ST1 生活を楽しむ
できること住んでいる町の店や施設について、自分の事情を伝えて情報を聞き、聞かれたら勧める場所や使い方を教えられる。
場面
引っ越して間もない留学生が、寮やシェアハウスで近くに住む日本人の友達に、買い物の場所や図書館・プールの使い方を聞く場面です。教室では架空の町の地図に、スーパー・八百屋・図書館・市民プール・コインランドリーなどのカードを貼り、半分の学習者には「知りたいことカード」、残りには「町のことがわかるカード」(営業時間・料金・持って行く物・返す日を書いたもの)を持たせて、聞かなければ情報が手に入らない状態にします。
- 留学生:すみません、安い野菜を買いたいんですが、この近くにいい店がありますか。
- 日本人の友達:野菜を買うなら、駅前の八百屋がいいですよ。
- 留学生:そうですか。何時までですか。
- 日本人の友達:夜8時までです。夕方に行くといいですよ。安くなりますから。
- 留学生:それから、図書館で本を借りたいんですが、どうしたらいいですか。
- 日本人の友達:まず、カードを作ったらいいですよ。在留カードを持って行くといいです。
- 留学生:本はいつまでに返さなければなりませんか。
- 日本人の友達:借りた日から2週間後までに返します。
学習項目 1 〜んですが、〜
意味・はたらき
自分の事情や希望を「〜んですが」で先に言い、そのあとに質問や頼みを続ける形です。いきなり「店はどこですか」と聞くより、なぜ聞くのかが相手に伝わるので、初めて話しかける人にも聞きやすくなります。第3課の「〜んです」に「が」をつけた形で、後ろを言わずに「〜たいんですが……」で止めても、相手が察して教えてくれることが多いです。話し言葉では「〜んですけど」もよく使います。文法の見方では、ノダ文の「前置き」のはたらきにあたり、言わずにおいた後ろの部分(教えてください、など)を相手に察してもらう言い方です。
接続
V・イA の普通形+んですが/ナA・N+なんですが(「だ」は「な」になる)
形
泳ぎたいんですが、どこかいいところがありますかこの辺は初めてなんですが、郵便局はどこですかカードを作りたいんですが……
導入
- いきなり聞く/事情を言ってから聞く教師が通りがかりの人の役で、学習者に「プールはどこですか」とだけ聞いてみせ、次に「すみません、泳ぎたいんですが、この近くにプールがありますか」と聞き直す。どちらが答えやすいか学習者に聞いてから、板書を「[したいこと・事情]んですが、[質問・頼み]」の2つの枠にし、前の枠に第3課の「〜んです」が入ることを指で示す。
板書案
[事情・したいこと]んですが、[質問・頼み]
髪を切りたいんですが、この近くに安い店がありますか。
V・イA 普通形+んですが / ナA・N+〔赤〕な+んですが
〔青〕〜んです(第3課)+が の矢印
〜たいんですが……(後ろは言わなくてもよい)
場面と発話(自作)
- 引っ越した次の日、寮の管理人に洗濯のことを聞く。すみません、洗濯機がないんですが、この近くにコインランドリーがありますか。
- 区役所の窓口で、何をしに来たかを先に伝える。住所を変えたいんですが、どこへ行ったらいいですか。
- スポーツセンターの受付で、初めて来たことを伝える。初めてなんですが、使い方を教えてもらえませんか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「したいこと」の絵カード(泳ぐ・本を借りる・野菜を買う・髪を切る)を見せ、学習者が「〜たいんですが」と前半だけを言う。慣れたら「この近くに〜がありますか」「〜てもらえませんか」を後ろに足して1文にし、最後は ST1 の知りたいことカードを持って、町のことがわかるカードを持つ人に聞きに行かせる。
- 口頭教師が「したいこと」の絵カード(髪を切る・荷物を送る・自転車を直す・泳ぐ)と、事情の語カード(初めて・洗濯機がない・日本語の書類がわからない)を交互に出す。学習者はまず全体で前半だけ「髪を切りたいんですが」「初めてなんですが」と言い、次に個人で「この近くに〜がありますか」「教えてもらえませんか」を後ろに足して1文にする。名詞・ナ形容詞のカードを混ぜて「な」を入れる回を必ず作る。
- ペアA は困りごとカード(切手がほしい・洗濯機がない・自転車がこわれた)を3枚、B は町の地図と施設カードを持つ。B は、A が事情を言ってから質問するまで答えないことにし、A が「〜んですが、〜」の形で切り出せたら場所を教える。3枚終わったらカードを替えて交替する。
- 産出「町の窓口ロールプレイ」:区役所・図書館・スポーツセンターの受付の役を教師か学習者が受け持ち、ほかの学習者は自分が本当に困っていること・知りたいことを一つ決めて窓口に行き、「〜んですが」で切り出す。教師が見るのは、名詞・ナ形容詞のあとの「な」、ます形に「んです」をつけていないか、事情→質問の順になっているかの3点。
つまずきと手当て
- 「*初めてんですが」「*学生んですが」と、名詞やナ形容詞のあとに「な」を入れ忘れる。板書の枠の下に「N・ナA → 〜なんですが」と書き、「静か」「休み」などのカードで「な」を入れる練習を足す
- 「*泳ぎますんですが」と、ます形に「んです」をつける。前の枠には普通形が入ることを、第3課の「〜んです」の形と並べて確かめる
- 「泳ぎたいですが、プールはありますか」と「ん」を落とす。誤りではないが、事情を説明して聞く感じが弱く、そっけなく聞こえることがあるので、この課では「んですが」で切り出す形を練習する
既習の文型との違い
- 〜んですか/〈疑問詞〉〜んですか/〜んです(第3課)第3課の「〜んです」は、聞かれたことに事情を説明して答える形でした。この課は同じ形に「が」をつけて、話の初めに自分から事情を出し、後ろに質問や頼みを続けます。「泳ぎたいんです。プールはありますか」と文を切ってしまう学習者には、「が」で一つの文にすると前の事情と後ろの質問がつながることを見せます。
- 〜ので、〜(第1課)「泳ぎたいので、プールを教えてください」も文としては正しいですが、理由をはっきり言ってから頼む、少し改まった言い方です。「〜んですが」は前置きで、後ろを言わずに止めても相手が察してくれるのが違いです。「〜ので……」で止めると言いかけの印象が強くなるので、止める言い方は「んですが」で練習します。
関連する文型
学習項目 2 〜なら、〜
意味・はたらき
相手が言ったこと(これからしたいこと・話題に出たこと)を「〜なら」で受けて、それについての情報や勧めを返す形です。第1課の「Nなら〜」は名詞を受けていましたが、ここでは「泳ぐなら」「安い店がいいなら」のように動詞や形容詞も受けます。「なら」の前のことはまだ起きていなくてよく、「日本の料理を作るなら、この店で材料を買うといいですよ」のように、後ろのことのほうが先に起きる場合にも使えます。文法の見方では条件表現の一つで、相手の発話や話に出たことを前提として受ける「なら」にあたります。
接続
V・イA の普通形+なら/ナA・N+なら(「だ」はつけない)
形
泳ぐなら、市民プールがいいですよ安い店がいいなら、駅前のスーパーです静かなところなら、川の近くの公園です
導入
- 学習者の言葉をそのまま受けて返す導入で板書した「したいこと」を使い、学習者に「〜たいんですが」と言わせ、教師が地図の施設カードを指して「泳ぐなら、市民プールがいいですよ」と返す。学習者の言った言葉の一部を「〜なら」でくり返していることがわかるよう、板書では学習者の文の「泳ぎたい」に下線を引き、教師の文の「泳ぐなら」と線で結ぶ。第1課の「Nなら〜」の文を横に並べ、前に動詞が来ても同じだと見せる。
板書案
A:自転車を買いたいんですが。
B:〔赤〕自転車を買うなら、駅前の店がいいですよ。
A の「買いたい」に下線 → B の「買うなら」と線で結ぶ
V・イA 普通形+なら / ナA・N〔青〕「だ」を消して+なら
〔緑〕Nなら〜(第1課):土曜日なら大丈夫です
場面と発話(自作)
- 日本人の友達に、週末に運動したいと話したら勧めてくれた。運動するなら、スポーツセンターがいいですよ。安いですから。
- 留学生の後輩に、自転車を買いたいと言われた。自転車を買うなら、駅の近くの店がいいですよ。
- 近所の人に、日本の料理を作ってみたいと話した。日本の料理を作るなら、この店で材料を買うといいですよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「〜たいんですが」と言い、学習者が地図の施設カードを見て「〜なら、〜がいいですよ」で返す。役を入れ替えたあと、ペアで「〜んですが」と「〜なら」をつなげたやり取りを、施設カードを替えながら3回続けさせる。
- 口頭教師が相手役の文をカードで出す(「運動したいんですが」「安い服がほしいんですが」「静かなところで勉強したいんですが」「日本の料理を作ってみたいんですが」)。学習者は全体で、カードの下線部を「運動するなら」「静かなところなら」のように「〜なら」の形にしてくり返し、次に個人で地図の施設を指して「〜がいいですよ」を足す。ナ形容詞と名詞のカードで「だ」を消す回をはさむ。
- ペアA は「したいこと」カード、B は営業時間や料金を書いた施設カードを5枚持つ。A が「〜たいんですが」と切り出し、B は自分のカードの中から合う施設を選んで「〜なら、〜がいいですよ」と勧め、理由を「〜から」で一つ足す。A は勧められた施設をメモし、4枚終わったら交替する。
- 産出「わたしの町のおすすめマップ」:自分の住んでいる町について、「〜なら、〜がいいですよ」を3つ紙に書いて教室の壁に貼る。ほかの学習者は紙を見て回り、書いた人に「〜たいんですが」と聞きに行き、書いた人が口で答える。教師が見るのは、「だ」が残っていないか、相手の話を受けてから「なら」を使っているか、着いたあとにすることを「なら」で言っていないかの3点。
つまずきと手当て
- 「*静かだなら」「*学生だなら」と「だ」を残す。ナ形容詞と名詞は「だ」を取ってから「なら」をつけると、板書で「だ」を消してみせる
- 「駅に着くなら、電話してください」は着く前に電話する意味になる。着いたあとに電話してほしいなら「着いたら」(第3課)と、時間の線を板書して比べる
- 話の流れと関係なく「なら」で話し始め、条件の「たら」と同じつもりで使う。この課では、相手の言ったことや話に出たことを受けて返す形として、ST1 のやり取りで必ず相手の文を聞いてから使わせる
既習の文型との違い
- Nなら〜(第1課)第1課の「Nなら〜」は「土曜日なら大丈夫です」のように名詞だけを受けていました。この課は「泳ぐなら」「安いのがいいなら」のように動詞や形容詞も受けます。前に来る語が変わっても、相手の言ったことを受けて返すはたらきと、「だ」をつけない形は同じです。
- Vたら、〜(確定条件)(第3課)「日本に行ったら、ガイドブックを買います」は行ってから買う、「日本に行くなら、ガイドブックを買います」は行く前に買う、と後ろのことが起きる時が違います。時間の線に「行く」と「買う」の点を打たせると、「なら」だけ後ろのことが先に来てもよいことがわかります。「着くなら、電話してください」は着く前の電話になるので、着いたあとに電話してほしいなら「着いたら」、とこの線で確かめます。
関連する文型
学習項目 3 Vたらいいです
意味・はたらき
どうすればうまくいくかを聞くときに「どうしたらいいですか」「どこで買ったらいいですか」のように使い、答えるときにも「〜たらいいですよ」と一つのやり方を勧めます。疑問詞(どう・どこで・何を・いつ)といっしょに使う質問の形をまず覚えさせると、生活の中ですぐ役に立ちます。初級の「Vたほうがいいです」ほど強く言い切らず、いくつかあるやり方のうち一つを教える感じです。文法の見方では、条件の形「〜たら」に「いい」がついて勧めや助言を表す形で、評価のモダリティの一つとして扱われます。
接続
Vた形+らいいです(「〜たらいいですか」で聞く)
形
どうしたらいいですかどこで買ったらいいですかカードを作ったらいいですよ
導入
- 困っている教師に学習者が答える教師がゴミの袋を持って困った顔をし、「ゴミを出したいんですが、どうしたらいいですか」と学習者に聞く。学習者が知っていることを母語や単語で言ったら、教師が「ああ、月曜日の朝に出したらいいんですね」と言い直す。板書は「〈疑問詞〉+Vたらいいですか」と「Vたらいいですよ」の2行にし、タ形を作ってから「ら」をつけることを示す。
板書案
〈疑問詞〉+Vたらいいですか
本を借りたいんですが、どうしたらいいですか。
——カードを作ったらいいですよ。
〔赤〕タ形+ら:行った→行ったら/した→したら/来た→来たら
〔青〕どう・どこで・何を・いつ・だれに
場面と発話(自作)
- 初めて図書館に来て、受付の人に聞く。本を借りたいんですが、どうしたらいいですか。
- 日本人の友達に、安い自転車をどこで買えばいいか聞く。どこで買ったらいいですか。——駅前の店で買ったらいいですよ。
- アルバイト先で、先輩にお客さんへの答え方を聞く。お客さんに場所を聞かれたら、何と言ったらいいですか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、動詞カード(行く・買う・する・来る・借りる)を見せて「〜たらいいですか」を速く言わせ、タ形の作り方を確かめる。次に「知りたいことカード」を持って「〈疑問詞〉〜たらいいですか」と聞き、町のことがわかるカードを持つ人が「〜たらいいですよ」で答える。
- 口頭まず動詞カード(行く・買う・する・来る・借りる・持って行く)を見せ、全体で「行った→行ったら」とタ形を言ってから「ら」を足させる。次に疑問詞カードと動詞カードを組み合わせて出し(「どこで+買う」「何を+持って行く」「いつ+出す」「だれに+聞く」)、個人で「どこで買ったらいいですか」のように質問の形を作らせる。
- ペアA は「知りたいことカード」(図書館のカードの作り方・大きいゴミの出し方・自転車の置き場所など)、B は答えが書いてある「町のことがわかるカード」を持つ。A は疑問詞を使って「〜たらいいですか」と聞き、B は「〜たらいいですよ」で答える。A は答えをメモし、最後に B のカードを見て合っているか確かめてから交替する。
- 産出「新しい留学生Q&A」:来年この町に来る後輩のために、困ったときの質問と答えを3組、「〜たらいいですか」「〜たらいいですよ」の形で書き、グループで1冊の小さなQ&A集にまとめて読み合う。教師が見るのは、タ形の作り方、質問に疑問詞が入っているか、目上の人への答えを言い切りすぎていないかの3点。
つまずきと手当て
- 「*買いたらいいですか」「*行くたらいいですか」と、ます形や辞書形に「たら」をつける。タ形を先に言わせてから「ら」を足す、の2段で言わせる
- 「*どうしてらいいですか」と、テ形と混ぜる。「どうした+ら」と区切って板書し、全員で何度も言う
- 目上の人に「〜たらいいですよ」と言い切って、指示しているように聞こえる。誤りではないが、目上の人には「〜たらいいと思いますよ」のように、初級第14課の「〜と思います(意見)」を足すとやわらかくなることを伝える
既習の文型との違い
- Vたほうがいいです/Vないほうがいいです(初級第12課)「病院へ行ったほうがいいですよ」は、ほかと比べてそうするべきだという強めの助言でした。「〜たらいいです」はやり方を聞かれて一つ教える言い方で、押しつける感じが弱くなります。やり方を聞く質問は「どうしたらいいですか」がふつうで、「どうしたほうがいいですか」はいくつかの案を比べて選んでもらうときの聞き方になります。
- 〜たら(仮定条件)(初級第15課)初級の「たら」は「雨が降ったら、行きません」のように、もしそうなったときの後ろのことを続けました。この課は「たら」のあとにすぐ「いい」を置き、ひとかたまりで勧めを表します。作り方は同じタ形+「ら」なので、形の練習は初級の復習として短くすませ、疑問詞と組み合わせる練習に時間を使います。
関連する文型
学習項目 4 Vるといいです
意味・はたらき
自分が知っていることや経験から、「こうするとうまくいく・得をする」というやり方を相手に勧める形です。「夕方に行くといいですよ(安くなります)」のように、勧める理由をあとに続けるとよく伝わります。質問には「〜たらいいですか」のほうが多く使われるので、この課では、聞くときは「たら」、勧めるときは「たら」「と」のどちらでもよい、と整理します。「晴れるといいですね」のように、そうなってほしいという気持ちを言う使い方もあるので、聞いたときに混乱しないよう一言ふれておきます。「〜たらいい」と同じく、条件の形に「いい」がついて勧めを表す言い方で、文法では評価のモダリティにまとめられます。
接続
V辞書形+といいです
形
夕方に行くといいですよ在留カードを持って行くといいです朝早く来るといいですよ。すいていますから
導入
- 店のカードに「おすすめ」を書き足す教師が八百屋のカードに「夕方 安い」と書き足し、「この八百屋は、夕方に行くといいですよ。安くなりますから」と言う。同じように図書館のカードに「平日 すいている」、プールに「朝 人が少ない」と書き、学習者に「〜といいですよ」で言わせる。板書は「V辞書形+といいです」と、理由を続ける「〜から」を並べる。
板書案
V辞書形+といいです
夕方に行くといいですよ。安くなりますから。
〔赤〕たら:タ形+ら | と:辞書形+と(2列に並べる)
〔青〕[勧め]。+〜から(理由)
聞く:〜たらいいですか / 答える:〜たらいいです・〜といいです
場面と発話(自作)
- スーパーに行きたいという後輩に、安くなる時間を教える。8時ごろ行くといいですよ。お弁当が安くなりますから。
- 市民プールに行く友達に、持って行く物を教える。帽子を持って行くといいです。プールで帽子をかぶらなければなりませんから。
- 図書館に行きたいという友達に、すいている日を教える。平日の午前中に行くといいですよ。週末は込んでいますから。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、施設カードに書き足した「おすすめ」を見て「〜といいですよ」を言わせ、慣れたら「〜から」で理由を足させる。そのあと ST1 のやり取りで、「〜たらいいですか」と聞かれた人が「〜といいですよ」「〜たらいいですよ」のどちらかで答え、理由を一つ足す。
- 口頭施設カードに書き足した「おすすめメモ」(朝 人が少ない/水曜日 安い/電話で予約できる/会員カードで安くなる)を一枚ずつ見せ、全体で「朝行くといいですよ」と言わせる。次に教師が動詞だけを言い(行く・持って行く・予約する・作る)、個人で辞書形+「と」にしてから、メモの理由を「〜から」で足させる。
- ペアA は「〜たいんですが、どうしたらいいですか」と聞く役、B はおすすめメモつきの施設カードを持つ役。B は「〜といいですよ。〜から」と理由まで言い、A は「そうですか。じゃ、〜ます」と受けて次のカードに進む。4枚で交替し、交替後は B だった人が「〜たらいいですよ」で答えてもよいことにする。
- 産出「先輩のひとことアドバイス」:自分が日本で暮らして得をしたこと・うまくいったこと(安くなる時間・すいている日・便利な店)を一つ選び、「〜といいですよ。〜から」で新しく来た留学生に話すつもりで発表する。グループでいちばん役に立つアドバイスを選ばせる。教師が見るのは、辞書形の作り方、理由が続いているか、ルールの話に「といい」を使っていないかの3点。
つまずきと手当て
- 「*行ったといいです」「*行きますといいです」と、タ形やます形に「と」をつける。「たら」は「た」、「と」は辞書形と、2つの枠を並べて板書する
- 図書館の中で静かにすることのような、守らなければならないルールにも「静かにするといいです」と言う。誤りではないが、ルールは「〜なければなりません」(第3課)で言うほうが合うので、「勧め」と「ルール」のカードを分けて仕分けさせる
- 友達が「あした、晴れるといいですね」と言ったのに、「はい、晴れます」と答えてしまう。勧めの「〜といいです」と、そうなってほしいという気持ちの「〜といいですね」を、天気の絵と施設のカードで分けて見せ、聞いたときにどちらかわかるようにする
既習の文型との違い
- Vたらいいです(第4課)同じ課の「〜たらいいです」とは、勧めるときはほぼ同じように使えます。違いは聞くときで、「どうしたらいいですか」が自然なので、質問は「たら」、答えは「たら」「と」のどちらでもよい、と整理します。形はタ形+「ら」と辞書形+「と」なので、2列の板書で作り方を取り違えないようにします。
- Vると、〜(初級第14課)初級の「このボタンを押すと、お湯が出ます」は、そうすると必ずそうなる関係でした。「〜といいです」は、そのあとに「いい」が来て、そうするとよい結果になる=勧め、と読めます。初級の文を一つ見せてから「と」のあとを「いいです」に替えると、形のつながりが見えます。
関連する文型
学習項目 5 Nまでに〜
意味・はたらき
「Nまでに」は、その時より前のどこかで一度その動作をすませる、という期限を表します。図書館の本を返す日、ゴミを出す時間、書類を出す日など、町の生活では期限のある話がよく出ます。初級の「〜まで」はその時まで動作や状態が続くことを表すので、「5時まで働きます」と「5時までに帰ります」の違いを、時間の線で見せて区別させます。文法の見方では、「まで」は動作や状態が続く終わりの点、「までに」は動作がすむ期限で、後ろの動詞が続く動作か一回で終わる動作かによって選ばれます。
接続
N(時を表す語)+までに+V
形
金曜日までに返します朝8時までにゴミを出してくださいいつまでに出さなければなりませんか
導入
- 時間の線で「まで」と「までに」を比べる黒板に月曜から金曜までの線を引き、「月曜日から金曜日まで本を読みます」と言いながら線全体をなぞる。次に、本を返す場面で「金曜日までに返します」と言い、線の上のどこか一点(水曜日でも金曜日でもよい)に印をつける。板書は「〜まで:ずっと」「〜までに:その前に一回」の2行にする。
板書案
〜まで :━━━━━━━▶|(ずっと)
〜までに: ・ |(その前に一回)
月曜日から金曜日まで本を読みます。
この本は金曜日までに返してください。
〔赤〕までに:返す・出す・帰る・終わる 〔青〕まで:読む・働く・待つ・いる
場面と発話(自作)
- 図書館で、受付の人に返す日を言われる。この本は、来週の土曜日までに返してください。
- 寮の管理人に、ゴミを出す時間を聞く。ゴミは何時までに出さなければなりませんか。——朝8時までにお願いします。
- アルバイト先で、店長に書類を出す日を聞く。この書類は、いつまでに出したらいいですか。——金曜日までに出してください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、カレンダーと時計の絵を指して、教師が「返す」「出す」「読む」「働く」などの動詞カードを出し、学習者が「まで」か「までに」を選んで文にする。そのあと ST1 の施設カードの「返す日・出す日」を見ながら「いつまでに〜なければなりませんか」「〜までに〜ます」で聞き合う。
- 口頭黒板のカレンダーと時計を指しながら、教師が時の語(金曜日・9時・来週の月曜日)と動詞カード(返す・出す・帰る・待つ・働く・寝る)を組み合わせて出す。全体で「まで」か「までに」かを手で示させ(線をなぞる/点を打つ)、そのあと個人で「9時までに帰ります」「9時まで待ちます」のように文にする。
- ペアA は「返す日・出す日・申し込みの日」が書いてある施設カード(図書館・ゴミ置き場・市民プールの教室)、B は白い手帳のページを持つ。B が「いつまでに〜なければなりませんか」と聞いて手帳に書き込み、次に A のアルバイトの表を見て「何時まで働きますか」と聞く。期限と続く時間の両方を聞いたら交替する。
- 産出「わたしの締め切りカレンダー」:自分の来週の予定から、期限のあること(レポート・家賃・本の返却・ゴミ)を「〜までに〜」で2つ、続けること(アルバイト・勉強・旅行)を「〜まで〜」で2つ書き、ペアで発表する。教師が見るのは、後ろの動詞が続く動作か一回の動作かと、「まで」「までに」が合っているかの1点に絞る。
つまずきと手当て
- 「*金曜日まで本を返してください」と、一回ですむ動作に「まで」を使う。動作が続くか一回で終わるかを、時間の線をなぞるか点を打つかで確かめる
- 「*6時までに図書館で勉強します」と、続ける動作に「までに」を使う。「勉強する」は6時までずっと続くので「まで」と、線の図で見せる
- 「金曜日までに」に金曜日が入るかどうかで迷う。金曜日に返してもよいことを、カレンダーの金曜日に丸をつけて確かめる
既習の文型との違い
- [時間]から[時間]までVます(初級第3課)「9時から5時まで働きます」は5時までずっと続く動作でした。「5時までに帰ります」は5時より前のどこかで一回帰ればよい、という期限です。後ろの動詞で決まるので、動詞カードを「ずっと」と「一回」の2つの箱に分ける練習が効きます。
- [時間]に(初級第3課)「金曜日に返します」はその日ちょうどに返す、「金曜日までに返します」はそれより前ならいつでもよい、という違いです。図書館の受付が言うのは「までに」のほうで、「に」と聞き違えると金曜日にしか返せないと思ってしまいます。カレンダーに「に」は一つの丸、「までに」は月曜から金曜までの範囲を囲んで見せます。
関連する文型
ST2 行き方を教える
できること目的の場所までの道を目印を使って説明し、道がわからないときは人に聞いて、違うところを言い直してもらって確かめられる。
場面
駅前で、近所に住む年上の人に市民プールへの行き方を聞く場面と、留学生が友達に自分の町の店までの道を教える場面です。教室では地図に信号・交差点・橋・コンビニなどの目印を描き、案内する人は地図を見ながら、聞く人は地図を見ないで道順をメモし、最後に地図で答え合わせをします。知らない人や年上の人に聞くときは、言い直すときも「違います」で止めず、正しいほうを続けて言うようにさせます。
- 留学生:すみません、市民プールに行きたいんですが……。
- 近所の人:市民プールですか。この道をまっすぐ行くと、大きい交差点があります。
- 留学生:はい。
- 近所の人:その交差点を右に曲がると、左に図書館があります。プールは図書館の隣です。
- 留学生:交差点を左ですね。
- 近所の人:いいえ、左じゃなくて、右です。
- 留学生:あ、右に曲がるんですね。ありがとうございました。
学習項目 1 Vると、Nがあります
意味・はたらき
道案内で、「まっすぐ行く」「右に曲がる」などの動作をすると、その先に何が見えるかを言う形です。「この道をまっすぐ行くと、交差点があります。その交差点を右に曲がると、左に図書館があります」のように、動作と目印を交互に足していくと、聞く人が頭の中で道をたどれます。初級の「Vると、〜」と同じ「と」で、前の動作をすれば必ず後ろのことが起きる、という関係を表します。後ろには目印があることや見えることが来て、「〜てください」のような頼みは来ません。文法の見方では条件表現の「と」で、前の動作のあとに後ろの事態が見つかる・成り立つことを表し、後ろに意志や依頼の文が来ないという制約があります。
接続
V辞書形+と、[場所]に+N+があります
形
まっすぐ行くと、右に郵便局があります二つ目の信号を左に曲がると、コンビニがあります橋を渡ると、すぐ公園があります
導入
- 地図の上で指をすべらせる黒板の地図で、教師が駅から指をすべらせながら「駅を出て、まっすぐ行くと……」で止め、学習者に地図を見させて「交差点があります」と言わせる。続けて「右に曲がると……」「左に図書館があります」と、動作と目印を一つずつ足していく。板書は「[動作]と、[どこに][目印]があります」の枠にし、道案内に使う動詞(行く・曲がる・渡る)と目印の語(信号・交差点・橋・角・〜つ目)をそれぞれ別の色でまとめる。
板書案
[動作]と、[どこに][目印]があります
この道をまっすぐ行くと、交差点があります。
交差点を右に曲がると、左に図書館があります。
〔赤〕動詞:行く・曲がる・渡る(辞書形) 〔青〕目印:信号・角・橋・〜つ目
〔緑〕〜を曲がる・〜を渡る(「を」に丸)
場面と発話(自作)
- 駅前で、知らない人に郵便局への道を聞かれる。この道をまっすぐ行くと、右に郵便局があります。
- 自分の家に来る友達に、駅からの道を電話で教える。改札を出て左に行くと、コンビニがあります。私の家はコンビニの隣です。
- 公園の場所を聞かれて、目印を使って説明する。二つ目の角を右に曲がって、橋を渡ると、左に大きい公園があります。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が地図の上の一区間を指で示し、学習者が「〜と、〜があります」で1文ずつ言う。慣れたら出発点と行き先のカードを引いて、2〜3文続けて案内させ、聞く人は地図を見ないで道順を線でメモし、最後に地図と比べる。
- 口頭黒板の地図の一区間を教師が指でなぞり、キューを出す(「まっすぐ+コンビニ」「右に曲がる+銀行」「橋を渡る+公園」「二つ目の角を左+郵便局」)。全体で「まっすぐ行くと、コンビニがあります」と言い、次に個人で、教師がなぞった区間を見て自分で動作と目印を選んで言う。動作の部分は必ず辞書形で言わせる。
- ペアA は目印と行き先が描いてある地図、B は道だけが描いてある地図を持つ(情報差)。A が出発点から行き先まで「〜と、〜があります」で案内し、B は自分の地図に線を引いて行き先に印をつける。終わったら二人の地図を重ねて答え合わせをし、行き先を替えて交替する。
- 産出「駅から私の家まで」:自分の最寄り駅から家(または好きな店)までの道を、動作と目印を交互に3〜4文で説明する。聞く人は地図を見ないで線でメモし、最後に話した人が描いた地図と比べる。教師が見るのは、辞書形+「と」、後ろに「〜てください」を入れていないか、「を曲がる」「を渡る」の助詞の3点。
つまずきと手当て
- 「*まっすぐ行ったと」と、タ形に「と」をつける。「曲がりますと」は改まった案内で使う形だが、この課では辞書形で言う。辞書形の枠を板書に固定し、動詞カードを辞書形にしてから「と」をつける練習をする
- 「*まっすぐ行くと、右に曲がってください」と、後ろに頼みを入れる。頼むなら「まっすぐ行って、右に曲がってください」とテ形でつなぐことを、2つの文を並べて見せる
- 「*二つ目の信号に右に曲がる」と、通る場所に「に」を使う。初級の「[場所]を」で、角や信号は「を曲がる」、橋や道は「を渡る」と、動詞と助詞をいっしょに覚えさせる
既習の文型との違い
- Vて、〜(初級第9課)「まっすぐ行って、右に曲がってください」はテ形で動作をつないで順に頼む形です。「まっすぐ行くと、交差点があります」は動作のあとに何が見えるかを言う形です。テ形の文は後ろに「〜てください」が来られますが、「と」の文には来ないので、頼むならテ形、目印を言うなら「と」と仕分けさせます。
- Vると、〜(初級第14課)初級の「春になると、桜が咲きます」は、いつもそうなる関係でした。この課は同じ「と」を道の上で使い、その動作をすると目の前にそれが現れる、という道順の説明に広げます。形は同じなので、新しく覚えるのは道案内の動詞と目印の語です。
関連する文型
学習項目 2 Nじゃなくて、〜/Vるんじゃなくて、〜
意味・はたらき
相手の聞き違いや思い違い、自分の言い間違いを、「AじゃなくてB」で正しいほうに言い直す形です。道案内では「左じゃなくて、右です」「曲がるんじゃなくて、まっすぐ行くんです」のように、違うところだけを取り出して直すので、相手が何を間違えたかがすぐわかります。動作を直すときは「Vるんじゃなくて、Vるんです」と、第3課の「〜んです」の形で後ろを言うことが多いです。文法の見方では「AではなくB」の話し言葉の形で、打ち消す部分と正しい部分を対にして示す、訂正・対比の言い方です。
接続
N+じゃなくて、N(です)/V辞書形+んじゃなくて、V辞書形+んです
形
左じゃなくて、右です二つ目じゃなくて、三つ目の信号です曲がるんじゃなくて、まっすぐ行くんです
導入
- 教師がわざと聞き違える学習者に ST2 の地図で道を案内させ、教師が聞く人の役で「交差点を左ですね」とわざと違うほうを確かめる。学習者が「いいえ」と言ったら、教師が「左じゃなくて、右ですね」と言ってみせ、次の聞き違い「交差点を曲がるんですね」には「曲がるんじゃなくて、まっすぐ行くんです」と言い直させる。板書は「Nじゃなくて、Nです」と「Vるんじゃなくて、Vるんです」の2行にし、違うところと正しいところを同じ色で囲む。
板書案
[違うほう]じゃなくて、[正しいほう]です
いいえ、左じゃなくて、右です。
[違う動作]んじゃなくて、[正しい動作]んです
曲がるんじゃなくて、まっすぐ行くんです。
〔赤〕違うほう 〔青〕正しいほう (「ないで」に×)
場面と発話(自作)
- 道を聞いた人が、右と左を逆に覚えていた。いいえ、左じゃなくて、右です。
- 電話で道を教えている友達が、違う角で曲がろうとしている。その角を曲がるんじゃなくて、もう少しまっすぐ行くんです。
- レストランの予約の電話で、店の人が日を聞き違えた。いいえ、土曜日じゃなくて、日曜日です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が地図を見ながらわざと違うことを言い(「郵便局は駅の前ですね」「橋を渡るんですね」)、学習者が「〜じゃなくて、〜です」「〜んじゃなくて、〜んです」で直す。そのあと ST2 のロールプレイで、聞く人にわざと一回だけ聞き違えさせ、案内する人に言い直させる。
- 口頭教師が地図や施設カードを見ながら、わざと違うことを言う(「郵便局は駅の前ですね」「二つ目の信号ですね」「8時までですね」「橋を渡るんですね」)。学習者は全体で「いいえ、〜じゃなくて、〜です」と直し、名詞の訂正に慣れたら動作の訂正(「〜んじゃなくて、〜んです」)に進んで個人で言わせる。
- ペアA が地図を見ながら道を案内し、B は地図を見ないで道順を復唱する。B は「わざと間違えるカード」(右と左を逆にする・何つ目かを変える・曲がると渡るを変える)を1枚引いておき、復唱のどこかで一回だけ間違える。A はそれを聞き取って「〜じゃなくて、〜」で直す。交替してもう一回。
- 産出「聞き違い伝言ゲーム」:3人組で、1人目が2人目に道を案内し、2人目が3人目にそれを伝える。3人目が地図に線を引いたら、1人目がその線を見て、違うところをすべて「〜じゃなくて、〜」で直す。教師が見るのは、「じゃないで」になっていないか、動詞のあとの「ん」、「違います」で止めずに正しいほうまで言っているかの3点。
つまずきと手当て
- 「*左じゃないで、右です」と「ないで」を使う。言い直しは「じゃなくて」と決めて、ひとかたまりで言わせる
- 「曲がるじゃなくて、まっすぐ行きます」と、動詞のあとの「ん」を落とす(くだけた会話では聞くが、丁寧な道案内では「ん」を入れる)。動詞を直すときは「んじゃなくて」と、名詞の行と動詞の行を並べて比べる
- 知らない人や年上の人に「違います」とだけ言って、強く聞こえる。誤りではないが、「いいえ、〜じゃなくて〜です」と正しいほうまで続けて言うと、やわらかく伝わることを場面で確かめる
既習の文型との違い
- Nですか/はい、(〜は)Nです/いいえ、(〜は)Nじゃありません(初級第1課)初級の「いいえ、Nじゃありません」は違うと言うだけで、正しいほうは言いませんでした。「Nじゃなくて、N」は違うほうと正しいほうを一つの文で言うので、相手はどこを直せばいいかがすぐわかります。「いいえ、左じゃありません」で止まる学習者には、そのあとに右まで言わせる練習をします。
- 〜んですか/〈疑問詞〉〜んですか/〜んです(第3課)動作を直すときの「〜んじゃなくて、〜んです」は、第3課の「〜んです」を否定と肯定で並べた形です。「*曲がりますんじゃなくて」と、ます形に続ける誤りが出たら、第3課と同じく普通形(辞書形)が入ることに戻ります。
関連する文型