ST1 どこですか
できること店で、買いたい物の売り場やトイレがどこか、何階かを聞いて、答えがわかる。
場面
デパートや大きな店で、店員や案内係に売り場の場所を聞く場面です。教室では黒板に階ごとの案内板(1階 食品、2階 くつ、3階 かばん…)を貼り、教室の入り口・窓ぎわ・教師の机をエレベーターや売り場に見立てて、店員役に指さしで答えさせます。
- 留学生:すみません。くつ売り場はどこですか。
- 店員:くつ売り場ですか。4階です。
- 留学生:4階ですか。エレベーターはどこですか。
- 店員:エレベーターはあちらです。
- 留学生:トイレは何階ですか。
- 店員:トイレは2階です。
- 留学生:ありがとうございます。
学習項目 1 何階ですか(階数の言い方)語彙
意味・はたらき
建物の何階にあるかを「数字+階」で言い、聞くときは「何階ですか」と言います。「階」は前の数字によって「かい」と「がい」になり、3階は「さんがい」、何階は「なんがい」です。1階・6階・10階などは数字の音も変わります。売り場の場所を聞くと、答えはまず階で返ってくることが多いので、言えることより聞いてわかることを先に固めます。数字と助数詞が組み合わさると音が変わる現象(「いっかい」の促音化、「さんがい」「なんがい」の濁音化)は、このあと時間・数え方の項目で何度も出てくるので、ここで表の形を作っておくと後の課が楽になります。
接続
数字+階+です/〜は何階(なんがい)ですか
形
1階(いっかい)・3階(さんがい)・6階(ろっかい)・10階(じゅっかい)8階(はっかい/はちかい)何階(なんがい)ですか地下1階(ちかいっかい)
導入
- 建物の絵で階を数える黒板に5階建ての店の絵を描き、教師が下から「1階、2階、3階…」と指して読む。「がい」になる3階と何階、音の変わる1・6・8・10階を赤で書き、板書は「[ ]階です」「何階ですか」の2行にする。地下は絵の下に1つ足して見せる。
板書案
[数字]+階です。/〜は 何階ですか。
トイレは 何階ですか。——2階です。
〔赤〕3階=さんがい 何階=なんがい
〔赤丸〕1階 いっかい・6階 ろっかい・8階 はっかい・10階 じゅっかい
〔図〕5階建ての店の絵(下から1〜5、いちばん下に地下1階)
場面と発話(自作)
- 駅ビルで、レストランが何階か案内の人に聞く。レストランは何階ですか。——7階です。
- 大学の建物で、事務室が何階か友達に聞く。事務室は何階ですか。——3階です。
- デパートのエレベーターの中で、食品売り場の階を店員に聞く。すみません、食品売り場は何階ですか。——地下1階です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が建物の絵の階を指して言わせる→教師が階を言って学習者が指す、の両方向を速く回す。そのあと案内板の絵を見ながら、ペアで「〜は何階ですか」「〜階です」と聞き合う。
- 口頭キューは①建物の絵の階を教師が指す ②教師が「ろっかい」と言い、学習者が絵の階を指す ③数字だけのカード(3・6・8・10・地下1)を速くめくる、の3つ。全体で言わせてから列ごと、最後に一人ずつ当て、3階・何階・音の変わる階は必ず個人でも言わせる。
- ペア情報差で行う。A は売り場と階がすべて書いてある案内板、B は売り場名だけの空欄の表を持つ。B が「〜は何階ですか」と聞き、A の答えを空欄に書く。5つ埋めたら表を見せ合って確かめ、案内板を渡して役を交替する。
- 産出「わたしの町の案内板」: 学習者が知っている駅ビル・デパート・大学の建物を一つ選び、階ごとの案内板を簡単に描いて黒板に貼る。ほかの学習者が「〜は何階ですか」と聞き、描いた本人が答える。教師は3階・何階の「がい」、1・6・8・10階の小さい「っ」、答えを「〜階です」まで言い切っているかを見て、その場で言い直させる。
つまずきと手当て
- 3階を「*さんかい」と読む。「がい」になるのは3階と何階、と赤の2つを毎回確かめる(何階は「なんかい」と言う人もいるが、教室では「なんがい」にそろえる)
- 1階・6階・10階を「*いちかい」「*ろくかい」「*じゅうかい」と読む。数字と「かい」がつながるところで小さい「っ」が入る、と表の赤い印で見せる(8階は「はっかい」と「はちかい」の両方が聞かれる)
- 階を聞かれて「トイレは2です」と数字だけで答える。数字だけでは何の2かが伝わりにくいので、階を聞かれたら「〜階です」と最後まで言う、と答えの枠を板書に残す
既習の文型との違い
- 〜歳です(第1課)年齢の「〜歳」でも1歳(いっさい)・8歳(はっさい)・10歳(じゅっさい)と小さい「っ」が入り、「階」と同じ所で音が変わります。違うのは「階」だけ3と何のあとで「がい」になる点で、学習者は「歳」と同じつもりで3階を「さんかい」と読みがちです。2つの表を並べ、同じ所と違う所に印をつけて見せます。
関連する文型
学習項目 2 どこ/〜はどこですか
意味・はたらき
「どこ」は場所を聞く疑問詞で、「〜はどこですか」の形で、売り場・トイレ・エレベーターなどの場所を聞きます。答えは「4階です」「あそこです」のように、階や「ここ・そこ・あそこ」で返ってきます。第1課の「〜は何ですか」と同じ形で、「何」の代わりに「どこ」が入るだけだと見せると、すぐに使えます。文法の用語では、疑問詞を使った疑問文(疑問詞疑問文)で、「はい・いいえ」では答えられない質問です。第1課の「Nですか」(はい・いいえで答える質問)と並べて、答え方の違いもここで確かめます。
接続
N+は+どこですか/N+は+[場所・階]+です
形
トイレはどこですかくつ売り場はどこですかトイレはあそこですかばん売り場は3階です
導入
- 教室の物の場所を聞く教師が教室の中の物(時計・ごみ箱・ドア)を指さしながら「時計はあそこです」と言い、次に学習者に「ドアはどこですか」と聞いて指さしで答えさせる。板書は第1課の「〜は何ですか」の下に「〜はどこですか」を並べ、「何」と「どこ」だけが入れ替わることを見せる。
板書案
〜は 何ですか。(第1課)
〜は 〔赤〕どこ ですか。
トイレは どこですか。——あそこです。/2階です。
〔矢印〕答えの「あそこ」「2階」が入る所に「どこ」
場面と発話(自作)
- スーパーで、牛乳の売り場がわからない。すみません。牛乳はどこですか。
- 駅で、トイレを探している。すみません、トイレはどこですか。——あそこです。
- デパートで、かばん売り場を店員に聞く。かばん売り場はどこですか。——3階です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が案内板の売り場名を言い、学習者が「〜はどこですか」と聞いて、別の学習者が案内板を見て「〜階です」と答える。慣れたら教室の入り口や窓ぎわを売り場に見立て、席を立って店員役に聞きに行かせる。
- 口頭キューは①教室の物(時計・ドア・ごみ箱)を教師が指す ②案内板の売り場名カード(くつ売り場・トイレ・エレベーター)を見せる ③教師が知らない人に話しかける身ぶりをして「すみません」を引き出す、の3つ。カードを見せたら全体で「すみません、〜はどこですか」、指名した一人が案内板を見て答える、を速く回す。
- ペアA だけが店の階ごとの地図を持ち、B は探す物のリスト(5つ)を持つ。B が「すみません、〜はどこですか」と聞き、A は「〜階です」か指さしで「あちらです」と答える。B はリストに階を書き、5つ終わったら地図とリストを入れかえて交替する。
- 産出「迷子の留学生ロールプレイ」: 教室を駅ビルに見立て、入り口・窓ぎわ・教師の机などに売り場やトイレの札を貼る。客役は役カードに書いた物を探して、案内係役に聞きに行き、答えを聞いてその札まで歩く。教師は「すみません」で話しかけているか、疑問詞の位置、答えを聞いて正しい札まで行けたか(聞き取れたか)を見る。
つまずきと手当て
- 「*どこはトイレですか」と疑問詞を前に出す。第1課の「何」と同じく、答えの文で場所が入るところに「どこ」が入る、と板書で重ねて見せる
- 「すみません」を言わずにいきなり「トイレはどこですか」と聞く。知らない人に話しかけるときは最初に「すみません」をつける、と場面の練習の最初に必ず入れる
- 「*トイレはどこにですか」と「に」を入れる。物がある場所の言い方は後の課で扱うので、ここでは「〜はどこですか」の形だけに絞る
既習の文型との違い
- 何/〜は何ですか(第1課)「何」は物の名前を、「どこ」は場所を聞きます。文の形は同じで、答えの名詞が入る所に疑問詞が入ります。場所を聞きたいのに「トイレは何ですか」と言ってしまい、相手が何を聞かれたのかわからなくなる学習者がいるので、2つの質問と答えを上下に並べて板書します。
- お名前は?/お国はどちらですか/お仕事は?(第1課)第1課の「どちら」は「どこ」のていねいな言い方です。客が店の人に売り場を聞くときは「どこですか」で十分で、初めて会った人に国を聞くときは「どちら」を使う、と場面で分けます。
関連する文型
学習項目 3 ここ・そこ・あそこ/こちら・そちら・あちら
意味・はたらき
場所を指す言葉で、話し手の近くが「ここ」、聞き手の近くが「そこ」、二人から遠いところが「あそこ」です。「こちら・そちら・あちら」は同じ場所や方向をていねいに言う形で、店員や案内係が客に話すときによく使います。第1課の「お国はどちらですか」の「どちら」も同じなかまです。売り場を聞いた客には「あちらです」と返ってくることが多いので、聞いてわかることを先に固めます。日本語学では指示詞(こそあど)の現場指示の使い方で、話し手と聞き手が離れて向き合うときは「自分の領域・相手の領域・どちらでもない所」で分け(対立型)、二人が並んで同じ側にいるときは「二人の近く・少し離れた所・遠い所」で分けます(融合型)。教室ではまず向き合った形で3つを固め、並んだ形はつまずきの手当てで扱います。
接続
〜は+ここ/そこ/あそこ+です(ていねいには こちら/そちら/あちら)
形
トイレはあそこです受付はここですエレベーターはあちらです(ていねい)どこ/どちら(聞くとき)
導入
- 教室の床に範囲を作る教師と学習者が離れて立ち、教師の足元を指して「ここ」、学習者の足元を指して「そこ」、窓の外を指して「あそこ」と言う。教師が手で自分のまわりの輪・相手のまわりの輪・遠くを示し、板書に3つの輪の絵と語を書く。
- 店員役になって「あちら」と言う教師が店員役になり、学習者に売り場を聞かせて、手のひらを上に向けて方向を示しながら「あちらです」と答えてみせる。板書の「ここ・そこ・あそこ」の横に「こちら・そちら・あちら」を並べ、「店の人のていねいな言い方」と書き添える。
板書案
〔図〕3つの輪:わたしの近く/あなたの近く/2人から遠い
ここ そこ あそこ (どこ)
こちら そちら あちら (どちら) 〔青〕店の人のていねいな言い方
エレベーターは あちらです。
場面と発話(自作)
- 店の入り口で、客がエスカレーターの場所を聞く。エスカレーターはどこですか。——あちらです。
- 病院で、受付の人が自分の前を指して患者に言う。受付はこちらです。
- 駅で友達とトイレを探していて、遠くに見つけた。トイレはあそこです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が教室の物を指し、学習者が自分との位置で「ここ・そこ・あそこ」を選んで「〜は〜です」と言う。次に学習者の立つ位置を変えて同じ物を言わせ、言葉が変わることを体で確かめる。最後に店員役は「こちら・あちら」、客役は「ここ・あそこ」で、売り場を聞くロールプレイをする。
- 口頭キューは①教師が自分の足元・学習者の机・窓の外を指す ②場所の絵カード(トイレ・受付・エレベーター)を教室の3か所に貼る ③教師と学習者の立つ位置を入れかえる、の3つ。教師が指した所を全体で「ここ・そこ・あそこ」で言わせ、位置を入れかえて同じ所を指し、言葉が変わることを一人ずつ確かめる。
- ペア2人が向き合って立ち、A が絵カードを置く位置(自分の手元・B の手元・教室の奥)を変えながら「〜はどこですか」と聞く。B は自分との位置で「ここ・そこ・あそこです」と答え、A が合っているか判定する。3回ごとに交替し、2巡目は答える人が店員役になって「こちら・あちら」で答える。
- 産出「デパートの案内係」ロールプレイ: 案内係役が教室の前に立ち、客役が順に売り場やトイレを聞きに来る。案内係は手のひらを上に向けて方向を示しながら「あちらです」「こちらです」と答える。教師は相手の近くを「そこ」と言えているか、店員役が「こちら・あちら」を使っているか、手の示す方向と言葉がずれていないかを見る。
つまずきと手当て
- 聞き手の近くの場所を「*ここ」と言う。母語の指示語が「近い・遠い」の2つだけの学習者に多いので、3つの輪の絵に戻って「相手の近く」を確かめる
- 話し手と聞き手が並んで立っているとき、少し離れたところまで「あそこ」と言い、「そこ」が出てこない。二人が近くにいるときは、二人から少し離れたところを「そこ」と言うことが多い、と並んだ立ち位置で見せる
- 店員役が客に「あそこです」と言う。誤りではないが、店の人は「あちらです」と言うことが多い、と役のカードに「店員:こちら・あちら」と書いておく
既習の文型との違い
- お名前は?/お国はどちらですか/お仕事は?(第1課)第1課の「お国はどちらですか」の「どちら」と、この課の「あちら」「こちら」は同じなかま(こ・そ・あ・ど)です。第1課では国を聞く決まった言い方として覚えたため、方向や場所を指す語だと気づいていない学習者がいます。表の「ど」の列に「どちら」を置き、第1課の文とつなげて見せます。
関連する文型
ST2 いくらですか
できること物を指して値段を聞き、買う物を決めて店の人に伝えられる。
場面
雑貨の店や市場で、値札の見えない物の値段を聞いて買う場面です。教室に文房具や小物を持ち込み、教師の机を店にして値札を裏返しておくと、聞く必要が自然に生まれます。物が自分の近くにあるか、相手の近くにあるか、二人から遠いかで、こ・そ・あ を言い分けさせます。
- 留学生:すみません、これはいくらですか。
- 店員:それは500円です。
- 留学生:そのかばんはいくらですか。
- 店員:このかばんですか。3,000円です。
- 留学生:じゃ、これをください。
- 店員:ありがとうございます。500円です。
学習項目 1 〜はいくらですか
意味・はたらき
「いくら」は値段を聞く疑問詞で、「〜はいくらですか」と聞き、「〜円です」と答えます。値段を言うには数字を100・1,000・1万の位まで読めることが要り、300(さんびゃく)・600(ろっぴゃく)・800(はっぴゃく)・3,000(さんぜん)・8,000(はっせん)のように音の変わるところがあります。買い物では値段を聞き取れることが大切なので、言う練習より先に、聞いて数字を書く練習をたくさん入れます。
接続
N+は+いくらですか/〜円+です
形
ノートはいくらですか300円(さんびゃくえん)です1,000円(せんえん)・1万円(いちまんえん)600(ろっぴゃく)・800(はっぴゃく)・3,000(さんぜん)・8,000(はっせん)
導入
- 値札を裏返しておく文房具や小物に値札をつけて裏返しておき、学習者に1つ選ばせて「ノートはいくらですか」と聞かせ、教師が値札を見ながら「ノートは250円です」と答える。数字の表を黒板に書き、百・千の位で音が変わるところを赤で囲む。板書は「〜はいくらですか」「〜円です」の2行にする。
板書案
〜は 〔赤〕いくら ですか。——〜円です。
〔表〕300 さん〔赤〕びゃく 600 ろっ〔赤〕ぴゃく 800 はっ〔赤〕ぴゃく
3,000 さん〔赤〕ぜん 8,000 はっせん
1〔赤〕万=10,000(0を4つで区切る)
場面と発話(自作)
- 市場で、値札のないりんごの値段を聞く。すみません、りんごはいくらですか。——150円です。
- コンビニで、温めてもらうお弁当の値段を確かめる。お弁当はいくらですか。——480円です。
- かさの店で、店の奥にあるかさの値段を聞く。すみません、かさはいくらですか。——1,500円です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
まず教師が値段を読み、学習者が数字で書く聞き取りを10問ほど速く回す(音の変わる300・600・800・3,000・8,000を多めに)。次に値札の絵カードで「〜はいくらですか」「〜円です」をペアで聞き合い、最後に値札を裏返した実物で店のロールプレイをする。
- 口頭キューは①教師が値段を読み、学習者が数字で書く ②値札カード(150円・380円・1,200円・8,000円)を見せて全員で読む ③教師が指で位(百・千・万)を示して数字を言わせる、の3つ。聞いて書く→見て読む→全体→個人の順にし、音の変わる数は個人で必ず一度言わせる。
- ペア情報差で行う。A と B は同じ品物8つの表を持つが、A の表は奇数番の品物、B の表は偶数番の品物にだけ値段が書いてある。「〜はいくらですか」「〜円です」で聞き合って空欄を埋め、最後に表を見せ合って数字が合っているか確かめる。
- 産出「教室マーケット(値段しらべ)」: 学習者が自分の持ち物に好きな値段の札をつけて机に並べ、店を開く。客役は店を回って「〜はいくらですか」と聞き、聞いた値段をメモする。最後にメモした物と値段を一人ずつ「〜は〜円です」で読み上げる。教師は音の変わる数の読みと、聞いた値段を正しく書けているか(聞き取り)を見る。
つまずきと手当て
- 300を「*さんひゃく」、800を「*はちひゃく」、3,000を「*さんせん」と読む。表の赤い囲みを見ながら、音の変わる数だけ毎回声に出させる
- 1万を「*じゅうせん」と言う。英語のように千の10倍で数える学習者に多いので、0を4つずつ区切って書き、「万」の位置を見せる
- 「*いくらはノートですか」と語順を入れ替える。「何」「どこ」と同じく、答えの値段が入るところに「いくら」が入る、と板書で重ねる
既習の文型との違い
- どこ/〜はどこですか(第2課 ST1)「どこ」も「いくら」も、答えが入る所に疑問詞が入る同じ型です。違うのは答えで、「どこ」には場所や階、「いくら」には「〜円」が来ます。「いくらですか」に場所で答える聞き違いが出たら、2つの質問と答えを並べて見せます。
- 〜歳です(第1課)第1課の年齢や日付は二けたまでの数で言えましたが、値段では百・千・万の位が加わり、音の変わる所が増えます。「〜歳」で出た小さい「っ」(はっさい・じゅっさい)を思い出させてから、「はっぴゃく」「はっせん」に広げると覚えやすくなります。
関連する文型
学習項目 2 これ・それ・あれ
意味・はたらき
物を指す言葉で、話し手の近くの物が「これ」、聞き手の近くの物が「それ」、二人から遠い物が「あれ」です。ST1 の「ここ・そこ・あそこ」と同じ分け方なので、場所の輪の絵をそのまま使います。名前を知らない物でも指して「これはいくらですか」「それは何ですか」と聞けるので、買い物ではとても役に立ちます。相手が「それ」と言った物は、自分の近くにあれば「これ」で答えます。
接続
これ/それ/あれ+は+〜です(後ろに名詞をつけない)
形
これはいくらですかそれは何ですかあれは時計です「それは何ですか」——「これは〜です」
導入
- 物を持って位置を変える教師がペンを手に持って「これはペンです」、学習者の机の上のノートを指して「それはノートです」、教室の奥の時計を指して「あれは時計です」と言う。次に学習者にペンを渡して、同じペンが教師から見て「それ」になることを見せる。板書は ST1 の3つの輪の絵の中に「これ・それ・あれ」を書き足す。
板書案
〔図〕ST1 の3つの輪に書き足す:これ/それ/あれ
これは いくらですか。
A:それは 何ですか。→ B:〔赤〕これは おにぎりです。
〔青〕場所=ここ・そこ・あそこ 物=これ・それ・あれ
場面と発話(自作)
- 店で、自分の手に持った小物の値段を聞く。すみません、これはいくらですか。
- 友達が持っている見たことのない食べ物について聞く。それは何ですか。——これはおにぎりです。
- 教室で、教師の机の上にある箱について、離れた席から聞く。先生、あれは何ですか。——あれは辞書です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教室の物を教師が指し、学習者が自分との位置で「これ・それ・あれ」を選んで「〜は何ですか」「〜は〜です」と言う。次にペアで物を持ち合い、相手の「それは何ですか」に「これは〜です」と言い換えて答える練習をする。
- 口頭キューは①教師が手に持った物・学習者の机の上の物・教室の奥に貼った絵を指す ②物の絵カードを置く位置を変える ③教師が物を持って首をかしげ「何?」の顔をする、の3つ。全体で「これは〜です」「それは〜です」を言わせ、そのあと位置を変えて一人ずつ言わせる。
- ペア2人が向き合い、それぞれ物を3つ手に持つ。A が B の手の物を指して「それは何ですか」と聞き、B は自分の手の物なので「これは〜です」と言い換えて答える。教室の奥の絵は2人とも「あれ」で聞く。3問ごとに交替する。
- 産出「なんでもマーケット」: 教師が名前を知らなそうな日本の小物(はし置き・てぬぐい・ふろしきなど)を店に並べ、学習者が指して「これは何ですか」「それはいくらですか」と店員役に聞く。名前がわからない物は、ST3 の「日本語で何ですか」につなぐ。教師は答える人が自分の位置で言い直しているか(それ→これ)と、物を持っている人と言葉が合っているかを見る。
つまずきと手当て
- 相手が「それは何ですか」と聞いたのに「*それは〜です」とそのまま答える。答える人から見た位置で言い直す、とペンを渡し合う動作で確かめる
- 「*これかばんはいくらですか」と後ろに名詞をつける。名詞をつけるときは次の「このN」の形になる、と板書の「これ」と「この」を並べて見せる
- 人を紹介するのに「これは田中さんです」と言う。文法は通るが、人を「これ」で指すと物のように聞こえるので、人は ST1 の「こちら」を使って「こちらは田中さんです」と言う、と伝える
既習の文型との違い
- ここ・そこ・あそこ/こちら・そちら・あちら(第2課 ST1)分け方は同じで、「ここ・そこ・あそこ」は場所、「これ・それ・あれ」は物を指します。「エレベーターはどこですか」に「あれです」と物の言い方で答える学習者がいるので、場所を聞かれたら質問の「どこ」に合わせて「あそこです」と答える、と板書の青い行で分けます。
- 何/〜は何ですか(第1課)第1課では「趣味は何ですか」のように話題の名詞を言ってから「何ですか」と聞きました。「これ・それ・あれ」が主語の位置に入ると、名前を言えない物でも指して聞けます。文の形は第1課のままで、主語の所が変わるだけだと見せます。
関連する文型
学習項目 3 このN・そのN・あのN
意味・はたらき
「この・その・あの」は名詞の前について、どの物かを指します。分け方は「これ・それ・あれ」と同じで、物の名前を言いながら指したいときや、同じ種類の物がいくつも並んでいて一つを選ぶときに使います。店で「このかばん」「あのシャツ」と言えると、何を見たいか、何を買いたいかが店員にはっきり伝わります。文法の用語では「この・その・あの・どの」は連体詞(指示連体詞)で、単独では主語や目的語になれません。ここが代名詞の「これ・それ・あれ」との境目で、「*このはいくらですか」の誤りはこの区別が付いていないところから出ます。
接続
この/その/あの+N(「この」だけでは使わない)
形
このかばんはいくらですかそのシャツは3,000円ですあのくつは8,000円です
導入
- 同じ種類の物を3つ並べるかばん(またはかばんの絵)を、教師の近く・学習者の近く・教室の奥に1つずつ置き、教師が「このかばんは2,000円です」「そのかばんは3,000円です」「あのかばんは5,000円です」と言う。「これ」だけではどのかばんかわかりにくいことを見せ、板書で「これ」の横に「この+かばん」を書く。
板書案
これ → この+〔赤〕N(名詞が要る)
この かばんは いくらですか。
*この は いくらですか。/*これの かばん
〔図〕かばんの絵3つ:教師の近く・学生の近く・教室の奥
場面と発話(自作)
- くつの店で、棚の遠くにあるくつの値段を聞く。すみません、あのくつはいくらですか。
- 店員の近くにあるシャツの値段を聞く。そのシャツはいくらですか。——このシャツは2,500円です。
- 食堂で、ショーケースの手前にある料理の値段を聞く。すみません、このカレーはいくらですか。——750円です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、値札つきの同じ種類の物を位置を変えて並べ、教師が値段を言って、学習者が「このN・そのN・あのN」でどれかを言う。慣れたら客役が「そのNはいくらですか」と聞き、店員役が「このNは〜円です」と言い換えて答える。
- 口頭キューは①同じ種類の物(かばん・かさ・ノート)を3か所に置く ②教師が値札を指す ③物の絵カードを位置ごとに貼りかえる、の3つ。教師が値段を言ったら学習者がどの物かを「このN・そのN・あのN」で言う→教師が物を指したら値段まで言う、の順に全体→個人で回す。
- ペア店員役の机に同じ種類の物を値段違いで2つ、教室の奥に1つ置く。客役が「そのNはいくらですか」「あのNはいくらですか」と聞き、店員役は自分の近くの物なら「このNは〜円です」と言い換えて答える。3品聞いたら交替する。
- 産出「くらべて買おう」: 客役は予算カード(2,000円まで)を持って店を回り、同じ種類の物の値段を2つ以上聞いてから「じゃ、このNをください」と1つ買う。最後に買った物と値段を言う。教師は「この」のあとの名詞が落ちていないか、「これの」になっていないか、店員と客で「この」と「その」が入れかわっているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*このはいくらですか」と後ろの名詞を落とす。名詞を言わないなら「これ」と、板書の2つの形を指して選ばせる
- 「*これのかばん」と「の」を入れる。第1課の「NのN」の影響なので、「この」はそれだけで名詞につながる、と板書の「この」と「かばん」をじかにつなげて書く
- 物の名前を日本語で知らず、「この……」で止まってしまう。名前がわからないときは「これ」で聞けばよい、と逃げ道を先に教えておく
既習の文型との違い
- これ・それ・あれ(第2課 ST2)「これ」はそれだけで物を指し、「この」は必ず後ろに名詞が要ります。混ぜると「*このはいくらですか」「*これかばんは」になります。1つしかないときや名前を言わなくてよいときは「これ」、同じ種類が並んでいて1つを選ぶときは「このN」と、使う場面で分けます。
- NのN(第1課)第1課の「日本語の先生」のように名詞と名詞は「の」でつなぎましたが、「この」はそのまま名詞の前に付くので「の」は要りません。「*これのかばん」はこの2つの形が混ざって出る誤りです。
関連する文型
学習項目 4 Nをください
意味・はたらき
店で買う物を決めたとき、その物を言って「Nをください」と伝えます。「を」はほしい物・買う物を示す助詞で、この課で初めて出ます。値段を聞いて決めたあと「じゃ、これをください」と言えば、買い物のやり取りがひと回りします。「ください」は相手に物を渡してくれるよう頼む言い方で、店では「買います」の代わりになります。文法では「を」は動作の対象を表す格助詞(ヲ格)で、第3課の「〜をVます」で動詞と一緒にもう一度出てきます。
接続
N+を+ください
形
これをくださいこのかばんをくださいじゃ、それをください
導入
- 値段を聞いてから買う教師が客役になり、店員役の学習者に「これはいくらですか」と聞いて値段を聞いたあと、物を手に取って「じゃ、これをください」と言い、お金のカードを渡してみせる。板書は「[物]を ください」とし、「を」を赤で書いて読みが「お」と同じことも確かめる。
板書案
[物]〔赤〕を ください。
これを ください。/この かばんを ください。
値段:これ〔青〕は いくらですか。 買う:これ〔赤〕を ください。
〔小さく〕を=読みは「お」
場面と発話(自作)
- パン屋で、店員の近くにあるパンを買う。すみません、そのパンをください。
- 駅の売店で、水を買う。水をください。
- 八百屋で、店先のトマトを指して買う。このトマトをください。——はい、200円です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、物の絵カードを見せて「〜をください」を言わせる。そのあと値札つきの実物で、客役が「〜はいくらですか」と聞く→店員役が答える→客役が「じゃ、〜をください」と決める、のやり取りを役を交代しながら通す。
- 口頭キューは①物の絵カード(水・パン・ノート)を見せる ②教師が実物を手に取る ③教師が指で近くの物・相手の近くの物を示す、の3つ。絵カードなら「〜をください」、指さしなら「これを・それをください」と、全体→個人で言わせる。
- ペア客役は買い物リスト(3品)、店員役は値段表を持つ。客「〜はいくらですか」→店員「〜円です」→客「じゃ、〜をください」→店員「ありがとうございます。〜円です」を1品ずつ通し、3品終わったら交替する。
- 産出「教室マーケットで買い物」: 教室に3つの店(文房具・パン・飲み物)を作り、客役はお金のカード(3,000円分)を持って各店で1つずつ買う。最後に何をいくらで買ったかを「〜は〜円です」で報告する。教師は「は」と「を」の使い分け、「じゃ」で決める流れ、店員の金額の言い方を見る。
つまずきと手当て
- 「*これはください」「*これがください」と助詞を取り違える。値段を聞くときは「は」、買うときは「を」と、やり取りの2行を並べて板書する
- 「を」を「お」とは別の音だと思って強く発音する。読みは「お」と同じで、助詞にだけ使う字、と短く伝える
- 教室で、先生や友達の持ち物を指して「その本をください」と言う。店ではない場面では、物をもらう強い頼みに聞こえるので、この課では店での買い物と注文の場面に絞って使わせる
既習の文型との違い
- 〜はいくらですか(第2課 ST2)値段を聞く文は「〜は」、買う文は「〜を」と、同じ物について助詞が変わります。続けて言うと「*これはください」が出やすいので、やり取りの2行を並べ、助詞だけ色を変えて板書します。「を」はこの課で初めての助詞なので、ここでは「ほしい物・買う物の印」と言っておけば足ります。
関連する文型
ST3 レストラン
できることレストランでメニューについて聞き、数を言って注文できる。また、忘れ物が誰のものか聞ける。
場面
日本人の友達とレストランに入り、メニューの写真を見ながら料理や飲み物について聞いて注文する場面です。教室ではメニューの絵と飲み物の絵カードを用意し、店員役・客役・日本人の友達役に分かれます。帰るときに教師がわざと傘やかばんを残しておき、持ち主を聞くところまでを一つの場面にします。
- 留学生:すみません、これは何のジュースですか。
- 店員:りんごのジュースです。
- 留学生:じゃ、これをふたつください。
- 留学生:(メニューの写真を指して)これは日本語で何ですか。
- 日本人の友達:「やきそば」です。
- 留学生:すみません、やきそばをひとつください。
- 日本人の友達:(帰るとき、いすの上の傘を見て)この傘は誰のですか。
- 留学生:わたしのです。
学習項目 1 何のN
意味・はたらき
「何のN」は、その物の中身や種類、何についての物かを聞く言い方です。「何のジュースですか」には「りんごのジュースです」、「何の本ですか」には「料理の本です」と答えます。レストランのメニューで、写真や名前だけではわからない料理や飲み物の中身を聞くのに使います。読みは「なんの」です。文法の用語では、「の」で名詞を名詞につなぐ連体修飾の一つで、前の名詞が後ろの名詞の中身・材料・テーマを表す使い方です。
接続
何(なん)の+N/答えは N1+の+N2
形
これは何のジュースですかりんごのジュースです何の本ですか——料理の本です
導入
- 中身のわからない飲み物を見せるラベルをはがしたペットボトルや、色だけのジュースの絵を見せ、教師が首をかしげて「これは何のジュースですか」と言う。果物の絵カードを当てて「オレンジのジュースです」と答え、板書は「何の[ ]ですか」「[ ]の[ ]です」の2行にする。
板書案
何〔赤〕の[ ]ですか。——[中身]〔赤〕の[ ]です。
これは 何の ジュースですか。——りんごの ジュースです。
〔赤〕何の=なんの
場面と発話(自作)
- レストランで、メニューのジュースが何のジュースか聞く。すみません、これは何のジュースですか。——りんごのジュースです。
- 友達が読んでいる本について聞く。それは何の本ですか。——料理の本です。
- ケーキ屋で、ショーケースのケーキの味を聞く。すみません、これは何のケーキですか。——チョコレートのケーキです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、飲み物・ケーキ・本などの絵カードの裏に中身を書いておき、「何のNですか」「〜のNです」を聞き合う。そのあとメニューの絵で、客役が店員役に料理や飲み物の中身を聞く。
- 口頭キューは①ラベルをはがした飲み物の絵 ②果物の絵カード(りんご・オレンジ・ぶどう)を飲み物の絵に重ねる ③本の表紙の絵(料理・旅行・日本語)、の3つ。教師が①を見せて全体で「これは何のジュースですか」、②を重ねて指名した学習者が「〜のジュースです」と答える、を速く回す。
- ペア情報差で行う。A は絵だけのメニュー、B は同じメニューに中身が書いてある店員用を持つ。A が「これは何のジュースですか」「何のケーキですか」と聞き、B が答え、A は自分のメニューに書き込む。4品終わったら別のメニューで交替する。
- 産出「わたしのおすすめメニュー」: 学習者が自分の国の飲み物・料理を1つ絵に描いてメニューを作り、ほかの学習者が「それは何のNですか」と聞く。答えは「〜のNです」。教師は「の」の落ち、「なんの」の読み、中身を聞かれたのに国で答えていないか(「どこの」の答えになっていないか)を見る。
つまずきと手当て
- 「*何ジュースですか」と「の」を落とす。答えの「りんごのジュース」と同じ形で聞く、と板書の2行で「の」の位置をそろえる
- 「何の」を「*なにの」と読む。この形は「なんの」と決めて覚えさせる
- 持ち主や作った国を聞くのにも「何の」を使う。中身は「何の」、国や店は「どこの」、持ち主は「誰の」と、ST3 の3つの聞き方を表にして分ける
既習の文型との違い
- NのN(第1課)第1課の「日本語の先生」と同じ「NのN」で、前の名詞が中身や種類を言います。新しいのは、前の名詞を「何」で聞く点だけです。読みは「なに」ではなく「なん」になるので、第1課の「何ですか」の「なん」とそろえて覚えさせます。
- 何/〜は何ですか(第1課)「これは何ですか」は物の名前を聞き、「これは何のジュースですか」はジュースだとわかっている物の中身を聞きます。何の物かわからないときに「何のN」を使おうとすると、N の所が言えずに止まるので、わかっている部分を名詞で言ってから「何の」で聞く、と2つの質問を並べて見せます。
関連する文型
学習項目 2 [言語]で
意味・はたらき
「で」は使う手段を表す助詞で、「日本語で」「英語で」のように言語につくと、その言語を使って言うことを表します。「これは日本語で何ですか」と聞けば、名前を知らない物の日本語を教えてもらえます。教室でも、わからない語を聞くときにすぐ使える言い方です。文法の用語では手段・方法を表す格助詞「で」で、第4課の「[交通手段]で」(バスで)と同じ「で」です。第3課の「[場所]で」とは働きが違いますが、この課では区別を説明せず、「〜語で」をひとかたまりで覚えさせれば足ります。
接続
[言語]+で(「〜は[言語]で何ですか」の形でよく使う)
形
これは日本語で何ですか「ありがとう」はベトナム語で何ですか日本語で「やきそば」です
導入
- 学習者の母語で聞く教師がりんごの絵を指して「これは日本語で『りんご』です」と言い、学習者に「英語で何ですか」「ベトナム語で何ですか」と聞いて母語で答えさせる。板書は「[物]は [言語]で 何ですか」とし、「で」を赤で書く。
板書案
[物]は 〔赤〕[言語]で 何ですか。
これは 日本語で 何ですか。——「やきそば」です。
「りんご」は 英語で 何ですか。——「apple」です。
〔青〕で=使うことば
場面と発話(自作)
- レストランで、メニューの写真の料理の名前を日本人の友達に聞く。これは日本語で何ですか。——「やきそば」です。
- 日本人の友達に、自分の国の言葉を聞かれる。「ありがとう」はベトナム語で何ですか。——「カム オン」です。
- 教室で、机の上の物の名前を先生に聞く。先生、これは日本語で何ですか。——「けしゴム」です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、物の絵カードを見せて学習者に「これは日本語で何ですか」と聞かせ、教師が答える。次に学習者同士で、日本語の語を「〜語で何ですか」と聞き合い、互いの母語の語を一つずつ覚える。
- 口頭キューは①物の絵カード(教室の物・料理)②言語の札(英語・中国語・ベトナム語・タイ語)③教師が物を指して首をかしげる「何と言う?」の身ぶり、の3つ。①と③で全体に「これは日本語で何ですか」を言わせ、②の札を替えて「〜語で何ですか」を一人ずつ言わせる。
- ペア「ことばの交換」: A は日本語の語カード、B は自分の母語の知識を使う。A が「『水』は〜語で何ですか」と聞き、B が答え、A はカタカナでメモする。3語ずつで交替し、2巡目は B が教室の物を指して「これは日本語で何ですか」と聞く。
- 産出「クラスの小さい辞書」: レストランで使う語(水・ごはん・お茶など)を全員で5つ選び、クラスの言語の数だけ「〜は〜語で何ですか」を聞き集めて表にする。発表は「『水』はタイ語で『ナーム』です」の形で一人一語ずつ。教師は「で」の取り違えと、答えが名前だけで短く終わっているかを見る。
つまずきと手当て
- 「*日本語に何ですか」「*日本語の何ですか」と助詞を取り違える。「〜語で」は使う言葉を表す、と板書の赤い「で」を指して確かめる
- 「これは日本語で何ですか」を、物の説明を求める質問と取り違えて、答えを長く言おうとする。答えは名前だけでよい、と答えの枠を「「〜」です」と板書する
- 言語の名前の代わりに国の名前を使って「*日本で何ですか」と言う。国は「日本」、言葉は「日本語」と、第1課の国と人のカードの横に「〜語」のカードを足して3つを並べる
既習の文型との違い
- 何/〜は何ですか(第1課)「これは何ですか」は物そのものを聞く質問で、「これは日本語で何ですか」は物はわかっていて呼び名を聞く質問です。名前を知りたいのに「これは何ですか」と聞くと、相手が物の説明を始めてしまうことがあります。呼び名がほしいときは「日本語で」を足す、と2つを並べて見せます。
関連する文型
学習項目 3 どこのN
意味・はたらき
「どこのN」は、その物がどこの国・どこの店や会社のものか、どこで作られたかを聞く言い方です。「どこのコーヒーですか」には「ブラジルのコーヒーです」と答えます。レストランやスーパーで、料理の国や産地を聞くのに使います。第1課の「さくら大学の学生」と同じ「NのN」の形で、前の名詞が国や場所になります。
接続
どこの+N/答えは[国・場所・会社]+の+N
形
これはどこのお茶ですか静岡のお茶ですどこのカレーですか——インドのカレーです
導入
- 世界地図と料理の絵第1課の世界地図を黒板に貼り、教師がキムチ・カレー・フォーなどの絵を見せて「これはどこの料理ですか」と聞く。学習者が地図を指して答えたら「韓国の料理です」と形にして言い直し、板書は「どこの[ ]ですか」「[国]の[ ]です」の2行にする。
板書案
どこ〔赤〕の[ ]ですか。——[国・場所・会社]〔赤〕の[ ]です。
この コーヒーは どこの コーヒーですか。——ブラジルの コーヒーです。
〔青〕どこですか=物のある場所 どこのNですか=国・産地
〔図〕世界地図に料理の絵を貼る
場面と発話(自作)
- カフェで、メニューのコーヒーの産地を聞く。このコーヒーはどこのコーヒーですか。——ブラジルのコーヒーです。
- 友達の新しい時計について聞く。それはどこの時計ですか。——スイスの時計です。
- スーパーで、肉の産地を店員に聞く。すみません、この牛肉はどこの牛肉ですか。——オーストラリアの牛肉です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、食べ物や品物の絵カードに国旗を貼っておき、「どこのNですか」「〜のNです」を聞き合う。次にメニューの絵で、「何のN」と「どこのN」を混ぜて店員役に聞かせる。
- 口頭キューは①国旗カード ②料理の絵(カレー・フォー・キムチ)③品物の絵(時計・カメラ・お茶)、の3つ。②③を見せて全体で「これはどこのNですか」、国旗を重ねて指名した学習者が「〜のNです」と答える。最後に国旗だけを見せて答えの文を言わせる。
- ペア「地図あわせ」: A は料理や品物の絵カード6枚、B は世界地図を持つ。A がカードを見せて「これはどこの料理ですか」と聞き、B が地図を指して「〜の料理です」と答え、合っていれば地図に貼る。3枚ずつで交替する。
- 産出「わたしの国のもの紹介」: 学習者が自分の国の物(お菓子・お茶・服など)を1つ持ってくるか絵に描き、ほかの学習者が「それはどこのNですか」「何のNですか」と聞いて、本人が答える。教師は質問の目的に合わせて「どこの」と「何の」を選べているか、国名と「〜人」を取り違えていないかを見る。
つまずきと手当て
- 国の名前ではなく「〜人」を入れて「ベトナム人の料理です」と答える。文としては言えるが「ベトナム人が作った料理」の意味に寄る。物の国は「ベトナムの料理」、人の国は「ベトナム人」と、第1課の「中国」「中国人」の2枚のカードに戻って分ける
- 産地を聞くつもりで「このコーヒーはどこですか」と言う。文法は正しく、話し言葉では産地の質問にも使うが、物のある場所の質問と取られることがある。産地をはっきり聞くときは「どこの+N」、と板書の2つの質問を並べて見せる
- 人の国を聞くのに「どこの人ですか」と言う。文法は通るが、くだけた、少しぶっきらぼうな聞き方に聞こえるので、初めて会った人には第1課の「お国はどちらですか」を使う、と場面で分ける
既習の文型との違い
- どこ/〜はどこですか(第2課 ST1)「〜はどこですか」は物や場所が今どこにあるかを聞き、「どこのNですか」は物の国・産地・作った会社を聞きます。「の」があるかないかだけの違いなので、産地を聞くつもりで「このコーヒーはどこですか」と場所を聞いてしまう取り違えが出ます。答えの「4階です」と「ブラジルのコーヒーです」を並べて見せます。
- 何のN(第2課 ST3)「何のN」は中身・種類、「どこのN」は国・場所を聞きます。同じ物に両方使えるので(りんごのジュース/青森のジュース)、1枚の絵カードで2つの質問をさせると違いがはっきりします。
関連する文型
学習項目 4 Nを(〜つ)ください
意味・はたらき
注文や買い物で数を言うときは、「Nを+数+ください」の順にします。数は「ひとつ・ふたつ・みっつ…とお」の「〜つ」で数え、物の形にかかわらず使えるので、初級ではまずこれで注文できるようにします。数を聞くときは「いくつ」です。11より上は「じゅういち」のように数字だけで言います。文法の用語では、「コーヒーをふたつ」の数は名詞から離れた位置に置かれる数量詞(遊離数量詞)で、注文や買い物では「ふたつのコーヒー」と名詞の前に置くよりこちらがふつうです。
接続
N+を+[〜つ]+ください(数のあとに助詞はつけない)
形
コーヒーをふたつくださいひとつ・ふたつ・みっつ・よっつ・いつつ・むっつ・ななつ・やっつ・ここのつ・とおいくつですか
導入
- 指で数えて注文する教師が指を1本ずつ立てながら「ひとつ、ふたつ、みっつ…」と10まで数え、全員でくり返す。次に店員役の学習者に指を2本見せながら「コーヒーをふたつください」と注文してみせる。板書は「[物]を [数] ください」とし、数のあとに何もつかないことを枠で見せる。
板書案
[物]を [数] ください。 〔枠〕数のあとに助詞なし
コーヒーを ふたつ ください。
〔表〕ひとつ ふたつ みっつ よっつ いつつ/むっつ ななつ やっつ ここのつ 〔赤〕とお
いくつですか。——みっつです。
場面と発話(自作)
- カフェで、友達の分もいっしょにコーヒーを注文する。すみません、コーヒーをふたつください。
- パン屋で、同じパンを3つ買う。このパンをみっつください。
- ドーナツの店で、持ち帰る数を店員に聞かれる。いくつですか。——むっつです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
まず「〜つ」を1から10まで、順番どおり→ばらばら→教師が指を見せて言わせる、の順で速く回す。次にメニューの絵と数字のカードを組み合わせて「〜を〜つください」を言わせ、最後に店員役が「いくつですか」と聞き返すやり取りで注文を通す。
- 口頭キューは①教師が指を立てて数を見せる ②食べ物の絵カードに数字を重ねる(パン×3)③数字カードだけを速くめくる、の3つ。①で「〜つ」を順番どおり→ばらばらに言わせ、②で「〜を〜つください」を全体→個人で言わせる。よっつ・ここのつ・とおは個人で必ず一度言わせる。
- ペア客役はメニューと注文カード(例: コーヒー2・紅茶1)、店員役は伝票を持つ。客が注文し、店員が「いくつですか」と聞き返してから伝票に書いて読み上げ、客が伝票を見て合っているか確かめる。2回注文したら交替する。
- 産出「グループで注文」: 3〜4人のグループで、各自がメニューから食べたい物を1つずつ決めて「わたしは〜です」と言い、代表がまとめて店員役に「〜をふたつと〜をひとつください」と注文する。教師は「〜つ」の読み(よっつ・ここのつ・とお)、数の位置、品物を「と」でつなぐ所を見る。
つまずきと手当て
- 「*コーヒーをふたつをください」と数のあとにも「を」をつける。数のあとはすぐ「ください」、と板書の枠で見せる(「ふたつのコーヒー」とも言えるが、注文では「コーヒーをふたつ」がふつう)
- 4つを「*よんつ」、9つを「*きゅうつ」と言う。「〜つ」は数字の読みとは別に覚える語、と表で並べ、10は「とお」で「つ」がつかないことを赤で示す
- 11より上も「*じゅういちつ」と「つ」をつける。「〜つ」は10までで、それより上は数字だけで言う、と表の終わりに線を引く
既習の文型との違い
- Nをください(第2課 ST2)ST2 では物を1つ指して「これをください」と言えば済みましたが、ここでは物と「ください」の間に数が入ります。数のあとにも「を」をつける「*コーヒーをふたつをください」が出やすいので、ST2 の板書の「を」と「ください」の間を空けて数を書き入れて見せます。
- NとN(第1課)何種類かを注文するときは第1課の「と」でつなぎ、「コーヒーをふたつと紅茶をひとつください」になります。「と」が数のあとに来る点が第1課の「NとN」と違い、学習者は「を」と「と」の位置をまぜやすいので、1品ずつ言えてから2品をつなげます。
関連する文型
学習項目 5 誰のN
意味・はたらき
「誰のN」は物の持ち主を聞く言い方で、「これは誰の傘ですか」には「わたしの傘です」と答えます。何の物の話か二人ともわかっているときは、後ろの名詞を省いて「誰のですか」「わたしのです」とも言います。レストランや教室で、忘れ物を持ち主に返す場面で使います。文法の用語では、「の」が持ち主を表す連体修飾で、後ろの名詞を省いた「わたしのです」の「の」は「わたしの傘」の「傘」の代わりをしています。
接続
誰(だれ)の+N/答えは[人]+の+N(N は省いてもよい)
形
これは誰の傘ですかわたしの傘ですこの傘は誰のですか——田中さんのです
導入
- 学習者の持ち物を集める授業の前に学習者からペン・ノート・かばんなどを1つずつ借りて教師の机に集め、1つずつ持ち上げて「これは誰のペンですか」と聞く。持ち主が手を挙げたら「〜さんのペンです」と言って返し、板書は「誰の[ ]ですか」「[人]の[ ]です」の2行にする。
板書案
誰〔赤〕の[ ]ですか。——[人]〔赤〕の[ ]です。
この 傘は 誰のですか。——わたしのです。
〔表〕中身=何の 国・店=どこの 持ち主=誰の
〔青〕話の物がわかっていれば「の」のあとの名詞は省いてよい
場面と発話(自作)
- レストランで、帰るときにいすの上に傘が残っている。この傘は誰のですか。——わたしのです。
- 教室の机の上に、名前の書いていないノートがある。これは誰のノートですか。——佐藤さんのノートです。
- 教室で、机の下に落ちていたペンを拾った。これは誰のペンですか。——先生のペンです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、持ち物を集めた机から教師が1つずつ取って「誰のNですか」と聞き、持ち主以外の学習者に「〜さんのNです」と答えさせる。慣れたら名詞を省いた「誰のですか」「〜さんのです」でも言わせ、最後にレストランの場面の終わりに忘れ物のやり取りを足す。
- 口頭キューは①授業の前に学習者から借りた持ち物 ②持ち物の絵カードに名前の札を付けたもの ③教師が物を持ち上げて首をかしげる身ぶり、の3つ。①を1つずつ持ち上げて全体で「これは誰のNですか」、持ち主以外の学習者に「〜さんのNです」と答えさせ、慣れたら「誰のですか」「〜さんのです」に縮める。
- ペア2人の持ち物を2つずつと、教師から借りた物を1つ、机の真ん中に混ぜて置く。A が1つ取って「これは誰のNですか」、B が「わたしのです」「〜さんのです」「先生のです」で答える。1つずつ交替して、全部の持ち主が決まるまで続ける。
- 産出「忘れ物センター」: ST3 のレストランの場面の続きとして、教師が集めた学習者の持ち物を店の忘れ物として並べる。店員役が「この〜は誰のですか」と客に聞き、持ち主が「わたしのです」と取りに来て「ありがとうございます」と言う。教師は「の」の落ち、名詞を省いた形で答えられるか、「何の・どこの・誰の」を取り違えていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「*わたし傘です」「*誰傘ですか」と「の」を落とす。第1課の「NのN」と同じく、持ち主のあとに「の」が入る、と板書の「の」を赤で書く
- 「この傘は誰のですか」に「わたしです」と答える。話し言葉では言うが、この課では持ち主を言う形として「わたしのです」と「の」まで言わせる。答えの枠を「[人]のです」と板書する
- 先生の物を「先生さんのです」と言う。「先生」はそれだけで呼び方になるので「さん」は付けない、と第1課の呼び方に戻って伝える
既習の文型との違い
- NのN(第1課)第1課の「NのN」と同じ形で、前の名詞が持ち主(人)になります。新しいのは、後ろの名詞を省いて「わたしのです」と言える点です。「の」まで省いて「わたしです」と答える学習者も多いので(話し言葉では言う)、この課では「の」が物の代わりをしていることを、板書で物の絵を「の」の上に重ねて見せます。
- 何のN(第2課 ST3)「何の」「どこの」「誰の」は形が同じで、聞く中身だけが違います(中身・国や店・持ち主)。1つの物について3つとも聞けるので、ST3 の最後に表にまとめ、1枚の絵で3つの質問を言わせて違いを固めます。
関連する文型