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できる日本語 初級 第12課「病気・けが」の教案
『できる日本語 初級 本冊 第2版』 ・ ST「体の調子」「アドバイス」「病院で」
体の調子が悪いときに、まわりの人や病院でどこがどう悪いかを伝え、助けを求め、言われたことを聞き取れる ようになる課です。ST1 で自分の症状を「〜んです」で説明して早く帰りたいことや休んだ理由を伝え、ST2 で調子の悪い友達に「〜たほうがいいです」と助言し、ST3 で病院の受付や診察室で症状を話して、薬の飲み方などの指示を「〜てから」「〜前に」の形で聞き取ります。第11課の普通形とタ形、第10課のナイ形、第7課のテ形、第9課の辞書形がそのまま土台になるので、どの形も作り方の説明はほとんど要りません。課の終わりには、熱が出た朝に学校へ連絡し、病院で症状を伝えて薬をもらうまでの一続きのやり取りをめざします。
このページについて 教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目 4時間 90分×3コマ場面 3
このページの内容
この課のねらい(Can-do)
進め方と時間配分
ST1 体の調子
ST2 アドバイス
ST3 病院で
語彙の扱い
宿題と次のコマ
よくある質問
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課のねらい(Can-do)
体の調子が悪いとき、症状を短く説明して、早く帰りたいことや休んだわけを伝えられる
調子の悪い友達に、したほうがいいこと・しないほうがいいことを言える
病院で症状を伝え、薬の飲み方などの順番や時を表す指示を聞き取れる
進め方と時間配分 目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
段 時間 やること
導入(第11課とのつなぎ) 15分 教師が額に手を当てて顔をしかめ、学習者に「どうしましたか」と聞かせる。体の部分(頭・のど・おなか・歯・足など)の絵を貼り、「頭が痛いです」「熱があります」「せきが出ます」を全員で言う。第11課の普通形の表を黒板の端に残しておく
ST1 体の調子 70分 様子のおかしい人を見て「どうしたんですか」→ 普通形+「んです」で症状を説明 → 先生に「〜んです。早く帰ってもいいですか」と早退を頼む・休んだ翌日にわけを言うロールプレイ
ST2 アドバイス 60分 症状カードを引いた友達に「〜たほうがいいです」「〜ないほうがいいです」→ 一つの症状に助言を2つ返す。ST1 の「どうしたんですか」から続けてやり取りにする
ST3 病院で 90分 受付と診察室の場面 → 医者の指示「〜てから」「〜前に」を薬の袋の絵で聞き取る → 学習者が患者・医者・受付を交代で演じる
課のまとめ 35分 熱が出た朝の流れを一続きで演じる: 学校に電話してわけを言う → 友達から助言をもらう → 病院で症状を話し、薬の飲み方を聞いて復唱する
ST1 体の調子
できること 体の具合が悪いとき、症状を簡単に説明して、早く帰らせてもらうことを頼んだり、休んだわけを言ったりできる。
場面 授業中やアルバイト中に気分が悪くなり、先生や店長に話す場面と、前の日に学校を休んで次の日にわけを言う場面です。教室では学習者に症状カード(頭痛・熱・腹痛・のどの痛み)を伏せて配り、カードの症状を顔と体で演じさせて、まわりの人が「どうしたんですか」と声をかける形にします。
日本人の友達:顔が赤いですね。どうしたんですか。
留学生:朝から頭が痛いんです。
日本人の友達:大丈夫ですか。
留学生:ちょっと……。
先生:(そばに来て)どうしたんですか。
留学生:先生、すみません。熱があるんです。今日は早く帰ってもいいですか。
先生:いいですよ。お大事に。
留学生:ありがとうございます。すみません。
学習項目 1 どうしたんですか/〜んです
意味・はたらき
「〜んです」は、目の前の様子やできごとについてわけや事情を説明する 言い方で、「どうしたんですか」は相手のいつもと違う様子を見て、そのわけを聞く言い方です。聞かれた人は「頭が痛いんです」のように「んです」で答えると、ただ事実を言うより「だから今こうなっている」という説明として伝わります。ST1 では、体調が悪いことを伝えて早く帰ることを頼むときや、休んだわけを言うときの前置きとして使います。文法用語では「ノダ文 」と呼ばれ、説明のモダリティ を表す形として扱われます。初級では「目に見える様子のわけを言う」場面に絞って入ると、使いどころがつかみやすくなります。
接続 普通形+んです(ナA・N は「〜なんです」。会話では「〜んです」、書くときは「〜のです」)
形
頭が痛いんです(イA) 熱があるんです(V) 昨日、寝なかったんです(Vなかった) 風邪なんです(N)
導入
様子を見せてから聞かせる 教師がおなかを押さえて黙って座り、学習者が「大丈夫ですか」と言ったら、教師が「どうしたんですか、と聞いてください」と促す。聞かれたら「おなかが痛いんです」と答える。同じ動きで「頭が痛いです」とだけ答えた場合と並べて、「んです」は今の様子のわけを説明しているのだと気づかせる。板書は「どうしたんですか」「[普通形]+んです」の2行にし、下に「イA:痛いんです/V:あるんです/ナA・N:風邪な んです」と3段に書く。
休んだわけを言う カレンダーの昨日の欄に×をつけ、教師が学生役になって「昨日はすみませんでした。熱があったんです」と言ってみせる。過去のことでも普通形のタ形に「んです」をつけるだけだと、第11課の普通形の表を指して確かめる。
板書案
どうしたんですか。(↗ やわらかく)
[普通形]+ んです
イA:頭が痛いんです V:熱があるんです
ナA・N:風邪〔赤〕なんです
過去:昨日、熱があったんです(タ形+んです)
〔青〕横に第11課の普通形の表を残す
場面と発話(自作)
アルバイト中に気分が悪くなり、店長に話す。 すみません、ちょっと気分が悪いんです。少し休んでもいいですか。
前の日に学校を休み、次の日に先生にわけを言う。 昨日はすみませんでした。熱があったんです。
友達が足を引きずって歩いているのを見て声をかける。 どうしたんですか。——階段で足が痛くなったんです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、症状の絵カード(頭・のど・おなか・歯・熱・せき)を見せて普通形+「んです」に言い換えさせ、次に「昨日」のカードを足してタ形+「んです」にする。そのあと症状カードを伏せて配り、演じた人に「どうしたんですか」と聞いて答えさせ、最後に先生役に「〜んです。早く帰ってもいいですか」と頼むところまでつなげる。
口頭 キューは①症状の絵カード(頭・のど・おなか・熱・せき)→「頭が痛いんです」、②「昨日」のカードと絵を一緒に → 「昨日、熱があったんです」、③教師の動作(くしゃみ・足を押さえる・額に手を当てる)→ 学習者が「どうしたんですか」と聞き、教師が答える、の3種類。全体で言わせてから個人を指名し、ナA・N のカード(風邪・大変)を途中に混ぜて「な」を落とさないか見る。
ペア A は症状カードを相手に見せずに持ち、顔と体で演じる。B は「どうしたんですか」と聞き、A は「〜んです」で答え、B は「大丈夫ですか」で受ける。答えのあとでカードを見せて合っていたか確かめ、役を交替する。B は症状を知らないので、聞く必要が本当に生まれる。
産出 「早退おねがいロールプレイ」。教師が先生役になり、学習者は自分で選んだ症状で「先生、すみません。〜んです。早く帰ってもいいですか」と頼む。続けて翌日の場面にして「昨日はすみませんでした。〜んです」とわけを言う。教師は、普通形が正しく作れているか(ナA・N の「な」、丁寧形に「んです」をつけていないか)と、「どうしたんですか」が責める調子になっていないかを見て、その場で言い直させる。
つまずきと手当て
「*風邪んです」「*大変んです」と ナA・N に「な」を入れない。板書の3段の「な」を赤で書き、ナA・N の語だけ集めて言わせる
「*痛いですんです」「*ありますんです」と丁寧形に「んです」をつける。「んです」の前は普通形だけ、と第11課の普通形の表に戻って確かめる
何でも「んです」で言い、「わたしは学生なんです」「毎日学校へ行くんです」と、説明の要らない文にまでつける。文としては正しいが、わけを求められていない場面では何か事情があるように聞こえる。わけを聞かれたとき・わけを言いたいときに使う、と「どうしたんですか」との対で練習する
目上の人に「先生、どうしたんですか」を強く下げ調子で言い、問い詰めるように聞こえる。心配している気持ちが出るよう、やわらかく上げ調子で言う練習をし、医者が使う「どうしましたか」も聞いてわかればよいとする
既習の文型との違い
どうして/〜から(第5課) 「〜から」はわけを文の中で言う形で、「熱がありますから、帰ります」のように、わけとそのあとのことを一続きで言います。「〜んです」は相手が見ている様子のわけを説明して、事情をわかってもらう言い方です。様子を見て「どうしたんですか」と聞かれたときは、「頭が痛いですから」で終えるより「頭が痛いんです」のほうが自然な答えになります。
普通形(第11課) 第11課では普通形を友達言葉として文の終わりに使いましたが、ここでは「んです」の前に入る部品として使います。丁寧さは「んです」の「です」が受け持つので、前は普通形のままです。学習者が「*痛いですんです」と丁寧形を重ねたら、この役割の違いに戻ります。
関連する文型
ST2 アドバイス
できること 体の調子がよくない友達に、こうしたほうがいい・こうしないほうがいいと助言できる。
場面 寮や教室で、友達がせきをしていたり疲れた顔をしていたりするのに気づき 、声をかけて助言する場面です。症状カードを引いた学習者のまわりに2〜3人が集まり、一人ずつ違う助言をする形にすると、言うことが重ならないように考える必要が生まれます。
留学生A:せきが出ますね。どうしたんですか。
留学生B:昨日から、のどが痛いんです。
留学生A:今日は早く寝たほうがいいですよ。
留学生B:でも、宿題がありますから……。
留学生A:宿題は明日、一緒にしましょう。冷たい水は飲まないほうがいいですよ。
留学生B:そうですね。ありがとう。
学習項目 1 Vたほうがいいです/Vないほうがいいです
意味・はたらき
相手のために、こうしたほうがいい・こうしないほうがいい と助言する言い方です。するほうを勧めるときはタ形、しないほうを勧めるときはナイ形に「ほうがいいです」をつけます。ST2 では、調子の悪い友達に「早く寝たほうがいいですよ」「無理しないほうがいいです」のように言い、「よ」をつけると相手の知らないことを教える感じが出ます。「ほう」が入っているとおり、二つのやり方を比べて一方を勧める言い方なので、どうするか迷っている相手や、気づいていない相手に向きます。
接続 Vた+ほうがいいです/Vない+ほうがいいです
形
薬を飲んだほうがいいです 病院へ行ったほうがいいです お風呂に入らないほうがいいです 無理しないほうがいいです
導入
症状に助言を重ねる 教師がせきをしながら「のどが痛いんです」と言い、学習者に「どうしますか」と身ぶりで聞く。学習者から「薬」「寝る」などの語が出たら、教師が「そうですね。薬を飲んだほうがいいですね」と文にして返す。次に冷たいジュースの絵を見せ、首を振って「冷たいジュースは飲まないほうがいいです」と言う。板書は「Vた +ほうがいいです」「Vない+ほうがいいです」の2行にし、上がタ形、下がナイ形であることを矢印で示す。
板書案
Vた + ほうがいいです(する)
Vない + ほうがいいです(しない)
早く寝たほうがいいですよ。
冷たい水は飲まないほうがいいですよ。
〔赤〕「た」「ない」に丸 〔青〕×飲まなかったほうがいい に斜線
場面と発話(自作)
寮で、熱のある友達に声をかける。 今日は学校を休んだほうがいいですよ。
歯が痛いのに我慢している友達に言う。 早く歯医者へ行ったほうがいいです。甘い物は食べないほうがいいですよ。
疲れた顔のクラスメートに言う。 今晩はアルバイトをしないほうがいいですよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、動詞カード(寝る・休む・飲む・行く・入る)を見せてタ形+「ほうがいいです」、×印をつけたカードでナイ形+「ほうがいいです」に言い換えさせる。次に症状カードを引いた学習者に、まわりの人が「する」助言と「しない」助言を一つずつ言う。最後は ST1 の「どうしたんですか」「〜んです」から始めて、助言を受けて「そうですね。ありがとう」で終わるやり取りにする。
口頭 キューは①動詞カード(寝る・休む・病院へ行く・薬を飲む)→ タ形+「ほうがいいです」、②×印のついたカード(お酒・冷たいジュース・お風呂・アルバイト)→ ナイ形+「ほうがいいです」、③教師が症状を言う(「熱があるんです」「歯が痛いんです」)→ 学習者が助言を一つ返す、の順。①②を全体で言わせてから、③は個人を指名して速く回す。
ペア A は症状カードと「今日の予定」カード(アルバイト・テスト・サッカー)を持ち、B には見せない。B は「どうしたんですか」から聞き出し、する助言としない助言を一つずつ言う。A は「そうですね」で受けるか、「でも、今日はテストがあるんです」と予定を出して返し、B はそれに合わせて助言を言い直す。2回で交替する。
産出 「お見舞い助言リレー」。症状カードを引いた学習者のまわりに3人が立ち、一人ずつ、前の人と違う助言をする。同じ助言が出たらやり直し。最後に症状の人が、いちばん役に立った助言を一つ選び、「そうですね。〜たほうがいいですね」と受けて終える。教師は、しないほうの形(ナイ形)、目上に向けて使っていないか、「よ」の付け方を見る。
つまずきと手当て
「*飲まなかったほうがいいです」と、しないほうもタ形にそろえてしまう。否定は「ないほうがいい」のまま、と板書の2行を並べて言わせる
「薬を飲むほうがいいです」と辞書形を使う。誤りではないが、相手への助言ではタ形のほうがふつうなので、この課ではタ形にそろえる
先生や目上の人にもそのまま「先生、休んだほうがいいです」と言い、指図のように聞こえる。文法の誤りではないが、この形は友達や同じ立場の人に使い、目上の人には「大丈夫ですか」「お大事に」などで気持ちを伝える
「*寝たほうがいいでした」と過去にする。助言は今から先のことなので「いいです」のまま、とカレンダーの今日から先を指して確かめる
既習の文型との違い
Vないでください(第10課) 「〜ないでください」は話し手が相手に頼む・やめさせる言い方で、決めているのは話し手です。「〜ないほうがいいです」は相手のためを思った助言で、するかどうかを決めるのは相手です。調子の悪い友達に「お酒を飲まないでください」と言うと強く止めているように聞こえるので、助言の場面では「飲まないほうがいいですよ」を使います。
〜はどうですか(提案)(第6課) 「この薬はどうですか」は名詞を出して軽く勧める言い方で、相手が断りやすい形です。「〜たほうがいいです」は二つを比べてこちらがいいと言うので、勧め方が一段強くなります。軽く勧めるときは「〜はどうですか」、はっきり助言したいときは「〜たほうがいいです」と、強さの違いで使い分けさせます。
関連する文型
ST3 病院で
できること 病院で症状を簡単に伝え、医者から言われた薬の飲み方や順番を聞いてわかる。
場面 近くの病院で、受付で保険証を出して症状を言い、診察室で医者に聞かれたことに答えて、最後に薬の飲み方を聞く場面です。教室を受付・待合室・診察室に分け、医者役には薬の袋の絵(朝・昼・夜、食事の前・後の印つき)を持たせて、患者役が聞いた指示を復唱して確かめる形にします。
医者:どうしましたか。
留学生:おなかが痛いんです。それから、熱もあります。
医者:いつからですか。
留学生:2日前からです。
医者:そうですか。では、薬を出します。ご飯を食べてから、この薬を飲んでください。
留学生:ご飯を食べてから、ですね。
医者:はい。それから、この白い薬は寝る前に飲んでください。
留学生:わかりました。ありがとうございました。
学習項目 1 Vてから、〜
意味・はたらき
一つのことが終わったあとで 次のことをする、という順番をはっきり言う形です。病院では「ご飯を食べてから、この薬を飲んでください」のように、医者が薬を飲む時や、することの順番を指示するときによく使います。第9課の「Vて、〜」も順番に続けて言えますが、「Vてから」は前のことが終わるのを待つ、という順番の決まりに重みがあります。前のことが終わってから後ろのことをする、という時の関係を表す従属節の一つで、「から」が付いていても、わけを表す第5課の「〜から」とは別の形です。
接続 Vて+から、〜
形
ご飯を食べてから、薬を飲んでください 熱を測ってから、病院へ来てください 手を洗ってから、目薬をさしてください
導入
薬の袋の絵で順番を見せる 薬の袋の絵に、ご飯の絵 → 矢印 → 薬の絵を描いて見せ、教師が医者になって「ご飯を食べてから、この薬を飲んでください」と言う。学習者にご飯の絵と薬の絵のカードを持たせ、言われた順に上げさせる。板書は「[V1て]から、[V2]」とし、V1 が終わってから V2 と、時間の線の上に2つの点を打って示す。
板書案
[V1て]から、[V2]
ご飯を食べてから、この薬を飲んでください。
時間の線:●食べる ──→ ●飲む(〔赤〕V1 が終わってから V2)
〔青〕わけの「から」(第5課):熱がありますから、帰ります。
テ形の表(第7課)を横に貼る
場面と発話(自作)
診察室で、医者に薬の飲み方を言われる。 ご飯を食べてから、この薬を飲んでください。
病院の受付で、待つ前にすることを言われる。 この紙に名前を書いてから、待ってください。
熱があって病院へ行く前に、友達に聞く。 熱を測ってから、行ったほうがいいですか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、絵カードを2枚ずつ並べて(手を洗う→薬をつける、ご飯を食べる→薬を飲む)「〜てから、〜」を言わせ、次に教師が言った指示を聞いて学習者がカードを順に並べる聞き取りにする。最後は医者役が薬の袋の絵を見ながら指示を出し、患者役が「〜てから、ですね」と復唱して確かめるやり取りにする。
口頭 キューは①2枚組の絵カード(手を洗う→目薬をさす/熱を測る→病院へ行く/ご飯を食べる→薬を飲む)→「〜てから、〜」、②教師の動作(コートを脱いでから座る、名前を書いてから紙を出す)を見せて言わせる、③教師が指示を言い、学習者がカードを言われた順に並べる聞き取り、の3つ。全体→個人の順で、テ形の作り方でつまずいた動詞はその場で表に戻る。
ペア 医者役は、自分だけが見る薬の袋のカード(ご飯を食べてから飲む/寝る前に飲む など)を持ち、患者役に飲み方を言う。患者役は聞いた順番を白紙の袋の絵に書き込み、「〜てから、ですね」と復唱する。最後に2人のカードを並べて合っているか確かめ、交替する。
産出 「病気の日の過ごし方スピーチ」。熱が出た日に自分がすることを、「〜てから」を2回以上使って3〜4文で話す(例:起きてから、熱を測ります。学校に電話してから、病院へ行きます)。聞く人は話した順に絵を並べて確かめる。教師は、テ形の誤り、わけの「から」との混同、話の中で順番の筋が通っているかを見る。
つまずきと手当て
「食べたから、薬を飲みます」と、タ形+「から」にしてしまう。文としては成り立つが、わけの意味(食べたので薬を飲む)になり、順番の指示にならない。順番は「テ形+から」、わけは第5課の「〜から」と、2つを並べて板書する
「*食べるてから」とテ形を作らずにつなぐ。ます形につないだ「食べますから」は、わけの文(第5課の「〜から」)として成り立つ形で、順番は言えない。テ形の作り方(第7課)の表を横に貼り、グループごとに作ってから「から」をつける
医者の指示を「薬を飲んでから、ご飯を食べます」と順番を逆に聞き取る。形の誤りではなく聞き取りのつまずきなので、患者役に復唱させ、カードを並べて目で確かめる
既習の文型との違い
Vて、〜(第9課) 「Vて、〜」はすることを順に並べる形で、「起きて、顔を洗って、ご飯を食べます」のように3つ以上続けられます。「Vてから」は前のことが終わるのを待つ、という区切りをはっきり言うので、指示や約束でよく使い、1文に1回がふつうです。順番を守ってほしいときは「てから」、一日の流れを話すときは「て、〜」と使い分けさせます。
どうして/〜から(第5課) 「から」の形は同じですが、前に来る形が違います。順番はテ形+「から」(食べてから)、わけは普通形・丁寧形+「から」(食べたから/食べましたから)です。学習者が混ぜると、順番を言うつもりがわけの文になるので、「から」の前の形を見るように指示します。
関連する文型
学習項目 2 Vる前に、〜/Nの前に、〜/[時間]前に、〜
意味・はたらき
あることをする前に 別のことをする、という時を表します。動詞は辞書形に、名詞は「の」をつけて「前に」が続きます。時間の長さ(「30分」「2日」)に直接「前に」がつくと、「今から(あることから)その分だけさかのぼった時」を表し、病院では「2日前に熱が出ました」と症状が始まった時を言ったり、「手術の1時間前に来てください」のように指示を聞いたりするのに使います。文が過去でも「昨日、寝る前に薬を飲みました」と辞書形のままなのは、「前に」の前の形が話している今ではなく後ろの動作から見た時を表すためで、文法では相対テンスの例として扱われます。
接続 V辞書形+前に/N+の+前に/[時間の長さ]+前に(「の」をつけない)
形
寝る前に、この薬を飲んでください 食事の前に、飲んでください 2日前に、熱が出ました 30分前に、来てください
導入
一日の線で「前」を見せる 黒板に朝から夜までの時間の線を引き、「寝る」の絵を夜の端に置く。そのすぐ左に薬の絵を置いて、教師が医者として「寝る前に、この薬を飲んでください」と言う。同じ線の「ご飯」の絵の左に薬を置いて「食事の前に」と言い、動詞は辞書形、名詞は「の」と、2つの「前に」を上下に板書する。最後に今日の欄から2日左を指して「2日前に、熱が出ました」と言い、時間の長さには「の」がつかないことを3段目に書く。
「てから」と並べる ST3 の前の項目で使った薬の袋の絵で、ご飯の右に薬があれば「食べてから」、左にあれば「食べる前に」と、絵を動かしながら言わせて、2つの形の違いを位置で見せる。
板書案
V辞書形 + 前に
N +〔赤〕の + 前に
[時間の長さ]+ 前に(〔赤〕「の」なし)
寝る前に、この薬を飲んでください。
2日前に、熱が出ました。→ いつから? 2日前からです。
時間の線:●薬 ←── ●寝る(前に) / ●食べる ──→ ●薬(てから)
場面と発話(自作)
診察室で、医者に薬を飲む時を言われる。 この薬は、寝る前に飲んでください。
薬局で、薬の飲み方を聞かれて確かめる。 食事の前に、飲みますか。——はい、食事の30分前にお願いします。
受付で、いつから具合が悪いかを伝える。 3日前に、のどが痛くなったんです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、動詞カード(寝る・出かける・お風呂に入る)で辞書形+「前に」、名詞カード(食事・授業・テスト)で「Nの前に」、数字カード(30分・2日)で「[時間]前に」を順に言わせる。次に時間の線の絵で、教師の指示を聞いて薬の絵を線の上に置かせ、「てから」の指示と混ぜて出す。最後は病院のロールプレイで、受付で症状が始まった時を「〜前に」で言い、診察室で薬を飲む時の指示を聞き取って復唱させる。
口頭 キューは①動詞カード(寝る・出かける・お風呂に入る)→「寝る前に」、②名詞カード(食事・授業・テスト)→「食事の前に」、③数字カード(30分・2日・1週間)→「2日前に」の3種類。最初は形だけを速く言わせ、次に教師が後ろを足して(「…薬を飲んでください」)1文にさせる。①〜③のカードを混ぜて出し、「の」の有無と辞書形を一度に確かめる。
ペア A は自分だけが見る薬の袋(寝る前に/食事の前に/ご飯を食べてから)を2〜3枚持ち、飲み方を B に伝える。B は時間の線のワークシートに薬の絵を置き、「寝る前に、ですね」と復唱する。続けて B が「いつから痛いんですか」と聞き、A は症状カードに書かれた日数で「〜前からです」と答える。終わったらワークシートと袋を見比べて交替する。
産出 「受付問診ロールプレイ」。受付役は問診の質問(どうしましたか・いつからですか・薬を飲みましたか)を持ち、患者役は自分で決めた症状で「〜んです」「〜前からです」「出かける前に、薬を飲みました」と答える。そのあと医者役から「〜前に」「〜てから」の指示を一つずつ受けて復唱する。教師は、辞書形、「前に」の「に」、時間の長さに「の」をつけていないか、「前に」と「前から」の使い分けを見る。
つまずきと手当て
「*寝た前に」「*寝ます前に」と辞書形以外の形にする。「前に」の前の動詞はいつも辞書形、と第9課の辞書形の表を指して確かめる(「てから」がテ形なので、前後で形を混同しやすい)
「*寝る前で」「*食事の前で」と「に」を「で」にする。時を表す「前」には「に」がつく、と第3課の「[時間]に」と結びつける
「*2日の前に」「*30分の前に」と時間の長さにも「の」をつける。名詞は「の」あり、時間の長さは「の」なし、と板書の2段目と3段目を対にして言わせる
「2日前に」を「2日の間ずっと」と受け取り、「いつからですか」に「*2日前にです」と答える。始まった時からずっと続いていることを言うときは「2日前からです」と「から」をつける、と ST3 のやり取りで答えの形を示す
既習の文型との違い
Vてから、〜(第12課) 向きが逆で、形も違います。「てから」はテ形で、前のことのあとに後ろのことをする。「前に」は辞書形で、後ろのことを先にする。学習者は「*寝て前に」のように形を混ぜやすいので、時間の線の上で絵の位置を動かしながら2つを交互に言わせます。
[時間]に(第3課) 時刻や曜日に「に」がつくのと同じく、「前」も時を表すので「前に」となります。「前で」にすると場所の意味(駅の前で)と混ざります。一方、始まりの時を言う「2日前から」は第3課の「[時間]から」の仲間なので、「に」と「から」で意味が変わることを並べて見せます。
関連する文型
語彙の扱い
この課の語は、体の部分(頭・目・耳・のど・歯・おなか・足など)、症状の言い方(痛い・熱がある・せきが出る・気分が悪い・けがをする)、病院と薬(受付・保険証・診察・薬・目薬・飲む/つける)の3つのかたまりに分かれます。体の部分は自分の体を指しながら、症状は表情と身ぶりで、病院の語は受付と診察室の場面を作った中で使わせ、どれも「〜が痛いんです」「〜を飲んだほうがいいです」のように文の形の中で覚えさせます。持病やアレルギーなど学習者ごとに要る語は違うので、全員で覚える語と、本人が病院で困らないように個別に覚える語を分けます。
この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)
痛い (いたい) 体のどこかがつらくて、苦しいと感じることです。 頭が〜・歯が〜・おなかが〜 朝、起きたときに頭がつらい。朝から頭が痛いんです。
熱 (ねつ) 体がいつもより熱くなる、病気のしるしです。 〜がある・〜が出る・〜を測る 前の日の夜から体が熱い。昨日の夜、熱が出たんです。
せき (せき) のどから急に強く息が出ることです。 〜が出る・〜が止まらない 授業中に何度もせきが出て、先生に話す。すみません、せきが出るんです。
気分 (きぶん) そのときの体や心の調子のことです。 〜が悪い・〜がいい アルバイト中に急に調子が悪くなった。店長、ちょっと気分が悪いんです。
けが (けが) 転んだりぶつかったりして、体に傷ができることです。 〜をする・足に〜をする サッカーのあとで足を引きずっていて、友達に聞かれる。サッカーで足にけがをしたんです。
休みます (やすみます) 学校や仕事に行かないこと、また体を楽にすることです。 学校を〜・少し〜 熱のある友達に声をかける。今日は学校を休んだほうがいいですよ。
無理します (むりします) 体の調子が悪いのに、がんばってすることです。 〜しない・あまり〜しない 疲れた顔なのにアルバイトに行こうとする友達に言う。今日は無理しないほうがいいですよ。
薬 (くすり) 病気やけがを治すために飲んだりつけたりするものです。 〜を飲む・〜をもらう・〜をつける 診察室で医者に飲み方を言われる。ご飯を食べてから、この薬を飲んでください。
測ります (はかります) 体の熱などを、道具を使って調べることです。 熱を〜 病院へ行く前に、受付から電話で言われる。来る前に、熱を測ってください。
病院 (びょういん) 医者に体を見てもらうところです。 〜へ行く・〜に電話する 歯が痛いのに我慢している友達に言う。早く病院へ行ったほうがいいですよ。
保険証 (ほけんしょう) 病院の受付で出す、健康保険のカードです。 〜を出す・〜を見せる・〜を忘れる 病院の受付で、カードを持っていないことに気づく。すみません、保険証を忘れたんです。
お大事に (おだいじに) 病気やけがの人と別れるときに言うあいさつです。 どうぞ〜 早く帰る友達を見送る。早く寝てくださいね。お大事に。
宿題と次のコマ 宿題は、自分が熱を出した日を想定して、①学校へ休むことを伝える文、②友達から言われそうな助言、③病院で症状を言う文と医者の指示、の3つを2〜3文ずつ書いてくること。次のコマの最初にペアで読み合い、相手の病院の場面に「〜てから」「〜前に」の指示を一つ足してもらってから、第13課の ST1「経験から」に入ります(この課で話した病院や薬の経験が、第13課の「Vたことがあります」で経験を話す材料になります)。
よくある質問
第12課の「〜んです」はどこまで教えればいいですか?
この課では、相手の様子を見て「どうしたんですか」と聞く、聞かれて症状やわけを「〜んです」で答える、の二つに絞ります。早く帰りたい・休んだという用件の前に事情を言う使い方までできれば十分です。何にでも「んです」をつける使いすぎは場面とセットで練習することで防ぎ、細かい使い分けは先の課に回します。
「〜たほうがいいです」と「〜ないでください」の違いはどう説明しますか?
決めるのが誰かで分けます。「〜ないでください」は話し手が相手に頼む・止める言い方、「〜ないほうがいいです」は相手のための助言で、するかどうかは相手が決めます。調子の悪い友達に言う場面では助言の形のほうが自然だ、と ST2 のやり取りの中で比べさせます。
「〜てから」と「〜前に」はどちらを先に教えますか?
シラバス の順のとおり「〜てから」を先にします。テ形は第7課から使い慣れているので形の負担が少なく、そのあとで「前に」は辞書形に切り替わることを、時間の線の上で対にして見せます。二つを同じ日に扱う場合は、薬の袋の絵を使って「食べてから」「食べる前に」を位置で言い分ける練習を入れると混同が減ります。
目上の人に「〜たほうがいいです」と言ってもいいですか?
文法の誤りではありませんが、先生や上司に向けると指図のように聞こえることがあるので、この課では友達や同じ立場の人への助言に限って練習します。目上の人の体調を気づかうときは「大丈夫ですか」「お大事に」で気持ちを伝える、と ST1・ST2 のやり取りに入れておきます。
第12課は何コマで終わりますか?
90分×3コマが目安です。1コマ目で導入 と ST1、2コマ目で ST2 と ST3 の「〜てから」、3コマ目で「〜前に」と、熱が出た朝から病院までを通して演じる課のまとめを行います。症状の語彙に時間がかかるクラスは、体の部分と症状の言い方を前の課の終わりに少し入れておくと収まります。
この課に関係する用語・解説・練習問題 この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。