日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅱ 第49課「よろしくお伝えください」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「よろしくお伝えください」

尊敬語が初めて出る課です。目上の人やお客様の動作を高めて言う形を、「〜(ら)れる」「お〜になります」「いらっしゃいます・召し上がります などの特別な語」の三つで覚え、店や受付でよく聞く「お〜ください/ご〜ください」までを扱います。尊敬語は「だれの動作か」で決まり、自分の動作には使わない、と最初に線を引き、それを場面ごとに何度も確かめるのがこの課の芯です。尊敬の動詞の形は受身形とまったく同じなので、第37課の板書を使って作り方は短く済ませ、時間は会社・学校・店・電話の場面で「だれに、だれのことを言うか」の練習に回します。自分を低くする謙譲語は第50課なので、ここでは「自分のことには使わない」までにとどめます。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞を「〜(ら)れる」の尊敬の形に変え、「部長はもう帰られましたか」のように目上の人の動作を言える
  • 「お〜になります」で、先生や会社の上の人に直接、その人の動作を丁寧に聞いたり言ったりできる
  • いらっしゃいます・召し上がります・おっしゃいます・なさいます・ご覧になります・ご存じです を、もとの動詞と結びつけて使える
  • 「お待ちください」「ご利用ください」のような案内の言い方を聞いて分かり、受付や店の場面で自分でも言える

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)15分友達の絵カードと、社長・先生の絵カードを並べて貼る。友達には「何時に帰る?」、社長には「何時にお帰りになりますか」と教師が言い分けて見せ、第20課の普通体と丁寧体の「上の段」がもう一つある、と黒板に三段の階段を描く。第41課の「くださいます」がすでにその段の言葉だったことを思い出させる
文型1(尊敬V・尊敬の動詞の作り方)35分第37課の受身形の三列の板書を復活させ、同じ形が「目上の人の動作」の意味でも使えることを示す。ます形→尊敬の形の口頭練習のあと、「部長は〜(ら)れましたか」の問答。助詞はもとの文のまま変わらないことを、受身の文と並べて確かめる
文型2(お〈Vます形〉になります)30分「帰りました/帰られました/お帰りになりました」を階段の上に向かって書き、上ほど丁寧だと見せる。使えない動詞(ます形が1音の動詞・します・特別な語がある動詞)を札にして貼り、文型3につなげる
文型3(特別な尊敬語)40分もとの動詞と特別な尊敬語を線で結ぶ対応表を作り、カードの表裏で「行きます→いらっしゃいます」の言い換えを回す。「いらっしゃいます」が行く・来る・いるの三つを兼ねることと、「〜います」で終わるます形をここで押さえる
文型4(お〈Vます形〉/ごNください)25分受付・店・図書館の写真で「お待ちください」「お掛けください」「ご利用ください」。第14課の「〜てください」と並べ、案内やお願いを客や目上の人に向けて言う形だと位置づける。和語は「お」、漢語は「ご」の区別もここで
会話15分電話で、話したい相手がいないので伝言を頼み、「よろしくお伝えください」で終える流れ。電話を受ける側・かける側の役を替えて読み、用件と相手の名前を学生の生活に置き換えて再現させる
練習C・問題20分練習Cは「目上の人の予定を聞く」「お客様に飲み物をすすめる」「受付で案内する」の三つの場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に

学習項目 1 尊敬V

意味・はたらき文型 1・活用

この項目は尊敬の動詞(〜(ら)れる)の作り方として扱います。尊敬語は、目上の人やお客様、よく知らない人の動作を高めて言う言い方で、「部長が帰りました→部長が帰られました」のように動詞を「〜(ら)れる」の形にするのがいちばん作りやすい方法です。この形は第37課の受身形とまったく同じで、グループI はない形の「〜ない」を「〜れる」に替え(書かない→書かれる)、グループII は ます を られる に替え、グループIII は「します→される」「来ます→来られる」です。できた尊敬の動詞はグループII として活用し、ふつうは「帰られます・帰られました」のように ます を付けて使います。受身の文と違って、助詞はもとの文のまま変わりません。文法の用語では、主語の人物を高める「尊敬語」の一つで、助動詞「れる・られる」は受身・可能・自発・尊敬の四つの意味を持つ形として説明されます。

接続

ない形 → 尊敬の形(グループI: あ段+れる/グループII: ます→られる/グループIII: される・来られる)。形は受身形と同じで、グループII として活用する(帰られる→帰られます・帰られました・帰られて)。助詞はもとの文と同じ

形
グループI: 書きます→書かれる、帰ります→帰られる、読みます→読まれる、休みます→休まれる、話します→話される、言います→言わない→言われるグループII: 始めます→始められる、辞めます→辞められる、出かけます→出かけられる、決めます→決められるグループIII: します→される、来ます→来られる(こられる)、出張します→出張される、利用します→利用される文の中で: 部長は何時に帰られましたか/社長は来週アメリカへ出張されます(助詞はもとの文のまま)

導入

  • 受身形の板書をそのまま使う第37課の受身形の三列(書かれる/食べられる/される・来られる)を黒板に復活させ、上に「受身」と書いた札の横に「尊敬」の札を足す。「形は同じ、意味が二つ」とだけ言い、次に「部長は新聞を読みました」「部長は新聞を読まれました」を上下に書いて、変わったのは動詞だけで助詞はそのままであることを色チョークで示す。同じ形の受身の文(わたしは部長に注意されました)も横に書いて、「に」があるかどうかで意味を見分ける、と一度だけ線を引く。
  • だれの動作かを絵で決める社長・先生・お客様の絵カードと、友達・自分の絵カードを左右に分けて貼る。教師が動作の絵(出かける・帰る・休む)を指して「社長は?」と聞き、学生に「出かけられました」と言わせる。自分のカードを指したときは「出かけました」に戻すことを見せ、「尊敬の形は左の人だけ」と板書に書く。

板書案

尊敬V = 受身形と同じ形(目上の人の動作)
I 書かない→書かれる II 始めます→始められる III します→される/来ます→来られる
部長は 新聞を 読みました。→ 部長は 新聞を 読まれました。
〔赤〕読まれました 〔青〕「は」「を」を丸で囲み「そのまま」と書く
左〔社長・先生・お客様〕→ 尊敬V | 右〔わたし・友達〕→ いつもの形

場面と発話(自作)

  • 会社で、部長に書類を渡したいが席にいない。同僚に、部長がもう帰ったかどうかを聞く。部長はもう帰られましたか。
  • 月曜日の朝、学校で先生に会った。先生が週末に何をしたか聞いてみる。先生は週末、どこかへ出かけられましたか。
  • 会社で、部長が来月から大阪の支店で働くことになったと聞いた。同じ課の人に伝える。部長は来月から大阪の支店で働かれるそうです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カード20枚で「ます形→尊敬の形」を速いテンポで回し、I・II・III を混ぜて出す(受身形の復習を兼ねる)。次に「部長は〜ました→部長は〜(ら)れました」の言い換え(練習Bの型)を10文。最後に、社長・先生の予定表のカードを見せて「〜は何時に〜(ら)れますか」「〜時に〜(ら)れます」をペアで問答させる。

  1. 口頭動詞カード(書きます・帰ります・始めます・来ます・出張します)を出して全体で尊敬の形を言わせ、次に一人ずつ指名して速く回す。続けて教師が文で出す(「部長は会議に出ました」→「部長は会議に出られました」/「社長はもう来ました」→「社長はもう来られました」/「先生は新聞を読みます」→「先生は新聞を読まれます」)。ときどき自分の絵カードを指して同じ文を言い、学生が尊敬の形に変えずに言い返せるかも確かめる。
  2. ペアAは部長の一週間の予定表(月曜日は大阪へ出張する・火曜日は9時に来る・水曜日は休む など)、Bは空欄の予定表を持つ。Bが「部長は月曜日に何をされますか」「火曜日は何時に来られますか」と聞いて表を埋め、Aは尊敬の形で答える。埋まったら表を見せ合って確かめ、次は先生の予定表で役を替える。
  3. 産出「目上の人しょうかいスピーチ」。学生が学校の先生・アルバイト先の店長・会社の部長など、自分の家族ではない目上の人を一人選び、その人の毎日や最近したことを尊敬Vで三文にして発表する(例: 店長は毎朝駅から店まで歩かれます。去年、二つ目の店を作られました。休みの日はよく山に登られます)。自分の家族は人前では尊敬の形で言わないので、家族を選んだ学生には選び直させる。教師は、助詞がもとの文のままか、グループIを ない形から作れているか、自分のことを言う文に尊敬の形が混ざっていないかを聞き、誤りは板書の三列に戻して直す。

つまずきと手当て

  • 自分の動作に尊敬の形を使おうとする(「わたしは7時に起きられました」)。文としては成り立つが、自分には尊敬を使わないので、聞き手には「起きることができた」という可能の意味にしか聞こえない。左右の絵カードに戻し、「自分のことはいつもの形」と確かめる
  • 受身の文の形にして助詞まで変える(「部長に新聞が読まれました」)。受身の文としては成り立つが、新聞が主語の別の文になり、部長を高める意味は出ない。尊敬の文は助詞がもとの文のまま、と「部長は新聞を読みました→読まれました」の二文を指して言い直させる
  • グループI を ます から作る(×帰りられました、×書きられる)。ない形から作る、と受身形の板書の「書かない→書かれる」に戻す
  • グループII と「来られる」が可能形とも同じ形なので、意味を取り違える(先生はあした来られますか)。どちらの意味でも通じる文があることを伝え、聞くときは前後の話から判断する、と一言添える

既習の文型との違い

  • N1 はN2 に受身V(第37課)形はまったく同じですが、受身は「わたしは部長に注意されました」のように動作を受ける人が主語で、動作をする人を「に」で示します。尊敬は動作をする目上の人が主語で、助詞はもとの文のままです。尊敬のつもりで「部長に新聞が読まれました」と言うと受身の文になって意味がずれるので、「に」があるかどうかを見分けの目印にさせます。
  • 可能形の作り方(第27課)グループIIと「来ます」は、可能形と尊敬の形が同じ(食べられる・来られる)なので、「先生はあした来られますか」はどちらの意味にも取れます。グループIは可能が「書ける」、尊敬が「書かれる」と形が分かれるので、学生が尊敬のつもりで「先生は手紙を書けましたか」と言うと、できたかどうかを聞く文になります。グループIだけは ない形から作る、と二つの表を並べて確かめます。
関連する文型

学習項目 2 お〈Vます形〉になります

意味・はたらき文型 2

「お+ます形(ます を取った形)+になります」で目上の人の動作を言う形です(帰ります→お帰りになります、待ちます→お待ちになります)。文型1の「〜(ら)れる」より丁寧に聞こえ、先生や上司に直接その人の動作を聞くときによく使います。ただし、ます形が1音の動詞(見ます・寝ます・います)と「します」、それに特別な尊敬語がある動詞(行きます・食べます など)はこの形にせず、文型3の語を使います。漢語の動詞には「ご利用になります」のような「ご〜になります」の形もありますが、この課の練習の中心は和語の動詞です。文化庁の「敬語の指針」の五つの分け方では、「お〜になる」も「〜(ら)れる」も尊敬語に入ります。

接続

お+〈Vます形〉+になります(帰ります→お帰りになります)。否定・過去は「になります」の部分を変える(お帰りになりません・お帰りになりました)

形
書きます→お書きになります、読みます→お読みになります、使います→お使いになります帰ります→お帰りになります、待ちます→お待ちになります、出かけます→お出かけになります、休みます→お休みになります否定・過去: お帰りになりません/お帰りになりました/お帰りになりましたかこの形にしない動詞: ×お見になります(→ご覧になります)、×おしになります(→なさいます)、×お行きになります(→いらっしゃいます)

導入

  • 階段の板書で丁寧さの差を見せる導入で描いた三段の階段に、下から「帰りました」「帰られました」「お帰りになりました」と書く。教師が社長の絵カードに向かって一つずつ言い、上の段ほど「高い」ことを手の高さで見せる。いちばん上の段の形を「お+帰り+になります」と枠で分けて板書し、「ます形の ます を取って、お と になります で挟む」と言葉にする。
  • 作れない動詞を札にして先に見せる「見ます」「します」「行きます」の札を出して、学生に「お〜になります」を作らせてみる。出てきた「お見になります」などに×を付け、「この動詞には別の言葉がある」とだけ言って札を黒板の端に残す。文型3で特別な尊敬語を出すとき、この札の上に答えを貼っていく。

板書案

お + 〈Vます形〉 + に なります
帰ります → お 帰り に なります
〔階段〕帰りました < 帰られました < お帰りになりました
先生は 何時ごろ お帰りになりますか。
〔赤×〕お見になります・おしになります・お行きになります → 黒板の端の札へ

場面と発話(自作)

  • 会社で、部長に頼まれて買ってきた新聞を渡した。夕方、部長がもう読んだかどうか、部長本人に聞く。部長、この新聞、もうお読みになりましたか。
  • 学校で、先生にあとで質問したい。先生が何時ごろ帰るかを、先生本人に聞く。先生は何時ごろお帰りになりますか。
  • 店のレジで、お客様が財布からカードを出そうとしている。カードを使うかどうか確かめる。お客様、カードをお使いになりますか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カードで「〜ます→お〜になります」の言い換え(練習Bの型)を10枚。作れない動詞の札を混ぜておき、出たら「×」と言って特別な語で答えさせる。次に、教師が先生役になって予定表を持ち、学生が「先生はあした何時に〜になりますか」と聞くやり取り(練習Cの型)にする。

  1. 口頭動詞カード(読みます・待ちます・使います・書きます・出かけます)で「お読みになります」の形を全体と個人で言わせる。次に、教師が手を階段の真ん中に置いたら「〜(ら)れます」、いちばん上に上げたら「お〜になります」と、手の高さをキューにして同じ動詞を言い分けさせる。「見ます」「します」「行きます」のカードを混ぜておき、出たら全員で「×」と言わせて端の札に回す。
  2. ペアAは先生役で「先生の週末カード」(土曜日に本を読む・日曜日に友達と出かける・夜7時に帰る など)を伏せて持つ。Bは「先生は土曜日に本をお読みになりましたか」「日曜日はお出かけになりましたか」と、はい・いいえで答えられる質問を重ねてカードの中身を当てる。当たったら役を替え、新しいカードで続ける。
  3. 産出「ホテルのフロント・ロールプレイ」。学生はホテルの係、相手の学生はお客様になり、係はお客様の予定(何時に出かけるか・何時ごろ帰るか・傘やタクシーを使うか)を「お〜になりますか」で聞いてメモに書く。教師は、ます形が1音の動詞や「します」で無理に作っていないか、「お〜になられます」と重ねていないか、お客様の答えに尊敬の形が混ざっていないか(答える人は自分のことなのでいつもの形)を聞いて直す。

つまずきと手当て

  • ます形が1音の動詞や「します」で作る(×お見になります、×お寝になります、×お勉強しになります)。黒板の端の札に戻し、「ご覧になります」「お休みになります」「勉強されます」のように別の形で言わせる
  • 二つの尊敬を重ねる(×お帰りになられました)。「お〜になります」だけで十分丁寧なので、「られ」は付けない、と階段の板書で一段ずつしか上がらないことを見せる
  • 会社の外の人に、自分の会社の社長の動作を尊敬語で言う(ほかの会社の人に「社長はもうお帰りになりました」)。文の形は正しいが、外の人に話すときは自分の会社の人を高めない、という使い方の決まりに合わない。この課では決まりがあることだけ伝え、言い方は中級で改めて扱う

既習の文型との違い

  • 尊敬V(第49課 文型1)どちらも尊敬語ですが、「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえます。「〜(ら)れる」はほとんどの動詞で作れる(見られる・される)のに対し、「お〜になります」は1音のます形の動詞や「します」では作れません。二つを重ねた「お帰りになられました」は二重敬語で、規範の上では避ける形なので、どちらか一つで足りると教えます。
  • 〈Vて形〉くださいます(第41課)「先生が教えてくださいました」は、目上の人の動作が自分のためになったことを言う授受の言い方です。「先生がお教えになりました」は動作を高めて言うだけで、自分への恩恵の意味はありません。先生にしてもらったことのお礼を言う場面で「お〜になりました」を使うと、ありがたい気持ちが伝わりにくいので、場面で使い分けさせます。
関連する文型

学習項目 3 特別な尊敬語

意味・はたらき文型 3

いくつかのよく使う動詞には、尊敬のための別の言葉があります。行きます・来ます・います→いらっしゃいます、食べます・飲みます→召し上がります、言います→おっしゃいます、します→なさいます、見ます→ご覧になります、知っています→ご存じです、くれます→くださいます(第41課)です。これらの動詞では「お〜になります」を作らず、この言葉を使うのがふつうです。いらっしゃる・おっしゃる・なさる・くださる のます形は「〜ります」ではなく「いらっしゃいます」のように「〜います」になります。「いらっしゃいます」は行く・来る・いるの三つの意味を兼ねるので、どの意味かは場所の助詞や前後の話で決まります。文法の説明では、規則で作る「お〜になる」「〜(ら)れる」と分けて、語そのものが入れ替わる尊敬語として扱います。

接続

もとの動詞を特別な語に置き換える。ます形は いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます(×〜ります)。「〜ています」は「〜ていらっしゃいます」になる

形
行きます・来ます・います→いらっしゃいます/食べます・飲みます→召し上がります言います→おっしゃいます/します→なさいます/見ます→ご覧になります知っています→ご存じです(否定: ご存じじゃありません)/くれます→くださいます〜ています→〜ていらっしゃいます(部長は会議室で待っていらっしゃいます)

導入

  • 札の上に答えを貼る文型2で黒板の端に残した「見ます」「します」「行きます」の札の上に、「ご覧になります」「なさいます」「いらっしゃいます」の札を一枚ずつ貼る。続けて「食べます・飲みます」「言います」「知っています」の札を出し、学生に何か別の言葉があるか予想させてから答えを貼る。もとの動詞と特別な語を線で結んだ対応表を作り、課の終わりまで消さない。
  • 「いらっしゃいます」の三つの意味社長の絵カードを、地図の上の「大阪へ」、会社の入口の「ここへ」、会議室の中の「会議室に」に順に動かし、そのたびに「社長は大阪へいらっしゃいます」「ここへいらっしゃいます」「会議室にいらっしゃいます」と言う。同じ言葉で三つの意味があり、「へ」と「に」と場面で分かる、と板書に三本の矢印を描く。

板書案

行きます・来ます・います → いらっしゃいます
食べます・飲みます → 召し上がります  言います → おっしゃいます
します → なさいます 見ます → ご覧になります 知っています → ご存じです
〔赤〕〜います(×〜ります): いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます
〔矢印3本〕大阪へ/ここへ/会議室に いらっしゃいます

場面と発話(自作)

  • 会社で、部長に、あしたの会議に出るかどうかを聞く。部長、あしたの会議にいらっしゃいますか。
  • 自分の家に会社の上司が来た。飲み物を出す前に、何がいいか聞く。コーヒーと紅茶と、どちらを召し上がりますか。
  • 先生と食事に行く話になった。駅の前に新しくできたレストランを先生が知っているか聞く。先生、駅の前の新しいレストランをご存じですか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

カードの表にもとの動詞、裏に特別な尊敬語を書き、表を見せて言わせる・裏を見せてもとの動詞を言わせる、の両方向で回す。次に「先生は〜を〜ますか」の文を教師が言い、学生が特別な尊敬語で言い換える(練習Bの型)。最後に、上司を家に招いた場面で、飲み物・食べ物・見せたい写真をカードにして、すすめたり聞いたりするやり取り(練習Cの型)にする。

  1. 口頭カードの表(もとの動詞)を見せて特別な尊敬語を言わせ、裏を見せてもとの動詞を言わせる。続けて動作のキューに替える(教師が食べるしぐさ→「召し上がります」、テレビを見るしぐさ→「ご覧になります」、口に手を当てて話すしぐさ→「おっしゃいます」)。最後に文で出す(「先生は何と言いましたか」→「何とおっしゃいましたか」/「部長はいま会議室にいます」→「会議室にいらっしゃいます」)。
  2. ペア「上司を家に招いた」場面。Aは上司役で、好きな飲み物・食べ物と見たいものを書いた好みカードを持つ。Bは家の人の役で、飲み物とケーキのメニュー、旅行の写真の絵カードを持ち、「コーヒーと紅茶と、どちらを召し上がりますか」「写真をご覧になりますか」とすすめる。Aはカードに合わせて答え、Bは聞いた答えをメモする。終わったら役を替え、カードも替える。
  3. 産出「この方はだれでしょうクイズ」。学生がよく知られた人や学校の先生を一人選び、特別な尊敬語を二つ以上入れたヒントを三つ書いて読む(例: この方は毎朝コーヒーを召し上がります。いつも「宿題を出してください」とおっしゃいます。この方をご存じですか)。答える学生は「はい、知っています。〜先生です」と答える。教師は、ます形が「〜います」になっているか、答える側が「ご存じです」を自分に使っていないか、もとの動詞に戻して意味が通るかを聞く。

つまずきと手当て

  • ます形を「〜ります」で作る(×いらっしゃります、×おっしゃります)。対応表の横に「〜います」と大きく書き、四つの語をまとめて言わせる
  • 「ご存じですか」と聞かれて、自分のことに「ご存じです」で答える(「はい、ご存じです」)。形はできていても自分を高めることになるので使わない。自分のことは「はい、知っています」。尊敬語は相手や目上の人の動作だけ、と左右の絵カードに戻す
  • 自分の動作に特別な尊敬語を使う(「わたしは毎朝8時に会社にいらっしゃいます」)。文の形はできていても自分を高めてしまい、失礼か冗談に聞こえる。自分を低くする言い方は第50課で習うので、この課では「自分のことはいつもの形」に戻せればよい

既習の文型との違い

  • 〈人〉が(わたしに)Nをくださいます(第41課)「くださいます」も特別な尊敬語の一つで、学生はすでに使っています。ほかの語と違って「わたしに」という向きを持ち、目上の人が自分に何かをすることだけに使います。「先生が本をくださいました」と「先生が本をご覧になりました」を並べ、向きのある語とない語を分けて見せます。
  • お〈Vます形〉になります(第49課 文型2)特別な尊敬語がある動詞は、それを使うのが先です。とくに見ます・しますは「*お見になります」「*おしになります」と形そのものが作れないので、必ず「ご覧になります」「なさいます」に置き換えます。食べます・行きますのように「お〜になります」が作れそうに見える動詞も、教室では特別な語で言わせるほうが迷いません。
関連する文型

学習項目 4 お〈Vます形〉/ごNください

意味・はたらき文型 4

「〜てください」を、お客様や目上の人に向けて丁寧にした言い方です。和語の動詞は「お+ます形+ください」(待ちます→お待ちください、掛けます→お掛けください)、「利用します」のような漢語の動詞は「ご+漢語+ください」(ご利用ください、ご注意ください)になります。店・受付・駅・図書館の案内や、お客様に何かをすすめるときによく使います。特別な尊敬語がある動詞は「ご覧ください」「召し上がってください」のように、その語を使います。文法の上では「お〜くださる」の命令の形で、相手の動作を高めながら頼んだりすすめたりする言い方です。

接続

お+〈Vます形〉+ください(和語の動詞)/ご+N(漢語の名詞)+ください。特別な尊敬語がある動詞は その語で言う(見てください→ご覧ください)

形
お待ちください、お掛けください、お入りください、お使いくださいご利用ください、ご注意ください、ご連絡ください特別な語: ご覧ください/召し上がってください「お」と「ご」: 和語は お(お待ち)、漢語は ご(ご利用)。ただし お電話ください のように「お」を使う漢語もある

導入

  • 受付の写真で状況を作る会社の受付と待合いのいすの写真を貼り、教師が受付の人の役で、学生をお客様として迎える。「どうぞ、こちらにお掛けください」と言いながらいすをすすめ、続けて「少しお待ちください」と手で示す。学生が動いたところで、板書に「掛けてください→お掛けください」「待ってください→お待ちください」と並べ、「お客様に言う形」と書き添える。
  • 案内の掲示から「ご」を取り出す駅や図書館の案内を、教師が自分で書いた紙(「エレベーターをご利用ください」「足元にご注意ください」)で見せ、学生に読ませる。「利用」「注意」は漢字二つの言葉なので「ご」、と板書の「お待ち」の横に並べて書く。読めた学生に、意味を「〜てください」で言い直させて確かめる。

板書案

〜てください → お〈Vます形〉ください / ご N ください
待ってください → お待ちください 掛けてください → お掛けください
利用してください → ご利用ください 注意してください → ご注意ください
〔赤〕お = 和語 〔青〕ご = 漢語(例外: お電話ください)
見てください → ご覧ください 食べてください → 召し上がってください

場面と発話(自作)

  • 会社の受付で働いている。お客様が来たので、いすをすすめる。どうぞ、こちらにお掛けください。
  • お客様が会いたい人は、いま電話中だ。少し待ってもらうように言う。申し訳ありません、少しお待ちください。
  • 図書館のカウンターで、利用者にパソコンを使える場所を案内する。パソコンは2階の部屋でご利用ください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動詞カードで「〜てください→お〜ください/ご〜ください」の言い換え(練習Bの型)。和語と漢語のカードを混ぜて出し、「お」と「ご」を言い分けさせる。次に、受付・店・図書館の写真を一枚ずつ見せ、学生が係の人、教師がお客様になって案内するやり取り(練習Cの型)。

  1. 口頭動詞カードを出して言い換えさせる(「待ちます」→「お待ちください」/「入ります」→「お入りください」)。漢語のカードは名詞だけを見せる(「利用」→「ご利用ください」/「連絡」→「ご連絡ください」)。教師がいすを指すしぐさで「お掛けください」、足元の絵で「ご注意ください」と、絵としぐさのキューも混ぜ、「見ます」「食べます」のカードが出たら特別な語で言わせる。
  2. ペアAは会社や図書館の受付の係で、建物の案内図を持つ。Bはお客様で、用件カード(人に会いたい・パソコンを使いたい・トイレを探している など)を持つ。Bが用件を言い、Aは案内図を見て「こちらでお待ちください」「2階でご利用ください」と答える。Bは言われたとおりに案内図の上で指を動かして確かめ、三つ終わったら役を替える。
  3. 産出「案内の貼り紙づくり」。学生が教室・寮・学校の中の場所を一つずつ選び、その場所に貼る案内を三枚書いて読み上げる(例: ここでくつをお脱ぎください/エレベーターをご利用ください)。足りない語は教師がその場で出す。教師は「お」と「ご」の付け方、特別な語がある動詞の言い方、自分のための頼みに使っていないかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「お」と「ご」を取り違える(×お利用ください、×ご待ちください)。和語は お、漢語は ご、と板書の二列に戻す。「お電話ください」のような例外は、出てきたときに一つずつ覚えればよい、と深入りしない
  • 特別な尊敬語がある動詞で作る(×お見ください、×お食べください)。対応表から語を取り、「ご覧ください」「召し上がってください」と言い直させる
  • 目上の人に自分のための頼みごとをするときにも使う(先生に、作文を直してほしいとき「先生、この作文をお直しください」)。文の形は正しいが、指示のように聞こえることがあるので、自分のための頼みは「直していただけませんか」(第26課)のほうが自然なことが多い、と場面を分けて見せる

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉ください(第14課)どちらも相手に動作を頼んだり、すすめたりする言い方ですが、「お〜ください」はお客様や目上の人に向けた丁寧な形です。店や受付の係がお客様に「待ってください」と言うと、ぞんざいに聞こえます。友達や家族には「〜てください」のままでよく、相手によって使い分けると教えます。
  • 〈Vて形〉くださいませんか(第41課)「お〜ください」は案内やすすめ、相手のための指示に向いた言い方で、自分のための頼みには向きません。先生に作文を直してほしいとき「この作文をお直しください」と言うと、指示のように聞こえることがあります。自分のための頼みは「直してくださいませんか」「直していただけませんか」と、問いの形にさせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、特別な尊敬語そのもの(いらっしゃいます・召し上がります・おっしゃいます など)と、文型4の案内の材料になる動詞(利用します・掛けます など)、人を高めて呼ぶ語が中心です。特別な尊敬語は、もとの動詞と表裏にしたカードで出し、文型3の言い換え練習にそのまま使います。案内の動詞は受付や図書館の写真といっしょに出して、文型4の場面で覚えさせます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • いらっしゃいます(いらっしゃいます) 「行きます・来ます・います」を、目上の人の動作として言う言葉です。 会議室に〜・大阪へ〜・こちらへ〜
    会社で、部長が席にいない。同僚に部長の場所を聞く。
    「部長は会議室にいらっしゃいますか。」
  • 召し上がります(めしあがります) 目上の人やお客様が「食べます・飲みます」ことを言う言葉です。 コーヒーを〜・お昼ごはんを〜
    昼休み、先生が教室で弁当を出した。
    「先生、もうお昼ごはんを召し上がりましたか。」
  • おっしゃいます(おっしゃいます) 目上の人が「言います」ことを言う言葉です。 先生が〜・何と〜
    電話で、相手の名前がよく聞こえなかった。
    「すみません、お名前は何とおっしゃいますか。」
  • なさいます(なさいます) 目上の人が「します」ことを言う言葉です。 ゴルフを〜・何を〜
    会社で、部長と休みの日の話をしている。
    「部長は週末、何をなさいますか。」
  • ご覧になります(ごらんになります) 目上の人が「見ます」ことを言う言葉です。 写真を〜・ニュースを〜
    家に来た上司に、旅行の写真を見せたい。
    「京都の写真です。ご覧になりますか。」
  • ご存じです(ごぞんじです) 目上の人が「知っています」ことを言う言葉です。自分のことには使いません。 電話番号を〜・この店を〜
    先生に、同じクラスの学生の電話番号を知っているか聞く。
    「先生、田中さんの電話番号をご存じですか。」
  • 掛けます(かけます) いすに座ります。お客様には「お掛けください」と言います。 いすに〜・こちらに〜
    会社の受付にお客様が来た。
    「どうぞ、こちらにお掛けください。」
  • 利用します(りようします) 店や図書館、電車などを使います。 図書館を〜・エレベーターを〜
    図書館のカウンターで、コピー機の場所を案内する。
    「コピー機は1階でご利用ください。」
  • 伝えます(つたえます) ほかの人の話を、その人に代わって相手に言います。 部長に〜・よろしく〜
    電話で、話したい先生がいない。
    「では、あしたまた電話します、とお伝えください。」
  • 出張します(しゅっちょうします) 仕事で、ほかの町や国へ行きます。 大阪へ〜・来週から〜
    会社で、部長の来週の予定を同僚に聞く。
    「部長は来週、どちらへ出張されますか。」
  • お客様(おきゃくさま) 店や会社に来た客を、丁寧に言う言葉です。 〜がいらっしゃいます・〜の席
    レストランで、お客様に飲み物を聞く。
    「お客様、お飲み物は何になさいますか。」
  • 休みます(やすみます) 仕事をやめて体を楽にします。「お休みになります」は「寝ます」の尊敬語にも使います。 ゆっくり〜・早く〜
    夜遅くまで働いた部長が帰るところ。
    「部長、今晩はゆっくりお休みください。」

会話の扱い

会話は、題から分かるとおり、電話で話したい相手がいないので伝言を頼み、「よろしくお伝えください」で結ぶ流れです。電話を受ける側が、その場にいない目上の人のことを尊敬語で説明する言い方と、かける側が用件を短く伝える言い方の両方が入るので、最初はCDか教師の読みで「だれが、だれに、何を伝えてほしいのか」をつかませます。役割を替えて二回読んだら、かける理由(休む・遅れる・予定を変える など)と相手を学生の生活に置き換えて再現させます。「よろしくお伝えください」は意味を分解せず、電話や手紙の終わりに言うあいさつとしてそのまま入れます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

宿題は問題の文法部分と、「先生・上司へのインタビュー」の質問を五つ(尊敬の形〜(ら)れる一つ・お〜になります二つ・特別な尊敬語二つ)書くこと。次のコマの最初に特別な尊敬語のカードテスト(もとの動詞→尊敬語・7語)をしてから、書いた質問で教師にインタビューさせ、第50課の謙譲語(自分の動作を低くする言い方)につなぐ。もとの動詞と特別な尊敬語の対応表は、第50課で謙譲語の列を足すので消さずに写真に撮っておく。

よくある質問

  • 第49課の尊敬語はどの順で教えればいいですか?

    先に「だれの動作に使うか」を絵カードで決め、それから形に入ります。形は受身形と同じ「〜(ら)れる」から始めると、第37課の板書がそのまま使えて作り方の説明が短く済みます。次に「お〜になります」、作れない動詞の札を残して特別な尊敬語、最後に案内の「お〜ください/ご〜ください」の順にすると、前の項目が次の項目の入口になります。

  • 「〜(ら)れる」と「お〜になります」はどう使い分けさせますか?

    どちらも尊敬語で、「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえる、と階段の板書で見せます。上司や先生本人に直接聞くときは「お〜になります」、同僚にその場にいない上司のことを話すときは「〜(ら)れる」でもよい、という目安にするとまとめやすくなります。ただし「お〜になります」は見ます・しますなどでは作れないので、その動詞は特別な語に回します。

  • 尊敬の「〜(ら)れる」を受身や可能と取り違える学生にはどうしますか?

    尊敬の文は助詞がもとの文のまま、受身の文は動作をする人に「に」が付く、と二つの文を上下に並べて見せます。グループIIと「来られる」は可能形とも同じ形なので、どちらの意味かは前後の話で決まると伝えます。自分が言うときに迷わないよう、上司本人に聞くときは「お〜になります」を使う習慣をつけさせると、取り違えが減ります。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜(ら)れる」「お〜になります」まで、2コマ目で特別な尊敬語、「お〜ください/ご〜ください」、会話と練習Cを扱います。特別な尊敬語の対応表が定着していないクラスでは、2コマ目の始めにカードテストを入れ、問題は宿題に回します。

  • 「お帰りになられました」のような言い方は直すべきですか?

    「お〜になります」に「られ」を重ねた形は二重敬語で、規範の上では避ける形とされています。初級の段階では「どちらか一つで十分丁寧」と教えて、話すときも書くときも一つにそろえさせます。実際の会話で耳にすることはあるので、聞いて分かるのはかまわない、と添えておくと学生が混乱しません。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。