ST1 発表の準備
できること発表の準備の話し合いで、人の案を聞いて賛成したり、自分の考えや別の案を言ったりできる。
場面
日本語学校のクラスで、来週のグループ発表のテーマと分担を、同じクラスの友達どうしで決める場面です。親しい仲間なので友達言葉で話します。教室では机を寄せて3〜4人のグループを作り、教師が用意したニュースのカード(町の自転車事故・駅前のごみ・図書館の利用者など、自作の短い記事)を配って、どれを調べるかから話し合わせます。
- 留学生A:ねえ、町のお知らせで見たんだけど、この町で自転車の事故が増えているんだって。
- 留学生B:へえ、そうなんだ。それ、発表のテーマにするのはどう?
- 留学生C:いいね。事故の数だけじゃなくて、原因も調べたいな。
- 留学生A:じゃ、金曜日までに資料を集めないと、間に合わないね。
- 留学生B:うん。駅前で、自転車に乗る人に話を聞くのはどう?
- 留学生C:それ、いいね。じゃ、わたしが質問を考えておくよ。
学習項目 1 〜んだって
意味・はたらき
人から聞いたことや、どこかで読んだことを、親しい人に伝える友達言葉です。「〜そうです(伝聞)」の話し言葉のくだけた形にあたり、話し合いの中で「こんな話があるよ」と話題を出すのに使います。上げ調子の「〜んだって?」にすると、聞いた話が本当かどうか相手に確かめる言い方になります。先生や目上の人には「〜そうです」「〜と言っていました」を使います。
接続
普通形+んだって(ナA・N の「だ」は「な」になる:静かなんだって・休みなんだって)
形
事故が増えているんだってあの店、来月閉まるんだって明日は休みなんだってテスト、難しかったんだって?
導入
- 教師が「聞いた話」を二通りに言う教師が町のお知らせのカードを持ち、学生に向かって「この町で自転車の事故が増えているそうです」と言う。次に、同僚の先生役(人形や写真)に小声で話す動作をして「ねえ、事故が増えているんだって」と言い、相手がちがうと言い方が変わることを見せる。板書は「〜そうです(ていねい)/〜んだって(友達)」の2行にし、下にナA・N の「〜なんだって」を足す。
板書案
普通形 + んだって 〔赤〕友達に話す 〔青〕先生には「〜そうです」
事故が 増えている → ねえ、事故が 増えているんだって。
〔赤〕ナA・N は「な」:静かだ → 静かなんだって/休みだ → 休みなんだって
〔青〕イA・V はそのまま:高いんだって/閉まるんだって
〔赤〕↗ 上げ調子「〜んだって?」=本当か確かめる
場面と発話(自作)
- 休み時間、クラスの友達に、さっき掲示板で見たことを伝える。ねえ、来週の授業、午後だけなんだって。
- アルバイト先の同い年の仲間から聞いた話を、ルームメートに話す。駅前のパン屋さん、今月で閉まるんだって。
- 友達がほかの人から聞いた話が本当か、本人に確かめる。国に帰るんだって?——うん、夏休みに少しだけね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「〜そうです」の文(「図書館は月曜日休みだそうです」など)を言い、学習者が友達に言う形「〜んだって」に言いかえる。名詞・ナ形容詞の文を多めに混ぜて「なんだって」を練習する。そのあと、ニュースのカードを1枚ずつ引いて、グループの仲間に「ねえ、〜んだって」と話題を出し、相手が「へえ、そうなんだ」と返すやり取りにつなぐ。
- 口頭教師が「〜そうです」の文をカードで言う(図書館は月曜日休みだそうです/駅前に新しい店ができたそうです/あしたのテストは難しいそうです/あの公園は静かだそうです/来週は授業が午前だけだそうです)。全員で「〜んだって」に言いかえ、続けて名詞・ナ形容詞の文だけを集めて「なんだって」を列ごと、個人と進める。最後に同じ文を上げ調子で言わせ、確かめる質問にする。
- ペアA と B に別々の「うわさカード」(自作の短いニュースを3枚ずつ)を配り、相手に見せないで交互に「ねえ、〜んだって」と伝える。聞いた人は「へえ、そうなんだ」「本当?」で返してメモを取り、3枚ずつ終わったら役を交替する。最後にメモを見て、教師に「〜さんから聞いたんですが、〜そうです」と丁寧な形で言い直させる。
- 産出「うわさリレー」: 4〜5人で1列になり、先頭の人だけが教師からニュースを聞いて、次の人に「〜んだって」で伝えていく。列の最後の人は前に出て、教師に「〜そうです」で報告する。教師は ①ナ形容詞・名詞の「な」 ②相手が友達か先生かで形を変えているか ③伝える途中で内容が変わっていないか、を見て、ずれたところだけ列の全員で言い直す。
つまずきと手当て
- 「*休みだんだって」「*静かだんだって」と「だ」を残す。「〜んです」のときと同じで、ナA・N は「な」になると板書で並べて見せる
- 「*高いなんだって」とイ形容詞にも「な」をつける。「な」が入るのはナA・N だけ、と品詞別に3行で板書する
- 先生にも「先生、明日休みなんだって」と言ってしまう。文法の誤りではないが場面に合わないので、相手のカード(友達・先生)を見せて「〜んだって/〜そうです」を選ばせる
既習の文型との違い
- 〜そうです(伝聞)(初級第15課)どちらも聞いた話を伝える形で、意味は同じです。「〜そうです」は丁寧でだれにでも使え、「〜んだって」は友達や家族にだけ使います。接続も違い、名詞・ナ形容詞は「休みだそうです」と「だ」が残るのに対し、「休みなんだって」は「な」になるので、「*休みなそうです」「*休みだんだって」と混ぜる誤りが出ます。
- 〜と言っていました(初中級第11課)「〜と言っていました」は、だれが言ったかがはっきりしていて、その人の言ったことをそのまま伝える形です。「〜んだって」は掲示板やニュースのように、出どころがはっきりしない話にも使えます。言った人を伝えたいときは「先生が〜と言っていました」、話題を出したいだけなら「〜んだって」と使い分けさせます。
関連する文型
学習項目 2 Vるのはどうですか
意味・はたらき
話し合いの中で「こういうやり方もある」と案を出し、みんなの意見を聞く言い方です。「Vたらどうですか」は相手一人に何かをすすめる言い方ですが、「Vるのはどうですか」は一つのアイデアとして机の上に出す感じで、グループで何かを決めるときに使いやすい形です。友達どうしでは「〜のはどう?」と言います。
接続
V辞書形+のはどうですか(友達には「〜のはどう?」)
形
グラフを使うのはどうですか駅前で話を聞くのはどう?発表を二人で分けるのはどうですか
導入
- 教師が案を二つ出してみせる黒板に「発表の資料:?」と書き、教師が「紙に書くのはどうですか」「スライドを作るのはどうですか」と案を二つ出して、学習者に手を挙げて選ばせる。板書は「[V辞書形]のは どうですか」の枠にし、「の」を赤で書く。そのあと、第12課の「Vたらどうですか」(相手にすすめる)と並べて、「わたしたちで決める」ときはこちら、と矢印で分けて見せる。
板書案
V辞書形 + のは どうですか 〔赤〕「の」
グラフを 使う → グラフを 使うのは どうですか。
〔青〕友達には:〜のは どう?
〔赤〕みんなで決める:Vるのは どうですか ⇔ 〔青〕相手にすすめる:Vたら どうですか(第12課)
返し方:いいね。/それもいいけど、〜のは どう?
場面と発話(自作)
- グループ発表の準備で、どう調べるか決まらないとき、仲間に案を出す。図書館で古い新聞を見るのはどう?
- クラスの会で、先生も入った話し合いの中で、自分の案を言う。最後にクイズをするのはどうですか。
- ルームメートと、部屋の掃除をだれがするか決める。台所の掃除は、一週間ずつ交替でするのはどう?
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「資料」「場所」「時間」などの語カードを見せ、学習者が「〜のはどうですか」で案を出す。次に、グループで一人ずつ案を出し、ほかの人が「いいね」「それもいいけど、〜のはどう?」と返して、二つの案を比べて一つに決めるやり取りにする。
- 口頭やり方の語カードを見せる(グラフを使う/駅前で話を聞く/図書館で調べる/二人で分ける/最後にクイズをする)。全員で「〜のはどうですか」と言い、次に友達向けの「〜のはどう?」で列ごとに言う。教師が「グラフ」とだけ言ったら学習者が動詞を足して案にする形に進め、最後は個人で一人ずつ。
- ペア「決めることカード」(発表の資料の形・クラスの会の場所・先生へのプレゼントの渡し方)を1枚引き、A が案を一つ出す。B は「いいね」で賛成するか、「それもいいけど、〜のはどう?」で別の案を出し、二人で一つに決めて「じゃ、〜にしよう」で終える。カードを替えて役を交替する。
- 産出「アイデア会議」: 3〜4人のグループで、クラスでやりたいこと(発表の進め方・クラスの会の内容)を決める。一人2つ以上の案を「〜のはどうですか/どう?」で出し、決まったことを「わたしたちのグループは〜ことにしました」でクラスに報告する。教師は ①「の」が落ちていないか ②辞書形か ③相手一人へのすすめ(〜たらどうですか)と混ざっていないか ④相手の案に返してから自分の案を出しているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*使うはどうですか」と「の」を落とす。動詞の文を名詞のようにまとめるには「の」が要る、と第1課の「VるのはA」の板書を思い出させる
- 「使ったのはどうですか」と言って、すんだことの感想を聞く質問になってしまう。案を出すときは辞書形、と「これから」の矢印と一緒に示す
- 目上の人に「先生、早く来たらどうですか」と言う。文法の誤りではないが、相手にすすめる形は押しつけに聞こえやすいので、話し合いの案は「〜のはどうですか」にさせる
既習の文型との違い
- Vたらどうですか(初中級第12課)「Vたらどうですか」は、困っている相手一人に解決のしかたをすすめる形です(「風邪なら、早く寝たらどうですか」)。「Vるのはどうですか」は、みんなで決めることに案を一つ出す形で、自分もその中に入っています。話し合いで「グラフを使ったらどうですか」と言うと、発表をするのが相手だけのように聞こえることがあります。
- Nなんかどうですか(初中級第14課)「Nなんかどうですか」は、物や場所などの名詞の候補を軽く挙げる言い方です(「プレゼントは花なんかどうですか」)。「Vるのはどうですか」は、何をするか・どうやるかの案を出す言い方です。選ぶものが名詞なら「Nなんか」、やり方なら「Vるのは」と、カードを二つの山に分けて選ばせます。
関連する文型
学習項目 3 〜だけじゃなくて、〜も〜
意味・はたらき
「Aだけではない、Bもそうだ」と、範囲を広げて言う形です。話し合いでは、相手の案に「それに加えて」と自分の考えを足したり、問題が思ったより広いことを示したりするのに使います。改まった発表や書いたものでは「〜だけでなく、〜も」と言うことが多く、「じゃなくて」は話し言葉です。
接続
N/V普通形/イA/ナAな+だけじゃなくて、〜も(助詞は「も」の前に残す:「町でも」「子どもにも」)
形
事故の数だけじゃなくて、原因も調べたいこの町だけじゃなくて、となりの町でも増えている安いだけじゃなくて、味もいいです便利なだけじゃなくて、静かです
導入
- 丸を一つ描き、もう一つ足す黒板に丸を描いて「この町」と書き、教師が「この町で事故が増えています」と言う。となりにもう一つ丸を描いて「となりの町」と書き、「この町だけじゃなくて、となりの町でも増えています」と言い直す。板書は「Aだけじゃなくて、Bも」の枠にし、助詞のある文では「でも」「にも」になることを赤で示す。
板書案
Aだけじゃなくて、Bも〜 〔赤〕○A + ○B
この町だけじゃなくて、となりの町でも 増えています。
〔青〕助詞+も:で → でも/に → にも/が・を → も
〔赤〕ナA:便利な だけじゃなくて / N:数 だけじゃなくて
話す:〜だけじゃなくて / 〔青〕発表・書く:〜だけでなく
場面と発話(自作)
- 発表のテーマを話し合っていて、友達の案に自分の考えを足す。数だけじゃなくて、どの時間に多いかも調べようよ。
- 日本人の友達に、新しく住んだ町のよいところを話す。駅に近いだけじゃなくて、スーパーも多いから便利だよ。
- アルバイト先で、店長に、困っている人が多いことを伝える。留学生だけじゃなくて、日本人のお客さんにも分かりにくいみたいです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「この町/となりの町」「学生/先生」のような語の組を見せ、学習者が「〜だけじゃなくて、〜も」で一文にする。助詞の入る組(「町で」「子どもに」)を混ぜて「でも」「にも」を言わせる。そのあと、ST1 の話し合いで、仲間の案に「〜だけじゃなくて、〜も〜」で一つ足してから賛成する形にする。
- 口頭語の組のカードを見せる(この町/となりの町、学生/先生、安い/おいしい、便利/静か、事故の数/原因)。全員で「〜だけじゃなくて、〜も〜」の一文にし、助詞の入る組(「町で」「子どもに」)を混ぜて「でも」「にも」を言わせる。品詞ごとに列を分け、最後は教師が組を言ったら個人で答える。
- ペア「町じまん」: A が自分の住んでいる町(国の町でもよい)のよいところを一つ言う。B が「それだけ?」と聞き返し、A は「〜だけじゃなくて、〜も〜よ」でもう一つ足す。B は「いいね」「行ってみたい」で返し、2往復したら交替する。
- 産出「プラスワン会議」: ST1 の話し合いで、仲間の案に賛成するときは必ず「〜だけじゃなくて、〜も〜」で一つ足してから賛成する、というルールで話す。終わったら、グループで決まったことを「だけでなく」を使った一文で紙に書かせる。教師は ①助詞と「も」の順 ②ナ形容詞の「な」 ③後ろの「も」が落ちていないか ④話す文と書く文で形を替えているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*となりの町もで」「*子どもも に」と、助詞と「も」の順番を逆にする。助詞を先に、「も」をあとに、と「で+も」「に+も」のカードを重ねて見せる
- 「*便利だけじゃなくて」とナ形容詞に「な」を入れない。名詞を修飾するときと同じ「便利な」の形、と品詞別に板書する
- 後ろの「も」を落として「数だけじゃなくて、原因を調べたい」と言い、範囲を広げる意味が弱くなる。後ろの丸にも「も」を書き込んで、二つで一組の形だと示す
既習の文型との違い
- Nも(初級第1課)「この町も、となりの町も増えています」は、二つを同じ重さで並べる言い方です。「この町だけじゃなくて、となりの町でも」は、「この町だけだと思うかもしれないが、もっと広い」と、前のことを認めてから範囲を広げる感じが出ます。問題が広いことを伝えたい発表では、こちらのほうが効きます。
- Nじゃなくて、〜/Vるんじゃなくて、〜(初中級第4課)「AじゃなくてB」は、A を打ち消して B に取りかえる言い方です。「Aだけじゃなくて、Bも」は A を残したまま B を足します。「だけ」を落として「この町じゃなくて、となりの町でも増えています」と言うと、この町では増えていないことになるので、丸を消す絵と丸を足す絵を並べて見せます。
関連する文型
学習項目 4 〜ないと、〜
意味・はたらき
「Aしなかったら、よくないBになる」と言って、Aをする必要があることを伝える形です。準備の話し合いでは、締め切りや分担を確かめて「だから今これをしよう」と仲間を動かすのに使います。後ろには「間に合わない」「困る」「分からない」のような、よくない結果が来ます。後ろを言わずに「早く決めないと。」で止めると、「〜なければなりません」のくだけた言い方になります。
接続
Vナイ形+と、〜(後ろはよくない結果。後ろを省いて「Vないと。」とも言う)
形
急がないと、間に合わないよ資料を集めないと、発表できない早く決めないと。
導入
- 時計とカレンダーで「困る」を見せる黒板にカレンダーを描いて金曜日に「発表」と書き、今日の日付に印をつける。教師が焦った顔で「金曜日までに資料を集めないと、間に合いません」と言い、学習者に「間に合わないと、どうなりますか」と聞いて「困る」を引き出す。板書は「[Vない]と、[よくないこと]」の枠にし、「Vなければなりません」と並べて、言いたいことは同じだが、こちらは結果まで言う形だと示す。
板書案
Vない + と、[よくないこと]
急がない と、間に合わないよ。
〔赤〕後ろを言わない:早く 決めないと。(=決めなければなりません)
〔青〕Vると、〜(初級第14課) ⇔ Vないと、[よくないこと]
カレンダー:今日 ●──── 金 発表 〔赤〕「〜までに〜ないと」
場面と発話(自作)
- 発表の前の日、グループの仲間にまだ練習していないことを言う。今日練習しないと、明日うまく話せないよ。
- 朝、ルームメートがまだ寝ているので声をかける。もう8時だよ。起きないと、電車に遅れるよ。
- 友達と話していて、自分の用事を思い出す。あ、そろそろ帰らないと。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「急ぐ/間に合わない」「調べる/分からない」のような二つの語のカードを出し、学習者が「〜ないと、〜」で一文にする。慣れたら後ろを言わない「〜ないと。」の形も練習する。そのあと、ST1 の話し合いの最後に、締め切りのカレンダーを見ながら「〜までに〜ないと、〜」でやることを確かめ、分担を決めさせる。
- 口頭二つの語のカードを出す(急ぐ/間に合わない、調べる/分からない、予約する/入れない、練習する/うまく話せない、起きる/遅れる)。全員で「〜ないと、〜」の一文にし、ナイ形を作るのに迷う動詞(来る・する・行く)を混ぜる。慣れたら後ろを言わない「〜ないと。」を、困った顔と一緒に個人で言わせる。
- ペア「あと3日」: A が予定カード(金曜日に発表/来週テスト/あした引っ越し/週末に友達が来る)を見せて「どうしよう、まだ何もしてない」と言う。B が「じゃ、今日〜ないと、〜よ」と言い、A が「そうだね。〜ないと。」で受ける。カードを1枚ずつ替えて交替する。
- 産出「締め切りカレンダー」: グループで発表の日までのカレンダーを模造紙に書き、「水曜日までに〜ないと、〜」で一日ずつやることを決めて、だれがするかを書き入れる。できたカレンダーを見ながら、一人ずつ自分の分担を言う。教師は ①ナイ形の作り方 ②後ろがよくない結果になっているか ③「〜ないと。」で止めるときの言い方が自然か、を見る。
つまずきと手当て
- 「*集めなくと」「*集めないでと」と形を作りまちがえる。ナイ形をそのまま言ってから「と」をつける、とナイ形の板書を指して確かめる
- 後ろによい結果を置いて「練習しないと、上手になります」のように言い、意味が通らなくなる。後ろは「よくないこと」と枠の中に書き、絵(困った顔)で示す
- 「Vると、〜」(初級第14課)と混ぜて、「急ぐと、間に合う」と言いたいところで「急がないと」と「急ぐと」を取りちがえる。「Vると、よいこと」「Vないと、よくないこと」を左右に並べ、どちらが「しなければならない」を表すかを確かめる
既習の文型との違い
- Vなければなりません(初級第14課)どちらも「しなければいけない」ことを伝えますが、「Vなければなりません」は決まりや必要を直接言う形です。「〜ないと、〜」は、しなかったときの困った結果を見せて、相手や自分を動かす言い方です。後ろを省いた「〜ないと。」は友達との会話の形なので、先生への報告では「〜なければなりません」に戻させます。
- 条件形(初中級第9課)「急がなければ、間に合いません」も同じ意味になり、「〜ないと」より少し硬い言い方です。話し合いの中では「〜ないと」、発表の原稿や書いたものでは「〜なければ」を使うことが多い、と並べて見せます。形は「急がない→急がなければ」と、ナイ形の「い」を「ければ」にかえることを確かめます。
関連する文型
ST2 みんなの前で発表
できること調べたことや、それについての自分の考えを、資料を見せながらクラスの前で順序よく話せる。
場面
グループで調べたことを、クラスメートと先生の前で発表する場面です。聞き手が大勢いて、先生も聞いているので、です・ます体で話します。教室では前に立つ場所を決め、模造紙かスライドにグラフを一枚用意させ、聞いている人には質問を一つ考えながら聞くように伝えます。
- 発表する留学生:これから、この町の自転車の事故について発表します。
- 発表する留学生:このグラフを見てください。事故は、5年前から少しずつ増えてきました。
- 発表する留学生:スマホを見ながら自転車に乗る人が多いために、事故が起きやすくなっているそうです。
- 発表する留学生:このままだと、事故はこれからも増えていくと思います。以上です。
- 聞いている学生:質問があります。話を聞いた人は、どんな意見を言っていましたか。
- 発表する留学生:「危ないのは分かっているけど、つい見てしまう」と言っていました。
学習項目 1 Vてきました
意味・はたらき
過去のある時から今までのあいだに、少しずつ変化が続いてきたことを言う形です。発表では、グラフの線を指しながら「〜年前から今まで、こう変わってきた」と説明するのに使います。「増えました」はその結果だけを言いますが、「増えてきました」は今までの流れも一緒に伝えます。「増える・減る・変わる・〜くなる・〜になる」のような変化を表す動詞と一緒に使うことが多いです。
接続
Vテ形+きました(変化を表す動詞と使うことが多い)
形
事故が増えてきました町の様子が変わってきました日本語が分かるようになってきました少しずつ暖かくなってきました
導入
- グラフの線を左から今まで引く黒板に横軸「5年前・3年前・今」のグラフを描き、教師がチョークで左から「今」まで右上がりの線をゆっくり引きながら「5年前から、少しずつ増えてきました」と言う。「今」に縦の線を引き、矢印が「今」に向かってくることを示す。板書は「〜から 今まで → Vてきました」とし、「増えました」(点だけ)と並べて違いを見せる。
板書案
〜から 今まで + Vてきました
〔赤〕グラフ:5年前 ////→ 今|
事故は、5年前から 少しずつ 増えてきました。
〔青〕増えました(●点=結果) ⇔ 増えてきました(──→線=流れ)
変化の動詞:増える・減る・変わる・〜くなる・〜になる・〜ようになる
場面と発話(自作)
- クラスの発表で、町の事故の数のグラフを見せる。事故は、3年前から少しずつ増えてきました。
- 地域の日本語教室で、日本に来てからの自分の変化を話す。最近、ニュースの日本語が少し分かるようになってきました。
- アルバイト先で、店長と最近のお客さんの様子を話す。このごろ、外国から来るお客さんが増えてきましたね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、上がる・下がる・変わる線のグラフカードを見せ、学習者が「〜から、〜てきました」で言う。「増える/減る」「高くなる/安くなる」の組で、変化の向きも言いかえる。そのあと、ST2 の発表の原稿に、自分のグループのグラフを説明する一文として入れさせる。
- 口頭グラフカードを見せ、語を添える(右上がり+増える/右下がり+減る/値札が上がっていく絵+高くなる/町の絵が2枚+変わる/辞書を使う回数が減る絵+分かるようになる)。全員で「〜から、少しずつ〜てきました」と言い、次に「増える/減る」「高くなる/安くなる」の組で向きを言いかえる。最後は教師がグラフを指すだけにして個人で。
- ペア「グラフの読み合い」: A と B が別々の架空のグラフ(町に住む人の数・駅を使う人・図書館を使う人・自転車の事故)を持ち、相手に見せないで「〜年前から〜てきました」で説明する。聞く人はそれを聞いて白い紙にグラフを描き、最後に見せ合って合っているか確かめる。合わなかったところは、説明する人が言い直す。
- 産出「わたしの3年グラフ」: 自分の変化(日本語・料理・朝起きる時間・友達の数など)を、横軸3年の簡単なグラフに描き、グラフを見せながら「〜てきました」を入れて30秒話す。聞く人は質問を一つする。教師は ①テ形 ②変化の動詞と一緒に使っているか ③結果だけ言いたいところと流れを言いたいところで「〜ました」と「〜てきました」を選べているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*増えるてきました」「*増えてきます(今までのことを言うとき)」と形や時を取りちがえる。今までの変化は「〜てきました」、とグラフの「今」の線を指して確かめる
- 「町が変わりました」と「町が変わってきました」を同じだと思い、流れを伝えたい発表で結果だけを言う。点と線の板書で、伝えたいのが流れなら「〜てきました」と選ばせる
- 初級の「Vてきます」(「買ってきます」=行って戻ってくる)と同じだと思い、意味が分からなくなる。ここは「物を持って戻る」ではなく「時間が今まで流れてくる」と、グラフの矢印で見せる
既習の文型との違い
- Vてきます(初級第10課)初級の「Vてきます」は「パンを買ってきます」のように、どこかへ行って何かをして戻る動きです。この課の「Vてきました」は、時間が今に向かって流れてくることを言います。同じ形なので、前の動詞が「買う」のような動作か、「増える・変わる」のような変化かで見分けさせます。
- Vるようになります(能力の変化)(初中級第1課)「分かるようになりました」は、できなかったことができるようになったという、今の状態を言います。「分かるようになってきました」は、まだ途中で、少しずつ進んでいる感じが出ます。自分の日本語のことを話すときは、後ろの形のほうが控えめで自然に聞こえることが多いと伝えます。
関連する文型
学習項目 2 〜ために、〜(原因)
意味・はたらき
前の部分が原因で、後ろの結果が起きたことを言う形です。「から」「ので」より硬い言い方で、ニュースや発表、書いたものでよく使います。第3課の「ために」(目的)と形は似ていますが、目的は「これからそうしたい」こと、原因は「もうそうなっている」ことで、後ろには自分の意志ではどうにもならない結果が来ます。後ろに「〜てください」「〜ましょう」のような頼みやさそいは来にくいので、そのときは「から」「ので」を使います。
接続
V普通形/イA普通形/ナAな・ナAだった/Nの・Nだった+ために、〜
形
雨のために、試合が中止になりました人が多いために、事故が起きやすくなっています道が狭いために、自転車が通りにくいです台風が来たために、電車が止まりました
導入
- 「原因 → 結果」の矢印を描く黒板に左右の箱を描き、右の箱に「電車が止まりました」、左の箱に台風の絵を入れて、教師が「台風のために、電車が止まりました」と言う。次に、日常の話し方の「台風で、電車が止まったよ」(初級第15課の[原因]で)と並べ、発表やニュースでは「ために」を使うことが多いと示す。最後に第3課の「日本語を勉強するために、日本に来ました」を下の段に書き、「これから(目的)」と「もう起きた(原因)」を色を変えて分ける。
板書案
[原因]ために、[結果] 〔赤〕原因 □ → □ 結果
台風の ために、電車が 止まりました。
〔青〕N の/ナA な/イA・V 普通形 + ために
〔赤〕原因(もう起きた):雨の ために、中止に なりました / 〔青〕目的(これから):勉強する ために、来ました(第3課)
話す:〜で・〜から・〜ので ⇔ 発表・ニュース:〜ために
場面と発話(自作)
- クラスの発表で、事故が増えた原因を説明する。スマホを見ながら乗る人が多いために、事故が増えています。
- アルバイト先の店長が、店の前に紙を貼るお知らせの文を一緒に考えている。機械が故障したために、今日はカードが使えません。
- 地域の日本語教室で、自分の国の町で困っていることを説明する。雨が少ないために、野菜が高くなっています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、原因カード(雨・台風・人が多い・道が狭い)と結果カード(試合が中止・電車が止まる・事故が起きる)を組み合わせて、「〜ために、〜」を言わせる。N・イA・ナA・V の原因を混ぜて接続を確かめる。そのあと、ST2 の発表の原稿に、グラフの変化の原因を「〜ために」で一文書き、声に出して読ませる。
- 口頭原因カード(雨・台風・人が多い・道が狭い・機械が故障した)と結果カード(試合が中止になる・電車が止まる・事故が起きる・カードが使えない)を並べ、組み合わせて「〜ために、〜」の一文を全員で言う。品詞ごとに色の違うカードにして、N・ナA・イA・V の接続を列ごとに確かめ、最後は教師がカードを2枚引いて個人に当てる。
- ペア「ニュースの見出し」: A は結果だけが書いてあるニュースのカード(電車が止まった・店が閉まった・事故が増えた)、B は原因のカードを持つ。A が「どうして〜んですか」と聞き、B が自分のカードから合うものを選んで「〜ために、〜そうです」と答える。合ったら二人で一つの短いニュースの文にして読み、役を交替する。
- 産出「原因さがし」: グループの発表のテーマについて、原因を二つ考え、「〜ために、〜ています」で発表の原稿に書いて声に出して読む。聞く人は「ほかにも原因があると思いますか」と質問する。教師は ①N の「の」とナ形容詞の「な」 ②目的の「ために」と意味が逆になっていないか ③後ろに頼みやさそいを置いていないか ④友達との会話で使って硬くなっていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*雨ために」「*静かために」と接続をまちがえる。N には「の」、ナA には「な」、と品詞別の枠で確かめる
- 目的の「ために」と取りちがえ、「日本語が上手になったために、毎日勉強しています」のように意味が逆になる。「これからのこと」か「もう起きたこと」かを、矢印の向きで毎回確かめる
- 「雨のために、傘を持っていってください」のように後ろに頼みを置く。このときは「雨だから」「雨なので」が自然、と頼みの文には「から・ので」を使わせる
- 友達との会話でも「寝坊したために、遅れた」と言い、硬く聞こえる。誤りではないが、話すときは「寝坊して、遅れちゃった」のような言い方が多いと伝える
既習の文型との違い
- Vるために、〜/Nのために、〜(目的)(初中級第3課)形は同じですが、目的は「これからそうしたい」こと、原因は「もう起きた」ことです。目的の前には自分で決めてする動作(勉強する・調べる)が来て、原因の前には、もう起きたことや今の状態(台風が来た・事故が多い・窓を開けた)が来ます。「人が多いために」は原因、「人を集めるために」は目的、と前の部分で見分けさせます。
- [原因]で(初級第15課)/〜ので、〜(初中級第1課)「台風で電車が止まった」は名詞の後ろにしか付かず、話し言葉でよく使います。「〜ので」はていねいな会話にも使えて、後ろに頼みも置けます(「雨なので、傘を持っていってください」)。「〜ために」は文を受けられて硬く、ニュースや発表に向く代わりに、後ろに頼みやさそいは置きにくい、と三つを表にして見せます。
関連する文型
学習項目 3 Vていきます
意味・はたらき
今から先に向かって、変化がこれからも続くことを言う形です。発表の終わりで「このままだと、これからも〜ていくと思います」と見通しを言うのに使います。「Vてきました」が過去から今までの流れなら、「Vていきます」は今から先への流れで、二つをセットで使うと、グラフの左半分と右半分を説明できます。予想として言うときは「〜ていくと思います」の形がよく使われます。
接続
Vテ形+いきます(予想は「Vていくと思います」)
形
これからも増えていくと思います町は少しずつ変わっていきますこれから寒くなっていきます
導入
- グラフの「今」から先に点線を引く「Vてきました」で使ったグラフの「今」から右へ点線を伸ばし、教師が「このままだと、これからも増えていくと思います」と言う。「今」から先へ離れていく矢印を描き、板書を「〜から今まで → Vてきました/今からこれから → Vていきます」の2段にする。学習者に点線の向きを上・下に変えたカードを見せて、「増えていく」「減っていく」を言わせる。
板書案
今 から これから + Vていきます
〔赤〕グラフ:今|‥‥‥‥→(点線)
このままだと、これからも 増えていくと 思います。
〔青〕〜てきました(今まで → 今) + 〜ていきます(今 → これから)
予想:Vていくと 思います / 〔赤〕自分の考え:Vていきたいです
場面と発話(自作)
- クラスの発表の最後に、これからどうなるかの考えを言う。このままだと、事故はもっと増えていくと思います。
- 地域の日本語教室で、これからの自分の目標を話す。これからも、少しずつ日本語の勉強を続けていきたいです。
- アルバイト先で、店長とこれからの店のことを話す。駅前にマンションができたので、お客さんはもっと増えていくと思います。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「今」から先の線が上・下・横に伸びるグラフカードを見せ、「〜ていくと思います」で予想を言わせる。次に、同じグラフの左半分と右半分を指して、「〜てきました。これからも〜ていくと思います。」を一続きで言わせる。そのあと、ST2 の発表の終わりの一文として、自分のグループの見通しを書き入れる。
- 口頭「今」から先に点線が伸びるグラフカードを見せる(上へ+増える/下へ+減る/坂を上る絵+高くなる/人が集まる町の絵+にぎやかになる)。全員で「これからも〜ていくと思います」と言い、次に同じグラフの左半分と右半分を指して「〜てきました。これからも〜ていくと思います。」を一続きで言わせる。最後は個人で。
- ペア「未来予報」: A がテーマのカード(町に住む人・コンビニの数・スマホを使う時間・日本語を勉強する人)を引き、B が「これからどうなると思う?」と聞く。A は「〜ていくと思う。〜から。」と理由も一つ言い、B は「そうかな。わたしは〜と思う」と自分の予想を返す。カードを替えて交替する。
- 産出「発表の締めの一文」: グループの発表の原稿の最後に、これからの見通しとそれについての考え(「このままだと、〜ていくと思います。ですから、〜ないと、〜」)を書き入れ、グループで通して読む。教師は ①「〜てきます」と「〜ていきます」の向き ②予想を「と思います」と一緒に言っているか ③「〜ています」と混ざっていないか、を見る。
つまずきと手当て
- これからの見通しを言うのに「これからも増えてきます」を使う。誤りではない(変化が始まってこちらへ近づいてくる感じになる)が、先の見通しは「〜ていきます」が基本。「今」に向かってくるのが「〜てきました」、「今」から離れていくのが「〜ていきます」と、教え方の目安として矢印の向きで見せる
- 「増えていきます」と言い切って、予想なのに事実のように聞こえる。文法の誤りではないが、発表では「〜ていくと思います」と根拠と一緒に言わせる
- 「Vています」と取りちがえて「これからも増えています」と言う。「ています」は今の様子、「ていきます」はこれからの変化、と板書の段を分けて確かめる
既習の文型との違い
- Vてきました(初中級第15課)同じ課で、時間の流れを二つに分けて教えます。「Vてきました」は過去から今に向かってくる変化、「Vていきます」は今から先へ離れていく変化です。グラフの「今」に縦の線を引き、左が「きました」、右が「いきます」と、黒板の位置で覚えさせます。
- Vています(結果の状態)(初級第15課)「増えています」は、今そうなっている様子を言う形です。「増えていきます」は、これから先も変化が続くことを言います。発表で「事故は増えています。これからも増えていくと思います」と二つを続けて言わせると、今の様子と見通しの違いがはっきりします。
関連する文型