みんなの日本語 初級Ⅱ 第34課「わたしがしたとおりに、してください」の教案
『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「わたしがしたとおりに、してください」
人のやり方や説明書・図を手本にして「そのとおりに」動くこと、二つの動作を「あとで」でつなぐこと、そして「どんなふうに」その動作をするか・「代わりに」何をするかを、て形とない形で言い分ける課です。新しい活用形は出ませんが、た形・て形・ない形が一つの課に全部出てくるので、どの文型にどの形が付くかを板書の枠で固定するのがこの課の芯です。とくに「〜たあとで」は、これからのことでも た形 を使う点、「〜ないで」は「〜なくて」と言い換えられない点で崩れやすいので、導入の段階から誤りの形を先に見せておきます。手順を見せて真似させる、という教室の動きそのものが文型1の場面になるので、教師の実演を多めにします。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ
この課のねらい(Can-do)
- 「わたしがしたとおりに」「説明書のとおりに」で、人のやり方や書いてあることを手本にして動くよう頼んだり、そのとおりにしたと言ったりできる
- 「授業が終わったあとで」「仕事のあとで」で、ある動作や出来事のあとに別のことをすると言える(これからのことでも た形 で言える)
- 「しょうゆをつけて食べます/つけないで食べます」で、ある動作をどんなふうにするかを言える
- 「バスに乗らないで、歩いて帰ります」で、ふつうならすることをしないで、代わりに別のことをすると言える
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第33課の「〜と書いてあります」を、教室の掲示や紙の指示を指して数回言わせる。続けて教師が紙に簡単な図をかき、「ここに書いてあります。このとおりに、かいてください」と言って学生にかかせ、文型1へそのまま入る |
| 文型1(〈Vた形〉/Nのとおりに) | 35分 | 教師の実演(紙を折る・図に線を引く)を見せたあとで「わたしがしたとおりに、してください」。次に説明書や図を見せて「Nのとおりに」。板書は「Vた形+とおりに」「Nの+とおりに」の二枠 |
| 文型2(〈Vた形〉/Nのあとで) | 30分 | 一日の予定表の絵で「仕事が終わったあとで、スポーツクラブへ行きます」「仕事のあとで」。第18課の「まえに」(辞書形)と左右に並べて板書し、「まえは辞書形、あとは た形」を言わせる |
| 文型3(〈Vて形〉/〈Vない形〉ないで〜) | 35分 | 食べ物と調味料の絵カードで「しょうゆをつけて食べます/つけないで食べます」。雨の日の絵で「傘をさして行きます/ささないで行きます」。二つ目の動詞が本当の動作で、一つ目は そのやり方 だと示す |
| 文型4(〈V1 ない形〉ないで、V2) | 25分 | 「いつもはバスに乗ります。きょうは乗らないで、歩いて帰ります」を二枚の絵で見せる。文型3との違いは、動作が二つあって一つを やめて 代わりに もう一つ、という点だけ確かめる |
| 会話 | 20分 | 茶道を初めて体験する場面。先生の手本を見て同じようにする、という流れで文型1が繰り返し出る。教師の読みで流れをつかませ、役を替えて読んだあと、手順を教える場面に置き換えて再現させる |
| 練習C・問題 | 25分 | 練習Cは「手順を教える・教わる」「〜たあとで何をするか」「どうやって食べるか/飲むか」の三つの場面。問題は聞き取りを教室で、文法部分は宿題に |
学習項目 1 〈Vた形〉/Nのとおりに、〜
意味・はたらき文型 1
だれかがした動作や、説明書・図など手本になるものと「同じように」動作をする、と言う文型です。「わたしがしたとおりに、してください」は、先に見せたやり方を真似してほしいときの言い方で、動詞は た形 になります。名詞に付くときは「説明書のとおりに」「図のとおりに」のように「の」を入れます。これから言うことを手本にするときは「今から言うとおりに、折ってください」のように辞書形も使いますが、この課の中心は た形 と名詞の形です。文法の見方では、「とおり」は前に節や名詞を受けて働く形式名詞で、「〜とおりに」の部分全体が後ろの動作の仕方を説明しています。そのため「とおり」の前は、名詞を説明するときと同じ普通形になります。
接続
Vた形+とおりに/Nの+とおりに(動詞の前に人を言うときは「わたしが」「先生が」のように が)
形
わたしがしたとおりに、してください先生が言ったとおりに、並べました説明書のとおりに、組み立ててください図のとおりに、線をかきました
導入
- 教師の実演を真似させる教師が学生の前で紙を一枚、ゆっくり二回折って見せる。学生にも紙を配り、「わたしがしたとおりに、してください」と言って同じように折らせる。終わったら板書に「わたしが した とおりに、してください」と書き、「した」を囲んで「た形」と添える。動作を一つ増やして(もう一回折る・角に線をかく)、同じ文を学生に言わせながら繰り返す。
- 説明書・図を手本にする簡単な図(矢印と線だけ)をかいた紙と、組み立て家具の説明書(実物か写真)を見せる。「この図のとおりに、線をかいてください」と言ってかかせ、板書の二つ目の枠に「図の とおりに」と書く。「の」を色チョークで囲み、名詞のときは「の」が要ることを一目で分かるようにする。
板書案
Vた形 + とおりに、〜
N の + とおりに、〜
わたしが した とおりに、して ください。
説明書 の とおりに、組み立てました。
〔赤〕「した」を囲んで た形 〔赤〕「の」を囲む
〔青〕「の」が 要るのは 名詞だけ / 動詞の前は 普通形
場面と発話(自作)
- 日本語の授業で、教師がホワイトボードに漢字の書き順を見せた。学生にもノートに書いてもらう。わたしが並べたとおりに、並べてください。
- 新しい机を買って、自分で組み立てた。うまくできたので、友達に話す。説明書のとおりに組み立てたら、すぐできましたよ。
- 同僚に駅から会社までの道を聞かれた。紙に簡単な地図をかいて渡す。この地図のとおりに行ってください。すぐ分かりますよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が絵カードで「先生が言いました」「説明書」「図」「わたしがしました」などを出し、「〜とおりに、〜てください」の形に言い換えさせる(練習Bの型)。次にペアで、一人が紙を折る・線をかく手順を実演して「わたしがしたとおりに、してください」と言い、もう一人がそのとおりにやってみせるやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭教師がキューを語のカードで出す(「先生が言いました・並べます」「図・かきます」「説明書・組み立てます」「わたしがしました・折ります」)。全体で「先生が言ったとおりに、並べてください」のように言わせてから、一人ずつ当てる。慣れたら語のカードを外し、教師の動作(紙を折る・線をかく)と説明書や図の実物だけをキューにして、動詞のときは た形、名詞のときは「の」を学生が自分で選ぶようにする。
- ペア二人組の片方(見本役)にだけ、折り方や線のかき方を三段で示したカードを渡す。見本役は自分でその手順をやって見せて「わたしがしたとおりに、してください」と言い、もう一人がそのとおりにやる。できたら見本役が「はい、そのとおりです」か「ちょっと違います。もう一度」で返す。一枚ごとに役を交替し、最後に真似た側がクラスに相手の名前を入れて「〜さんがしたとおりに、折りました」と報告する。
- 産出活動名「まねっこ先生」。学生が自分の国の折り紙・料理・お茶のいれ方などから手順を一つ選び、三〜四段に分けて前で実演し、クラス全員がそのとおりに真似る(道具は紙とペンで代用してよい)。終わったら真似た側が実演した人の名前を入れて「〜さんがしたとおりに、〜ました」「説明のとおりに、〜ました」と一文で言う。教師が見るのは、とおり の前が た形 になっているか、名詞に「の」が入っているか、「*しましたとおりに」のように丁寧形が入っていないか。
つまずきと手当て
- 名詞に「の」を付けない(×説明書とおりに、×図とおりに)。板書の「Nの」の枠の「の」を毎回指す。なお「説明書どおりに」という形もあるが、この課では「Nのとおりに」で統一しておく
- 丁寧形を入れる(×わたしがしましたとおりに)。名詞を説明する文の中は普通形、という第22課の決まりと同じだと示す
- 動詞と「とおり」の間に「の」を入れる(×先生が言ったのとおりに)。母語で「〜したものと同じ」と考えると起きやすい。「Vた形+とおり」「Nの+とおり」の二枠を並べて、の が付くのは名詞だけ、と言わせる
既習の文型との違い
- 「〜」と書いてあります/読みます(第33課)第33課の「〜と書いてあります」は、紙や看板に何が書いてあるかを伝える文です。第34課の「〜のとおりに」は、その書いてあることを手本にして動く、という文です。「説明書に『先に電気を消す』と書いてあります。説明書のとおりに、消してください」と二つ続けて言うと、役割の違いが見えます。二つが頭の中で混ざると、「と」の感覚で「の」を落とした「*説明書とおりに」が出やすくなります。
- N1は 文 N2 です(第22課)第22課で、名詞を説明する文の中は普通形になると習いました(わたしが撮った写真)。「とおり」も名詞と同じ扱いなので、前は普通形の た形 です。「*わたしがしましたとおりに」と丁寧形を入れる誤りは、この第22課の決まりに戻すと直ります。違いは、名詞が前に来るときだけ「の」が入る点です。
関連する文型
学習項目 2 〈Vた形〉/Nのあとで、〜
意味・はたらき文型 2
ある動作や出来事が終わって、その後に別のことをする(した)と言う文型です。動詞に付くときは必ず た形 で、これからのことを言う文でも「宿題をしたあとで、テレビを見ます」のように た形 を使います。名詞に付くときは「仕事のあとで」「授業のあとで」のように「の」を入れ、出来事を表す名詞に使います。第16課の「〜てから」と意味が近いですが、「あとで」は二つのことの時間の前後をはっきり言いたいときによく使います。試験の見方では、「〜たあとで」の た は「過去」ではなく、前の動作が後ろの動作より先に終わっていることを表す相対テンスの例としてよく取り上げられます。
接続
Vた形+あとで、〜/Nの+あとで、〜(Nは「仕事・授業・食事・会議」のように出来事を表す名詞)
形
授業が終わったあとで、図書館へ行きますシャワーを浴びたあとで、ビールを飲みます仕事のあとで、スポーツクラブへ行きましたあとで電話します(「あとで」だけで「後で」の意味)
導入
- 一日の予定表で時間の線を引く黒板に横一本の時間の線を引き、左から「仕事」「スポーツクラブ」と絵カードを貼る。「仕事が終わったあとで、スポーツクラブへ行きます」と言い、二枚の間に矢印をかく。次に「仕事」のカードを指したまま「仕事のあとで」と短く言い換え、板書に「Vた形+あとで」「Nの+あとで」の二枠を書く。
- 「まえに」と並べて形を固定する第18課の「ビールを飲むまえに、シャワーを浴びます」を左に、「シャワーを浴びたあとで、ビールを飲みます」を右に板書する。「まえ」の前は辞書形、「あと」の前は た形、と色を変えて書き、学生に「まえは辞書形、あとは た形」と声に出させる。これからのことでも た形 であることを、「あした」を足した文で確かめる。
板書案
Vた形 + あとで、〜
N の + あとで、〜
──仕事──→──スポーツクラブ── (時間の線と矢印)
〔左〕ビールを 飲む まえに、シャワーを 浴びます。 〔右〕シャワーを 浴びた あとで、ビールを 飲みます。
〔赤〕まえ ← 辞書形 〔赤〕あと ← た形
〔青〕いつのことか は 文の 最後の 動詞で 決まる
場面と発話(自作)
- 週末の予定を友達に聞かれた。土曜日は午前中にアルバイトがある。アルバイトのあとで、買い物に行こうと思っています。
- 病院で薬をもらった。いつ飲めばいいか、受付の人に確かめる。この薬は、ご飯を食べたあとで飲むんですか。
- 会議の前に、同僚に資料の質問をされた。今は時間がない。すみません、会議が終わったあとで、説明しますね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
時間の線に二枚の絵カードを並べ、教師が「宿題をします・テレビを見ます」のように二つの動作を言うと、学生が「〜たあとで、〜ます」でつなぐ(練習Bの型)。名詞のカード(仕事・授業・食事)でも同じように回す。最後にペアで「きのう/あした、〜のあとで何をしますか」を聞き合うやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭二枚組の絵カードを時間の線に並べてキューにする(宿題・テレビ/ご飯・散歩/シャワー・寝る/会議・コーヒー)。全体で「宿題をしたあとで、テレビを見ます」と言わせ、次に名詞のカード(仕事・授業・食事)で「仕事のあとで、〜」。慣れたら教師が「まえ」「あと」と言って切り替え、同じカードで「寝るまえに」「ご飯を食べたあとで」を交互に言わせる。最後に「あした」「きのう」のカードを足し、後ろの動詞の時制だけが変わることを確かめる。
- ペア情報差の表を使う。Aは「ある人の土曜日」の予定表(時刻と絵が全部入っている)、Bは同じ表で半分が空欄のものを持つ。Bが「買い物のあとで、何をしましたか」「映画を見たあとで、どこへ行きましたか」と聞き、Aが答え、Bが空欄を埋める。日曜日の表で役を替え、終わったら二人で表を見比べて答え合わせをする。
- 産出活動名「わたしの一日タイムライン」。学生が自分の平日か週末を時間の線にかき、「〜たあとで」「〜のあとで」「〜まえに」を使って三文以上で発表する。聞き手は一つ質問する(「授業のあとで、だれと会いますか」など)。教師が見るのは、あと の前が た形 になっているか、名詞に「の」が入っているか、これからの話で後ろの動詞まで た形 にしていないか(*あした、授業のあとで、図書館へ行きました)。
つまずきと手当て
- 辞書形を付ける(×食べるあとで、×宿題をするあとで)。これからのことだから辞書形、と考えるのが原因。「まえに」との対の板書に戻り、「あと」は いつも た形 と言わせる
- 名詞に「の」を付けない(×仕事あとで)。文型1の「Nのとおりに」と同じ枠なので、二つを並べて見せる
- 後ろの文の時制まで た形 に引っぱられる(×あした、授業が終わったあとで、図書館へ行きました)。文の最後の動詞で「いつのことか」が決まる、と時間の線の上で示す
既習の文型との違い
- 〈V1 て形〉から、V2(第16課)どちらも二つの動作の順番を言いますが、「〜てから」は前の動作をすませて次に移る手順の並び(手を洗ってから食べます)に、「〜たあとで」は二つのことの時間の前後に重心があります。「あとで」は「仕事のあとで」のように名詞にも付けられますが、「てから」は名詞には付きません。混ぜると「*食べてあとで」のような形が出るので、て形と た形の枠を並べて見せます。
- 〈V辞書形〉/Nの/〈期間〉まえに、〜(第18課)「まえに」の前は辞書形、「あとで」の前は た形 で、どちらも文の最後の動詞で過去か未来かが決まります。学習者は「これからのことだから辞書形」と考えて「*食べるあとで」、逆に「*食べたまえに」と作りがちです。二つを左右に並べた板書で、時間の線の向きと形の対を一緒に覚えさせます。
関連する文型
学習項目 3 〈Vて形〉/〈Vない形〉ないで〜
意味・はたらき文型 3
後ろの動詞が本当にする動作で、前の「〜て」「〜ないで」は、その動作を「どんなふうに」「どんな状態で」するかを表す文型です。「しょうゆをつけて食べます」は食べるときのやり方、「傘をささないで行きます」は行くときの状態を言っています。二つの動作を順番に並べる第16課の「〜て、〜て」とは違い、ここでは前の部分が後ろの動作の説明になっています。否定は「〜なくて」ではなく「〜ないで」の形にします。文法用語では、この「〜て/〜ないで」を付帯状況(後ろの動作に付いてくる状態ややり方)と呼びます。
接続
Vて形+V2/Vない形+ないで+V2(前後の動作は同じ人がする)
形
しょうゆをつけて食べます/しょうゆをつけないで食べます傘をさして行きました/傘をささないで行きました朝ご飯を食べないで、会社へ来ました紅茶にミルクを入れて飲みますか——いいえ、入れないで飲みます
導入
- 食べ方・飲み方を絵カードで聞くすしとしょうゆ、紅茶とミルクの絵カードを出し、教師が「わたしは、しょうゆをつけて食べます」と言いながら食べる身ぶりをする。次にミルクを手で押しのける動作をして「紅茶は、ミルクを入れないで飲みます」。板書に「しょうゆを つけて 食べます」「ミルクを 入れないで 飲みます」と書き、後ろの動詞(食べます・飲みます)に二重線を引いて「これが本当の動作」と示す。
- 学生に自分のやり方を聞く「紅茶はミルクを入れて飲みますか」「雨の日は傘をさして来ますか」と学生一人ずつに聞き、「はい、〜て〜ます」「いいえ、〜ないで〜ます」で答えさせる。答えを黒板に二列(〜て/〜ないで)で書きためておくと、否定が「なくて」にならないことを何度も目で確かめられる。
板書案
Vて + V2 / Vない + ないで + V2
しょうゆを つけて 食べます。
しょうゆを つけないで 食べます。
〔二重線〕食べます=本当の 動作 〔波線〕つけて/つけないで=どんなふうに
〔赤〕*つけなくて 食べます に 取り消し線
場面と発話(自作)
- 日本人の友達と天ぷらを食べに行った。食べ方が分からないので聞く。これは、何をつけて食べるんですか。
- 朝、先生に「元気がないですね」と言われた。朝ご飯の時間がなかった。けさは時間がありませんでしたから、朝ご飯を食べないで来ました。
- 急に雨が降ってきた。同僚がぬれて会社に来た。傘をささないで来たんですか。かぜをひきますよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
食べ物・飲み物・持ち物の絵カードに ○ か × の印を付けて出し、「しょうゆ・つけます・食べます ○」→「しょうゆをつけて食べます」、×なら「つけないで食べます」と言い換えさせる(練習Bの型)。次にペアで「〜は何をつけて食べますか」「〜は〜を入れて飲みますか」と自分の国の食べ方・飲み方を聞き合うやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭○か×の印を付けた絵カードをキューにする(すし・しょうゆ・食べます ○/紅茶・ミルク・飲みます ×/パン・バター・食べます ○/雨・傘・行きます ×/辞書・使います・読みます ×)。○なら「しょうゆをつけて食べます」、×なら「ミルクを入れないで飲みます」と全体で言わせ、個人に回す。慣れたら印を外して「砂糖・入れます・飲みます」とだけ言い、学生が自分のやり方で ○ か × を選んで答えるようにする。
- ペアAにだけ「ある人の食べ方・飲み方」の表(料理・飲み物ごとに ○ × が付いている)を渡し、Bは空の表を持つ。Bが「すしは何をつけて食べますか」「紅茶はミルクを入れて飲みますか」と聞き、Aが表のとおりに「〜て〜ます」「いいえ、〜ないで〜ます」で答え、Bが ○ × を書き込む。終わったら表を見比べ、役を替えて別の人の表で同じことをする。
- 産出活動名「わたしの国の食べ方紹介」。学生が自分の国の料理か飲み物を一つ選び、何をつけて・入れて・入れないで食べるか(飲むか)を三文で紹介し、ほかの学生が一つ質問する。写真や絵を見せながらでよい。教師が見るのは、否定が「ないで」になっているか(*つけなくて)、ない形の作り方(*さしないで)、後ろに本当の動作の動詞が来ているか。
つまずきと手当て
- 否定を「なくて」で言う(×しょうゆをつけなくて食べます)。「〜なくて」は後の課で理由を言うときに使う形で、ここでは使えない。板書の二列の「ないで」を指して言い直させる
- ない形の作り方を誤る(傘を×さしないで、ミルクを×入らないで)。第17課のない形の作り方に戻り、グループごとに数語だけ口頭で確かめる
- 前後を逆に言う(×食べてしょうゆをつけます)。母語の語順で「食べる、しょうゆをつけて」と考えると起きる。後ろが本当の動作、と二重線の板書に戻る
既習の文型との違い
- 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜(第16課)第16課の「朝ご飯を食べて、会社へ行きます」は、別々の動作を起こる順に並べる文です。第34課の「傘をさして行きます」は、行くあいだずっと傘をさしている、つまり一つの動作のやり方を言う文です。否定にすると違いがはっきりし、文型3は「ないで」になりますが、学習者は第16課の感覚で「*傘をささなくて行きます」と作りがちです。
- 〈Vない形〉ないでください(第17課)どちらも「ない形+ないで」で、ない形の作り方は第17課と同じです。第17課は「写真を撮らないでください」のように文を依頼で終える形、第34課は「ないで」のあとに本当の動作の動詞が続く形です。第17課の板書を出して「ください」の位置に動詞を入れ替えて見せると、新しく覚える負担がほとんどありません。
関連する文型
学習項目 4 〈V1 ない形〉ないで、V2
意味・はたらき文型 4
いつもすること、またはすると思われていることを「しないで」、その代わりに別のことをする、と言う文型です。「バスに乗らないで、歩いて帰ります」は、乗るはずのバスに乗らず、代わりに歩く、という意味です。文型3では一つの動作のやり方を言っていましたが、ここでは二つの別の動作があり、一つを選ばずにもう一つを選んでいます。前後の動作は同じ人がします。文法の説明では、この用法を「代わりの動作(代替)」の ないで と呼び、文型3の付帯状況の ないで と分けて扱うことが多いです。
接続
V1 ない形+ないで、V2(V1をしないで、代わりにV2をする。前後は同じ人)
形
バスに乗らないで、歩いて帰ります日曜日はどこも行かないで、うちで休みました電話をかけないで、メールを送ります外で食べないで、うちで料理を作ります
導入
- 「いつも」と「きょう」の二枚の絵左に「いつも: バスで帰る」、右に「きょう: 歩いて帰る」の絵を貼る。「いつもはバスに乗ります。でも、きょうは天気がいいですから、バスに乗らないで、歩いて帰ります」と言い、左の絵に×を付けて右の絵へ矢印を引く。板書に「V1ないで、V2」と書き、V1に「しない」、V2に「代わりにする」と添える。
- 文型3と並べて違いを見せる文型3の「傘をささないで行きます」と、文型4の「バスに乗らないで、歩いて帰ります」を上下に板書する。文型3は「行く」という動作が一つで「ささないで」はそのときの状態、文型4は「乗る」と「歩く」の二つの動作があって一つを選ばない、と動作の数を数えさせる。形は同じなので、区別は意味だけで十分だと伝える。
板書案
V1 ない + ないで、V2
〔左の絵〕いつも:バスに 乗ります → 〔×〕
〔右の絵〕きょう:歩いて 帰ります → 〔○〕
バスに 乗らないで、歩いて 帰ります。
〔赤〕V1=しない 〔青〕V2=代わりに する
〔確かめ〕「代わりに」を 入れて 言える?
場面と発話(自作)
- 友達に連休の予定を聞かれた。旅行はお金がかかるので、行かないことにした。今年は旅行に行かないで、うちでゆっくり休みます。
- 友達と、いつもタクシーで帰る先生の話をしている。きのうは先生が歩いて帰るのを見た。きのう、先生はタクシーに乗らないで、歩いて帰りましたよ。
- 日本語の作文の宿題。辞書の使い方について先生に聞かれた。辞書を使わないで、自分で考えて書きました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「いつも」と「きょう」の二枚組みの絵カードを出し、「バスに乗ります/歩いて帰ります」→「バスに乗らないで、歩いて帰ります」とつながせる(練習Bの型)。次にペアで「週末、いつもは何をしますか。今週は?」と聞き合い、「〜ないで、〜ます」で答えるやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭「いつも」と「きょう」の二枚組の絵カードをキューにする(バス・歩く/電話・メール/外で食べる・うちで作る/エレベーター・階段/旅行・うちで休む)。全体で「バスに乗らないで、歩いて帰ります」とつながせ、個人に回す。次に教師が「きのうは?」と言ったら「乗らないで、歩いて帰りました」と後ろの動詞だけ過去にする。最後に文型3のカード(すし・しょうゆ)を混ぜ、どちらの文型でも同じ形で言えることを確かめる。
- ペアAは「いつも」と「きょう」の両方が描かれたカードを持ち、Bは「いつも」の側だけを見る。Bが「きょうも〜ますか」と聞き、Aが「いいえ、きょうは〜ないで、〜ます」と答える。Bは答えを聞いて「どうしてですか」ともう一つ聞き、Aは「天気がいいですから」のように理由を足す。五枚で役を交替する。
- 産出活動名「いつもと違う一週間」。学生が来週やってみたい「いつもとの入れ替え」を三つ考え(タクシーに乗らないで歩く・外で食べないで料理を作る、など)、書いてから発表する。聞き手は「いいですね」「大変ですね」と一言返す。教師が見るのは、「ないで」でつないでいるか(*乗らなくて)、V2まで言い切っているか、前後の動作が同じ人になっているか。
つまずきと手当て
- 「なくて」でつなぐ(×バスに乗らなくて、歩いて帰ります)。文型3と同じ誤りなので、「代わりに」の意味のときも「ないで」と板書で示す
- 前と後ろの主語を変えて「わたしは行かないで、友達が行きました」のように言う。主語が違う文も日本語にはあるが、この課の「ないで」は同じ人の動作の選び方として練習する形だと示し、主語が違うときは「わたしは行きませんでした。友達が行きました」と二つの文に分けさせる
- 代わりのことを言わずに終わる(×きょうはバスに乗らないで。)。V2まで言って一つの文になる、と板書の矢印の先を指す
既習の文型との違い
- 〈Vて形〉/〈Vない形〉ないで〜(第34課 文型3)形は同じ「〜ないで、V2」ですが、文型3は後ろの一つの動作のやり方(傘をささないで行く)、文型4は二つの動作のうち一つをやめて代わりにもう一つをする(バスに乗らないで歩く)です。「代わりに」を入れて自然に言えれば文型4、と確かめさせると分かりやすいです(乗らないで、代わりに歩いて帰ります)。どちらの意味でも形は変わらないので、学習者に名前の区別まで求めなくてかまいません。
- 〈Vない形〉なくてもいいです(第17課)第17課の「行かなくてもいいです」は、しなくても問題ないという許可の言い方で、「なくて」の形が出てきます。学習者はこの形を覚えているので、二つの動作をつなぐときにも「*バスに乗らなくて、歩いて帰ります」と作りがちです。「後ろに動作の動詞が続くときは ないで、『いいです』が続くときは なくても」と、続く語で形を決めさせます。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は、手順や作業を表す動詞(みがきます・組み立てます・折ります・つけます・さします など)と、手本になる物(説明書・図・線・矢印)や色・調味料の語が中心です。動詞は文型1・3の実演で使うので、教師が実際に動作をして見せながら入れ、「〜て〜ます/〜ないで〜ます」の形にそのまま組み込みます。色の語は図や線をかく練習でまとめて使い、単語だけの暗記にしません。下に、この課の文型の練習で使いやすい語を選び、意味・連語・使う場面を付けました。
この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)
- 折ります(おります) 紙などを曲げて、半分に重ねます。 紙を〜・二つに〜
授業で紙を配って、形を作る。「わたしがしたとおりに、紙を折ってください。」
- 組み立てます(くみたてます) いくつかの部品を合わせて、一つの物を作ります。 机を〜・本棚を〜・自分で〜
新しい本棚が届いて、自分で作った。「説明書のとおりに組み立てました。一時間かかりました。」
- みがきます(みがきます) 靴や歯などを、こすってきれいにします。 靴を〜・歯を〜
朝の習慣を友達に話す。「出かけるまえに、靴をみがきます。」
- つけます(つけます) しょうゆやソースなどを、食べ物に少しくっつけます。 しょうゆを〜・ソースを〜
日本人の友達に、すしの食べ方を聞かれた。「すしは、しょうゆを少しつけて食べます。」
- さします(さします) 雨の日に、傘を開いて頭の上に持ちます。 傘を〜
雨が少しだけ降っている。駅まで近い。「少しですから、傘をささないで行きます。」
- 入れます(いれます) 飲み物や料理の中に、ミルクや塩などを加えます。 ミルクを〜・塩を〜
喫茶店で、紅茶の飲み方を聞かれた。「いいえ、ミルクは入れないで飲みます。」
- 説明書(せつめいしょ) 物の使い方や作り方が書いてある紙や本です。 〜を読みます・〜のとおりに
新しいカメラを買った友達に。「説明書を読んだあとで、使ってください。」
- 図(ず) 物の形や場所を、線や形でかいて見せたものです。 〜をかきます・〜のとおりに
駅の出口を、紙にかいて教える。「この図のとおりに、二番の出口から出てください。」
- 線(せん) ペンなどでかいた、細くて長いものです。 〜をかきます・赤い〜
授業で、大切な言葉に印を付けてもらう。「大切な言葉の下に、赤い線をかいてください。」
- 乗ります(のります) バスや電車などの中に入って、移動します。 バスに〜・タクシーに〜
天気がいい日の帰り道。「きょうはバスに乗らないで、歩いて帰ります。」
- あとで(あとで) 今ではなくて、少し時間がたってから、という意味です。 〜電話します・〜説明します
忙しいときに、同僚に質問された。「すみません、今忙しいですから、あとで説明しますね。」
会話の扱い
会話は、日本の伝統的なお茶の席を初めて体験する人が、先生の手本を見ながら同じようにやってみる、という流れです。「わたしがしたとおりに」という文型1が、手本を見せる側の自然な言い方として繰り返し出てくるのが芯で、茶道の作法そのものを詳しく説明する必要はありません。最初は教師の読みで流れをつかませ、役を替えて二回読んだら、「お茶をたてる」の部分を学生が教えられる手順(自分の国のお茶のいれ方・折り紙・料理の手順など)に置き換えて、手本を見せる人と真似する人に分かれて再現させます。感想を言う短い言い方(苦い・おいしいなど)は表情をつけてかたまりで入れます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題と次のコマ
宿題は問題の文法部分と、「自分の国の食べ物の食べ方・飲み物の飲み方」を三つ(「〜て食べます/〜ないで食べます」を使う)と、「週末にいつもすること・しないで代わりにすること」を一つ書くこと。次のコマの最初に「まえに(辞書形)/あとで(た形)」を口頭で10問確かめてから作文を発表させ、第35課の条件形につなぐ。「とおりに・あとで・ないで」の形の枠の板書は写真に撮っておく。
よくある質問
第34課の「〜たあとで」と第16課の「〜てから」の違いはどう説明すればいいですか?
どちらも二つの動作の順番を言いますが、「〜てから」は前の動作をすませてから次に移る手順の並びに、「〜たあとで」は二つのことの時間の前後に重心があります。「あとで」は「仕事のあとで」のように名詞にも付く点が形の上の違いです。初級では入れ替えられる文が多いので、意味の差より、て形と た形・名詞に付くかどうかの形の違いを先に固めます。
「〜ないで」と「〜なくて」の違いは何ですか?
この課の「ないで」は、後ろの動作のやり方(しょうゆをつけないで食べる)や、代わりの動作(バスに乗らないで歩く)を言う形で、「なくて」には言い換えられません。「なくて」は後の課で「家族に会えなくて、寂しいです」のように理由を言う形として出てきます。今の段階では「後ろに動作の動詞が続くときは ないで」と形で覚えさせ、なくて は理由の課まで出さないのが安全です。
文型3と文型4は同じ「ないで」ですが、どう区別させればいいですか?
文の中の動作の数を数えさせます。文型3は動作が一つで「ないで」はそのやり方、文型4は動作が二つあって一つをやめて代わりにもう一つをします。「代わりに」を入れて自然に言えれば文型4、と確かめさせると分かりやすいです。形は同じなので、学習者に用語での区別までは求めなくてかまいません。
「〜たとおりに」と「〜るとおりに」はどう使い分けますか?
手本をもう見せてあるとき、もう言ったときは た形(わたしがしたとおりに、先生が言ったとおりに)、これから見せる・言うときは辞書形(今から言うとおりに)を使います。この課の中心は た形 と「Nのとおりに」なので、辞書形は教師の指示の中で聞かせる程度で十分です。学生が辞書形で言ったら、手本がもう出ているかどうかを聞き返して形を選ばせます。
第34課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と文型1「〜とおりに」・文型2「〜たあとで」、2コマ目は文型3・4の「ないで」と会話、練習C・問題です。ない形が弱いクラスは、2コマ目の初めに第17課のない形を5分ほど口頭で確かめてから文型3に入ると止まりません。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。