動詞の辞書形が初めて出る課です。辞書形を使って「できること(能力)」「その場所・状況でできること」を言い、趣味を「〜ことです」と説明し、「〜まえに」で動作の順序を言えるようになります。て形(第14課)・ない形(第17課)に続く3つ目の活用形なので、学習者の頭の中では「また新しい形か」という負担が先に立ちます。作り方は最初の30分ほどで片づけて、あとは文型の中で辞書形を何度も口にさせるのがこの課の芯です。「できます」は目的語が「が」になることと、「上手です」(第9課)との違いを押さえておくと、あとの課で崩れにくくなります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | て形の復習から入る。絵カードで「書きます→書いて」を数枚言わせ、「きょうはもう一つ、新しい形」と言って辞書形へ。グループ分けは て形のときの分け方がそのまま使えることを確かめる |
| 辞書形の作り方 | 25分 | グループI→II→IIIの順に板書し、絵カードで ます形→辞書形 の口頭練習。辞書形はこの課では文の途中でしか使わないので、「〜ことができます」の枠に入れるところまでを一気にやる |
| 文型1(能力) | 35分 | 教師の「できる・できない」の実演から「Nができます」→「V辞書形ことができます」へ。「が」の板書を大きく。学生同士の「〜ことができますか」のやり取りまで |
| 文型2(状況可能) | 25分 | 教室・学校・駅の絵や実物(券売機の写真・図書館のカード)で「ここで〜ことができます/できません」。文型1と同じ形で意味が違うことを、主語の有無で見せる |
| 文型3(趣味) | 25分 | 教師の趣味を写真で紹介して「趣味は〜ことです」。「Nです」と「V辞書形ことです」の両方を板書し、学生の趣味を聞いて回る。会話の下地になる |
| 文型4(〜まえに) | 35分 | 絵カード2枚を並べて順序を言う。V辞書形・Nの・期間 の3つの接続を1枚の表にする。「まえに」の前はいつも辞書形(主文が過去でも)を強く |
| 会話・練習C・問題 | 25分 | 会話は「趣味を聞く→くわしく聞く→感心する→誘う」の流れで、学生の本当の趣味に置き換えて再現。練習Cは3つの場面(できますか・趣味・まえに)。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
辞書に載っている形なので「辞書形」と呼びます。この課では「〜ことができます」「〜ことです」「〜まえに」の中で使い、単独で文を終える使い方(普通形)は第20課まで出しません。作り方は て形・ない形と同じ3つのグループで決まります。グループI は ます の前の音を い段 から う段 に変え、グループII は ます を る に替えるだけ、グループIII は「します→する」「来ます→来る」の2つを覚えます。
ます形 → 辞書形(グループI: い段→う段/グループII: ます→る/グループIII: する・来る)
絵カード20枚を速いテンポで「ます形→辞書形」。I・II・III を混ぜて出し、間違えたカードだけ戻してもう一度。次に辞書形から ます形に戻す逆の練習も1周やると、文型の練習で「〜ことができますか」→「はい、〜ます」と答えるときに崩れない。
人が持っている能力(できること)を言う文型です。名詞なら「日本語ができます」「ピアノができます」、動詞なら辞書形に「こと」を付けて「泳ぐことができます」の形にします。動作の対象は「を」ではなく「が」で受けます。第9課の「上手です」は「じょうずか へたか」の評価、こちらは「できるか できないか」なので、「できますが、上手じゃありません」という言い方が成り立ちます。
N+が+できます/V辞書形+こと+が+できます(否定は できません・疑問は できますか)
練習Bの型: 絵カード(楽器・スポーツ・乗り物・料理)を見せ、「ピアノ/弾きます」のキューで「ピアノを弾くことができます」。次にキューを名詞だけ(ピアノ)に替えて「ピアノができます」。練習Cの型: ペアで「〜ことができますか」→「はい/いいえ」→できる人に「じゃ、今度教えてください」(第14課)と続けさせ、3人に聞いてクラスに報告する。
形は文型1と同じですが、人の能力ではなく「その場所・そのやり方で、できる・できない」という状況を言います。「図書館で本を借りることができます」のように、主語は言わず「〜で」「〜から」などの場所や手段が先に立ちます。禁止の「〜てはいけません」(第15課)は「してはだめ」というルール、「〜ことができません」は「ここではできない」という事実の言い方で、後者のほうがやわらかく聞こえます。
〈場所・手段〉で+N+が+できます/〈場所・手段〉で+V辞書形+こと+が+できます
練習Bの型: 場所の絵カード+動作の絵カードを2枚組で見せ、「図書館/本を借ります」→「図書館で本を借りることができます」。○×の印を付けて「できます/できません」も言い分けさせる。練習Cの型: 学生を客と係の人にして「ここで〜ことができますか」→「はい、できます」「いいえ、できません。〜で〜てください」(第14課)と続ける。
自分の趣味を言う文型です。趣味が名詞で言えるなら「趣味は音楽です」、動作で言うなら辞書形+こと で名詞の形にして「趣味は音楽を聞くことです」と言います。「〜ことです」の「こと」は動詞を名詞に変える働きで、文型1の「〜ことができます」と同じ「こと」です。会話では「趣味は何ですか」と聞かれて答えるのが基本で、「どんな〜ですか」とくわしく聞き返すと会話が続きます。
趣味は+N+です/趣味は+V辞書形+こと+です
練習Bの型: 絵カード(映画・ギター・料理・旅行・釣り)で「料理を作ります」→「趣味は料理を作ることです」。名詞だけのキューで「趣味は料理です」も言わせる。練習Cの型: クラス全員に「趣味は何ですか」と聞いて回り、表に書く。答えた人に「どんな〜ですか」「いつ〜ますか」ともう1つ聞くことを条件にする。
「〜まえに」のあとの動作が先に起こることを言います。動詞は辞書形で、主文(あとの文)が過去でも「まえに」の前は辞書形のまま変わりません(「日本へ来るまえに、日本語を勉強しました」)。名詞には「の」を付け(食事のまえに)、期間(1時間・3日・2年)には「の」を付けずに「3年まえに」とします。期間に付くときは「〜前のことだ」という意味で、動作の順序ではなく「いつ」を言う使い方です。第16課の「〜てから」は先にする動作を前に言う形で、「まえに」はあとにする動作を前に言う形です。
V辞書形+まえに、/N+の+まえに、/〈期間〉+まえに、(「の」なし)
練習Bの型: 絵カード2枚(②あとの動作・①先の動作)を見せ、「出かけます/窓を閉めます」→「出かけるまえに、窓を閉めます」。名詞のキュー(食事・会議・旅行)と期間のキュー(1時間・3日・2年)も混ぜて、「の」の有無を言い分けさせる。練習Cの型: 「日本へ来るまえに、何をしましたか」「寝るまえに、いつも何をしますか」をペアで聞き合い、相手の答えを報告する。
この課の新出語は、趣味と能力を言うための動詞(弾きます・歌います・集めます・運転します)と、会話に出る相づち(へえ)と副詞(なかなか・ぜひ)が中心です。動詞は ます形と辞書形を1組にして絵カードで出し、「〜ことができます」「趣味は〜ことです」の材料にそのまま使います。「課長・部長・社長」は会社で働く学習者が多ければ自分の会社の人で言わせ、「特に・ぜひ」は会話の練習で使う場面を作って定着させます。
相手の趣味を聞き、「どんな〜ですか」とくわしく聞いて、相づち(へえ・それはおもしろいですね)で感心し、その趣味に関係する誘いにつなげる会話です。文型3(趣味は〜ことです)と文型1(〜ことができます)がこの流れの中で自然に出るので、最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、役割を替えて2回読んだら、趣味の部分を学生の本当の趣味に置き換えて再現させます。「ぜひ」は誘いを受けるときの言い方として、「なかなか」は会話では否定とセットになりやすいことを一言添えます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「わたしの趣味」を3文(趣味は〜ことです/〜ことができます/〜まえに〜)で書くこと。次のコマの最初に辞書形のカードテスト(10語)をしてから宿題の作文を発表させ、第19課の た形(辞書形と同じグループ分け・て形と同じ音の変化)につなぐ。
第18課の辞書形はどう導入すればいいですか?
て形(第14課)のときに作ったグループI・II・IIIの列をそのまま使い、「グループは同じ、変え方が新しい」と言って入ります。グループIはあいうえお表の上で い段→う段 に指でなぞって見せ、IIは「ます→る」、IIIは「する・来る」の2語を読みごと覚えさせます。作り方には15〜25分だけかけ、すぐ「〜ことができます」の枠に入れて、文の中で辞書形を何度も言わせるほうが定着します。
「〜ことができます」と「上手です」の違いはどう教えますか?
「できます」はできるかできないか、「上手です」は上手か下手かの評価だと板書で分けます。教師が「泳ぐことができますが、上手じゃありません」と自分のこととして言うと、2つが別のものだと伝わります。「上手です」は人をほめる言葉なので、自分のことには「できます」を使うと添えておくと、自己紹介での不自然さも防げます。
「〜まえに」の前の動詞は、文が過去でもなぜ辞書形なのですか?
「まえに」の前の動詞は、話している今ではなく、あとの文の出来事から見て「まだ起きていない」ことを表すので、辞書形のままです。文法用語では相対テンスと呼ばれる見方です。初級の教室では理屈より「まえに の前はいつも辞書形」と言い切り、「日本へ来るまえに、勉強しました」を一文覚えさせると崩れません。第34課の「〜たあとで」と対にすると、た形との使い分けも見えてきます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と辞書形の作り方、文型1(能力)と文型2(状況可能)まで。2コマ目は文型3(趣味)と文型4(〜まえに)、会話、練習Cと問題です。辞書形の定着が弱いクラスでは、2コマ目の頭にカードテストを5分入れると、文型4で崩れにくくなります。
能力の「できます」と状況可能の「できます」は分けて教えるべきですか?
形は同じなので、同じ板書の枠を使い、意味の違いだけを分けて見せます。能力は「わたしは」「〜さんは」と人が主語、状況可能は「図書館で」「カードで」のように場所や手段が頭に来る、と主語の有無で区別させます。学習者に用語は要りませんが、練習のキューを人の絵と場所の絵で分けておくと、自然に使い分けられます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。