尊敬語が初めて出る課です。目上の人やお客様の動作を高めて言う形を、「〜(ら)れる」「お〜になります」「いらっしゃいます・召し上がります などの特別な語」の三つで覚え、店や受付でよく聞く「お〜ください/ご〜ください」までを扱います。尊敬語は「だれの動作か」で決まり、自分の動作には使わない、と最初に線を引き、それを場面ごとに何度も確かめるのがこの課の芯です。尊敬の動詞の形は受身形とまったく同じなので、第37課の板書を使って作り方は短く済ませ、時間は会社・学校・店・電話の場面で「だれに、だれのことを言うか」の練習に回します。自分を低くする謙譲語は第50課なので、ここでは「自分のことには使わない」までにとどめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 15分 | 友達の絵カードと、社長・先生の絵カードを並べて貼る。友達には「何時に帰る?」、社長には「何時にお帰りになりますか」と教師が言い分けて見せ、第20課の普通体と丁寧体の「上の段」がもう一つある、と黒板に三段の階段を描く。第41課の「くださいます」がすでにその段の言葉だったことを思い出させる |
| 文型1(尊敬V・尊敬の動詞の作り方) | 35分 | 第37課の受身形の三列の板書を復活させ、同じ形が「目上の人の動作」の意味でも使えることを示す。ます形→尊敬の形の口頭練習のあと、「部長は〜(ら)れましたか」の問答。助詞はもとの文のまま変わらないことを、受身の文と並べて確かめる |
| 文型2(お〈Vます形〉になります) | 30分 | 「帰りました/帰られました/お帰りになりました」を階段の上に向かって書き、上ほど丁寧だと見せる。使えない動詞(ます形が1音の動詞・します・特別な語がある動詞)を札にして貼り、文型3につなげる |
| 文型3(特別な尊敬語) | 40分 | もとの動詞と特別な尊敬語を線で結ぶ対応表を作り、カードの表裏で「行きます→いらっしゃいます」の言い換えを回す。「いらっしゃいます」が行く・来る・いるの三つを兼ねることと、「〜います」で終わるます形をここで押さえる |
| 文型4(お〈Vます形〉/ごNください) | 25分 | 受付・店・図書館の写真で「お待ちください」「お掛けください」「ご利用ください」。第14課の「〜てください」と並べ、案内やお願いを客や目上の人に向けて言う形だと位置づける。和語は「お」、漢語は「ご」の区別もここで |
| 会話 | 15分 | 電話で、話したい相手がいないので伝言を頼み、「よろしくお伝えください」で終える流れ。電話を受ける側・かける側の役を替えて読み、用件と相手の名前を学生の生活に置き換えて再現させる |
| 練習C・問題 | 20分 | 練習Cは「目上の人の予定を聞く」「お客様に飲み物をすすめる」「受付で案内する」の三つの場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
この項目は尊敬の動詞(〜(ら)れる)の作り方として扱います。尊敬語は、目上の人やお客様、よく知らない人の動作を高めて言う言い方で、「部長が帰りました→部長が帰られました」のように動詞を「〜(ら)れる」の形にするのがいちばん作りやすい方法です。この形は第37課の受身形とまったく同じで、グループI はない形の「〜ない」を「〜れる」に替え(書かない→書かれる)、グループII は ます を られる に替え、グループIII は「します→される」「来ます→来られる」です。できた尊敬の動詞はグループII として活用し、ふつうは「帰られます・帰られました」のように ます を付けて使います。受身の文と違って、助詞はもとの文のまま変わりません。文法の用語では、主語の人物を高める「尊敬語」の一つで、助動詞「れる・られる」は受身・可能・自発・尊敬の四つの意味を持つ形として説明されます。
ない形 → 尊敬の形(グループI: あ段+れる/グループII: ます→られる/グループIII: される・来られる)。形は受身形と同じで、グループII として活用する(帰られる→帰られます・帰られました・帰られて)。助詞はもとの文と同じ
絵カード20枚で「ます形→尊敬の形」を速いテンポで回し、I・II・III を混ぜて出す(受身形の復習を兼ねる)。次に「部長は〜ました→部長は〜(ら)れました」の言い換え(練習Bの型)を10文。最後に、社長・先生の予定表のカードを見せて「〜は何時に〜(ら)れますか」「〜時に〜(ら)れます」をペアで問答させる。
「お+ます形(ます を取った形)+になります」で目上の人の動作を言う形です(帰ります→お帰りになります、待ちます→お待ちになります)。文型1の「〜(ら)れる」より丁寧に聞こえ、先生や上司に直接その人の動作を聞くときによく使います。ただし、ます形が1音の動詞(見ます・寝ます・います)と「します」、それに特別な尊敬語がある動詞(行きます・食べます など)はこの形にせず、文型3の語を使います。漢語の動詞には「ご利用になります」のような「ご〜になります」の形もありますが、この課の練習の中心は和語の動詞です。文化庁の「敬語の指針」の五つの分け方では、「お〜になる」も「〜(ら)れる」も尊敬語に入ります。
お+〈Vます形〉+になります(帰ります→お帰りになります)。否定・過去は「になります」の部分を変える(お帰りになりません・お帰りになりました)
絵カードで「〜ます→お〜になります」の言い換え(練習Bの型)を10枚。作れない動詞の札を混ぜておき、出たら「×」と言って特別な語で答えさせる。次に、教師が先生役になって予定表を持ち、学生が「先生はあした何時に〜になりますか」と聞くやり取り(練習Cの型)にする。
いくつかのよく使う動詞には、尊敬のための別の言葉があります。行きます・来ます・います→いらっしゃいます、食べます・飲みます→召し上がります、言います→おっしゃいます、します→なさいます、見ます→ご覧になります、知っています→ご存じです、くれます→くださいます(第41課)です。これらの動詞では「お〜になります」を作らず、この言葉を使うのがふつうです。いらっしゃる・おっしゃる・なさる・くださる のます形は「〜ります」ではなく「いらっしゃいます」のように「〜います」になります。「いらっしゃいます」は行く・来る・いるの三つの意味を兼ねるので、どの意味かは場所の助詞や前後の話で決まります。文法の説明では、規則で作る「お〜になる」「〜(ら)れる」と分けて、語そのものが入れ替わる尊敬語として扱います。
もとの動詞を特別な語に置き換える。ます形は いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます(×〜ります)。「〜ています」は「〜ていらっしゃいます」になる
カードの表にもとの動詞、裏に特別な尊敬語を書き、表を見せて言わせる・裏を見せてもとの動詞を言わせる、の両方向で回す。次に「先生は〜を〜ますか」の文を教師が言い、学生が特別な尊敬語で言い換える(練習Bの型)。最後に、上司を家に招いた場面で、飲み物・食べ物・見せたい写真をカードにして、すすめたり聞いたりするやり取り(練習Cの型)にする。
「〜てください」を、お客様や目上の人に向けて丁寧にした言い方です。和語の動詞は「お+ます形+ください」(待ちます→お待ちください、掛けます→お掛けください)、「利用します」のような漢語の動詞は「ご+漢語+ください」(ご利用ください、ご注意ください)になります。店・受付・駅・図書館の案内や、お客様に何かをすすめるときによく使います。特別な尊敬語がある動詞は「ご覧ください」「召し上がってください」のように、その語を使います。文法の上では「お〜くださる」の命令の形で、相手の動作を高めながら頼んだりすすめたりする言い方です。
お+〈Vます形〉+ください(和語の動詞)/ご+N(漢語の名詞)+ください。特別な尊敬語がある動詞は その語で言う(見てください→ご覧ください)
動詞カードで「〜てください→お〜ください/ご〜ください」の言い換え(練習Bの型)。和語と漢語のカードを混ぜて出し、「お」と「ご」を言い分けさせる。次に、受付・店・図書館の写真を一枚ずつ見せ、学生が係の人、教師がお客様になって案内するやり取り(練習Cの型)。
この課の新出語は、特別な尊敬語そのもの(いらっしゃいます・召し上がります・おっしゃいます など)と、文型4の案内の材料になる動詞(利用します・掛けます など)、人を高めて呼ぶ語が中心です。特別な尊敬語は、もとの動詞と表裏にしたカードで出し、文型3の言い換え練習にそのまま使います。案内の動詞は受付や図書館の写真といっしょに出して、文型4の場面で覚えさせます。
会話は、題から分かるとおり、電話で話したい相手がいないので伝言を頼み、「よろしくお伝えください」で結ぶ流れです。電話を受ける側が、その場にいない目上の人のことを尊敬語で説明する言い方と、かける側が用件を短く伝える言い方の両方が入るので、最初はCDか教師の読みで「だれが、だれに、何を伝えてほしいのか」をつかませます。役割を替えて二回読んだら、かける理由(休む・遅れる・予定を変える など)と相手を学生の生活に置き換えて再現させます。「よろしくお伝えください」は意味を分解せず、電話や手紙の終わりに言うあいさつとしてそのまま入れます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「先生・上司へのインタビュー」の質問を五つ(尊敬の形〜(ら)れる一つ・お〜になります二つ・特別な尊敬語二つ)書くこと。次のコマの最初に特別な尊敬語のカードテスト(もとの動詞→尊敬語・7語)をしてから、書いた質問で教師にインタビューさせ、第50課の謙譲語(自分の動作を低くする言い方)につなぐ。もとの動詞と特別な尊敬語の対応表は、第50課で謙譲語の列を足すので消さずに写真に撮っておく。
第49課の尊敬語はどの順で教えればいいですか?
先に「だれの動作に使うか」を絵カードで決め、それから形に入ります。形は受身形と同じ「〜(ら)れる」から始めると、第37課の板書がそのまま使えて作り方の説明が短く済みます。次に「お〜になります」、作れない動詞の札を残して特別な尊敬語、最後に案内の「お〜ください/ご〜ください」の順にすると、前の項目が次の項目の入口になります。
「〜(ら)れる」と「お〜になります」はどう使い分けさせますか?
どちらも尊敬語で、「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえる、と階段の板書で見せます。上司や先生本人に直接聞くときは「お〜になります」、同僚にその場にいない上司のことを話すときは「〜(ら)れる」でもよい、という目安にするとまとめやすくなります。ただし「お〜になります」は見ます・しますなどでは作れないので、その動詞は特別な語に回します。
尊敬の「〜(ら)れる」を受身や可能と取り違える学生にはどうしますか?
尊敬の文は助詞がもとの文のまま、受身の文は動作をする人に「に」が付く、と二つの文を上下に並べて見せます。グループIIと「来られる」は可能形とも同じ形なので、どちらの意味かは前後の話で決まると伝えます。自分が言うときに迷わないよう、上司本人に聞くときは「お〜になります」を使う習慣をつけさせると、取り違えが減ります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜(ら)れる」「お〜になります」まで、2コマ目で特別な尊敬語、「お〜ください/ご〜ください」、会話と練習Cを扱います。特別な尊敬語の対応表が定着していないクラスでは、2コマ目の始めにカードテストを入れ、問題は宿題に回します。
「お帰りになられました」のような言い方は直すべきですか?
「お〜になります」に「られ」を重ねた形は二重敬語で、規範の上では避ける形とされています。初級の段階では「どちらか一つで十分丁寧」と教えて、話すときも書くときも一つにそろえさせます。実際の会話で耳にすることはあるので、聞いて分かるのはかまわない、と添えておくと学生が混乱しません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。