日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第16課「使い方を教えてください」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「使い方を教えてください」

第14課で作れるようになったて形を、今度は文の途中で使う課です。動作を起きた順に「〜て、〜て」とつないで1日の流れを話し、「〜てから」で前後の順序をはっきり言えるようになります。後半は形容詞に移り、「〜は〜が〜です」で人や町の特徴を言い、「〜くて/〜で」で2つの性質を1文にまとめます。動詞も形容詞も「て」でつなぐと文が長くなるという感覚をつかませる課で、ここを通ると学習者の発話がぐっと文らしくなります。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 朝起きてから寝るまでの行動を、「〜て、〜て、〜ます」で順番どおりに話せる
  • 「〜てから」を使って、何をしたあとで何をするかを伝えたり、機械の使い方の順序を聞いたりできる
  • 「〜は〜が〜です」で、人の体の特徴や自分の国・町の特徴を言える
  • い形容詞・な形容詞・名詞を「〜くて/〜で」でつないで、1つのものを2つの言葉で説明できる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習)10分第14課のて形をグループ別に口頭で確認(教師が「ます形」を言い、学生が「て形」で返す)。第15課の「〜ています」で「今何をしていますか」を2〜3人に聞いて、動詞の語彙を温めておく
文型1 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜30分教師の朝の行動を絵カード3枚で順に貼り、1文にまとめて見せる。板書「Vて、Vて、Vます」。順番を入れ替えて違いを聞く → 練習Bの型で絵カード3枚を1文に
文型2 〈V1 て形〉から、V225分文型1の文に「から」を入れて作り、前後の順序だけを言う形だと示す。理由の「〜から」(第9課)と並べて区別 → 「うちへ帰ってから何をしますか」を聞き合う
文型3 N1はN2がAです30分体の語(髪・目・背・足)を絵で確かめてから、学生の特徴を「〜さんは髪が長いです」で言う。町・国の特徴に広げる → 人物カードと地図で練習B
文型4 〜くて、〜/〜で、〜35分文型3で作った2文を1文にまとめる形で導入。い形は「くて」、な形・名詞は「で」。「いい→よくて」と、反対の評価は「が」でつなぐことを板書に残す → 絵と形容詞2語のキューで練習B
会話25分銀行の機械の使い方を聞く場面。文型1・2が順序の説明に使われていることを確かめ、CD で聞いてからロールプレイ
練習C・問題25分練習Cの3つのやり取りをペアで入れ替えて練習。問題は聞き取りを教室で、読み書きは宿題に

学習項目 1 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜

意味・はたらき文型 1

2つ以上の動作を、した順に並べて1つの文にする言い方です。て形には時制がなく、文全体が現在のことか過去のことかは、最後の動詞(〜ます/〜ました)で決まります。並べる順番は動作の順番そのままなので、順番を入れ替えると意味が変わります。「それから」で文を切っていた(第6課)ところを、1つの文で言えるようになる、と考えると学習者に伝わりやすいです。文法の用語で言うと、テ形の用法のうち「継起(動作が続けて起こる)」に当たり、テ形の節はそれ自体では時制を持ちません。

接続

Vて形、Vて形、Vます/Vました(活用するのは最後の動詞だけ。て形の作り方は第14課)

形
Vて、Vて、VますVて、Vて、VましたVて、Vて、Vてください(第14課の「てください」に重ねる)

導入

  • 教師の朝を絵カード3枚で並べる「起きます」「朝ごはんを食べます」「駅へ行きます」の絵カードを黒板に左から順に貼り、まず1枚ずつ「わたしは7時に起きます」と文で言わせる。次に3枚をまとめて指し「1つの文で言います」と言ってから、「7時に起きて、朝ごはんを食べて、駅へ行きます」と示す。板書の枠は「Vて、Vて、Vます」。て形は第14課で習っているので、「ますを て に替えるだけ」と確認して、最後の「ます」だけ丸で囲む。
  • 順番を入れ替えて違いを聞く絵カードの順を「朝ごはんを食べて、起きて」と入れ替えて言い、学生に「いいですか」と聞く。変だという反応から、「したとおりの順番で並べる」ことに気づかせる。昨日の自分の行動を3つ言わせて、過去は最後だけ「ました」になることも確かめる。

板書案

Vて、 Vて、 Vます/Vました
7時に 起きて、 朝ごはんを 食べて、 駅へ 行きます。
起きます → 起きて 食べます → 食べて(〔青〕ます形→て形 の矢印)
〔赤〕最後の「ます/ました」だけ丸で囲む
〔赤〕て形に 時制なし → 時制は 最後だけ

場面と発話(自作)

  • 月曜日の朝、留学生が友達に日曜日に何をしたか話す。日曜日は新宿へ行って、映画を見て、買い物しました。
  • 先生に「毎朝何をしますか」と聞かれて、留学生が答える。毎朝6時に起きて、ジョギングをして、シャワーを浴びます。
  • 大阪へ行く友達に、駅で電車の乗り方を教える。東京駅で新幹線に乗って、新大阪で降りて、地下鉄に乗り換えてください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード3枚(起きます・ご飯を食べます・学校へ行きます)を見せ、「毎日」「昨日」のキューを足して「〜て、〜て、〜ます/〜ました」で1文に。乗り物の絵(電車に乗ります・駅で降ります・バスに乗り換えます)で助詞「に」「を」も確かめる。練習Cの型: ペアで「昨日何をしましたか」「日曜日はいつも何をしますか」と聞き合い、動作3つで答える。

  1. 口頭教師が絵カードを3枚続けて見せる(起きます・ご飯を食べます・学校へ行きます/電車に乗ります・駅で降ります・バスに乗り換えます/うちへ帰ります・シャワーを浴びます・寝ます)。まず全体で「〜て、〜て、〜ます」の1文にし、次に「昨日」のカードを足して「〜ました」に替えさせる。慣れたら教師が動詞だけを口で言い(「起きます、食べます、行きます」)、学生が1文につないで返す。個人指名では3つ目の動詞の形(ます/ました)を必ず確かめる。
  2. ペアAは「日曜日」「昨日の晩」「毎朝」のどれかの時のカードを引いて「〜は何をしましたか/しますか」と聞く。Bは手元の絵カード3枚を相手に見せずに並べ、その順に「〜て、〜て、〜ました」で答える。Aは聞いた順にメモを取り、最後にBのカードを見て順番が合っているか確かめる(情報差)。3回で役を交替する。
  3. 産出「わたしの日曜日」スピーチ: 学生が自分の先週の日曜日を、動作3つ以上を「〜て、〜て」でつないで1〜2文で話し、聞いている学生が「〜てから、何をしましたか」と1つ質問する。教師が見るのは、て形の作り方(特に1グループの音便)、途中の動詞に「ました」を入れていないか、した順に並んでいるか。

つまずきと手当て

  • て形の作り方を間違える(「読みて」「行きて」)。第14課のグループ別の表を教室に貼ったままにし、1グループの「い・ち・り→って」「み・び・に→んで」「き→いて(行きます→行って)」をこの課の最初に声に出して復習する
  • 最後の動詞もて形にして文が終わらない(「起きて、食べて、行って。」)。板書の枠の最後の「ます/ました」を赤で囲み、「文の終わりは ます」と毎回言わせる
  • 過去の文で途中の動詞を全部「〜ました」にする(「起きました、食べました、行きました」)。母語では動詞ごとに時制を付ける学習者に多い。「て形に時制はない。時制は最後だけ」と1文で板書に残す

既習の文型との違い

  • NをVます(他動詞)・「それから」(第6課)第6課では「テレビを見ます。それから、寝ます」と2文に分けて順番を言いました。この課の「テレビを見て、寝ます」は同じ内容を1文にまとめる形で、意味の大きな違いはありません。学習者は「見て、それから、寝ます」と両方を重ねることがありますが、誤りではないので、まずは「て」だけで言えることを優先させます。
  • 〈Vて形〉ください(第14課)第14課のて形は「〜てください」で文の終わりに付く形でした。この課のて形は文の途中に置いて次の動詞につなぐ形です。第14課の印象が強いと「起きて、食べて。」のようにて形で文を切ってしまい、頼んでいるように聞こえるので、文の最後は「ます/ました」に戻させます。
関連する文型

学習項目 2 〈V1 て形〉から、V2

意味・はたらき文型 2

V1 が終わったあとで V2 をする、という前後の順序をはっきり言う形です。文型1の「〜て、〜て」も順番どおりに並べますが、「〜てから」は「V1 のあとで」という点を強く出すので、「何をしてから何をするか」を伝えたいときに使います。1つの文の中では1回だけ使うのが普通で、文全体の時制は V2 で決まります。文法の用語で言うと、時の前後関係を表す従属節で、形は似ていても理由の「〜から」(第9課)とは別のものです。

接続

V1 て形+から、V2(V2 は ます/ました/てください など)

形
V1てから、V2ますV1てから、V2ましたV1てから、V2てください

導入

  • 文型1の文から順序を取り出す文型1で作った「仕事が終わって、ビールを飲みます」を板書し、「終わって」と「ビール」の間に「から」を書き足して「仕事が終わってから、ビールを飲みます」にする。「仕事のあとで飲みます。前には飲みません」と、順序を言う形だと示す。板書の枠は「V1てから、V2」。
  • 教師の予定で聞いて回る「今晩うちへ帰ってから、何をしますか」と学生に順に聞く。「テレビを見ます」のような短い答えを、教師が「うちへ帰ってから、テレビを見ますね」と「〜てから」で言い直して返す。何人か続けたら、学生自身に「〜てから」で言わせる。

板書案

V1てから、 V2
仕事が 終わって〔赤〕から、 ビールを 飲みます。
〔青〕① 終わります → ② 飲みます(矢印で順番)
〔赤〕Vてから=順番 〔青〕Vますから=理由(第9課)
カードを 入れてから、 ボタンを 押してください。

場面と発話(自作)

  • 会社で、同僚に「昼ご飯、いっしょに行きませんか」と誘われたが、まだ仕事が残っている。すみません、この仕事が終わってから、食べに行きます。
  • 寮で、ルームメイトに「晩ご飯はもう食べましたか」と聞かれる。いいえ、シャワーを浴びてから、食べます。
  • 銀行の人が、お客に機械の使い方を順番に説明する。カードを入れてから、暗証番号を押してください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード2枚(切符を買います→電車に乗ります/シャワーを浴びます→寝ます)を見せ、「〜てから、〜ます」で1文に。順番を逆にして「それは変ですね」と確かめるとよい。練習Cの型: ペアで「国へ帰ってから、何をしますか」「授業が終わってから、どこへ行きますか」のように、未来の予定を聞き合う。

  1. 口頭教師が絵カードを2枚、左から順に出す(手を洗います→ご飯を食べます/切符を買います→電車に乗ります/シャワーを浴びます→寝ます)。全体で「〜てから、〜ます」。次にカードの順を逆に置いて言わせ、「変ですね」と学生に気づかせてから元に戻す。最後に後ろの動詞を「〜てください」にするキュー(「入れます→押します、てください」)で、機械の使い方の文にする。
  2. ペアAは「授業が終わってから」「うちへ帰ってから」「国へ帰ってから」のカードを1枚引いて「〜てから、何をしますか」と聞き、Bは自分の予定で答える。次に役を替え、Bは機械の絵(自動販売機・コピー機・切符の機械)と順番の数字が書かれたカードを見ながら、Aに「〜てから、〜てください」で使い方を教える。Aは言われた順に絵を指でたどる(情報差)。
  3. 産出「使い方カード」作り: 2〜3人で、学校や寮にある機械(コピー機・洗濯機・電子レンジなど)を1つ選び、使い方を「〜て、〜てから、〜てください」で3〜4文に書いて発表する。ほかのグループは聞きながら動作で再現する。教師が見るのは、「てから」が1文に1回か、理由の「ますから」と混ざっていないか、順番が実際の操作どおりか。

つまずきと手当て

  • 理由の「〜から」(第9課)と混ぜて「ご飯を食べますから、行きます」と言う。「てから=順番」「ますから=理由」の2文を上下に板書して、「から」の前の形が違うことを見せる
  • 「〜てから、〜てから、〜てから」と続けてしまう。1つの文に1回、残りは「〜て、〜て」でつなぐと示す
  • 「〜てから」のあとに「それから」を重ねる(「食べてから、それから行きます」)。「てから」の中に「それから」の意味が入っている、と言って片方を消させる

既習の文型との違い

  • 〈文〉から(理由)、〈文〉(第9課)第9課の「から」は「ます・です」のあとに付いて理由を言い、この課の「から」はて形のあとに付いて順番を言います。学習者は「食べますから、行きます」を「食べたあとで行く」の意味で言うことがあり、聞き手には理由に聞こえます。「から」の前の形を見れば区別できる、と2文を上下に並べて見せます。
  • 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜(第16課 文型1)「〜て、〜て」はした順に並べるだけで、「〜てから」は「前の動作が終わったあとで」を強く言います。「手を洗ってから、食べてください」のように、先にしないと困ることを言うときは「てから」がよく合います。1日の流れを話すときは「て」でつなぎ、大事な順番の所だけ「てから」にする、と使い分けを示します。
関連する文型

学習項目 3 N1はN2がAです

意味・はたらき文型 3

N1 を話題にして、その一部や性質(N2)がどうかを形容詞で言う文です。「佐藤さんは髪が長いです」の「髪」は佐藤さんの体の一部で、「が」で示します。N1 は人だけでなく場所や物でもよく、「京都は寺が多いです」のように町や国の特徴を言うときにも使います。「背が高い」「頭がいい」は、この形の決まった言い方としてまとめて覚えさせます。文法の用語で言うと、「は」が話題(主題)を、「が」が形容詞の主語を示す文で、いわゆる「象は鼻が長い」の型です。

接続

N1 は N2 が い形容詞です/な形容詞です(否定・過去は形容詞の部分が変わる: 長くないです・寒かったです)

形
N1は N2が い形です(佐藤さんは髪が長いです)N1は N2が な形です(この町は交通が便利です)N1は N2が い形くないです(否定)

導入

  • 学生の体の特徴を言う先に体の語(髪・目・耳・口・背・足)を絵で確かめる。髪が長い学生の前に立ち、「〜さんの髪は長いです」と言ってから、その学生の名前を指して「〜さんは」で始め直し、「〜さんは髪が長いです」と板書する。「〜さんの話をするときは、名前が は、体の部分が が」と2つの助詞の色を変えて書く。背の高い学生で「背が高いです」も続けて出す。
  • 町や国の特徴に広げる日本の地図を見せて「北海道は」と言い、学生に「何が?」と聞く。「冬が寒いです」「食べ物がおいしいです」が出たら板書し、同じ形で「東京は人が多いです」を作る。最後に「〜さんの国は」で学生に自分の国を言わせる。

板書案

N1〔青〕は N2〔赤〕が Aです
佐藤さん〔青〕は 髪〔赤〕が 長いです。
北海道〔青〕は 冬〔赤〕が 寒いです。
〔青〕は=だれの話/どこの話 〔赤〕が=その中の どこ
背が 高い・頭が いい(このまま覚える)

場面と発話(自作)

  • 友達に家族の写真を見せながら、姉がどの人か教える。この人はわたしの姉です。姉は目が大きいです。
  • 先生に「〜さんの国はどんな所ですか」と聞かれる。わたしの国は夏がとても暑いです。でも、果物がおいしいです。
  • 新しいアパートを見に行って、案内の人に感想を言う。この部屋は窓が大きいですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 人物の絵カード(髪が長い・目が大きい・背が高い・足が長い)を見せて「〜さんは〜が〜です」。次に町のカード(人が多い・冬が寒い・交通が便利)に替える。練習Cの型: ペアで「〜さんの国はどうですか」「〜さんのお父さんはどんな人ですか」と聞き、「〜が〜です」で答える。

  1. 口頭体の絵(髪・目・背・足)と形容詞(長い・大きい・高い・短い)を組み合わせた人物カードを出し、全体で「この人は〜が〜です」。次に地名カード(北海道・東京・沖縄)と特徴カード(冬・寒い/人・多い/海・きれい)で「〜は〜が〜です」。最後に否定のキュー(「髪・長い・×」)を入れて「髪が長くないです」を言わせ、個人指名で「は」と「が」の位置を確かめる。
  2. ペア「だれでしょう」ゲーム: Aは人物カード6枚の中から1枚を心の中で選び、Bは「その人は髪が長いですか」「背が高いですか」と聞く。Aは「はい、髪が長いです」「いいえ、長くないです」と答え、Bは3回以内の質問で人を当てる。当てたら交替する。
  3. 産出「わたしの町」紹介: 学生が自分の国や町を「〜は〜が〜です」で3文紹介し(食べ物・天気・人・交通から選ぶ)、聞いた学生が「行きたいです」か「行きたくないです」かを、理由を1つ付けて言う。教師が見るのは、2つ目の名詞に「は」を使っていないか、な形容詞の「便利です・きれいです」が正しいか、否定の「〜くないです」の形。

つまずきと手当て

  • 人の特徴を言うつもりで「佐藤さんは髪は長いです」と「は」を2つ使う。文としては言えるが、2つ目の「は」はほかの部分と比べる意味(髪は長いが、背は…)になる。特徴をそのまま言うときは「髪が」と板書の色を変えて示す
  • 「佐藤さんが髪が長いです」と「が」を2つ使う。「だれが髪が長いですか」への答えなら言えるが、特徴を紹介するときは話題の人(N1)を「は」で出す、と絵カードの名前の横に「は」を書いておく
  • 「背が長い」「頭が上手」のように決まった言い方を別の形容詞で言う。「背が高い」「頭がいい」はこのままで覚える語だと板書に残す

既習の文型との違い

  • Nは〈いA〉です/Nは〈いA(〜い)〉くないです(第8課)第8課の「髪は長いです」は髪そのものを話題にした文で、この課の「佐藤さんは髪が長いです」は人を話題にして、その一部の髪のことを言う文です。学習者は特徴を言うつもりで「佐藤さんは髪は長いです」と「は」を重ねたり、「佐藤さんが髪が長いです」と「が」を重ねたりします。どちらも文としては言えますが、前者は髪をほかの部分と比べる意味(「髪は長いですが、背は高くないです」)、後者は「だれが」への答えになります。特徴を言うときは、だれの話かを先に「は」で出し、その中の部分を「が」で示す、と2段に分けて見せます。
  • Nが好きです/嫌いです(第9課)第9課の「わたしはテニスが好きです」も「〜は〜が〜です」の形で、形容詞の前の名詞に「が」が付く点は同じです。違いは、第9課は好き嫌いの対象を言い、この課は人や場所の一部や性質を言うという点です。第9課の形を思い出させると「が」の位置がすぐ入ります。
関連する文型

学習項目 4 N1は〈いA(い)〉くて、 〜 / 〈なA〉/N2で、〜

意味・はたらき文型 4

1つの人や物について、2つ以上の性質を並べて1文で言う形です。い形容詞は「い」を取って「くて」、な形容詞と名詞は「で」でつなぎます。動詞のて形と同じく、文が現在か過去かは最後で決まります。並べるのは同じ方向の評価(よい+よい、よくない+よくない)で、「広いですが、暗いです」のように反対の評価を並べるときは第8課の「〜が」を使います。文法の用語で言うと、形容詞のテ形(連用形)と「名詞+で」(「だ」の連用形)で文をいったん止めて次につなぐ「並列」の言い方です。

接続

い形(〜い)→〜くて/な形→〜で/N→〜で(「いい」は「よくて」)

形
N1は い形くて、〜です(この教室は明るくて、新しいです)N1は な形で、〜です(先生は親切で、おもしろいです)N1は N2で、〜です(林さんは中国人で、学生です)いい → よくて

導入

  • 文型3で作った2文を1文にまとめる「このアパートは新しいです」「このアパートは静かです」を上下に板書し、「1つの文で言います」と言って1つ目の「です」を消し、「新しくて」と書き直す。次に順番を替えて「静かで、新しいです」を作り、な形は「で」になることを見せる。板書の枠は「い形(い)くて、〜」「な形・N で、〜」。「いい」は「よくて」と枠の横に大きく書く。
  • 名詞の「で」は自己紹介で第1課の自己紹介に戻り、「山田さんは日本人です。医者です」を「山田さんは日本人で、医者です」とつなぐ。学生に自分の国と仕事・身分で1文作らせる。

板書案

い形(〜い)→ 〜〔赤〕くて、〜
な形/N → 〜〔赤〕で、〜
教室は 明るくて、新しいです。 先生は 親切で、おもしろいです。
〔赤〕いい → よくて(大きく)
〔青〕よい点+よくない点は「〜が、〜」 広いですが、暗いです。

場面と発話(自作)

  • 引っ越したばかりの留学生が、友達に新しい部屋のことを話す。わたしの新しい部屋は駅から近くて、静かです。
  • ほかのクラスの友達に、自分の先生がどんな人か聞かれる。田中先生は親切で、おもしろいです。
  • 会社で、新しく来た人を同僚に紹介する。こちらは林さんです。林さんは中国人で、わたしの友達です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵と形容詞2語のキュー(教室/明るい・新しい、町/静か・きれい、カメラ/小さい・いい)を出し、「〜くて/〜で」で1文に。「いい」を必ず混ぜて「よくて」を確かめる。名詞は「国の名前+仕事」のカードで。練習Cの型: ペアで「〜さんの町はどんな所ですか」「〜さんの家族はどんな人ですか」と聞き、「〜で、〜です」「〜くて、〜です」で答える。

  1. 口頭物や人の絵に形容詞を2つ添えたカードを出す(教室/明るい・新しい、町/静か・きれい、カメラ/小さい・いい、先生/親切・おもしろい、山田さん/日本人・医者)。全体で「〜は〜くて/〜で、〜です」。い形とな形をわざと交互に出し、「いい」のカードは2〜3回に1回混ぜる。最後に「去年」のカードを足して「〜くて、〜かったです」と過去でも言わせる。
  2. ペア「どちらがいいですか」部屋えらび: Aは部屋Aの、Bは部屋Bの特徴カード(広い・新しい・駅から近い/狭い・静か・安い など)を持ち、相手に見せずに「わたしの部屋は〜くて、〜です」と説明する。聞いた側はメモを取り、2人で「どちらがいいですか」と第12課の比べる形で1つ選ぶ。よくない点が混ざったカードでは「〜ですが、〜」を使わせる。
  3. 産出「友達しょうかい」: 学生が家族や友達1人を、名詞(国・仕事)と形容詞2つを使い、「〜は〜で、〜です」「〜は〜くて、〜です」を含む2〜3文で紹介する。教師が見るのは、い形とな形の「くて/で」の付け分け、「いい→よくて」、反対の評価を「て」でつないでいないか。

つまずきと手当て

  • 「いい」を「いくて」にする。「よくて」を枠の横に残し、否定の「よくないです」(第8課)と同じ「よ」だと思い出させる
  • な形容詞に「くて」(「きれいくて」「静かくて」)、い形容詞に「で」(「若いで」)を付ける。第8課の形容詞の種類の表をもう一度見せ、「い で終わっても きれい・嫌い は な形」と注意する
  • 反対の評価を「て」でつなぐ(「この部屋は広くて、暗いです」)。「よいことと よくないことは が でつなぐ」と言って「広いですが、暗いです」に直す

既習の文型との違い

  • Nは〈いA〉です/Nは〈いA(〜い)〉くないです(第8課)第8課では「この教室は明るいです。そして、新しいです」のように「そして」で2文を並べ、反対の評価は「広いですが、暗いです」と「が」でつなぎました。この課の「〜くて/〜で」は「そして」の2文を1文にまとめる形で、反対の評価にはふつう使いません。「広くて、暗いです」は不自然に聞こえるので、評価の向きで使い分けることを示します。
  • 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜(第16課 文型1)動詞のて形は動作の順番を、形容詞の「くて/で」は性質を並べます。どちらも時制は最後で決まる点は同じなので、文型1の「て形に時制はない」を思い出させると過去の文(「広くて、明るかったです」)が作りやすくなります。ただし形容詞の順番は入れ替えても意味がほとんど変わらない点が、動詞とは違います。
  • 〈なA〉/Nでした 〈なA〉/Nじゃありませんでした(第12課)第12課で、な形容詞と名詞は「静かでした」と「で」のあとに「した」が付く形を習いました。この課の「静かで、〜」は同じ「で」で文を止めて次につなぎます。「*静かでしたで」のような混ざった形が出たら、「でした」の「した」を取って「で」だけ残す、と見せます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語彙は3つに分かれます。乗り物の動詞(乗ります・降ります・乗り換えます)は助詞とセットで「電車に乗ります」「駅で降ります」の形で入れ、文型1・2の材料にします。体の語(髪・目・耳・口・背・足・おなか)と若い・長い・短い・明るい・暗いは文型3・4の材料なので、文型に入る前に絵で確かめておきます。会話に出る銀行の語(暗証番号・現金・ボタンなど)は、会話の場面で機械の絵を見せながら、その場で意味を押さえれば十分です。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 乗ります(のります) 電車やバスなどの中に入って、それで行きます。 電車に〜・バスに〜・タクシーに〜
    友達に駅からの行き方を教える。
    「駅で3番のバスに乗ってください。」
  • 降ります(おります) 電車やバスなどから外へ出ます。「乗ります」の反対です。 駅で〜・バスを〜・電車を〜
    友達に大学への行き方を話す。
    「大学前で降りて、右へ行ってください。」
  • 乗り換えます(のりかえます) 1つの電車やバスを降りて、別の電車やバスに乗ります。 地下鉄に〜・駅で〜
    留学生が先生に、うちから学校までの行き方を話す。
    「新宿で降りて、地下鉄に乗り換えます。」
  • 浴びます(あびます) シャワーの水やお湯を体にかけます。 シャワーを〜
    夜、うちへ帰ってから何をするか友達に話す。
    「うちへ帰って、シャワーを浴びて、寝ます。」
  • 入れます(いれます) 物を何かの中へ入るようにします。 カードを〜・お金を〜・かばんに〜
    自動販売機の使い方を友達に教える。
    「ここにお金を入れてから、ボタンを押してください。」
  • 押します(おします) 指や手で、ボタンや物に力をかけて動かします。 ボタンを〜・ドアを〜
    コピー機の前で、使い方を聞かれる。
    「この緑のボタンを押してください。」
  • 髪(かみ) 頭に生えている毛です。 〜が長い・〜が短い
    写真を見せながら、妹のことを話す。
    「妹は髪が長いです。」
  • 背が高い(せがたかい) 立ったときの体の高さが高いことです。「長い」とは言いません。 〜人・〜です
    新しいクラスの友達がどの人か聞かれる。
    「あの背が高い人です。」
  • 明るい(あかるい) 光がたくさんあって、よく見えるようすです。人の性格にも使います。 〜部屋・〜人・部屋が〜
    新しいアパートについて友達に話す。
    「この教室は明るくて、静かです。」
  • 便利(な)(べんり(な)) 使いやすくて、役に立つようすです。 交通が〜・〜な所
    自分の住んでいる町を先生に紹介する。
    「わたしの町は駅が近くて、便利です。」
  • 若い(わかい) 年が少ないようすです。人や動物に使います。 〜人・〜先生
    新しい先生がどんな人か、友達に聞かれる。
    「新しい先生は若くて、親切です。」
  • 静か(な)(しずか(な)) 音や声が少ないようすです。 〜な町・〜な部屋・夜は〜
    自分の国の町のことを話す。
    「わたしの町は人が少なくて、静かです。」

会話の扱い

銀行の機械(ATM)の使い方を、留学生が銀行の人に聞く場面です。「〜て、〜て」「〜てから」が機械の操作の順序を説明するのに使われているので、会話に入る前に文型1・2を終えておき、聞くときは「何を先にしますか」と順序を聞き取らせます。「〜方(使い方・入れ方)」は第14課の「読み方」の仲間だと一言添えると、題の意味が分かります。CD で2回聞いてから役を分けて読み、最後は電車の切符の機械や自動販売機など、学習者が実際に困る場面に置き換えてロールプレイします。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

問題の読み書きの部分と、「わたしの1日」を「〜て、〜て、〜てから」で5文書く作文を宿題にする。次のコマの最初に作文を2〜3人に読ませ、て形と最後の「ます/ました」を全員で確かめてから、第17課のない形(「〜ないでください」)に入る。

よくある質問

  • 第16課の「〜て、〜て」と「〜てから」の違いはどう説明すればいいですか?

    「〜て、〜て」はした順に並べるだけ、「〜てから」は前の動作が終わったあとで次をする、という順序を強く言う形です。「手を洗ってから、食べてください」のように、先にしないと困ることを言う場面で「てから」を出すと違いが伝わります。1日の流れを話すときは「て」でつなぎ、1文に「てから」は1回まで、と決めておくと学習者が迷いません。

  • い形容詞の「くて」とな形容詞の「で」はどう見せればいいですか?

    第8課の形容詞の表をもう一度見せ、い形は「い」を取って「くて」、な形と名詞は「で」と2行で板書します。「いい→よくて」は否定の「よくないです」と同じ「よ」だと結ぶと覚えやすいです。「きれい」「嫌い」は「い」で終わってもな形なので、カードに印を付けて口頭練習に必ず混ぜます。

  • 「佐藤さんは髪が長いです」の「は」と「が」はどう説明しますか?

    だれの話かを先に「は」で出し、その人の中のどこかを「が」で言う、と2段で示します。文法の説明より、学生自身の特徴を言う状況を作るほうが早く入ります。特徴を言うつもりで「は」を2回使う学習者が多いので、板書で「は」と「が」の色を変え、2つ目を「は」にするとほかの部分と比べる意味になる(「髪は長いですが、背は高くないです」)と添えます。

  • 「広くて、暗いです」はなぜ不自然なのですか?

    「〜くて/〜で」は同じ向きの評価を並べるのが普通なので、よい点とよくない点を並べると聞き手が落ち着きません。反対の評価は第8課の「〜ですが、〜」でつなぎます。部屋えらびのように、よい点とよくない点が混ざる練習を入れると、学習者が自分で使い分けを確かめられます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習とて形の確認、文型1「〜て、〜て」と文型2「〜てから」、文型3「〜は〜が〜です」の導入まで。2コマ目は文型3の練習と文型4「〜くて/〜で」、会話と練習C・問題です。体の語や形容詞が定着していないクラスは、文型3の前に語の確認を10分足し、問題の読み書きを宿題に回します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。