ST1 私の国・町の行事
できること自分の国や町の行事について、聞かれたら中身を短く説明でき、相手の国の行事についても聞ける。
場面
公民館の国際交流イベントや、地域の日本語教室で、年上の日本人の住民に自分の国の行事を紹介する場面です。学習者は目上の初対面の人に話すので「です・ます」で話し、「〜と言われています」の受身は、話し手が誰かではなく「世の中で一般に言われていること」を表すと押さえます。教室では、学習者に国の行事の写真や絵を1枚ずつ用意させ、教師や他の国の学習者が日本人の住民の役をします。
- 地域の日本人:その写真、みんなぬれていますね。何のお祭りですか。
- 留学生:ソンクラーンです。
- 地域の日本人:ソンクラーンって何ですか。
- 留学生:ソンクラーンというのは、タイのお正月のことです。4月にあります。日本のお正月のような日で、家族が集まります。
- 地域の日本人:どうして水をかけているんですか。
- 留学生:水をかけると、悪いことが流れていくと言われています。
- 地域の日本人:へえ、楽しそうですね。
学習項目 1 Nって何ですか
意味・はたらき
聞いたことのない語や、意味がよく分からない語について、その中身を聞く話し言葉の言い方です。「って」は「というのは」をくだけた形にしたもので、相手が言った語をそのまま受けて聞き返します。ST1 では、日本人が学習者の国の行事の名前を聞いて聞き返すときにも、学習者が日本の行事の名前を聞いて聞き返すときにも使います。「です・ます」をつければ目上の人にも使えますが、改まった場では「Nというのは何ですか」のほうが落ち着きます。文法の用語では、「って」は話題を取り上げる話し言葉の形で、「というのは」「とは」が縮まったものにあたります。「〜は何ですか」が目の前の物や答えのある物を聞くのに対し、「〜って何ですか」は耳にした語の意味そのものを聞く、と分けて押さえます。
接続
N(聞き返したい語)+って何ですか(相手の言った語をそのまま入れる)
形
ソンクラーンって何ですか「お盆」って何ですかテトって何?(友達に)
導入
- 知らない名前を聞かせる教師が「来週、町で『お月見』の会がありますよ」と言い、学習者に知っているかどうか手を挙げさせる。知らない学習者に代わって教師が首をかしげ、「お月見って何ですか」と聞き返してみせる。板書は「[ ]って何ですか」の枠にし、枠に「お月見」「七夕」「節分」などのカードを差し替えて全員で言う。
板書案
[N]って 何ですか 〔赤〕って = というのは(話し言葉)
A:来週、町で お月見が ありますよ。
B:お月見って 何ですか。
〔青〕友達には:〜って何? / 改まった場:〜というのは何ですか
〔赤〕「って」のあとに「は」を付けない(って が「は」の役も持つ)
場面と発話(自作)
- 町の掲示板で「盆踊り」のポスターを見て、隣に住む日本人に聞く。すみません、盆踊りって何ですか。
- クラスメートが「来月はテトで国に帰る」と言ったので、聞き返す。テトって何?
- アルバイト先で、先輩が「来週は棚卸しだよ」と言ったが、意味が分からない。すみません、棚卸しって何ですか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が日本の行事や各国の行事の名前カードを読み上げ、学習者が「〜って何ですか」と聞き返す。次に、学習者が自分の国の行事の名前を一つずつ言い、隣の人が聞き返して、答える人は国の言葉のままでなく短い日本語で一言答える(答え方は次の「Nというのは〜」で整える)。
- 口頭教師が行事や生活の語のカードを読み上げ(お月見・七夕・節分・盆踊り・棚卸し・回覧板)、全体で「〜って何ですか」と聞き返す。次にカードを見せずに教師が「来週、〜がありますよ」と文の中で言い、学習者が語だけを拾って聞き返す。全体→列→個人の順で、「っ」の1拍を手拍子で入れさせる。
- ペアA は自分の国の行事の名前を1つ書いたカードを持ち、「来月、〜があるんです」と言う。B は「〜って何ですか」と聞き返し、A は短い日本語で一言だけ答える(「お正月です」「お祭りです」)。聞く相手のカードを「先生」「友達」に替えて、「って何?」「って何ですか」「というのは何ですか」を言い分けさせ、3組ごとに役を交替する。
- 産出「わからない言葉メモ」: 学習者がこの1週間にアルバイト先・テレビ・町の掲示などで聞いて分からなかった語を1つメモしてきて、クラスで「〜って何ですか」と聞く。分かる人か教師が答え、聞いた人は「ああ、〜のことですね」と受ける。教師は①「って」のあとに「は」が付いていないか ②「っ」の拍が落ちていないか ③聞く相手(教師役・友達役)に合った丁寧さか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*ソンクラーンっては何ですか」と「って」のあとに「は」を重ねる。「って」が「は」の役も持っていると、板書の「というのは」と並べて確かめる
- 「って」の小さい「っ」が落ちて「てなんですか」と聞こえる。手拍子で拍を数え、「っ」の1拍の間を入れて言わせる
- 受付の人や先生に改まって聞くときにも「〜って何?」と普通体のまま使う。誤りではないが、相手によって「〜って何ですか」「〜というのは何ですか」と言い分けることを、話し相手のカードを替えて練習する
既習の文型との違い
- 何/〜は何ですか(初級第1課)「これは何ですか」は目の前の物や答えのある物を聞く文で、「は」を使います。「お月見って何ですか」は相手が言った語の意味を聞く文で、話題の語をそのまま受けます。学習者は「*お月見っては何ですか」と、初級の「は」を残して重ねがちです。
- どういう意味ですか/〜という意味です(初中級第2課)どちらも分からない語を聞く言い方ですが、「どういう意味ですか」は看板の字や言葉の意味を聞くのに向き、答えは「〜という意味です」になります。「〜って何ですか」は物や行事そのものが何かを聞くので、答えは「〜というのは〜のことです」で説明します。行事の名前には「って何ですか」のほうが自然です。
関連する文型
学習項目 2 Nというのは〜
意味・はたらき
相手が知らない語を取り上げて、それが何かを説明する言い方です。「Nというのは、〜のことです」「Nというのは、〜日です/お祭りです」のように、最後を「〜のことです」「〜という意味です」などで結ぶと説明の形が整います。「Nって」より改まっていて、発表や説明に向きます。ST1 では、行事の名前を出したあと、何の日か・いつか・何をするかを順に足していく、説明の最初の一文になります。文法の用語では、引用の「という」に名詞の代わりをする「の」と「は」が付いて、語そのものを話題として取り立てる形で、答えの文は語の定義の文になります。
接続
N+というのは、〜のことです/〜(N)です/〜という意味です
形
ソンクラーンというのは、タイのお正月のことですテトというのは、ベトナムのお正月です「ディワリ」というのは、「光の祭り」という意味です
導入
- 質問に答える形を作る前の項目の「お月見って何ですか」を学習者に言わせ、教師が「お月見というのは、秋に月を見る行事のことです」と答えてみせる。板書は「[行事]というのは、[ ]のことです」の2段にし、下の枠に「何の日か」を入れる。続けて「9月か10月にあります」「団子を食べます」と短い文を足して、説明が1文で終わらないことを見せる。
板書案
[N]というのは、[ ]のことです
お月見というのは、秋に 月を 見る 行事の ことです。
→ 9月か10月に あります。団子を 食べます。(短い文を足す)
〔赤〕名詞+のこと(「の」を落とさない)
〔青〕言うとき:とゆうのは / 書くとき:というのは
場面と発話(自作)
- 日本語教室で、ボランティアの日本人に自分の国の行事を聞かれる。チュソクというのは、韓国の秋の行事のことです。家族が集まって、食事をします。
- アルバイト先で、店長に休みの理由を説明する。テトというのは、ベトナムのお正月です。その週は国に帰りたいんです。
- 日本語教室の発表で、自分の町のお祭りの名前を最初に説明する。ローイクラトンというのは、花とろうそくで作った小さい舟を川に流すお祭りのことです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、行事の名前と説明の語(「お正月」「秋の行事」「光の祭り」など)のカードを組み合わせて「〜というのは、〜のことです」を言わせる。慣れたら、聞く役が「〜って何ですか」と聞き、答える役が「〜というのは〜」+時期+すること、の3文で答えるやり取りにする。
- 口頭行事の名前と説明の語のカードを組み合わせて言わせる(お月見+秋に月を見る行事/七夕+願いを書く日/節分+豆をまく日/テト+ベトナムのお正月)。教師が「お月見って何ですか」と聞き、全体で「お月見というのは、〜のことです」と答える。慣れたら説明の語のカードを伏せ、個人が自分の言葉で答える。
- ペアA は自分の国の行事のメモ(名前・何の日か・いつか・何をするか)を持ち、B が「〜って何ですか」と聞く。A は「〜というのは〜のことです」+時期+することの3文で答え、B は聞き取った時期とすることをメモして言い返す。メモを交換して役を替える。
- 産出「行事の名前辞典」: 学習者が自分の国や町の行事を1つ選び、カードの表に名前、裏に「〜というのは〜のことです」と2〜3文の説明を書く。カードを壁に貼り、ほかの学習者は表だけを見て「〜って何ですか」と書いた本人に聞き、本人は裏を見ずに口で答える。教師は①名詞のあとの「のこと」②1文目で一度結んでいるか ③時期・することの文が短く切れているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*タイのお正月ことです」と「の」を落とす。板書の「[ ]のこと」の「の」を赤で書き、名詞のあとは「のこと」とまとめて言わせる
- 書くときに「ソンクラーンとゆうのは」と書く。言うときは「ゆう」と聞こえても、書くときは「いう」だと、板書で読みと書き方を並べる
- 説明を「〜のことです」で一度結ばずに、読点で長く続けて相手が分からなくなる。まず「〜のことです」で1文を終え、それから時期やすることを短い文で足す、と順番を決めておく
既習の文型との違い
- NというN(初級第13課)「ソンクラーンというお祭りがあります」は、相手が知らない名前を出して、それが何の種類かを添える言い方で、文の途中に入ります。「ソンクラーンというのは〜」は、その名前を話題にして中身を説明する文の頭です。学習者は聞かれたときに「ソンクラーンというお祭りです」と答えて終わりがちなので、聞かれたら「というのは」で中身まで言う、と分けます。
- どういう意味ですか/〜という意味です(初中級第2課)「〜という意味です」は語の意味を言い換えるだけで、「ディワリというのは、光の祭りという意味です」のように「というのは」と組み合わせることもできます。行事の説明では、意味の言い換えのあとに、何の日か・いつか・何をするかを足さないと相手には中身が伝わりません。
関連する文型
学習項目 3 〜と言われています
意味・はたらき
昔から言い伝えられていることや、多くの人がそう考えていることを、話し手自身の意見としてではなく紹介する言い方です。「言う」の受身ですが、誰が言ったかは問題にせず「世の中で一般に言われている」ことを表します。ニュースや人から聞いた話など、もとがはっきりしていることが多い「〜そうです(伝聞)」や、ある人の言葉を伝える「〜と言っていました」とは、話のもとが特定の人や記事ではなく世の中一般である点が違います。ST1 では、行事の意味や縁起の言い伝えを説明するのに使います。文法の用語では、動作をする人を言わない受身で、言う人が世の中の多くの人なので「〜に」を出さずに使います。話し手が自分で言い切るのを避け、一般に通っている話として伝える働きもあります。
接続
普通形+と言われています(ナA・N は「〜だと言われています」が基本。N のときは「だ」を省くこともある)
形
水をかけると、悪いことが流れていくと言われていますこの日に豆を食べると、元気になると言われていますこのお祭りは、町でいちばん古いと言われています
導入
- 日本の言い伝えから入る七夕の短冊の絵を見せ、教師が「七夕に願いを書くと、かなうと言われています」と言う。「誰が言いましたか」と聞いて、学習者が答えに困るのを待ち、「誰か一人ではなく、昔からみんながそう言っている」と確かめる。板書は「[普通形]と言われています」にし、「言う → 言われる」の受身の形を小さく横に書く。
板書案
[普通形]と 言われて います 〔赤〕言う → 言われる(受身)
七夕に 願いを 書くと、かなうと 言われて います。
〔青〕話のもと:みんな・昔から = 〜と言われています
〔青〕話のもと:一人 = 〜と言っていました / 〜そうです
〔赤〕主語は 行事・物(「私は〜と言われています」=人から言われる)
場面と発話(自作)
- 地域の交流会で、自分の国のお正月の食べ物について聞かれる。この料理を食べると、お金が入ってくると言われています。
- 日本人の友達に、節分の豆まきの意味を教えてもらう。豆をまくと、悪いものが家から出ていくと言われているんだよ。
- ホームステイの家族に、国の結婚式の習慣を聞かれる。結婚式の日に雨が降ると、いいことがあると言われています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、行事の絵カードと「〜と、〜」の言い伝えの語(「赤い服を着る → いいことがある」など)を出し、「〜と言われています」の文にする。次に、学習者が自分の国の行事の言い伝えを一つ言い、聞く役が「へえ、本当ですか」と返すやり取りにする。言い伝えが思いつかない学習者には「この行事はいつから?」と聞いて「〜年前からあると言われています」を言わせてもよい。
- 口頭教師が行事の絵カードと言い伝えの語のペアを出す(節分+豆を食べる→元気になる/お正月+赤い服を着る→いいことがある/七夕+願いを書く→かなう/ソンクラーン+水をかける→悪いことが流れる)。全体で「〜と、〜と言われています」を言い、次に「言われています」だけを教師が言って前半を個人に作らせる。「言わ+れる」の形は「書く→書かれる」と並べて口に慣らす。
- ペアA は国の行事の言い伝えを1つ言い、B は「へえ、本当ですか」「どうしてですか」のどちらかで返す。A は「本当かどうか分かりませんが、昔からそう言われています」で受ける。次に教師が配る「誰が言ったか」のカード(祖母・みんな・テレビのニュース)を見て、「〜と言っていました」「〜と言われています」「〜そうです」を選んで言い分け、役を交替する。
- 産出「言い伝え交換会」: 学習者が自分の国の行事か食べ物の言い伝えを2つ用意し、教室を歩いて3人と交換する。聞いた言い伝えを1つ選び、最後に「〜さんの国では、〜と言われているそうです」とクラスに紹介する。教師は①「言わ+れる」の受身の形 ②話のもとが一人かみんなかに合った形か ③主語が行事や物になっているか、を見る。
つまずきと手当て
- 受身を「*と言わられています」「*と言いられています」と作る。「言う」は1グループなので「言わ+れる」になると、「書く → 書かれる」と並べて確かめる
- 言い伝えを「〜と言っています」で言い、ある人がいま言っている話に聞こえる。誤りではないが意味が変わるので、話のもとが一人か「みんな・昔から」かを板書の2列で分ける
- 「私は〜と言われています」と主語に自分を入れ、「人から〜と言われる」の意味になってしまう。行事の説明では主語は行事や物にする、とカードで確かめる
既習の文型との違い
- 〜そうです(伝聞)(初級第15課)「〜そうです」はニュースや人から聞いた話を伝える形で、話のもとがはっきりしていることが多いです。「〜と言われています」は昔からみんなが言っていることで、もとの人がはっきりしません。行事の言い伝えを「雨が降ると、いいことがあるそうです」と言うと、誰かに聞いたばかりの話に聞こえます。
- 〜と言っていました(初中級第11課)「〜と言っていました」はある一人の人が言った言葉を伝える形です。「祖母が、水をかけると悪いことが流れていくと言っていました」は祖母の言葉、「〜と言われています」は世の中で言われていることになります。「*言わられています」と受身を作り違える学習者には、「言っていました」と並べて「言わ+れる」を確かめます。
関連する文型
学習項目 4 NのようなN
意味・はたらき
相手がよく知っている物を例に出して、話している物がどんなものかを伝える言い方です。「日本のお盆のような行事です」と言えば、相手は知っている行事から中身を想像できます。前の N が例やたとえ、後ろの N が説明したい物の種類になります。くだけた会話では「NみたいなN」とも言います。ST1 では、行事の説明の最後に、日本の似た行事を添えるのに使います。文法の用語では、「ようだ」の比況(似ているものにたとえる)の用法が名詞の前で「ような」の形になったもので、連体修飾にあたります。「ケーキのような甘い物が好きです」のように例を挙げる用法(例示)もありますが、ST1 の説明は、知らない行事を知っている行事にたとえる比況の使い方です。
接続
N1(例・たとえ)+のような+N2(説明したい物の種類)
形
日本のお正月のような日お盆のような行事花火大会のようなお祭り
導入
- 日本の行事と並べる黒板の左に学習者の国の行事の写真、右に日本の行事の写真を貼る。教師が「チュソクは、日本のお盆のような行事です。家族が集まって、先祖のことを思います」と言い、2枚を線で結ぶ。板書は「[日本の行事]のような[行事・日・お祭り]です」にする。
板書案
[N1(たとえ)]の ような [N2(種類)]です
チュソクは、日本の お盆の ような 行事です。
〔絵〕左:国の行事の写真 ―線― 右:日本の行事の写真
〔赤〕Nの+ような+N / Nの+ように+V
〔青〕友達には:お盆みたいな 行事
場面と発話(自作)
- 交流会で、自分の国の大きなお祭りを紹介する。日本の花火大会のようなお祭りで、町中の人が集まります。
- ホームステイの家族に、国でよく食べるお菓子を説明する。日本のおまんじゅうのようなお菓子です。
- 日本人の同僚に、国のお正月によく食べる料理を説明する。日本のおせち料理のような料理で、家族みんなで作ります。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、学習者の国の行事と日本の行事の写真を1枚ずつ組み合わせ、「〜は、日本の〜のような〜です」を言わせる。次に、ST1 のやり取りで「Nというのは〜」の説明のあとに、この文を一つ足して言わせる。
- 口頭学習者の国の行事と日本の行事の写真を1枚ずつ組み合わせて見せる(チュソク+お盆/テト+お正月/ソンクラーン+夏祭りの水かけ/ディワリ+花火大会)。全体で「〜は、日本の〜のような〜です」を言い、後ろの N(行事・日・お祭り)を替えるカードで代入する。次に食べ物や物(おまんじゅう・浴衣)でも言わせ、行事以外にも使えることを見せる。
- ペアA は自分の国の行事を「〜というのは〜のことです」で説明し、B は「それは、日本の〜のような行事ですか」と聞き返して確かめる。A は「はい、〜のような行事です」か「いいえ、〜とは少し違います」で答える。日本の行事の写真カードを机に並べておき、B はそこから選ぶ。
- 産出「似ている行事さがし」: 学習者が自分の国の行事を、名前を出さずに3文で説明し、聞く側は机の上の日本の行事カードから似ているものを1枚取って「〜のようなお祭りですか」と聞く。当たったら説明した人が名前を明かし、「日本の〜のような〜です」で締める。教師は①「のような」の「の」②「ような」と「ように」の使い分け ③後ろの N が行事・日・お祭りの種類になっているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*お正月ようなお祭り」と「の」を落とす。板書の「のような」をひとかたまりで書き、名詞のあとは必ず「の」と確かめる
- 「*お正月のようなのお祭り」と「な」のあとにも「の」を入れる。「ような」は後ろの名詞に直接つく、とカードを並べて見せる
- 形の似た「〜のように」と混ぜて「*お正月のように行事です」と言う。名詞の前は「ような」、動詞の前は「ように」と、「お正月のように家族が集まります」の文と並べて分ける
既習の文型との違い
- 〜みたいです(比況)(初中級第10課)「〜みたいです」は文の終わりで「まるで〜のようだ」と言う形で、名詞の前では「お盆みたいな行事」になります。「〜のような」と意味は近いですが、くだけた話し言葉です。交流会の紹介のような改まった場では「のような」を使うと、言い分けておきます。
- NというN(初級第13課)「チュソクという行事」は名前を紹介するだけで、どんな行事かは伝わりません。「お盆のような行事」は、相手が知っている物にたとえて中身を伝えます。二つを続けて「チュソクという、お盆のような行事があります」と言えると、紹介の一文がまとまります。
関連する文型
ST2 贈り物の習慣
できること相手の好みや国の習慣を考えながら、プレゼントに何を選ぶか人と相談できる。
場面
ホームステイ先の小学生の子どもの誕生日が近く、留学生がアルバイト先の日本人の先輩(年上)にプレゼントを相談する場面です。先輩は後輩の留学生に普通体で話し、留学生は先輩に「です・ます」で話します。「〜かな」は迷いをひとりごとのように口に出す言い方なので、丁寧に話している相手の前でも使えます。あげる・もらう・くれるの向き(誰から誰へか)も、板書で矢印にして確かめておきます。
- 留学生:来週、ホームステイの家の子どもの誕生日なんです。何をあげようかな。
- 先輩:その子、何かほしがっている?
- 留学生:ええと、サッカーボールをほしがっていました。
- 先輩:じゃあ、サッカーボールなんかどう?
- 留学生:いいですね。時計もいいかなと思いましたが、やめます。
- 先輩:どうして?
- 留学生:私の国では、時計をあげるのはよくないと言われているからです。
- 先輩:へえ、知らなかった。
学習項目 1 〜かな/Vようかな
意味・はたらき
決められないことや分からないことを、ひとりごとのように口に出す言い方です。「何がいいかな」は迷っている気持ち、「花にしようかな」は自分がこれからすることを考えている途中の気持ちを表します。友達との会話で使うくだけた言い方ですが、相手に直接質問しているわけではないので、丁寧に話している相手の前で迷いを口にするときにも出てきます。ST2 では、プレゼントを選ぶ相談で、迷っていることを相手に見せて、案を出してもらうきっかけになります。文法の用語では、終助詞「か」に「な」が重なった形で、聞き手に答えを求めない疑い(ひとりごとの疑問)を表すモダリティの形です。意向形に付くと、まだ決めていない自分の意志を表し、「Vようと思っています」のように決めたことを相手に伝える形とは違います。
接続
普通形+かな(ナA・N は「だ」を取る:好きかな・雨かな)/意向形+かな(買おうかな・しようかな)
形
何がいいかなこれ、好きかな花を買おうかなどれにしようかな
導入
- 教師が店の前で迷ってみせる教師がケーキ・花・本の絵カードを手に持ち、「友達の誕生日……何がいいかな」「ケーキにしようかな。でも、甘いもの、好きかな」とひとりごとのように言ってみせる。板書は「[普通形]かな」と「[意向形]かな」の2段にし、上は分からないこと、下は自分がこれからすること、と横に書く。意向形の作り方(第3課)をここで一度確かめる。
板書案
[普通形]かな …分からないこと(好きかな・雨かな)
[意向形]かな …自分がこれからすること(買おうかな)
友達の 誕生日……何が いいかな。ケーキに しようかな。
〔赤〕ナA・N は「だ」を取る:好き(だ)かな → 好きかな
〔青〕目上の人に聞くとき:これで いいでしょうか
場面と発話(自作)
- スーパーで、ホームステイの家族へのおみやげを選んでいる。どれにしようかな。これ、みんな好きかな。
- 週末の予定がまだ決まらず、友達に話す。土曜日、町のお祭りに行こうかな。
- レストランでメニューを見ながら、一緒に来た友達の前で迷う。カレーにしようかな。ラーメンもおいしそうだな。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、物の絵カードを見せて「〜にしようかな」、相手の人の絵カードを見せて「〜、好きかな」を言わせる。次に、ペアの片方がプレゼントの絵を何枚か持って迷う役になり、「〜かな」を二つ以上言ってから相手に意見を求めるやり取りにする。
- 口頭教師が物の絵カード(ケーキ・花・本・マフラー・お菓子)を見せたら「〜にしようかな」、相手の人の絵カード(子ども・おばあさん・友達)を見せたら「〜、好きかな」「〜、喜ぶかな」と言わせる。動詞のカード(買う・行く・作る)では「買おうかな」と意向形を作らせ、全体→個人で回す。ナ形容詞・名詞のカードを混ぜて「だ」を取る形を確かめる。
- ペアA は買い物の場面カード(友達の誕生日・ホームステイの家族へのおみやげ・先輩の送別会)を1枚引き、「〜かな」を2つ以上言って迷ってみせる。B はそれを聞いて「どうしたの?」と声をかけ、A が何に迷っているかを言い当てる。カード3枚ごとに役を替える。
- 産出「ひとりごと実況」: 学習者に店のチラシか通販の画面を印刷した紙を1枚ずつ配り、贈る相手を自分で決めてから、選ぶまでの迷いを30秒声に出して言わせる(「これ、好きかな」「こっちにしようかな」)。聞いている人は最後に何を選んだかを当てる。教師は①意向形の作り方 ②分からないこと(普通形+かな)と自分がすること(意向形+かな)の使い分け ③「だ」が残っていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*好きだかな」「*雨だかな」と「だ」を残す。ナ形容詞と名詞は「だ」を取ってから「かな」と、板書の普通形の「だ」に線を引いて見せる
- 自分がすることを迷っているときに「花を買うかな」と言う。辞書形+かなも自分のことに使える(「そろそろ帰るかな」)が、迷いを言うなら「買おうかな」と意向形にするのがふつう、と2段の板書で分ける
- 先生に答えを求めて「先生、これでいいかな」と聞く。ひとりごとの言い方なので、目上の人に聞くなら「これでいいでしょうか」「これでいいですか」にする、と話し相手のカードで言い分けさせる
既習の文型との違い
- 意向形/V(よ)うと思っています(初中級第3課)「花を買おうと思っています」は、決めたことを相手に伝える言い方です。「花を買おうかな」はまだ決めていない迷いを口に出すだけなので、相手は案を出したり意見を言ったりできます。プレゼントの相談で「〜と思っています」を使うと、もう決まっていて相談になりません。
- 〜んですか/〈疑問詞〉〜んですか/〜んです(初中級第3課)「何をあげるんですか」は相手に答えを求める質問です。「何をあげようかな」は自分に向けた問いで、答えはいりません。目上の人に「これでいいかな」と聞くと答えを求めたことになり、くだけすぎて聞こえるので、質問なら「いいでしょうか」に替えます。
関連する文型
学習項目 2 Nなんかどうですか
意味・はたらき
いくつかある中から一つを例として出し、軽く勧める言い方です。「なんか」は「など」の話し言葉で、「これに決めてください」と押しつけず、ほかにも案がある感じを残します。改まった場では「Nなどいかがですか」と言います。ST2 では、プレゼントに迷っている人に、案を出すのに使います。文法の用語では、「なんか」は例を挙げる取り立て助詞「など」の話し言葉の形で、勧める文では一つを例として出して言い切りを避け、相手が断りやすいようにする働きがあります。
接続
N+なんかどうですか(「が」「を」は入れない。友達には「Nなんかどう?」)
形
ハンカチなんかどうですかお菓子なんかどう?Nなどいかがですか(改まった場)
導入
- 迷っている人に案を出す前の項目で教師が「何がいいかな」と迷ってみせたあと、学習者に「ケーキなんかどうですか」と言わせる。教師が「いいですね」「ほかには?」と返して、案を何度も出させる。板書は「[物]なんかどうですか」にし、初級第6課で習った「〜はどうですか」と並べて、「なんか」のほうが「例えば」の気持ちが強いと書き添える。
板書案
[N]なんか どうですか 〔赤〕なんか = など(話し言葉)
A:何が いいかな。 B:花なんか どうですか。
〔青〕花〔を〕 → 花なんか(「を」「が」は消える)
〔赤〕友達:〜なんかどう? / 改まった場:〜などいかがですか
〔青〕〜はどうですか(初級)=一つだけ / 〜なんかどうですか=ほかにも案がある
場面と発話(自作)
- 同じ寮の友達が、国の家族へのおみやげを迷っている。日本のお茶なんかどう? 軽いし、みんな飲めるよ。
- アルバイト先で、退職する店長へのプレゼントを先輩と相談する。花なんかどうですか。
- 日本語教室の先生に、交流会に何を持ってきたらいいか聞かれる。国のお菓子なんかどうですか。みんなで食べられますから。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「〜の誕生日です。何がいいかな」と相手の人の絵(子ども・お年寄り・友達など)を見せ、学習者が物のカードから選んで「〜なんかどうですか」と言う。次に、ペアで迷う役と案を出す役になり、案を二つ出して理由を一つ添えるやり取りにする。
- 口頭教師が「〜の誕生日です。何がいいかな」と贈る相手の絵(子ども・おばあさん・同じクラスの友達・先輩)を見せ、学習者が物のカード(ボール・ひざかけ・ノート・ハンカチ・お菓子)から選んで「〜なんかどうですか」と言う。全体→個人のあと、相手役を友達にして「〜なんかどう?」、先生にして「〜などいかがですか」に言い換える。
- ペアA は贈る相手のカードを持って「何がいいかな」と迷う役、B は案を出す役。B は案を2つ出して、それぞれに理由を1つ添える(「〜なんかどうですか。軽いですから」)。A は1つ目を「うーん」で保留し、2つ目に「いいですね」と答える。3回で役を交替する。
- 産出「プレゼント相談室」: 学習者が自分の本当の家族や友達を一人決め、その人の好きなことを2つ書いたカードを作る。相談室役の学習者がカードを読み、「〜なんかどうですか」で案を3つ出し、カードの持ち主がどれにするかを理由つきで決める。教師は①「なんか」の前の助詞が消えているか ②相手(友達役・先生役)に合った丁寧さか ③案に理由が添えられているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*花をなんかどうですか」と助詞を残す。「なんか」が「を」の場所に入ると、板書で「を」を消して「なんか」に書き替えて見せる
- 「なんか」には「ケーキなんかいらない」のように相手の物を軽く見る使い方もあると知って、勧める場面でも使うのをこわがる。「どうですか」と組めば勧める意味になる、と両方の文を並べて安心させる
- 目上の人への贈り物を目上の人本人と相談するときにも「なんかどう?」と普通体のまま言う。相手によって「なんかどうですか」「などいかがですか」と言い分ける
既習の文型との違い
- 〜はどうですか(提案)(初級第6課)「花はどうですか」は一つの案をそのまま差し出す言い方です。「花なんかどうですか」は「例えば」の気持ちが加わり、ほかの案もあることを残すので、迷っている相手に軽く勧めるのに向きます。学習者は二つを混ぜて「*花はなんかどうですか」と言いがちなので、「は」の場所に「なんか」が入ると板書で示します。
- Vたらどうですか(初中級第12課)「Vたらどうですか」はすることを勧める言い方で、相手の行動について言います。「Nなんかどうですか」は物や案を勧める言い方です。プレゼントを選ぶ場面では「ボールなんかどうですか」、選び方を勧めるなら「本人に聞いてみたらどうですか」と分けます。
関連する文型
学習項目 3 Aがっています
意味・はたらき
ほかの人の気持ちや望みを、外から見た様子として伝える言い方です。日本語では「ほしい」「寂しい」「〜たい」のような気持ちの言葉を、ほかの人について「〜はほしいです」とそのまま言い切ることはしないので、「ほしがっています」「行きたがっています」のように「がる」をつけます。ST2 では、プレゼントを相談するときに、贈る相手が何をほしがっているかを伝えるのに使います。文法の用語では、感情・感覚・願望を表す形容詞や「〜たい」は、話し手自身のことは言い切れてもほかの人のことは言い切れない(人称の制限)ので、接尾辞「がる」を付けて外から見た様子を表す動詞にします。「がっています」の「ている」は、いまその様子が続いていることを表します。
接続
イA(「い」を取る)+がっています/ナA(「な」を取る)+がっています/Vたい → Vたがっています(ほしい・Vたい の物は「を」で言う)
形
サッカーボールをほしがっています日本に行きたがっています寂しがっています嫌がっています
導入
- 自分の気持ちと人の気持ちを並べる教師が自分の胸を指して「私は新しいかばんがほしいです」と言い、次に子どもの絵を指して「この子はゲームをほしがっています」と言う。学習者に「この子の気持ち、本当に分かりますか」と聞き、分からないから「〜がっています」と様子で言う、と確かめる。板書は「私は Nが ほしいです」「[人]は Nを ほしがっています」の2行にし、「が」と「を」の違いを赤で示す。
板書案
私は Nが ほしいです (自分の気持ち)
[人]は Nを ほしがって います (外から見た様子)
〔赤〕が → を (がる が付くと「を」)
〔青〕ほしい → ほし+がる / 行きたい → 行きた+がる / 寂しい → 寂し+がる
妹は 日本の 夏祭りを 見たがって います。
〔青〕目上の人:〜が ほしいと 言って いました
場面と発話(自作)
- ホームステイの家の子どもの誕生日について、アルバイト先の先輩に話す。サッカーボールをほしがっていました。
- 国の弟が日本に遊びに来たいと言っていたことを、友達に話す。弟が、日本の夏祭りを見たがっています。
- 日本人の友達に、国にいる母のことを話す。私が日本にいるので、母は寂しがっています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、人物の絵カード(子ども・妹・友達)と物や動作のカードを組み合わせ、「〜は〜をほしがっています」「〜は〜たがっています」を言わせる。次に、ペアで「誰に何をあげたいか」を相談し、贈る相手が何をほしがっているかを一つ入れて話す。
- 口頭人物の絵カード(子ども・妹・祖母・同じクラスの友達)と物や動作のカード(ゲーム・自転車・日本に来る・浴衣を着る)を組み合わせ、「〜は〜をほしがっています」「〜は〜たがっています」を言わせる。気持ちのカード(寂しい・怖い・嫌)も混ぜて「寂しがっています」を作らせる。教師が妹の絵カードを持って「わたしはかばんがほしいです」と妹のせりふを言ったら、学習者が「妹さんはかばんをほしがっています」と言い換える練習で、が→を を口に慣らす(目上の人に使うときの注意は板書の最後の行で添える)。
- ペアA は家族の写真か絵を見せながら、その人がほしい物や行きたい所を1つ言う(「弟は新しいゲームをほしがっています」)。B は「じゃあ、〜なんかどうですか」と案を出し、A は「〜からです」で賛成か反対の理由を言う。ST2 の前の項目とつなげて、3往復で役を替える。
- 産出「ほしいものリスト調査」: 学習者がペアの相手に「家族やルームメートで、いま何かほしがっている人はいますか」とインタビューし、2人分をメモする。最後にクラスに「〜さんの妹さんは〜をほしがっています」と報告する。教師は①ほかの人のことを「ほしいです」と言い切っていないか ②がる のあとの助詞が「を」になっているか ③イ形容詞・「〜たい」から「がる」への形の作り方、を見る。
つまずきと手当て
- ほかの人のことを「*妹はかばんがほしいです」と言い切る。ほかの人の気持ちは外から見た形で言う、と板書の2行を指して「ほしがっています」に言い直させる
- 「*妹はかばんがほしがっています」と「が」のまま「がる」をつける。「がる」がつくと物は「を」になる、と赤の助詞を指して確かめる
- 先生や上司のような目上の人について「先生が〜をほしがっています」と言う。誤りではないが子どもっぽく聞こえることがあるので、目上の人のことは「〜がほしいとおっしゃっていました」「〜がほしいと言っていました」のように、聞いたことを伝える形にするのが無難
既習の文型との違い
- Nがほしいです/Vたいです(初級第5課)「ほしいです」「Vたいです」は話し手自身の気持ちを言う形で、物は「が」で言います。ほかの人のことは「ほしがっています」「Vたがっています」にし、物は「を」になります。「*妹はかばんがほしがっています」は、初級の「が」をそのまま持ち込んだ誤りです。
- Aそうです(様態)(初中級第2課)「寂しそうです」は見た目からの話し手の推測で、一度見ただけでも言えます。「寂しがっています」はその人が実際に態度や言葉で気持ちを表していることを伝えます。電話で母の声を聞いたなら「寂しそうでした」、母が何度も「早く帰ってきて」と言うなら「寂しがっています」と、場面で分けます。
関連する文型
学習項目 4 〜からです
意味・はたらき
先に言ったことの理由を、あとから文の終わりで説明する言い方です。「どうしてですか」と聞かれて「〜からです」と答える形と、「〜のは、〜からです」と結果を先に言って理由を後ろに置く形があります。理由が文の中心になるので、相手が理由を知りたいときにはっきり伝わります。ST2 では、プレゼントに選んだ理由や、自分の国でその物をあげない理由を説明するのに使います。文法の用語では、「〜のは〜からです」は理由を文の焦点に置く分裂文(強調構文)の形で、結果を「のは」で先に出し、新しく伝えたい理由を後ろに置きます。「〜ので」はこの形で文を結べないので、文の終わりで理由を言い切るのは「からです」になります。
接続
普通形+からです(ナA・N は「〜だからです」)
形
時計をあげるのはよくないと言われているからですサッカーが好きだからです白い花をあげないのは、お葬式の花だからです
導入
- 選んだ理由を聞く前の項目のやり取りで学習者が「ボールなんかどうですか」と言ったら、教師が「どうしてですか」と聞き返し、「その子はサッカーが好きだからです」と答えの形を言ってみせる。板書は「どうしてですか。——[普通形]からです」と「[結果]のは、[理由]からです」の2つにし、初級で習った「〜から、〜」(理由が前)と矢印の向きが逆になることを並べて見せる。
板書案
どうしてですか。——[普通形]からです。
[結果]のは、[理由]からです。
白い 花を あげないのは、お葬式の 花だからです。
〔赤〕ナA・N:〜だからです 〔青〕「から」の前は普通形(高いです → 高い)
〔矢印〕〜から、〜(理由 → 結果) / 〜のは、〜からです(結果 → 理由)
場面と発話(自作)
- 日本人の友達に、国では贈り物にしない物があると話したら、理由を聞かれた。その花は、お葬式で使う花だからです。
- アルバイト先の先輩に、どうして毎年同じお菓子をおみやげにするのか聞かれる。家族がこのお菓子をいちばん喜ぶからです。
- 交流会で、どうしてその行事がいちばん好きか聞かれる。家族みんなが集まって、一緒にごはんを食べるからです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、教師が「〜をあげます。どうしてですか」とカードで聞き、学習者が理由の語(好き・使える・軽い など)から「〜からです」で答える。次に、各国で贈り物にしない物を一人一つ出し、聞く役が「どうしてですか」と聞いて「〜からです」で答えるやり取りにする。答えに「〜と言われているからです」を使ってもよい、と ST1 の項目とつなぐ。
- 口頭教師が「〜をあげます。どうしてですか」と物のカードを出して聞き(ボール+サッカーが好き/ひざかけ+冬は寒い/お菓子+みんなで食べられる/辞書+日本語を勉強している)、全体で「〜からです」と答える。次に「〜をあげないのは」と結果を教師が言い、学習者が「〜からです」で理由をつなぐ。ナ形容詞・名詞の理由カードを混ぜて「だからです」を確かめる。
- ペアA はプレゼントの案を1つ言い、B は必ず「どうしてですか」と聞く。A は「〜からです」で答え、B はもう一度「ほかに理由はありますか」と聞いて、A は「それに、〜からです」と2つ目を足す。次に、A が国で贈り物にしない物を言い、B が理由を聞くやり取りにして役を替える。
- 産出「贈り物タブー会議」: 学習者が自分の国で贈り物にしない物と、贈るとよろこばれる物を1つずつ用意し、グループで発表する。聞く側は一人に一回「どうしてですか」と聞き、発表者は「〜のは、〜からです」か「〜と言われているからです」で答える。最後にグループで、国によって違った物を一つ選んで報告する。教師は①「から」の前が普通形か ②ナ形容詞・名詞で「だ」が落ちていないか ③習慣を事実と言い切らず「と言われている」を使えているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*好きからです」「*お葬式の花からです」と「だ」を落とす。ナ形容詞と名詞は「だからです」と、板書の普通形の「だ」を残して見せる
- 「*高いですからです」と「です」を二つ重ねる。「から」の前は普通形、と枠の中を普通形のカードだけにして練習する
- 「〜ので」と混ぜて「*好きなのでです」と言う。文の終わりで理由を言うのは「からです」だけ、と「〜ので、〜」(第1課)の文と並べて確かめる
既習の文型との違い
- どうして/〜から(初級第5課)初級の「〜から、〜」は理由を前に置いて結果を後ろで言う形です。この課の「〜からです」は、聞かれた理由を文の終わりで答えたり、「〜のは」で結果を先に出して理由を後ろに回したりします。初級の形に慣れた学習者は、「〜のは」で始めたのに理由のあとで文を終えられず、もう一度結果を言い直してしまうので、矢印の向きを板書で比べます。
- 〜ので、〜(初中級第1課)「〜ので」は理由と結果を一つの文でやわらかくつなぐ形で、文の終わりには来ません。「*好きなのでです」は、「からです」の位置に「ので」を入れた誤りです。お願いや断りの理由には「〜ので」、聞かれた理由をはっきり答えるには「〜からです」と使い分けます。
関連する文型