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みんなの日本語 初級Ⅰ 第9課「残念ですが」の教案
『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「残念ですが」
第9課は「好き・嫌い・上手・下手・わかります・あります」という、対象を「を」ではなく「が」で示す述語 がまとまって出る課です。ここまでの「NをVます」に慣れた学習者が初めて「が」の目的語に出会うので、助詞の対比をはっきり見せることが芯になります。あわせて「〜から」で理由が言えるようになり、第6課の「Vませんか」で受けた誘いを、理由をそえて断る会話が完成します。程度の副詞(よく・だいたい・少し・あまり・全然)の肯定・否定の組み合わせも、この課で固めておきます。
このページについて 教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目 5時間 90分×2コマ
このページの内容
この課のねらい(Can-do)
進め方と時間配分
学習項目 1 Nが好きです/嫌いです
学習項目 2 Nが上手です/下手です
学習項目 3 Nがわかります
学習項目 4 Nがあります
学習項目 5 〈文〉から(理由)、〈文〉
語彙の扱い
会話の扱い
宿題と次のコマ
よくある質問
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課のねらい(Can-do)
好きなもの・得意なことを「Nが好きです」「Nが上手です」で言い、「どんなNが好きですか」と相手に聞ける
「わかります」「あります」を「が」で正しく使い、よく・だいたい・少し・あまり・全然で程度を言い分けられる
「〜から、〜」で理由を言い、「どうして〜か」に「〜からです」で答えられる
誘われたとき、理由をそえて「すみません、〜から、ちょっと……」と断り、相手は「残念ですね」で受けられる
進め方と時間配分 目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
段 時間 やること
導入(復習) 10分 第8課のな形容詞の肯定・否定(きれいです/きれいじゃありません)と「とても/あまり」を口頭で復習し、「好き」「上手」も同じ仲間だと予告する。第6課の「Vませんか」を学生同士で一度言わせておく(会話の下地)
文型1 30分 食べ物・スポーツ・音楽の絵カードで「Nが好きです/嫌いです」。「が」を色チョークで囲んで「を」ではないと最初に示す。「どんなNが好きですか」で種類を聞き合い、「あまり好きじゃありません」まで
文型2 20分 学生の字や絵をほめる形で「〈人〉はNが上手です」。自分のことには「上手」を使わず「あまり上手じゃありません」と返す習慣をここで見せる
文型3 30分 教師が学生の知らない言語を話して見せて「Nがわかります/わかりません」。程度の副詞5つを一本の線に並べ、あまり・全然は否定とセットにする
文型4 20分 財布と手帳で「Nがあります」(持っている・予定がある)。第10課の「場所にあります」とは別だと言っておく
文型5 35分 文型1〜4の文を理由にして「〜から、〜」。理由カードと結果カードを色分けして順番を体に入れ、「どうして〜か」→「〜からです」まで
会話・練習C・問題 35分 誘う→理由を言って断る→「残念ですね」の3ターンをロールプレイ 。問題の聞き取りは授業内、読みは宿題に回す
学習項目 1 Nが好きです/嫌いです
意味・はたらき文型 1
「好き」「嫌い」は、意味は英語の like などの動詞に近いですが、日本語ではな形容詞です。好きな対象は「を」ではなく「が」で示します。種類を聞くときは「どんなNが好きですか」。程度は「とても」「あまり(〜ません)」「全然(〜ません)」で言います。「嫌いです」は強い言い方なので、ふだんの会話では「あまり好きじゃありません」とやわらげることが多い、と一言そえておきます。
接続 N+が+好きです/嫌いです(な形容詞。否定は「好きじゃありません」「嫌いじゃありません」)
形
Nが好きです/Nが嫌いです Nが好きじゃありません どんなNが好きですか とても/あまり/全然+好きです(〜ません)
導入
食べ物の絵カードで「好き」を出す 第8課の「おいしい」の復習から入る。すしの絵を見せて「すしはおいしいですか」→「はい」。教師が笑顔で「わたしはすしが好きです」と言い、別のカード(たばこなど)では顔をしかめて「嫌いです」。板書は「わたしは [N]が 好きです/嫌いです」。「が」を色チョークで囲み、「を」ではないことを最初に示す。
「どんな」で種類を聞き合う 「料理」「スポーツ」「音楽」のような上位の語を板書し、「どんな料理が好きですか」→「タイ料理が好きです」の形で教師→学生、次に学生→学生。答えの中に「あまり好きじゃありません」も混ぜて聞かせ、程度の副詞(とても/あまり/全然)を板書の横に並べる。
板書案
わたしは [N]が 好きです/嫌いです
わたしは すしが 好きです。
〔赤〕「が」を丸で囲む 「を」に×
どんな 料理が 好きですか。……タイ料理が 好きです。
とても 好きです / 〔青〕あまり 好きじゃありません(否定とセット)
場面と発話(自作)
寮の食堂で、隣に座った日本人の学生と食べ物の話になった。 わたしは魚が好きです。肉はあまり好きじゃありません。
会社の昼休み、同僚に音楽の話を振られて、聞き返す。 どんな音楽が好きですか。……わたしはジャズが好きです。
友達にカラオケに誘われたが、歌うのが苦手。やわらかく断る前置きとして言う。 すみません。わたしはカラオケがあまり好きじゃありません。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
練習Bの型: 食べ物・飲み物・スポーツの絵カードを見せて「〜が好きです」。カードに◯×を付けて肯定と否定を言い分けさせ、次に「どんな+上位語」のカードで問答。練習Cの型: ペアで「どんな料理が好きですか」から始めて相手の好きなものを3つ聞き出し、「〜さんは〜が好きです」とクラスに報告させる。
口頭 食べ物・飲み物・スポーツの絵カード(すし・肉・ビール・テニス・カラオケ)に◯か×を付けて見せ、全体で「〜が好きです」「〜が好きじゃありません」。次に「とても」「あまり」の語カードを足し、カードを見せて個人に言わせる。最後に上位語のカード(料理・音楽・スポーツ)を出して「どんな〜が好きですか」の問いを言わせる。
ペア 一人に食べ物、もう一人にスポーツと音楽のカードを3枚ずつ伏せて配り、相手が持っているカードを当てる。「〜が好きですか」→「はい、とても好きです/いいえ、あまり好きじゃありません」。3問ずつで役を交替し、終わったら「どんな〜が好きですか」で相手の一番を聞く。
産出 「好きなもの調べ」: 教室を歩いて3人に「どんな料理が好きですか」「どんな音楽が好きですか」と聞き、メモをもとに「〜さんは〜が好きです。〜はあまり好きじゃありません」とクラスに報告する。教師は「が」が「を」になっていないか、「あまり」のあとが否定になっているかを聞き、報告が終わってから2〜3人分だけ直す。
つまずきと手当て
「すしを好きです」と「を」にする(母語で like が他動詞の学習者に多い)。板書の「が」を指さして直し、最初の数回は学生に「が」だけを言わせてから文を続ける
「どんな料理が好きですか」に「はい、好きです」と答える。質問の「どんな」を強く読んで聞かせ、答えは名詞で返すと示す
「好きくないです」「嫌いくない」と い形容詞の活用にする。第8課のな形容詞の表に「好き」「嫌い」を書き足して同じ仲間だと見せる
「嫌いです」をそのまま言いすぎる。「あまり好きじゃありません」を会話の形で先に練習しておく
既習の文型との違い
NをVます(他動詞)(第6課) 第6課の「すしを食べます」は動作の対象を「を」で示しますが、「好きです」はな形容詞なので対象は「が」です。意味の近い「食べます」と「好きです」を続けて習うので、学習者は「*すしを好きです」と言いがちです。板書で「Nを+動詞」と「Nが+好き」を上下に並べ、述語の種類で助詞が決まると見せます。
Nは〈なA〉です/Nは〈なA〉じゃありません(第8課) 「好き」「嫌い」は第8課のな形容詞と同じ活用で、否定は「好きじゃありません」です。違いは、第8課の「この町はにぎやかです」が「Nは」一つで終わるのに対し、「わたしは魚が好きです」は「は」と「が」 の二つの名詞を取ることです。「*好きくないです」の誤りは、第8課の活用表に「好き」を書き足して防ぎます。
関連する文型
学習項目 2 Nが上手です/下手です
意味・はたらき文型 2
「上手」「下手」は技能の高さ・低さを言うな形容詞で、対象は文型1と同じく「が」で示します。「〜さんは〜が上手ですね」は相手をほめる言い方で、自分のことには「上手」を使わず、「あまり上手じゃありません」「まだ下手です」のように言うのが普通です。「上手」は技術の話で、好きかどうかとは別のことだと分けておきます。
接続 〈人〉は+N+が+上手です/下手です(な形容詞。否定は「上手じゃありません」「下手じゃありません」)
形
〈人〉はNが上手です/Nが下手です Nが上手じゃありません 〈人〉はNが上手ですね(ほめる) とても/あまり+上手です(〜ません)
導入
教師の下手な絵と学生のきれいな字 教師が黒板にわざと下手な絵を描いて「わたしは絵が下手です」と笑わせる。次に字がきれいな学生のノートを見せて「〜さんは字が上手ですね」。板書は「〈人〉は [N]が 上手です/下手です」。文型1の板書の下に並べて「が」が同じだと見せる。
ほめられたときの返し方 教師が学生に「日本語が上手ですね」と言う。学生が「はい、上手です」と答えたら、首を振って「いいえ、あまり上手じゃありません」と言い直してみせる。自分のことには「上手」を使わない習慣を、説明は短く、やり取りで見せる。
板書案
〈人〉は [N]が 上手です/下手です
田中さんは 歌が 上手ですね。
いいえ、あまり 上手じゃありません。〔赤〕自分のことに「上手」は使わない
好き=〔ハート〕 上手=〔花丸〕
場面と発話(自作)
会社の歓迎会で、同僚の歌を聞いたあと、となりの人に言う。 田中さんは歌が上手ですね。
日本人の友達に「日本語が上手ですね」とほめられた。 いいえ、あまり上手じゃありません。
料理の話になって、自分のことを言う。 わたしは料理が下手です。毎日食堂で食べます。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
練習Bの型: 絵・歌・料理・野球・テニス・ダンスの絵カードと人物カード(先生・〜さん)を組み合わせて「〜さんは〜が上手です」。カードの◯×で上手・下手を言い分ける。練習Cの型: ペアで「〜さんは何が上手ですか」と聞き、「〜は上手ですが、〜は下手です」のように第8課の「〜が、〜」で対比して言わせる。
口頭 人物カード(先生・田中さん・山田さん)と技能の絵カード(歌・料理・テニス・絵・字)を組み合わせ、花丸なら「〜さんは〜が上手です」、×なら「下手です」と全体で言う。次に教師が個人に「〜さん、日本語が上手ですね」とほめ、「いいえ、あまり上手じゃありません」と返させる。ほめる・返すを数人に回して、返し方を口になじませる。
ペア 一人が技能カードを1枚引いて「〜さんは〜が上手ですか」と聞き、もう一人は自分のことで「いいえ、あまり上手じゃありません」「〜は上手じゃありませんが、好きです」と答える。3枚で交替。答えのあとに「好き」か「上手」かをペアどうしで言い合い、文型1と取り違えていないかを確かめさせる。
産出 「ほめ合いリレー」: 一人がとなりの人の得意なこと(字・歌・テニスなど、授業の前に聞いておいたこと)を「〜さんは〜が上手ですね」とほめ、ほめられた人は「いいえ、まだ下手です」のように返してから次の人をほめる。教師は、自分のことに「上手です」をそのまま使っていないか、「が」が落ちていないかを見て、一周したあとでまとめて直す。
つまずきと手当て
自分のことを「わたしは日本語が上手です」と言う。文法の誤りではないが自慢に聞こえると伝え、「あまり上手じゃありません」「まだ下手です」に直す
「上手」と「好き」を混同して、「野球が上手です」を「野球が好き」の意味で言う。絵カードに「好き=ハート」「上手=花丸」の印を付けて分ける
「*じょうずい」「*じょうずくないです」のように い形容詞の形で活用する(漢字で「上手い」と書くと「うまい」と読める別の語になるので、誤りの形はかなで板書する)。な形容詞の表で確認する
既習の文型との違い
Nが好きです/嫌いです(第9課 文型1) 「好き」は気持ち、「上手」は技術の高さで、どちらも対象を「が」で示す点は同じです。学習者は「野球が上手です」を「野球が好きです」の意味で言ったり、その逆を言ったりします。「テニスが好きですが、上手じゃありません」の文を一つ見せて、二つが別の軸だと示します。
Nは〈いA〉です/Nは〈いA(〜い)〉くないです(第8課) 「上手」「下手」は「い」で終わらないのでな形容詞です。「*じょうずくないです」「*へたいです」は い形容詞の活用を当てはめた誤りです。第8課の2つの活用表のうち、な形容詞の側に「上手・下手・好き・嫌い」を書き足しておきます。
関連する文型
学習項目 3 Nがわかります
意味・はたらき文型 3
「わかります」は、意味が取れる・理解できることを表す動詞です。対象(言語・言葉・授業など)は「を」ではなく「が」で示します。程度は「よく・だいたい・少し」(肯定)と「あまり・全然」(否定とセット)の副詞で言います。「〜がわかりますか」と聞かれたら「はい、〜わかります」「いいえ、〜わかりません」で答えます。
接続 〈人〉は+N+が+わかります/わかりません(「を」は使わない)
形
Nがわかります/わかりません Nがわかりますか よく/だいたい/少し+わかります あまり/全然+わかりません
導入
教師が学生の知らない言語を話して見せる 教師が学生の知らない言語で一言話し、「わかりますか」と聞く。首を振る学生を受けて「〜さんは◯◯語がわかりません」。次に英語で短く言って「英語がわかります」。板書は「〈人〉は [言語]が わかります/わかりません」。文型1・2の板書の下に並べ、「が」の仲間が3つになったと見せる。
程度を一本の線で見せる 黒板に「全然 ← あまり ← 少し ← だいたい ← よく」の線を引き、教師が自分のことを言う(「中国語が少しわかります」など)。否定と結びつく「あまり」「全然」だけ色を変え、学生にも自分の言語で言わせる。
板書案
〈人〉は [言語]が わかります/わかりません
わたしは 英語が わかります。
よく ― だいたい ― 少し + わかります
〔赤〕あまり ― 全然 + わかりません
好き・上手・わかります・あります → 〔丸〕が
場面と発話(自作)
アルバイト先で、店長に日本語で仕事の説明を受けたが、聞き取れなかった。 すみません。ちょっとわかりません。もう一度お願いします。
日本人の友達に、テレビのニュースがわかるか聞かれた。 テレビの日本語は難しいです。あまりわかりません。
新しいクラスの自己紹介で、できる言語を言う。 わたしは英語と中国語がわかります。日本語は少しわかります。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
練習Bの型: 言語名のカード(英語・日本語・中国語・タイ語など)と程度のカード(よく・だいたい・少し・あまり・全然)を同時に見せて1文を言わせる。「あまり」「全然」のカードが出たら必ず「〜ません」になることを徹底。練習Cの型: 「〜語がわかりますか」→「はい、少しわかります」の問答を、ペアで3つの言語について。
口頭 言語名のカード(英語・中国語・タイ語・日本語・韓国語)と程度のカード(よく・だいたい・少し・あまり・全然)を左右の手に1枚ずつ持ち、同時に見せて1文を言わせる。初めは全体、慣れたら個人に速く回す。「あまり」「全然」の赤いカードが出たら、文末が「わかりません」になるかを必ず聞く。
ペア 「〜語がわかりますか」→「はい、少しわかります/いいえ、全然わかりません」の問答を、言語のカード3枚で。答える側は程度のカードを自分で選んで見せる。次に「漢字」「ひらがな」「かたかな」のカードに替えて、言語以外の対象でも同じ形で言えることを確かめる。
産出 「わたしのことばの地図」: 自分のわかる言語と程度を、5段階の線に書き込んだ紙を作り、ペアで見せ合って「わたしは〜語がよくわかります。〜語は少しわかります」と説明する。教師は「を」になっていないか、「全然」「あまり」のあとが否定か、紙の線と言った程度が合っているかを見る。
つまずきと手当て
「日本語をわかります」。「好き・上手・わかります・あります」を「が」のグループとして板書に残し、間違えたらそこを指さす
「全然わかります」「あまりわかります」と肯定で終える。副詞のカードを色分けし、否定とセットの2枚は赤にする
教室で指示を聞いたときの「わかりました」(了解)と、理解できるという「わかります」を同じものと思う。「今わかった→わかりました」「できる→わかります」と場面で分け、長い説明はしない
既習の文型との違い
NをVます(他動詞)(第6課) 第6課の「日本語を勉強します」「音楽を聞きます」は動作なので「を」ですが、「わかります」は理解できる状態を言う動詞で、対象は「が」です。動詞なのに「が」を取るので、学習者は「*日本語をわかります」と言いやすく、ここが文型3のいちばんの山です。「勉強します→を」「わかります→が」を対にして板書に残します。
関連する文型
学習項目 4 Nがあります
意味・はたらき文型 4
この課の「あります」は、物がどこにあるかを言う第10課の文ではなく、「持っている」(お金・時間・車・チケット)と「予定がある」(約束・用事・仕事)の意味です。持ち主は「〈人〉は」、持っているものや予定が「が」で示されます。否定「ありません」は「持っていない・予定がない」。文型5の理由として「時間がありませんから」のようによく使います。
接続 〈人〉は+N+があります/ありません(Nは物・時間・お金・予定。人や動物には使わない)
形
〈人〉はNがあります/ありません Nがありますか 時間/お金/約束/用事があります 〈日時〉に約束があります
導入
財布と手帳を使う 教師が財布を開いて見せて「わたしはお金があります」、空の財布で「お金がありません」。次に手帳のカレンダーの土曜日に印を付けて「土曜日は約束があります」。板書は「わたしは [N]が あります/ありません」。「物」の絵と「予定」の絵を左右に分けて貼る。
学生の予定で問答 「あした時間がありますか」と学生に聞き、「はい、あります」「いいえ、アルバイトがあります」のように答えさせる。第4課・第5課の時間と曜日を使って「〈日時〉に約束があります」まで広げる。
板書案
わたしは [N]が あります/ありません
〔左〕物: お金・チケット・パソコン 〔右〕予定: 約束・用事・アルバイト
土曜日は 約束が あります。
あした 時間が ありますか。……いいえ、ありません。
場面と発話(自作)
友達と買い物の途中、自動販売機の前で小銭が足りない。 細かいお金がありますか。……すみません、ありません。
同僚に日曜日の予定を聞かれた。 日曜日は約束があります。友達と映画を見ます。
会社の帰り、同僚に「いっしょにご飯を食べませんか」と誘われたが、今日は用事がある。 すみません。今日は用事があります。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
練習Bの型: お金・時間・車・パソコン・チケットの絵カードで「〜があります」、×印で「ありません」。日時のカード(金曜日・あした・7時)を足して「〜に約束があります」。練習Cの型: ペアで「〜曜日、時間がありますか」と聞き、「はい、あります」「いいえ、〜があります」で答えて、二人が空いている日を見つけさせる。
口頭 物の絵カード(お金・チケット・車・パソコン・細かいお金)と予定の絵カード(約束・用事・アルバイト・会議・試験)を混ぜて見せ、◯なら「〜があります」、×なら「ありません」と全体で言う。次に曜日・時刻のカード(金曜日・あした・7時)を前に足して「金曜日は約束があります」まで広げ、個人に回す。
ペア 二人に1週間の予定表を配る。予定表は一人ずつ中身が違い、相手には見せない(情報差)。「月曜日、時間がありますか」→「いいえ、アルバイトがあります」「はい、あります」と聞き合い、二人とも時間がある日を一つ見つける。見つけたら「〜曜日はどうですか」で確かめて終わる。
産出 「空いている日さがし」: 自分の本当の予定を手帳の形で書き、3人と「〜曜日、時間がありますか」と聞き合って、全員が空いている日を見つけてクラスに言う。教師は「を」が混ざらないか、人に「あります」を使っていないか、物と予定の両方で言えているかを見る。
つまずきと手当て
「お金をあります」。「が」グループの板書を指さして直す
「妹があります」のように人に使う。人・動物は第10課の「います」に回すので、この課では物と予定だけと言っておく
「約束があります」を「約束をします」(これから約束する)の意味で使う。「あります」は「もう決まっている予定」だと手帳の絵で示す
「時間がありますか」と第4課の「今何時ですか」を混同する。ここでの「時間」は「空いている時間」
既習の文型との違い
NをVます(他動詞)(第6課) 「チケットを買います」は動作で「を」、「チケットがあります」は持っている状態で「が」です。買ったあとの状態を言おうとして「*チケットをあります」と言う学習者が多いので、「買います→あります」を時間の流れで並べて見せます。予定でも「約束をします」(これから決める)と「約束があります」(もう決まっている)を同じ形で分けます。
関連する文型
学習項目 5 〈文〉から(理由)、〈文〉
意味・はたらき文型 5
前の文が理由、後ろの文がその結果や行動です。理由の文は丁寧形のまま(〜ですから/〜ますから)で、「から」は理由の文のすぐ後ろに付きます。「どうして〜か」と理由を聞かれたら、理由だけを「〜からです」で答えます。会話では、誘いを断るときの理由(「用事がありますから」)として使い、結果の文を「ちょっと……」でぼかす言い方も一緒に出します。
接続 〈文(丁寧形)〉+から、〈文〉/答えだけなら 〈文(丁寧形)〉+からです
形
〈文〉から、〈文〉 〈文〉からです(「どうして〜か」への答え) 時間がありませんから、行きません どうして〜か。……〜からです
導入
文型1〜4の文を理由にする 教師が「きょうは行きません」とだけ言い、学生に「どうして?」と聞かせる(「どうして」はここで導入 )。「約束があります」「時間がありません」を理由として前に置き、「約束がありますから、行きません」。板書は「[理由]から、[結果]」の2つの枠。
順番をカードで体に入れる 理由カード(赤)と結果カード(青)を作り、並べ替えて見せる。理由が先、「から」は理由のすぐ後ろ、と確認する。次に「どうして〜か」→「〜からです」の短い答えも板書し、文の最後に「です」が付くことを示す。
板書案
〔赤〕[理由]から、〔青〕[結果]
時間が ありませんから、行きません。
どうして 行きませんか。……約束が ありますから。
すみません。〜から、ちょっと……。→ 残念ですね。
場面と発話(自作)
同僚に「土曜日、いっしょにコンサートに行きませんか」と誘われたが、別の約束がある。 すみません。土曜日は約束がありますから、ちょっと……。
日本人の友達に、どうして毎日漢字を勉強するのか聞かれた。 日本の会社で働きますから。
先生に「きのう、どうして休みましたか」と聞かれた。 用事がありましたから。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
練習Bの型: 結果カード(行きません・買いません・食べません・勉強します)と理由カード(時間がありません・お金がありません・好きじゃありません・日本で働きます)を1枚ずつ見せて「〜から、〜」。次に教師が「どうして〜か」と聞き、「〜からです」の短い答えだけを言わせる。練習Cの型: 誘う→理由を言って断る→「残念ですね」で受ける、の3ターンを、誘いの中身(映画・カラオケ・野球)を変えて3回。
口頭 赤の理由カード(時間がありません・お金がありません・好きじゃありません・用事があります)と青の結果カード(行きません・買いません・食べません・帰ります)を1枚ずつ見せ、全体で「〜から、〜」とつないで言う。次に教師が結果だけを言い、学生に「どうしてですか」と聞かせて、教師が理由カードを見て「〜からです」と答える役を学生と交替する。最後は理由カードを伏せ、学生が自分で理由を考えて言う。
ペア 誘う役は映画・カラオケ・野球・コンサートの絵カードを持ち、「土曜日、いっしょに〜ませんか」と誘う。断る役は手帳の絵(約束・アルバイト・試験)を持ち、「すみません。〜から、ちょっと……」で断る。誘う役は「残念ですね」で受け、「日曜日はどうですか」と次の日を出す。3回で交替。
産出 「断り上手ロールプレイ」: 役カード(同僚・アルバイトの店長・友達)を引き、相手に合わせて誘う・断る・受けるの3ターンを、自分の本当の予定を理由にして演じる。教師は、理由と結果の順番、丁寧形の「〜ますから」がそろっているか、断るときに「すみません」と「ちょっと……」で結果をぼかせているかを見る。うまくいった組を一つ前で演じさせて全体で確認する。
つまずきと手当て
「行きませんから、時間がありません」と理由と結果が逆になる。カードの色(理由=赤・結果=青)で順番を体に入れる
英語の because のように「から 時間がありません」と理由の前に置く。「から」は理由の「後ろ」に付く、と板書に矢印を引く
「忙しいから、行きません」と普通形で言う(会話では自然だが、この課では丁寧形のままにそろえる)。普通形の「から」は普通形を習ってから
「どうして〜か」に「〜から、〜」の長い文で答えて最後の「です」が落ちる。「〜からです」をかたまりで反復する
既習の文型との違い
Vませんか(第6課) 第6課では誘う側の「いっしょに〜ませんか」と、受ける側の「ええ、〜ましょう」を習いました。この課で断る側の「〜から、ちょっと……」が加わり、誘いの会話を受ける・断るの両方で言えるようになります。学習者は「いいえ、行きません」とはっきり断りがちなので、第6課の誘いの文を出だしにして、理由をそえた断りの返事を練習します。
〜が、〜(逆接・第8課) 第8課で出る「〜が、〜」(前とうしろが反対)と、この課の「〜から、〜」(前がうしろの理由)は、どちらも文と文をつなぎ、つなぐ語の位置も同じなので混ざりやすいです。「お金がありませんが、買いません」のように、つながりの合わない文が出ます。「が」は反対の矢印、「から」は理由の矢印と、板書で矢印の形を変えて分けます。
関連する文型
語彙の扱い
この課の語は「好き・上手・わかります・あります」の対象になる名詞(料理・スポーツ・音楽・歌・野球・漢字・ひらがな・お金・時間・約束・用事など)が中心なので、文型の練習の中で絵カードとして回すと一度に定着します。程度の副詞(よく・だいたい・少し・たくさん・あまり・全然)は肯定とセットか否定とセットかを色分けして板書に残しておきます。家族の呼び方(ご主人/主人・奥さん/妻)は自分の側と相手の側の対で、文型2のほめる文に乗せて短く扱えば十分です。
この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)
料理 (りょうり) 作って食べるものです。国の名前と合わせて「タイ料理」「日本料理」と言います。 〜が好きです・〜が上手です・日本〜 友達と、好きな食べ物の話をしている。「どんな料理が好きですか。」「タイ料理が好きです。」
音楽 (おんがく) ジャズやクラシックなど、聞いて楽しむものです。 〜を聞きます・〜が好きです・どんな〜 寮の部屋で、同じ寮の学生に聞く。「どんな音楽が好きですか。」「ジャズが好きです。」
歌 (うた) 声で楽しむ音楽です。上手・下手をよく言います。 〜が上手です・日本の〜 カラオケのあと、友達をほめる。「山田さんは歌が上手ですね。」
字 (じ) ひらがなや漢字を書いたときの、一つ一つの形です。 〜が上手です・〜がきれいです となりの学生のノートを見る。「〜さんは字がきれいですね。」
漢字 (かんじ) 中国から来た文字で、一つの字に意味があります。 〜がわかります・〜を書きます・〜が難しいです 日本人の友達に、日本語の勉強のことを聞かれた。「ひらがなはわかりますが、漢字はあまりわかりません。」
細かいお金 (こまかいおかね) 10円や100円のような、小さいお金です。 〜があります・〜がありません バスに乗る前に、友達に聞く。「すみません、細かいお金がありますか。」
時間 (じかん) この課では、予定がない、空いている時のことです。 〜があります・〜がありません 同僚に、仕事のあとの予定を聞く。「今晩、時間がありますか。」「すみません、ありません。」
約束 (やくそく) 人と会う日や時間を、もう決めたことです。 〜があります・友達と〜 日曜日に誘われたが、友達と会う予定がある。「日曜日は友達と約束がありますから、ちょっと……。」
用事 (ようじ) 家や外ですること・予定です。中身を言わないで断るときに便利です。 〜があります・ちょっと〜 仕事のあと、同僚に食事に誘われた。「すみません。きょうはちょっと用事がありますから。」
アルバイト (あるばいと) 学生が、学校のほかにする仕事です。 〜があります・〜をします 友達に、土曜日の予定を聞かれた。「土曜日はアルバイトがあります。」
どうして (どうして) 理由を聞くことばです。答えは「〜からです」で言います。 〜ですか・〜行きませんか きのう休んだ学生に、先生が聞く。「どうしてきのう休みましたか。」「用事がありましたから。」
残念です (ざんねんです) 少し悲しい気持ちです。誘った相手が「ちょっと……」と言ったとき、こう言います。 〜ね 友達を映画に誘ったが、友達は約束がある。「そうですか。残念ですね。」
会話の扱い 会話は「誘う→理由をそえて断る→残念ですねで受ける」の形なので、場面は第6課の「Vませんか」で誘うところから作ります。まず教師が学生を映画やコンサートに誘い、学生が「約束がありますから、ちょっと……」と断って、教師が「残念ですね」と受ける見本を見せます。次にペアで、誘う側はチケットや絵カード(映画・野球・カラオケ)を持ち、断る側は手帳の絵(約束・用事・仕事)を持って役を交代します。ロールプレイに広げるときは「断ったあとに別の日を提案する(日曜日はどうですか)」を一段足すと、第4課・第5課の日時の言い方も復習できます。誘いの中身や断る理由は学生の生活(アルバイト・学校・家族)に寄せ、会話文そのものは教科書を見ずに言えるところまで反復します。
宿題と次のコマ 問題の読みの部分と、「好き・上手・わかります・あります」で自分のことを書く短い作文(4文)を宿題にして、次のコマの最初に数人に読ませる。第10課は「〈場所〉にNがあります/います」なので、この課の「あります」との違い(持っている・予定がある/どこにある)を次の導入でつなぐ。
よくある質問
第9課の「が」は、「を」とどう区別して教えればいいですか?
この課では文法用語で説明するより、「好き・嫌い・上手・下手・わかります・あります」の6つを「が」のグループとして板書に残すのが早いです。第6課の「を」の動詞(食べます・聞きます・買います)と上下に並べ、述語で助詞が決まることを見せます。誤りが出たら説明し直さず、そのグループを指さして本人に言い直させます。
「あまり」と「全然」は、どう教えればいいですか?
「よく・だいたい・少し・あまり・全然」を一本の線に並べ、否定とセットになる「あまり」「全然」だけ色を変えます。練習では副詞のカードと言語や食べ物のカードを同時に見せ、赤いカードが出たら文末が「〜ません」になるかを毎回聞きます。会話で耳にする「全然大丈夫」のような肯定の使い方は、この段階では扱わず、否定とセットの形を先に固めます。
「〜から」と「〜ので」の違いは、この課で説明しますか?
説明しません。「〜ので」はずっとあとの課で出るので、この課では理由の言い方を「〜から」一つにしぼります。学習者から質問が出たら、「〜ので」は少していねいな言い方で、あとで習うと短く答えるにとどめます。
第9課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で復習と文型1〜3(好き・上手・わかります)、2コマ目で文型4「あります」、文型5「〜から」、会話と練習Cまでを扱います。文型5の断る会話はロールプレイの時間を多めに取りたいので、1コマ目の文型3が押すと2コマ目が詰まります。
「わかります」と「知っています」の違いを聞かれたら、どう答えますか?
「知っています」はまだ習っていないので、この課では深入りしません。「わかります」は言葉や話の意味が取れること、と場面で示し、「〜語がわかります」「先生の話がわかります」の形で練習します。質問が出たら、「知っています」は名前や場所などを前から頭に入れているときに使う、あとで習う、と一言で答えます。
この課に関係する用語・解説・練習問題 この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。