二つのことを同時にする「〜ながら」、毎日くり返していることを言う「〜ています」、良いところや理由をいくつも並べる「〜し、〜し」の三つを扱う課です。「〜ながら」は ます形 に、「〜し」は第20課の普通形に付くので、新しい活用の形は出ません。そのぶん、どちらが主な動作か(〜ながら)、並べたものが同じ向きを向いているか(〜し)という意味の線引きに時間を使うのがこの課の芯です。「〜し、〜し……」で最後まで言わずに止めると、はっきり「できません」と言わずに断る気持ちが伝わることも、会話の中で体験させます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第20課の普通形の表(動詞・い形容詞・な形容詞・名詞)を口頭で一周し、な形容詞と名詞の「だ」を確かめる。第14・15課の「〜ています」の絵を一枚ずつ見せ、いま進んでいる動作と仕事の言い方を思い出させる |
| 文型1(〜ながら) | 35分 | 教師が二つの動作を同時にして見せ、「V1 ます ながら V2」の枠に入れる。主な動作が後ろに来ることを絵の入れ替えで確かめ、長い期間の「働きながら〜に通っています」まで広げる |
| 文型2(習慣の〜ています) | 25分 | カレンダーにくり返しの絵を貼って「毎朝〜ています」。「今〜ています」の絵と並べて区別し、「子どものとき〜ていました」で過去の習慣も言わせる |
| 文型3(〜し、〜し、それに〜) | 20分 | アパートや店の絵で良いところを三つ重ねる。「だし」を色チョークで囲み、並べるものは同じ向き、という線を一本だけ引く。1コマ目はここまで |
| 文型4・5(理由の〜し) | 40分 | 2コマ目の初めに普通形の「だ」と文型3の言い方を5分で確かめてから入る。二つのアパートから選んだ理由で「〜し、〜し、結論」。誘いを言いさしで断る形を体験させ、第26課の「どうして〜んですか」への答えとして「〜し、〜から」を練習する |
| 会話 | 25分 | 頼みごとをされて、忙しい事情を並べて言いよどむ流れ。言いさしの「……」の声の調子をまねさせ、頼みごとの中身と理由を学生の生活に置き換えて再現させる |
| 練習C・問題 | 25分 | 練習Cは「〜ながら」で自分の生活を紹介する場面、「〜し、〜し、それに〜」でほめる場面、誘いを言いさしで断る場面の三つ。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
「音楽を聞きながら勉強します」のように、同じ人が二つの動作を同時にすることを言う文型です。主な動作は後ろのV2で、前のV1は「どんなふうにしているか」を添える動作です。ですから「勉強しながら音楽を聞きます」と言うと、聞くほうが主な動作になります。また「働きながら大学に通っています」のように、同じ時間でなくても、ある期間に二つのことを並べて続けている場合にも使います。過去か現在か、丁寧かどうかはV2で表し、V1はいつも ます形 から ます を取った形です。文法の用語で言うと、同時の動作を表す従属節で、南不二男の分類では主節への結びつきがいちばん強い類(A類)に入れられます。
V1 ます形(ます を取る)+ながら+V2(聞きます→聞きながら)。時と丁寧さは V2 で表す。二つの動作は同じ人がする
練習Bの型: 二つの動作の絵を左右に並べたカード(音楽を聞く+勉強する、歌を歌う+掃除をする、メモする+話を聞く など)を見せ、「〜ながら〜ます」で言わせる。左右を入れ替えたカードも混ぜ、主な動作が後ろに来ることを口で確かめる。練習Cの型: 「勉強するとき、何をしながらしますか」「いつも〜ながら〜ます」をペアで聞き合い、最後に「〜ながら〜ています」で自分の生活を一文ずつ言わせる。
「毎朝散歩しています」のように、ある期間くり返している習慣を言う文型です。形は第14課の「今〜ています」(いま進んでいる動作)と同じで、第15課でも仕事や習慣を「〜ています」で言う形に触れていますが、この課では「毎朝」「毎晩」「いつも」「毎週〜曜日」などといっしょに、生活の中で続けていることを言うのに使います。「毎朝散歩します」も間違いではありませんが、「〜ています」と言うと「このごろずっと続けている」という感じが出ます。過去のある期間の習慣は「子どものとき、毎日ピアノを習っていました」のように「〜ていました」で言います。文法の用語で言うと、「ている」のアスペクトのうち「くり返し(習慣)」の用法で、第14課の「動作の進行」、第15課の「結果の状態」と並べて整理されます。
Vて形+います(毎朝・毎晩・いつも・毎週〜曜日 などといっしょに)。過去の習慣は Vて形+いました
練習Bの型: 頻度のことば(毎朝・毎晩・毎週土曜日・いつも)と動作の絵を組み合わせたカードで「〜ています」と言わせ、次に「子どものとき」のカードを足して「〜ていました」に替えさせる。練習Cの型: 「毎朝何をしていますか」「休みの日はいつも何をしていますか」をペアで聞き合い、答えに「〜ながら」を一つ入れる(音楽を聞きながら散歩しています)ところまで広げる。
「この部屋は広いし、明るいし、それに駅から近いです」のように、同じ向きの事がらをいくつも並べて、「それだけではない、まだある」という気持ちで言う文型です。「し」は普通形に付き、二つ目、三つ目と重ねられます。「それに」は「そのうえ」という意味の接続のことばで、最後にもう一つ付け足すときに使います。良い点を並べるなら全部良い点、困る点を並べるなら全部困る点にそろえるのが自然です。並べる名詞には「が」より「も」がよく付き、「ほかにもある」感じが強くなります(料理も作れるし、歌も歌えるし)。丁寧に話す場面では「広いですし」のような形も聞きますが、この課では普通形で練習します。文法の用語で言うと、「し」は並列の接続助詞、「それに」は付け加え(累加)の接続詞です。
普通形+し(動詞: 作れるし/い形容詞: 広いし/な形容詞・名詞: 静かだし・学生だし)。最後に「それに〜」で付け足す
練習Bの型: 一つの物や人について性質を三つ書いたカード(部屋=広い・明るい・新しい、友達=まじめ・熱心・親切 など)を出し、「〜し、〜し、それに〜」でつなげさせる。い形容詞・な形容詞・名詞・動詞の可能形を混ぜて出し、「だし」の付け忘れと付けすぎを拾う。練習Cの型: 「〜はどうですか」と聞かれて、自分の町・学校・アルバイト先の良いところ(または困るところ)を三つ並べて答えるやり取りにする。
「駅から近いし、部屋も明るいし、このアパートにします」のように、理由をいくつか並べて、そのあとに結論(決めたことや考え)を言う文型です。第9課の「〜から」が理由をはっきり一つ示すのに対して、「〜し」は「ほかにも理由はあるが、たとえば」という気持ちで並べるので、言い方がやわらかくなります。結論を言わずに「仕事も忙しいし、時間もないし……」で止めると、はっきり「できません」と言わずに断る気持ちを伝えられます。会話の題の言い方がこの使い方です。語用論の見方で言うと、言いさしの断りは「断る」という発話行為をことばにせず理由だけで伝える間接的な言い方で、相手の面子をつぶさない配慮(ポライトネス)の例として扱えます。
普通形+し、普通形+し、結論(並べた理由から決めたこと・考え)。結論を言わずに「〜し……」で止めることもある
練習Bの型: 結論を書いたカード(このアパートにします/きょうは出かけません)と理由の絵2枚を組にして出し、「〜し、〜し、〜」でつなげさせる。練習Cの型: 誘い(〜ませんか)に対して、理由を二つ並べて言いさして断るやり取り。断られた側が「そうですか。じゃ、また今度」で受けるところまでを一組にして、役割を替えて回す。
「どうしてこの店によく来るんですか」「安いし、おいしいですから」のように、理由を並べて、最後の理由にだけ「から」を付ける形です。第26課の「どうして〜んですか」と聞かれて答えるときによく使い、結論(だからよく来ます)は言わなくても伝わります。かっこの部分は省いてもよく、「〜し、〜から」で理由二つ、「〜し、〜し、〜から」で理由三つになります。「から」の前は第9課と同じで、丁寧に話すときは「〜ですから」「〜ますから」の形になります。
普通形+し、(普通形+し、)普通形/丁寧形+から。「どうして〜んですか」への答えで、結論は言わないことが多い
練習Bの型: 「どうして〜んですか」の質問カードと理由の絵2〜3枚を組にして出し、「〜し、〜から」「〜し、〜し、〜から」で答えさせる。「から」は最後の一つ、その前は全部「し」、と板書を指しながら進める。練習Cの型: 店・学校・住む町を選んだ理由を聞き合い、答えを聞いた側が「そうですか。いいですね」で受けるところまでを一組にする。
この課の新出語は、「〜ながら」「〜ています」の材料になる動作や生活の語(かみます・通います・メモします など)と、「〜し、〜し」で人や物を評価するときに使う語(まじめ・熱心・値段・味・給料 など)が中心です。動作の語は絵カードで ます形 のまま出し、文型1の二つの絵を組み合わせるカードにそのまま使います。評価の語は「〜し、〜し」の文の中で覚えさせ、「それに」は文型3の板書の中で示します。
会話は、知り合いから頼みごとをされて、仕事や試験で忙しいことを「〜も〜し、〜も〜し……」と並べて言いよどむ、という流れが芯です。結論を言わずに止めることで、はっきり「できません」と言わずに断りの気持ちを伝える、文型4の言いさしを場面の中で体験させるのがねらいです。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、役割を替えて二回読んだら、頼みごとの中身と忙しい理由を学生の生活(アルバイト・試験・引っ越し など)に置き換えて再現させます。頼む側が「〜んですが」で切り出す言い方は第26課とつながるので、そこを指して確かめます。言いさしの「……」は、声を下げて少し間を置く調子までまねさせます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「わたしの毎日」を五文で書くこと(「〜ています」二つ・「〜ながら」一つ・「〜し、〜し、それに〜」で自分の町か学校を紹介する文一つ・「どうして日本語を勉強しているんですか」への「〜し、〜から」の答え一つ)。次のコマの最初に、誘い(〜ませんか)を言いさしで断るやり取りをペアで一回ずつしてから作文を発表させ、第29課の「〜ています」につなぐ。第29課の「〜ています」は物の状態を表すので、この課の習慣の「〜ています」と並べて板書できるよう、カレンダーの絵を残しておく。
第28課の「〜ながら」はどう導入すればいいですか?
教師が二つの動作を同時にして見せるのがいちばん早いです。歩くだけ、電話で話すだけを別々に見せてから、歩きながら話して「歩きながら話します」と言います。板書では ます を線で消して「ながら」を付け、後ろのV2に「主な動作」と書きます。そのあと「働きながら大学に通っています」のように、ある期間に二つを続けている使い方に広げます。
「〜ながら」と「〜て、〜」「〜てから」の違いは何ですか?
「〜ながら」は一人が二つの動作を同時にする言い方、第16課の「〜て、〜」は動作を順番に並べる言い方、「〜てから」は前の動作が終わってから次をするとはっきり言う言い方です。時間の線を板書し、矢印が重なるか並ぶかで見せると区別しやすくなります。「〜ながら」は二人の動作には使えないことも、ここで確かめます。
第28課の「〜ています」は第14課・第15課の「〜ています」とどう違いますか?
形は同じで、第14課は今進んでいる動作、第15課は結果の状態や仕事の言い方、この課は毎朝・毎週のようにくり返している習慣です。決め手はいっしょに使うことばで、「今」なら進行、「毎朝・いつも」なら習慣になります。この課では第14課との区別に絞り、物の状態の「〜ています」が出る第29課で、まとめて一枚の板書に並べると混乱しません。
「〜し」と「〜から」の違いは何ですか?
「〜から」は理由をはっきり一つ示し、「〜し」は理由や良いところの例をいくつか並べて、ほかにもありそうな感じを出します。そのため、「〜し、〜し……」で結論を言わずに止めると、やわらかく断る言い方になります。文型5では二つを組み合わせ、「〜し、〜から」と最後の理由にだけ「から」を付けます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は普通形の復習、「〜ながら」、習慣の「〜ています」、「〜し、〜し、それに〜」まで。2コマ目は理由の「〜し」と「〜し、〜から」、会話、練習Cと問題です。普通形の「だ」で崩れるクラスでは、2コマ目の初めに5分の確認を入れると「〜し」の練習が止まりません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。