アルバイト先で、先輩から店のルールを聞いて後輩に伝え、忙しい時間には仲間や客に短く声をかけて、気持ちよく一緒に働けるようになる課です。ST1 は先輩と新人のやり取りで、決まりを伝える「〜ことになっています」、理由をそえる「〜ように」、条件を言う「〜ば」、心がけを頼む「〜ようにしてください」を使い、ST2 は仕事中の声かけで、客への「おVください」と、仲間どうしの「落ちそう」「開けておいて」「洗ってしまうね」「休憩しよう」が中心になります。第7・8課の敬語と授受で整理した上下・内外の関係をそのまま職場に当てはめ、同じ店の中でも、店長・先輩・仲間・客で話し方が変わることを意識させます。「Vておきます」「Vてしまいます」「意向形」「〜そうです」など既習の形が新しい意味で出てくるので、前の意味と並べて板書すると混乱が少なくなります。
ST1 アルバイト先のルール
できること先輩から職場の決まりを聞いて確かめたり、新しく入った人に決まりとその理由を説明したりできる。
場面
アルバイトを始めたばかりの留学生(後輩)が、同じ店で長く働いている先輩から店のルールを聞く場面です。先輩から後輩へは「〜ようにしてください」でよく、後輩から先輩へは「〜ばいいですか」「〜ことになっていますか」とていねいに聞くという上下の向きを先に確かめます。教室では店のルールを○×で書いたカードを先輩役に持たせて新人役が質問し、後半は役を替えて、新人だった学習者が次に入った人に説明します。
- 先輩:この店では、仕事の前に必ず手を洗うことになっています。
- 留学生:はい。スマホはどうすればいいですか。
- 先輩:仕事中は使わないことになっているので、ロッカーに入れておいてください。
- 留学生:わかりました。
- 先輩:それから、お客様によく聞こえるように、大きい声であいさつしてください。
- 留学生:はい。わからないことがあれば、誰に聞けばいいですか。
- 先輩:わたしか店長に聞いてください。あと、時間に遅れないようにしてくださいね。
- 留学生:はい、気をつけます。
学習項目 1 Vることになっています/Vないことになっています(規則)
意味・はたらき
職場や学校など、その集団で決まっていることを伝える形です。話し手が自分で決めたことではなく、「ここではそうする決まりだ」と説明するので、先輩が新しく入った人にルールを教えるときによく合います。「Vなければなりません」が相手の義務を強く言うのに対し、「〜ことになっています」は決まりそのものを説明する言い方なので、言われた側も受け取りやすくなります。
接続
V辞書形/Vナイ形+ことになっています(話すときは「〜ことになってます」とも言う)
形
仕事の前に手を洗うことになっています仕事中はスマホを使わないことになっています店の中では制服を着ることになっています休むときは、店長に電話することになっていますか
導入
- 店のルールのポスターを見せる手を洗う絵・スマホに×の絵・制服の絵を並べた「店のルール」のポスターを自作して貼り、教師が先輩役で「この店では、仕事の前に手を洗うことになっています」「仕事中はスマホを使わないことになっています」と言う。学習者に「これは誰が決めましたか」と聞き、店の決まりだと確かめる。板書は「[この店]では V辞書形/Vない+ことになっています」。
板書案
[この店]では V辞書形/Vない + ことになっています
仕事の前に 手を 洗う ことに なって います。
仕事中は スマホを 使わない ことに なって います。
〔赤〕だれが決めた? → 店(わたしではない) 〔青〕○=辞書形 ×=ナイ形
場面と発話(自作)
- コンビニのアルバイトの初日、先輩が新人に最初のルールを教える。この店では、仕事の前に必ず手を洗うことになっています。
- 寮に新しく来た留学生に、前からいる留学生が寮のルールを説明する。この寮では、夜10時からは洗濯機を使わないことになっています。
- 新人が、休むときの連絡の仕方を先輩に確かめる。休むときは、店長に電話することになっていますか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、○×のついたルールカード(手を洗う○・スマホ×・制服○・ガム×など)を見せ、○は辞書形、×はナイ形で「〜ことになっています」を言わせる。次に学習者の学校やアルバイト先のルールを3つずつ出させ、先輩役が説明し、新人役が「〜ことになっていますか」と確かめるやり取りにする。
- 口頭ルールカード(手を洗う○・スマホ×・制服を着る○・ガムをかむ×・かばんをロッカーに入れる○・店の電話で友達と話す×)を見せ、○なら辞書形、×ならナイ形で「〜ことになっています」を言わせる。全体→列→個人の順で回し、慣れたら教師が「スマホは?」と聞いて学習者が文で答える形にする。最後に「〜ことになっていますか」と確かめる言い方も全体で言わせる。
- ペア情報差のある表を使う。A は先輩で、店のルール表(6つ)を全部持っている。B は新人で、同じ表の半分が空欄になっている。B が「〜ことになっていますか」と確かめ、A が「はい、〜ことになっています」「いいえ、〜ないことになっています」と答え、B が空欄を埋める。終わったら別の店(コンビニ・ホテル)の表に替えて役を交替する。
- 産出「わたしの職場・学校のルール紹介」。自分のアルバイト先か学校・寮のルールを3つ選び、クラスに新しく入った人に説明するつもりで1分ほど話す。聞き手は一つずつ「〜ときは、どうすればいいですか」と質問する。教師は、辞書形・ナイ形と「こと」のつながり、自分の習慣に使っていないか、全部「なければなりません」で言って強く聞こえていないか、の3点を見る。
つまずきと手当て
- 「*使うないことになっています」「*使わないのことになっています」と接続を誤る。辞書形・ナイ形のすぐあとに「こと」が来ると、板書の枠で何度も見せる
- 自分で決めた習慣に「わたしは毎朝走ることになっています」と使う。誤りではないが、店や学校の決まりのように聞こえる。自分の意志で決めたことは「〜つもりです」(第3課)で言うと確かめ、自分で決めた習慣の言い方は後の課で扱うと伝える
- ルールを全部「〜なければなりません」で説明し、強く聞こえる。決まりの説明は「〜ことになっています」、どうしても必要なことを強く言うときに「〜なければなりません」と、先輩役の練習で使い分けさせる
既習の文型との違い
- Vなければなりません(初中級第3課)「〜なければなりません」は「しないと困る」という義務を強く言う形で、言われた側は命令のように受け取りやすくなります。「〜ことになっています」は集団の決まりを説明するだけなので、初日の新人への説明に向きます。ルールを全部「なければなりません」で話すと、先輩がこわく聞こえる、と言い比べて見せます。
- Vてはいけません(初級第14課)「〜てはいけません」は相手の行動を直接止める言い方で、目の前でしている人に言う感じが強くなります。「使わないことになっています」は決まりとして伝えるので、まだしていない人への前もっての説明に合います。「使ってはいけないことになっています」と重ねる言い方もありますが、初めはナイ形の形にそろえます。
関連する文型
学習項目 2 Vるように、〜/Vないように、〜
意味・はたらき
後ろの動作を何のためにするか(目的)を言う形で、前には「聞こえる・見える・わかる」のように自分の意志で決められない動詞、可能動詞、ナイ形が来ます。第3課の「〜ために」は「買うために」のように自分の意志でする動作が前に来るので、ここで二つの使い分けを整理します。ST1 では、ルールに理由をそえて「お客様によく聞こえるように、大きい声で言います」のように後輩に説明するときに使います。
接続
V辞書形(意志で決められない動詞・可能動詞)/Vナイ形+ように、〜
形
お客様によく聞こえるように、大きい声で言います忘れないように、メモしますすぐ使えるように、ここに置きます
導入
- 小さい声と大きい声で比べる教師が小さい声で「いらっしゃいませ」と言い、後ろの席の学習者に「聞こえましたか」と聞く。「聞こえません」を引き出してから、大きい声で言い直し「後ろの人によく聞こえるように、大きい声で言います」と言う。板書は「聞こえるように、大きい声で言います」「忘れないように、メモします」の2行にし、横に第3課の「〜ために」の文を並べて、前に来る動詞の違いを色で分ける。
板書案
V辞書形(聞こえる・見える・わかる・可能動詞)/Vない + ように、〜
後ろの 人に よく 聞こえるように、大きい 声で 言います。
忘れないように、メモします。
〔赤〕ように:自分で決められない動詞・可能動詞・ナイ形 〔青〕ために:自分でする動作(第3課)
〔矢印〕目的 → すること
場面と発話(自作)
- アルバイトの初日、先輩の説明を聞きながら新人が言う。忘れないように、ノートに書いておきます。
- パン屋で、先輩が後輩に並べ方を説明する。お客様がすぐ取れるように、パンは前のほうに並べてください。
- 雨の日、店の入り口で準備をしながら仲間に理由を言う。お客様がすべらないように、入り口にマットを置きます。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「目的」のカード(聞こえる・見える・忘れない・すべらない)と「すること」のカード(大きい声で言う・前に置く・メモする・マットを置く)を1枚ずつ引かせ、「〜ように、〜」でつながせる。次に ST1 の場面で、先輩役がルールを一つ選び、「〜ように」で理由をそえて新人役に説明する。
- 口頭目的カード(聞こえる・見える・忘れない・遅れない・すべらない・すぐ取れる)を出し、学習者に「〜ように」まで全員で言わせる。続けて教師がすることカード(大きい声で言う・前に置く・メモする・早く出る・マットを置く)を出し、文を完成させる。慣れたら順番を逆にし、することを先に言って「どうしてですか」と聞き、目的を答えさせる。
- ペアA はすることカード、B は目的カードを6枚ずつ持つ。A が「入り口にマットを置きます」と言い、B は自分のカードから合う目的を選んで「すべらないように、ですね」と返す。合うカードが無ければ「どうしてですか」と聞き、A が理由を自分で言う。6枚終わったらカードを交換して役を替える。
- 産出「ルールの理由クイズ」。グループで店や学校のルールを1つ選び、「〜ように、〜ことになっています」と理由をつけた文を作る。発表では理由の部分だけ伏せて読み、ほかのグループが理由を予想して言う。教師は、前の動詞が自分でする動作なのに「ように」にしていないか、「ために」との選び方、「〜ように」のあとに何をするかが言えているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*よく見えるために、前に置きます」と、意志で決められない動詞に「ために」を使う。前が「見える・聞こえる・わかる」、可能動詞、ナイ形のときは「ように」と、色分けした板書で確かめる
- 「*聞こえように」「*忘れないようにに」と形が崩れる。「辞書形/ナイ形+ように」の枠をカードで固定して見せる
- 「〜ように」で文を終えてしまい、後ろの動作が言えない。「〜ように」のあとには必ず「何をするか」が続くと、2枚のカードを並べる動作で示す
既習の文型との違い
- Vるために、〜/Nのために、〜(目的)(初中級第3課)「ために」の前は「買う・覚える」のように自分の意志でする動作で、前と後ろの主語は同じになるのがふつうです。「ように」の前は「見える・わかる」のような意志で決められない動詞や可能動詞、ナイ形で、「お客様が取れるように、前に並べます」のように前の主語がほかの人でもかまいません。「*すぐ使えるために、ここに置きます」は「ように」に直します。
- Vるようにしてください/Vないようにしてください(同じ課)同じ「ように」でも、すぐ後ろに「してください」が来ると、心がけを頼む意味になります。「〜ように、〜」は読点のあとに別の動作が続くので、文がどこで切れているかで見分けさせます。
関連する文型
学習項目 3 条件形活用
意味・はたらき
「〜ば」の形で、「その条件がそろえば、後ろのことが成り立つ」ことを表します。アルバイト先では「わからなければ聞いてください」「質問があれば言ってください」のように、「ある・ない・わかる・できる」など状態を表す語や形容詞と一緒によく使います。前に動作の動詞が来るとき、後ろに「〜てください」などの頼みを続けると不自然になりやすいので、頼むときは「〜たら」を使うと教えます。また「どうすればいいですか」「誰に聞けばいいですか」は、やり方を先輩に聞く形としてそのまま覚えさせます。
接続
グループ1は語末をえ段にして「ば」(書く→書けば)、グループ2は「る」を「れば」(食べる→食べれば)、する→すれば・来る→来れば(くれば)、イAは「い」を「ければ」、ナA・Nは「なら」
形
グループ1:書く→書けば、ある→あれば、聞く→聞けばグループ2:食べる→食べれば、見る→見ればする→すれば、来る→来れば(くれば)イA:高い→高ければ(いい→よければ)/ない→なければ(わからない→わからなければ)
導入
- 先輩の説明の最後の一言教師が先輩役で ST1 のルールを説明し終えたあと、「わからないことがあれば、聞いてください」と言う。学習者に「聞くのはいつですか」と聞いて、わからないことがあるとき、と確かめてから、板書に「ある→あれば」「わからない→わからなければ」を書き、グループごとの作り方の表に広げる。
- 困った場面で「どうすればいいですか」レジの画面が止まった絵を見せ、新人役の学習者に「先輩に何と聞きますか」と問いかける。教師が「どうすればいいですか」と言ってみせ、「誰に聞けばいいですか」「何を持ってくればいいですか」に広げる。板書は「[疑問詞]+Vば いいですか」。
板書案
条件形(〜ば)
〔表〕1グループ:書く→書けば ある→あれば 2グループ:食べる→食べれば する→すれば 来る→くれば
イA:高い→高ければ 〔赤丸〕いい→よければ ない→なければ ナA・N:〜なら
わからない ことが あれば、聞いて ください。
[疑問詞]+ Vば いいですか → どう すれば いいですか。
場面と発話(自作)
- 新人に仕事の説明をしたあと、先輩が最後に言う。わからないことがあれば、いつでも聞いてください。
- レジのお金が合わなかったとき、新人が先輩に聞く。お金が合わないときは、どうすればいいですか。
- 来月のシフトを決めるとき、店長がアルバイトに言う。都合が悪ければ、早めに言ってください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、まず動詞・形容詞のカードを条件形に変える練習をグループごとに速く回す(ある・わかる・できる・ない・いい を多めに)。次に「〜があれば/〜なければ、〜てください」を作らせ、最後に困った場面のカード(レジが止まった・客に道を聞かれた・忘れ物があった)を新人役が引いて「どうすればいいですか」と聞き、先輩役が答える。
- 口頭辞書形カード(ある・わかる・できる・聞く・行く・食べる・する・来る・いい・ない)を出し、全体で条件形を言う帯練習から始める。テンポを上げて列ごと、最後は個人に回し、よければ・くればは毎回赤丸のカードで止める。次に困った場面の絵(レジが止まった・客に道を聞かれた・電話が鳴っているのに店長がいない)を見せ、「どう/誰に/どこに+Vばいいですか」を言わせる。
- ペア「困ったときカード」。A は新人で、困った場面のカードを引いて「〜とき、どうすればいいですか」と聞く。B は先輩で、答えのカード(店長に電話する・この紙に書く・隣の店員を呼ぶ など)から合うものを選んで「〜てください」と答え、最後に「わからなければ、また聞いてください」と付け加える。3枚ごとに役を交替する。
- 産出「新人マニュアル作り」。グループで自分たちの店(架空でよい)の「困ったときQ&A」を3つ書く。「〜があれば、〜てください」「〜ときは、どうすればいいですか」とその答えを入れ、発表のあとほかのグループが一つ質問する。教師は、よければ・くればなどの活用、動作の動詞+ばのあとに頼みを続けていないか、「なければ」を義務の意味と混ぜていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*よかれば」「*きれば」と言う。いい→よければ、来る→くればの2つは、表の中で赤く囲んで毎回確かめる
- 「*高いければ」「*静かければ」とする。イAは「い」を取って「ければ」、ナAとNは「なら」と、品詞ごとの行を分けて板書する
- 「駅に着けば、電話してください」のように、動作の動詞のあとに頼みを続ける。誤りとまでは言わない人もいるが不自然になりやすいので、頼むときは「着いたら」と言い換えさせる
- 「なければ」を聞いて、既習の「Vなければなりません」の意味に取る。文がそこで終わらず後ろに続くときは条件だと、2つの文を並べて聞かせる
既習の文型との違い
- 〜たら(仮定条件)(初級第15課)「たら」は前に何が来ても、後ろに頼み・誘い・意志を続けやすい形です。「ば」は前が状態(ある・わかる・形容詞)なら頼みも続けられますが、前が動作の動詞だと後ろに頼みを続けにくくなります。学習者には、迷ったら「たら」を使ってよいと伝えると安心して話せます。
- Vると、〜(初級第14課)「と」は「このボタンを押すと、ドアが開きます」のように、いつもそうなることや機械の動きに向き、後ろに頼みや意志は来ません。「ば」は「どうすればいいですか」のように、よい結果を得るための条件をたずねたり示したりするのによく使います。「*わからないと、聞いてください」は「ば」か「たら」に直します。
- 〜なら、〜(初中級第4課)第4課の「なら」は相手の言ったことを受けて「コンビニのバイトなら、駅の前の店がいいですよ」と話題を取り上げる使い方でした。ナA・Nの条件形も「静かなら」「休みなら」と同じ形なので、この課では「ナA・Nはなら」とだけ押さえ、使い分けは深追いしません。
関連する文型
学習項目 4 Vるようにしてください/Vないようにしてください
意味・はたらき
相手に「いつも気をつけてそうするように」と頼む形です。「Vてください」「Vないでください」がその場の一回の行動を直接頼むのに対し、「〜ようにしてください」はこれから続けて心がけてほしいことを、少しやわらかく伝えます。店長や先輩など、指導する立場の人が後輩やアルバイトに言うのがふつうで、後輩から先輩や店長には使いません。
接続
V辞書形/Vナイ形+ようにしてください
形
時間に遅れないようにしてください休むときは、早めに連絡するようにしてくださいお客様の前では、日本語で話すようにしてください
導入
- 「今日だけ」か「これからずっと」か遅刻して走っている人の絵を見せ、教師が店長役で「遅れないでください」と「遅れないようにしてください」を言い比べる。学習者に「これは今日だけですか、これからずっとですか」と聞き、後のほうは毎日気をつけてほしいことだと確かめる。板書は「V辞書形/Vない+ようにしてください」とし、横に「Vてください(一回)」を並べる。
板書案
V辞書形/Vない + ように + して + ください
時間に 遅れないように して ください。
〔青〕Vてください・Vないでください=今・一回 〔赤〕〜ようにしてください=これから毎日
〔矢印〕店長・先輩 → 新人(上から下へ) 新人 → 先輩:Vていただけませんか
場面と発話(自作)
- 店長が、新しく入ったアルバイトに毎日のことを頼む。毎日、仕事の前にシフト表を見るようにしてください。
- ホテルのフロントで、先輩が後輩に注意する。お客様の名前は、まちがえないようにしてください。
- 寮の管理人が、新しく来た留学生にお願いする。ごみは決まった日に出すようにしてください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、「職場で気をつけること」のカード(遅れない・連絡する・名前をまちがえない・手を洗う)を見せて「〜ようにしてください」を言わせる。次に ST1 の先輩役で、ルール(〜ことになっています)と理由(〜ように、〜)とお願い(〜ようにしてください)を組み合わせて説明し、新人役は「はい、気をつけます」と返す。
- 口頭職場で気をつけることのカード(遅れない・早めに連絡する・名前をまちがえない・手を洗う・大きい声であいさつする・ごみを分ける)を見せ、全体で「〜ようにしてください」を言わせる。次に「今・一回」と「これから毎日」の2枚の札を用意し、教師が札とカードを同時に出して、学習者が「〜てください」か「〜ようにしてください」かを選んで言う。
- ペア店長役と新人役。店長役は「新人へのお願いリスト」(ルール1つと心がけ3つ)を見ながら、「〜ことになっています」「〜ように、〜」「〜ようにしてください」を組み合わせて説明する。新人役は「はい、気をつけます」と返し、わからないことを一つ「〜ばいいですか」で聞く。リストを替えて役を交替する。
- 産出「店長からのひとこと」。新しいアルバイトが入った日の朝という設定で、店長として初日の注意を3つ話す(ルール1つ+心がけ2つ)。教室の前で発表するか、スマホで録音して提出する。教師は、「ように+して+ください」の形が崩れていないか、その場一回の頼みに使っていないか、新人役が先輩に向けて使っていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*遅れないようにください」「*遅れないようしてください」と「して」や「に」が落ちる。「ように+して+ください」を3つのカードに分けて並べる
- 「*遅れないでようにしてください」と「ないで」を混ぜる。前はナイ形「遅れない」のまま、と板書の枠で確かめる
- 後輩が先輩や店長に「明日は早く来るようにしてください」と言う。誤りではないが、上から指示しているように聞こえる。目上の人には「〜ていただけませんか」を使うと、上下の図を指して確かめる
既習の文型との違い
- Vてください(初級第7課)「窓を閉めてください」は今その場でしてほしい一回の行動です。「〜ようにしてください」はこれから続けて気をつけてほしいことで、その場ですぐ形にならない「遅れない」「忘れない」によく使います。目の前の頼みを「窓を閉めるようにしてください」と言うと、回りくどく聞こえます。
- Vないでください(初級第10課)「スマホを使わないでください」は今の行動を直接止めます。「スマホを使わないようにしてください」は勤務中ずっと気をつけてほしいという指導で、少しやわらかく響きます。注意する場面か、前もって伝える場面かで選ばせます。
- Vていただけませんか(初中級第5課)後輩から先輩や店長に頼むときはこの形を使います。「〜ようにしてください」は指導する側の言い方なので、同じ内容でも上下の向きで形が変わると、上下・内外の図で確かめます。
関連する文型
ST2 楽しいアルバイト
できること仕事がうまく進むように、仲間や客に短く声をかけ合える。
場面
昼の忙しい時間の飲食店で、同じ立場のアルバイト仲間どうしが声をかけ合いながら、客にも対応する場面です。仲間(同じ立場・内)には普通体、客(外)には「おVください」、店長や先輩(上・内)には「です・ます」と、相手によって話し方が三つに分かれることを先に板書します。教室では店の絵を黒板に貼り、「仲間・客・店長」の役札を配って、話しかける相手を替えながら練習します。
- アルバイトA:あ、そのコップ、落ちそう!
- アルバイトB:ほんとだ。ありがとう。
- アルバイトA:(客に)いらっしゃいませ。こちらで少々お待ちください。
- アルバイトB:わたし、先にこのお皿、洗ってしまうね。
- アルバイトA:うん、お願い。あ、暑いから、窓は開けておいて。
- アルバイトB:わかった。そういえば、明日は新しい人が来ることになってるよ。
- アルバイトA:そうなんだ。じゃあ、終わったら、エプロンを出しておこう。
学習項目 1 おVください/ごNください
意味・はたらき
店員が客に、何かをしてほしいとていねいに頼む尊敬の言い方です。第7課の「おVになります」と同じく相手の動作を高める形で、「Vてください」を客に向けた言い方にしたものと考えると分かりやすいです。言うのは店の側(内)の人から客(外)へで、同じ店の先輩や店長には使わず、「Vてください」「Vていただけませんか」を使います。漢語の名詞には「ご」をつけ(ご利用ください・ご注意ください)、「見る」「食べる」のように特別な尊敬語がある動詞はそちらを使います(ご覧ください・お召し上がりください)。
接続
お+Vます形の語幹+ください/ご+(漢語の)N+ください
形
少々お待ちくださいこちらにお名前をお書きください足元にご注意くださいこちらをご覧ください(見る)
導入
- レジで言い直す教師が店員、学習者が客になってレジの場面を演じる。教師はまず「待ってください」と言い、客役の学習者にどう感じたかを聞いてから、「少々お待ちください」と言い直す。板書は「待ちます→お待ちください」「書きます→お書きください」「利用→ご利用ください」と、ます形の語幹と漢語の名詞の2列にし、上下・内外の図で「店員→客」の矢印を示す。
板書案
お + Vます(語幹) + ください / ご + N(漢語) + ください
待ちます → お待ちください 書きます → お書きください
利用 → ご利用ください 注意 → ご注意ください
〔赤〕見る → ご覧ください 食べる → お召し上がりください
〔矢印〕店員(内)→ 客(外) 〔青〕先輩・店長には:Vてください/Vていただけませんか
場面と発話(自作)
- レストランが満席のとき、入り口で店員が客に言う。申し訳ありません。少々お待ちください。
- ホテルのフロントで、アルバイトの留学生が客に用紙を渡す。こちらにお名前とご住所をお書きください。
- 床をふいたばかりのとき、店員が通る客に声をかける。床がぬれていますので、足元にご注意ください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、動詞カード(待つ・書く・座る・入る・取る・使う)で「お〜ください」、名詞カード(利用・注意・確認)で「ご〜ください」を言わせ、見る・食べるは特別な尊敬語のカードを別に出す。次に役札を配り、相手が客なら「おVください」、仲間なら「〜て」、店長なら「〜ていただけませんか」と、同じ頼みを相手ごとに言い分ける。
- 口頭動詞カード(待つ・書く・座る・入る・取る・使う・持つ)で「お〜ください」、名詞カード(利用・注意・確認)で「ご〜ください」を全体で言わせる。次に「言い直しゲーム」として、教師がわざと「待ってください」「書いてください」と言い、学習者が客向けに言い直す。見る・食べるは色の違うカードにして、特別な尊敬語で言わせる。
- ペア「役札でひとこと」。A は役札(客・仲間・店長)を伏せて1枚引き、B に見せる。B は同じ頼み(待つ・座る・ここに名前を書く)を、札の相手に合わせて言う(客なら「少々お待ちください」、仲間なら「ちょっと待って」、店長なら「少し待っていただけませんか」)。A は相手に合っているかを判定し、5枚ごとに交替する。
- 産出「レジ・受付ロールプレイ」。店員役と客役に分かれ、客が来てから帰るまで(いらっしゃいませ→待ってもらう→名前を書いてもらう→注意を伝える→ありがとうございました)を演じる。店員役は「おVください」「ごNください」を3回以上使う。教師は、「お待ちしてください」のような謙譲との混ざり、漢語の「ご」、特別な尊敬語、仲間に向けて使っていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*お待ちてください」「*お待ちしてください」と、テ形や謙譲の「おVします」(第7課)と混ぜる。語幹にそのまま「ください」がつくと、「待ち+ください」をカードで見せる
- 「*お見ください」とする。特別な尊敬語がある動詞は「ご覧ください」と、第7課の表に戻って確かめる。「お食べください」は使われる形だが、客には「お召し上がりください」がふつう
- 「*お利用ください」と漢語に「お」をつける。漢語の名詞は「ご」が基本だと名詞カードの色を変えて示す(「お電話ください」のような例外は出てきたときに扱う)
- 同じ店の先輩に「少々お待ちください」と言う。誤りではないが、客に言うような距離のある言い方になる。仲間や先輩には「ちょっと待ってください」でよいと、役札を替えて言い比べる
既習の文型との違い
- おVになります(初中級第7課)どちらも客の動作を高める形で、作り方(お+ます形の語幹)は同じです。「おVになります」は相手がすることを述べたり聞いたりするだけで、「おVください」はそれを頼みます。「お待ちになりますか」と聞くか、「お待ちください」と頼むかの違いです。
- おVします/ごNします(初中級第7課)「お持ちします」は自分(店員)の動作を低める謙譲で、「お持ちください」は客にしてもらう頼みです。「*お待ちしてください」は二つが混ざった誤りで、「自分がする→します、客がする→ください」と、主語で分けて板書します。
- Vてください(初級第7課)形の上では「Vてください」を客に向けた言い方にしたものです。同じ店の仲間や先輩に言うときは「Vてください」に戻る、と相手で切り替える練習を必ず入れます。
関連する文型
学習項目 2 Vそうです(直前の様態)
意味・はたらき
見た様子から「今にもそうなる、もうすぐそうなる」と言う形です。第2課の「Aそうです」が見た様子を、第6課の「〜そうです(予測)」が様子から考えた先のことを言ったのと形は同じで、ここでは「落ちそう」「なくなりそう」のように、すぐ起きそうなことを周りに知らせて、事故や品切れを防ぐのに使います。仕事中の声かけでは「あ、落ちそうです」「袋がなくなりそうです」と短く言えることが大切です。
接続
Vます形の語幹+そうです(落ちます→落ちそうです)
形
コップが落ちそうです袋がなくなりそうですこのパン、もうすぐ売り切れそうです落ちそう!(仲間どうし)
導入
- 机の端のペン教師が机の上のペンを少しずつ端へずらし、落ちる直前で手を止めて「あ、落ちそうです」と言う。もう一度ずらして学習者に言わせる。板書は「落ちます→落ちそうです」「なくなります→なくなりそうです」とし、下に「落ちるそうです(伝聞・初級第15課)」を小さく書いて、つく形の違いを比べる。
板書案
Vます(語幹) + そうです 〔赤〕今にも!
落ちます → 落ちそうです。 なくなります → なくなりそうです。
あ、その コップ、落ちそう!(仲間)
〔青〕落ちるそうです=聞いた話(伝聞・初級第15課)
場面と発話(自作)
- レストランで、テーブルの端に置かれたグラスを見て仲間に言う。あ、そのグラス、落ちそうですよ。
- コンビニのレジで、袋が残り少ないことに気づいて先輩に言う。すみません、袋がなくなりそうです。
- 閉店前のパン屋で、売り場を見て店長に伝える。このパン、もうすぐ売り切れそうです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、絵カード(端のコップ・残り少ないペーパー・あふれる直前のお湯・倒れかけた箱)を見せて「〜そうです」を言わせる。次に店の絵の中で、見つけた人が仲間や先輩に声をかけ、言われた人が「ありがとう」「じゃあ、出しておきます」と返すやり取りにする。
- 口頭教師が動作で見せてから言わせる(ペンを机の端へずらす・水をコップのふちまで注ぐふり・積んだ本を傾ける)。次に絵カード(端のコップ・残り少ないレジ袋・いっぱいのごみ箱・切れかけた電球・倒れかけた箱・残り2つのパン)で全体→個人。崩れる学習者には、ます形を言わせてから「ます」を手で隠して「そうです」を付けさせる。
- ペア「気づいて声かけ」。A は店の絵(危ない所・足りなくなる物が5つ描いてある・印つき)、B は同じ絵で印がないものを持つ。A が「あ、〜が〜そうです」と知らせ、B は絵の中で見つけて「ほんとだ。じゃあ、〜ておきます」と返す。相手が仲間か先輩かを札で決め、仲間なら「〜そう!」と普通体で言う。
- 産出「閉店前のヒヤリ報告」。店や教室を見回して「〜そう」になっている物を2つ見つけ、閉店前の報告として店長役に伝える(「〜が〜そうです。〜ましょうか」)。教師は、ます形の語幹に付けているか、伝聞の「〜るそうです」と混ぜていないか、相手に合った体(仲間には「落ちそう!」、店長には「です・ます」)で言えているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「落ちるそうです」と辞書形につけてしまう。この形は伝聞(初級第15課)になって「落ちると聞いた」の意味になると、板書の2行を並べて確かめる
- 「*落ちますそうです」と、ます形のまま「そうです」をつける。「ます」を取った語幹につくと、カードの「ます」を手で隠して見せる
- 否定を「落ちそうじゃありません」と言いがちになる。この課では肯定の形だけを練習し、否定の言い方(落ちそうにありません など)は聞いてわかればよい、と範囲を決めておく
既習の文型との違い
- Aそうです(様態)(初中級第2課)「おいしそう」「高そう」は見た様子から性質を推し量る形で、イAは「い」を取って付けます。動詞に付くこの課の形は「もうすぐそうなる」という時間の近さが中心で、注意や知らせに使います。イAでも動詞でも、辞書形・普通形に付けると伝聞になる点は同じです。
- 〜そうです(予測)(初中級第6課)「雨が降りそうです」のように、様子から先のことを予想する点は同じです。この課では、目の前で今にも起きることを仲間に知らせて、事故や品切れを防ぐ使い方に絞り、短く「〜そう!」と言えることを目標にします。
- 〜そうです(伝聞)(初級第15課)「落ちるそうです」は聞いた話で、辞書形などの普通形に付きます。語幹に付く形と普通形に付く形を2行に並べて板書し、「見た?聞いた?」と問うと区別しやすくなります。
関連する文型
学習項目 3 Vておきます(放置)
意味・はたらき
ある状態を、目的があって「そのままにする」ことを表します。第6課の「Vておきます(準備)」が前もって何かをすることだったのに対し、ここでは「窓は開けておいてください」「電気はつけておきます」のように、今の状態を変えずに続けることに重点があります。仕事では、次の人や客のために物をどうしておくかを伝えるのに使い、「Vておいてください」「Vておいてもいいですか」の形でよく使います。話し言葉では「開けとく」「置いといて」と縮まるので、聞いてわかるようにしておきます。
接続
Vテ形+おきます(Vておいてください/Vておいてもいいですか)
形
窓は開けておいてくださいエアコンはつけておきますこのいすは、そのままにしておいてください置いといて(話し言葉)
導入
- 閉めようとした窓教室の窓を開けておき、学習者が閉めようとしたら「あ、暑いので、開けておいてください」と止める。「窓はどうなりますか」と聞き、開いたままだと確かめる。板書は第6課の「準備」の文と並べて「開けておきます(そのまま)」と書き、どちらも目的があってそうする、と一言そえる。
板書案
Vて + おきます 〔赤〕そのまま
暑いので、窓は 開けて おいて ください。
電気は つけて おいても いいですか。
〔青〕準備(第6課):前もって する 〔赤〕放置:そのままに する
〔点線〕開けておいて → 開けといて(話し言葉)
場面と発話(自作)
- 閉店の片づけのとき、仲間に頼む。このテーブルは明日も使うので、そのままにしておいてください。
- 最後に帰る前に、先輩に確かめる。電気はつけておいてもいいですか。
- 雨の日、店の入り口で仲間に言う。雨がやむまで、かさ立ては外に出しておきます。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、物の状態の絵カード(開いた窓・ついた電気・出してあるかさ立て・置いたままの荷物)と理由カードを組み合わせ、「〜ので、〜ておいてください」「〜ておいてもいいですか」を言わせる。次に閉店時のロールプレイで、新人役が「閉めますか」と聞き、先輩役が「いいえ、開けておいてください」と理由をつけて答える。
- 口頭教室の物を使う。教師が窓を閉めようとする・電気を消そうとする・黒板の字を消そうとするしぐさをし、学習者が「〜ておいてください」で止める(開けておいてください・つけておいてください・そのままにしておいてください)。次に学習者が同じ物について「〜ておいてもいいですか」と許可を求め、教師が理由をつけて答える。
- ペア「閉店チェック」。A は閉店担当の新人で、チェック表(窓・エアコン・電気・かさ立て・いす)を一つずつ「〜は閉めますか」「〜は片づけますか」と聞く。B は先輩で、自分だけが見られる明日の予定メモ(朝早く業者が来る・明日もこのテーブルを使う など)を見て、「いいえ、〜ので、〜ておいてください」と答える。終わったらメモを替えて交替する。
- 産出「引き継ぎメモ」。自分が先に帰るという設定で、次のシフトの人へのメモを3文で書く(「〜ので、〜はそのままにしておいてください」「〜は〜ておきました」を入れる)。ペアで交換して読み、わからない所を質問し合う。教師は、「おいて」の音便、「てあります」との混ざり、理由をそえているか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*開けておきてください」「*開けておいでください」と形を誤る。「おきます→おいて」を「書きます→書いて」と同じ音便だと並べて見せる
- 「窓が開けてあります」(第6課)と混同する。「てあります」は今の状態の説明、「ておきます」はそうする人の意図を言う、と同じ窓の絵で2つの文を比べる
- 「開けとく」「置いといて」を聞き取れない。仲間どうしの会話を教師が自然な速さで言い、縮まった形と元の形を板書で結ぶ
既習の文型との違い
- Vておきます(準備)(初中級第6課)準備の「ておきます」は「チケットを買っておきます」のように、前もって新しく何かをします。この課の「ておきます」は「開けておきます」のように、今の状態を変えずに残すことです。どちらも目的があってそうする点は同じなので、「何のために?」と聞くと二つがつながります。
- Vてあります(完了)(初中級第6課)「窓が開けてあります」は誰かがした結果の状態を見て説明する文で、物が「が」で示されることが多くなります。「窓を開けておきます」はこれからそうする人の意図を言う文です。閉店の場面では、前者は確認の報告、後者は指示や申し出に使います。
- Vています(結果の状態)(初級第15課)「窓が開いています」は自動詞で、誰がしたかや目的には触れません。「開けておいて」は他動詞で、人の意図が入ります。自動詞と他動詞の組(開く・開ける、つく・つける)を板書の端に並べておくと迷いが減ります。
関連する文型
学習項目 4 V(よ)う
意味・はたらき
意向形(第3課)を文の終わりで使い、親しい相手を誘ったり、自分で「そうしよう」と決めたりする話し言葉の形です。「〜ましょう」の普通体にあたり、同じ立場のアルバイト仲間や友達どうしで「休憩しよう」「一緒に片づけよう」と声をかけ合うときに使います。店長や先輩には「〜ましょう」「〜ましょうか」を使い、「〜(よ)う」は使いません。「〜(よ)うか」にすると、相手の気持ちを聞く誘いや申し出になります。
接続
意向形を文末で使う(書く→書こう、食べる→食べよう、する→しよう、来る→来よう(こよう))
形
そろそろ休憩しよう一緒に片づけようわたしが洗おうかよし、始めよう
導入
- 「友達どうしなら?」学習者2人に仲間役をさせ、仕事が終わった場面で「休憩しましょう」と言わせる。そのあと「同じアルバイトの友達なら、何と言いますか」と聞き、第3課の意向形を思い出させて「休憩しよう」を引き出す。板書は「休憩しましょう→休憩しよう」「休憩しましょうか→休憩しようか」の2行にし、上下・内外の図の「仲間」の矢印の横に書く。
板書案
Vましょう → V(よ)う(仲間・友達)
休憩しましょう → 休憩しよう 帰りましょうか → 帰ろうか
〔表〕書く→書こう 食べる→食べよう する→しよう 来る→こよう
〔矢印〕仲間 ⇔ 仲間:〜(よ)う 〔赤〕店長・先輩へ:〜ましょう/〜ましょうか
場面と発話(自作)
- 閉店のあと、同じ年のアルバイト仲間に言う。終わったね。一緒に帰ろう。
- 忙しい時間が終わって、仲間に声をかける。ちょっと休憩しようか。
- 一人で朝の準備を始めるとき、自分に言う。よし、がんばろう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、ます形のカードを意向形に変える練習をグループごとに回す。次に仲間との場面カード(休憩・片づけ・帰る・ごはんを食べる)で誘い、相手は「うん、そうしよう」「ごめん、まだ仕事があるから」と返す。最後に相手を店長の役札に替えて「〜ましょう」「〜ましょうか」に言い直させる。
- 口頭ます形カード(休憩します・帰ります・片づけます・始めます・食べます・来ます・します)を見せ、全体で意向形を言う。次に教師が「〜ましょう」と言ったら、学習者が「〜(よ)う」と言い換えて返すキャッチボールにする。最後に場面の絵(仕事が終わった・お昼の時間・雨が降ってきた)を見せ、仲間に向けた誘いを言わせる。
- ペア「誘う・断る」。A は誘いのカード(休憩・一緒に帰る・ごはん・片づけ)を引いて「〜(よ)うか」と仲間を誘い、B は「うん、〜(よ)う」か「ごめん、〜から」で返す。途中で教師が「相手が店長になった」と札を出したら、A は「〜ましょうか」に言い直す。4枚ごとに交替する。
- 産出「シフトあがりの30秒会話」。仕事が終わったアルバイト仲間2人で、帰る前の短い会話(休憩する・片づけを分ける・一緒に帰る)を即興でする。途中で店長役の教師が入ってきたら、店長には丁寧体で話す。教師は、グループ1の意向形(帰ろう・書こう)、来る→こよう、相手が変わったときに丁寧体に戻せるか、を見る。
つまずきと手当て
- 「*帰りよう」「*書きよう」と、ます形の語幹に「よう」をつける。グループ1は語末をお段にして「う」をのばす(帰ろう・書こう)と、五十音表の段で示す
- 「*来よう(きよう)」と読む。来る→来よう(こよう)、する→しよう、と不規則の2つを毎回確かめる
- 店長や先輩に「休憩しよう」と言う。文法の誤りではないが、目上の人には失礼に聞こえる。役札を替えて「休憩しましょうか」と言い比べる
既習の文型との違い
- Vませんか/Vましょう(初級第6課)誘いの意味は同じで、「〜ましょう」は丁寧体、「〜(よ)う」は普通体です。仲間どうしで「休憩しましょう」と言うと少しかたく、店長に「休憩しよう」と言うと失礼に聞こえます。正しいかどうかより、相手との関係で選ぶ形だと伝えます。
- 意向形/V(よ)うと思っています(初中級第3課)第3課では「〜と思っています」を付けて自分の予定を言いました。この課では意向形をそのまま文末で使い、誘い・申し出・ひとりごとになります。「行こうと思います」は人に伝える予定、「行こう」は相手を誘うか自分に言う声、という違いです。
- Vましょうか(初中級第6課)「〜ましょうか」は申し出や誘いの丁寧体で、「〜(よ)うか」はその普通体です。「わたしが洗おうか」は仲間への申し出なので、先輩には「わたしが洗いましょうか」と言い直させます。
関連する文型
学習項目 5 Vてしまいます(完了)
意味・はたらき
「全部終わらせる」「最後までやってしまう」ことを表します。第5課の「Vてしまいました(後悔)」は残念な気持ちを表しましたが、ここでは残念さはなく、「先にこれを洗ってしまいます」のように、仕事を区切りよく片づける意志や、すっかり終わったことを言います。仲間に「〜てしまいますね」「〜てしまうね」と言うと、自分がそこまで引き受けることを伝えられます。話し言葉では「洗っちゃう」「やっちゃった」と縮まります。
接続
Vテ形+しまいます(〜てしまいました・〜てしまいましょう)
形
先にお皿を洗ってしまいます閉店までに全部片づけてしまいましょうパンはもう全部並べてしまいました洗っちゃう(話し言葉)
導入
- プリントを配り切る教師がプリントを数人に配ったところで止め、「時間がないので、全部配ってしまいます」と言って残りを一気に配る。配り終えて「全部配ってしまいました」と言い、「残念ですか」と学習者に聞いて、残念な気持ちはないと確かめる。板書は「後悔(第5課)」と「完了」の2列に同じ形の文を並べ、気持ちが違うことを示す。
板書案
Vて + しまいます 〔赤〕全部・最後まで
先に この お皿を 洗って しまいます。
閉店までに 全部 片づけて しまいましょう。
〔青〕後悔(第5課):割って しまいました(残念) 〔赤〕完了:洗って しまいました(すっきり)
〔点線〕洗ってしまう → 洗っちゃう
場面と発話(自作)
- 閉店前、仲間に自分がする仕事を伝える。この掃除、先にやってしまいますね。
- 店長に「パンは並べましたか」と聞かれて答える。はい、もう全部並べてしまいました。
- 休憩の前に、先輩が後輩に言う。休憩の前に、これを運んでしまいましょう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、黒板に閉店前の仕事のリスト(お皿を洗う・ごみを出す・床をふく・パンを片づける)を書き、学習者に「先に〜てしまいます」で一つずつ引き受けさせ、終わったものは「もう〜てしまいました」と報告させる。次に ST2 の場面で、仲間どうしが普通体で仕事を分けるやり取りにする。
- 口頭閉店前の仕事リスト(お皿を洗う・ごみを出す・床をふく・パンを片づける・レジを閉める・いすを上げる)を黒板に貼り、教師が指したものを全体で「先に〜てしまいます」と言う。印をつけたものは「もう〜てしまいました」と報告させる。最後に仲間どうしの言い方として「〜ちゃう」「〜じゃう」に言い換えさせる。
- ペア「仕事の取り合い」。6つの仕事を2人で分ける。A が「先に〜てしまうね」と一つ取り、B は「じゃあ、わたしは〜てしまう」と別の仕事を取る。全部分けたら、終わったものから「〜、もうやってしまったよ」と報告し合う。相手が先輩の札なら「〜てしまいますね」と丁寧体にする。
- 産出「閉店10分前の報告」。店長役の教師に、もう終えた仕事とこれから終える仕事を報告する(「〜はもう〜てしまいました。〜も今から〜てしまいます」)。教師は、テ形の正しさ、聞いた人が「残念なこと」と取らない言い方になっているか、店長に「〜ちゃう」を使っていないか、を見る。
つまずきと手当て
- 「〜てしまいました」をいつも後悔の意味に取る。「あ、お皿を割ってしまいました」と「全部洗ってしまいました」を並べ、場面と言い方で区別できると確かめる
- 「*洗いてしまいます」「*並べいてしまいます」とテ形を誤る。テ形の作り方(初級第7課)の表に戻って確かめる
- 「〜ちゃう」「〜じゃう」を聞き取れない。「〜てしまう→〜ちゃう」「〜でしまう→〜じゃう」を板書で結び、仲間どうしの会話で聞かせる
既習の文型との違い
- Vてしまいました(後悔)(初中級第5課)形は同じで、違いは場面と気持ちです。「割ってしまいました」は起きてほしくなかったこと、「洗ってしまいました」は予定どおり終えたことです。困った顔とすっきりした顔の絵を並べ、同じ形がどちらの気持ちかを場面から判断させます。
- もうVましたか(完了)/まだVていません(初級第10課)「もう洗いました」は終わったという事実だけを言い、「もう洗ってしまいました」には「全部・最後まで」の気持ちが加わります。報告ではどちらも使えますが、仕事を区切りよく終えたことを伝えたいときに「てしまいました」が合います。
関連する文型
学習項目 6 Vることになっています(予定)
意味・はたらき
話し手が自分で決めたのではなく、店や会社などで決まった予定を伝える形です。ST1 の規則と同じ形ですが、ここでは「来週から新しい人が入ることになっています」のように、決まった日の予定を言います。第3課の「〜つもりです」が自分の意志で決めた予定だったのに対し、「〜ことになっています」は周りで決まったことなので、シフトや店の予定を仲間に伝えたり、誘いを断る理由を言ったりするのに合います。
接続
V辞書形/Vナイ形+ことになっています
形
来週から新しい人が入ることになっています明日は店長が休むことになっています土曜日は、わたしが朝から働くことになっています
導入
- シフト表を読む自作のシフト表(名前と日にちと時間)を貼り、教師が「明日は山田さんが朝から働くことになっています」「来週の月曜日から新しい人が入ることになっています」と言う。ST1 のルールの文を横に並べ、「いつもですか、その日だけですか」と聞いて、規則と予定の違いを確かめる。
板書案
[日にち]+ V辞書形/Vない + ことになっています 〔青〕予定
来週の 月曜日から 新しい 人が 入る ことに なって います。
〔赤〕規則(ST1):いつも・〜では 〔青〕予定:明日・来週
〔矢印〕だれが決めた? 店・会社 → ことになっています 自分 → つもりです
場面と発話(自作)
- 店の予定を、店長から聞いた仲間が新人に伝える。来週の日曜日は、閉店のあとで店の中を掃除することになっています。
- 先輩が後輩に、明日の予定を知らせる。明日の10時に、新しいレジが届くことになっています。
- 友達に遊びに誘われて、アルバイトの予定を理由に断る。ごめん、土曜日はアルバイトに行くことになってるんだ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
口頭では、シフト表と店の予定表を見て「〜ことになっています」で言わせる。次に、誘われる→「すみません、その日は〜ことになっているので……」と断るやり取りを、相手が友達なら普通体、先輩なら「です・ます」で練習する。
- 口頭自作のシフト表(山田・田中・佐藤 などの名前と日にち・時間)と店の予定表を貼り、教師が「明日、田中さんは?」と聞いて「明日は田中さんが朝から働くことになっています」と答えさせる。キューは、新しいレジが届く・店長が休む・閉店のあとで掃除をする・新しい人が入る など。次に規則のカードと予定のカードを混ぜて出し、「いつも?その日だけ?」と言わせてから文を言う。
- ペア「誘いと断り」。A は友達役で、予定のない日を探して「土曜日、一緒に〜(よ)う」と誘う。B は自分のシフト表を見て「ごめん、土曜日はバイトに行くことになってるんだ」と断り、空いている日を言う。相手を先輩の札に替えたら、「すみません、土曜日は〜ことになっているので……」と丁寧体で断る。
- 産出「来週のお知らせ」。店の朝の集まりで、店長から聞いた来週の予定を仲間に3つ伝える。聞き手はメモを取り、終わってから「〜は何時からですか」と確かめる。教師は、自分の意志で決めたことに使っていないか、規則と予定を手がかりの語で区別できているか、「〜ことになってる」を仲間にだけ使えているか、を見る。
つまずきと手当て
- 自分の希望で決めたことに「わたしは来年大学に入ることになっています」と使う。誤りではないが、自分では決められないことのように聞こえる。自分の意志なら「〜つもりです」と、第3課の文と並べて確かめる
- 聞いたとき、規則か予定かがわからない。「いつも」「〜では」があれば規則、「来週」「明日」など決まった日があれば予定、と手がかりの語に線を引かせる
- 仲間との話し方の「〜ことになってる」を、店長や先輩にもそのまま使う。誤りではないが、目上の人には丁寧さが足りなく聞こえる。相手が上なら「〜ことになっています」と、役札を替えて言い比べる
既習の文型との違い
- Vるつもりです/Vないつもりです(初中級第3課)「つもり」は自分で決めた予定、「ことになっています」は店や周りの人が決めた予定です。誘いを断るときに「ことになっている」を使うと、自分では変えられない事情だと伝わり、角が立ちにくくなります。
- Vます(予定)(初級第3課)「明日、働きます」は予定の事実だけを言います。「明日、働くことになっています」は、店やシフトで決まったという成り立ちまで含めて伝えます。シフトや店の予定を人に伝える場面では後者が合います。
- Vることになっています/Vないことになっています(規則)(同じ課)形はまったく同じで、違いは「いつもか、その日だけか」です。文の中の「〜では」「いつも」と「明日」「来週」のような日にちの語を手がかりに見分けさせます。
関連する文型