初級Ⅱの最初の課で、文末に「〜んです」を付ける言い方を集中して扱います。見たこと・聞いたことをきっかけに「〜んですか」と事情をたずね、「〜んです」で理由や事情を説明し、さらに「〜んですが、」で事情を先に言ってから頼む・助言を求める、という三つの使い方を一つずつ積み上げます。形の上では第20課の普通形に「んです」を付けるだけですが、な形容詞と名詞の「だ」が「な」に変わる点だけは毎回口に出させます。「〜んです」は何でも付ければ丁寧になる表現ではなく、「その場の事情」と結びつく表現だということを、場面を見せながら伝えるのがこの課の芯です。使いすぎると相手を問い詰める感じになることも、早めに一言添えておきます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(普通形の復習と初級Ⅱへのつなぎ) | 15分 | 第20課の普通形の板書(動詞・い形容詞・な形容詞・名詞の四列、現在・過去・肯定・否定)を復活させ、カードで「行きます→行く」「静かです→静かだ」「学生です→学生だ」を速く言わせる。最後に「静かだ→静かな」「学生だ→学生な」と赤で書き換え、「今日はこの形を使います」とだけ言う |
| 文型1(普通形+んですか) | 35分 | 教師が大きな荷物を持って教室に入る、上着を着て帽子をかぶる、などの動作を見せ、学生に「どこへ行くんですか」と聞かせる。普通形の四列の横に「+んですか」を書き、「見たことについて聞く」と矢印で示す |
| 文型2・3(どうして〜んですか/〜んです) | 40分 | 疲れた顔・かさを二本持って来た学生などの場面で「どうして〜んですか」「〜んです」のやり取り。続けて「どうしたんですか」「頭が痛いんです」のように、聞かれた事情を「〜んです」で説明する型に広げる。1コマ目はここまで |
| 文型4(〜んですが、〜ていただけませんか) | 30分 | 「〜てください」との丁寧さの差を、相手(友達・先生)を替えて見せる。「事情+んですが、」を先に言うと頼みやすくなることを、言う・言わないの二通りで比べる |
| 文型5(〜んですが、疑問詞〜たらいいですか) | 30分 | ごみの分け方の絵、駅の切符売り場の絵などで、やり方がわからない人がたずねる場面を作る。第25課の「〜たら」のた形をカードで一度確かめてから入る |
| 会話 | 15分 | 引っ越してきたばかりの人が、ごみの出し方を管理人にたずねる流れ。「〜んですが、〜たらいいですか」と「〜ていただけませんか」がどこで出るかに印を付けさせ、役割を替えて読む |
| 練習C・問題 | 15分 | 練習Cは「〜んですか」で声をかける場面・理由を言う場面・頼む/やり方を聞く場面の三つ。問題は聞き取りを教室で、文法の部分は宿題に |
相手の様子や持ち物を見て、または話を聞いて、「それはどういうことですか」と事情をたずねる言い方です。ただの質問(「行きますか」)と違い、目の前の何か(見たこと・聞いたこと)がきっかけになっていることを相手に示します。そのため、関心を持っていることが伝わり、会話が自然に始まります。一方で、きっかけが無いのに使ったり、目上の人に何度も使ったりすると、問い詰めているように聞こえることがあります。話し言葉では「んです」、書き言葉では「のです」になります。文法の用語では「ノダ文」と呼ばれ、話し手が目の前の状況や前の話と結びつけて説明を求めたり示したりする、説明のモダリティの一つとして扱われます。
普通形+んですか(V: 行くんですか・行かないんですか・行ったんですか/いA: 高いんですか/なA: 静かなんですか/N: 休みなんですか。なAとNの現在肯定は「だ」が「な」に変わる。過去は「静かだったんですか」「休みだったんですか」でそのまま)
持ち物や様子の絵カード(大きなかばん・ぬれた傘・新しいカメラ・きれいな花)を出して「〜んですか」の代入練習(練習Bの型)。な形容詞・名詞のカードを混ぜて「〜なんですか」を何度も言わせる。次にペアで、相手の持ち物や服を一つ見つけて「〜んですか」と聞き、相手が「ええ、〜んです」と答える(練習Cの型)。
「どうして〜んですか」で理由をたずね、「〜んです」で理由を説明するやり取りです。理由を聞くときは、「どうして〜ますか」より「どうして〜んですか」のほうが自然で、会話ではふつうこちらを使います。答えるときも、「〜からです」のほかに「〜んです」で事情を説明する言い方がよく使われます。「〜んです」で答えると、ただ理由を述べるより、「こういう事情があるんです」と相手に分かってもらおうとする気持ちが出ます。
どうして+普通形+んですか ── 普通形+んです(なA・Nの現在肯定は「〜なんです」。答えの前に「〜からです」を使ってもよい)
原因と結果の二枚一組の絵カード(休んだ人と熱・歩く人と壊れた自転車など)で、教師が一枚目を見せて学生が「どうして〜んですか」、二枚目を見せて別の学生が「〜んです」と答える代入練習(練習Bの型)。次にペアで、自分の最近の行動(引っ越し・アルバイト・旅行など)を一つ言い、相手が理由をたずねる(練習Cの型)。
相手に聞かれたことや、その場の状況について、話し手が「実はこういう事情なんです」と説明を加える言い方です。「どうしたんですか」と聞かれて「頭が痛いんです」と答える、約束に遅れて「すみません。目覚まし時計が鳴らなかったんです」と自分から事情を言う、といった使い方が代表的です。同じ内容を「頭が痛いです」と言うと、ただの報告になり、相手の問いや状況とのつながりが弱く聞こえます。ただし、何の状況もないのに「わたしは〜なんです」と言うと、何かの言い訳をしているように聞こえることがあります。
(状況・相手の問い)+普通形+んです(なA・Nの現在肯定は「〜なんです」)
体の調子・困ったことの絵カード(頭痛・けが・忘れ物・道に迷うなど)で、「どうしたんですか」「〜んです」の代入練習(練習Bの型)。次に、遅れた・宿題を忘れた・誘いを断る、の三つの場面カードを引き、自分から「すみません。〜んです」と事情を言う練習(練習Cの型)。断るときは「ちょっと〜んです」で終えてよいことをここで見せる。
まず「〜んですが、」で自分の事情を言い、そのあとで「〜ていただけませんか」とていねいに頼む言い方です。「〜んですが、」は話の前置きで、これから頼みたいことや聞きたいことの背景を相手に知らせるはたらきをします。「〜ていただけませんか」は、第14課の「〜てください」よりずっとていねいで、目上の人や知らない人に頼むときに使います(「いただけ」はこの段階ではかたまりで覚え、形の成り立ちは可能形を習う第27課以降でよい)。事情が相手に伝われば、頼みの部分を言わずに「〜んですが……」で止めることも会話ではよくあります。
普通形+んですが、+Vて形+いただけませんか(なA・Nの現在肯定は「〜なんですが」)
「困っていること」のカード(読めない・わからない・忘れた・壊れた)と「頼むこと」のカード(教えて・貸して・直して・見て)を組にして、「〜んですが、〜ていただけませんか」の代入練習(練習Bの型)。次に、相手を先生・事務の人・友達のカードで替え、友達なら第14課の「〜てください」でもよい、と言い分ける場面練習(練習Cの型)。
「〜んですが、」で自分の状況を言い、そのあとで「どこに(何を・どう・だれに)〜たらいいですか」と、どうすればよいかを相手にたずねる言い方です。やり方・場所・相手などがわからなくて、アドバイスや指示がほしいときに使います。「〜たら」は第25課で習った形で、「〜たらいいですか」全体で「どうするのがよいか」を聞く意味になります。答えるほうは「〜たらいいですよ」「〜てください」で教えます。
普通形+んですが、+疑問詞(どこ・何・どう・だれ・いつ など)+Vた形+らいいですか
困った状況のカード(ごみ・忘れ物・病気・道・手続き)と疑問詞カードを組にして、「〜んですが、疑問詞〜たらいいですか」の代入練習(練習Bの型)。た形の言い換えが詰まる学生には、先に「出します→出した→出したら」の三段だけを速く言わせる。次に、町の役所・駅・アパートの管理人など役を決めたロールプレイで、たずねる側と教える側を交代する(練習Cの型)。
この課の新出語は、ごみの出し方や町の生活の語(ごみ・瓶・缶・置き場 など)、困ったときに使う動詞(探します・遅れます・間に合います・連絡します など)が中心です。ごみの語は実物や絵カードで文型5の場面にそのまま使い、動詞は普通形と「〜んです」の形を1組にして練習で出します。「何でも」「どこでも」のような疑問詞+でもの語は、文で覚えさせ、単語だけで説明しません。下の語は、この課の文型の練習で使いやすい語を選んだもので、教科書の新出語の一覧ではありません。
会話は、引っ越してきたばかりの人が、ごみの出し方がわからなくて管理人にたずねる、という流れです。前置きの「〜んですが、」から「どこに〜たらいいですか」「〜ていただけませんか」へと進む部分が、この課の文型4・5がそのまま使われる場面になっています。最初は音声か教師の読みで流れをつかませ、ごみの日・置き場所など、たずねている内容を絵で確かめてから、役割を替えて二回読みます。そのあと、ごみを「自転車を止める場所」「荷物の受け取り」など学生の生活に近い困りごとに置き換えて再現させます。地域によってごみの分け方や出す日が違うので、学生の住んでいる町のルールを話題にすると身近になります。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「いま困っていること」を一つ選び、「〜んですが、〜たらいいですか」と「〜んですが、〜ていただけませんか」の二文で人にたずねる文を書くこと。次のコマの最初に普通形+んです(特に「〜なんです」)のカードテストをし、宿題の文をペアで発表し合ってから、第27課の可能形に入る。第27課の会話でも可能形に「〜んです」が付くので、この課の四列の板書は写真に撮っておく。
第26課の「〜んです」はどう導入すればいいですか?
教師が大きなかばんを持って教室に入る、ぬれたかさを持って来るなど、学生が見て思わず聞きたくなる様子を作り、「どこへ行くんですか」「雨が降っているんですか」と学生に言わせるところから始めます。意味を説明するより先に、「見たことがきっかけで聞く」場面を三つほど続けて見せます。そのあとで第20課の普通形の四列に「+んですか」を足し、な形容詞と名詞だけ「だ」が「な」に変わることを赤で書きます。
「〜んですか」と「〜ますか」の違いは何ですか?
「行きますか」は相手の予定をただたずねる質問で、「行くんですか」は大きな荷物を見たなど、目の前のきっかけがあって事情の説明を求める質問です。そのため「〜んですか」は関心を示して会話を始めやすい一方、きっかけが無いのに使ったり、目上の人に何度も使ったりすると問い詰めるように聞こえます。教室では同じ「旅行に行く」で、荷物の絵がある場合と無い場合を比べて見せると違いが伝わります。
「静かなんです」「休みなんです」の「な」はどう教えますか?
普通形の四列のうち、な形容詞と名詞の現在肯定だけ「だ」を消して「な」を赤で書き、「だ+ん」の形は無いと言い切ります。過去の「静かだった」「休みだった」にはそのまま「んです」が付くので、同じ板書の下の段に並べます。練習では、な形容詞・名詞のカードを3枚に1枚は混ぜて「〜なんです」を何度も言わせ、次のコマの最初にもカードで確かめます。
「〜ていただけませんか」はこの課でどこまで教えますか?
この課では、目上の人や知らない人にていねいに頼む決まった形として、かたまりで言えるようにするところまでにします。「いただけ」が可能形であることや「もらう」のていねいな形であることの説明は、可能形を学ぶ第27課以降に回します。教室でいちばん多い誤りは「*教えていただきませんか」なので、第6課の「〜ませんか」と混ざらないように繰り返し言わせます。
第26課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は普通形の復習から文型1〜3まで、2コマ目は文型4・5と会話、練習C・問題です。普通形が定着していないクラスでは導入の復習を長めに取り、3コマに分けてもかまいません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。