日本に来てから人にしてもらった親切を話し、お世話になった人にきちんとお礼を言えるようになる課です。初級第8課の「あげます・もらいます・くれます」は物の受け渡しでしたが、この課では行為の受け渡し(Vてあげます・Vてもらいます・Vてくれます)に広げ、ST2 で相手が目上のときのいただきます・くださいます・Vていただきます・Vてくださいますに進みます。ST1 は友達どうしの横の関係、ST2 は目上の人(先生・大家さんは外、店長は同じ店の上)との関係、と話し相手の上下と内外がはっきり分かれているので、いつも「誰が・誰のために・誰に話すか」を矢印の図で確かめながら進めます。第7課の尊敬語・謙譲語(いらっしゃいます・おVします)と、第5課の「〜て、〜(理由)」「Vていただけませんか」をそのまま使います。
ST1 うれしい出来事
できること日本に来てから親切にしてもらった経験を友達に話し、親しい人が困っているときは自分から手助けを申し出られる。
場面
日本語学校の休み時間や寮の部屋で、留学生が同じくらいの年の日本人の友達やクラスメートと、引っ越しや病気のときに助けてもらった話をする場面です。話し相手も話題の人も親しい横の関係なので、普通形の友達言葉でよい場面として作ります。教室では「困った場面」の絵カード(重い荷物・引っ越し・風邪・宿題がわからない)を配り、助けた人・助けられた人の役を決めて話させます。
- 日本人の友達:引っ越しはどうだった?
- 留学生:大変だったけど、アルバイトの先輩が車で荷物を運んでくれたんだ。
- 日本人の友達:よかったね。
- 留学生:うん。それから、隣の人に近くのスーパーを教えてもらった。
- 日本人の友達:親切な人たちだね。部屋の片付け、まだなら手伝おうか。
- 留学生:本当?ありがとう。じゃ、お礼に国の料理を作ってあげるね。
学習項目 1 Vてあげます
意味・はたらき
自分(または自分の側の人)がほかの人のために何かをすることを、相手のためになる行為として言う形です。初級第8課の「あげます」が物を渡すことだったのに対し、ここではすることそのものを相手に渡します。この ST では、困っている人を手伝った経験を話すときと、親しい友達に「持ってあげようか」と手助けを申し出るときに使います。相手のためにしてやるという気持ちが出るので、目上の人に直接は使いません。文法の用語では、「あげる・もらう・くれる」が動詞のテ形に付いて行為の恩恵の受け渡しを表す補助動詞の用法(授受表現)で、試験では恩恵が誰から誰へ向かうかと、目上の人に直接使いにくい理由が問われます。
接続
Vて形+あげます(受ける人の印は動詞がもともと取る助詞のまま:教える→Nに、持つ→Nの荷物を、送る→Nを)
形
友達に日本語を教えてあげましたおばあさんの荷物を持ってあげました弟を駅まで送ってあげました(親しい人に)手伝ってあげようか
導入
- 物の矢印に行為を載せる初級第8課の「あげます」の矢印の図を描き、まず物のカード(本)を動かして「友達に本をあげました」を確かめる。次に、駅の階段で重いスーツケースを持ったおばあさんと、それを持つ学生の絵を出し、「荷物を持ちます」の文に「あげます」を足して「おばあさんの荷物を持ってあげました」と言ってみせる。板書は「荷物を持ちます」の下に「おばあさんの荷物を持って+あげました」と書き、元の文に何も足さず「あげます」だけをつなぐことを見せる。
板書案
Vて + あげます 〔赤〕わたし → 相手(することを渡す)
友達に 本を あげました。 → 友達に 漢字を 教えて あげました。
荷物を 持ちます → おばあさんの 荷物を 持って あげました。
〔青〕助詞は もとの動詞のまま:教える→人に/持つ→人の〜を/送る→人を
〔赤〕友達には:持って あげようか / 先生には:お持ちしましょうか
場面と発話(自作)
- 駅の階段で重い荷物を持っていた人を手伝ったことを、クラスメートに話す。きのう、駅の階段でおばあさんの荷物を持ってあげました。
- 同じクラスの友達が漢字の読み方がわからなくて困っている。その漢字?教えてあげるよ。
- 国から遊びに来た弟のために、町を見せて回ったことを日本人の友達に話す。週末、弟に東京を案内してあげました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「人」と「すること」の絵カードを2枚ずつ見せ(おばあさん/荷物を持つ、友達/ノートを見せる、弟/駅まで送る)、「〜に/の/を〜てあげました」を言わせる。助詞は動詞ごとに板書のメモを見て選ばせる。そのあと友達の困りごとカード(引っ越し・風邪・宿題)を引いて、「手伝おうか」「〜てあげようか」で申し出て、相手が「ありがとう」で受けるやり取りにする。
- 口頭「人」と「すること」の絵カードを2枚ずつ見せる(おばあさん+荷物を持つ/友達+ノートを見せる/弟+駅まで送る/クラスメート+漢字を教える/子ども+写真を撮る)。教師が「荷物を持ちました」と言ったら全員で「おばあさんの荷物を持ってあげました」と返し、次はカードだけで全体→列→個人。助詞は黒板の動詞ごとのメモを指して選ばせる。
- ペアA が困りごとカード(引っ越し・風邪・宿題がわからない・荷物が多い)を引いて「引っ越しが大変なんだ」と言い、B が「手伝おうか」「〜てあげようか」と申し出る。A は「ありがとう、助かる」か「大丈夫、ありがとう」で返す。カードは裏にして配り、3枚ずつで役を交替する。
- 産出「困りごとレスキュー」: 学習者が自分の本当の困りごと(作り話でもよい)を1つ紙に書いて壁に貼り、ほかの学習者が歩き回って書いた本人に「〜てあげようか」と申し出る。最後に一人ずつ「〜さんに〜てもらいます」「〜さんが〜てくれます」でだれが何をしてくれるかを報告させる。教師は①受ける人の助詞 ②目上役(教師)に「あげます」を使っていないか ③申し出の文末が友達言葉と丁寧形で混ざっていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*おばあさんに荷物を持ってあげました」と、受ける人をいつも「に」で言う。「持つ」はもともと「に」を取らないので「おばあさんの荷物を」になる。元の文「荷物を持ちます」に「あげます」を足すだけ、と板書で確かめる
- 目上の人に「先生、かばんを持ってあげます」と言ってしまう。文法の誤りではないが、してやるという気持ちが出て失礼に聞こえる。目上の人には第7課の「お持ちしましょうか」で申し出る、と2つを並べて板書する
- 「*友達はわたしに駅まで送ってあげました」と、わたしが受けるときにも「あげます」を使う。わたしに向かうときは「くれます」(この ST の3つ目の項目)になると、矢印の向きで先に予告しておく
既習の文型との違い
- あげます(初級第8課)第8課の「あげます」は物を渡す動詞で、受ける人はいつも「に」です。この課の「Vてあげます」はすることを渡すので、受ける人の印はもとの動詞の助詞のままになります。「*おばあさんに荷物を持ってあげました」は、第8課の「人に」をそのまま持ち込んだ誤りです。
- Vましょうか(初級第7課)どちらも手伝いの申し出に使えますが、「持ちましょうか」は相手の都合を聞く言い方で、目上の人にも使えます。「持ってあげましょうか」は相手のためにしてやるという気持ちが加わり、友達や年下の人向けです。相手が先生や店長なら初中級第7課の「お持ちしましょうか」まで上げる、と3段で並べます。
関連する文型
学習項目 2 Vてもらいます
意味・はたらき
ほかの人の行為で自分が助かったことを、受けた人(わたし)を主語にして言う形です。してくれた人は「に」で表し、教える・送るのように物や情報が相手から移る動詞では「から」も使えます。頼んでしてもらったときにも、頼まずにしてもらったときにも使えます。この ST では、日本に来てから親切にしてもらった経験を話すのに使います。文法の用語では授受の補助動詞のうち受け手を主語にする形で、してくれた人に付く「に」と「から」の使い分けや、同じ出来事を「Vてくれます」で言い換えたときに主語と助詞が入れ替わることが試験で問われます。
接続
Vて形+もらいます(わたしは「は」、してくれた人は「Nに」。教える・送るなどでは「Nから」も可)
形
先輩に引っ越しを手伝ってもらいました大家さんにごみの出し方を教えてもらいました友達に写真を撮ってもらいました
導入
- 教師の「来たばかりのころ」の話初級第8課の「もらいます」の図(もらう人の側から見た矢印)を出し、教師が日本に来たばかりの留学生の役で「アパートに入ったとき、大家さんにごみの出し方を教えてもらいました」と話す。ごみの分け方の絵と、大家さんと留学生の絵を並べ、矢印の上に「ごみの出し方を教える」を載せる。板書は「わたしは [人]に Nを Vて もらいました」。
板書案
わたしは 〔青〕人に 〔赤〕Vて もらいました
大家さんに ごみの 出し方を 教えて もらいました。
友達に 写真を 撮って もらいました。
〔青〕教える・送る:人に/人から 撮る・持つ・手伝う:人に だけ
矢印:大家さん →(教える)→ わたし(主語は 矢印の先)
場面と発話(自作)
- 日本に来たばかりのころの話を、クラスメートにする。大家さんにごみの出し方を教えてもらいました。
- 旅行先で近くの人にカメラを渡して写真を撮ってもらったことを、友達に話す。お寺の前で、知らない人に写真を撮ってもらいました。
- 風邪で寝ていたとき、ルームメートが薬を買いに行ってくれたことを先生に話す。ルームメートに薬を買ってきてもらいました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「してくれた人」と「したこと」の絵カードを引いて「〜に〜てもらいました」を速く回す。次にペアで「日本に来てうれしかったこと」を2つずつ話し、聞いた話をクラスに「〜さんは〜に〜てもらったそうです」(初級第15課の伝聞)と報告させる。
- 口頭「してくれた人」と「したこと」の絵カード(大家さん+ごみの出し方を教える/先輩+引っ越しを手伝う/知らない人+写真を撮る/ルームメート+薬を買ってくる/友達+ノートを見せる)を引き、「〜に〜てもらいました」を全体→個人で速く回す。教える・送るのカードが出たら「から」でも言わせ、撮る・手伝うでは「に」だけと確かめる。
- ペアA が「日本に来てから、だれに何をしてもらいましたか」と聞き、B が2つ答える。A は「よかったですね」と返し、聞いた内容をメモに「だれ・何」で書く。役を交替したあと、メモを見ながら相手の話を「〜さんは〜に〜てもらったそうです」とほかのペアに伝える。
- 産出「うれしかったことインタビュー」: クラスを歩き回って3人に「日本でうれしかったこと」を聞き、表(だれが・だれに・何を)に書き込む。最後にいちばん心に残った話を1つ選び、「〜さんは〜に〜てもらったそうです」でクラスに紹介する。教師は①してくれた人に「が」を付けていないか ②「から」を撮る・持つに使っていないか ③伝聞の「そうです」の前が普通形か、を見る。
つまずきと手当て
- 「*わたしは友達が手伝ってもらいました」と、してくれた人を「が」にする。「もらいます」の文の主語はもらう人(わたし)で、してくれた人は「に」。矢印の図で、矢印の先にいる人が主語になると指して確かめる
- 「友達から写真を撮ってもらいました」のように、どの動詞にも「から」を使う。「から」が自然なのは教える・送るのように何かが移る動詞で、撮る・持つ・手伝うでは「に」にする、と動詞を2つのグループに分けて板書する
- 相手が先生や店長でも「先生に〜てもらいました」で通す。誤りではないが、目上の人のことを話すときは ST2 の「〜ていただきました」がふさわしいと、ここでは予告だけする
既習の文型との違い
- もらいます(初級第8課)第8課は物をもらう動詞で、「友達に本をもらいました」のように物が「を」で入ります。この課ではその物の位置に「することのテ形」が入るだけで、主語(わたし)と相手の「に」は変わりません。第8課の図をそのまま使えるので、物のカードを行為のカードに差し替えて見せます。
- Vてもらえませんか(初中級第2課)第2課の形は、これから何かをしてほしいと相手に頼む言い方です。この課の「Vてもらいました」は、もうしてもらったことを話す言い方です。頼むつもりで「手伝ってもらいませんか」と言うと「(だれかに)手伝ってもらおう」という誘いに聞こえるので、頼みと事実が混ざったら、「もらえ(できますか)」と「もらい(したこと)」を2行で並べます。
- Vてくれます(初中級第8課)同じ出来事を、受けたわたしから言うのが「てもらいます」、した人から言うのが「てくれます」です。「てもらいました」は頼んでしてもらったときにも自然に使え、「てくれました」は相手から進んでしてくれた感じが出やすい、という傾向も添えておきます。
関連する文型
学習項目 3 Vてくれます
意味・はたらき
ほかの人が自分(や家族など自分の側の人)のために何かをしてくれたことを、した人を主語にして言う形です。受けるのは「わたし」なので「わたしに」はふつう言いません。「Vてもらいます」と同じ出来事を、した人の側から言う形で、した人への感謝の気持ちがはっきり出ます。第5課の「〜て、〜(理由)」と合わせた「〜てくれて、ありがとう」は、友達へのお礼の言い方になります。文法の用語では、話し手(とその内の人)が受け手になるときに使う授受の補助動詞で、恩恵の向きが話し手の側に決まっている点が「Vてあげます」との大きな違いです。
接続
Vて形+くれます(した人は「は/が」、受ける人は「わたし」なのでふつう言わない)
形
先輩が荷物を運んでくれました友達が駅まで迎えに来てくれました手伝ってくれて、ありがとう
導入
- 同じ出来事を、した人から言い直す「先輩に引っ越しを手伝ってもらいました」の文を残したまま、同じ絵を指して「先輩が手伝ってくれました」と言い直す。2つの文を上下に並べて書き、主語と助詞を色分けする(もらう=わたしは+先輩に、くれる=先輩が)。最後に教師が学習者に「きのう、黒板を消してくれて、ありがとう」と実際にお礼を言ってみせ、お礼の形も板書に足す。
板書案
〔赤〕人が 〔青〕(わたしに) Vて くれました
先輩に 手伝って もらいました。 = 先輩が 手伝って くれました。
〔赤〕もらう:わたしは+人に くれる:人が
友達が 弟に 電車の 乗り方を 教えて くれました。(弟=内)
お礼:手伝って くれて、ありがとう。
場面と発話(自作)
- 雨の日に傘を忘れて困っていたことを、日本人の友達に話す。クラスの友達が傘に入れてくれたんです。
- 国から来た家族のことを、クラスメートに話す。寮の友達が、弟に日本の電車の乗り方を教えてくれました。
- 引っ越しを手伝ってもらった次の日、その友達に会った。きのうは手伝ってくれて、ありがとう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「〜に〜てもらいました」の文を言い、学習者が「〜が〜てくれました」に言い換える(逆も)。次に「日本に来てうれしかったこと」を「〜てくれました」で3つ話し、聞き手は「よかったですね」「親切ですね」と返す。最後に、隣の人にこの課の中でしてもらったこと(消しゴムを貸す・プリントを取る)を思い出させ、「〜てくれて、ありがとう」と本人に言わせる。
- 口頭教師が「先輩に荷物を運んでもらいました」と言い、学習者が「先輩が荷物を運んでくれました」に言い換える(逆向きも)。続けて受ける人のカードを「わたし」「弟」「母」に替え、家族でも「くれました」になることを口で確かめる。キューの例: 友達+駅まで迎えに来る/クラスの友達+傘に入れる/隣の人+スーパーを教える。
- ペアA が「日本に来て、うれしかったことは何ですか」と聞き、B が「〜が〜てくれたんです」で答え、A が「親切ですね」「よかったですね」と返す。次に A がその話を「〜に〜てもらったんですね」と言い換えて確かめ、B が「はい」か「いいえ、〜です」で直す。3往復で交替。
- 産出「ありがとうリレー」: この1週間で教室の中の人にしてもらったこと(消しゴムを貸す・プリントを取る・席を替わる)を一人1つ思い出し、本人の前まで行って「〜てくれて、ありがとう」と言う。言われた人は次の人へリレーする。教師は①「わたしに」を言いすぎていないか ②「もらいます」の助詞のままになっていないか ③テ形の崩れ、を見る。
つまずきと手当て
- 「*わたしは友達に手伝ってくれました」と、「もらいます」の主語・助詞のまま「くれます」を使う。主語と助詞はセットで覚える(もらう=わたしは+人に/くれる=人が)と、色分けした2行を毎回指す
- 家族が受けるときに使えないと思い、「友達が弟に教えてあげました」と言う。受ける人が自分の家族など自分の側の人なら「くれます」になると、内と外の円の図(わたしと家族が内)で見せる
- 「くれました」をつけずに「先輩が荷物を運びました」と言う。誤りではないが、助けてもらった気持ちが伝わらない。うれしかった話では「くれました」をつけると、2つを読み比べさせる
既習の文型との違い
- くれます(初級第8課)第8課は物を「くれます」で、この課はすることを「Vてくれます」で言います。どちらも受け手はわたしか内の人で、主語はくれた人です。第8課で「わたしにくれました」と毎回言う癖がついている学習者には、ふつうは「わたしに」を言わないと、この課で改めて示します。
- 〜て、〜(理由)(初中級第5課)第5課の理由のテ形に「くれる」が入ると、「手伝ってくれて、ありがとう」というお礼の形になります。後ろが「ありがとう」「うれしかった」の気持ちなので、第5課の決まり(後ろは気持ち・状態)にそのまま合います。「手伝ってくれたから、ありがとう」のように「から」でつなぐ学習者には、お礼はテ形でつなぐ決まった形として覚えさせます。
関連する文型
ST2 お世話になりました
できることお世話になった人にしてもらったことをほかの人に話し、その人本人にていねいにお礼を言える。
場面
帰国や卒業が近づいた留学生が、アルバイト先で後輩の留学生に店長のことを話し、そのあと店長本人にお礼を言う場面です。話題の店長は同じ店の中の目上の人なので、後輩(下)に話すときも店長のことは「くださいました」「いただきました」で言い、店長本人には「〜てくださって、ありがとうございました」と言います。教室では、学習者に本当にお世話になった人(先生・店長・大家さん・ホストファミリー)を一人ずつ思い浮かべさせ、教師がその人の役をします。
- 後輩の留学生:先輩、来月国に帰るんですか。
- 留学生:ええ。この店では店長に本当にお世話になりました。
- 留学生:始めたとき、店長がレジの使い方を何度も教えてくださったんです。
- 留学生:それから、日本語の履歴書も見ていただきました。
- (最後の日に)
- 留学生:店長、2年間お世話になりました。いろいろ教えてくださって、ありがとうございました。
- 店長:こちらこそ、ありがとう。国でも頑張ってね。
学習項目 1 いただきます
意味・はたらき
「もらいます」の謙譲語で、先生・店長・大家さんなど目上の人や外の人から物をもらったことを、自分を低くして言う形です。主語はもらった人(わたし)で、くれた人は「に/から」で表し、文の形は「もらいます」と同じです。お世話になった人のことをほかの人に話すときにも、その人本人に「〜をいただきました」と言うときにも使います。「食べます・飲みます」の謙譲語としても使う語なので、場面で区別させます。文法の用語では「もらう」の謙譲語Ⅰで、自分の動作を低くすることで、動作の向かう先(物をくれた目上の人)を高めます。
接続
[目上の人]に/から+N+を+いただきます(「もらいます」と同じ形で、動詞だけが替わる)
形
先生に辞書をいただきました店長からお土産をいただきました大家さんに野菜をいただきました
導入
- 上下の図で、もらう相手を替える「友達に辞書をもらいました」の文を書き、くれた人のカードを「友達」から「先生」に替えて「先生に辞書をいただきました」と言う。黒板に先生を上、わたしを下に描き、物が上から下りてくる矢印を引く。板書では「もらいました」を消して「いただきました」と書き替えるだけで、ほかは変わらないことを見せる。
板書案
〔赤〕わたしは 〔青〕先生に/から N を いただきました
友達に 辞書を もらいました。 → 先生に 辞書を いただきました。
上下の図:先生(上)→ 辞書 → わたし(下)
〔青〕外の人に 家族の話:母から 手紙を もらいました
場面と発話(自作)
- 卒業のとき日本語学校の先生から辞書をもらったことを、クラスメートに話す。卒業のとき、先生に辞書をいただきました。
- アルバイト先で、旅行から帰った店長からお土産をもらい、本人にお礼を言う。店長、お土産いただきました。ありがとうございます。
- ホームステイ先のお父さんから日本のお茶をもらったことを、日本語学校の先生に話す。ホストファミリーのお父さんに、日本のお茶をいただきました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、人物カード(友達・先生・店長・弟・大家さん)と物のカードを組み合わせて出し、くれた人が目上なら「いただきました」、そうでなければ「もらいました」を選んで言わせる。そのあと「日本に来てからもらった物」を一人ずつ話し、くれた人によって形を選ばせる。
- 口頭人物カード(友達・先生・店長・大家さん・弟・母)と物のカード(辞書・お土産・野菜・手紙・花)を1枚ずつ組み合わせて掲げ、くれた人が目上や外の人なら「いただきました」、そうでなければ「もらいました」を選んで言わせる。人物カードだけを速く替えて、全体→個人で反応させる。
- ペアA がもらった物のカードと人物カードを引いて「〜に〜をいただきました」または「〜に〜をもらいました」と言い、B は「よかったですね。いつですか」と1つ聞く。A が答えたら、B は A の選んだ形が人物に合っているかをカードの裏の印(上・横・内)で確かめる。3回で交替。
- 産出「だれからもらった?」: 学習者が実際に日本でもらった物を1つ(写真でも絵でもよい)持ってきて、いつ・だれに・何をもらったかを2〜3文で紹介する。聞き手は「だれにもらったんですか」と質問する。教師は①くれた人を主語にしていないか ②家族の話で「いただきました」を使っていないか ③「に/から」の取り違え、を見る。
つまずきと手当て
- 「*先生がわたしに辞書をいただきました」と、くれた人を主語にする。「いただきます」の主語はもらう人(わたし)。くれた人を主語にしたいときは次の「くださいます」と、上下の図の矢印の先を指して確かめる
- 自分の母のことを先生に話すときに「母に手紙をいただきました」と言う。文法の誤りではないが、外の人に話すとき自分の家族は高めないので「母から手紙をもらいました」になる。内と外の円の図で、家族は内側だと見せる
- 食事の前の「いただきます」と同じ語だと気づかず、「ケーキをいただきました」を「食べた」の意味にしか取れない。もらったのか食べたのかは場面で決まると、2つの絵を並べて聞き分けさせる
既習の文型との違い
- もらいます(初級第8課)文の形はまったく同じで、動詞だけが「もらいます」から「いただきます」に替わります。替えるかどうかを決めるのはくれた人で、目上の人や、改まって話す外の人なら「いただきます」です。新しく覚えるのは形よりも相手の選び方だと伝えます。
- くださいます(初中級第8課)同じ物の受け渡しを、受けたわたしから言うのが「いただきます」、くれた目上の人を主語にして言うのが「くださいます」です。「*先生がわたしに辞書をいただきました」と「*先生にお土産をくださいました」はどちらも主語と助詞の取り違えなので、2行を対にした板書で直します。
関連する文型
学習項目 2 くださいます
意味・はたらき
「くれます」の尊敬語で、目上の人や外の人が自分(自分の側)に物をくれたことを、くれた人を主語にして高めて言う形です。くれた人は「が/は」で表します。ます形は「くださいます」、て形は「くださって」で、第1課・第7課の「いらっしゃいます」と同じように、ます の前が「い」になる特別な形です。文法の用語では「くれる」の尊敬語で、「いらっしゃる・おっしゃる・なさる」と同じく、ます形で「る」が「い」になる特別な活用をします。
接続
[目上の人]が+(わたしに)N+を+くださいます(ます形は「くださいます」、て形は「くださって」)
形
先生が辞書をくださいました大家さんが野菜をくださいました先生がくださった辞書
導入
- 「いただきました」と並べて、主語を替える前の項目の「先生に辞書をいただきました」の下に、同じ絵で「先生が辞書をくださいました」と書く。主語と助詞を色分けし、「くれます→くださいます」「いらっしゃいます」を並べて、ます の前が「い」になる仲間だと確かめる。
板書案
〔赤〕先生が 〔青〕(わたしに) N を くださいました
先生に 辞書を いただきました。 = 先生が 辞書を くださいました。
くれます → くださいます/くださって (いらっしゃいます と同じ「い」)
くださります → ふつうは くださいます
場面と発話(自作)
- 引っ越しのあいさつに行ったら、大家さんが自分の畑の野菜をくれた。そのことを友達に話す。大家さんが畑の野菜をくださいました。
- 卒業して半年後、先生にメールを書く。先生がくださった辞書、毎日使っています。
- 誕生日にアルバイト先の店長から花をもらったことを、クラスメートに話す。誕生日に、店長が花をくださいました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「〜に〜をいただきました」と「〜が〜をくださいました」を言い換える。次に、もらった物とくれた人を書いたカードを引き、話す相手を「友達」と「くれた人本人」に替えて言わせる(本人には「〜をくださって、ありがとうございました」)。
- 口頭教師が「先生に辞書をいただきました」と言い、学習者が「先生が辞書をくださいました」に言い換える(逆向きも)。続けて「くれました」「くださいました」「くださって」を、「いらっしゃいます・いらっしゃいました」と並べて口に出させる。キューの例: 大家さん+野菜/店長+お土産/先生+手紙。
- ペアA がもらった物とくれた人を書いたカードを引き、まず友達役の B に「〜が〜をくださいました」と話す。次に B がくれた人の役になり、A は本人に「〜をくださって、ありがとうございました」とお礼を言う。B は「いえいえ」「使ってくださいね」などで受ける。2枚で交替。
- 産出「思い出の品紹介」: お世話になった人からもらった物(本当の物でも想像でもよい)を一つ選び、「これは〜がくださった〜です」と物を見せながら紹介し、その物の思い出を1文足す。教師は①「くださります」「くださいて」の形 ②「いただきます」の「に」が残っていないか ③家族からの物に「くださいました」を使っていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*先生にお土産をくださいました」と、「いただきます」の助詞のまま使う。「くださいます」はくれた人が「が」。いただく=わたしは+先生に、くださる=先生が、の2行を対にして板書する
- 「くださります」「くださりました」と言う学習者がいる。ふつうは「くださいます」「くださいました」と教え、「いらっしゃいます」と並べて形で覚えさせる
- 外の人に自分の家族のことを話すときに「父がお金をくださいました」と言う。文法の誤りではないが、家族は内なので「父がくれました」になると、「いただきます」と同じ内と外の図で確かめる
既習の文型との違い
- くれます(初級第8課)文の形は同じで、くれた人が目上の人や、改まって話す外の人なら「くださいます」に替えます。「くれる」は自分の家族や友達がくれたときに、「くださる」は先生や大家さんがくれたときに使う、と人物カードを上下に分けて並べます。
- いらっしゃいます(初中級第1課)どちらもます形で「る」が「い」になる特別な形で、「くださる→くださいます」は「いらっしゃる→いらっしゃいます」と同じ作り方です。第1課ですでに慣れている形なので、「くださります」と言う学習者には第1課の板書を思い出させます。
関連する文型
学習項目 3 Vていただきます
意味・はたらき
「Vてもらいます」の謙譲語で、目上の人に何かをしてもらったことを、自分を低くして言う形です。してくれた人は「に」で表し、受けたわたしが主語です。お世話になった人のことをほかの人に話すときや、「〜ていただいて、ありがとうございました」と本人にお礼を言うときに使います。第5課の「Vていただけませんか」は、この形を使った頼み方です。文法の用語では補助動詞「Vてもらう」の謙譲語Ⅰで、受けた自分を主語にして、行為をしてくれた目上の人(「に」で示す人)を高めます。
接続
[目上の人]に+Vて形+いただきます(て形は「Vていただいて」)
形
先生に作文を直していただきました店長に仕事を教えていただきました見ていただいて、ありがとうございました
導入
- お世話になった人の話教師が帰国前の留学生の役で、アルバイト先の店長の写真(絵)を見せながら「最初の日、店長にレジの使い方を教えていただきました」と後輩に話すように言う。板書では「Vてもらいました」の文の下に「Vていただきました」を書き、「もらう→いただく」がそのまま「Vてもらう→Vていただく」になると見せる。
板書案
〔赤〕わたしは 〔青〕店長に Vて いただきました
先輩に 教えて もらいました。 → 店長に 教えて いただきました。
もらう → いただく = Vて もらう → Vて いただく
〔青〕て形:いただいて(書く→書いて と同じ)
頼む:教えて いただけませんか(第5課) / したこと:教えて いただきました
場面と発話(自作)
- アルバイト先で、新しく入った後輩の留学生に、店長に助けてもらった話をする。わたしも最初の日、店長にレジの使い方を教えていただきました。
- 卒業式のあと、作文をいつも見てくれた先生に直接お礼を言う。いつも作文を直していただいて、本当にありがとうございました。
- 大学の入学試験に受かったことを、日本語学校の先生に報告する。先生に面接の練習をしていただいたので、合格できました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「〜に〜てもらいました」の文を言い、した人のカードを先生・店長に替えて「〜ていただきました」に言い換えさせる。次に、学習者が実際にお世話になった人を一人選び、その人にしてもらったことを3つ、友達役のクラスメートに話す。
- 口頭教師が「先輩に〜てもらいました」と言い、した人のカードを店長・先生・大家さんに替えて「〜ていただきました」に言い換えさせる。キューの例: 店長+レジの使い方を教える/先生+作文を直す/大家さん+自転車を貸す/先生+面接の練習をする。最後に「〜ていただいて」のテ形だけを取り出して全体で言わせる。
- ペアA はアルバイトに新しく入った後輩、B は先に入った先輩。A が「最初は大変でしたか」と聞き、B が「わたしも最初の日、店長に〜ていただきました」と2つ答え、A が「そうなんですか」と返す。次の回は場面を日本語学校に替え、B が先生にしていただいたことを話す。2回で交替。
- 産出「お世話になった人の紹介スピーチ」: 学習者が実際にお世話になった目上の人を一人選び、その人にしていただいたことを3つ入れて、1分のスピーチをクラスの前でする。聞き手は「その人はどんな人ですか」と1つ質問する。教師は①した人を主語にしていないか ②「いただきませんか」と頼みの形が混ざっていないか ③「いただいて」のテ形、を見る。
つまずきと手当て
- 「*先生が作文を直していただきました」と、した人を主語にする。「いただきます」の主語は受けた人。した先生を主語にしたいときは次の「Vてくださいます」と、2つの文を色分けして並べる
- 第5課の頼み方と混ぜて「*作文を直していただきませんか」と言う。頼むときは「いただけませんか」(可能の形)で、「いただきました」はしてもらった事実を言うと、2行を並べて確かめる
- て形を「*直していただきて」と作る。「いただく」は「〜く」で終わる動詞なので「いただいて」になると、初級のテ形の表(書く→書いて)を指して確かめる
既習の文型との違い
- Vていただけませんか(初中級第5課)第5課の形はこれからしてほしいことを頼む言い方で、「いただける」という可能の形が芯です。この課の「Vていただきました」はもうしていただいたことを話す言い方で、可能の形は入りません。2行を並べて「頼む=いただけ」「したこと=いただき」と赤で囲みます。
- Vてもらいます(初中級第8課)形は「もらう」を「いただく」に替えただけで、主語(わたし)と相手の「に」は同じです。替えるかどうかは、した人が目上の人や、改まって話す外の人かで決まります。友達の話を「いただきました」で言うとかたく聞こえるので、人物カードで使い分けを続けます。
関連する文型
学習項目 4 Vてくださいます
意味・はたらき
「Vてくれます」の尊敬語で、目上の人が自分のためにしてくれたことを、その人を主語にして高めて言う形です。した事実を話すときは「〜てくださいました」、本人にお礼を言うときは「〜てくださって、ありがとうございました」(第5課の「〜て(理由)」)になります。お礼では「〜ていただいて」と「〜てくださって」のどちらも使え、主語をどちらから見るかが違うだけです。初級第7課の「Vてください」は頼む言い方で、この形とは別です。文法の用語では補助動詞「Vてくれる」の尊敬語で、試験では「Vてくださる」と「Vていただく」の主語の違い(する人か受ける人か)と、それぞれで相手に付く助詞(が/に)がよく問われます。
接続
[目上の人]が+Vて形+くださいます(て形は「Vてくださって」)
形
先生が作文を直してくださいました店長が仕事を丁寧に教えてくださいましたいろいろ教えてくださって、ありがとうございました
導入
- お別れの日のお礼の一言アルバイトの最後の日、または卒業の日という設定を作り、教師が店長・先生の役になる。まず友達へのお礼「手伝ってくれて、ありがとう」を板書し、相手を店長に替えると「教えてくださって、ありがとうございました」になると、下に並べて書く。そのあと学習者に、教師(店長役)へ実際に言わせる。
板書案
〔赤〕店長が 〔青〕(わたしに) Vて くださいました
店長に 教えて いただきました。 = 店長が 教えて くださいました。
お礼:友達 → 手伝って くれて、ありがとう。
店長 → 教えて くださって、ありがとうございました。
〔青〕Vて ください(頼む) と Vて くださいました(したこと)は 別
場面と発話(自作)
- アルバイトの最後の日に、店長にお礼を言う。2年間、いろいろ教えてくださって、ありがとうございました。
- 帰国の前の晩、ホームステイ先のお母さんにお礼を言う。いつもおいしい晩ご飯を作ってくださって、ありがとうございました。
- 奨学金のことで先生に助けてもらったことを、クラスメートに話す。先生が奨学金のことを調べてくださいました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「〜が〜てくれました」の文を言い、した人のカードを友達から先生・店長に替えて「〜てくださいました」に言い換えさせる。次に、お世話になった人へのお礼の一言(「〜てくださって、ありがとうございました」)をカードに書き、その人の役の教師に向かって言うロールプレイにする。
- 口頭教師が「友達が〜てくれました」と言い、した人のカードを先生・店長・ホストファミリーのお母さんに替えて「〜てくださいました」に言い換えさせる。続けて同じカードで「〜てくださって、ありがとうございました」を全体→個人で言わせる。キューの例: 店長+仕事を教える/お母さん+晩ご飯を作る/先生+奨学金のことを調べる/大家さん+荷物を預かる。
- ペアA がお世話になった人のカード(店長・先生・大家さん・ホストファミリー)と、してもらったことのカードを引き、まず友達役の B に「〜が〜てくださいました」と話す。次に B がその人の役になり、A が本人に「〜てくださって、ありがとうございました」と言い、B は「こちらこそ」「元気でね」で受ける。2回で交替。
- 産出「お別れの日のお礼ロールプレイ」: アルバイトの最後の日・卒業式・帰国前の晩の3つの場面カードから1つを選び、教師が演じる相手に、してもらったことを2つ入れたお礼のあいさつ(「〜てくださって、ありがとうございました。お世話になりました」)をする。教師は①「くださいて」の形 ②「いただきます」の「に」が残っていないか ③お礼の最後まで丁寧形で言い切れているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*先生に作文を直してくださいました」と、「いただきます」の助詞のまま使う。「くださいます」はした人が「が」。いただく=先生に、くださる=先生が、を色分けで毎回確かめる
- て形を「*教えてくださいて」と作る。て形は「くださって」と決まった形で覚えさせ、お礼の文全体を何度も口に出して形ごと覚えさせる
- お礼で「教えていただいて」と「教えてくださって」のどちらか一つだけが正しいと思って迷う。どちらも正しく、主語を自分から見るか相手から見るかの違いだけだと、同じ絵に2つの矢印を描いて見せる
既習の文型との違い
- Vてください(初級第7課)「Vてください」は相手にしてほしいことを頼む言い方で、まだ何も起きていません。「Vてくださいました」は目上の人がもうしてくれたことを話す言い方です。「くださ」の部分が同じなので、「教えてください」と「教えてくださいました」を並べ、頼む文と事実の文を文末で見分けさせます。
- Vていただきます(初中級第8課)同じ出来事を、受けた自分から言うのが「ていただきました」(店長に)、した目上の人から言うのが「てくださいました」(店長が)です。お礼ではどちらも使えるので、1つの絵に2本の矢印を描いて、主語と助詞だけが入れ替わると見せます。
関連する文型