日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第7課「いらっしゃい」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「いらっしゃい」

第7課は、道具や言語を表す「で」、物のやり取りを表す「あげます・もらいます」、そして「もう〜ましたか」の問答で、人と物や言葉をやり取りする課です。第5課の〈乗り物〉で、第6課の〈場所〉でに続いて、同じ「で」に三つ目の役目(道具・手段)が加わるので、助詞「で」の整理が一つの芯になります。もう一つの芯は「あげます」と「もらいます」の向きで、「は」と「に」のどちらに渡す人が来るかを、矢印の板書と実物の受け渡しで体に入れます。会話は日本の家を訪ねる場面で、玄関での挨拶からお土産を渡すところまでを型として練習します。新しい活用形は出ません(すべて「ます形」)。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「はしで食べます」「日本語でメールを書きます」のように、動作に使う道具や言語を「で」で言える
  • 「『ありがとう』は英語で何ですか」と聞き、「『Thank you』です」と答えるやり取りで、言葉の言い方を確かめられる
  • 「〈人〉にNをあげます/もらいました」で、だれがだれに何を渡したかを、渡す側と受け取る側の両方から言える
  • 「もう〜ましたか」に「はい、もう〜ました」「いいえ、まだです」で答えられる
  • 日本の家を訪ねたとき、玄関での挨拶とお土産の渡し方ができる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)10分第5課の「電車で行きます」と第6課の「食堂で食べます」を絵カードで言わせ、「で」の部分に印を付けて黒板に残す。「きょうは三つ目の『で』を勉強します」と予告してから、はしとスプーンの実物を出す
文型1(道具・手段・言語の で)30分実物で食べる動作を見せて「はしで食べます」。道具カードと動詞カードの代入練習のあと、「何語でメールを書きますか」で言語の「で」まで広げ、三つの「で」を板書で並べて整理する
文型2(〜は〈言語〉で〜です)15分学生の母語を材料に「『ありがとう』は〜語で何ですか」を聞き合う。教室で分からない言葉を聞く道具として、以後の授業で使わせる
文型3・4(あげます・もらいます)45分教師が学生にペンを渡す場面を「あげます」で言い、同じ場面を受け取った学生の側から「もらいました」で言い直す。矢印つきの板書で向きを対比し、貸します・借ります・教えます・習いますを同じ枠に足す
文型5(もうVました)20分「宿題、もうしましたか」から入り、「はい、もうしました」「いいえ、まだです」の二つの答えを型で練習。「まだです」の後ろに「これからします」を添える
会話30分玄関と居間の絵で訪問の場面を作り、決まり文句を動作つきで練習してから CD を聞く。訪ねる人と迎える人を交代してロールプレイ(お土産を変えて3回ほど)
練習C・問題30分練習Cの型のやり取り(誕生日に何をもらいましたか/もう〜しましたか)をペアで。問題の聞き取りは教室で、読み書きは宿題に回す

学習項目 1 〈道具・手段〉でVます/〈言語〉でVます

意味・はたらき文型 1

動作に使う道具や手段を「で」で表します。「はしで食べます」「パソコンでメールを書きます」のように、「何を使ってその動作をするか」を言う形です。言語も手段の一つなので、「日本語でメールを書きます」「英語でレポートを書きます」と同じ「で」を使います。第5課の〈乗り物〉で(移動の手段)はこの「で」の仲間ですが、第6課の〈場所〉で(動作をする場所)は別の役目なので、三つを並べて整理しておきます。

接続

N(道具・手段・言語)+で+Vます。道具を聞くときは「何で(なんで)Vますか」、言語を聞くときは「何語でVますか」

形
Nで Vます(はしで 食べます)何で Vますか〈言語〉で Vます(日本語で 書きます)何語で Vますか

導入

  • 実物のはし・スプーン・フォークで食べる動作を見せる食べる動作をしながら「はしで食べます」と言い、はしを置いてスプーンを持ち「スプーンで食べます」と続ける。何も持たずに手を見せて「手で食べます」。次に学生に「〜さんは国で何で食べますか」と聞き、自分の国の食べ方を答えさせる。板書は「N + で + Vます」の枠に、復習で残した「電車で(第5課)」「食堂で(第6課)」を並べ、「乗り物」「場所」「道具」と役目を書き分ける。
  • 言語の「で」は教師の行動から黒板に英語で短い言葉を書いて「英語で書きます」、消して日本語で書き直して「日本語で書きます」と言う。学生に「国の友達に何語でメールを書きますか」と聞き、答えを受けて「〈言語〉で」を同じ枠に加える。「はしで」と「日本語で」が同じ「で」だと指さして確かめる。

板書案

N(道具・言語) + で + Vます
はし で 食べます。
日本語 で メールを 書きます。
〔比べる〕電車で 行きます(第5課・乗り物)/食堂で 食べます(第6課・場所)/はしで 食べます(道具)
何で 〜ますか。 何語で 〜ますか。
〔赤〕で 〔青〕「何を使って?」の吹き出し

場面と発話(自作)

  • 寮の食堂で、日本人の友達がカレーをはしで食べている。留学生が驚いて聞く。カレーをはしで食べますか。
  • 会社で、報告のメールを書くように言われた。日本語で書くか英語で書くか、上司に確かめる。このメールは日本語で書きますか。
  • 日本人の同僚に、国の家族とどうやって連絡を取っているか聞かれた。母にパソコンでメールを送ります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 道具の絵カード(はし・スプーン・ナイフとフォーク・はさみ・パソコン)と動詞のカード(食べます・切ります・書きます・送ります)を組み合わせて「〜で〜ます」を言わせ、次に「何で〜ますか」「〜で〜ます」の問答にする。練習Cの型: 「国で何でごはんを食べますか」「家族に何語でメールを書きますか」をクラスで聞いて回り、表に書かせてから「〜さんは〜で食べます」と報告させる。

  1. 口頭実物か絵カードで道具と動作を同時に見せ、「はし・食べます」「はさみ・切ります」「パソコン・メールを書きます」「日本語・レポートを書きます」「英語・手紙を書きます」とキューを出す → 全員 → 列 → 個人で「〜で〜ます」。2周目はキューを道具の絵だけにし、動作は学生に選ばせる。最後に教師が「何で食べますか」「何語で書きますか」と聞き、学生が答える問答に切り替える。
  2. ペア情報差の表を使う。Aの表にはクラスの架空の3人(山田さん・田中さん・鈴木さん)の「何で食べますか」「家族に何語でメールを書きますか」が埋まっていて、Bの表は空欄。Bが「山田さんは何で食べますか」と聞いて書き込み、3人分で交替する。答えた側は「〜で食べます」と文で言い切る。
  3. 産出「わたしの国の食べ方紹介」。学生が自分の国でよく食べる料理を一つ選び、「国で〜をよく食べます。〜で食べます。家族には〜語でメールを書きます」の3文をクラスで発表する。聞いている学生は「何で食べますか」と一つ質問する。教師が見るのは、道具・言語の後ろが「で」になっているか(*はしに食べます)、「を」と「で」の位置が入れ替わっていないかの2点。

つまずきと手当て

  • 「で」を「電車で」「食堂で」と同じ形と見て安心し、「日本語のメールを書きます」「はしに食べます」のように別の助詞に替えてしまう。板書の三つの「で」に戻り、「何を使って?」に答える語が道具の「で」だと確かめる
  • 「歩いて行きます」(第5課)につられて「歩くで」「手に食べます」と言う。実物を手に持たせて「で」を言わせる動作練習に戻す
  • 「日本語で」と「メールを」を取り違えて「日本語をメールで書きます」と言う。「を」は書く物、「で」は使う言葉と、枠に「日本語で/メールを」を並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〈乗り物〉で行きます/来ます/帰ります(第5課)第5課の「電車で行きます」は移動の手段で、この課の「はしで食べます」は動作の道具です。どちらも「何を使ってするか」に答える「で」なので、同じ仲間として並べて見せると覚えやすくなります。違いは後ろの動詞で、第5課は行きます・来ます・帰ります、この課は食べます・切ります・書きますのような動作の動詞です。
  • 〈場所〉でVます(第6課)第6課の「食堂で食べます」は動作をする場所で、「どこで」に答えます。この課の「はしで食べます」は「何で」に答える道具です。形がまったく同じなので、学習者は「食堂で」と「はしで」を区別できず、「どこで食べますか」に「はしで食べます」と答えることがあります。質問の語(どこで/何で)を板書の横に書き、どちらに答える「で」かを確かめさせます。
関連する文型

学習項目 2 〜は〈言語〉で〜です

意味・はたらき文型 2

ある言葉を別の言語で何と言うかを、聞いたり答えたりする形です。「『ありがとう』は英語で何ですか」「『Thank you』です」のように、話題にする言葉を「は」で取り上げ、「〈言語〉で」で言語を示します。文型1の「〈言語〉で」が名詞文の中に入った形で、動詞はありません。教室で分からない言葉を聞くための道具になるので、ここで覚えると以後の授業で学習者自身が使えます。

接続

「言葉」+は+〈言語〉+で+何ですか/「言葉」+です(「何」は「です」の前なので「なん」と読む)

形
「X」は〈言語〉で何ですか「X」は〈言語〉で「Y」ですNは日本語で何ですか

導入

  • クラスの母語を材料に教師が聞く黒板に「ありがとう」と書き、学生の母語を指して「『ありがとう』は〜語で何ですか」と聞く。答えが返ったら「『〜』ですね」と繰り返し、形を「『X』は〈言語〉で『Y』です」と板書する。母語が複数あるクラスなら、同じ言葉を何語かで順に聞いて回ると自然に反復になる。
  • 逆向きで「日本語で何ですか」実物(はさみ・消しゴム・ホッチキス)を見せ、学生に母語で言わせてから「『〜』は日本語で何ですか」と聞かせ、教師が日本語を答える。分からない物の名前を聞く言い方として定着させ、以後の授業では「先生、これは日本語で何ですか」を許す(むしろ歓迎する)と伝える。

板書案

「X」は 〈言語〉で 何ですか。
「ありがとう」は 英語で 何ですか。 → 「Thank you」です。
これは 日本語で 何ですか。 → 「はさみ」です。
〔赤〕は(言葉) 〔青〕で(言語) 〔緑〕何 → なん

場面と発話(自作)

  • 教室で、机の上にある見慣れない文房具の名前が分からない。先生に聞く。すみません、これは日本語で何ですか。
  • 日本人の友達が、留学生の国の言葉に興味を持っている。「こんにちは」の言い方を教える。「こんにちは」は中国語で「ニーハオ」です。
  • アルバイト先で、店長が英語のメニューを作っている。「水」の英語を聞かれて答える。「水」は英語で「water」です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード(花・水・本・時計)を見せて「『花』は英語で何ですか」→「『flower』です」を一斉→個別で言わせる。クラスに共通の言語がなければ、教師が日本語の語を言い、学生が自分の母語で答える形にする。練習Cの型: ペアで、片方が母語の挨拶を紙に書いて相手に「これは〜語で『〜』です」と見せ、相手が「『〜』は日本語で何ですか」と聞き返す。最後にクラスで「〜語で『ありがとう』は『〜』です」と発表させる。

  1. 口頭教師が実物か絵カード(消しゴム・はさみ・ホッチキス・花・時計)を見せ、学生に「これは日本語で何ですか」と聞かせる → 教師が「はさみです」と答える。次は逆に、教師が日本語の語(ありがとう・おはようございます・水)を言い、学生が「『〜』は〈自分の母語〉で『〜』です」と答える。全員 → 個人の順で、「何(なん)」の読みは毎回そろえさせる。
  2. ペアAには絵と日本語の名前を書いたカード、Bには絵だけのカードを配る(情報差)。Bが絵を指して「これは日本語で何ですか」と聞き、Aが「『〜』です」と答え、Bはカードに書き込む。5枚で役を交替する。終わったらBが書いた語をAが読み上げて確かめる。
  3. 産出「ことばの交換会」。学生が自分の母語の言葉を3つ選んでカードに書き、クラスを回って相手に見せる。相手は「『〜』は日本語で何ですか」と聞き、カードの持ち主は日本語の言い方を答える(分からないときは教師に「〜は日本語で何ですか」と聞いてよい)。教師が見るのは、言葉に「は」、言語に「で」が付いているか、「何」を「なに」と読んでいないか、答えが「『〜』です」で言い切れているか。

つまずきと手当て

  • 「英語で」を「英語は」にして「『ありがとう』は英語は何ですか」と言う。言葉が「は」、言語が「で」と板書の枠を指す
  • 「何ですか」を「なにですか」と読む。「です」の前の「何」は「なん」と読むと言っておく(「何で(なんで)」も同じ)
  • 答えに「です」を付けず、言葉だけ言って終わる。会話では通じるが、練習では「『〜』です」で言い切らせる

既習の文型との違い

  • これ/それ/あれはNです(第2課)第2課の「これは何ですか」は、その物が何かを聞く質問で、答えは「辞書です」のような物の名前です。この課の「これは日本語で何ですか」は、物が何かは分かっていて、日本語での言い方を聞く質問です。学習者は「〜で」を落として「これは何ですか」とだけ聞き、教師が物の説明を始めてしまうことがあるので、「日本語で」を付けるだけで質問の中身が変わることを見せます。
  • 〈道具・手段〉でVます/〈言語〉でVます(この課の文型1)文型1の「日本語で書きます」は動詞の文で、言語は書く手段です。文型2の「『水』は英語で何ですか」は名詞文で、動詞がありません。学習者は文型1の形に引かれて「*『水』は英語で何を言いますか」のように動詞を足すことがあるので、「何ですか」で終わる形を枠で固めます。
関連する文型

学習項目 3 わたしは〈人〉にNをあげます

意味・はたらき文型 3

物を人に渡すことを表します。渡す人が「は」、受け取る人が「に」、渡す物が「を」です。「あげます」のほかに、「貸します」「教えます」「送ります」「(電話を)かけます」も同じ「〈人〉に」の形を取り、人から人へ物や情報が向かう動詞の仲間として扱います。この課では渡す人が「わたし」か第三者で、受け取る人は「わたし」以外です。受け取る人が「わたし」になる形(「くれます」)は第24課で扱うので、ここでは出しません。

接続

〈人〉+に+N+を+あげます(貸します・教えます・送ります・かけます も同じ形)。主語は渡す人

形
わたしは〈人〉にNをあげます〈人1〉は〈人2〉にNをあげます〈人〉に電話をかけます/メールを送りますだれにNをあげますか

導入

  • 実物を渡して「あげます」教師がペンを学生Aに渡しながら「わたしはAさんにペンをあげます」と言う。次にAさんにBさんへ渡させ、「AさんはBさんにペンをあげます」をクラスに言わせる。板書は「わたし は 〈人〉 に N を あげます」の枠に、わたし→〈人〉の矢印を描き、「物が行く方向」を見せる。
  • 同じ形の動詞を足す本を渡して「貸します」、黒板で漢字を書いて見せて「教えます」、携帯電話を耳に当てて「電話をかけます」と動作で見せ、どれも「〈人〉に」であることを同じ枠に書き足す。「に」の前に来るのは「相手」だと一言でまとめる。

板書案

わたし は 〈人〉 に N を あげます
わたし ──(花)──→ 山田さん
わたしは 山田さんに 花を あげます。
〔行く方向〕あげます・貸します・教えます・送ります・(電話を)かけます
〔赤〕に(相手) 〔青〕を(物) 〔矢印〕わたし → 人

場面と発話(自作)

  • 友達の誕生日が近い。プレゼントを用意したことを別の友達に話す。あしたは山田さんの誕生日です。わたしは山田さんに花をあげます。
  • 留学生が、クラスメートに辞書を貸したことを先生に話す。きのう田中さんに辞書を貸しました。
  • 年末に、国の家族に年賀状を送ったことを日本人の友達に言う。国の母に日本語で年賀状を送りました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 人の絵カード(父・母・友達・先生)と物の絵カード(花・本・チョコレート・年賀状)を組み合わせ、「わたしは〈人〉に〈物〉をあげます」を言わせる。動詞のカード(あげます・貸します・送ります・教えます)に替えても「〈人〉に」が変わらないことを確かめる。練習Cの型: 「クリスマス(誕生日)に、だれに何をあげますか」をペアで聞き合い、「〜さんは〜に〜をあげます」でクラスに報告させる。

  1. 口頭人の絵カードと物の絵カードを左右に並べ、教師が「母・花」「友達・本・貸します」「先生・年賀状・送ります」「山田さん・英語・教えます」「父・電話・かけます」とキューを出す → 全員 → 個人で「わたしは〈人〉に〈物〉を〜ます」。動詞を替えても「〈人〉に」が変わらないことを、教師が「に」の位置を指でたたいて確かめる。2周目は主語を第三者(田中さんは〜)に替える。
  2. ペア「プレゼントの表」を使う情報差。Aの表には「だれが・だれに・何を」が5行埋まっていて、Bの表は「だれが」だけ。Bが「田中さんはだれに何をあげましたか」と聞き、Aが「田中さんは鈴木さんにシャツをあげました」と答え、Bが書き込む。5行で交替し、終わったら二人で表を見比べる。
  3. 産出「プレゼント計画」。クリスマスか家族の誕生日に、だれに何をあげるかを3人分考え、「わたしは〜に〜をあげます」で発表する。聞いている学生は「何をあげますか」「だれにあげますか」と聞き返す。教師が見るのは、人に「に」・物に「を」が付いているか(*母を花をあげます)、受け取る人が「わたし」になっていないか、目上の人に「あげます」を使っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 受け取る人に「を」、物に「に」を付ける(「山田さんを花にあげます」)。矢印の板書に戻り、「に」の先に人、「を」の先に物と、指さしながら言い直させる
  • 「山田さんはわたしに花をあげます」と、受け取る人を「わたし」にする。この課では「わたしに」は作らせず、出たら「わたしは山田さんに花をもらいます」(文型4)に言い換えて受ける
  • 先生や目上の人に「あげます」を使う(「先生に本をあげました」)。丁寧な言い方は後の課なので、ここでは「先生や目上の人には使わないことが多い」と軽く触れる程度にとどめる

既習の文型との違い

  • NをVます(他動詞)(第6課)第6課の「本を読みます」は、動作と対象の「を」だけで文ができました。「あげます」は物を渡す相手が要る動詞なので、「を」に加えて相手の「に」が入ります。学習者は「を」だけの文に慣れているので、「*山田さんを花をあげます」のように人にも「を」を付けたり、相手を落として「花をあげます」で止めたりします。「だれに?」と聞いて、相手の位置を埋めさせます。
  • 〈人〉と行きます/来ます/帰ります(第5課)第5課の「友達と行きます」の「と」は、いっしょにする人です。この課の「友達に貸します」の「に」は、物を受け取る相手です。「友達と本を送りました」は二人でいっしょに送った意味になり、「友達に本を送りました」とは別の出来事です。人に付く助詞が二つ並ぶので、「いっしょ」か「相手」かを絵で分けて見せます。
関連する文型

学習項目 4 わたしは〈人〉にNをもらいました

意味・はたらき文型 4

物を人から受け取ることを表します。受け取る人が「は」、渡した人が「に」、物が「を」です。文型3の「あげます」と向きが逆で、同じ出来事を受け取る側から言う形です。「もらいます」のほかに「借ります」「習います」も「〈人〉に」を取り、相手から自分の方へ物や知識が来る動詞の仲間です。渡した人は「から」でも言えますが、この課では「に」で統一して練習します。

接続

〈人〉+に+N+を+もらいます(借ります・習います も同じ形)。主語は受け取る人

形
わたしは〈人〉にNをもらいました〈人1〉は〈人2〉にNをもらいました〈人〉にNを借ります/習いますだれにNをもらいましたか

導入

  • 文型3の場面をもう一度、受け取る側から教師が学生Aにペンを渡して「わたしはAさんにペンをあげました」と言ったあと、Aさんを立たせて「Aさんは先生にペンをもらいました」をクラスに言わせる。板書は文型3の枠の下に「〈人〉 は 〈人〉 に N を もらいます」を書き、矢印を逆向きに描いて、同じ出来事が二つの文になることを見せる。
  • 借ります・習いますを同じ枠で学生の傘を借りる動作で「〜さんに傘を借りました」、学生に母語の挨拶を教えてもらって「〜さんに〜語を習いました」と言い、枠に動詞を足す。「物が来る方向」の動詞としてまとめる。

板書案

わたし は 〈人〉 に N を もらいます
わたし ←(シャツ)── 父
わたしは 父に シャツを もらいました。
〔来る方向〕もらいます・借ります・習います
〔2列〕あげます・貸します・教えます ⇔ もらいます・借ります・習います
〔赤〕は(受け取る人) 〔矢印〕人 → わたし

場面と発話(自作)

  • クリスマスの次の日。同僚に何をもらったか聞かれて答える。父にシャツをもらいました。
  • 雨が降ってきたが傘がない。会社の人に借りて帰ったことを、うちで家族に話す。会社の人に傘を借りました。
  • 日本人の友達に「日本語はどこで勉強しましたか」と聞かれた。学校ではなく人から習った。日本語は友達に習いました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 文型3で使った人と物の絵カードをそのまま使い、矢印の向きを変えて「わたしは〈人〉に〈物〉をもらいました」を言わせる。次に同じ絵で「AさんはBさんに〜をあげました」と「BさんはAさんに〜をもらいました」を続けて言わせ、向きを切り替える練習にする。練習Cの型: 「誕生日に何をもらいましたか」「だれにもらいましたか」をペアで聞き合い、「〜さんは〜に〜をもらいました」でクラスに報告する。

  1. 口頭文型3の人と物のカードを使い、矢印のカードを逆向きにして「父・シャツ」「友達・傘・借ります」「山田さん・テニス・習います」「母・お金」とキューを出す → 全員 → 個人で「わたしは〈人〉に〈物〉をもらいました」。次に転換練習。教師が「AさんはBさんに本をあげました」と言い、学生が「BさんはAさんに本をもらいました」と言い直す。「貸しました」→「借りました」、「教えました」→「習いました」も同じ要領で。
  2. ペア矢印つきの絵カード(人→人と物)を1組に10枚渡す。Aが絵を見て「あげます」側の文を言い、Bが同じ絵を「もらいます」側の文で言い直す。5枚で交替。慣れたら、Aが言う文の動詞を貸します・教えますに替え、Bが借ります・習いますで返す。
  3. 産出「誕生日インタビュー」。クラスで3人に「誕生日に何をもらいましたか」「だれにもらいましたか」と聞き、表にまとめて「〜さんは〜に〜をもらいました」でクラスに報告する。教師が見るのは、「もらいました」の主語が受け取る人になっているか、渡した人に「は」が付いて「は」が二つになっていないか(*わたしは父はシャツをもらいました)、借ります・貸しますの向きが合っているかの3点。

つまずきと手当て

  • 「あげます」の向きのまま「山田さんはわたしに花をもらいました」と言う(主語が渡す人になっている)。矢印の板書で「もらいます」の主語は受け取る人と確かめ、「わたしは」から言い直させる
  • 渡した人にも「は」を付けて「は」が二つになる(「わたしは父はシャツをもらいました」)。母語で「〜から」と言う学習者に多い。「に」の位置を指さして言い直す
  • 「借ります」と「貸します」を取り違える(自分が受け取るのに「貸しました」)。物が来る方向(もらいます・借ります・習います)と行く方向(あげます・貸します・教えます)を板書で2列に並べる

既習の文型との違い

  • わたしは〈人〉にNをあげます(この課の文型3)「あげます」と「もらいます」は同じ出来事を両側から言う形で、どちらも相手に「に」が付きます。違うのは主語で、「あげます」は渡す人、「もらいます」は受け取る人が「は」になります。学習者は「に」が同じなので向きを混ぜ、「*山田さんはわたしに花をもらいました」のように渡す人を主語にしたまま「もらいました」と言います。矢印の板書で、「は」の人から見てどちらに物が動くかを確かめます。
  • 〈人〉と行きます/来ます/帰ります(第5課)「友達と日本語を習います」は友達といっしょに習う意味で、先生は別にいます。「友達に日本語を習います」は友達が先生役です。「と」と「に」の一字で教えてくれる人が変わるので、習います・借りますの練習では「だれが教えますか」と聞いて確かめます。
関連する文型

学習項目 5 もうVました

意味・はたらき文型 5

「もう」は、その動作がすでに終わったことを表します。「もう〜ましたか」と聞かれて、終わっていれば「はい、もう〜ました」、まだなら「いいえ、まだです」と答えます。「〜ました」は第4課の過去の形ですが、ここでは「いつしたか」ではなく「終わったかどうか」を聞く使い方で、「まだ」は「これから」とセットで覚えさせます。「いいえ、まだ〜ませんでした」は誤りです。「まだ〜ていません」は第31課で扱うので、この課は「まだです」で止めます。

接続

もう+Vました(か)。答えは「はい、もうVました」「いいえ、まだです」

形
もうVましたかはい、もうVましたいいえ、まだですこれからVます

導入

  • 授業の始めに宿題で聞く教師が宿題を集める動作をしながら「宿題、もうしましたか」と聞き、した学生には「はい、もうしました」、していない学生には「いいえ、まだです」を言わせる。板書は「もう Vましたか → はい、もう Vました/いいえ、まだです」の二本に分け、「まだです」の後ろに「これからVます」を書き足す。
  • 時刻と組み合わせて「終わった」を見せる昼休みの前に「もう昼ごはんを食べましたか」と聞いて「まだです」を引き出し、昼休みの後に同じ質問をして「もう食べました」に変わることを見せる。「もう」が「今は終わっている」ことを言うのだと、時刻の違いで実感させる。

板書案

もう Vましたか。
→ はい、もう Vました。
→ いいえ、まだです。(これから Vます。)
〔時間の線〕きのう ── 今 ── あした  〔赤〕「もう」は 今より前に丸
〔青〕「まだです」の後ろに「これから」

場面と発話(自作)

  • 会社で、上司に「荷物はもう送りましたか」と聞かれた。まだ送っていない。いいえ、まだです。これから送ります。
  • 友達と映画を見る約束。駅で会った友達に「切符、もう買いましたか」と聞かれた。買ってある。はい、もう買いました。
  • 年末。ルームメイトが国の家族に年賀状を書くと言っていたので、聞いてみる。年賀状、もう書きましたか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 動詞の絵カード(宿題をします・昼ごはんを食べます・荷物を送ります・切符を買います)で「もう〜ましたか」を言わせ、教師が○×のカードを見せて「はい、もう〜ました」「いいえ、まだです」で答えさせる。練習Cの型: 「きょう、もう〜しましたか」のチェックリスト(朝ごはん・メール・宿題・新聞)を配り、ペアで聞き合って○×を付け、まだの人には「これから〜ます」まで言わせる。

  1. 口頭動作の絵カード(宿題をします・昼ごはんを食べます・年賀状を書きます・切符を買います・荷物を送ります・母に電話をかけます)で、教師が「宿題・します」とキューを出し、学生が「もう宿題をしましたか」。教師が○のカードを上げたら「はい、もうしました」、×なら「いいえ、まだです。これからします」。問いと答えを一組で、全員 → 個人。
  2. ペアAには鈴木さんの「きょうの手帳」(6つの用事に○×が付いている)、Bには用事だけの表を配る(情報差)。Bが「鈴木さんはもう切符を買いましたか」と聞き、Aが手帳を見て答え、Bが○×を書き込む。6つで交替し、二人の表を見比べる。
  3. 産出「旅行の準備ロールプレイ」。あした国へ帰るルームメイト同士という役で、Aが「切符はもう買いましたか」「お土産はもう買いましたか」「お母さんにもう電話をかけましたか」と確かめ、Bは自分で○×を決めて答える。まだのものには「これから〜ます」を必ず添える。教師が見るのは、「いいえ」の答えが「まだです」で止まっているか(「まだしませんでした」になっていないか)、「はい」の答えが動詞まで言い切れているか。

つまずきと手当て

  • 「いいえ、まだです」と言えず「いいえ、まだしませんでした」と答える。過去の否定は「しなかった」の意味になって合わないので、「まだです」で止める型として覚えさせる。「まだ〜ていません」は第31課まで出さない
  • 「もう」を「もっと」「また」と混同する(「もう一つ」の「もう」とも別)。この課では「終わった」の「もう」だけと限って扱う
  • 質問の「もう」をそのまま返して「はい、もうです」と言う。答えは動詞まで言い切らせる

既習の文型との違い

  • Vます/Vません/Vました/Vませんでした(第4課)第4課の「〜ました」は「きのう勉強しました」のように、いつしたかを言う過去の形で、否定は「勉強しませんでした」でした。この課の「もう〜ました」は、今の時点で終わっているかどうかを言います。「きのう勉強しましたか」には「いいえ、しませんでした」でよいのに、「もう勉強しましたか」には「いいえ、まだです」で答える、という答え方の違いを、二つの質問を並べた板書で見せます。
関連する文型

語彙の扱い

道具の語(はし・スプーン・ナイフ・フォーク・はさみ・パンチ・ホッチキス・セロテープ)は実物を教室に持ち込み、文型1の「〜で切ります・書きます」の形のまま覚えさせると定着が早いです。あげます・もらいます・貸します・借ります・教えます・習いますは、向きが対になる動詞としてまとめて板書し、絵カードは「人→人」の矢印つきにします。家族の語(父・母・お父さん・お母さん)は、自分の家族を言うときと相手の家族を言うときで形が違うことを一言添える程度にし、家族の呼び方のまとまった扱いは後の課に回します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • はし(はし) 日本や中国などで、ごはんを食べるときに使う2本の棒です。 〜で食べます・〜を買います
    寮の食堂で、国の食べ方を友達に聞く。
    「国でもはしで食べますか。」
  • はさみ(はさみ) 紙などを切る道具です。 〜で切ります・〜を貸します
    教室で、手に持った道具の名前を先生に聞く。
    「これは日本語で何ですか。」「はさみです。」
  • 切ります(きります) はさみやナイフで、物を二つ以上に分けます。 紙を〜・パンを〜・はさみで〜
    パーティーの準備で、何で切るか友達に聞かれた。
    「パンはナイフで切ります。」
  • 送ります(おくります) 手紙やメールや荷物を、ほかの所にいる人に出します。 メールを〜・荷物を〜・国に〜
    年末に、国の家族に何を送ったか友達に聞かれた。
    「母に年賀状を送りました。」
  • 貸します(かします) 自分の物を、少しの間、ほかの人に渡します。あとでまた自分の物になります。 本を〜・傘を〜・友達に〜
    クラスメートが辞書を忘れてきたので、自分の辞書を渡した。
    「わたしは田中さんに辞書を貸しました。」
  • 借ります(かります) ほかの人の物を、少しの間、もらって使います。あとで返します。 傘を〜・お金を〜・友達に〜
    昼ごはんのお金がなかったので、友達から受け取った。
    「きのう友達にお金を借りました。」
  • 教えます(おしえます) 自分が知っていることを、ほかの人に話して、その人ができるようにします。 日本語を〜・電話番号を〜・友達に〜
    日本人の友達に、自分の国の言葉を教えている。
    「わたしは毎週、山田さんに英語を教えます。」
  • 習います(ならいます) ほかの人に教えてもらって、新しいことを勉強します。 日本語を〜・テニスを〜・先生に〜
    週末に何をするか同僚に聞かれた。
    「土曜日、友達にテニスを習います。」
  • かけます(かけます) 電話を使って、ほかの人と話します。「電話を〜」の形で使います。 電話を〜・うちに〜・会社に〜
    日曜日に国の家族と話したい。
    「日曜日、国の母に電話をかけます。」
  • お土産(おみやげ) 旅行に行った所で買って、家族や友達にあげる物です。人の家を訪ねるときに持っていく物も言います。 〜を買います・〜をあげます・国の〜
    日本人の家を訪ねて、玄関で持ってきた物を渡す。
    「これ、国のお土産です。どうぞ。」
  • もう(もう) その動作が、今より前に終わっていることを言います。 〜食べました・〜送りました・〜しましたか
    授業の前に、友達にレポートのことを聞く。
    「レポート、もう書きましたか。」
  • まだ(まだ) その動作が、今は終わっていないことを言います。「これから」といっしょによく使います。 〜です・いいえ、〜です
    午後1時、同僚に昼ごはんを食べたか聞かれた。
    「いいえ、まだです。これから食べます。」

会話の扱い

日本の家を訪ねる場面です。玄関で呼びかける→迎える→上がる→お土産を渡す→飲み物を勧められる→いただく、という流れを、会話を聞く前に玄関と居間の絵で作り、新出の決まり文句(ごめんください・いらっしゃい・どうぞお上がりください・失礼します・〜はいかがですか・いただきます)を動作つきで練習しておきます。お土産を渡すところで文型3(〜にNをあげます)が生きるので、「これ、〜のお土産です。どうぞ」のような渡し方と合わせて扱います。ロールプレイは教室の入口を玄関に見立て、訪ねる人と迎える人を交代し、持っていくお土産(国の物・花・チョコレート)を変えて3回ほど回します。慣れたら、迎える側が「コーヒーはいかがですか」のあとに飲み物をお茶やジュースに変えたり、訪ねる側が「もう昼ごはんを食べましたか」と聞かれる展開を足して、文型5まで使わせます。

宿題と次のコマ

問題の読み書きの部分を宿題にし、次のコマの最初に答え合わせをします。あわせて「きのう、だれに何をあげましたか/もらいましたか」を2文ずつ書かせ、「は・に・を」の向きを添削します。次のコマは第8課(形容詞)に入る前に、文型3・4を絵カードで5分だけ復習し、「に」の向きが安定しているかを確かめてから進みます。

よくある質問

  • 第7課の道具の「で」は、第5課・第6課の「で」とどう整理すればいいですか?

    第5課の「電車で行きます」(乗り物)、第6課の「食堂で食べます」(場所)、この課の「はしで食べます」(道具・言語)の三つを、同じ板書に並べて役目を書き分けます。乗り物と道具は「何で?」に答える同じ仲間、場所は「どこで?」に答える別の役目、と質問の語で分けると学習者が混ざりにくくなります。導入の最初に前の二つの課の「で」を言わせて黒板に残しておくと、三つ目として自然に足せます。

  • 「あげます」と「もらいます」の向きはどう教えればいいですか?

    実物を学生に渡す場面を作り、同じ出来事を渡した側から「あげました」、受け取った側から「もらいました」と2回言わせます。板書は二つの文を上下に並べ、矢印を逆向きに描いて、「は」の人から物が出ていくか入ってくるかで動詞が決まることを見せます。貸します・教えます(行く方向)と借ります・習います(来る方向)も同じ2列に足すと、向きの対としてまとめて覚えられます。

  • 「〈人〉にもらいました」と「〈人〉からもらいました」はどちらで教えますか?

    この課では「に」で統一して練習します。「から」でも言えることは、学習者から質問が出たときに「どちらも言えます」と答える程度でかまいません。最初から二つ出すと、「あげます」の「に」との対応が見えにくくなるためです。

  • 「もう〜ましたか」に「いいえ、まだ〜ませんでした」と答える学習者はどう直しますか?

    「〜ませんでした」は、その時にしなかったという過去の事実を言う形なので、「今の時点でまだ終わっていない」という答えには合いません。この課では「いいえ、まだです。これから〜ます」を一つの型として覚えさせ、「まだ〜ていません」は第31課で扱うと伝えます。第4課の「きのう〜しましたか」と並べて、質問によって答え方が変わることを板書で見せると納得しやすくなります。

  • 第7課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習、文型1・2(道具と言語の「で」)、文型3・4(あげます・もらいます)の導入まで。2コマ目はあげます・もらいますの転換練習、文型5(もう〜ました)、会話のロールプレイ、練習Cと問題です。あげます・もらいますの向きが安定しないクラスでは、2コマ目の頭に5分の転換練習を入れてから進みます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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