動詞の条件形(〜ば)が初めて出る課です。「このボタンを押せば、ドアが開きます」のように、あることが成り立つための条件を言い、「安ければ、買います」「暇なら、行きます」と形容詞・名詞の条件にも広げます。さらに「どうすればいいですか」で人にやり方を尋ね、相手の話を受けて「温泉なら、〜がいいですよ」と情報や勧めを返す言い方まで進みます。条件形の作り方は、グループIが第27課の可能形と同じ「え段」の操作なので、可能形の表を横に置いて短く片づけ、時間は第25課の「〜たら」との使い分けと、二つの「なら」の区別に回すのがこの課の芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第25課の「もし〜たら」の絵カードを数枚回し、第27課の可能形の表(行けます・飲めます・食べられます)を板書に復活させる。グループIの「え」を色チョークで囲んでおくと、そのまま条件形の入口になる |
| 条件形の作り方(文型1) | 35分 | 可能形の表の横に「行けば・食べれば・すれば・来れば」の三列を書き、ます形→条件形の口頭練習。機械の絵で「押せば、開きます」と使い方を見せ、「〜たら」との線引き(頼み・誘い・希望と「〜したあとで」は「〜たら」)を一枚の板書にする |
| 文型2(〜なければ、〜) | 20分 | 第17課の「〜なければなりません」の「なりません」を隠して「〜なければ」を取り出す。時計や店の絵で「急がなければ、間に合いません」「予約しなければ、入れません」と、うしろに困った結果が来る文を作る |
| 文型3(〜ければ/〜なら) | 25分 | 値札と予定表で「安ければ、買います」「暇なら、手伝ってください」。「いい→よければ」と、い で終わるなA(きれい・有名)を必ず確かめる。1コマ目はここまで |
| 文型4(疑問詞〜ばいいですか) | 25分 | 2コマ目の初めに条件形のカードテスト(5分)。困っている人の絵で「どうすればいいですか」「ここを押せばいいですよ」。第26課の「〜たらいいですか」と並べて、ほぼ同じ意味だと見せる |
| 文型5(Nなら、〜) | 30分 | 学生の「〜たいんですが」を教師が「Nなら、〜がいいですよ」で受けるやり取りから。文型3の「雨なら」と上下に並べ、相手の言葉を拾う「なら」だと区別する |
| 会話・練習C・問題 | 35分 | 会話は出かける先の相談に「Nなら」で答える流れ。練習Cは機械の使い方・困ったときの相談・行き先の勧めの三つの場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
「行けば」「食べれば」のような動詞の形を条件形と呼び、「このボタンを押せば、ドアが開きます」のように、うしろのことが成り立つための条件を言います。作り方は三つのグループで決まり、グループIはます形の前の「い段」の音を「え段」に変えて「ば」を付け、グループIIは「ます」を「れば」に替え、グループIIIは「します→すれば」「来ます→来れば(くれば)」をそのまま覚えます。第25課の「〜たら」と同じ意味で使える場面も多いですが、「〜ば」は「その条件があれば、こうなる」と条件のほうに重みがあり、「駅に着いたら、電話します」のような「〜したあとで」の使い方はありません。また、前の文が動作の動詞で、特に前とうしろの主語が同じとき、うしろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」のような頼み・誘い・希望を置くと不自然になることが多いので、初級ではそのときは「〜たら」を使う、と線を引いておくと安全です。
グループI:い段→え段+ば(行きます→行けば・買います→買えば・待ちます→待てば)/グループII:ます→れば(食べます→食べれば・見ます→見れば)/グループIII:します→すれば・来ます→来れば(くれば)
ます形の絵カード20枚で条件形への変換を速いテンポで(I・II・IIIを混ぜ、「来ます」を必ず入れる)。次に「機械の絵+ボタン」「練習する絵+上手になる絵」のように前と後の絵を組にして「〜ば、〜」の一文にする代入練習(練習Bの型)。仕上げは「日本語が上手になりたい」「朝早く起きられない」などの悩みカードを一人が引いて言い、相手が「〜ば、〜ますよ」と助言するやり取り(練習Cの型)。
「急がなければ、間に合いません」のように、「そうしないと、困ったことになる・できない」と言う形です。ない形の「ない」を「なければ」に替えて作ります(い形容詞の「〜い→〜ければ」と同じ変え方です)。うしろには「〜ません」「〜られません」「困ります」のような、よくない結果が来ることが多く、相手に「だから、してください」と遠回しに伝えるはたらきもあります。第17課の「〜なければなりません」は、この「〜なければ」に「なりません(だめです)」が付いた形なので、ここでつなげて見せると、学生には前に覚えた形の意味が見えます。
〈Vない形〉+なければ(急がない→急がなければ・しない→しなければ・来ない→来なければ・ありません→なければ)
ない形のカードで「〜ない→〜なければ」へ変える練習のあと、「急がない+間に合わない」のような絵の組で「〜なければ、〜ません」を作る代入練習(練習Bの型)。次に「レストラン・電車・試験・旅行」の場面カードを引き、相手に注意する一言を言わせる(練習Cの型)。
形容詞と名詞の条件の言い方です。い形容詞は「い」を取って「ければ」を付け(安い→安ければ、いい→よければ)、な形容詞と名詞は「なら」を付けます(暇なら、雨なら)。「安ければ、買います」「天気がよければ、山に登ります」のように、前の文が物の様子や天気・時間などの状態なので、うしろに「〜たいです」「〜ませんか」「〜てください」を置いても自然に使えます。ここでの「暇なら」「雨なら」は第25課の「暇だったら」「雨だったら」とほぼ同じ意味の条件で、文型5の「Nなら」(相手の話を受ける)とは使い方が違います。い形容詞の否定は「高くなければ」になります。
いA:〜い→〜ければ(高い→高ければ・いい→よければ・高くない→高くなければ)/なA:〜なら(暇なら・静かなら)/N:〜なら(雨なら・あしたなら)
いA・なA・Nのカードを混ぜて条件の形に変える練習(「いい」「きれい」「有名」を必ず入れる)。次に「値段・天気・時間」の絵の組で「〜ければ/〜なら、〜」の代入練習(練習Bの型)。仕上げは週末の予定を立てる場面で、天気や時間を条件にしてペアで相談する(練習Cの型)。
「どうすればいいですか」「どこで買えばいいですか」のように、何をどうすればよいか分からないとき、人にやり方や答えを聞く言い方です。疑問詞(どう・どこ・だれ・何・いつ・何時)と条件形の動詞に「いいですか」を付けます。答えは「〜ばいいです(よ)」の形で返すと、聞いた形とそろいます。第26課の「疑問詞〈Vた形〉らいいですか」とほぼ同じ意味で、どちらを使ってもよい場面が多いので、この課では条件形で言えることを中心に練習します。「〜てもいいですか」(許可)とは意味が違う点も押さえます。
疑問詞+〈V条件形〉+いいですか(どう→どうすれば/どこで→どこで買えば/だれに→だれに聞けば)。答えは〈V条件形〉+いいです
「困ったこと」の絵カード(切符の買い方・ごみを出す日・病院の場所・書類の出し方)で「疑問詞〜ばいいですか」を作る代入練習(練習Bの型)。次に一人が困ったことを「〜んですが、〜ばいいですか」で相談し、相手が「〜ばいいですよ」と教えるやり取りをペアで回す(練習Cの型)。
相手が言った話題を受けて、「それについてなら、こういう情報があります・こうするといいです」と言う「なら」です。「温泉に行きたいんですが」と言われて「温泉なら、北海道がいいですよ」と答えるように、相手の言った名詞をそのまま「Nなら」で取り上げ、うしろに勧めや情報を続けます。文型3の「雨なら」は自分で「もし雨だったら」という条件を立てる言い方でしたが、こちらは相手の言葉を受けるのが出発点なので、話のいちばん初めには使いにくい、という点で区別します。
N+なら、〜(相手が言った名詞を受けて、うしろに勧め・情報を言う)
「〜たいんですが」のカード(スキー・買い物・温泉・日本料理・お土産)を一人が引いて言い、相手が「Nなら、〜がいいですよ」で答える代入練習(練習Bの型)。次に学生が自分の町や知っている店・場所を使って、旅行や買い物の相談に答えるやり取り(練習Cの型)。
この課の新出語は、条件形の文に使う動詞と、出かける先や旅行の相談に使う場所・自然の語が中心です。動詞はます形と条件形を1組にしてカードにし、文型1・2の代入練習にそのまま使います。場所の語は地図や写真で出し、文型5の「Nなら、〜がいいですよ」の材料にします。下の語は、この課の文型の練習で使いやすい語を選んだものです。
会話は、題から見て、休みに出かける所を人に相談し、相手が「Nなら」で行き先を勧める、という流れです(細部は手元の教科書で確かめてください)。芯は相手の言葉を受ける「Nなら」と、題の「どこか+形容詞+N」(どこかいい所)の組み立てで、第26課の「〜んですが」で相談を切り出す形ともつながります。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、役割を替えて二回読んだら、相談の目的(温泉・買い物・日本料理など)と勧める場所を学生の知っているものに替えて再現させます。勧められたあとに「どうすればいいですか」「何で行けばいいですか」と一言足させると、文型4もこの場面で使えます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「日本へ来たばかりの人へのアドバイス」を五つ書くこと(〜ば二つ・〜なければ一つ・〜ければ/〜なら一つ・Nなら一つ)。次のコマの最初に条件形のカードテスト(ます形→条件形・10語、「来ます」「します」「いい」を必ず入れる)をしてから作文を発表させ、第36課の「〜ように」につなぐ。可能形と条件形の表は並べて写真に撮っておくと、あとの課でも使える。
第35課の条件形(〜ば)はどの順で教えればいいですか?
第27課の可能形の表を横に置き、グループIは「え段」に変える点が同じだと見せてから入ると早く片づきます。グループIIは可能形と形が離れる(食べられます/食べれば)ので別の色で「ます→れば」と書き、グループIIIの「来れば」は読みの「くれば」を大きく書きます。作り方は15分ほどで終え、残りの時間を使い方(機械の操作や助言)の練習に回します。
「〜ば」と「〜たら」(第25課)の違いはどう説明すればいいですか?
初級では「うしろが頼み・誘い・希望のとき、また『〜したあとで』の意味のときは〜たら」と一本の線を引けば十分です。機械の使い方や助言のように「その条件があれば、こうなる」ときは、〜ばも〜たらも使えます。ただし前が形容詞・名詞の状態(安ければ・暇なら)なら、〜ばのうしろに誘いや頼みを置いても自然なので、その例も板書に残しておきます。
「雨なら」と「温泉なら」の二つの「なら」はどう区別しますか?
「雨なら、うちにいます」は自分で「もし雨だったら」と条件を立てる言い方で、「雨だったら」に言い換えられます。「温泉なら、〜がいいですよ」は相手が言った話題を受けて情報や勧めを返す言い方で、相手のせりふがないと言えません。板書で二つを上下に並べ、下の文の前に相手の吹き出しを描くと、違いが目で分かります。
第35課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で条件形の作り方と文型1〜3、2コマ目で文型4・5と会話、練習C、問題の聞き取りまで進みます。条件形が定着しないクラスでは、2コマ目の初めに5分のカードテストを入れてから文型4に入ると、「すれば」「来れば」の誤りが減ります。
「〜ば」と「〜と」(第23課)の違いを聞かれたらどう答えますか?
機械の使い方や道順のように、そうすれば必ず同じ結果になる場面では、「押すと、開きます」も「押せば、開きます」もほぼ同じ意味です。いちばん大きな違いはうしろの文で、「〜と」のうしろには「〜たいです」「〜てください」「〜ましょう」を置けません。初級ではこの一点だけ答え、細かい違いはあとの段階に回します。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。