物や恩恵のやりとりを表す「あげる・くれる・もらう」の3系列と、その補助動詞用法「〜てあげる・〜てくれる・〜てもらう」。日本語ではだれの側から見るか(視点)によって使う動詞が決まる。
あげるは与え手が話し手側(私が友達に本をあげた)、くれるは受け手が話し手側で与え手を主語に立てる(田中さんが私に本をくれた)、もらうは受け手を主語に立てる(私が田中さんに本をもらった)。待遇に応じて さしあげる/くださる/いただく が対応する。
「×田中さんが私に本をあげた」が不自然なのは視点の制約に反するためで、ここが最大のひっかけ。母語に視点の区別がない学習者は「先生が私に教えてあげました」のような誤用を起こす。ウチ・ソトの線引きとも連動し、「〜てくれる/〜てもらう」の恩恵表現は依頼や感謝の場面指導の中心になる。
誕生日の話をする場面で、学習者が「友達が私にプレゼントをあげました」と言ったら、「くれました」に直す。与え手が友達で受け手が話し手のときは、話し手の側から見て「くれる」を使う。受け手を主語にして「私は友達にプレゼントをもらいました」と言っても、同じ出来事を表せる。矢印の図で物の動きと話し手の位置を示すと整理しやすい。
「先生、荷物を持ってあげましょうか」は、形は正しくても、目上の人に恩を着せるように響くことがある。こうした場面では「お持ちしましょうか」のように謙譲語で申し出るほうが自然だと指導する。授受の補助動詞は恩恵の向きを表すため、待遇の判断と切り離せない。文法の正しさと、場面にふさわしいかどうかを分けて考えさせる。
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