しか使えない」「このアプリが位置情報を送っている」「来月引っ越す」)。全体で「〜としたら、〜」を言い、個人では後ろを自分の考えで作らせる。最後に名詞・ナ形容詞のカード(「本当」「無料」)で「だとしたら」を言わせ、「だ」を落とさないことを確かめる。
  2. ペアA は「人から聞いた話」のカード(「あの店は来月閉まるらしい」など)を読み上げる。B は「それが本当だとしたら、〜」と、困ることか、すべきことを一つ言う。A は「とすると、〜ということだね」と結論を一つ足す。カード3枚で役を替える。
  3. 産出もしもの相談室:個人情報が漏れた・アカウントが乗っ取られた、などの「もしも」を一つ選び、専門家役として「もし〜としたら、まず〜、次に〜」の形で対処を1分で説明する。教師は、仮定の前の部分がまだわからないことになっているか、「だ」の有無、「とすると」の後ろに依頼を続けて不自然になっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • ナ形容詞・名詞で「だ」を落とし「本当としたら」と言う。「Nとしたら」は「私としたら(私の立場から言えば)」のような別の意味になることがあるので、仮定のときは「本当だとしたら」と「だ」を必ず入れる
  • 必ず起こることに使い、「春になるとしたら、桜が咲く」と言う。確かに起こることはふつう「〜たら」「〜と」で言い、「〜としたら」はわからないことの仮定に使うと確かめる
  • 「〜とすると」の後ろに依頼を置き、「その話が本当だとすると、すぐ連絡してください」と言う。誤りとまでは言えないが、「とすると・とすれば」は判断や結論を続けるのが自然で、依頼や誘いには「としたら」のほうが落ち着くと示す

既習の文型との違い

  • 〜たら(仮定条件)(初級 第15課)「〜たら」は起こるかどうかわからないことにも、いずれ起こることにも使えます。「〜としたら」は「仮にそうだとすると」と事実かどうか不確かだという気持ちが強く、人から聞いた話を前提にするときに向きます。「春になったら」は自然ですが「春になるとしたら」は不自然なことを、確かさの線を引いて見せます。
  • 〜にしたら/〜にすれば/〜にしてみたら/〜にしてみれば(中級 第8課)形が似ていますが、「Nにしたら」は「Nの立場から見ると」という意味で、仮定ではありません。「親にしたら心配だ」と「親だとしたら心配だ」を並べ、「だと」が入ると仮定になると示します。学習者が「本当としたら」と言ったときに、この違いを思い出させます。
関連する文型
学習項目 3 〜かねない

意味・はたらき

「Vかねない」で、よくないことが起こる可能性があるという心配や警告を表します。「個人情報が悪用されかねない」のように、そのままにしておくと悪い結果になりうる、という言い方です。「〜かもしれない」はよいことにも悪いことにも使える推量ですが、「〜かねない」は悪い結果にだけ使います。「〜おそれがある」も悪いことの可能性ですが、ニュースや公式の文書向きでさらに硬く、「〜かねない」はラジオの解説や会話でも使えます。形には「ない」がついていますが、意味は「〜するかもしれない」で、打ち消しではありません。

接続

Vマス形の語幹+かねない(「なりかねない」「されかねない」)

形
悪用されかねないトラブルになりかねない誤解を招きかねない事故につながりかねない

導入

  • 危ない写真を見せる教師が、宅配便の伝票の住所がはっきり写っている自作の投稿写真を見せ、「この写真、どこが危ない?」と聞く。学習者が見つけたら、教師が「このまま載せると、家の場所が知られかねないですね」と言う。板書で「ない」に×をつけて「=知られるかもしれない(悪いこと)」と書き、打ち消しではないことを最初に確かめる。

板書案

〔青〕Vます → V + かねない
このまま載せると、家の場所が 知られかねない。
〔赤〕「ない」に × → = 知られるかもしれない(悪いこと)
かもしれない(軽い)→ かねない → おそれがある(硬い・公式)
〔青〕かねます(第10課)= できない / かねない = 悪いことが起こりうる

場面と発話(自作)

  • ラジオの専門家が注意を呼びかける。何気ない一枚の写真から、住んでいる場所がわかってしまうことにもなりかねません。
  • アルバイト先で、先輩が後輩に。お金の数え間違いは大きな問題になりかねないから、二回確かめてね。
  • 友達の寝不足を心配して。そんなに無理してたら、体を壊しかねないよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が行動のカード(「パスワードを誕生日にする」「歩きながらスマホを見る」)を出し、「〜と、〜かねない」で悪い結果を言わせる。次に3のラジオを聞いたあと、番組で話していた危険を「〜かねない」で一つずつ言い直させる。

  1. 口頭教師が動詞のカードを出し、「ます」を手で隠して語幹に「かねない」をつけさせる(「漏れます」「なります」「招きます」「壊します」「乗っ取られます」)。次に行動のカード(「パスワードを誕生日にする」「歩きながらスマホを見る」)を出し、「〜と、〜かねない」で悪い結果を言わせる。最後に教師が「かねます」と「かねない」を交互に言い、意味をすぐ答えさせる。
  2. ペアA は「危ない投稿」の絵カード(伝票の住所が写った写真・制服で学校がわかる写真など)を見せる。B は危ない点を見つけて「このままだと、〜かねないよ」と注意し、A は「じゃあ、どうすればいい?」と聞き返す。B が「〜ことだ」で答えたら交替する。
  3. 産出安全チェック係:グループで、自分たちがよくするネットの行動を5つ挙げ、それぞれ「〜と、〜かねない」の注意書きを作って、クラス用のチェック表にする。教師は、マス形の語幹についているか、よい結果に使っていないか、「かねる」と混ざっていないか、「かもしれない」で十分な軽い話に硬い形を使いすぎていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 辞書形につけて「*漏れるかねない」と言う。マス形の語幹(漏れます→漏れ)につけると、「ます」を消す動作で見せる
  • 打ち消しの意味だと思い、「悪用されかねない」を「悪用されない」と読み取る。板書の×の印をくり返し指して、悪いことが起こる可能性だと確かめる
  • よいことに使い、「毎日勉強すれば合格しかねない」と言う。よい可能性は「〜かもしれない」「〜可能性がある」で言うと、〇×の表で区別させる
  • 「お答えしかねます」の「〜かねる」と混同する。「かねる」は「(立場上)できない」、「かねない」は「悪いことが起こりうる」で、別の意味だと並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〜かねます(中級 第10課)「〜かねます」は「(立場上)〜できない」と丁寧に断る形、「〜かねない」は悪いことが起こる可能性を言う形で、意味が逆に見えるほど違います。同じ課の4の断り方で「判断しかねます」が出るので、2つを1枚の板書に並べ、「ない」がついたほうが心配の意味だと確かめます。
  • 〜おそれがある(中級 第5課)どちらも悪いことの可能性ですが、「おそれがある」は天気予報・ニュース・注意書きのような公式の言い方です。「かねない」はラジオの解説や会話でも使え、「このままだと」という話し手の判断が入りやすい形です。
  • 〜かもしれません(初中級 第5課)「かもしれない」は推量で、よいことにも悪いことにも使えます。「かねない」は悪いことにしか使いません。「合格するかもしれない」は自然、「合格しかねない」は不自然という対で、〇×をつけさせます。
関連する文型
学習項目 4 〜代わりに

意味・はたらき

この課の「〜代わりに」は、何かを得る代わりに、別の何かを差し出す(がまんする)という交換の関係を表します。ラジオで「無料で使える代わりに、個人情報を渡している」のように、便利さと引きかえのものを考えるのに使います。第8課の「Nの代わりに」は「A ではなく B を使う・B がする」という代わりの意味でしたが、ここでは文につけて「A というよい点がある代わりに、B という悪い点もある」「A してあげる代わりに B してほしい」の意味になります。似た「〜反面」は一つのものの二つの面を述べる硬い言い方で、取り引きの気持ちは「代わりに」のほうが強く出ます。

接続

V辞書形・イA+代わりに/ナAな+代わりに/Nである+代わりに(「Nの代わりに」は代わりの意味)

形
無料で使える代わりに便利な代わりに家賃が安い代わりに私が料理をする代わりに

導入

  • 取り引きのまねをする教師が「無料クーポン」と書いたカードを学習者に渡し、引きかえに学習者の名札(名前と誕生日を書いたもの)を受け取るまねをする。「クーポンが無料でもらえました。でも、何を渡しましたか」と聞き、「名前と誕生日」を引き出してから、「クーポンが無料でもらえる代わりに、名前と誕生日を渡した」と板書する。左に得たもの、右に渡したものを書き、天びんの絵で二つが釣り合っていることを見せる。

板書案

〔青〕得るもの + 代わりに、〔赤〕差し出すもの
無料で使える代わりに、名前や 買い物の記録を 渡している。
〔青〕V辞書形・イA/ナAな/Nである + 代わりに
(天びんの絵:左に得るもの、右に渡すもの)
〔青〕Nの代わりに(第8課)= A ではなく B

場面と発話(自作)

  • ラジオのパーソナリティが話をまとめる。便利なサービスが無料で使える代わりに、私たちは自分のデータを渡しているわけです。
  • ルームメイトと家事の分担を決める。私が料理をする代わりに、お皿洗いはお願いね。
  • 部屋探しで聞いた話を、友達に伝える。あの部屋、駅から遠い代わりに、家賃がすごく安いんだって。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「家賃が安い/駅から遠い」「仕事が楽だ/給料が低い」のようなよい点と悪い点の組みのカードを出し、「〜代わりに、〜」でつながせる。次に、自分がよく使うアプリや店について、利点と引きかえのものを「〜代わりに」で言わせ、3のラジオの話題につなげる。

  1. 口頭教師がよい点と悪い点の組みのカードを出す(「家賃が安い/駅から遠い」「仕事が楽だ/給料が低い」「無料だ/広告が多い」「便利だ/個人情報を渡す」)。全体で「〜代わりに、〜」でつなぎ、個人では左右のカードを入れ替えて言わせ、意味がどう変わるかを確かめる。最後に「私が〜する代わりに、〜てね」の取り引きの形も作らせる。
  2. ペアルームメイト同士の家事の分担を決める。A は自分がやりたい家事を言い、「私が〜する代わりに、〜はお願いね」と頼む。B は条件を一つ足して返す(「いいよ。その代わり、〜」)。決まった分担を表に書き、役を替えてもう一度行う。
  3. 産出サービスの天びん:自分がよく使うアプリかサービスを一つ選び、天びんの絵の左に得ているもの、右に渡しているものを書いて、「〜代わりに」を使って1分で説明する。最後に「それでも使うか」を自分の意見で言う。教師は、得るものと渡すものが逆になっていないか、ナ形容詞の「な」、第8課の「Nの代わりに」との取り違えを見る。

つまずきと手当て

  • 第8課の「Nの代わりに」とまぜて、「無料の代わりに、データを渡す」と言う。交換の意味をはっきりさせたいときは「無料で使える代わりに」のように文の形にすると示す
  • ナ形容詞で「*便利代わりに」と「な」を落とす。接続の表で「便利な代わりに」と確かめる
  • 前と後ろの関係がわからなくなり、得たものと渡したものを逆に言う。天びんの左右に何を置いたかを先に言わせてから文にする

既習の文型との違い

  • 〜の代わりに/〜に代わって(中級 第8課)「Nの代わりに」は「A ではなく B を使う、B がする」という入れ替わりの意味です。この課の「〜代わりに」は文につき、よい点と引きかえの悪い点、またはしてあげることと引きかえのお願いを表します。「父の代わりに来た」と「家賃が安い代わりに、駅から遠い」を並べ、前が名詞か文かで見分けさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • マイナスのことが起こる可能性を心配するときによく使われることば・表現心配の表現は、ラジオでよく聞く動詞(漏れる・悪用される・流出する・巻き込まれる・乗っ取られる)と、可能性を言う文末(〜かもしれない・〜かねない・〜おそれがある)に分け、組み合わせて使わせます。文末は「かもしれない」がいちばん軽く、「かねない」「おそれがある」の順に硬く、警告の色が強くなることも並べて示します。例:「個人情報が漏れるかもしれない」「パスワードが悪用されるおそれがある」「詐欺に巻き込まれかねない」「万一流出したらと思うと、心配だ」「アカウントが乗っ取られないか不安だ」

4 こんなときどうする?

できること自分だけでは決められない頼みに対して、理由を言って断り、代わりにできることを伝えられる。

場面

コンビニでアルバイト中の留学生が、お客さんから「昨日ここで財布を落としたかもしれないので、防犯カメラの映像を見せてほしい」と頼まれる場面です。映像にはほかのお客さんも映っており、アルバイトの自分には決められないので、理由を言って断り、店長に確認すると伝えます。教室では店員とお客さんの役割カードを作り、お客さんの頼み方を何通りか用意して、粘られたときの返し方まで練習します。

  • お客さん:すみません、昨日ここで財布を落としたかもしれないんです。防犯カメラの映像を見せてもらえませんか。
  • 店員:それはご心配ですね。ただ、映像にはほかのお客様も映っているので、私の判断でお見せするわけにはいかないんです。
  • お客さん:少しだけでもだめですか。
  • 店員:申し訳ありません。店長に確認してからでないと、お答えできないんです。
  • 店員:店長は夕方に来ますので、お電話番号を教えていただければ、こちらからご連絡します。
  • お客さん:わかりました。じゃあ、お願いします。
学習項目 1 〜てからでないと/〜てからでなければ

意味・はたらき

「AてからでないとB(ない)」で、A をしたあとでなければ、B はできない・決められないという条件を表します。断る場面では「店長に確認してからでないと、お答えできません」のように、今すぐ決められない理由を示すのに使います。「〜てから」は単に順番を言うだけですが、「〜てからでないと」は A が必要な条件であることを強く言い、後ろには「できない」「わからない」「無理だ」のような否定や難しさを表す言い方が来ます。「〜てからでなければ」のほうがやや硬く、会話では「〜てからじゃないと」になります。似た「〜ないことには〜ない」は、A がなければ話が始まらないという気持ちが強くなります。

接続

Vて+からでないと/からでなければ(後ろは否定・不可能の表現)

形
店長に確認してからでないと実際に見てからでなければ相談してからでないと、お返事できません

導入

  • 順番のカードを並べる教師が「店長に聞く」「お客さんに答える」の2枚のカードを並べ、店員役で「すみません、店長に聞いてからでないと、お答えできないんです」と言う。カードの順番を入れかえようとすると教師が首を振ってみせ、「先に必ずこれ」という条件だと示す。板書は「Vてからでないと、〜できない/わからない」で、後ろの否定に色をつける。

板書案

〔青〕先にすること(Vて)+ からでないと、〔赤〕〜できない/わからない
店長に 確認してからでないと、お答えできません。
〔青〕順番だけ:Vてから → 必要な条件:Vてからでないと
〔青〕会話:〜てからじゃないと 書き言葉:〜てからでなければ
〔×〕確認してからでないと、お答えします

場面と発話(自作)

  • アルバイト先で、お客さんに頼まれる。申し訳ありません。責任者に確認してからでないと、お答えできないんです。
  • 友達に旅行に誘われて。シフトを見てからじゃないと、行けるかどうかわからないなあ。
  • 部屋を借りる前に、不動産屋に。部屋を実際に見てからでなければ、決められません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「先にすること」のカード(「家族に相談する」「予定を確かめる」)と「まだできないこと」のカードを組みで出し、「〜てからでないと、〜ない」を作らせる。次に4の場面で、お客さんや友達の頼みにこの形で答えるロールプレイにつなげる。

  1. 口頭教師が「先にすること」と「まだできないこと」のカードを組みで出す(「家族に相談する/決める」「予定を確かめる/返事する」「部屋を見る/契約する」「店長に聞く/答える」)。全体で「〜てからでないと、〜できません」を言い、個人では後ろを「わからない」「無理だ」に替えさせる。最後に同じ文を友達向けの「〜てからじゃないと」に言い直させる。
  2. ペアA は友達役で誘いや頼みのカード(「週末、旅行に行かない?」「このパソコン、売ってくれない?」)を読む。B は「〜てからじゃないと、〜」で今すぐ決められない理由を言い、「〜たら、連絡するね」と次の約束を付ける。2回目は A をお客さん、B を店員にして、丁寧な形で同じやり取りをする。
  3. 産出即答しないロールプレイ:アルバイト先や寮で、自分だけでは決められない頼みをされる場面を、役割カードで演じる。店員・係の役は「〜てからでないと」と「〜わけにはいかない」を一回ずつ使い、代わりにできることを言って終える。教師は、後ろが否定・不可能の言い方になっているか、テ形の接続、相手に合わせた丁寧さを見る。

つまずきと手当て

  • 後ろを肯定にして「*確認してからでないと、お答えします」と言う。後ろは「できない」「わからない」などの否定になると、色をつけた板書で確かめる
  • 辞書形につけて「*確認するからでないと」と言う。テ形に「から」がつく形だと、「〜てから」から作らせる
  • 友達に「シフトを見てからでなければ、わかりません」と言い、硬く聞こえる。誤りではないが、友達には「〜てからじゃないと」がふつうだと、言い換えて聞かせる

既習の文型との違い

  • Vてから、〜(初級 第12課)「Vてから」は「A のあとで B」という順番を言うだけです。「〜てからでないと」は「A をしなければ B はできない」と A が必要な条件だと強く言い、後ろは否定になります。「確認してから答えます」と「確認してからでないと答えられません」を並べ、後ろの形の違いに色をつけます。
  • 〜ないことには〜ない(中級 第4課)どちらも「A がなければ B は成り立たない」という条件ですが、「〜ないことには」は「A がなければそもそも話が始まらない」という気持ちが強く、A が大きな前提であることが多いです。「〜てからでないと」は手順の前後に目が向くので、仕事の確認や手続きの場面に合います。
関連する文型
学習項目 2 〜わけにはいかない/〜わけにもいかない

意味・はたらき

「Vるわけにはいかない」で、能力ではなく、立場・決まり・常識・人間関係などの事情から、そうすることはできないことを表します。断る場面で「ほかのお客様の映像をお見せするわけにはいかないんです」のように、気持ちはあってもできない理由がある、と伝えるのに使えます。「〜できない」は能力や物理的にできないことにも使えますが、「わけにはいかない」は事情による不可能だけです。「Vないわけにはいかない」は「しないのは許されない=しなければならない」の意味になります。「〜わけにもいかない」は「(ほかの方法と同じく)それもできない」で、「断るわけにもいかず、困った」のように板ばさみの気持ちを表します。

接続

V辞書形+わけにはいかない(事情でできない)/Vない形+わけにはいかない(しなければならない)/V辞書形+わけにもいかない

形
勝手に決めるわけにはいかないお見せするわけにはまいりません行かないわけにはいかない断るわけにもいかない

導入

  • できるのに、できない教師がペンを持って「これで書くことはできます」と言ってから、机の上の書類を指し、「でも、この書類に私が勝手にサインするわけにはいきません。校長先生の書類ですから」と言う。「書く力はある、でも立場の事情で×」と板書し、「できない(力・物理)」と「わけにはいかない(事情)」を2列に分ける。そのあと「明日は親友の結婚式。行かないわけにはいかない」を足し、ナイ形につくと「しなければならない」になることを見せる。

板書案

〔青〕力はある、でも〔赤〕立場・決まり・常識の事情で ×
V辞書形 + わけにはいかない:ほかのお客様が映っているので、お見せするわけにはいきません。
〔青〕V ない + わけにはいかない = しなければならない
〔青〕V辞書形 + わけにもいかない = それもできない(板ばさみ)
できない(力・物理)| わけにはいかない(事情) の2列

場面と発話(自作)

  • アルバイト先で、知らない人に店員の連絡先を聞かれる。申し訳ありませんが、スタッフの個人情報をお教えするわけにはいかないんです。
  • 熱があるが、大事な試験の日。今日の試験は休むわけにはいかないから、行ってくるよ。
  • 先輩に頼まれた仕事が多すぎるが、断りにくい。正直大変だけど、お世話になっている先輩だし、断るわけにもいかなくて……。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず教師が「できる力はあるが事情でだめ」の状況カード(「お酒が飲める/これから運転する」「答えを知っている/試験中だ」)を出し、「〜わけにはいかない」で理由と一緒に言わせる。次に4の場面で、頼みを「〜てからでないと」と組み合わせて断るロールプレイにする。

  1. 口頭教師が「力はあるが事情でだめ」の状況カードを出す(「お酒が飲める/これから運転する」「答えを知っている/試験中だ」「鍵を持っている/人の部屋だ」「連絡先を知っている/お客様の情報だ」)。全体で理由と一緒に「〜から、〜わけにはいきません」と言い、個人では「泳げない」のような能力のカードを混ぜて、「できない」か「わけにはいかない」かを選ばせる。最後にナイ形の「〜ないわけにはいかない」を一枚入れる。
  2. ペアA は頼む側、B は断る側。A が頼みのカードを読み、B は「お気持ちはわかりますが、〜わけにはいかないんです」と理由を言って断る。A がもう一度粘ったら、B は「〜てからでないと」を使って次の手順を示す。次に B の立場を「頼まれて断りたいが断りにくい」に変え、「〜わけにもいかなくて」と困った気持ちを話させる。
  3. 産出粘られても断るロールプレイ:店員とお客さん、寮の係と住人などの組み合わせで、2回粘られても丁寧に断り、代わりにできることを伝える場面を演じ、録音して聞き直す。教師は、能力の不可能と事情の不可能を取り違えていないか、辞書形の接続、二重否定の意味、断りの前に相手の気持ちを受け止めているかを見る。

つまずきと手当て

  • 能力の不可能に使い、「泳げないので、海で泳ぐわけにはいきません」と言う。泳ぐ力がないなら「泳げません」、事情でだめなら「わけにはいかない」と、2列の板書でふり分けさせる
  • 可能形につけて「*話せるわけにはいかない」と言う。辞書形につけると、接続の表で確かめる
  • 「行かないわけにはいかない」を「行けない」の意味に取る。二重の否定は「行かなければならない」と言い直させる
  • 「わけにはいかない」と「わけにもいかない」の区別がつかない。「も」はほかの方法もだめでこれもだめ、という板ばさみのときと、場面のカードで選ばせる

既習の文型との違い

  • Nができます/Vることができます(状況)(初級 第10課)初級で習った「(状況で)〜できない」は、事情による不可能も物理的な不可能も表せます。「わけにはいかない」は事情による不可能だけで、「本当はしたい・する力はある」という含みがあります。断りの場面で「お見せできません」と「お見せするわけにはいきません」を比べ、理由の伝わり方の違いを感じさせます。
  • 〜わけではない/〜というわけではない(中級 第9課)「〜わけではない」は「いつも・全部がそうだとは言えない」という部分的な打ち消しで、不可能の意味はありません。「わけ」が同じなので混ざりやすく、「行くわけではない」を「行けない」の意味に取る誤りが出ます。後ろが「ではない」か「にはいかない」かで、意味の型を分けて覚えさせます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 自分で判断できないことを伝える表現断るときは、①相手の気持ちを受け止める → ②自分では決められない理由 → ③代わりにできること、の順で言うと冷たく聞こえないことを示し、②の表現はお客さんや目上の人向けのていねいな形で使わせます。「判断しかねます」の「〜かねる」は第10課で出た「できない」の意味の形で、3の「〜かねない」とは意味が違うことにも触れます。例:「私の一存では決められないので……」「担当の者に確認してみます」「私だけでは判断しかねます」「一度持ち帰って、相談させてください」「店長と相談してから、改めてご連絡します」

語彙の扱い

この課の語は、メディアの名前(マスメディア・ソーシャルメディア・アプリ)、ネットの利用にかかわる語(投稿・共有・通知・検索・アカウント)、危険を言う語(漏れる・流出・悪用・乗っ取り・詐欺)の3つのかたまりに分かれます。カタカナ語や略語は学習者のほうが詳しいことも多いので、教師が教えるより「母語では何と言うか」「日本ではどう言うか」を比べさせ、漢語(個人情報・流出・悪用)の読みと意味を中心に確かめます。危険を言う語は「悪用される」「乗っ取られる」のように受身で使うことが多いので、形ごと覚えさせます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 投稿する(とうこうする) SNS などに、写真や文章を出して、ほかの人が見られるようにすること。 写真を〜・SNS に〜・〜した写真
    友達が旅行の写真をネットに出したと話す。
    昨日の写真、もう投稿したの?
  • 共有する(きょうゆうする) 情報や写真を、ほかの人にも見られるように分けること。 情報を〜・グループで〜・〜ボタン
    アルバイトの連絡を、グループのみんなに伝える。
    シフトの表、グループで共有しておくね。
  • 通知(つうち) アプリなどが、新しい知らせがあると画面に出して教えること。 〜が来る・〜を切る・〜をオフにする
    勉強中にスマホが何度も鳴って困っている。
    勉強するときは、通知を切ったほうがいいよ。
  • 検索する(けんさくする) 知りたいことばを入れて、インターネットで情報を探すこと。 ネットで〜・名前で〜・〜結果
    行きたい店の場所がわからない。
    店の名前で検索したら、地図が出てきた。
  • 個人情報(こじんじょうほう) 名前・住所・電話番号など、その人がだれかがわかる情報。 〜を守る・〜が漏れる・〜の扱い
    アルバイト先で、お客様の情報の扱いを教わる。
    お客様の個人情報は、外で話さないでください。
  • 漏れる(もれる) 外に出てはいけない情報が、知らないうちに外に出てしまうこと。 情報が〜・秘密が〜・外に〜
    ニュースで、会社の情報が外に出たと聞く。
    登録した人の住所が漏れたらしいよ。
  • 悪用する(あくようする) 人の情報やものを、悪いことのために使うこと。 情報を〜・〜される・〜を防ぐ
    知らない人からのメールについて、友達に注意する。
    そのメールに返信すると、アドレスを悪用されかねないよ。
  • 乗っ取る(のっとる) ほかの人のアカウントなどに勝手に入って、自分のもののように使うこと。 アカウントを〜・〜られる・〜の被害
    友達の SNS から、変なメッセージが届いた。
    あれ、もしかしてアカウントを乗っ取られたんじゃない?
  • 設定(せってい) アプリや機械の使い方を、自分に合うように決めておくこと。 〜を変える・公開の〜・〜を確かめる
    自分の投稿をだれが見られるか、友達に聞かれる。
    設定を変えて、友達だけが見られるようにしたよ。
  • 口コミ(くちこみ) 実際に使った人や行った人が伝える、評判や感想。 〜を見る・〜で知る・〜サイト
    新しいレストランを選ぶ。
    口コミを見ると、この店はランチがおいしいらしい。
  • 確認する(かくにんする) 本当か、まちがいがないかを、もう一度見たり聞いたりして確かめること。 店長に〜・内容を〜・〜してからでないと
    アルバイト中に、自分では決められないことを頼まれる。
    店長に確認してから、ご連絡します。
  • 断る(ことわる) 頼まれたことや誘われたことを、しないと伝えること。 頼みを〜・誘いを〜・丁寧に〜
    先輩に頼まれた仕事が多すぎて困っている。
    お世話になっている先輩だから、断るわけにもいかなくて。

宿題と次のコマ

宿題は、自分がよく使うアプリかサービスを一つ選び、「便利な点」「その代わりに渡しているもの」「これから気をつけること」を、この課の文型を3つ以上使って200字ほどで書いてくること。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞き手に「もし〜としたら、どうしますか」と一つ質問させます。そのあと、「学生のころ、学校の情報を何を通して知っていたか」を短く話し合ってから、第16課「学校生活」の1(学校生活の思い出を聞く)に入ります。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第15課「情報社会に生きる」は何コマで終わりますか?

    90分なら4コマが目安です。1コマ目に導入と「伝えてみよう」、2コマ目に「見つけた!」、3コマ目に「耳でキャッチ」、4コマ目に「こんなときどうする?」と課のまとめを置きます。文型が12と多いので、「〜を通して」のように前の課で出た形は導入を短くして時間を作ります。

  • 「〜かねない」と「〜かねます」の違いはどう教えればいいですか?

    「〜かねます」は「(立場上)できない」と丁寧に断る形、「〜かねない」は悪いことが起こりうるという心配の形です。この課では両方が近い場面に出るので、1枚の板書に並べ、「ない」がついたほうが心配の意味だと確かめます。最初に「かねない」の「ない」に×をつけて、打ち消しではないと示しておくと混乱が減ります。

  • 「〜ばかりに」と「〜せいで」はどう使い分けますか?

    どちらも悪い結果の原因を言いますが、「せいで」は原因を責める言い方、「ばかりに」は小さなことが原因で困った結果になったという後悔が中心です。自分の失敗の話には「ばかりに」、他人や天気を責めるときは「せいで」が合う、と主語を変えた例で比べます。よい結果の「おかげで」も同じ表に並べると、三つの向きが一度に整理できます。

  • 「〜わけにはいかない」と「〜できない」はどう違いますか?

    「できない」は能力にも事情にも使えますが、「わけにはいかない」は立場・決まり・常識などの事情でできない場合だけです。「泳げないので」のような能力の話に使う誤りが出やすいので、「する力はあるか」を先に聞いて2列に分けます。ナイ形につく「行かないわけにはいかない」は「行かなければならない」の意味になることも、別の行で示します。

  • この課の「見つけた!」「耳でキャッチ」で教科書以外の素材を使うなら、何を用意すればいいですか?

    400字ほどの自作の記事と、3分ほどの自作のラジオ番組で足ります。記事は見出し・本文3段落・専門家の助言で結ぶ形にし、ラジオはリスナーのメールと専門家の注意で組むと、この課の文型が自然に入ります。録音は教師2人で読むか、1人で声を変えて読めば十分です。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。