日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第25課「いろいろお世話になりました」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「いろいろお世話になりました」

初級Ⅰの最後の課で、条件を表す「〜たら」と、条件があっても結果が変わらないことを表す「〜ても」を学びます。「〜たら」は、起こるかどうか分からないこと(もし雨が降ったら)にも、必ず起こること(駅に着いたら)にも使い、どちらも作り方は普通形の過去に「ら」を付けるだけです。「〜ても」は て形 に「も」を付けて、「そうなっても、することは変わらない」と言います。形は第19課の た形 と第14課の て形 の応用なので、作り方より「どんなときに使うか」を場面で分けて見せるのがこの課の芯です。会話は転勤で町を離れる人が、お世話になった人たちと別れのあいさつをする場面です。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「もし〜たら、〜」で、起こるかどうか分からないことを仮に考えて、そのときにしたいこと・することを言える
  • 「〜たら、〜」で、これから必ず起こることのあとにすることを言い、頼んだり誘ったりできる
  • 「〜ても」「〜くても」「〜でも」で、条件があっても結果が変わらないことを言える
  • 初級Ⅰで習った活用形(て形・ない形・辞書形・た形・普通形)を並べ直し、どの文型でどの形を使うかを言える(初級Ⅰのまとめ)

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習と前の課のつなぎ)15分第19課の た形 と第14課の て形 をカードで速く回し、第20課の普通形の過去(行った・行かなかった・高かった・暇だった・雨だった)を表で確かめる。この課の二つの形は、どちらもこの形に「ら」か「も」を足すだけと予告する。第23課の「〜と」「〜とき」の文を一つずつ言わせておくと、文型1で違いを見せやすい
文型1(〜たら 仮定条件)40分カレンダーの絵で「もし1か月休みがあったら、〜たいです」を導入し、学生の夢を聞く。次に天気の絵で「雨が降ったら/降らなかったら」と、する・しないを分ける。板書は「もし __たら、__」の枠と、普通形の過去に「ら」を付ける矢印
文型2(〜たら 確定条件)35分時計の絵の針を動かして「12時になったら」「授業が終わったら」を導入。文型1の板書と並べて、必ず来ることには「もし」を付けないことに気づかせる。頼み・誘いの文(〜てください・〜ましょう)をうしろに置く練習を多めに
文型3(〜ても)35分文型1の「雨が降ったら、公園へ行きません」をひっくり返して「雨が降っても、散歩します」。値段の札と曜日のカードで いA・なA・N に広げ、動詞・いA・なA・N の4行の表を板書で作る
会話20分転勤する人と、見送る人たちの別れのあいさつ。決まり文句は立場(言う人・言われる人)に分けてかたまりで覚えさせ、「〜たら」「〜ても」を一つずつ足してロールプレイ
練習C・問題20分「もし〜たら」の問いカードを引いて答え合う、予定の相談で「〜たら」を使って頼む、のやり取りをペアで。問題の聴解は授業内で、書く練習は宿題に
まとめ(初級Ⅰのふり返り)15分た形 と て形 から「たら」「ても」ができたことを入り口に、初級Ⅰで習った活用形を一枚の表に並べ直す。どの形がどの文型で使われたかを学生に言わせ、初級Ⅱで新しい形が増える前に土台を確かめる

学習項目 1 〈普通形過去〉ら、〜(仮定条件)

意味・はたらき文型 1

「もし雨が降ったら、うちにいます」のように、まだ起こっていない、起こるかどうか分からないことを仮に考えて、そのときどうするか・どうなるかを言う文型です。前の文が条件で、うしろの文がそのときのことです。形は普通形の過去(た形・〜かった・〜だった)に「ら」を付けますが、過去の意味ではありません。うしろの文には「〜たいです」「〜てください」「〜ませんか」のような、したいこと・頼み・誘いも来ます。文の初めに「もし」を付けると、仮の話だということがはっきりします。文法の用語では「仮定条件」で、前の文が成り立つかどうかが分からない条件です。試験では「〜たら」「〜ば」「〜と」「〜なら」の使い分けとして問われます。第23課の「〜と」と違って、「〜たら」はうしろの文に意志・依頼・勧誘を置けます。

接続

V:た形+ら(降ったら・降らなかったら)/いA:〜かった+ら(高かったら・よかったら)/なA・N:〜だった+ら(暇だったら・雨だったら)

形
もし〜たら、〜ます〈Vた形〉ら/〈Vない形〉なかったら〈いA〉かったら/〈なA〉・Nだったらもし〜たら、何をしますか

導入

  • 「1か月の休み」の絵で夢を聞くカレンダーの絵に「休み 1か月」と書いて見せ、教師が「もし1か月休みがあったら、わたしは北海道を旅行したいです」と言う。続けて学生一人ずつに「もし1か月休みがあったら、何をしたいですか」と聞き、「〜たいです」で答えさせる。板書は「もし __たら、__」の枠で、「あります→あった→あったら」と た形 に「ら」を付ける流れを矢印で書く。
  • 天気の絵で、する・しないを分ける雨の絵と、天気のいい日の絵を左右に貼る。雨の絵を指して「あした、雨が降ったら、うちで本を読みます」、もう一方を指して「雨が降らなかったら、公園へ行きます」と言う。続けて「天気がよかったら」「暇だったら」と いA・なA の形も同じ絵で出し、板書の表に「降らなかったら・よかったら・暇だったら」を足して、普通形の過去の表と同じ形だと確かめる。

板書案

もし __たら、__
あります → あった → あったら
もし 1か月 休みが あったら、北海道を 旅行したいです。
降らなかったら/高かったら/よかったら/暇だったら/雨だったら
〔赤〕「ら」を丸で囲む 〔青〕うしろの文に「あした」の矢印=これからのこと

場面と発話(自作)

  • 同僚を週末のパーティーに誘いたい。相手の予定はまだ分からない。暇だったら、いっしょに行きませんか。
  • あしたは友だちと公園へ行く約束をしている。天気が分からないので、雨のときのことを決めておく。もし雨が降ったら、映画を見ましょう。
  • 会社で、新しく来た人に仕事のやり方を教えた。最後に一言言う。分からなかったら、また聞いてください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動詞のカード(降ります・あります・行きます)を見せて た形 から「〜たら」に言い換える練習から始め、いA・なA・N のカード(高い・いい・暇・雨)も混ぜて形を作らせる。次に条件の絵と行動の絵を組にして一文にする代入練習(練習Bの型)。仕上げは「もし時間がたくさんあったら」「もしあした休みだったら」などの問いカードをペアで引いて聞き合う(練習Cの型)。

  1. 口頭教師が辞書形のカードを見せ、学生は「た形→たら」を続けて言う(行く→行ったら、ある→あったら、降らない→降らなかったら)。次に いA・なA・N のカード(安い・いい・暇・休み)で同じことをする。最後に条件の絵(雨・お金・休み)と行動の絵(映画・旅行・寝る)を2枚組で見せ、全体で一文にしてから、指名して一人ずつ言わせる。キューの絵を変えるたびに、うしろの文も「〜たいです」「〜ます」「〜ましょう」に変える。
  2. ペア一人に条件のカード(もし休みが1か月あったら/もし日本語が上手だったら/もしあした雨だったら)を3枚、もう一人には何も渡さない。カードを持つ人が「もし〜たら、何をしますか」と聞き、相手は自分のことで答え、聞いた人は「いいですね」「どうしてですか」と一言返す。3枚終わったらカードを渡して役を替える。答えは紙に書かないで言わせ、最後に相手の答えを一つクラスに紹介させる。
  3. 産出活動名「もしもの紙」。学生は小さい紙に「もし〜たら、〜たいです」を自分のことで2つ書き、名前を書かずに箱に入れる。教師が一枚ずつ読み、クラスでだれの紙かを当てる。教師が見るのは、た形 の作り方(特に いい→よかったら、ない→なかったら)と、うしろの文を過去にしていないか。読み上げるときに誤りがあれば、正しい形で読み直して板書に足す。

つまずきと手当て

  • 「た」の形を見て過去の話だと思い、「もし雨が降ったら、うちにいました」とうしろの文まで過去にする。「〜たら」の文は、まだ起こっていないこと。うしろの文は「〜ます」で言う、と板書に「あした」の矢印を書いて確かめる
  • いA・なA・N の作り方を間違える(「高いたら」「暇たら」「いいかったら」)。普通形の過去の表(高かった・暇だった・雨だった・よかった)に戻り、その形に「ら」を付けるだけだと示す。「いい」が「よかったら」になることは特に確認する
  • 第23課の「〜と」と混ぜて、「雨が降ると、うちにいてください」のように、うしろに頼みや誘いを置く。「〜と」は そうするといつも必ずそうなること(このボタンを押すと、お茶が出ます)、頼み・誘い・したいことを言うなら「〜たら」と、二つの文を並べて見せる
  • ない形 から作るとき、「ない」に「たら」をそのまま付ける(*降らないたら、*行かないたら)。「降らない→降らなかった→降らなかったら」と、普通形の過去を一度言ってから「ら」を足す。「ない」は いA と同じ形の変わり方をする、と第20課の表で確かめる

既習の文型との違い

  • 〈V辞書形〉と、〜(第23課)「このボタンを押すと、お茶が出ます」の「〜と」は、そうすればいつも必ずそうなることを言い、うしろの文に頼み・誘い・したいことは置けません。「〜たら」は、仮の話にも、うしろの頼み・誘いにも使えます。学生が「*雨が降ると、うちにいてください」と言ったら「〜たら」に直し、二つの文を並べて板書します。
  • 〈V辞書形〉/〈Vた形〉とき、〜(第23課)「とき」は、そのことが起こる時を言うだけで、起こるかどうか分からないという気持ちはありません。「国へ帰るとき、お土産を買います」は帰ることが決まっている話で、「もし国へ帰ったら」は帰るかどうか分からない話です。学生が「もし」と「とき」を一緒に使ったら(もし休みのとき)、「休みだったら」に言い換えさせます。
関連する文型

学習項目 2 〈Vた形〉ら、〜(確定条件)

意味・はたらき文型 2

「駅に着いたら、電話をかけてください」のように、これから必ず起こることがあって、それが終わったあとで何をするかを言う文型です。形は文型1と同じですが、起こることが決まっているので「もし」は付けません。前の文のことが起こってから、うしろの文のことをする、という順番がはっきりしていて、予定・約束・頼みを言うときによく使います。「12時になったら」「授業が終わったら」のように、時間や決まった予定とよく結び付きます。文法の用語では「確定条件」(起こることが決まっている条件)と呼ばれ、文型1の仮定条件と形は同じでも、条件が成り立つことが話し手に分かっている点で分かれます。試験では、「〜たら」の「た」が過去ではなく、前のことが終わった(完了した)ことを表す、という見方で問われます。

接続

Vた形+ら(着いたら・終わったら・なったら)。「もし」は付けない。うしろの文は「〜ます」「〜てください」「〜ましょう」など、これからのこと

形
〈Vた形〉ら、〜てください〈時間〉になったら、〜〜が終わったら、〜ましょう〜たら、すぐ〜

導入

  • 時計の針を動かして「〜になったら」紙で作った時計の針を11時から少しずつ動かしながら、「12時になったら、昼ごはんを食べます」と言う。続けて「授業が終わったら、図書館へ行きます」「うちへ帰ったら、シャワーを浴びます」と教師の一日を言い、学生に「授業が終わったら、何をしますか」と聞く。板書は文型1の枠の横に「__たら、__」を書き、「必ず来る」と添える。
  • 文型1と並べて「もし」が要るか聞く板書に「もし1か月休みがあったら」と「12時になったら」を並べ、学生に「1か月の休みはありますか」「12時は来ますか」と聞く。1か月の休みは分からない、12時は必ず来る、と学生が答えたら、必ず来ることには「もし」を付けない、と二つ目の文の前に「もし」と書いて線で消す。形が同じでも、もしかの話か、決まった順番の話かで使い方が分かれることが目で分かる。

板書案

__たら、__(必ず 来る)
12時に なったら、昼ごはんを 食べます。
駅に 着いたら、電話を かけて ください。
もし 12時に なったら(必ず来ることには もし を付けない)
〔赤〕前のこと → うしろのこと の順番の矢印 〔青〕「もし」に線を引いて消す

場面と発話(自作)

  • 友だちが今夜、遠くから電車で来る。着いた時間を知りたいので頼む。駅に着いたら、電話をかけてください。
  • 会社で、同僚と仕事のあとの予定を話している。仕事が終わったら、いっしょに一杯飲みましょう。
  • 日本語学校で、先生にこれからのことを聞かれた。大学を出たら、国へ帰って、日本語の先生になりたいです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

時間・出来事の絵カード(12時・授業が終わる・駅に着く)と行動の絵カードを2枚組にして「〜たら、〜ます」を作る代入練習(練習Bの型)。続けて、うしろを「〜てください」「〜ましょう」に変えて頼む・誘う形にし、ペアで「きょう、うちへ帰ったら、何をしますか」「日本語の勉強が終わったら、何をしたいですか」を聞き合う(練習Cの型)。

  1. 口頭紙の時計の針、教室の時間割、駅の絵を順にキューにする。教師が「12時」「授業が終わる」「駅に着く」と言い、学生は全体で「12時になったら」「授業が終わったら」「駅に着いたら」と前半だけを言う。慣れたら行動の絵(昼ごはん・図書館・電話)を足して一文にし、次に教師が「頼んでください」「誘ってください」と言って、うしろを「〜てください」「〜ましょう」に替えさせる。一人ずつ当てるときは、前の人と違う行動を言わせる。
  2. ペア一人が「あしたの予定表」(9時 会議、12時 昼休み、5時 仕事が終わる)を持ち、もう一人は持たない。予定表を持たない人が「何時に会いましょうか」と聞き、持つ人が「仕事が終わったら、電話をかけます」「昼休みになったら、会いましょう」と予定表を見て答える。持たない人は聞いたことをメモし、最後に予定表と合っているかを二人で確かめる。予定表を替えて役を交替する。
  3. 産出活動名「留守番メモ」。学生は、出かける前に家族やルームメートに残すメモを考えて、「〜たら、〜てください」を3つ書く(荷物が来たら、机の上に置いてください/7時になったら、晩ごはんを食べてください)。書いたものをペアで読み合い、相手のメモに「〜たら、〜ます」で返事を一つ書き足す。教師は「もし」を付けていないか、うしろの文が過去になっていないかを見て、必要なら板書の線で消した「もし」を指す。

つまずきと手当て

  • 必ず起こることに「もし」を付ける(「もし12時になったら、昼ごはんを食べます」)。文法の誤りではないが、場面に合わない。「12時は来ますか」と聞き返し、来ることが決まっているなら「もし」は要らないと、文型1の板書と並べて示す
  • 自分がした過去のことに使う(「きのう、うちへ帰ったら、シャワーを浴びました」)。自分がしたことの順番を言うなら第16課の「〜てから」(帰ってから、シャワーを浴びました)を使う、とこの課では決まりにしておく。「〜たら」のうしろが過去になる別の使い方は初級Ⅰでは扱わない
  • 第16課の「〜てから」と同じだと思って区別に迷う。これからのことなら どちらも使えることが多いが、「〜たら」には「そのときが来たら」という条件の気持ちがある、とだけ伝えて深入りしない

既習の文型との違い

  • 〈V1 て形〉から、V2(第16課)「〜てから」は二つのことの順番だけを言い、過去のことにも使えます(うちへ帰ってから、シャワーを浴びました)。「〜たら」はこれからのことに使い、「そのときが来たら」という条件の気持ちがあります。学生が「*きのう、授業が終わったら、図書館へ行きました」のように自分のしたことの順番を言ったら、この課では「〜てから」に直します。
  • 〈普通形過去〉ら、〜(仮定条件)(この課の文型1)形はまったく同じで、違うのは前の文のことが起こるかどうか分かっているかどうかです。分からないこと(1か月の休み・あしたの天気)には「もし」が付けられ、必ず来ること(12時・授業の終わり)には付けられません。迷う学生には「それは来ますか」と一つ聞くだけで分けられる、と教えます。
関連する文型

学習項目 3 〈Vて形〉も、〜 / 〈いA(い)〉くても、〜 / 〈なA〉でも、〜 / Nでも、〜

意味・はたらき文型 3

「雨が降っても、散歩します」のように、前の文のことがあっても、うしろの文のことは変わらない、と言う文型です。普通なら「雨が降ったら、散歩しない」と考えるところを、その予想と反対になることを言うときに使います。動詞は て形 に「も」、いA は「〜い」を取って「〜くても」、なA と N は「〜でも」を付けます。「いくら考えても、分かりません」のように「いくら」と一緒に使うと、「どんなにしても」という気持ちが強くなります。文法の用語では「逆接の仮定条件」と呼ばれ、文型1の「〜たら」(順接の条件)と反対の向きになります。試験では、普通なら予想される結果と反対のことがうしろの文に来る、という見方と、「いくら」「どんなに」のような語が前に来て意味を強める点が問われます。

接続

V:て形+も(降っても・降らなくても)/いA:〜い→〜くても(高くても・よくても)/なA:〜でも(大変でも)/N:〜でも(雨でも・日曜日でも)

形
〈Vて形〉も、〜〈いA〉くても、〜〈なA〉/Nでも、〜いくら〜ても、〜

導入

  • 文型1の文をひっくり返す板書に文型1の「雨が降ったら、公園へ行きません」を残したまま、教師が「わたしは散歩が大好きです」と言い、雨の絵の前で傘をさして歩くまねをして「雨が降っても、散歩します」と言う。二つの文を上下に並べ、「たら」のうしろは予想どおり、「ても」のうしろは予想と反対、と矢印の向きを変えて書く。「降って+も」と て形 に「も」が付いていることを丸で囲む。
  • 値段の札と曜日のカードで いA・なA・N に広げるとても高い値段の札を付けた時計の絵を見せ、「この時計は高いです。でも、欲しいです」と言ってから、「高くても、欲しいです」と一文にする。次に忙しく働く人の絵で「仕事が大変でも、頑張ります」、カレンダーの日曜日を指して「日曜日でも、会社へ行きます」と続ける。板書に 動詞・いA・なA・N の4行の表を作り、いA だけ「〜くても」、なA と N は「〜でも」になることを並べて見せる。

板書案

雨が 降ったら、公園へ 行きません。(予想どおり)
雨が 降っても、散歩します。(予想と 反対)
動詞:降って+も/いA:高く+ても/なA:大変+でも/N:雨+でも
いくら 考えても、分かりません。
〔赤〕「も」を丸で囲む 〔青〕上の文と下の文で矢印の向きを逆に

場面と発話(自作)

  • あしたは友だちと出かける約束がある。友だちに「雨だったら、やめますか」と聞かれた。いいえ、雨が降っても、行きます。
  • 店でとても欲しい時計を見つけた。でも、値段が高い。いっしょに来た友だちに言う。高くても、この時計が欲しいです。
  • 同僚に、日曜日も会社に来るのか聞かれた。今は仕事がとても忙しい。ええ、日曜日でも、来なければなりません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動詞のカードを て形 から「〜ても」に言い換える練習から始め、いA・なA・N のカード(高い・いい・大変・雨・日曜日)を混ぜて形を作らせる(練習Bの型)。次に「雨が降ったら、どうしますか」と聞いて、「〜たら、〜ません」と「〜ても、〜ます」の両方で答えさせる。最後にペアで「いくら〜ても、〜ます/〜ません」を使い、自分が必ずすること・どうしてもできないことを言い合う(練習Cの型)。

  1. 口頭動詞・いA・なA・N のカードを混ぜて1枚ずつ見せ、学生は全体で「〜ても」「〜くても」「〜でも」の形だけを言う(飲む→飲んでも、寒い→寒くても、下手→下手でも、子ども→子どもでも)。次に「普通なら」の絵(熱がある人・高い値段・雨の日曜日)を見せ、教師が「熱があります」と言ったら、学生が「熱があっても、会社へ行きます」と予想と反対のことを言う。最後に「いくら」の札を足し、「いくら食べても」「いくら練習しても」で続けさせる。
  2. ペア一人が「ふつうは〜」のカード(雨が降ったら、出かけない/高かったら、買わない/眠かったら、寝る)を読み、「〜さんは?」と聞く。相手は、自分がカードと反対なら「〜ても、〜ます」、カードと同じなら「〜たら、〜ません」で答え、理由を一つ足す(散歩が好きですから)。どちらの文型を使うかを答える人に選ばせることで、二つの向きの違いを使いながら確かめる。3枚で役を交替する。
  3. 産出活動名「わたしの約束3つ」。学生は、どんなときでも続けたいことを「〜ても、〜ます」で3つ書き(忙しくても、毎日日本語を勉強します)、一人ずつクラスの前で読む。聞いている学生は一つ選んで「本当に〜ても、〜ますか」と聞き返し、読んだ人が答える。教師は いA の「くても」、なA・N の「でも」、否定の「なくても」の形と、うしろの文が前の文と反対の向きになっているかを見る。

つまずきと手当て

  • いA の形を間違える(「高いでも」「高いても」)。第16課の「高くて」を思い出させ、「高い→高くて→高くても」と、て形 の並びに「も」を足すだけだと示す。「いい」は「よくても」になることも確認する
  • なA・N に「だ」を残す(「雨だでも」)、または動詞と名詞の形が混ざる(「雨が降りでも」)。動詞なら て形+も、名詞・なA なら でも、と板書の表の行を指して確かめる
  • 第15課の「〜てもいいですか」と結び付いて、「〜ても」のあとに「いいです」を付けてしまう(「雨が降ってもいいです、行きます」)。「〜ても、〜ます」は文がそのまま続くこと、「〜てもいいです」は許可を言う決まった形だと分けて板書する。あわせて「いくら〜ても」の「いくら」は、値段を聞く「いくらですか」とは働きが違うと一言添える
  • 否定の形を作れない(*降らないても、*行かないでも)。「降らない→降らなくて→降らなくても」と、ない形 も いA と同じに「〜なくても」になることを、第17課の「〜なくてもいいです」と並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉もいいですか(第15課)「〜てもいいですか」は許可を求める決まった形で、うしろの「いいですか」までで一つの文型です。この課の「〜ても、〜」は、そのあとに別の文が続きます。学生が「*雨が降ってもいいです、散歩します」と混ぜたら、許可の文と、条件があっても変わらない文の2行に分けて板書します。
  • 〈普通形過去〉ら、〜(仮定条件)(この課の文型1)「〜たら」のうしろは、その条件から普通に考えられること、「〜ても」のうしろは、その予想と反対のことです。同じ「雨が降る」で「降ったら、行きません」「降っても、行きます」と言い比べると、向きの違いがはっきりします。学生が「雨が降っても、行きません」のように予想どおりのことを言ったら、どちらの文型が合うかを聞き返します。
  • 〜が、〜(第8課・逆接の「が」)「高いですが、欲しいです」は、本当に高いという事実を言ってからつなぐ形です。「高くても、欲しいです」は、高いかどうかに関係なく欲しい、という仮の話にも使えます。学生が「〜ですが」ばかり使うときは、「もし高かったら?」と聞いて「〜ても」を引き出します。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は少なめで、「もし」「いくら(〜ても)」は文型と一緒に覚える副詞なので、語の練習を別に立てず、文型1・文型3の導入の中で出します。「億」は数の言い方を「万」から広げる機会なので、1億は1万の1万倍だと板書で確かめます。会話の「いろいろお世話になりました」「どうぞお元気で」のような別れの言葉は意味を分解せず、場面と動作つきのかたまりで覚えさせます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 着きます(つきます) 行きたい所まで行って、そこに入ります。旅行や電車のときによく使います。 駅に〜・空港に〜・うちに〜
    友だちが夜の電車で来る。着いた時間を知りたい。
    「駅に着いたら、電話をかけてください。」
  • 終わります(おわります) 授業や仕事などが、もう続かなくなります。 授業が〜・仕事が〜・会議が〜
    同僚と仕事のあとの予定を決める。
    「仕事が終わったら、いっしょに晩ごはんを食べませんか。」
  • なります(なります) 時間や季節が来ます。前と違う様子に変わります。 12時に〜・春に〜・20歳に〜
    昼休みの前、クラスメートに声をかける。
    「12時になったら、食堂へ行きましょう。」
  • 降ります(ふります) 雨や雪が空から落ちてきます。 雨が〜・雪が〜
    あした友だちと公園へ行く約束をしている。
    「雨が降ったら、映画を見ましょう。」
  • 考えます(かんがえます) 答えや方法を見つけるために、頭を使います。 よく〜・答えを〜・いくら〜ても
    宿題の問題がどうしても分からない。先生に言う。
    「いくら考えても、分かりません。」
  • 暇(な)(ひま(な)) することがなくて、時間がある様子です。 〜な時間・〜だったら・きょうは〜です
    友だちを週末に誘いたい。予定はまだ分からない。
    「土曜日、暇だったら、映画を見ませんか。」
  • 大変(な)(たいへん(な)) 仕事や勉強などが多くて、楽ではない様子です。 仕事が〜・勉強が〜・〜でも
    国の家族に、日本の生活について聞かれた。
    「勉強は大変でも、毎日楽しいです。」
  • 休み(やすみ) 学校や会社へ行かなくてもいい日や時間です。 〜の日・夏〜・〜だったら
    同僚に、日曜日の予定を聞かれた。
    「日曜日は休みでも、会社へ来なければなりません。」
  • 安い(やすい) 値段が低くて、少しのお金で買えます。 値段が〜・〜かったら・〜くても
    店で古いカメラを見ている。友だちと話す。
    「安かったら、買いたいです。」
  • 時間(じかん) 何かをするための時です。 〜がある・〜があったら・〜がない
    別の町へ行く友だちに、別れのときに言う。
    「時間があったら、遊びに来てください。」
  • 転勤します(てんきんします) 同じ会社のまま、別の町や国の事務所で働くようになります。 大阪へ〜・外国へ〜
    同僚に、来月からのことを話す。
    「来月、大阪へ転勤します。大阪へ行っても、また電話をかけます。」
  • 忘れます(わすれます) 覚えていたことが、頭からなくなります。 名前を〜・宿題を〜・日本語を〜
    勉強が終わって国へ帰る学生が、先生にあいさつする。
    「国へ帰っても、日本語を忘れません。」

会話の扱い

会話は、転勤で別の町へ行く人を囲んで、お世話になった人たちが別れのあいさつをする場面です。文型として「〜たら」「〜ても」が出ますが、教室では「いろいろお世話になりました」「頑張ってください」「どうぞお元気で」のような別れの決まり文句を、言う人と言われる人の立場に分けて入れることに時間を使います。ロールプレイは、勉強が終わって国へ帰る学生と先生、転勤する同僚と残る同僚、と場面を変えて二回。「国へ帰っても、日本語を忘れません」「時間があったら、遊びに来てください」のように、この課の文型を一つずつ入れさせると会話が自然に長くなります。初級Ⅰの最後の会話なので、第1課の初対面のあいさつ(「はじめまして」「どうぞよろしくお願いします」)と並べて、出会いと別れの言葉を学生と一緒に比べると、ここまでの学習のふり返りにもなります。

宿題と次のコマ

練習Bを書いて提出。問題の聴解は授業内で済ませ、読んで書く部分を宿題にする。あわせて「もし時間がたくさんあったら、〜」「日本語の勉強が終わったら、〜」「いくら〜ても、〜」の書き出しで1文ずつ書かせ、次のコマの最初にペアで読み合う。初級Ⅰの最後の課なので、次のコマで第14課から第25課までに出た活用形(て形・ない形・辞書形・た形・普通形)の表をクラスで完成させ、初級Ⅱの第26課「〜んです」で普通形をまた使うことを予告しておく。

よくある質問

  • 第25課の「〜たら」と第23課の「〜と」はどう違いますか?

    「〜と」は、そうすればいつも必ずそうなることを言い、うしろの文に頼み・誘い・したいことは置けません。「〜たら」は、仮の話にも、これから必ず起こることのあとにも使え、うしろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」を置けます。教室では「このボタンを押すと、お茶が出ます」と「駅に着いたら、電話をかけてください」を並べ、うしろの文の違いに気づかせると分かりやすくなります。

  • 仮定条件と確定条件は、同じ形なのにどう分けて教えればいいですか?

    形の説明は一度で済ませ、違いは「もし」が付けられるかどうかで見せます。「1か月の休みはありますか」「12時は来ますか」と学生に聞き、分からないことには「もし」が付き、必ず来ることには付かない、と板書の二つの文に印を付けます。「仮定」「確定」という用語は学生に言わなくてもよく、教師が区別して練習の順番を組めば十分です。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で復習と文型1・文型2、2コマ目で文型3、会話、練習Cと問題、初級Ⅰのまとめをします。た形 の定着が弱いクラスでは、1コマ目の最初に た形 の小テストを入れると、「〜たら」の練習が止まりにくくなります。

  • 「〜ても」の いA・なA・N の形はどう板書すればいいですか?

    動詞・いA・なA・N の4行の表を作り、左に て形(降って・高くて・大変で・雨で)、右に「も」を足した形を書きます。第16課の「〜くて」「〜で」の形にそのまま「も」が付くことが一目で分かるので、「*高いでも」「*雨だでも」が減ります。否定(降らなくても)は表の下に1行足すだけにします。

  • 「〜たら」を教えるとき、「〜ば」や「〜なら」にも触れたほうがいいですか?

    この課では触れず、「〜たら」だけで練習させるのが無難です。「〜ば」「〜なら」は初級Ⅱで条件形として出てくるので、そのときに「〜たら」と比べます。学生から聞かれたら、「〜たら」はいちばん広く使える形なので、今はこれで言えれば十分だと答えておきます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

PRこの教科書

手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。