日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 初中級 第6課「旅行に行こう」の教案

『できる日本語 初中級 本冊 第2版』 ・ ST「旅行の計画」「旅行の準備」

友達と旅行に行くことになったとき、行き先を理由つきで提案し、出発の前に何をしておくかを相談して決められるようになる課です。ST1 では「Vましょうか」で一緒に決める流れを作り、「〜し、〜」でよいところや理由を重ね、「〜のは〜です」でいちばん言いたい点を目立たせます。ST2 では、見込み(「〜そうです」)から準備の必要を言い、「Vておきます」でこれからする準備、「Vてあります」で済んだ準備を伝え分けます。第5課までの「〜かもしれません」「Vてしまいました」などの、先のことや困ったことを言う形を引き継ぎ、「困らないように前もって動く」話し方へ進めます。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目7時間90分×2コマ場面2

この課のねらい(Can-do)

  • 旅行の行き先を友達と相談し、行きたい場所とその理由をいくつか挙げて提案できる
  • 天気や混み具合の見込みを言いながら、旅行の前にしておくことを決め、済んだ準備を報告できる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第5課の「〜かもしれません」で、連休の予定を聞き合う(「旅行に行くかもしれません」)。日本の地図と観光地の写真カード(お寺・海・温泉・雪山・大きな町)を黒板に貼り、「行ったことがありますか」「どこへ行きたいですか」と聞いて旅行の話題を作る
ST1 旅行の計画80分「どこへ行きましょうか」で相談の場面を作る →「〜し、〜(並列)」でよいところを重ねる →「〜のは〜です」で行きたい場所を目立たせる →「〜し、〜(理由)」で理由を挙げて提案する。最後はグループで行き先を一つに決める
ST2 旅行の準備60分天気の図や連休のカレンダーを見て「〜そうです(予測)」で見込みを言う →「Vておきます」で準備を分担する → 準備が済んだという設定で「Vてあります」で報告する。準備のチェックリストを作って確かめ合う
課のまとめ30分グループで旅行の計画を立て、行き先と理由、出発までにしておくこと、もう済んだことを、ほかのグループに発表する。聞く側は「〜はもう予約してありますか」と一つ質問する

ST1 旅行の計画

できること友達とどこへ旅行に行くかを相談し、行きたい場所を理由とともに提案できる。

場面

連休の前に、クラスメートや日本人の友達と一緒に旅行の行き先を決める場面です。教室では観光地の写真カードと「よいところ」「心配なところ」を書いたメモを各自に持たせ、二人から三人で一つの行き先に決めるまで話させます。

  • 留学生A:連休に、一緒にどこかへ旅行に行きませんか。
  • 留学生B:いいですね。どこへ行きましょうか。
  • 留学生A:わたしが行きたいのは京都です。お寺もたくさんあるし、町もきれいだし。
  • 留学生B:京都もいいですね。でも、連休は人が多いし、ホテルも高いと思います。
  • 留学生B:温泉はどうですか。山も見えるし、ゆっくりできますよ。
  • 留学生A:温泉ですか。わたし、まだ行ったことがないんです。じゃあ、温泉にしましょうか。
学習項目 1 Vましょうか

意味・はたらき

二人以上で予定を決めるときに、相手の考えを聞きながら相談・提案する言い方です。「どこへ行きましょうか」「いつ行きましょうか」と疑問詞と一緒に使うと「一緒に決めたいので、あなたはどう思うか」を聞き、「温泉に行きましょうか」と言えば一つの案を出して相手の返事を待ちます。初級第7課の「手伝いましょうか」(自分がすることを申し出る)と形は同じですが、ここでは「わたしたちが〜するのはどうか」という意味です。友達同士では第3課の意向形を使って「どこへ行こうか」とも言います。

接続

Vます(「ます」を取る)+ましょうか(友達同士では意向形+か)

形
どこへ行きましょうか何で行きましょうか温泉に行きましょうか——いいですね。そうしましょう

導入

  • 誘いのあとに「どこへ」を足す教師が学習者の一人に「連休に、一緒に旅行に行きませんか」と誘い、「いいですね」を引き出す。そこで教師が首をかしげて黒板の地図を指し、「どこへ行きましょうか」「何で行きましょうか」と聞いて、二人で決めていく様子を見せる。板書は「一緒に Vませんか」→「〈疑問詞〉Vましょうか」→「Nに Vましょうか」→「そうしましょう」の4段にし、相談が進む順を矢印でつなぐ。

板書案

〈疑問詞〉 Vましょうか → 相談する
Nに/で Vましょうか → 案を一つ出す
どこへ 行きましょうか。——温泉は どうですか。
じゃあ、温泉に 行きましょうか。——ええ、そうしましょう。
〔青〕手伝いましょうか(初級第7課・申し出) 〔赤〕行きましょうか(一緒に・相談)

場面と発話(自作)

  • 旅行に行くことは決まったが、行き先がまだ決まっていない。友達に意見を聞く。どこへ行きましょうか。——海はどうですか。
  • 友達がいくつか案を出したあと、話し手が一つに絞って提案する。じゃあ、金曜日の夜に出発しましょうか。
  • 寮の友達と、週末の予定をくだけた言い方で相談する。電車で行こうか。それとも、バスにする?

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、疑問詞のカード(どこへ・いつ・何で・何泊)を見せて「〜ましょうか」の質問を作らせ、教師が答える。次に案のカード(温泉・海・電車・金曜日など)で「Nに/で 〜ましょうか」と提案させ、相手が「いいですね。そうしましょう」か「うーん、ほかは?」で返す。最後は ST1 の場面で、疑問詞の質問 → 提案 → 決定の3段を二人で通させる。

  1. 口頭疑問詞のカードを出し、教師が「いつ」と言えば全体で「いつ行きましょうか」。続けて「何で」「何泊」「どこで(会う)」をキューにする。次に案のカードに替え、「金曜日」→「金曜日に行きましょうか」、「新幹線」→「新幹線で行きましょうか」、「駅」→「駅で会いましょうか」を個人に当て、教師は「いいですね。そうしましょう」で返す。
  2. ペアA は「決めることカード」(行き先・日・乗り物・会う場所)、B は自分の案を書いたメモを持つ。A が疑問詞で聞き、B が「Nはどうですか」と案を出し、A が「じゃあ、Nに〜ましょうか」とまとめ、B が「そうしましょう」で決める。4項目が終わったら役を交替し、2回目は友達言葉(「どこへ行こうか」「そうしよう」)で通す。
  3. 産出「連休プラン会議」。3人で行き先・日・乗り物・会う場所の4つを相談して決め、計画カードに書いてクラスに見せる。教師は ①疑問詞+「ましょうか」で相手の考えを聞いてから案を出しているか ②提案に「いいですね/そうしましょう」で返しているか(申し出への返事「お願いします」になっていないか)③友達同士の班で意向形の「行こうか」が使えているか、を見て回る。

つまずきと手当て

  • 「どこへ行きませんか」と、疑問詞と「Vませんか」を一緒に使って誘おうとする。「Vませんか」は一緒にするかどうかを聞く形で、中身(どこ・いつ)を決める段には使わないと、板書の1段目と2段目を並べて見せる
  • 「温泉に行きましょうか」と提案されて「はい、お願いします」と答え、申し出(初級第7課)の返事になってしまう。提案には「いいですね」「そうしましょう」で返すと、返事の行を対にして練習する
  • 最初から「京都に行きましょう」と言い切り、相手の考えを聞かないまま決めた印象を与えることがある。相談の段階では「か」をつけて相手の返事を待つ、と上げ調子で言わせる

既習の文型との違い

  • Vましょうか(初級第7課)形は同じ「Vましょうか」ですが、初級第7課は「手伝いましょうか」のように話し手一人がすることを申し出る言い方で、返事は「ありがとうございます。お願いします」です。この課は二人で一緒にすることを相談するので、返事は「いいですね」「そうしましょう」になります。混ぜると、旅行の提案に「お願いします」と答えるずれが出ます。
  • Vませんか/Vましょう(初級第6課)「Vませんか」は一緒にするかどうかを聞く誘いの形です。この課の「Vましょうか」は一緒に行くことが決まったあとで、どこ・いつ・何でを決める段の言い方です。誘う→受ける→中身を相談する、の順に3段で板書すると、二つの形の役割が分かれます。
  • 意向形/V(よ)うと思っています(第3課)第3課の意向形は「留学しようと思っています」のように自分の予定を言う形でした。友達同士の相談では、その意向形に「か」をつけて「どこへ行こうか」と言うと、「Vましょうか」のくだけた言い方になります。先生やアルバイト先の人には「Vましょうか」、寮の友達には「行こうか」と、相手で使い分けさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜し、〜(並列)

意味・はたらき

文の普通形に「し」をつけて、同じ方向のことがら(よいことならよいこと)を二つ以上並べる言い方です。「お寺も多いし、町もきれいです」のように「〜も〜し、〜も〜」の形でよく使い、一つずつ挙げて重ねていく感じがあります。行きたい場所のよいところを重ねて言うと、提案に説得力が出ます。ていねいな会話では「多いですし」のように前を「です・ます」にすることもあります。

接続

普通形+し(ナA・N の現在は「〜だし」、イA は「〜いし」)

形
お寺も多いし、町もきれいです海もきれいだし、魚もおいしいです温泉もあるし、山も見えます(ていねいに)景色もいいですし、静かです

導入

  • 写真のよいところを重ねる教師が温泉地の写真カードを見せ、学習者に「どんなところですか」と聞いて「温泉があります」「山が見えます」「静かです」を出させる。教師がそれを一文にまとめて「温泉もあるし、山も見えるし、静かです」と言い、板書で3つの文を「し」でつなぐ。品詞ごとに「あるし」「多いし」「静かだし」「雨だし」の4つを縦に並べる。

板書案

普通形 + し
多い し / ある し / 静か だし / 雨 だし
温泉も あるし、山も 見えます。
〔赤〕ナA・N の「だ」 〔丸〕〜も〜し、〜も〜
よいこと + よいこと(同じ向き)

場面と発話(自作)

  • 旅行から帰った友達に、行った町がどうだったか聞かれる。食べ物もおいしかったし、人も親切でした。
  • クラスメートに、自分の国のおすすめの島を紹介する。海もきれいだし、ホテルも安いです。
  • 旅行のあと、泊まったホテルはどうだったかと友達に聞かれる。部屋も広かったし、朝ご飯もおいしかったです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、観光地の写真カードに「よいところ」を3つ書いたメモをつけ、「〜も〜し、〜も〜」で2つ、慣れたら3つを一文で言わせる。次に ST1 の場面で、自分が行きたい場所のよいところを重ねて紹介し、聞き手が「いいですね」と返す。

  1. 口頭先に形だけを品詞のカードで練習する。教師「静か」→全体「静かだし」、「安い」→「安いし」、「ある」→「あるし」、「有名な町」→「有名な町だし」、「広かった」→「広かったし」。次に観光地の写真カード(海の町・雪山・古い町並み)に「よいところ」を2つ書いたメモを添え、「〜も〜し、〜も〜」で個人に言わせる。
  2. ペアA は観光地の写真だけ、B はその場所の「よいところ」メモを3つ持つ(情報差)。A が「〜はどんなところですか」と聞き、B が「〜し、〜し」で2つ以上重ねて答える。A は聞いたことをメモし、最後に B のメモと見比べて合っているか確かめる。カードを替えて交替。
  3. 産出「ふるさと自慢リレー」。自分の国や住んでいる町のおすすめの場所を一つ選び、よいところを3つ「し」で重ねて1文で紹介する。聞き手は「いいですね。行ってみたいです」と返して次の人へ回す。教師は ①ナA・N の「だ」が入っているか ②「も」を使って重ねているか ③よいことと困ることを「し」で混ぜていないか、を見る。

つまずきと手当て

  • 「*町もきれいし」「*雨し」と、ナA・N の現在に「だ」を入れ忘れる。板書の4行のうち「静かだし」「雨だし」の「だ」を赤で示す
  • 「安いし、遠いです」のように、よいことと困ることを「し」で並べ、話の向きがちぐはぐに聞こえる。「し」で並べるのは同じ向きのことだと、写真のメモを「よいところ」「心配なところ」に分けて確かめる
  • 旅行の感想を言うとき、「*広いだったし」「*きれいかったし」と過去の普通形を作り損ねる。普通形の表に過去の行(広かった・きれいだった・雨だった)を足し、旅行から帰った設定で練習する

既習の文型との違い

  • イAくて、〜/ナA・Nで、〜(初級第8課)「静かで、きれいです」はテ形で性質をつなぎ、一つの説明にまとめる言い方です。「静かだし、きれいだし」は一つずつ挙げて重ねる感じがあり、「ほかにもある」という含みが出ます。テ形はイAとナAで形が変わる(くて/で)のに対し、「し」は普通形にそのままつくので、二つの表を並べて「*静かし」「*静かくて」のような混ぜ方を防ぎます。
  • 〜が、〜(初級第4課)「にぎやかですが、物が高いです」の「が」は、前と後ろで話の向きが変わるときに使います。「し」は同じ向きのことを重ねるので、よいことと困ることをつなぐなら「が」です。写真のメモを「よいところ」「心配なところ」に分けて、どちらの形でつなぐかを選ばせます。
関連する文型
学習項目 3 〜のは〜です(強調構文)

意味・はたらき

いちばん伝えたいことを文の最後の「〜です」の前に置いて、目立たせる言い方です。「わたしは京都に行きたいです」を「わたしが行きたいのは京都です」と言いかえると、答えの中心が「京都」だとはっきりします。行き先の相談で、たくさんある希望の中からいちばん言いたい点を示すときに使います。理由を目立たせるときは「〜のは〜からです」の形になります。

接続

普通形+のは+N/〜からです(ナA・N の現在は「〜なのは」。「の」の前の文の主語は「が」にする)

形
わたしが行きたいのはお寺ですいちばん楽しみなのは温泉です北海道に行きたいのは、雪が見たいからです高いのはホテルです

導入

  • ふつうの文を二つに割る教師が「わたしは京都に行きたいです」と板書し、学習者に「どこへ行きたいですか。いちばん言いたいのは?」と聞いて「京都」に丸をつける。丸をつけた語を文の後ろへ移し、残りを「わたしが行きたいのは」にまとめて「わたしが行きたいのは京都です」と書き直す。「は」が「が」に変わることと、「に」が消えることを赤で示す。

板書案

わたしは 京都に 行きたいです。 〔丸〕京都
→ わたしが 行きたい のは 京都 です。
〔赤〕は→が 〔赤〕に・を は消える
行きたい のは / 楽しみ な のは / 好き な のは
〔理由〕〜のは 〜から です

場面と発話(自作)

  • 旅行の相談で、友達がいくつか案を出したあと、自分の希望をはっきり言う。わたしが見たいのは、海です。
  • ガイドブックを見ながら、旅行でいちばん楽しみなことを友達に話す。いちばん楽しみなのは、夜の花火です。
  • どうして北海道がいいのかと聞かれて、理由を言う。北海道がいいのは、食べ物がおいしいからです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「わたしは温泉に行きたいです」のような文を言い、学習者に「わたしが行きたいのは温泉です」と言いかえさせる(語のカードで、目立たせる語を指定する)。次に「いちばん〜のは〜です」で自分の希望を言い、ST1 の場面で行き先を提案するときの最初の一文として使わせる。

  1. 口頭教師が文を言い、目立たせる語をカードで指して言いかえさせる。「わたしは海が見たいです(海)」→「わたしが見たいのは海です」、「わたしは夜の花火が楽しみです(夜の花火)」→「わたしが楽しみなのは夜の花火です」、「月曜日が休みです(月曜日)」→「休みなのは月曜日です」。全体で言ってから個人に当て、慣れたら理由の形(「北海道に行きたいのは、雪が見たいからです」)も入れる。
  2. ペアB だけが「友達の旅行の希望カード」(見たい物・食べたい物・したいこと)を持ち、A は持たない。A が「〜さんがいちばん見たいのは何ですか」と聞き、B が「〜のは〜です」で答える。A が「どうしてですか」と続け、B は「〜のは、〜からです」で理由まで言う。カードを替えて交替。
  3. 産出「わたしの旅ベスト3」。旅行でいちばんしたいこと・見たいもの・食べたいものを3枚のカードに書き、「わたしがいちばん〜たいのは〜です。〜からです」で1人1分ずつ話す。聞き手は一つ質問する。教師は ①「の」の前の主語が「が」になっているか ②「を・に」を残していないか ③ナA・N の「な」が入っているか、を見る。

つまずきと手当て

  • 「わたしは行きたいのは京都です」と、「の」の前の文の主語に「は」を使う。会話では聞くこともあるが、名詞を説明する部分の中の主語は「が」が基本の形なので、初級第13課の名詞修飾の板書と並べて「わたしが行きたい」にそろえる
  • 「*わたしが食べたいのはラーメンをです」と、「を」を残す。「が」「を」は「〜です」の前で消えると、言いかえる前と後の文を上下に並べて示す
  • 「*静かのはこの町です」「*行きたいは京都です」と、「な」や「の」を落とす。品詞ごとに「〜のは」「〜なのは」の2行を板書する

既習の文型との違い

  • 〜は[名詞修飾]です(初級第13課)初級第13課では「京都は古いお寺が多い町です」のように、名詞の前に説明を置いて名詞をくわしくしました。この課の「〜のは〜です」は、説明の部分を「の」でまとめて文の主題にし、答えを最後に回す形です。名詞を説明する部分の中では主語が「が」になる、という同じ決まりが「の」の前でも働くと、二つの板書を並べて見せます。
  • VるのはA(第1課)第1課の「旅行するのは楽しいです」は、「の」で動作を名詞にして、それについて感想(形容詞)を言う形です。この課の「〜のは〜です」は「の」の後ろに名詞(京都・温泉)が来て、答えを目立たせます。「です」の前が形容詞なら第1課、名詞なら強調構文、と述語の品詞で見分けさせます。
  • どうして/〜から(初級第5課)「雪が見たいから、北海道に行きたいです」は理由を先に言う形です。「北海道に行きたいのは、雪が見たいからです」は理由を最後に回して目立たせ、「どうして?」と聞かれたときの答えとして自然です。自分から話し始めるときは前の形、聞かれて答えるときは後ろの形が使いやすいと、場面で分けます。
関連する文型
学習項目 4 〜し、〜(理由)

意味・はたらき

理由をいくつか挙げて、そこから結論(提案や判断)につなげる言い方です。「近いし、安いし、温泉はどうですか」のように、理由を「し」で重ねてから最後に言いたいことを言います。理由を一つだけ言っても、「ほかにも理由がある」という感じが出ます。「〜から」が一つの理由をはっきり示すのに対し、「し」は理由を並べて挙げるときに向いています。会話では結論を言わずに「〜し」で止めることもあります。

接続

普通形+し(ナA・N の現在は「〜だし」)+結論

形
近いし、安いし、温泉はどうですか海もきれいだし、沖縄にしましょうか時間もないし、新幹線で行きましょう連休は人が多いし、ほかの日にしませんか

導入

  • 理由のカードを積んで結論を出す教師が「温泉」の写真を貼り、その下に「近い」「安い」「ゆっくりできる」の3枚のカードを積む。学習者に「温泉はどうですか」と聞く前に、カードを一枚ずつ指して「近いし、安いし、ゆっくりできるし……温泉はどうですか」と言ってみせる。板書は「[理由]し、[理由]し、[提案]」の型にし、最後の提案の部分を赤い枠で囲む。並列の「し」と同じ形で、後ろに提案が来る点だけが違うと示す。

板書案

[理由]し、[理由]し、〔赤枠〕[結論・提案]
近い し、安い し、温泉は どうですか。
連休は 人が 多いし、ほかの 日に しませんか。
〔青〕並列の し=よいところを重ねる 〔赤〕理由の し=後ろに結論

場面と発話(自作)

  • 旅行の行き先を相談していて、友達が遠い場所を提案した。別の案を出す。沖縄は遠いし、高いし、今回は近いところにしませんか。
  • どうしてその町にしたのかと先生に聞かれて答える。友達も住んでいるし、一度行ってみたかったんです。
  • どのホテルを予約するか、一緒に行く友達と相談する。駅からも近いし、朝ご飯もついているし、このホテルにしましょうか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、行き先の写真カードと理由のカード(近い・安い・景色がきれい・人が少ない など)を組み合わせ、「〜し、〜し、Nはどうですか」「〜し、Nにしましょうか」を作らせる。次に ST1 の場面で、二人がそれぞれ別の行き先を理由つきで提案し、最後にどちらかに決めさせる。

  1. 口頭理由のカード2枚と結論のカード1枚を組み合わせて出す。「近い」「安い」+「温泉はどうですか」→「近いし、安いし、温泉はどうですか」、「時間がない」「雨」+「タクシー」→「時間もないし、雨だし、タクシーで行きましょう」、「遠い」「高い」+「ほかの所」→「遠いし、高いし、ほかの所にしませんか」。全体→個人の順で、慣れたら理由を1枚だけにして「近いし、温泉にしましょうか」も言わせる。
  2. ペアA と B に別々の行き先カードを2枚ずつ配る。それぞれ1枚を選んで理由を2つ「し」で重ねて提案し、相手は「でも、〜し、〜」で心配な点を一つ返す。2往復したら二人で一つに決め、「じゃあ、Nにしましょう」で締める。カードを替えて交替。
  3. 産出「行き先プレゼン対決」。グループを2つの行き先に分け、それぞれ理由を3つ用意して「〜し、〜し、Nに行きましょう」で提案する。ほかのグループは聞いたあと手を挙げてどちらに行きたいかを決め、理由を一つ言う。教師は ①理由のあとに結論(提案)まで言えているか ②イAに「だ」をつけていないか ③「から」を何度も重ねていないか、を見る。

つまずきと手当て

  • 「*近いだし」と、イA に「だ」をつける。並列の「し」で作った品詞ごとの表をもう一度見せる
  • 「近いから、安いから、温泉はどうですか」と「から」を重ねる。誤りとまでは言えないが重く聞こえるので、理由を二つ以上並べるときは「し」を使うと型で覚えさせる
  • 理由だけを並べて結論を言わず、相手に提案が伝わらない。練習の段階では「〜し、〜し、Nはどうですか」と最後まで言わせ、結論を省くのは慣れてからにする

既習の文型との違い

  • どうして/〜から(初級第5課)「近いから、温泉にしましょう」は理由を一つ、はっきり示します。「近いし、温泉にしましょう」は理由を一つだけ言っても「ほかにも理由がある」という感じが残り、少しやわらかく聞こえます。理由を2つ以上並べるときは「し」、一つをはっきり言うときは「から」と分けさせます。
  • 〜ので、〜(第1課)第1課の「〜ので」は、面接や問い合わせのようなていねいな場面で、事情を落ち着いて伝える言い方でした。「し」は理由を並べる言い方で、友達との相談でよく使います。目上の人に事情を説明するときは「〜ので」がなじむと、相手のカード(先生・友達)で使い分けさせます。
  • 〜て、〜(理由)(第5課)第5課の「電車が遅れて、授業に間に合いませんでした」は、理由と結果をひと続きで言い、後ろに「〜ましょう」のような提案や依頼は来にくい形です。この課の「し」は後ろに提案を置けるので、旅行の相談では「し」を使います。「遠くて、ほかの所にしましょう」のような文が出たら、「遠いし」に直します。
関連する文型

ST2 旅行の準備

できること旅行の前に何をしておくかを相談して分担し、済んだ準備を相手に伝えられる。

場面

行き先が決まったあと、出発の一週間ほど前に、一緒に行く友達と準備を確かめる場面です。教室では「ホテル・電車の切符・天気・持っていく物」のチェックリストと、作り話の天気の図(雲や雨のマーク)のカードを配り、済んだことと、これからすることを分けて話させます。

  • 日本人の友達:旅行の前に、何をしておきましょうか。
  • 留学生:ホテルはもう予約してあります。
  • 日本人の友達:ありがとう。電車の切符は?
  • 留学生:まだです。連休は込みそうですから、明日買っておきます。
  • 日本人の友達:天気の図を見たら、山は雨が降りそうでした。
  • 留学生:じゃあ、傘も持っていきましょう。行き方も調べておきますね。
学習項目 1 〜そうです(予測)

意味・はたらき

今の様子や知っている情報から、これから起こりそうなことを言う言い方です。動詞のマス形から「ます」を取って「そうです」をつけ、「雨が降りそうです」「連休は込みそうです」のように言います。第2課の「おいしそうです」(見た感じ)と同じ仲間の形で、動詞につくと「このあと〜する見込みが高い」という意味になります。旅行の準備では、込む・売り切れる・寒くなるといった見込みを言って、だから前もって何かをする、という話につなげます。「降るそうです」(初級第15課・聞いた情報)とは前の形で意味が変わります。

接続

Vます(「ます」を取る)+そうです(来る→来(き)そう、する→しそう。否定は「Vそうにありません」)

形
雨が降りそうです連休は込みそうです切符がすぐなくなりそうです雪は降りそうにありません

導入

  • 空の絵と天気の図のカード教師が黒い雲の絵を見せて「どうですか」と聞き、学習者から「雨が降ります?」「たぶん……」を引き出したところで「雨が降りそうですね」と言ってみせる。次に連休のカレンダーと駅の混んだ絵を見せ、「連休は込みそうです」と続ける。板書は「降ります → 降りそうです」「込みます → 込みそうです」とし、その横に初級の「降るそうです(聞いた)」を小さく書いて、前の形の違いを矢印で示す。

板書案

Vます + そうです(見込み)
降り ます → 降り そうです
空が 暗いです。雨が 降りそうです。
〔青〕降る そうです(初級第15課・聞いた) 〔赤〕降り そうです(見て・予測)
否定:降り そうに ありません

場面と発話(自作)

  • 旅行の前の日、窓から暗い空を見て、一緒に行く友達に言う。明日は雨が降りそうですね。傘を持っていきましょう。
  • 人気のある旅館の予約サイトを見たら、空いている部屋が残り少ない。部屋がもうすぐなくなりそうです。
  • 連休の新幹線について、日本人の友達と話す。連休の新幹線は込みそうですから、早く切符を買いましょう。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、様子の絵カード(黒い雲・長い列・残り1個の商品・咲き始めた花など)を見せて「〜そうです」を作らせ、マス形から作る練習を先にする(来る・する も入れる)。次に ST2 の場面で、作り話の天気の図や連休のカレンダーを見て見込みを言い、「〜そうですから、〜ましょう」と準備の相談につなげる。

  1. 口頭様子の絵カードを見せて全体→個人で言わせる。黒い雲→「雨が降りそうです」、駅の長い列→「込みそうです」、残り一枚の切符→「売り切れそうです」、強い風に揺れる木→「台風が来そうです」。次に言い分けの練習として、教師が「ニュースで聞きました」と言ったら「降るそうです」、窓の外を指したら「降りそうです」と、キューで二つの「そうです」を切り替えさせる。
  2. ペアA は作り話の天気の図(雲のマーク・気温)と連休の駅の混み具合の表、B は旅行の日程表を持つ。B が「土曜日はどうですか」と聞き、A は図と表を見て「土曜日は雨が降りそうです」「日曜日は込みそうです」と見込みを答える。B は「じゃあ、〜ましょう」で予定を変える。交替。
  3. 産出「旅の心配ごとチェック」。自分たちの旅行の計画について、起こりそうなこと(雨・混雑・売り切れ・寒さ)を2つ「〜そうです」で挙げ、「〜そうですから、〜ましょう」で準備をグループに提案する(次の「Vておきます」へつなぐ)。教師は ①「ます」を取って作れているか ②伝聞の「降るそうです」と混ぜていないか ③何を見てそう思ったかを一言添えているか、を見る。

つまずきと手当て

  • 「*雨が降りますそうです」と「ます」を残したままつける。また、見込みを言うつもりで「雨が降るそうです」と言い、聞いた情報の意味になってしまう。「ます」を取って「そうです」、辞書形などの普通形につくと聞いた情報になる、と板書の2行を並べて何度も言い分けさせる
  • 「*雨そうです」と名詞に直接つける。予測の「そうです」は動詞につくので「雨が降りそうです」と動詞を入れる、と絵カードで確かめる
  • 根拠のない見込みにも「そうです」を使う。様子や情報が目の前にあるときに使うことが多く、根拠が弱いときは第5課の「〜かもしれません」がなじむ、と二つの文を比べて見せる

既習の文型との違い

  • Aそうです(様態)(第2課)第2課の「おいしそうです」「高そうです」は、物を見てその性質を推し量る言い方で、イA・ナA につきました。この課は動詞につき、「降りそうです」「込みそうです」のように、このあと起こることの見込みを言います。語幹に「そう」をつける作り方は同じなので、形容詞と動詞を一枚の表にまとめると覚えやすくなります。
  • 〜そうです(伝聞)(初級第15課)「雨が降るそうです」は天気予報やニュースで聞いたことを伝える形で、普通形につきます。「雨が降りそうです」は自分が空や図を見て判断した見込みです。前の形が違うだけで意味が変わるので、「聞いた→普通形」「見た→マス形の語幹」を板書の左右に分けます。
  • 〜かもしれません(第5課)「かもしれません」は可能性があると言うだけで、根拠が弱くても使えます。「〜そうです」は目の前の様子や情報から、起こる見込みが高いと言います。空を見て言うなら「降りそうです」、特に根拠はないが心配なら「降るかもしれません」と、根拠の有無で使い分けさせます。
関連する文型
学習項目 2 Vておきます(準備)

意味・はたらき

あとで困らないように、ある時までに前もって何かをすることを表します。旅行の前に「ホテルを予約しておきます」「行き方を調べておきます」と言えば、旅行のための準備として今のうちにする、という意味になります。「誰がするか」をはっきりさせて分担を決めるときに便利です。友達同士では「予約しとく」「調べとく」のように縮めて言うことが多いです。

接続

Vて+おきます(友達言葉では「〜とく」、「〜で」の動詞は「〜どく」)

形
ホテルを予約しておきます行き方を調べておきますお金を下ろしておきます(友達に)切符、買っとくね

導入

  • 旅行の前の日と当日をくらべる教師が時間の線を板書し、左に「今日」、右に「旅行の日」と書く。「旅行の日に駅で切符を買います。でも……」と言って長い列の絵を見せ、学習者から「込みそうです」を引き出してから、線の左側を指して「だから、今日、切符を買っておきます」と言う。板書は「[準備]Vておきます」とし、線の左に「予約する」「調べる」「下ろす」のカードを置いて全員で言う。

板書案

今日 ──────→ 旅行の日
(前もって)Vて おきます
連休は 込みそうです。だから、切符を 買って おきます。
〔赤〕〜を Vて おきます(する人が主語)
〔青〕友達言葉:買っとく / 読んどく

場面と発話(自作)

  • 旅行の一週間前、一緒に行く友達と準備を分ける。じゃあ、わたしがホテルを予約しておきます。
  • 旅先で地図が読めなくて困らないように、前の晩に準備する。駅からホテルまでの行き方を調べておきます。
  • 寮の友達と出発の前の日に話す。朝ご飯、コンビニで買っとくね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、準備のカード(予約する・調べる・下ろす・洗う・充電する など)を見せて「〜ておきます」に変えさせ、友達言葉の「〜とく」も合わせて言わせる。次に ST2 の場面で、チェックリストの項目を「わたしが〜ておきます」「じゃあ、わたしは〜ておきます」と分担させる。

  1. 口頭準備のカードで全体→個人。「切符を買う」→「切符を買っておきます」、「お金を下ろす」→「お金を下ろしておきます」、「スマホを充電する」→「充電しておきます」、「天気を調べる」→「天気を調べておきます」。次に教師が「明日は寒くなりそうです」「駅は込みそうです」と見込みを言い、学習者がそれに合う準備を「じゃあ、〜ておきます」で返す(前の項目とつなぐ)。最後に同じ文を友達言葉の「〜とく」に変える。
  2. ペア二人に同じチェックリスト(ホテル・切符・行き方・両替・充電・お弁当)を配る。A が「〜はどうしましょうか」と聞き、B が「じゃあ、わたしが〜ておきます」と引き受けるか、「〜さん、お願いできますか」と返す。全部の項目を分けたら、くだけた言い方(「切符、買っとくね」「うん、お願い」)でもう一度通して交替。
  3. 産出「出発前の分担会議」。前の活動で決めたグループの旅行計画について、出発までの準備を5つ以上挙げ、誰がいつまでにするかを分担表に書いて発表する(「わたしは金曜日までにホテルを予約しておきます」)。教師は ①自分の意志で前もってすることに使っているか ②する物を「を」で言っているか ③「〜とく/〜どく」の縮め方、を見る。

つまずきと手当て

  • 「*雨が降っておきます」と、自分の意志でできないことに使う。前もって「する」ことにだけ使うと、カードを「自分でできること」「できないこと」に分けて確かめる
  • 「*ホテルが予約しておきます」と、する物に「が」をつける。「Vておきます」は「〜を」で言い、「が・は」で言うのは次の「Vてあります」だと、二つの板書を並べて示す
  • 「予約しておきます」(これからする)と「予約してあります」(もう済んで、今その状態)を取り違える。時間の線の上で、どちらが線のどこの話かを指させる

既習の文型との違い

  • Vる前に、〜/Nの前に、〜/[時間]前に、〜(初級第12課)「旅行の前に、切符を買います」は時の順を言うだけです。「切符を買っておきます」は、あとで困らないためにする、という目的が加わります。二つを一緒にして「旅行の前に、切符を買っておきます」と言うと準備の意味がはっきりするので、組み合わせた形から練習します。
  • Vてみます(第2課)「Vてみます」はどうなるかを知るために試すこと、「Vておきます」はあとのために前もってすることです。「行き方を調べてみます」はわかるかどうか試す感じ、「行き方を調べておきます」は当日迷わないための準備です。同じ動詞で二つの文を作り、どちらの場面かを当てさせます。
関連する文型
学習項目 3 Vてあります(完了)

意味・はたらき

誰かが目的があってしたことの結果が今も残っていて、準備がもうできていることを伝える言い方です。「ホテルはもう予約してあります」は、予約したという動きよりも「済んでいるから心配ない」という今の状態を言います。第2課で使った「〜と書いてあります」と同じ形で、ここでは準備が済んだことを相手に報告するのに使います。自動詞の「Vています」(初級第15課「窓が開いています」)が誰がしたかを考えない言い方なのに対し、「Vてあります」は人が何かのためにした結果だという感じがあります。

接続

他動詞のテ形+あります(した物は「が」か「は」で言うのがふつう)

形
ホテルはもう予約してあります切符は買ってあります地図はかばんに入れてありますお土産はまだ買ってありません

導入

  • チェックリストに印をつける教師が「ホテル・切符・地図・お土産」のチェックリストを板書し、「ホテルを予約しておきます」と言いながら予約の動作をして、「ホテル」に印をつける。そのあと時計を進める身ぶりをして、印を指しながら「ホテルはもう予約してあります。だから大丈夫です」と言う。板書は「[物]は Vてあります(もう済んだ・今その状態)」とし、前の「Vておきます」の行と上下に並べる。

板書案

[物]は/が 他動詞の Vて あります
ホテルは もう 予約して あります。(済んだ → 大丈夫)
〔青〕Vて おきます(これからする) 〔赤〕Vて あります(もう済んでいる)
開ける → 開けて あります *開いて あります(自動詞にはつかない)
まだ Vて ありません

場面と発話(自作)

  • 旅行の前の日、一緒に行く友達に「準備は大丈夫?」と聞かれる。はい。切符はもう買ってあります。
  • 出発の朝、友達が地図を探している。地図はわたしのかばんに入れてありますよ。
  • 旅行の前に、ホームステイ先の家の人に予定を聞かれる。ホテルは予約してありますが、お土産はまだ買ってありません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、チェックリストのカードで、印がついているものを「〜はもう〜てあります」、ついていないものを「〜はまだ〜てありません」と言わせる。次に ST2 の場面で、一人が「〜はもう〜てありますか」と聞き、もう一人がリストを見て答え、済んでいないものは「じゃあ、〜ておきます」と引き受けさせる。

  1. 口頭チェックリストの印を指しながら全体→個人。ホテルに印→「ホテルはもう予約してあります」、切符に印→「切符は買ってあります」、お金に印なし→「お金はまだ下ろしてありません」、地図に印→「地図はかばんに入れてあります」。次に教師が「ておきます」の文を言い、時計を進める身ぶりのあとで学習者に「てあります」へ言いかえさせる(「切符を買っておきます」→「切符はもう買ってあります」)。
  2. ペアA のリストには印があり、B のリストは空(情報差)。B が「〜はもう〜てありますか」と聞き、A が「はい、〜てあります」「いいえ、まだ〜てありません」と答え、B は自分のリストに印をつける。済んでいない項目は B が「じゃあ、わたしが〜ておきます」と引き受ける。交替。
  3. 産出「出発前日の電話報告」。前の分担会議で引き受けた準備を、出発の前の日にグループのリーダー役へ電話で報告するロールプレイ。済んだことは「〜てあります」、まだのことは「まだ〜てありません。今晩〜ておきます」で言い、リーダー役は「〜はもう〜てありますか」と一つ確かめる。教師は ①自動詞に「てあります」をつけていないか ②物を「は・が」で言っているか ③済んだこと(てあります)とこれからのこと(ておきます)を言い分けているか、を見る。

つまずきと手当て

  • 「*ドアが開いてあります」と、自動詞に「てあります」をつける。「てあります」は「開ける・入れる・買う」のような、人が何かをする動詞だけ、と自動詞・他動詞の組(開く/開ける)を並べて見せる
  • 「切符を買ってあります」と「を」で言う。会話では聞くこともあるが、教室では「切符は・切符が」で言う形にそろえる
  • 準備が済んだ報告に「予約しておきました」と「予約してあります」のどちらを使うか迷う。どちらも言えるが、前は「したこと」、後ろは「今、済んでいる状態」に目が向いていると、時間の線で示す

既習の文型との違い

  • Vてあります(第2課)第2課では、レストランで店の人が置いた物や貼ったメニューを見て、その様子を言いました。この課では、自分たちがした準備がもう済んでいることを相手に報告するのに使います。形も決まりも同じなので、第2課の「見て言う」場面と、この課の「報告して安心させる」場面を並べて確かめます。
  • Vています(結果の状態)(初級第15課)「窓が開いています」は自動詞で、今の状態だけを言い、誰が開けたかには触れません。「窓が開けてあります」は、誰かが風を入れるために開けたという感じがあります。旅行の準備の報告で「てあります」を使うのは、自分たちがしたことだと伝わるからだと示します。
  • もうVましたか(完了)/まだVていません(初級第10課)「切符はもう買いましたか」は買うという動きが済んだかを聞きます。「切符はもう買ってありますか」は、準備として今そろっているかに目が向いています。どちらも使えますが、準備の確認では「てあります」で聞くと答えも「てあります」でそろうので、練習の型にします。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語は、旅行の行き先と見どころ(温泉・お寺・景色・名物)、移動と宿(新幹線・夜行バス・旅館・〜泊)、準備(予約する・調べる・両替する・下ろす・充電する・荷物)、天気と混み具合(込む・空く・売り切れる・晴れる)の4つのかたまりに分かれます。見どころの語は写真カードで、準備の語はチェックリストの項目として、「〜し、〜」「Vておきます」の文の中で使わせます。行き先の地名や名物は学習者が行きたい場所によって違うので、全員で覚える語と、その人だけが使う語を分けます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 予約します(よやくします) ホテルや切符などを、使う前に頼んで取っておくことです。 ホテルを〜・電話で〜・〜してあります
    旅行の準備で、宿がもう取れているかを友達に聞かれる。
    「ホテルはもう予約してあります。」
  • 調べます(しらべます) わからないことを、本やインターネットで見て知ろうとすることです。 行き方を〜・ネットで〜・天気を〜
    旅先で迷わないように、前の日に準備する。
    「駅からの行き方を調べておきます。」
  • 下ろします(おろします) 銀行やATMで、自分の口座からお金を出すことです。 お金を〜・ATMで〜
    旅先の店では現金しか使えないかもしれない。
    「旅行の前に、お金を下ろしておきます。」
  • 両替します(りょうがえします) あるお金を、別の国のお金や細かいお金に替えることです。 円に〜・空港で〜
    国外へ旅行する前に、友達と準備を確かめる。
    「両替はもうしてありますか。」
  • 充電します(じゅうでんします) スマホやカメラなどに電気をためて、使えるようにすることです。 スマホを〜・カメラを〜
    出発の前の晩、写真をたくさん撮るつもりで準備する。
    「カメラも充電しておきます。」
  • 込みます(こみます) 人や車がたくさん集まって、場所がいっぱいになることです。 電車が〜・道が〜・連休は〜
    連休に新幹線で出かける予定を友達と話す。
    「連休の新幹線は込みそうです。」
  • 売り切れます(うりきれます) 品物や切符が全部売れて、もう買えなくなることです。 切符が〜・すぐに〜
    人気の夜行バスの予約サイトで、残りの席が少ない。
    「早く買わないと、売り切れそうです。」
  • 泊まります(とまります) 家ではないところで夜を過ごし、そこで寝ることです。 ホテルに〜・一晩〜・友達の家に〜
    旅行の日程を相談している。
    「温泉の旅館に一晩泊まりましょうか。」
  • 景色(けしき) 山や海、町など、目の前に広がって見えるものの様子です。 〜がいい・〜がきれいだ・窓からの〜
    行きたい場所のよいところを友達に話す。
    「景色もきれいだし、空気もおいしいです。」
  • 温泉(おんせん) 地面の下から出るお湯や、そのお湯に入れる場所です。 〜に入る・〜に行く・〜の旅館
    行き先の案を一つ出す。
    「近いし、温泉はどうですか。」
  • 行き方(いきかた) ある場所まで、どの道や乗り物を使って行くかということです。 〜を調べる・駅までの〜
    初めて行く町で、駅からホテルまでの道がわからない。
    「ホテルまでの行き方を教えてもらえませんか。」

宿題と次のコマ

宿題は、自分が行ってみたい場所を一つ選び、「わたしが行きたいのは〜です」で始めて、理由を「〜し、〜」で二つ以上挙げる文と、出発までに「〜ておきます」こと・もう「〜てあります」ことを3文書いてくること。次のコマの最初に、何人かに読んでもらい、聞き手に「〜はもう〜てありますか」と質問させます。そのあと第7課の ST1「初めての訪問」に入り、旅行先や友達の家で初めて会う年上の人に、ていねいな言い方で話す場面へ進めます。

よくある質問

  • 『できる日本語 初中級』第6課「旅行に行こう」は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目に導入と ST1(Vましょうか・2つの「し」・強調構文)、2コマ目に ST2(予測の「そうです」・Vておきます・Vてあります)と課のまとめを入れます。並列と理由の「し」は形が同じなので一続きで扱うと、強調構文に時間を回せます。

  • 「〜し、〜(並列)」と「〜し、〜(理由)」はどう分けて教えればいいですか?

    形はどちらも普通形+「し」なので、作り方は並列で一度だけ教え、理由では後ろに結論(提案や判断)が来ることだけを足します。板書で「〜し、〜し、[結論]」の最後を赤い枠で囲むと違いが見えます。並列は「よいところの紹介」、理由は「だから〜しましょう」の提案と、場面で分けます。

  • 「Vておきます」と「Vてあります」の違いはどう見せればいいですか?

    時間の線を板書し、「ておきます」は旅行の日より前にこれからすること、「てあります」はもう済んでいて今その状態だと、線の上の位置で示します。助詞も「切符を買っておきます」「切符は買ってあります」と変わるので、2行を上下に並べます。分担を決める会話から報告の会話へと、場面の順で練習すると混ざりにくくなります。

  • 予測の「降りそうです」と伝聞の「降るそうです」を混ぜてしまう学習者にはどうすればいいですか?

    前の形の違い(マス形の語幹か普通形か)と、情報の出どころ(自分が見たか人から聞いたか)を結びつけて教えます。教師が窓の外を指したら「降りそうです」、ニュースの絵を見せたら「降るそうです」と、キューで切り替える練習が効きます。伝聞は初級で習った形なので、この課では予測を先に固めてから比べます。

  • 強調構文の「〜のは〜です」はどんな場面で導入すると自然ですか?

    いくつか案が出たあとで自分の希望を一つに絞るときや、「どこがいいですか」「どうしてですか」と聞かれて答えるときが自然です。言いかえの練習だけから入ると使いどころが見えないので、行き先の案が並ぶ場面を先に作ってから「わたしが行きたいのは〜です」を出します。理由を目立たせる「〜のは〜からです」は、「どうして?」と聞かれる形にして練習します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。