「わたし」「ここ」「きのう」「この」のように、発話の場面(だれが・いつ・どこで話しているか)を基準にしないと指すものが決まらない表現の働き。直示ともいう。
人称ダイクシス(わたし・あなた)、時間ダイクシス(きのう・あした・今)、場所ダイクシス(ここ・そこ・こちら)に大別され、談話内の位置を指す談話ダイクシス、待遇関係を示す社会的ダイクシス(敬語)を立てる立場もある。
「あした行きます」と書かれたメモは、いつ書かれたかが分からないと解釈できない — これが典型例である。日本語では人称詞が省略されやすく、また発話時を基準とする「きのう」と出来事を基準とする「前日」の使い分けも必要になるため、報告文や引用の指導で問題になる。
学習者に先週もらったメールの「あした、ここで会いましょう」を読ませて「いつ、どこですか」と聞くと、メールが送られた日と書き手の居場所が分からなければ答えられない。「あした」「ここ」は、発話の時と場所を基準にしないと指すものが決まらないダイクシスの表現だからである。書き言葉の連絡では「10日の3時に、駅の改札で」のように、場面に頼らない言い方に直す練習が役立つ。
友達の発言を報告するとき、きのう聞いた「あした行く」は、きょう伝えるなら「田中さんは、きょう行くと言っていました」になる。基準になる時点が変わると時間ダイクシスの言い換えが必要になり、直接引用を間接引用に直す練習では学習者の誤りが出やすい。「ここ」が「そこ」に、「私」が「彼」に変わるなど、人称と場所の言い換えも同時に起こる。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。