日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

できる日本語 中級 第18課「地球に生きる」の教案

『できる日本語 中級 本冊 第2版』 ・ できること4つ(耳でキャッチ・こんなときどうする?・見つけた!・伝えてみよう)

環境の問題を自分の暮らしの話として受け止め、自分にできることを考えて、ことばにして人に伝えられるようになる課です。1 で家庭でできる環境対策のニュースを聞き、2 で引っ越しや帰国の前に要らなくなった物を欲しい人に説明して譲り、3 で温暖化などの影響を受けて数が減っている生き物の記事を読み、4 で自分の周りの守りたい自然についてクラスで話します。聞く・やり取りする・読む・話すが「捨てない・無駄にしない・守る」という一本の線でつながっているので、前のできることで出たことばを次でも使わせると定着します。第17課で仕事という自分の将来を考えたことを受け、この課では地球というもっと大きな単位で自分の暮らしを見直します。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面、やり取りの例はすべて自作です。課・ST の題と学習項目の表記は出版社のシラバス一覧(第2版)に合わせています。
学習項目13時間90分×3コマ場面4

この課のねらい(Can-do)

  • 身近な環境問題を伝えるニュースを聞いて、何が問題になっていて、どんな対策が取られているかを聞き取れる
  • 要らなくなった物を手放すときに、欲しい人に物の大きさや状態をわかりやすく説明して、譲る話をまとめられる
  • 環境の変化で数が減っている生き物についての記事を読んで、原因と結果、これからの課題を読み取れる
  • 自分の周りにある守りたい自然について、思い出や理由をまじえて、その大切さを人に話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入10分「きのう捨てたものは何ですか」と聞き、食べ残し・ペットボトル・古い服などを出させて黒板に書く。「まだ使えたものはありますか」と続けて、捨てる・使い切る・譲るの3つに分ける。第17課で自分の将来を考えた話を受けて、今日は「地球と自分の暮らし」の日本語だと伝える
1 耳でキャッチ55分自作の環境対策のニュース(教師の読み上げか録音)を2回聞く。1回目は何が問題か、2回目はどんな対策かをメモ →「〜つつも」「〜っぱなし」「〜ことなく」「〜上に」を取り出す → 節水を扱った別のニュースでもう一度聞き取る
2 こんなときどうする?50分帰国前に電子レンジや本棚を友達に譲る設定のロールプレイ。物の写真カードを見ながら大きさ・状態・使える人を「〜向き」で説明し、自分で運べない事情を「〜(よ)うにも〜ない」で伝えて、受け渡しの方法と日時を決めるまで
3 見つけた!60分自作の記事(高い山にすむ小さな鳥が減っている話)を読み、原因・結果・その後に分けて図にする。「〜にしたがって」「〜あげく」で起きたことの流れを、「〜にほかならない」「〜ようがない」で筆者の言い切りを確かめ、記事の硬い言い方を会話の言い方に言い換える
4 伝えてみよう65分自分のふるさとや今住んでいる町の、守りたい自然(川・森・海・公園の木)について1分半ほど話す。思い出を「〜ことか」で、推し量ったことを「〜に違いない」で、反対の考えを打ち消すところを「〜わけがない」で言う。聞いている人は一つ質問する
課のまとめ30分ニュースで聞いた対策・譲る活動・記事の生き物・発表の自然から、クラスで「明日からできること」を一人一つ選び、「〜っぱなしにしない」「〜ことなく使い切る」などの形でカードに書いて教室に貼る

1 耳でキャッチ

できること家庭でできる環境対策を伝えるニュースを聞いて、何が問題で、どんな取り組みがされているかを聞き取れる。

場面

夕方、寮の食堂でテレビのニュースが流れていて、食べ物のごみや電気の使い方を取り上げている場面です。教室では教師が自作のニュース原稿を、アナウンサーと記者の二人の声に分けて読み上げるか、録音して流します。1回目は「何が問題か」、2回目は「どんな対策か・誰が何と言ったか」とメモの欄を分けた紙を配っておきます。

  • アナウンサー:家庭から出る食べ物のごみを減らそうという取り組みが、各地で広がっています。
  • アナウンサー:もったいないと思いつつも、つい食品を買いすぎてしまうという人は少なくありません。
  • 記者:こちらのスーパーでは、閉店の前に値段を下げ、商品を一つも無駄にすることなく売り切る工夫をしています。
  • 買い物客:安く買える上に、ごみも減らせるので、よく利用しています。
  • 記者:家庭でも、冷蔵庫の扉を開けっぱなしにしない、食べられる分だけ作るといった小さな心がけが大切だということです。
学習項目 1 〜つつ(も)

意味・はたらき

「V-ますつつ(も)」は、「〜と知っている・思っているのに、それと合わないことをしてしまう」という逆接を表します。「悪いと知りつつも」「やめようと思いつつ」のように、知る・思う・言う・気にするなどの心の動きを表す動詞と結びつきやすく、ニュースでは人々の本音と行動のずれを伝えるのに使われます。会話の「〜のに」、第7課の「〜ながら(も)」と意味は近いですが、「つつ(も)」のほうが硬い書き言葉です。「景色を楽しみつつ歩く」のように「も」を付けずに同時進行(=ながら)を表す用法(第16課)もあり、文脈で見分けます。前と後ろの主語は同じ人で、第11課の「〜つつある」(変化が進んでいる)とは別の形です。

接続

V-ます形の語幹+つつ(も)(知りつつ・思いつつ・言いつつ)

形
環境に悪いと知りつつも、使い捨てのコップを使ってしまう早く寝ようと思いつつ、つい夜更かしをする節約しようと言いつつ、エアコンをつけている音楽を聞きつつ散歩する(同時進行)

導入

  • 教師の「わかっているのにやってしまうこと」教師が「ペットボトルは環境によくないと知っています。でも、毎日1本買ってしまうんです」と少し恥ずかしそうに話し、黒板に「知っている+でも、〜てしまう」と書く。その下に「よくないと知りつつも、毎日買ってしまう」と書いて、2行の対応に線を引く。学習者に「わかっているのにやってしまうことはありますか」と聞き、答えを「〜と思いつつも」の文に一緒に直す。
  • ニュースから本音と行動を取り出すST1 のニュースをもう一度聞かせ、「みんなはどう思っていますか。でも、何をしていますか」と聞く。答えを「思っていること(もったいない)」「していること(買いすぎる)」の2つの箱に書き、箱のあいだに「つつも」を書き込む。

板書案

V-ます(語幹)+つつ(も)
体に悪いと知りつつも、夜中にお菓子を食べてしまう。
〔赤〕つつも 〔青〕[思っていること]→〈ずれ〉→[していること]の矢印
〔緑〕会話なら「〜のに/〜けど」

場面と発話(自作)

  • 夜のニュースで、街の人の声を紹介している。電気の使いすぎはよくないと思いつつも、暑い日はついエアコンを一日中つけてしまうという声が多く聞かれました。
  • 環境についての作文で、自分の反省を書く。マイバッグを持とうと思いつつも、気がつくとレジ袋をもらっていることがある。
  • 友達との会話で、反省を少し改まって言う。体に悪いと知りつつ、夜中にラーメンを食べちゃうんだよね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「知っていること・思っていること」のカード(体に悪い・お金がもったいない・早く寝たい)と「してしまうこと」のカード(甘い物を食べる・タクシーに乗る・スマホを見る)を1枚ずつ引かせ、「〜と知りつつも/思いつつも、〜てしまう」を言わせる。次に ST1 のニュースの声の紹介のように「〜という人が多いようです」と、他人のこととして言い直させる。最後にペアで自分の「わかっているのにやってしまうこと」を一つずつ話す。

  1. 口頭「思っていること」と「してしまうこと」のカードを組にして出し、全体で言ってから個人で言わせる。キューの例:「体に悪い × 夜中に食べる」→「体に悪いと知りつつも、夜中に食べてしまう」、「早く寝たい × スマホを見る」→「早く寝ようと思いつつ、スマホを見てしまう」、「電気代が高い × エアコンをつける」→「電気代が高いと知りつつも、エアコンをつけてしまう」。毎回「つつ」の前が「ます」を取った形かを指で確かめる。
  2. ペアA に「本音カード」(もったいない・環境によくない)、B に「行動カード」(買いすぎる・レジ袋をもらう)を伏せて配る。A が「わたし、〜と思ってるんだ」と言い、B が「でも、〜てるよね」と返し、2人で「〜と思いつつも、〜てしまう」の一文にまとめて言う。3組作ったらカードを交換する。
  3. 産出「わかっているけど宣言」: 自分の暮らしで、環境によくないとわかっていてやってしまうことを一つ選び、「〜と知りつつも、〜てしまいます。これからは〜ようにします」の2文を書いて、クラスで読み上げる。教師は語幹への接続、前と後ろの主語が同じか、2文目に自分の改め方があるかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*知るつつも」「*思ったつつも」と辞書形やタ形につなぐ。「つつ」の前は「ます」を取った形だけ、と「知ります→知りつつ」を板書で示す
  • 「*母が注意しつつも、わたしはやめなかった」と前と後ろの主語を変える。主語が違うときは「母が注意したのに」と言い換えさせ、「つつ」は同じ人の心と行動のずれだと確かめる
  • 友達との会話で「つつも」を多用して硬く聞こえる。会話では「〜のに」「〜けど」、作文やニュースの言い直しでは「つつも」と、場面で選ばせる
  • 「〜つつある」と取り違え、「増えつつある」を「増えるのに」と読む。「つつも」は逆接、「つつある」は変化の途中、と2行を並べて比べる

既習の文型との違い

  • 〜ながら(も)(中級第7課)どちらも「〜のに」の逆接で、言い換えられることが多いです。「ながらも」は「狭いながらも」「子どもながらも」とイA・Nにもつきますが、「つつも」は動詞だけにつき、知る・思う・言うなど心の動きの動詞に偏ります。「*狭いつつも」と混ぜたら、形容詞なら「ながらも」と戻させます。
  • 〜つつある(中級第11課)「減りつつある」は変化が進んでいる途中を言う形で、逆接の意味はありません。「つつも」の後ろには必ず反対の行動の文が続き、「つつある」は文末に来ます。読むときは「も」があるか、後ろに文が続くかで見分けさせます。
  • 〜つつ(中級第16課)「も」を付けない「〜つつ」は「音楽を聞きつつ歩く」のように二つの動作を同時にする意味(=ながら)にもなります。逆接にしたいときは「も」を付けると誤解されにくい、と例を並べて示します。
関連する文型
学習項目 2 〜っぱなし

意味・はたらき

「V-ますっぱなし」は、①ふつうは止める・閉める・片付けるはずのことをしないで、そのままにしておくこと(水を出しっぱなし、電気をつけっぱなし)、②同じ状態がずっと続くこと(一日中立ちっぱなし)を表します。どちらも「困ったことだ・よくない」という話し手の気持ちがこもることが多く、環境のニュースでは無駄づかいの例として出てきます。第5課の「〜まま」は「窓を開けたまま寝た」のように状態を中立に言うのに対し、「っぱなし」は「閉めるべきなのに」という非難やだらしなさを含みます。話し言葉寄りですが、暮らしの話題ならニュースでも使われます。

接続

V-ます形の語幹+っぱなし(〜っぱなしにする/〜っぱなしだ/〜っぱなしのN/〜っぱなしで)

形
歯をみがく間、水を出しっぱなしにする誰もいない部屋で、テレビがつけっぱなしだアルバイトで一日中立ちっぱなしだった開けっぱなしの冷蔵庫

導入

  • 教室で「つけたまま」を見つける授業の前に、教室の後ろの電気だけをつけておき、窓も少し開けておく。授業の始めに「あれ、誰もいないのに電気が……」と言って学習者に気づかせ、「電気をつけっぱなしにしていました。もったいないですね」と言って消す。板書は「つけます→つけっぱなし」「出します→出しっぱなし」「開けます→開けっぱなし」の3行にし、横に「もったいない・だらしない」と書き添える。

板書案

V-ます(語幹)+っぱなし(〜っぱなしにする/〜っぱなしだ)
電気をつけっぱなしにする。水が出しっぱなしだ。
〔赤〕っぱなし=止める・閉めるはずなのに、そのまま 〔青〕横に「もったいない・だらしない」
〔緑〕中立に言うなら → 〜たまま(第5課)

場面と発話(自作)

  • ルームメイトに、シャワーの使い方について注意する。髪を洗っているあいだ、シャワーを出しっぱなしにしないでくれる?
  • 節電を呼びかけるニュースで、家庭の無駄を挙げている。使っていない部屋のエアコンをつけっぱなしにしている家庭も少なくないということです。
  • アルバイトのあとで、友達に疲れたことを話す。きょうは5時間立ちっぱなしで、足が痛いよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、部屋の絵(電気・水道・テレビ・窓・冷蔵庫・パソコン)を見せ、「〜を〜っぱなしにしています」と言わせる。次に「〜っぱなしにしないでください」と注意する文に変え、ルームメイトに注意する場面のやり取りにする。最後に自分が家でついやってしまう「っぱなし」を一つずつ言い、ST1 の「小さな心がけ」につなぐ。

  1. 口頭部屋の絵の一か所ずつを指して言わせる。キューの例: 電気 →「電気がつけっぱなしです」、蛇口 →「水が出しっぱなしです」、冷蔵庫の扉 →「冷蔵庫が開けっぱなしです」、レジに立つ店員の絵 →「一日中立ちっぱなしです」。全体のあと個人で言わせ、続けて同じ絵で「〜っぱなしにしないでね」と注意する文に変えさせる。
  2. ペア間違いさがし: よく似た部屋の絵を2枚用意し、A の絵だけ電気・窓・テレビ・洗濯物がそのままになっている。A は相手に絵を見せずに「〜が〜っぱなしになってるよ」と言い、B は自分の絵と比べて「あ、本当だ。消しておくね」などと返す。違いを全部見つけたら絵を取り替える。
  3. 産出「ルームメイト会議」ロールプレイ: 3〜4人で同じ寮の部屋に住んでいる設定にし、困っている「っぱなし」を一人一つずつ出して、部屋のルールを決める(「洗濯物を干しっぱなしにしない」など)。決まったルールを紙に書いて読み上げる。教師は語幹への接続、「にする/だ」の形、注意の言い方が強すぎないか(〜てくれる?/〜ないようにしよう)を見る。

つまずきと手当て

  • 「*開けたっぱなし」「*つけてっぱなし」とタ形やテ形につなぐ。「ます」を取った形だけ、と板書の3行で確かめる
  • 「*水を出しっぱなしをする」と助詞を間違える。「〜っぱなしにする」「〜っぱなしだ」の2つの形を枠で示す
  • ただ状態を言いたいだけの場面(「めがねをかけたまま寝てしまった」)にも「っぱなし」を使い、だらしなさを強く責める響きになる。中立に言うなら第5課の「〜まま」、困った・もったいない気持ちがあるなら「っぱなし」と、2つの文を並べて比べる

既習の文型との違い

  • 〜まま(中級第5課)「まま」はタ形を受けて「窓を開けたまま寝た」と状態を中立に言います。「っぱなし」は「ます」を取った形について、閉める・止めるべきなのにそうしなかったという非難やだらしなさを含みます。「*開けたっぱなし」は二つの形を混ぜた誤りなので、2行を並べて形を比べます。
  • Vています(結果の状態)(初級第15課)「電気がついています」は今の状態をそのまま言うだけです。「電気がつけっぱなしです」は、誰かが消さなかった、もったいない、という話し手の評価が入ります。注意したい場面かどうかで選ばせます。
関連する文型
学習項目 3 〜ことなく

意味・はたらき

「V辞書形+ことなく」は、「〜しないで」「〜せずに」と同じく、ある動作をしないまま後ろのことをすることを表します。硬い書き言葉で、ニュース・記事・スピーチに出ます。「一日も休むことなく」「一つも無駄にすることなく」のように、ふつうならしてしまいそうなこと・起きそうなことが起きずに最後までやりとげた、という文脈で使われやすく、ニュースでは取り組みのよい点を強調します。「傘を持たないで出かけた」のような日常の付帯状況を「ことなく」で言うと大げさになります。

接続

V辞書形+ことなく

形
商品を一つも無駄にすることなく売り切る雨の日も休むことなく、川のごみを拾い続けている古い家具を捨てることなく、直して使う

導入

  • 会話の「ないで」をニュースの言い方に教師が友達に話す調子で「あのお店、毎日、食べ物を捨てないで全部売っちゃうんだって」と言い、黒板に「捨てないで売る」と書く。次にアナウンサーの調子で「食品を捨てることなく売り切っています」と言い、2行を並べて「ないで→ことなく」「辞書形につく」に印を付ける。ST1 のニュースのどこに出てきたかを聞いて確かめる。

板書案

V辞書形+ことなく
〔会話〕休まないで続ける → 〔ニュース〕休むことなく続ける
一つも無駄にすることなく、全部売り切った。
〔赤〕ことなく=〜ないで 〔青〕前の辞書形に丸、後ろの動作に下線

場面と発話(自作)

  • 地域の新聞が、川の清掃を続けている人を紹介している。この男性は10年間、一度も休むことなく、毎朝川のごみを拾ってきた。
  • 環境のスピーチで、自分の目標を述べる。物を簡単に捨てることなく、使えるうちは大切に使いたいと思います。
  • 卒業式で、地域の清掃を続けた学生をたたえるスピーチ。皆さんは3年間、一度も休むことなく、駅前のごみ拾いを続けてくれました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「〜ないで」の会話の文(休まないで続ける・あきらめないで調べる・捨てないで直す)を言い、学習者がニュースの調子で「〜ことなく」に言い換える。次に ST1 のニュースのスーパーの取り組みを、自分の国や町の取り組みに置き換えて「〜ことなく〜ています」の一文で紹介させる。

  1. 口頭教師が会話の調子で「〜ないで」の文を言い、学習者がアナウンサーの調子で言い換える。キューの例:「休まないで働く」→「休むことなく働く」、「あきらめないで続けた」→「あきらめることなく続けた」、「捨てないで直す」→「捨てることなく直す」、「迷わないで決めた」→「迷うことなく決めた」。全体のあと個人で、後ろの動作まで必ず言わせる。
  2. ペア「記者とアナウンサー」: A は記者役で、語だけの取材メモ(「30年・休まない・朝市を開く」など)を持つ。B はメモを見ずに A の口頭の報告を聞き、「〜ことなく〜てきたそうです」とニュースの一文にまとめて言う。メモを2枚使ったら役を替える。
  3. 産出「町のヒーロー紹介ニュース」: 身近な人や町の取り組み(毎朝の道の掃除・古着の回収など)を一つ選び、「〜ことなく」を1回入れた30秒のニュース原稿を書いて、アナウンサーの調子で読む。教師は辞書形への接続、ありふれた動作(傘を持つ)に使って大げさになっていないか、後ろに続く動作があるかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*休まないことなく」「*休んだことなく」と、否定形やタ形につなぐ。「ことなく」の中に「ない」がもう入っている、と「休む+ことなく=休まないで」の式で見せる
  • 友達との会話で「傘を持つことなく来ちゃった」と言い、大げさに聞こえる。日常の会話は「〜ないで」、ニュース・スピーチは「〜ことなく」と分ける
  • 「〜ことがない(経験がない)」と混同し、「休むことなく」を「休んだことがない」と取る。「ことなく」の後ろには必ず続く動作があることを、文の後半に線を引いて確かめる

既習の文型との違い

  • Vて、〜/Vないで、〜(付帯状況)(初中級第12課)意味は「〜ないで」と同じです。「ないで」は会話にも書き言葉にも使えますが、「ことなく」はニュース・記事・スピーチの硬い言い方で、ふつうならしてしまいそうなことをせずにやりとげた、という場面に向きます。「傘を持つことなく出かけた」は大げさに聞こえる、と比べます。
  • Vたことがあります(初級第13課)「休むことなく」を「休んだことがない」と経験の意味に取る学習者がいます。経験の「ことがない」は文末に来て、「ことなく」の後ろには必ず続く動作があります。文の後半に線を引いて見分けさせます。
関連する文型
学習項目 4 〜上(に)

意味・はたらき

「〜上(に)」は、あることに、同じ方向のことをもう一つ付け加える言い方で、「〜だけでなく、さらに」の意味です。よいことによいこと、悪いことに悪いことを重ねるのが基本で、ニュースでは対策のよい点や、問題の悪い点を重ねて伝えるのに使われます。初中級の「〜し、〜(並列)」より改まっていて、書き言葉にも改まった会話にも使えます。第14課の「〜ばかりでなく」と近いですが、「上に」は程度が加わる感じが強いです。後ろには命令・依頼・誘いの文は来にくく、第17課の「〜上で」(〜してから・〜するときに)とは別の形です。

接続

V・イA普通形+上(に)、ナAな/である+上(に)、Nの/である+上(に)

形
この袋は丈夫な上に、何度でも洗って使える安く買える上に、ごみも減らせる古い冷蔵庫は電気代が高い上に、音もうるさいその日は休日の上に、天気もよかった

導入

  • マイバッグのよいところを重ねる教師が布のマイバッグを見せて、「このバッグ、丈夫です。それに、洗えます」と言い、黒板に「丈夫です+それに、洗えます」と書く。次に「このバッグは丈夫な上に、洗って使えます」と言い直し、「丈夫な+上に」のナAの「な」に印を付ける。そのあと安いレジ袋を見せて「破れやすい上に、ごみになる」と悪いことを重ねる例も出し、「よい+よい」「悪い+悪い」の2つの矢印を書く。

板書案

普通形(ナAな・Nの)+上(に)、〜
この袋は丈夫な上に、洗って何度も使える。
〔青〕よい+よい 〔赤〕悪い+悪い(同じ向きの矢印を2本)
〔緑〕×安い上に、遠い(向きが逆なら「けど」)

場面と発話(自作)

  • ニュースで、スーパーの取り組みについて買い物客が答えている。安く買える上に、ごみも減らせるので、よく利用しています。
  • 環境の授業の発表で、プラスチックの問題を説明する。プラスチックは自然の中で分解されにくい上に、燃やすと二酸化炭素が出ます。
  • 友達に、引っ越し先の部屋の不満を言う。駅から遠い上に、日当たりも悪いんだよね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、物の絵(マイボトル・電気自動車・古いエアコン・中古の自転車)に「よい点2つ」または「悪い点2つ」を書いたカードを付け、「〜上に、〜」の一文にさせる。品詞がばらばらになるように(静かだ・安い・壊れやすい・人気だ)カードを作り、接続を確かめる。最後に ST1 のニュースの対策を一つ選び、よい点を2つ重ねて紹介させる。

  1. 口頭物の絵に、よい点か悪い点を2つ書いたカードを付けて出す。キューの例: マイボトル「安い・洗える」→「安い上に、洗って何度も使える」、古いエアコン「電気代が高い・うるさい」→「電気代が高い上に、うるさい」、駅前の店「便利だ・品物が多い」→「便利な上に、品物が多い」、中古の自転車「値段が半分・まだきれい」→「値段が半分の上に、まだきれいだ」。品詞が混ざるようにカードを並べ、全体→個人で言わせる。
  2. ペア「売り込みと突っ込み」: A は店員役で商品のよい点2つのカード、B は客役で同じ商品の悪い点2つのカードを持つ。A が「この〜は〜上に、〜んですよ」と勧め、B が「でも、〜上に、〜じゃないですか」と返す。どちらも矢印の向きをそろえて重ねることを意識させ、3品で役を替える。
  3. 産出「エコ商品プレゼン」: 環境によい商品(実物か写真)を一つ選び、「〜上に、〜」でよい点を重ねて、30秒でクラスに勧める。最後の勧める文は「〜ので、ぜひ使ってみてください」と文を分ける。教師はナA・Nの接続、よい・悪いの向き、「上に」のすぐ後ろに依頼を置いていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*この店は安い上に、遠い」と、よいことと悪いことを重ねる。逆の向きのときは「安いけど、遠い」と言い換えさせ、板書の矢印が同じ向きかを確かめる
  • 「*丈夫だ上に」「*人気上に」とナA・Nにそのままつなぐ。ナAは「な」、Nは「の」が要ると、品詞ごとの枠で示す
  • 「*安い上に、買ってください」と後ろに依頼や命令を置く。勧めたいときは「安い上にごみも減らせるので、ぜひ使ってみてください」と、「ので」を足して文を分けさせる
  • 第17課の「〜上で」と混同し、「よく調べた上に、買う」と言う。「上で」は「〜してから」、「上に」は「さらに」と、2つを並べて比べる

既習の文型との違い

  • 〜し、〜(並列)(初中級第6課)「〜し、〜し」は理由や性質をいくつでも並べられる会話的な言い方です。「上に」は一つ目に二つ目を重ねて「さらに」と程度を足す改まった言い方で、ふつう1回だけ使います。「安い上に、近い上に、きれいだ」と重ねすぎたら「し」に戻させます。
  • 〜ばかりでなく/〜ばかりか(中級第14課)「AばかりでなくBも」は範囲を広げる言い方で、後ろに「も」が来ることが多いです。「上に」は同じ向きの性質を重ねて程度を足す感じが強く、よいこととよいこと、悪いことと悪いことを組むのが基本です。
  • 〜上で(中級第17課)「よく調べた上で買う」は「調べてから」という手順を言います。「上に」は付け足しなので、「*よく調べた上に、買った」は意味が通りません。「上で=〜してから」「上に=さらに」と2行で並べます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 身近な環境問題とその対策で使われることば・表現ニュースでは環境の漢語が短い時間に続けて出るので、まず「問題を表す語」と「対策を表す語」に分けて耳で覚えさせます。問題の語は聞いてわかればよく、対策の語は「わたしは〜を心がけています」の形で自分の暮らしについて言えるようにします。例:「食品ロス」「使い捨て」「ごみを減らす」「節電・節水」「リサイクルに回す」「マイバッグを持ち歩く」

2 こんなときどうする?

できること要らなくなった物を手放すとき、欲しい人に物の形や状態をわかりやすく説明して、譲る約束ができる。

場面

来月国に帰る留学生が、使っていた電子レンジを、ほしいと言ってくれた日本人の友達に譲る話をする場面です。教室では家電や家具の写真カード(電子レンジ・本棚・自転車・こたつなど)に、大きさ・使った年数・傷の有無を書いたメモを付けて配り、譲る側と欲しい側に分かれてやり取りします。最後に受け渡しの日時と方法まで決めさせます。

  • 留学生:来月帰国するので、使っていた電子レンジを譲りたいんですけど、よかったら使いませんか。
  • 日本人の友達:ほんと?ちょうど探してたんだ。どのくらいの大きさ?
  • 留学生:幅が45センチくらいの小さめのです。温めるだけなら十分なので、一人暮らし向きだと思います。
  • 日本人の友達:きれい?
  • 留学生:3年使ったので、横に少し傷がありますが、動くのは問題ありません。
  • 日本人の友達:じゃあ、もらおうかな。送ってもらうことはできる?
  • 留学生:それが、車がないので、届けようにも届けられないんです。取りに来てもらえると助かります。
  • 日本人の友達:わかった。じゃあ、土曜日の午後に取りに行くね。
学習項目 1 〜向き

意味・はたらき

「N向き」は、その物や事がある人や目的に合っている・適していることを表します(一人暮らし向き、初心者向き、子ども向き)。物を譲るとき、「この物はどんな人に合うか」を相手に説明するのに使います。第2課の「〜向け」は「〜のために作られた」という作り手の意図を表す(「留学生向けのパンフレット」)のに対し、「向き」は物の性質を見て、話し手が「〜に合っている」と判断する言い方です。合わないときは「〜には向かない」「不向き」と言います。「南向きの部屋」のように方向を表す用法もあります。

接続

N+向き(N向きだ/N向きのN)、合わないときは「Nには向かない」「N不向き」

形
一人暮らし向きの小さい冷蔵庫この自転車は初心者向きだ軽くて持ちやすいので、子ども向きです体の大きい人には不向きです

導入

  • 物の写真を見て「誰に合うか」を考える大きい冷蔵庫と小さい冷蔵庫の写真を並べ、「家族が多い人と、一人で住んでいる人、どちらに合いますか」と聞く。答えを受けて「この冷蔵庫は一人暮らし向きです」「こちらは家族向きです」と言い、板書に「[人・目的]+向き」の枠を書く。続けて、子ども用に作られた絵本を見せて「これは子ども向けの本です」と言い、「向け=〜のために作った」「向き=〜に合っている」を2行で並べる。

板書案

N+向き(N向きだ/N向きのN)
この冷蔵庫は一人暮らし向きです。
〔赤〕向き=〜に合っている(物を見て判断)
〔青〕向け=〜のために作った(第2課)
〔緑〕合わない → 〜には向かない/不向き

場面と発話(自作)

  • 帰国前に、使っていた家電を友達に譲る話をする。温めるだけなら十分なので、一人暮らし向きだと思います。
  • リサイクルショップで、店員に自転車について聞く。これは坂の多い町に住んでいる人向きですか。
  • 学校の掲示板に、要らなくなった机を譲るお知らせを書く。高さが低めなので、背の高い人には不向きかもしれません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、物の写真カードに「小さい・軽い・操作が簡単・大きい・重い」などの特徴を書き、「〜ので、〜向きです」「〜ので、〜には向かないと思います」を言わせる。次に ST2 の譲る場面で、欲しい人が「わたしに合う?」と聞き、譲る人が「〜向き」で答えるやり取りにする。

  1. 口頭物の写真に特徴を書いたカードを見せ、「〜ので、〜向きです」を言わせる。キューの例: 小さい冷蔵庫 →「小さいので、一人暮らし向きです」、ボタンが少ないカメラ →「操作が簡単なので、初心者向きです」、軽い自転車 →「軽いので、子ども向きです」、大きいソファ →「家族向きです」、重い本棚 →「重いので、力のない人には向かないと思います」。全体→個人の順で。
  2. ペア「この物、誰に合う?」: A は物のカード(写真と大きさ・重さ・状態)、B は人物のカード(一人暮らしの学生・小さい子どもがいる家族・初めて自転車に乗る人)を持ち、互いに見せない。B が自分の人物の暮らしを言って「それ、〜向きですか」と聞き、A が「〜向きです/〜には向かないと思います」で答える。合う組を3つ作ったら交替する。
  3. 産出「譲ります掲示板」: 自分が手放したい物を一つ選び、貼り紙を書く(物・大きさ・状態・「〜向き」・受け渡しの方法)。教室の壁に貼って読み歩き、欲しい物に名前を書かせる。教師は「N向き」に余計な「の」が入っていないか、作り手の意図(向け)と取り違えていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*一人暮らしの向きの冷蔵庫」と「の」を入れる。「N向き」はひとまとまり、名詞の前で「向きの」と一回だけ「の」が入る、と枠で示す
  • 作り手の意図を言う場面で「留学生向きに書かれたパンフレット」と言う。わざわざその人のために作ったなら「向け」のほうが自然、と第2課の例と並べて確かめる
  • 動詞の「向く」と混ぜて「*一人暮らしに向きです」と言う。「N向きです」か「Nに向いています」のどちらか、と2つの形を並べて整理する

既習の文型との違い

  • 〜向け(中級第2課)「向け」は作り手が相手を決めて作ったことを言い(留学生向けのパンフレット)、「向き」は物の性質を見て、話し手が「〜に合う」と判断します。子ども向けに作られた絵本を「大人向きの話だ」と評価することもできる、と2つを同じ物で並べると違いが見えます。
  • Vやすいです(傾向・性質)(初中級第12課)「使いやすい」は物の性質だけを言い、「初心者向き」は「誰に合うか」まで言います。譲る説明では「操作がわかりやすいので、初心者向きです」と、性質を理由に、向きを結論に置いてつなげさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜(よ)うにも〜ない

意味・はたらき

「V意向形+にも+V可能形の否定」で、しようと思っても、何かの事情があってできないことを表します(運ぼうにも運べない、捨てようにも捨てられない)。同じ動詞をくり返すのが基本で、「連絡しようにも、電話番号がわからない」のように後ろでできない理由を直接言う形もあります。「〜たくても〜ない」と近いですが、「ようにも」は実際にしようとしてみたのに、車がない・時間がないなどの外の事情に阻まれている感じが強く、少し改まった言い方です。物を譲る場面では、自分ではできない事情を説明して、相手に取りに来てもらうなどのお願いにつなげます。

接続

V意向形(〜よう/〜おう)+にも+V可能形のない形(同じ動詞をくり返すことが多い)

形
車がないので、届けようにも届けられない粗大ごみの日が帰国のあとなので、捨てようにも捨てられない連絡しようにも、電話番号がわからないあの景色は、忘れようにも忘れられない

導入

  • 大きな荷物を前に困ってみせる教師が重そうな箱(中身は本でよい)を持ち上げようとして持ち上がらない様子を見せ、「運びたい。でも、重くて運べません」と言う。黒板に「運ぼう(と思う)+でも、運べない」と書き、その下に「重くて、運ぼうにも運べない」とまとめる。「運ぼう」は意向形、「運べない」は可能形の否定、と2か所に印を付け、もう一つ「捨てようにも捨てられない」を同じ形で書く。

板書案

V意向形+にも+V可能形のない形
車がないので、届けようにも届けられない。
〔赤〕届けよう(意向形) 〔青〕届けられない(可能形の否定)に二重線
〔緑〕しようとする → でも、外の事情でできない

場面と発話(自作)

  • 帰国前に家電を譲る友達に、受け渡しの方法を相談する。車がないので、届けようにも届けられないんです。取りに来てもらえると助かります。
  • 引っ越しの前に、大きな本棚を処分できずに困っている。粗大ごみの予約が引っ越しのあとしか取れなくて、捨てようにも捨てられないんです。
  • 旅行先で財布をなくし、家族に助けを求める。お金がなくて、帰ろうにも帰れなかったんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が動詞と事情のカード(運ぶ×重い・捨てる×ごみの日が終わった・連絡する×番号を知らない・寝る×隣がうるさい)を出し、「〜て、〜(よ)うにも〜ない」を言わせる。次に ST2 の譲る場面で、譲る人が自分ではできない事情を「〜ようにも〜ない」で言い、続けて「〜てもらえると助かります」とお願いする流れにする。

  1. 口頭先に意向形をコーラスで作り(運ぶ→運ぼう、捨てる→捨てよう)、そのあと動詞と事情のカードで言わせる。キューの例: 運ぶ×重い →「重くて、運ぼうにも運べない」、捨てる×ごみの日が過ぎた →「ごみの日が過ぎて、捨てようにも捨てられない」、寝る×隣がうるさい →「寝ようにも寝られない」、連絡する×番号がわからない →「連絡しようにもできない」。
  2. ペア「困りごと相談」: A は事情だけが書いてある困りごとカードを持ち、B は助ける人の役。A が「〜ようにも〜なくて……」と事情を言い、B が「じゃあ、〜てあげようか」と申し出て、A が「〜てもらえると助かります」と受ける。3枚で交替する。
  3. 産出「帰国前の困りごと電話」ロールプレイ: 帰国や引っ越しの直前の留学生が、大家さんや友達に電話して、自分ではできないこと(粗大ごみ・家具の運び出し・インターネットの解約)を「〜ようにも〜ない」で説明し、手伝いを頼む。教師は意向形と可能形の否定、言い訳に聞こえないように事情(車がない・日程が合わない)を先に言っているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*運びたいにも運べない」と、意向形の代わりにタイ形を使う。「運ぼう」「捨てよう」の意向形を先に作る練習を数回入れる
  • 「*運ぼうにも運ばない」と後ろを可能形でない否定にする。後ろは「できない」の形、と板書の「運べない」に二重線を引いて確かめる
  • 自分がしたくないだけのことに使い、「早く起きようにも起きられない」を「寝坊した言い訳」として使う。外の事情でできないときの言い方なので、言い訳に聞こえることがあると、場面とあわせて伝える

既習の文型との違い

  • 〜ようがない(この課)「ようにも〜ない」は、しようとしているのに事情に阻まれる言い方です(車がないので、届けようにも届けられない)。「ようがない」は方法そのものがない言い方です(住所がわからないので、届けようがない)。同じ「届ける」で2文を並べると違いがはっきりします。
  • 〜(よ)うとする(中級第4課)「届けようとしたが、届けられなかった」は一回の試みと結果を順に言う形です。「届けようにも届けられない」は、したいのにどうにもできない状態を一つの文で言います。学習者が「*届けようとするにも」と混ぜたら、二つの形を分けて書きます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 物の形や特徴、状態を説明するときに使うことば・表現譲る物の説明は「大きさ・形・使える機能・傷や汚れ・使った年数」の順に言うと、相手が判断しやすいことを先に示します。大きさは数字に「〜くらい」を付けてだいたいで言わせ、よくない点(傷・汚れ)は隠さずに先に言うほうが信頼されることも伝えます。例:「幅・奥行き・高さが〜センチくらい」「折りたたみ式」「ほとんど使っていない」「少し傷がある」「動くのは問題ない」「付属品もそろっている」

3 見つけた!

できること環境の変化の影響で数が減っている生き物についての記事を読んで、何が原因で何が起きているか、これからどうすべきかを読み取れる。

場面

大学の図書館で、環境の特集が組まれた雑誌を読む場面です。教室では、ある高い山にだけすむ小さな鳥が減っている、という自作の短い記事(6〜8文)を配ります。読む前に「原因」「結果」「その後・これから」の3つの欄がある表を渡し、読みながら書き込ませます。

  • 記事:ある高い山にだけすむ小さな鳥が、ここ数十年で大きく数を減らしている。
  • 記事:気温が上がるにしたがって、この鳥がすめる涼しい場所は、山の上のほうへと狭くなってきた。
  • 記事:さらに、ふもとから上がってきたシカが高山の植物を食べ、えさも少なくなっている。
  • 記事:えさを探して長い距離を飛び回ったあげく、ひなを育てられなくなる親鳥もいるという。
  • 記事:調査を続ける研究者は「この鳥を追いつめているのは、人間の暮らしが変えた環境にほかならない」と話す。
  • 記事:一度いなくなった生き物は、取り戻しようがない。今、すむ場所を守る取り組みが求められている。
学習項目 1 〜にしたがって

意味・はたらき

「〜にしたがって」は、一方が変わっていくと、それに合わせてもう一方も変わっていくことを表します(気温が上がるにしたがって、すめる場所が狭くなる)。前にも後ろにも「増える・減る・上がる・〜くなる」のような変化を表すことばが来ます。第5課の「〜につれて」とほぼ同じ意味で入れ替えられることが多いですが、「にしたがって」のほうがやや硬く、記事や説明文に多く出ます。また「係の人の指示にしたがって」のように「(決まり・指示)のとおりに」という意味もあり、こちらは「につれて」では言えません。一回だけの出来事の原因と結果には使えません。

接続

V辞書形+にしたがって、N(変化を表す名詞)+にしたがって(「N にしたがって」は「〜のとおりに」の意味もある)

形
気温が上がるにしたがって、鳥のすむ場所が狭くなった町が広がるにしたがって、森が減っていった年をとるにしたがって、自然の大切さがわかってきた係の人の指示にしたがって避難する(「〜のとおりに」)

導入

  • グラフを2本重ねる黒板に、右上がりの気温の線と、右下がりの鳥の数の線を重ねて描き、「気温が上がると、鳥はどうなりますか」と聞く。「減ります」を受けて「気温が上がるにしたがって、鳥の数が減っています」と言い、2本の線の間に「にしたがって」と書き込む。前と後ろの両方に「変化」の矢印があることを確かめ、第5課の「〜につれて」も同じ位置に入ることを見せる。

板書案

V辞書形/N+にしたがって、〜(変化)
気温が上がるにしたがって、雪の日が少なくなった。
〔赤〕前も後ろも「変化」(右上がりと右下がりの線を2本重ねる)
〔青〕指示にしたがって=〜のとおりに(別の意味)

場面と発話(自作)

  • 環境の記事で、温暖化の影響を説明している。海の温度が上がるにしたがって、この魚はより北の海へ移っている。
  • ふるさとの町の変化について、作文に書く。道路ができて町が便利になるにしたがって、子どものころに遊んだ田んぼは少なくなった。
  • 工場見学で、係の人が見学の決まりを説明する。見学中は、係の者の案内にしたがって移動してください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、2本の変化のカード(人口が増える/緑が減る、気温が上がる/雪の日が少なくなる、日本語がうまくなる/友達が増える)を組み合わせて「〜にしたがって、〜」を言わせる。次に ST3 の記事を読んで、原因と結果の図の矢印の上に「にしたがって」の文を書かせる。最後に「指示にしたがって」の例を一つ出し、意味が違うことを確かめる。

  1. 口頭変化のカードを2枚ずつ組にして言わせる。キューの例:「人口が増える/緑が減る」→「人口が増えるにしたがって、緑が減った」、「標高が上がる/気温が下がる」、「日本語がうまくなる/日本人の友達が増える」、「年をとる/自然の大切さがわかる」。全体→個人のあと、「係の人の指示」「説明書」のカードを出して「〜にしたがって〜てください」と、もう一つの意味も言わせる。
  2. ペアグラフの描き取り: A は線が2本のグラフ(年ごとの気温と、ある花が咲く日など)を持ち、B は白紙を持つ。A はグラフを見せずに「〜にしたがって、〜」で説明し、B は聞いたとおりに線を描く。描けたら見比べ、違っていれば A が言い直す。別のグラフで交替する。
  3. 産出「わたしの町の30年」: 自分の町や国で、時間とともに変わった2つのこと(道路と田んぼ、人口と商店)を「〜にしたがって」で結び、原因と結果の矢印の図を添えて3文で発表する。教師は前が辞書形か、2つとも少しずつ変わることか、一回の出来事に使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*気温が上がったにしたがって」とタ形につなぐ。過去のことでも前は辞書形、後ろで「〜た」と過去にする、と例文の文末に印を付ける
  • 「*駅に着くにしたがって、友達に電話した」と、一回だけの出来事に使う。少しずつ変わっていく2つのことにだけ使う、とグラフの2本の線で確かめ、一回のことは「駅に着いて」「駅に着いたら」と言い換えさせる
  • 記事の「指示にしたがって」を、変化の意味で読んでしまう。前に「指示・決まり・案内」などが来たら「〜のとおりに」、と見分け方を板書する

既習の文型との違い

  • 〜につれて(中級第5課)変化に合わせてもう一方も変わる意味では、ほとんど入れ替えられます。「にしたがって」のほうがやや硬く、記事や説明文に多く出ます。「(指示)のとおりに」の意味は「にしたがって」だけで、「*係の人の指示につれて」とは言えません。
  • 〜とともに(変化)(中級第9課)「とともに」も変化に合わせた変化を言えますが、「友達とともに」のように「一緒に」の意味もあります。記事を読むときは、前に変化の語(上がる・増える)があるかで意味を決めさせます。
関連する文型
学習項目 2 〜にほかならない

意味・はたらき

「Nにほかならない」は、「まさに〜だ。それ以外ではない」と強く言い切る言い方です。記事や論説、スピーチで使う硬い書き言葉で、筆者が原因や本質をはっきり示したいところに出てきます。理由を言い切るときは「〜からにほかならない」の形になります。第17課の「〜にすぎない」は「ただ〜だけだ」と小さく見る言い方で、強く言い切るという点は似ていますが、向きが反対です。

接続

N+にほかならない、普通形+からにほかならない

形
鳥を追いつめているのは、人間が変えた環境にほかならないこの暑さは、自然からの警告にほかならないこの川がきれいになったのは、町の人が掃除を続けてきたからにほかならない

導入

  • 「〜だ」を記事の言い切りに強める黒板に「原因は人間の暮らしだ」と書き、教師が「本当にこれだけ? ほかの原因はない?」と問いかける。学習者と「ほかにはない。これだけが原因だ」と確かめてから、「原因は人間の暮らしにほかならない」と書き直し、「ほか+ならない=ほかではない」と分けて意味を示す。続けて第17課の「〜にすぎない」を並べ、「大きく強く言う」「小さく見る」の向きの違いを矢印で示す。

板書案

N+にほかならない/普通形+からにほかならない
鳥が減った原因は、人間の暮らしにほかならない。
〔赤〕ほか(それ以外)+ならない(ではない)=まさに〜だ
〔青〕↑大きく言い切る 〔緑〕↓〜にすぎない(第17課)=小さく見る

場面と発話(自作)

  • 環境の雑誌の記事で、研究者の言葉を紹介している。この鳥を追いつめているのは、人間の暮らしが変えた環境にほかならない。
  • 地域の自然を守る活動を表彰するスピーチ。この森が今も残っているのは、皆さんが長年守ってきたからにほかなりません。
  • ゼミで、調べたことの結論を述べる。この町の水がおいしいのは、山の森が雨をためてくれているからにほかなりません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「〜は〜だ」の文(成功の理由は努力だ・この結果は失敗だ・この活動は地域への恩返しだ)を言い、学習者が「〜にほかならない」に言い換える。次に「にすぎない」の文と混ぜて出し、どちらが筆者の評価として合うかを選ばせる。最後に ST3 の記事の言い切りの文を見つけ、会話なら「それしかないよ」「まさにそれが原因だよ」と言えばいいことを確かめる。

  1. 口頭教師が「〜は〜だ」の文を言い、学習者が記事の言い切りに変える。キューの例:「成功の理由は努力だ」→「成功の理由は努力にほかならない」、「この暑さは自然からの警告だ」→「警告にほかならない」、「川がきれいになったのは、住民が掃除を続けたからだ」→「続けたからにほかならない」、「この活動は地域への恩返しだ」→「恩返しにほかならない」。全体→個人で、理由の文には「から」を入れさせる。
  2. ペア「言い切りか、小さく見るか」: A は文の前半が書いてあるカードを引き、「にほかならない」か「にすぎない」のどちらかを選んで文を完成させて読む。B はそれを聞いて、筆者が「強く言い切っている」か「小さく見ている」かを答え、その理由を一言言う。5枚ずつで交替する。
  3. 産出「記事の結びを書く」: ST3 の記事の読み取り表を見て、自分なら記事の最後に何と書くかを、「〜のは、〜にほかならない」を入れた2文で書く。グループで読み合い、いちばん説得力のある結びを選んで発表する。教師は名詞に「だ」を付けていないか、理由に「から」があるか、言い切りの前に根拠の文があるかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*人間の開発だにほかならない」と「だ」を入れる。名詞にそのままつく、と枠で示す
  • 第17課の「〜にすぎない」と取り違え、「鳥が減った原因は温暖化にすぎない」と言って、言いたいこととちがう響きになる。「強く言い切る」「小さく見る」の2つを例文で並べて選ばせる
  • 「ほか」を「ほかの」と読んで「ほかのものになる」と意味を逆に取る。「ほか=それ以外」「ならない=ではない」の分解を一度板書してから読む
  • 友達との会話で使い、演説のように聞こえる。記事・スピーチで読んだり書いたりする形、と使う場面を限る

既習の文型との違い

  • 〜にすぎない(中級第17課)どちらも文末で言い切る硬い形ですが、「にほかならない」は「まさにこれだ」と大きく強く示し、「にすぎない」は「ただこれだけだ」と小さく見ます。「原因は温暖化にすぎない」と言うと、温暖化を軽く見る響きになり、記事の主張と逆になります。
  • 〜こそ/〜からこそ(中級第2課)「からこそ」は理由を取り立てて強める言い方で、文の途中に置けます(掃除を続けたからこそ、川がきれいになった)。「からにほかならない」は文末で、ほかの理由を退けて一つに言い切ります。同じ内容を2文で書き比べさせると、置く位置の違いがわかります。
関連する文型
学習項目 3 〜あげく

意味・はたらき

「Vたあげく(に)/Nのあげく(に)」は、長い時間いろいろなことをしたり悩んだりした末に、結局よくない結果になったことを表します(さんざん迷ったあげく、何も買わなかった)。前には「悩む・迷う・さんざん〜・長い〜」のような、時間や苦労がかかったことが来て、後ろには残念な結果や、話し手のあきれた気持ちがこもった結果が来ることが多いです。記事では、生き物が追いつめられていく流れを伝えるのに使われます。第20課の「〜末(に)」はよい結果にも使えて硬く、第11課の「〜結果」は中立に結果を言います。

接続

Vた形+あげく(に)、Nの+あげく(に)

形
えさを探して飛び回ったあげく、ひなを育てられなくなったさんざん迷ったあげく、何も買わずに帰った長い話し合いのあげく、森を残す計画は中止になった

導入

  • 長い道のりと、残念な終わり黒板に、くねくねと長い線を描き、線の最後に×を書く。教師が「先週、新しいかばんを買いに行きました。3つの店を回って、2時間迷って……結局、何も買いませんでした」と話し、線の上に「3つの店・2時間迷う」、×の横に「何も買わなかった」と書き込む。それを「2時間迷ったあげく、何も買わなかった」の一文にまとめ、「長い・苦労」の線と「残念な結果」の×が「あげく」の形だと示す。

板書案

Vた形/Nの+あげく(に)、〜
2時間迷ったあげく、何も買わなかった。
〔青〕くねくねの長い線(時間・苦労)→〔赤〕×(残念な結果)
〔緑〕よい結果なら → 〜末(に)(第20課)・〜結果(第11課)

場面と発話(自作)

  • 野生動物の記事で、山から下りてきた動物を伝えている。えさを求めて山の中を歩き回ったあげく、住宅地に迷い込んでしまったとみられる。
  • 友達に、引っ越しの失敗を話す。部屋を探して何週間も悩んだあげく、結局前より狭い部屋にしちゃったんだ。
  • 物をため込んだ家の問題を伝える地域のニュース。物を捨てずにため続けたあげく、家の周りの道にまでごみがあふれ出した。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、「長い苦労」のカード(何時間も並ぶ・何度も電話する・一晩中考える)と「残念な結果」のカード(売り切れていた・誰も出なかった・答えが出なかった)を組み合わせ、「〜たあげく、〜」を言わせる。次に ST3 の記事の流れを図の矢印で確かめ、「あげく」の文がどこに入るかを見つけさせる。最後に、よい結果の文を出して「末に」「結果」と言い換える練習をする。

  1. 口頭「長い苦労」と「残念な結果」のカードを組にして言わせる。キューの例:「何時間も並ぶ/売り切れていた」→「何時間も並んだあげく、売り切れていた」、「一晩中考える/答えが出ない」→「一晩中考えたあげく、答えが出なかった」、「何度も電話する/誰も出ない」、「長い話し合い(N)/計画は中止」→「長い話し合いのあげく、計画は中止になった」。全体→個人の順で、前がタ形かNのかを毎回確かめる。
  2. ペア「ついてない話リレー」: A が苦労の前半(「部屋を探して何週間も悩んだ」など)だけを言い、B が残念な結果を考えて「〜あげく、〜」で一文を完成させる。A は「それで、どうしたの?」と聞き返し、B が次の行動を一言答える。3話で役を替える。
  3. 産出「追いつめられた生き物の年表」: ST3 の記事の生き物か、自分で知っている生き物について、起きたことを3〜4段の矢印の図にし、最後の段を「〜あげく、〜」の一文で書いて説明する。教師は前に長く続いたこと・何度もしたことがあるか、結果が残念な向きか、接続(タ形・Nの)を見る。

つまずきと手当て

  • 「*迷うあげく」「*話し合うあげく」と辞書形につなぐ。前は「〜た」か「Nの」、と2つの枠で示す
  • 「一生懸命練習したあげく、優勝した」と、よい結果に使う。よい結果なら「練習した末に」「練習した結果」が自然、と第20課・第11課の形と並べる
  • 「ドアを開けたあげく、外に出た」のように、時間も苦労もかからない一回の動作のあとに使う。前には長く続いたこと・何度もしたことが来る、と長い線の絵で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜末(に)/〜末の(中級第20課)「末に」も長い過程のあとの結果を言いますが、よい結果にも使えて、より硬い書き言葉です。「あげく」はふつう残念な結果で、話し手のあきれた気持ちが入ります。「練習したあげく、優勝した」と言ったら「末に」に直させます。
  • 〜結果(中級第11課)「結果」は過程の苦労や話し手の気持ちを入れずに、中立に結果を言います。記事の流れを説明するときは「結果」、追いつめられていく感じを出したいときは「あげく」と選ばせます。
関連する文型
学習項目 4 〜ようがない

意味・はたらき

「V-ますようがない」は、方法や手段がなく、しようとしてもできないことを表します(直しようがない、取り戻しようがない)。可能形の否定「直せない」と近いですが、「ようがない」は「どんな方法でもできない」というあきらめの気持ちが強く出ます。「連絡する」のようなする動詞は「連絡しようがない」のほか「連絡のしようがない」とも言い、強めるときは「〜ようもない」になります。ST2 の「〜(よ)うにも〜ない」は「しようとしたが事情でできない」、こちらは「方法そのものがない」という点が違います。記事では、取り返しのつかなさを言うのに使われます。

接続

V-ます形の語幹+ようがない(する動詞は「Nしようがない」「Nのしようがない」)

形
一度いなくなった生き物は、取り戻しようがない住所も電話番号もわからないので、連絡のしようがないここまで壊れてしまったら、直しようがない

導入

  • 壊れた物と「方法がない」割れたコップ(または写真)を見せ、「直せますか」と聞く。「直せません」を受けて「接着剤でも、テープでもだめ。どんな方法でも直せない。直しようがない」と言い、板書で「直します→直し+ようがない」と形を示す。横に「方法=よう」と書き、「方法がない」の意味だと確かめる。そのあと ST3 の記事の最後の文を読み、「取り戻しようがない」を見つけさせる。

板書案

V-ます(語幹)+ようがない(Nのしようがない)
一度いなくなった生き物は、取り戻しようがない。
〔赤〕よう=方法 〔青〕方法が一つもない
〔緑〕連絡しようがない/連絡のしようがない

場面と発話(自作)

  • 環境の記事の結びで、問題の重さを伝えている。一度失われた森は、何十年たっても元の姿に戻しようがない。
  • 落とし物を拾った人が、交番で事情を話す。名前も何も書いていないので、持ち主に返しようがないんです。
  • 古い家電を修理に出したが、店で断られる。このモデルはもう部品が作られていないので、直しようがないんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、困った状況のカード(住所がわからない・部品がもう売っていない・誰も見ていない)を見せ、「〜ので、〜ようがない」を言わせる。次に ST2 の「〜(よ)うにも〜ない」の文と並べて、「方法がない」のか「事情でできない」のかを選ばせる。最後に記事の「取り戻しようがない」を、自分の国で失われた自然の話に置き換えて一文で言わせる。

  1. 口頭困った状況のカードを見せ、「〜ので、〜ようがない」を言わせる。キューの例:「住所がわからない」→「届けようがない」、「部品がもう売っていない」→「直しようがない」、「誰も見ていない」→「確かめようがない」、「名前が書いていない」→「持ち主に返しようがない」。全体→個人の順で、ます形から「ます」を取る手順を板書で毎回確かめる。
  2. ペア「お手上げ相談室」: A は相談する人で困りごとを話し、B は相談員として方法を一つずつ提案する。A は方法があれば「じゃあ、やってみます」と受け、だめなら「それも〜ようがないんです」と理由を言う。B が3つ提案してもだめなら「それは〜ようがないですね」とまとめる。交替する。
  3. 産出「取り戻せないもの」発表: 自分の国や町で失われた自然や物(埋め立てられた浜・切られた大きな木)を一つ挙げ、「〜は、もう〜ようがない。だから、今残っている〜を守りたい」の2文で書いて発表する。教師は語幹への接続、「しょうがない」との混同、自分の能力の問題に使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*直すようがない」と辞書形につなぐ。「ます」を取った形につく、と「直します→直しようがない」を板書で示す
  • 「しようがない」を「しょうがない(仕方がない)」と同じだと思い、「連絡しようがない」を「連絡しても仕方がない」と取る。前に動作のことばがあれば「方法がない」、と見分け方を確かめる
  • 泳げない人が「わたしは泳ぎようがない」と言うように、自分の能力の問題に使う。能力なら「泳げない」、方法や手段がないときが「ようがない」と、2つの文を比べる

既習の文型との違い

  • 〜(よ)うにも〜ない(この課)「ようがない」は方法がないこと、「ようにも〜ない」はしようとしても事情でできないことです。「住所がわからないので、届けようがない」「車がないので、届けようにも届けられない」を並べ、方法の問題か事情の問題かを選ばせます。
  • 〜(より)ほかない/〜(より)ほかしかたがない(中級第19課)「ほかない」は「その方法しかないから、それをする」で、後ろに行動が続きます。「ようがない」は「どの方法もない」で、あきらめの気持ちが残ります。「直しようがないので、新しいのを買うほかない」と一続きにすると関係が見えます。
  • 可能動詞(初中級第1課)「直せない」は事実としてできないことを言い、能力のことにも使えます。「直しようがない」は方法がないことに使い、泳げない人が自分の能力を言うのに「泳ぎようがない」とは言いません。能力なら可能形の否定、と分けます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 問題の原因と結果、またその後について述べるときに使われる表現記事の文を「原因 → 結果 → その後」の矢印の図に置き換えられるように、それぞれの位置に来る表現をまとめて見せます。読むときはこの表現を手がかりに文の役割を見分け、自分で書くときは図から文に戻す練習をさせます。例:「〜が原因で」「〜の影響で」「その結果」「〜が進んでいる」「このままでは〜おそれがある」「〜が求められている」
  • 絶滅のおそれがある野生動物について紹介するときに使われることば・表現生き物を紹介する記事に決まって出てくる語を、「どこにすむか・数・守るしくみ」に分けて整理します。漢語が多いので読みと意味を確かめたら、教室で知っている動物を一つ選び、この語を使って2〜3文で紹介させます。例:「野生動物」「生息地」「数が減る」「絶滅のおそれがある」「保護する」「天然記念物に指定されている」

4 伝えてみよう

できること自分の周りにある守りたい自然について、思い出や理由をまじえて、その大切さを人に話せる。

場面

日本語クラスの発表会で、「わたしが守りたい自然」というテーマで一人ずつ話す場面です。教室では、話す前に「どこの・どんな自然か」「思い出」「今どうなっているか」「なぜ守りたいか」「自分にできること」の5つのメモ欄を書かせ、写真が1枚あれば見せながら話させます。聞いている人には一つ質問をする役を決めておきます。

  • 留学生:わたしが守りたいのは、ふるさとの村の近くを流れる川です。
  • 留学生:子どものころ、夏休みに友達とあの川でどんなに楽しく遊んだことか。
  • 留学生:水がきれいだったから、村の野菜もおいしかったに違いありません。
  • 留学生:でも最近、上流に工場ができて、魚が減ったと母から聞きました。
  • 留学生:汚れた川で育った魚が、体にいいわけがありません。
  • 留学生:あの川がなくなったら、村の人たちはどんなに寂しく思うことでしょう。
  • 留学生:わたしは、まず帰国したときに、友達と川のごみを拾うことから始めたいと思います。
学習項目 1 〜わけがない

意味・はたらき

「〜わけがない」は、理由や状況から考えて、「そんなことは絶対にありえない」と強く打ち消す言い方です。発表では、反対の考えを打ち消して、自分の考えを強く出すところで使います。第3課の「〜はずがない」とほぼ入れ替えられますが、「わけがない」は話し手の気持ちが強く出て、会話では「〜わけない」と「が」を落とすこともあります。「はずがない」は根拠からの推論として少し落ち着いた響きです。第9課の「〜わけではない」(いつもそうとは限らない)は形が似ていても意味がまったく違うので、並べて区別します。

接続

V・イA普通形+わけがない、ナAな/である+わけがない、Nの/である+わけがない

形
汚れた川で育った魚が、体にいいわけがないこんなに大事な森を、なくしていいわけがない一人でこの山のごみを全部拾えるわけがないあんなに人が多い場所が静かなわけがない

導入

  • ありえないことに首を振る教師が真夏の写真を見せながら「きょうは雪が降ると思いますか」と聞き、学習者が笑って首を振るのを受けて「8月に雪が降るわけがない」と言う。板書は「〜わけがない=絶対に〜ない」。その下に第9課の「日本人がみんな魚が好きなわけではない」を書き、「わけがない=100%ない」「わけではない=全部ではない」を2行で並べて、違いに線を引く。

板書案

普通形(ナAな・Nの)+わけがない
8月に雪が降るわけがない。
〔赤〕わけがない=100%ない
〔青〕わけではない(第9課)=全部ではない(部分の否定)
〔緑〕会話:〜わけない 発表:〜わけがないと思います

場面と発話(自作)

  • クラスの発表で、川の汚れについて自分の考えを述べる。汚れた川で育った魚が、体にいいわけがありません。
  • 友達に、無理な計画を断る。一日で富士山に登って東京に戻るなんて、できるわけないよ。
  • ゼミの話し合いで、ほかの人の意見に反対する。ごみを燃やせば問題がなくなるわけがないと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「ありえない」文のカード(真冬に海で泳ぐ人が多い・ごみを捨てても自然に消える・3日で日本語が完璧になる)を読み、学習者が「〜わけがない」で打ち消す。次に「わけではない」の文と混ぜて出し、「100%ない」か「全部ではない」かを手で示させる。最後に ST4 の発表の中で、反対の考えを一つ打ち消す文を自分で作らせる。

  1. 口頭「ありえない」文のカードを教師が読み、学習者が打ち消す。キューの例:「真冬の海で泳ぐ人が多い」→「多いわけがない」、「捨てたごみが自然に消える」→「消えるわけがない」、「3日で日本語が完璧になる」→「なるわけがない」、「いつも混んでいるあの店が静かだ」→「静かなわけがない」。全体→個人のあと、「わけではない」の文と混ぜて、「100%ない」なら手で×、「全部ではない」なら手を半分上げさせる。
  2. ペア「本当?うそ?」: A は本当の話と、本当らしく聞こえるうその話のカードを混ぜて持ち、一つずつ読む。B は「そんなの〜わけがないよ」か「へえ、本当?」で反応し、理由を一つ言う。A が正解を明かして、5枚で交替する。
  3. 産出「反論ひとこと」: ST4 の発表の中に、自分と反対の考え(「自然より便利さのほうが大事だ」など)を一つ紹介し、「〜わけがありません。なぜなら〜」で打ち消す部分を入れて話す。教師はナA・Nの接続、「わけではない」と取り違えていないか、聞き手に目上の人がいる場で強すぎないか(〜とは思えません)を見る。

つまずきと手当て

  • 第9課の「〜わけではない」と取り違え、「魚が体にいいわけではない(=よくないこともある)」と「いいわけがない(=絶対によくない)」の意味を逆に取る。2行を並べて、どちらが強い否定かを毎回確かめる
  • 「*簡単だわけがない」「*子どもだわけがない」とナA・Nに「だ」を付けたままつなぐ。ナAは「な」、Nは「の」か「である」、と品詞ごとの枠で示す
  • 目上の人の意見に「そんなわけがありません」と言って、強く否定しすぎる。発表や話し合いでは「〜とは思えません」「〜わけがないと思います」とやわらげる言い方も一緒に教える

既習の文型との違い

  • 〜はずがない(中級第3課)ほとんど入れ替えられます。「はずがない」は根拠からの推論として落ち着いた響き、「わけがない」は話し手の気持ちが強く出て、会話では「わけない」と「が」が落ちることもあります。
  • 〜わけではない/〜というわけではない(中級第9課)「わけではない」は「いつも・全部がそうとは限らない」という部分の否定で、強く打ち消す「わけがない」とは意味がほぼ逆です。「魚が体にいいわけではない」と「いいわけがない」を並べ、どちらが強い否定かを毎回確かめます。
  • 〜っこない(中級第9課)「できっこない」は「わけがない」をもっとくだけた言い方で、友達との会話でだけ使います。発表や作文では「わけがない」、と場面で分けます。
関連する文型
学習項目 2 〜ことだろう/〜ことか

意味・はたらき

どちらも話し手の強い気持ちをこめて「とても〜だ」と言う、書き言葉やスピーチの言い方です。「〜ことか」は「どんなに・なんと・何度」などのことばと一緒に「どんなに〜ことか」の形で、実際に感じている・感じた気持ちを強く言います(あの川でどんなに楽しく遊んだことか)。「〜ことだろう(ことでしょう)」も同じように感動を表すほか、ほかの人の気持ちやこれから起きることを想像して「きっととても〜だろう」と言うときにも使います(あの川がなくなったら、村の人はどんなに寂しく思うことでしょう)。第14課の「なんて〜んだろう」は目の前のことに驚く会話の言い方です。形は質問に似ていますが、答えを求める文ではありません。

接続

V・イA普通形+ことだろう/ことか、ナAな+ことだろう/ことか(「どんなに」「なんと」「何度」などと一緒に使う)

形
子どものころ、あの川でどんなに楽しく遊んだことか何度あの森の景色に励まされたことか木がなくなったら、この町の夏はどんなに暑くなることだろう山の上から見る星は、なんときれいなことか

導入

  • 思い出の写真に気持ちをこめる教師が自分の子どものころの海や山の写真(なければ風景の写真)を見せ、少しゆっくりと「この海で、毎年夏に泳ぎました。とても楽しかったです」と言ったあと、「この海で、どんなに楽しく泳いだことか」と言い直して、声の気持ちの違いを聞かせる。板書は「どんなに+〜(普通形)+ことか」。次に「この海が汚れたら、魚たちはどんなに困ることだろう」と言い、「ことか=実際の気持ち」「ことだろう=想像も言える」と2行で並べる。

板書案

どんなに/何度/なんと + 普通形(ナAな)+ことか
あの川で、どんなに楽しく遊んだことか。
〔赤〕ことか=実際に感じた強い気持ち
〔青〕ことだろう(ことでしょう)=想像して言うこともできる
〔緑〕「?」ではない(答えない文・文末を下げる)

場面と発話(自作)

  • クラスの発表で、ふるさとの川の思い出を語る。子どものころ、夏休みに友達とあの川でどんなに楽しく遊んだことか。
  • 自然を守る活動のチラシで、参加を呼びかける。この森がなくなったら、ここにすむ生き物たちはどんなに困ることでしょう。
  • 長年会っていない先生に手紙を書く。先生と一緒に登ったあの山の景色を、何度思い出したことでしょう。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「とても〜でした」の文(とても楽しかった・何回も助けられた・とてもきれいだった)を言い、学習者が「どんなに/何度/なんと〜ことか」に言い換える。次に「もし〜がなくなったら」の状況カードを出し、「どんなに〜ことだろう」で想像して言わせる。最後に ST4 の発表の思い出の部分に一文入れさせる。

  1. 口頭教師が「とても〜でした」の文を言い、学習者が気持ちをこめて言い換える。キューの例:「とても楽しかった」→「どんなに楽しかったことか」、「何回も励まされた」→「何度励まされたことか」、「星がとてもきれいだった」→「なんときれいだったことか」、「森がなくなったら、鳥がとても困る」→「どんなに困ることだろう」。教師の声の強弱と文末の下げ方をまねさせてから個人で言わせる。
  2. ペア「思い出インタビュー」: A はふるさとや子どものころの場所の写真を見せて話し、B は聞き手として「そこ、どうだった?」と聞く。A は「どんなに〜ことか」で答え、B は答えを返さずに「いいなあ」「わかる」とあいづちで受ける。質問の文ではないことを体で覚えさせ、交替する。
  3. 産出「心に残る場所スピーチの山場」: ST4 の発表の思い出の段落に「〜ことか」の一文と、その場所がなくなったときを想像する「〜ことでしょう」の一文を入れ、声の強弱をつけて読む。教師は「どんなに・何度・なんと」が入っているか、ナAの「な」、文末が上がって質問に聞こえないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*どんなに静かだことか」「*なんときれいだことか」とナAに「だ」を付ける。ナAは「な」でつなぐ、と枠で示す
  • 「どんなに」などを落として「あの川で楽しく遊んだことか」とだけ言い、文が途中で終わったように聞こえる。最初は「どんなに・何度・なんと」の3つのどれかを必ず入れる練習にする
  • 聞いている人が質問だと思って「はい、楽しかったです」と答える。答えを求めない文であることを、教師が気持ちをこめて言い、うなずいて聞くだけの練習で体験させる
  • 友達との会話で使い、大げさに聞こえる。会話なら「すごく楽しかったなあ」「なんて〜んだろう」、発表や作文なら「〜ことか」と分ける

既習の文型との違い

  • なんて〜んだろう/なんて〜だろう(中級第14課)「なんてきれいなんだろう」は目の前のものに驚く会話の言い方です。「〜ことか」は過去を振り返ったり、作文やスピーチで気持ちを強く述べたりするときの硬い言い方です。発表の中で使うのは「ことか」、と場面で選ばせます。
  • 〜でしょう/〜だろう(中級第1課)「どんなに」などがない「困るでしょう」はただの推量です。「どんなに困ることでしょう」は感嘆の文になります。学習者が「どんなに」を落としたら推量の文に聞こえる、と2文を読み比べさせます。
関連する文型
学習項目 3 〜に違いない

意味・はたらき

「〜に違いない」は、見たことや知っていることをもとに、話し手が「きっと〜だ」と強く確信していることを表します。「〜だろう」「〜と思う」より確信が強い言い方です。第2課の「〜はずだ」は、理屈や事実から当然そうなると推し量る(予定表にそう書いてあるから10時に着くはずだ)のに対し、「に違いない」は話し手の直感や強い思いを含み、やや書き言葉・スピーチ向きです。会話では「きっと〜よ」「〜に決まってる」とも言います。発表では、思い出や見たことから「そうだったに違いない」と推し量るところに使います。自分がこれからすることには使いません。

接続

V・イA普通形+に違いない、ナA語幹/N+に違いない(「だ」は付けない)

形
水がきれいだったから、村の野菜もおいしかったに違いないこの鳥が減ったのは、暑さのせいに違いない祖父もこの森が好きだったに違いないあの湖は今でも静かに違いない

導入

  • 手がかりから推し量る教師が、ぬれた傘を持って教室に入ってきた人の絵を見せ、「外はどうですか」と聞く。「雨が降っていると思います」を受けて「傘がぬれています。外は雨が降っているに違いない」と言い、板書で「手がかり(ぬれた傘)→ きっと〜だ」の矢印を書く。続けて「時刻表に10時着と書いてある → 10時に着くはずだ」の例を並べ、「はず=理屈・予定」「違いない=見たことからの強い確信」の違いを示す。

板書案

普通形(ナA・Nは「だ」を取る)+に違いない
傘がぬれている。外は雨が降っているに違いない。
〔青〕手がかり →〔赤〕きっと〜だ(強い確信)
〔緑〕予定・計算から → 〜はずだ(第2課)

場面と発話(自作)

  • クラスの発表で、ふるさとの自然が暮らしに与えていたものを語る。あの川の水がきれいだったから、村の野菜もおいしかったに違いありません。
  • 公園で、木の幹に深い傷を見つけて友達に話す。この傷、きっと動物が爪でつけたに違いないよ。
  • 山道で、ぬかるみに残った足跡を見つける。この足跡はまだ新しいから、さっきシカが通ったに違いない。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、手がかりの絵カード(窓の外の人がみんな半袖・冷蔵庫が空っぽ・部屋の電気が毎晩遅くまでついている)を見せ、「〜から、〜に違いない」を言わせる。次に「はずだ」が合う予定や計算の文と混ぜて出し、どちらを使うかを選ばせる。最後に ST4 の発表で、自分の思い出から推し量ったことを一文入れさせる。

  1. 口頭手がかりの絵カードを見せて推し量らせる。キューの例: 窓の外の人がみんな半袖 →「外は暑いに違いない」、冷蔵庫が空っぽ →「しばらく買い物に行っていないに違いない」、毎晩遅くまで部屋の電気がついている →「遅くまで勉強しているに違いない」、机の上に参考書が山積み →「試験が近いに違いない」。全体→個人の順で、ナA・Nのカード(静かだ・留守だ)で「だ」を取る形も言わせる。
  2. ペア「探偵ごっこ」: A は手がかりが3つある人物か部屋の絵を持ち、B は絵を見ない。A が手がかりを一つずつ言い、B が「〜から、〜に違いない」で推理する。3つ目で B がその人の職業や趣味をまとめて当てる。2枚で交替する。
  3. 産出「昔の暮らし推理」: ST4 の発表のために、ふるさとの自然の写真や家族から聞いた話から、昔の人の暮らしを「〜から、〜に違いありません」で推し量る一文を書き、発表に入れる。教師はナA・Nに「だ」を付けていないか、自分の予定に使っていないか、根拠を先に言っているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*静かだに違いない」「*原因だに違いない」とナA・Nに「だ」を付ける。「だ」を取ってつなぐ、と枠で示す
  • 自分がこれからすることに「明日、わたしは図書館に行くに違いない」と言う。自分の予定は「〜つもりだ」「〜と思う」、確信して推し量るのは自分以外のことや過去のこと、と分ける
  • 時刻表や予定から当然と言える場面で「電車は10時に着くに違いない」と言い、根拠の種類と言い方が合わない。予定や計算なら「〜はずだ」、と導入の2つの例で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜はずだ(中級第2課)「はずだ」は予定・計算・理屈から当然そうなると言い(時刻表どおりなら10時に着くはずだ)、「に違いない」は見たことからの直感や強い思いを含みます。予定の文に「に違いない」を使うと、根拠の種類と言い方が合わなくなります。
  • 〜かもしれません(初中級第5課)「かもしれない」は可能性が低くても言え、「違いない」はほぼ確かだと思っているときに使います。「かもしれない → だろう → に違いない」と確信の強さの線を板書し、手がかりの多さで選ばせます。
  • 〜にきまっている(中級第8課)「にきまっている」はさらに主観が強い会話の言い方で、相手に反論を許さない響きがあります。発表では「に違いない」、友達との言い合いでは「きまってるよ」と分けます。
関連する文型

この場面のことば・表現

  • 自然の大切さについて述べるときに使う表現発表の後半で「なぜ守りたいか」を言うときの表現を、気持ちを言うもの・価値を言うもの・未来につなぐものに分けて示します。どれも少し改まった言い方なので、発表では使い、友達との会話では「なくなったら困るよね」のような言い方に戻せればよいと伝えます。例:「かけがえのない」「自然の恵み」「一度失ったら取り戻せない」「次の世代に残したい」「〜を大切にしていきたい」「〜のおかげで今の暮らしがある」

語彙の扱い

この課の語は、家庭でできる環境対策(食品ロス・節電・使い捨て・リサイクル)、物の説明(大きさ・状態・傷・付属品)、生き物と環境の変化(生息地・絶滅・保護・温暖化)、自然の大切さ(恵み・かけがえのない・次の世代)の4つのかたまりに分かれます。ニュースや記事の漢語は読めて聞いてわかればよい語と、自分の暮らしや発表で使えるようにする語を分け、後者は必ず口に出させます。1 で聞いた対策の語を 4 の発表の「自分にできること」でも使わせると、課全体が一続きの話として定着します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 食品ロス(しょくひんロス) まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のこと。 〜を減らす・〜が出る・家庭の〜
    家族と夕飯の量について話す。
    作りすぎると食品ロスになるから、食べられる分だけにしよう。
  • 使い捨て(つかいすて) 一度使っただけで捨てること。また、そのように作られた物。 〜のコップ・〜をやめる・〜の傘
    コンビニのレジで、スプーンを断る。
    使い捨てのスプーンは要りません。自分のを持っているので。
  • 節電(せつでん) 電気を無駄に使わないようにすること。 〜する・〜を呼びかける・夏の〜
    寮の掲示板に貼る紙を書く。
    使っていない部屋の電気をつけっぱなしにしないで、節電にご協力ください。
  • 譲る(ゆずる) 自分の物を、ほかの人に渡して使ってもらう。 友達に〜・安く〜・席を〜
    帰国の前に、後輩に机を渡す。
    この机、まだ使えるから、よかったら譲るよ。
  • 処分する(しょぶんする) 要らなくなった物を、捨てたり売ったりしてなくす。 家具を〜・古い服を〜・まとめて〜
    引っ越しの準備をしている。
    引っ越しの前に、使わない家具を処分しなければならない。
  • 傷(きず) 物の表面についた、こすれたりへこんだりしたあと。 〜がある・〜がつく・小さな〜
    譲る本棚の状態を説明する。
    角に小さな傷がついていますが、棚はしっかりしています。
  • 生息地(せいそくち) ある生き物がすんで、子どもを育てている場所。 〜を守る・〜が狭くなる・鳥の〜
    自然保護の記事を読む。
    森が切られるにしたがって、サルの生息地は少しずつ狭くなっている。
  • 絶滅(ぜつめつ) ある種類の生き物が、一匹も残らずいなくなること。 〜のおそれがある・〜する・〜を防ぐ
    動物園で説明の板を読む。
    この鳥は絶滅のおそれがあるため、国が保護している。
  • 保護する(ほごする) 弱いものが傷ついたりいなくなったりしないように守る。 自然を〜・動物を〜・けがをした鳥を〜
    ボランティアの経験を話す。
    浜でけがをしたウミガメを保護する活動に参加しました。
  • 温暖化(おんだんか) 地球の平均の気温が、長い年月の間に上がっていくこと。 地球〜・〜が進む・〜の影響
    ニュースを見ながら友達と話す。
    最近の夏の暑さは、温暖化の影響に違いないね。
  • 恵み(めぐみ) 自然などから受ける、暮らしに役立つよいもの。 自然の〜・海の〜・〜を受ける
    ふるさとの川について発表する。
    わたしの村は、昔から川の恵みのおかげで暮らしてきました。
  • かけがえのない(かけがえのない) ほかのもので代わりにすることができないほど大切な。 〜自然・〜存在・〜思い出
    発表の最後に、守りたい理由をまとめる。
    この森は、町の人にとってかけがえのない場所です。

宿題と次のコマ

宿題は、自分のふるさとか今住んでいる町で守りたい自然を一つ選び、「どこの・どんな自然か」「思い出」「今どうなっているか」「なぜ守りたいか」「自分にできること」の5つのメモにまとめ、「〜ことか」「〜に違いない」「〜わけがない」のうち2つを入れて1分半で話せるように準備してくること。次のコマの最初に数人に話してもらってから、第19課「科学の力」の1「見つけた!」に入ります(自然を守る話から、暮らしに役立つ科学の話につなぎ、環境と技術の両面を考えさせます)。

よくある質問

  • 『できる日本語 中級』第18課「地球に生きる」は何コマで終わりますか?

    90分なら3コマが目安です。1コマ目に導入と1のニュースの聞き取り、2の「〜向き」まで、2コマ目に2の譲るロールプレイと3の記事、3コマ目に4の発表と課のまとめを置きます。学習項目が13と多いので、「〜つつ(も)」「〜ことなく」「〜にほかならない」のような硬い書き言葉は、読んで聞いてわかる・言い換えられるところまでにし、口で使う練習は「〜っぱなし」「〜向き」「〜わけがない」「〜に違いない」に時間を回すと収まります。

  • 「〜わけがない」と「〜わけではない」の違いはどう教えればいいですか?

    「わけがない」は「絶対にありえない」と強く打ち消す形、「わけではない」(第9課)は「いつも・全部がそうとは限らない」という部分の否定で、意味はほぼ逆です。板書で「100%ない」「全部ではない」の2行を並べ、教師が読む文に学習者が手の上げ方で答える練習を何度か入れると、聞いてすぐ区別できるようになります。

  • 「〜(よ)うにも〜ない」と「〜ようがない」はどう違いますか?

    「〜ようにも〜ない」は、しようとしているのに外の事情に阻まれてできないこと(車がないので、届けようにも届けられない)、「〜ようがない」はどんな方法もないこと(住所がわからないので、届けようがない)を言います。同じ動詞で2文を並べ、「事情の問題か、方法の問題か」を選ばせると混ざりにくくなります。形も、意向形+にも+可能形の否定と、ます形の語幹+ようがない、と別なので板書で分けて示します。

  • 「〜にほかならない」と「〜にすぎない」はどう区別させればいいですか?

    どちらも文末で言い切る硬い形ですが、「にほかならない」は「まさにこれだ」と大きく強く示し、第17課の「にすぎない」は「ただこれだけだ」と小さく見ます。矢印を上と下に向けて板書し、同じ文の前半に両方を付けて読み比べると、筆者の評価が逆になることが伝わります。記事の主張を読み取る問いで、どちらの形かを手がかりにさせるのも効果があります。

  • 「〜っぱなし」と「〜まま」はどう使い分けますか?

    「〜まま」(第5課)はタ形を受けて状態を中立に言い、「〜っぱなし」は「ます」を取った形について、閉める・止めるべきなのにそうしなかったという非難やもったいなさを含みます。「めがねをかけたまま寝た」は自然ですが、「つけっぱなし」は電気や水のように無駄が出る場面に向きます。学習者が「*開けたっぱなし」と形を混ぜたら、2つの接続を並べて直します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。