日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅱ 第48課「休ませていただけませんか」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「休ませていただけませんか」

動詞の使役形が初めて出る課です。前半は「母は弟を塾へ行かせました」「先生は学生に作文を書かせました」のように、上の立場の人が下の立場の人に何かをさせる(強制)文、後半は同じ形で「父は娘を留学させました」のように、本人がしたいことをさせてあげる(容認)文を扱い、最後に「休ませていただけませんか」で、自分がしたいことを目上の人に丁寧に願い出る言い方まで進みます。この課の最大のつまずきは助詞で、もとの動詞が自動詞なら「人を」、他動詞なら「人に〜を」になります。使役形の作り方は最初の時間で片づけ、文型1と2を同じ板書の上下に並べて、「を」が二つ並ばないように「に」に替わる、という一本の筋で助詞を見せるのがこの課の芯です。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目6時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞を使役形に変え、使役形をグループII の動詞として活用できる
  • 「子どもを塾へ行かせます」「学生に作文を書かせます」のように、自動詞と他動詞で助詞を言い分けて、上の立場の人がさせることを言える
  • 同じ使役の文で、本人がしたいことを許す・させてあげる(容認)意味を、場面から読み取り、自分でも言える
  • 「〜(さ)せていただけませんか」で、休み・早退・物を使うことなどを、理由を添えて目上の人に丁寧に願い出られる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)10分第37課の受身形と第27課の可能形を並べた板書を出し、「書かれる」「書ける」の右に一列空けておく。教師が学生に「立ってください」「読んでください」と言ってやらせ、「先生は川口さんを立たせました」と聞かせて、空けた列に「書かせる」を書き込む
使役形の作り方30分グループI(ない形の あ段+せる)→ II(させる)→ III(させる・来させる)の順に板書し、ます形→使役形の口頭練習。使役形もグループII として活用することと、受身形の「〜れる」と「〜せる」の一字の違いを確かめる
文型1・2(強制)45分学校や会社の上下関係の絵で、「先生は学生を立たせました」(自動詞)と「先生は学生に作文を書かせました」(他動詞)を板書の上下に並べる。もとの文「学生が立ちます」「学生が作文を書きます」から矢印で作り、「を」の位置を色チョークで比べる
文型3・4(容認)30分子どもが「行きたい」「やりたい」と言っている吹き出しの絵を見せ、「父は娘を留学させました」「母は子どもに好きなおもちゃを買わせました」。形は文型1・2と同じで、本人がしたいかどうかで意味が分かれることを、吹き出しの有無で見せる
文型5(〜(さ)せていただけませんか)30分教師が部長、学生が社員の役で、「熱があるんですが、早く帰らせていただけませんか」。第26課の「〜ていただけませんか」と並べ、「だれがするか」で使役が入ることを板書で示す。理由→お願い→返事の三段のやり取りまで
会話15分部下が上司に休みをもらえるか願い出る流れ。都合を聞く、理由を「〜んですが」で言う、「休ませていただけませんか」でお願いする、の三段に分けて再現させる
練習C・問題20分練習Cは「子どもに何をさせますか」「させてくれた親・先生」「休み・早退のお願い」の三つの場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に

学習項目 1 使役形の作り方

意味・はたらき活用

「行きます→行かせる」「食べます→食べさせる」のように、ある人がほかの人に動作をさせることを言う動詞の形を使役形と呼びます。作り方は受身形と同じく三つのグループで決まり、グループI はない形の「〜ない」を「〜せる」に替え(行かない→行かせる)、グループII は ます を させる に替え、グループIII は「します→させる」「来ます→来させる(こさせる)」です。できた使役形はすべてグループII の動詞なので、ます形・ない形・て形・た形はグループII の作り方で作れます。受身形とは「れる」と「せる」の一字違いなので、二つを並べて耳でも目でも区別させます。

接続

ない形 → 使役形(グループI: あ段+せる/グループII: ます→させる/グループIII: させる・来させる)。使役形はグループII として活用する(行かせる→行かせます・行かせない・行かせて・行かせた)

形
グループI: 行きます→行かせる、休みます→休ませる、帰ります→帰らせる、待ちます→待たせる、遊びます→遊ばせる、話します→話させる、手伝います→手伝わない→手伝わせるグループII: 食べます→食べさせる、見ます→見させる、覚えます→覚えさせる、調べます→調べさせるグループIII: します→させる、来ます→来させる(こさせる)、掃除します→掃除させる、練習します→練習させる使役形の活用(グループII): 行かせる→行かせます/行かせません/行かせない/行かせて/行かせた

導入

  • ない形から一歩で作る第17課のない形の板書を復活させ、「行かない」の「ない」を消して「せる」を書く。学生に「書かない→?」「待たない→?」と続けて言わせ、ない形が言えればグループI はすぐ作れることを確かめる。「手伝います→手伝わない→手伝わせる」は「わ」になることを、ない形の段階で色チョークで囲んでおく。
  • 受身形・可能形の板書に一列足す第27課・第37課で使った可能形と受身形の三列の右に、使役形の列を同じ形で書く。グループI は「書ける/書かれる/書かせる」、グループII は「食べられる/食べられる/食べさせる」と並べ、使役形だけはどのグループでも他と形がぶつからないことを見せる。「れる」と「せる」の一字に赤で印を付け、課の終わりまで消さない。

板書案

使役形の作り方(グループI は ない形から)
I 行かない → 行かせる  待たない → 待たせる  手伝わない → 手伝わせる
II 食べます → 食べさせる  III します → させる/来ます → 来させる(こさせる)
可能形 書ける|受身形 書かれる|使役形 書かせる
〔赤〕れる と せる の一字に丸 〔青〕使役形は II グループとして活用(行かせて・行かせた・行かせない)

場面と発話(自作)

  • ます形→使役形の口頭練習。教師が絵カードを見せて「行きます」と言う。行かせる。
  • う で終わる動詞の確認。教師が「手伝います」と言う。手伝わせる。
  • グループIII の確認。教師が「来ます」と言い、読み方にも注意させる。来させる(こさせる)。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カード20枚を速いテンポで「ます形→使役形」。I・II・III を混ぜて出し、間違えたカードだけ戻してもう一度。次に「ます形→受身形→使役形」を同じカードで1周して二つの形を言い分けさせ、最後に「使役形→使役形のた形(行かせる→行かせた)」「→ます形の過去(行かせました)」を回して、文型1・2の過去の文で崩れないようにする。

  1. 口頭教師がます形を言い(「行きます」「食べます」「します」)、全員で使役形を言う。次にキューをない形(「待たない」「遊ばない」)に替えて、ない形から作る筋を確かめる。全体で2周したら個人に当て、間違えた語は全員で言い直す。最後に「書きます→受身形は?→使役形は?」と二つの形を交互に言わせ、れる・せる の聞き分けまで。
  2. ペア表にます形、裏に使役形を書いたカードを10枚ずつ配る。Aが表を読み、Bが使役形を言い、Aは裏を見て正しいか伝える。10枚で交替し、2回目は逆に使役形を聞いてます形に戻す。グループIII と「〜う」で終わる動詞(手伝う・買う)は必ず1枚ずつ入れておく。
  3. 産出「使役形ビンゴ」。学習者が既習の動詞から9つを選んで、3×3のマスに使役形で書く。教師がます形か受身形を読み上げ、受身形のときは「それは受身」と言わせて消さない。教師が見るのは、グループI があ段になっているか、「う→わ」(手伝わせる)、「来させる」の読み、ます形から作った「行きさせる」が混ざっていないか。

つまずきと手当て

  • グループI を「ます→させる」で作る(×行きさせる、×書きさせる)。受身形と同じく ない形から作る、と板書の「行かない→行かせる」に戻す
  • 受身形と混ぜる(「休ませる」と言うべきところで「休まれる」、またはその逆)。三列の板書の「れる/せる」を指し、教師が二つをわざと続けて言って、どちらか手を挙げさせる聞き分けを短く入れる
  • 「来させる」を「きさせる」と読む、「します」の使役形を「しさせる」と言う。グループIII の二つは丸ごと覚える形、と札にして貼っておく
  • 「飲ます」「行かす」のような短い形を日本人の会話で聞いて使う学生がいる。意味は通じるが、この課では「〜せる」の形でそろえる、と一言だけ言って深入りしない

既習の文型との違い

  • 受身形の作り方(第37課)受身形も使役形も、グループI はない形の「ない」を替えて作るので、作り方の手順は同じです。違うのは付ける字で、受身は「れる」(行かれる)、使役は「せる」(行かせる)、グループII・III でも「られる/させる」「される/させる」と一字が違います。学習者は「*休まれていただけませんか」のように受身形を使役のつもりで使うので、二つを同じ板書の隣の列に置きます。
  • 可能形の作り方(第27課)グループI の可能形は「書けます」のように え段+る で作り、ない形からは作りません。使役形を作るときに可能形の作り方が混ざって、「*書けせる」のような形が出ることがあります。可能形は え段、受身形と使役形は あ段、と段の違いで三列を見分けさせます。
関連する文型

学習項目 2 N1を使役V (強制)

意味・はたらき文型 1

「母は弟を塾へ行かせました」「課長は新しい社員を支店へ研修に行かせました」のように、上の立場の人(親・先生・上司)が、下の立場の人に動作をさせることを言う文型で、もとの動詞が「行く・帰る・休む・泳ぐ」のような自動詞のときの形です。させる人を「は」で、する人を「を」で示します。もとの文「弟が塾へ行きます」の「が」が「を」になり、「へ」「で」など場所の助詞はそのまま残ります。ただし「道を渡る」「公園を散歩する」のように、もとの文にすでに「を」があるときは、「を」が二つ並ぶのを避けて、する人を「に」で言うことが多いです(子どもに一人で道を渡らせる)。

接続

N(させる人)+は+N1(する人)+を+〈場所など〉+使役V(もとの動詞が自動詞。もとの文の「が」→「を」)

形
母は弟を塾へ行かせました課長は新しい社員を支店へ研修に行かせました先生は熱がある学生をうちへ帰らせましたもとの文: 弟が塾へ行きます → 母は弟を塾へ行かせます

導入

  • 教室でさせて、言い直す教師が学生一人に「立ってください」「前へ来てください」と言って実際に動かし、ほかの学生に「先生は川口さんを立たせました」「先生は川口さんを前へ来させました」と聞かせる。板書は上に「川口さんが立ちます」、下に「先生は川口さんを立たせます」と書き、「が」から「を」へ矢印を引く。させる人がだれか、する人がだれかを、人の絵の上に「させる人」「する人」と札を付けて分ける。
  • 親と子・上司と社員の絵で親と子どもの絵を貼り、子どもの絵の下に「塾へ行きます」「早く寝ます」「毎日泳ぎます」のカードを置いて、「母は子どもを塾へ行かせます」と言う。次に上司と社員の絵に替えて「研修に行きます」「早く来ます」。させる人はいつも上の立場、という関係を絵の上下で見せておくと、目上に使えない理由(pitfalls)につながる。

板書案

N1(する人)を + 使役V(もとの動詞が自動詞)
もとの文 弟 が 塾へ 行きます。
使役の文 母 は 弟 を 塾へ 行かせます。
〔赤〕が → を の矢印 〔青〕へ・で など場所の助詞はそのまま
人の絵の横に させる人(上)→ する人(下) の矢印

場面と発話(自作)

  • 子どもの習い事の話。友達に、子どもを毎週どこへ行かせているか聞かれた。毎週土曜日に、息子を水泳教室へ行かせています。
  • 会社で、急な仕事のために同僚がいない理由を説明する。課長が新しい人を二人、支店へ研修に行かせました。あしたまで帰りません。
  • クラスで、具合の悪い学生がいなくなったことを、ほかの先生に伝える。熱がありましたから、うちへ帰らせました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「子どもが塾へ行きます」のような、もとの文のカードを見せて「母は子どもを塾へ行かせます」に言い換える代入練習(練習Bの型)を、自動詞だけで10枚。次に「親」「先生」「部長」のカードを替えながら、させる人が変わっても助詞は変わらないことを確かめる。最後に「子どものとき、親はあなたをどこへ行かせましたか」とペアで聞き合う(練習Cの型の前段)。

  1. 口頭もとの文のカードを見せ(「子どもが早く寝ます」「学生がうちへ帰ります」「社員が支店へ研修に行きます」)、させる人のカード(母・先生・部長)を横に置いて、全員で「母は子どもを早く寝させます」と言い換える。次にキューを語だけ(「課長・社員・研修に行きます」)に減らし、最後は絵だけで言わせる。過去の「〜させました」でも1周する。
  2. ペアAに家族の絵カード(母と子・行き先の絵・曜日)、Bに何も書いていない表を渡す。Bが「お母さんは子どもをどこへ行かせますか」「何曜日に行かせますか」と聞き、Aは絵を見て答える。Bは表を埋め、終わったら絵カードを替えて交替する。させる人を父・先生に替えたカードも混ぜておく。
  3. 産出「子どものころのルール」。学習者が、子どものとき親や先生にさせられたことを、自動詞の使役で二つ言う(「母はわたしを毎晩9時に寝させました」「先生は遅く来た学生を教室の外に立たせました」)。教師が見るのは、する人に「が」が残っていないか、させる人とする人が逆になっていないか、目上の人をする人にしていないか。

つまずきと手当て

  • する人に「が」を残す(×母は弟が塾へ行かせました)。もとの文の「が」は使役の文では「を」、と板書の矢印に戻す
  • させる人とする人を逆にする(×弟は母を塾へ行かせました)。だれが上の立場か、を絵の上下で確かめ、「させる人は」から文を始める習慣を付ける
  • 目上の人に使う(「わたしは部長を早く帰らせました」)。文の形は正しいが、目上の人を自分の思うとおりに動かしたように聞こえて失礼になる。使役は上の立場から下の立場へ、と絵の矢印を指す。目上の人に何かをしてもらったときは第41課の「〜ていただきました」など、やりもらいの形で言う
  • もとの文に「を」がある自動詞(道を渡る・公園を散歩する)でも「を」を二つ並べる(×子どもを道を渡らせる)。この形はまれなので一例だけ、「を」が二つになるときは人を「に」、と補う

既習の文型との違い

  • N1 はN2 に受身V(第37課)受身「弟は母に呼ばれました」では、動作をされる人が「は」、動作をする人が「に」です。使役「母は弟を塾へ行かせました」では、させる人が「は」で、動作をする人は自動詞なら「を」になります。学習者は二つを混ぜて、使役の「を」に受身の形をつないだ「*母は弟を塾へ行かれました」のような文を作ります。なお「母は弟に塾へ行かれました」は、弟が行ったことで母が困ったという迷惑の受身として別の意味の文になります。混ざらないように、だれが動作をするかを先に言わせてから文を組ませます。
  • わたしは〈人〉に〈Vて形〉もらいます(第24課)「友達に駅まで来てもらいました」は、相手に頼んでしてもらった、という言い方で、相手は同じ立場でも上の立場でもかまいません。使役は上の立場から下の立場へなので、友達や先生について「友達を駅まで来させました」と言うと、無理にさせたように聞こえて失礼です。文法は正しくても場面に合わないことを、二つの文を並べて見せます。
関連する文型

学習項目 3 N1にN2 を使役V (強制)

意味・はたらき文型 2

「先生は学生に作文を書かせました」「母は子どもに野菜を食べさせます」のように、もとの動詞が「書く・食べる・掃除する」のような他動詞(「〜を」を取る動詞)のときの使役の文です。もとの文の「を」はそのまま残るので、する人は「を」ではなく「に」で示します。文型1の「人を」と並べると、「を」が一つの文に二つ並ばないように、する人の助詞が「に」に替わる、と一本の筋で説明できます。意味は文型1と同じで、上の立場の人が下の立場の人にさせることです。

接続

N(させる人)+は+N1(する人)+に+N2(もとの目的語)+を+使役V(もとの動詞が他動詞。もとの文の「が」→「に」、「を」はそのまま)

形
先生は学生に作文を書かせました母は子どもに野菜を食べさせます部長は新しい社員に会議室の掃除をさせました文型1との対比: 先生は学生を立たせました(自動詞・人を)/先生は学生に本を読ませました(他動詞・人に〜を)

導入

  • 文型1の板書の下に並べる文型1の「先生は川口さんを立たせました」の下に、もとの文「川口さんが本を読みます」を書き、同じように「が」を「を」にしようとすると「川口さんを本を読ませます」になって「を」が二つ並ぶことを見せる。そこで人の「を」に×を付けて「に」に書き直し、「先生は川口さんに本を読ませました」。教室で実際に学生に教科書を読ませてから板書すると、意味が先に入る。
  • 宿題と家の手伝いのカードで「作文を書く」「漢字を覚える」「部屋を掃除する」「皿を洗う」のカードを並べ、先生や親の絵と組み合わせて「先生は学生に漢字を覚えさせます」「母は子どもに皿を洗わせます」。カードの「〜を」の部分を色で囲み、もとから「を」がある動詞のときは人が「に」、と板書の枠「N1 に N2 を 使役V」に当てはめる。

板書案

N1(する人)に N2 を + 使役V(もとの動詞が他動詞)
もとの文 学生 が 作文 を 書きます。
使役の文 先生 は 学生 に 作文 を 書かせます。
〔赤〕×学生を作文を(「を」が二つ)→ 学生に
〔青〕作文を の「を」はそのまま

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の友達に、きのうの授業がどうだったか聞かれた。先生は学生に作文を三枚書かせました。大変でした。
  • 子育ての話。子どもが野菜を嫌いだという同僚に、自分の家のやり方を話す。うちでは、子どもに毎日少し野菜を食べさせています。
  • 会社で、新しく入った社員が何をしているか、先輩に聞かれた。課長が新しい社員にコピーをさせています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

もとの文のカード(「学生が作文を書きます」など)から「先生は学生に作文を書かせます」への言い換え(練習Bの型)を他動詞で10枚。次に自動詞と他動詞のカードを混ぜて出し、学生がまず「を」か「に」かを言ってから文を言う形で、文型1との言い分けを回す。最後に「子どものとき、親はあなたに何をさせましたか」をペアで聞き合い、答えを板書に書きためて文型3・4の材料にする。

  1. 口頭もとの文のカード(「学生が漢字を覚えます」「子どもが皿を洗います」「社員が資料をコピーします」)から「先生は学生に漢字を覚えさせます」に言い換える。全体→個人の順で10枚。次に文型1の自動詞のカードを混ぜ、学習者がまず「を」か「に」かを言ってから文を言う形にして、助詞の判断を声に出させる。
  2. ペア情報差のある部長のメモ。Aのメモには「田中さん・会議室の掃除」「森さん・資料のコピー」のように、部長がだれに何をさせたかが書いてあり、Bのメモは空いている。Bが「部長はだれに会議室の掃除をさせましたか」「森さんに何をさせましたか」と聞いて埋める。メモを替えて交替する。
  3. 産出「もし先生だったら」。学習者が、自分が日本語の先生(または親)になったら学生(子ども)に何をさせるかを三つ言い、一つは書く(「わたしが先生だったら、学生に毎日日記を書かせます」)。教師が見るのは、人が「に」、目的語が「を」で、「を」が二つ並んでいないか、使役形のグループI があ段になっているか。

つまずきと手当て

  • 他動詞でも人を「を」にして、「を」を二つ並べる(×先生は学生を作文を書かせました)。いちばん多い誤り。板書の×を付けた「を」に毎回戻し、「を」は一つの文に一つ、と自分で言い直させる
  • 自動詞の文で人を「に」にする(「母は弟に塾へ行かせました」)。これは文法の誤りではなく、弟が行きたがっていたことを立てる言い方として使われるが、この課では自動詞は「を」でそろえて練習する。文型1・2を混ぜたカードで、もとの文に「を」があるかどうかをまず確かめる手順を固定する
  • 目的語の「を」を「に」にしてしまう(×学生を作文に書かせました)。もとの文の「作文を書きます」の「を」はそのまま、ともとの文を指してから言わせる
  • 相手への頼みごとに使う(「友達に引っ越しを手伝わせました」)。文の形は正しいが、友達に無理にやらせたように聞こえる。友達や同僚に頼んでしてもらったときは第24課の「〜てもらいました」、と並べて書く

既習の文型との違い

  • N1 はN2にN3 を受身V(第37課)「わたしは母に日記を読まれました」(受身)と「母はわたしに日記を読ませました」(使役)は、どちらも「人に〜を」の形ですが、主語と動詞の形が違います。受身はされた人が主語で、困った気持ちが出やすく、使役はさせた人が主語です。学習者が二つを取り違えたら、だれが読んだかを聞いて主語から組み直させます。
  • わたしは〈人〉に〈Vて形〉もらいます(第24課)「友達に引っ越しを手伝ってもらいました」も「人に〜を」の形で、助詞の並びは使役と同じです。違いは、もらうは頼んでしてもらう言い方、使役は上の立場からさせる言い方という点です。友達・同僚・先生の話では「〜てもらいました」、自分が上の立場のとき(親・先生・上司として)だけ使役、と場面で分けます。
関連する文型

学習項目 4 N1を使役V (容認)

意味・はたらき文型 3

「父は娘を留学させました」「子どもを公園で遊ばせます」のように、本人がしたいと思っていることを、上の立場の人が許す・させてあげる、という意味の使役の文です。形は文型1とまったく同じで、自動詞のとき、する人を「を」で示します。強制か容認かは形では分からず、本人がそれをしたいかどうかという場面で決まります。「行きたいと言ったので」「好きなだけ」「自由に」のようなことばや、「〜させてくれました」「〜させてあげます」の形があると、許す意味がはっきりします。

接続

N(許す人)+は+N1(する人)+を+〈場所など〉+使役V(形は文型1と同じ・もとの動詞が自動詞)。「〜させてくれます/〜させてあげます」と組むことも多い

形
父は娘を一人で留学させました天気がいい日は、子どもを公園で遊ばせます息子が行きたいと言ったので、友達の家へ行かせました対比: 母は弟を塾へ行かせました(本人は行きたくない=強制)/母は弟を友達の家へ行かせました(本人が行きたい=容認)

導入

  • 吹き出しのある絵とない絵で同じ「子どもを〜へ行かせました」の絵を二枚貼り、一枚の子どもには「行きたくない」と泣いている顔、もう一枚には「行きたい!」の吹き出しを付ける。二枚とも「母は子どもを行かせました」と言ってから、「どちらがうれしい?」と学生に聞く。形は同じで、本人の気持ちで意味が違う、と板書に「させる(強制)」「させてあげる(容認)」の二行を書く。
  • 「〜させてくれました」で自分の経験を教師が子どものころの話として「わたしが留学したいと言ったとき、父はわたしを留学させてくれました」と話す。第24課の「〜てくれました」が付くと、許してもらってありがたい気持ちになることを、文型1の「行かせました」と並べて見せる。学生にも親が許してくれたことを一つ聞いて、文型3の答えを集める。

板書案

子ども:「公園へ行きたい!」(吹き出し)
母は 子ども を 公園へ 行かせました。(容認)
母は 子ども を 塾へ 行かせました。(強制)
〔赤〕形は同じ 吹き出しの有無で意味が分かれる
父は わたし を 留学させて くれました。(ありがたい)

場面と発話(自作)

  • 日本に来た理由を聞かれ、家族が許してくれたことを話す。父は反対しましたが、母がわたしを日本へ留学させてくれました。
  • 休みの日の過ごし方を同僚に聞かれた。小さい子どもがいる。天気がいい日は、子どもを近くの公園で遊ばせています。
  • 犬を飼っている人が、友達に犬の世話のことを話す。夕方は、犬を庭で自由に走らせます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

吹き出しつきの絵カード(子どもが「〜たい」と言っている)を見せて、「母は子どもを〜させました」に言い換える代入練習(練習Bの型)。次に吹き出しのある絵とない絵を混ぜて出し、学生に「強制」「容認」の札を挙げさせてから文を言わせる。最後に「子どものとき、親はあなたをどこへ行かせてくれましたか」をペアで聞き合う(練習Cの型の前段)。

  1. 口頭子どもが「〜たい」と言っている吹き出しのカード(「遊びたい」「留学したい」「友達の家へ行きたい」)を見せ、全員で「母は子どもを公園で遊ばせました」と言う。次に同じカードで、学習者自身を子どもにして「母はわたしを〜させてくれました」に言い換える。最後に吹き出しのある絵とない絵を混ぜ、「強制」「容認」の札を挙げてから文を言わせる。
  2. ペア「許した?許さなかった?」。Aのカードには子どもがしたいことと、親の返事(○か×)が書いてある。Bが「お父さんは娘さんを一人で旅行させましたか」と聞き、Aは「はい、旅行させました」か「いいえ、旅行させませんでした。まだ子どもですから」と理由を付けて答える。5枚で交替する。
  3. 産出「ありがとうスピーチ」。学習者が、親や先生が許してくれたことを二つ入れて、1分で話す(「高校生のとき、父はわたしを一人で東京へ行かせてくれました」)。教師が見るのは、許した人が主語になっているか、する人(わたし)が「を」になっているか、「〜させてくれました」と「〜てくれました」が混ざっていないか、強制の話に聞こえていないか。

つまずきと手当て

  • 使役の文を全部「無理にさせる」意味に取り、親に感謝する話で使えない。形は同じで場面で決まる、と吹き出しの二枚の絵に戻る。「〜させてくれました」を付けると誤解されにくい、と使い方を一つ持たせる
  • 許したことを言うのに「〜てもいいです」に引きずられて文が崩れる(×父はわたしが留学してもいいでした)。「父は『留学してもいいです』と言いました」なら正しいが、だれが許したかを短く言うときは使役、と板書の「させてあげる」の行を指す
  • 許す意味のときは人を「に」にするべきだと思い込む。自動詞のときは文型1と同じ「を」でそろえる、と言っておく(自動詞でも、本人の気持ちを大事にするときに「に」を使う人もいるが、この課では「を」で練習する)

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉もいいですか(第15課)「留学してもいいですか」は、する本人が許しを求める言い方で、会話の中で使います。容認の使役「父はわたしを留学させてくれました」は、だれが許したかを、あとで人に話すときの言い方です。許しを求める→許してもらう→それを人に話す、の三段を一つの場面でつなげて見せると、二つの役割が分かれます。
  • 〈人〉は〈Vて形〉くれます(第24課)「父はわたしを駅まで送ってくれました」では、動作をしたのは父です。「父はわたしを一人で旅行させてくれました」では、旅行したのはわたしで、父は許しただけです。学習者は使役を抜いて「*父はわたしを旅行してくれました」のような文を作ることがあるので、「だれが旅行しましたか」と聞き返して「せ」を入れさせます。
関連する文型

学習項目 5 N1にN2 を使役V (容認)

意味・はたらき文型 4

「母は子どもに好きなおもちゃを選ばせました」「先生は学生に辞書を使わせました」のように、他動詞の使役で、本人がしたいことを許す・させてあげる、という意味を言う文です。形は文型2と同じで、する人を「に」、もとの目的語を「を」で示します。強制か容認かは、文型3と同じく本人がしたいかどうかで決まり、「好きな」「自由に」「〜たいと言ったので」や「〜させてくれます」があると許す意味が分かりやすくなります。文型5の「〜させていただけませんか」は、この容認の使役を自分に向けて願い出る形なので、ここで「許す使役」をしっかり作っておきます。

接続

N(許す人)+は+N1(する人)+に+N2+を+使役V(形は文型2と同じ・もとの動詞が他動詞)。「〜させてくれます/〜させてあげます」と組むことも多い

形
母は子どもに好きなおもちゃを選ばせました先生はテストで学生に辞書を使わせました父はわたしに父の車を運転させてくれました対比: 先生は学生に作文を書かせました(強制)/先生は学生に好きなテーマで作文を書かせました(容認に近い)

導入

  • 店の絵で「選ばせてあげる」おもちゃ屋の絵の前で、子どもが「これがほしい!」と言っている吹き出しを貼り、「母は子どもに好きなおもちゃを選ばせました」。文型2の「母は子どもに野菜を食べさせます」(子どもは嫌そうな顔)の絵と並べ、形は同じ「人に〜を」で、顔の絵で意味が分かれることを見せる。
  • 教室のルールで許す・許さない教師が「きょうのテストは辞書を使ってもいいです」と言い、学生に辞書を使わせてから、「先生は学生に辞書を使わせました」と板書する。次に「きのうは使わせませんでした」と否定も添えて、許す・許さないを使役の肯定・否定で言えることを見せる。第15課の「〜てもいいです」で言ったことを、だれが許したかの文に言い直す練習につなぐ。

板書案

子ども:「この本がほしい!」(吹き出し)
母は 子ども に 好きな本 を 選ばせました。
〔赤〕に + を(文型2と同じ) 〔青〕好きな・自由に=許す目じるし
許す 使わせます / 許さない 使わせません
店長は アルバイト に パソコン を 使わせて くれます。

場面と発話(自作)

  • 誕生日のプレゼントの話。子どもが欲しい物を自分で決めたと、友達に話す。誕生日に、息子に好きな本を選ばせました。
  • アルバイト先の店長がやさしいと、友達に話す。店長は、休み時間に店のパソコンを使わせてくれます。
  • 初めて日本で運転した経験を、クラスで話す。ホストファミリーのお父さんが、わたしに車を運転させてくれました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

吹き出しつきの絵カード(「〜を使いたい」「〜を作りたい」)で「〜は〜に〜を〜させてくれました」への言い換え(練習Bの型)を10枚。次に文型2の強制のカードと混ぜ、「強制」「容認」の札を挙げてから文を言わせる。最後に「親・先生・会社の人があなたに何をさせてくれましたか」をペアで聞き合い、うれしかったことを一つずつ発表させる(練習Cの型)。

  1. 口頭吹き出しのカード(「パソコンを使いたい」「料理を作りたい」「好きな服を選びたい」)を見せ、全員で「店長はアルバイトにパソコンを使わせてくれます」「母は子どもに好きな服を選ばせました」と言う。次に○×の札を付けて、×のときは「使わせません」と否定で言わせる。最後に文型2の強制のカードを混ぜ、強制か容認かを言ってから文を言う。
  2. ペア「うちのルール比べ」。AとBに別々の家のルールカード(ゲーム・テレビ・お菓子が○か×か、一日何時間まで)を配る。「お母さんは子どもにゲームをさせますか」「はい、一日1時間だけさせます」「いいえ、させません」と聞き合い、二つの家の違いを最後に一文で言う。
  3. 産出「わたしが親になったら」。学習者が、自分の子どもにさせてあげたいことを三つ、させないことを一つ書き、隣の人に読む(「子どもに好きなスポーツを習わせてあげたいです」「夜遅くまでゲームをさせません」)。教師が見るのは、人が「に」、物が「を」で、否定が「させません」になっているか、「〜させてあげたい」の形が崩れていないか。

つまずきと手当て

  • 文型2と同じく、人を「を」にして「を」を二つ並べる(×母は子どもを好きなおもちゃを選ばせました)。容認でも助詞のきまりは同じ、と文型2の板書の×を指す
  • 「〜させてくれました」の主語と「に」の人を取り違える(×わたしは父に車を運転させてくれました)。許した人が「は/が」、した人(わたし)が「に」、と人の絵に札を付けて確かめる
  • 「〜させてくれました」と「〜てくれました」を混ぜる(「父はわたしに車を運転してくれました」=父が運転した)。だれが運転したかを聞き返して、使役が入るとする人が変わることを確かめる

既習の文型との違い

  • わたしは〈人〉に〈Vて形〉あげます(第24課)「子どもにおもちゃを買ってあげました」は親が買った文、「子どもにおもちゃを選ばせました」は子どもが選んだ文で、どちらも「人に〜を」の形です。動作をするのが話し手側か相手側かで形が変わることを、二つを並べて「だれが選びましたか」で確かめます。「選ばせてあげました」とすると、許してあげた気持ちまで言えます。
  • 〈Vて形〉はいけません(第15課)「ここでパソコンを使ってはいけません」は、相手に直接言う禁止です。使役の否定「店長はアルバイトにパソコンを使わせません」は、だれが許さないかを人に話す文です。ルールの看板の文と、それをあとで友達に説明する文を並べると、二つの使い分けがつかめます。
関連する文型

学習項目 6 〜(さ)せていただけませんか

意味・はたらき文型 5

「早く帰らせていただけませんか」「この部屋を使わせていただけませんか」のように、自分がしたいことを、目上の人に許してもらえるよう丁寧に願い出る言い方です。使役形のて形(帰らせて)に、第26課の「〜ていただけませんか」が付いた形で、「(あなたが)わたしに帰ることを許してくださいませんか」という意味になります。第15課の「〜てもいいですか」も許可を求める言い方ですが、「〜させていただけませんか」のほうがずっと丁寧で、上司や先生への願い出、仕事の場面で使います。前に「〜んですが」で理由を言ってから願い出るのが自然な流れです。

接続

使役形のて形+いただけませんか(帰ります→帰らせて→帰らせていただけませんか/説明します→説明させていただけませんか)。前に「〜んですが、」で理由を添えることが多い

形
熱があるんですが、早く帰らせていただけませんかあしたの会議で、わたしに説明させていただけませんかすみません、ちょっとこのパソコンを使わせていただけませんか対比: 帰ってもいいですか(友達・同じ立場)/帰らせていただけませんか(上司・先生)/帰っていただけませんか(相手に帰るよう頼む=意味が違う)

導入

  • 上司と社員の役で願い出る教師が部長、学生が社員の役になり、学生にお腹を押さえる身ぶりをさせる。教師が先に社員の役で「部長、すみません。お腹が痛いんですが、早く帰らせていただけませんか」と言って見せ、部長役の学生に「いいですよ。お大事に」と返させる。板書は「〜んですが、+使役Vて+いただけませんか」の枠で、使役形の「せ」と「いただけませんか」を色チョークで囲む。
  • 三つの「いただけませんか」を並べる第26課の「書いていただけませんか」(相手が書く)と、この課の「書かせていただけませんか」(わたしが書く)を並べ、それぞれの文の横に「だれが書く?」と書いて学生に答えさせる。最後に「〜てもいいですか」を加え、丁寧さの段を矢印で示す。使役が入ると、する人が「わたし」に変わる、という一点だけを押さえる。

板書案

〜んですが、+ 使役Vて + いただけませんか
熱があるんですが、早く 帰らせて いただけませんか。
書いて いただけませんか(相手が書く)/ 書かせて いただけませんか(わたしが書く)
〔赤〕せ に丸 〔青〕丁寧さの矢印 〜てもいいですか → 〜させていただけませんか
返事 いいですよ/すみません、ちょっと……

場面と発話(自作)

  • アルバイト先で、来週の土曜日に大切な試験がある。店長にシフトのことを相談する。来週の土曜日に試験があるんですが、休ませていただけませんか。
  • 会社の会議で、自分が調べた資料について説明したい。課長にお願いする。この資料はわたしが調べましたから、会議でわたしに説明させていただけませんか。
  • 大学の先生の研究室で、珍しい本を見つけた。少し読みたい。先生、この本を少し読ませていただけませんか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「早く帰りたい」「ここで写真を撮りたい」のような、したいことのカードを見せて「〜させていただけませんか」に言い換える代入練習(練習Bの型)。次に理由のカード(熱がある・家族が来る・試験がある)を組み合わせ、「〜んですが、〜させていただけませんか」「いいですよ/すみません、ちょっと……」の三段のやり取りをペアで回す(練習Cの型)。断られたときの「そうですか。分かりました」まで言わせて場面を閉じる。

  1. 口頭したいことのカード(「この部屋を使います」「あした休みます」「少し早く帰ります」「会議で説明します」)を見せ、全員で「この部屋を使わせていただけませんか」と言う。次に理由のカード(熱がある・家族が国から来る・試験がある)を重ねて「〜んですが、〜させていただけませんか」まで伸ばす。最後に教師が「わたしが書きます」「部長が書きます」とキューを出し、「書かせて」「書いて」を言い分けさせる。
  2. ペア役割カードで。Aは社員・アルバイト・学生のどれかで、理由としたいことが書いてある。Bは上司・店長・先生で、カードに「いいですよ」か断る理由(その日は忙しい・ほかの人が使う)が書いてある。理由→お願い→返事→「分かりました」まで1往復したら役を交替し、カードを替えて3回。
  3. 産出「本番のお願いロールプレイ」。学習者が自分の生活で本当にありそうな願い出(アルバイトを休む・先生の辞書を使う・発表の日を替えてもらう)を一つ選び、教師を相手に演じる。教師はわざと一度断る。教師が見るのは、使役の「せ」が入っているか、理由を「〜んですが」で先に言っているか、断られたときに引き下がる一言が言えるか。

つまずきと手当て

  • 使役を抜いて相手に頼む意味にしてしまう(自分が早く帰りたいのに「部長、早く帰っていただけませんか」と言う)。文法は正しいが、部長に帰ってほしいという逆の意味になる。だれが帰るのかを聞き返し、「わたしがするときは、せ が入る」と板書の色チョークを指す
  • 受身形と取り違える(×休まれていただけませんか)。使役形の作り方の三列の板書に戻り、「れる」ではなく「せる」、と言い直させる
  • 理由を言わずにいきなり願い出る、または「〜から」で強く言う(「試験がありますから、休ませていただけませんか」)。文法の誤りではないが、上司へのお願いは「〜んですが、」でやわらかく始めるほうが自然、と第26課の型に戻す

既習の文型との違い

  • 〈普通形(〜だ→〜な)〉んですが、 / 〈Vて形〉いただけませんか(第26課)「〜ていただけませんか」は相手に動作を頼む言い方で、「書いていただけませんか」なら書くのは相手です。使役が入った「書かせていただけませんか」では、書くのは話し手で、相手には許してほしいと頼んでいます。学習者が「部長、早く帰っていただけませんか」と言うと、文法は正しくても意味が逆になるので、「だれが帰りますか」で確かめます。
  • 〈Vて形〉もいいですか(第15課)「帰ってもいいですか」も許しを求める言い方ですが、友達や同じ立場の人、教室の中の短いやり取りに向きます。上司や先生に、仕事の場面で休みや早退を願い出るときは「〜させていただけませんか」のほうが丁寧です。同じ「帰りたい」を二つの言い方で言わせ、相手のカード(友達・部長)で選ばせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、使役の練習に使う動詞(下ろす・届ける・世話をする など)と、親と子・先生と学生・会社の上下関係を作る語(塾・生徒・親 など)、休みを願い出る場面の語が中心です。動詞は ます形と使役形を1組にして絵カードで出し、自動詞か他動詞かが分かるように、他動詞のカードには「〜を」を書いておくと文型1・2の助詞の練習にそのまま使えます。願い出や返事の言い方(かまいません など)は、文型5のやり取りの中で文ごと覚えさせます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 塾(じゅく) 学校の授業のあとで、子どもが勉強をしに行く所です。 〜へ行く・英語の〜・〜の先生
    子どもの勉強の話。週に何回行っているか聞かれた。
    息子を週に2回、数学の塾へ行かせています。
  • 習います(ならいます) 先生から、知識や技術を教えてもらいます。 ピアノを〜・日本語を〜・先生に〜
    子どもの習い事の話。
    娘には、小さいときからピアノを習わせています。
  • 留学します(りゅうがくします) ほかの国の学校へ行って、しばらく勉強します。 日本へ〜・大学に〜
    日本に来た理由を聞かれた。
    両親は、わたしを日本へ留学させてくれました。
  • 手伝います(てつだいます) ほかの人の仕事をいっしょにして、その人を助けます。 料理を〜・仕事を〜
    子どもに家の仕事をさせているか聞かれた。
    日曜日は、子どもに晩ご飯の料理を手伝わせます。
  • 掃除します(そうじします) 部屋や物のごみやほこりを取って、きれいにします。 部屋を〜・教室を〜
    国の学校と日本の学校の違いを話す。
    日本の学校では、先生が生徒に教室を掃除させます。
  • 届けます(とどけます) 物を、ある人や所まで持って行って渡します。 書類を〜・荷物を〜・うちまで〜
    会社で、お客さんに急いで書類を渡したい。
    課長は新しい社員に、書類をお客さんの会社へ届けさせました。
  • 世話をします(せわをします) 人や動物、植物が困らないように、食べ物や水をあげたり、きれいにしたりします。 犬の〜・花の〜・子どもの〜
    家で犬を飼っている。だれが世話をしているか聞かれた。
    子どもに、毎日犬の世話をさせています。
  • 休みます(やすみます) 仕事や学校に行かないで、その日を過ごします。 会社を〜・学校を〜・一日〜
    来週、大切な試験がある。アルバイト先の店長に話す。
    来週の月曜日に試験があるんですが、休ませていただけませんか。
  • 使います(つかいます) 道具や部屋などで、何かをします。 会議室を〜・パソコンを〜・辞書を〜
    先生の研究室で、調べたいことがある。
    すみません、このパソコンを少し使わせていただけませんか。
  • 遊びます(あそびます) 仕事や勉強をしないで、好きなことをして楽しく過ごします。 公園で〜・友達と〜
    雨の日の子どもの過ごし方を聞かれた。
    雨の日は、子どもをうちの中で遊ばせます。
  • 自由に(じゆうに) ほかの人に決められないで、自分の好きなようにするようすです。 〜使う・〜選ぶ・〜話す
    教室の本棚について、新しい学生に説明する。
    この本棚の本は、学生に自由に読ませています。
  • かまいません(かまいません) 「いいです」「問題はありません」という意味の、許すときの返事です。 ええ、〜よ・はい、〜
    部下に休みのお願いをされた課長が答える。
    「あした休ませていただけませんか。」「ええ、かまいませんよ。」

会話の扱い

会話は、部下が上司の都合を確かめてから、理由を添えて休みをもらえないかと願い出る、という流れです。題の「休ませていただけませんか」が芯で、前に第26課の「〜んですが」で理由を言い、使役のて形に「いただけませんか」を付けて願い出ることを、この会話で通して確かめます。最初はCDか教師の読みで、相手の都合を聞く・理由を言う・お願いする・返事をもらう、の四つの段を板書に書き出してつかませ、役割を替えて二回読んだら、理由(家族が来る・試験がある・病院へ行く)と休む日数を入れ替えて、学生自身のお願いとして再現させます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

宿題は問題の文法部分と、「子どものころ、親がわたしにさせたこと・させてくれたこと」を五文(文型1か2を二つ・文型3か4を二つ・「〜させてくれました」を一つ)で書くこと。あわせて、アルバイトや学校で目上の人に願い出たい場面を一つ考え、「〜んですが、〜させていただけませんか」で一文書いてくる。次のコマの最初に使役形のカードテスト(ます形→使役形・10語、受身形と混ぜて)をしてから作文を発表させ、第49課の尊敬語につなぐ。可能形・受身形・使役形を並べた板書は、敬語の課でも「られる」の見分けに使うので写真に撮っておく。

よくある質問

  • 第48課の使役で、「人を」と「人に」はどう教え分ければいいですか?

    使役の文を作る前に、もとの文(「弟が塾へ行きます」「学生が作文を書きます」)を必ず板書します。もとの文に「を」が無ければ、する人は「を」、「を」があれば「を」が二つ並ばないように、する人は「に」です。「を」は一つの文に一つ、という一本の決まりにまとめると、学習者が自分で判断できます。自動詞でも「に」を使う言い方はありますが、この課では「を」でそろえて練習します。

  • 使役の「強制」と「容認」は、学習者にどう見分けさせますか?

    形はまったく同じなので、形ではなく、する人がそれをしたいかどうかで分けます。導入では同じ文の絵を二枚並べ、片方の子どもにだけ「〜たい」の吹き出しを付けます。容認の話では「〜させてくれました」「〜させてあげます」を付ける、と使い方を一つ持たせておくと、親や先生への感謝の話で誤解されません。

  • 「〜させていただけませんか」と「〜ていただけませんか」の違いは何ですか?

    「〜ていただけませんか」(第26課)は相手に何かをしてもらう頼み、「〜させていただけませんか」は自分がすることを相手に許してもらう頼みです。「書いていただけませんか」と「書かせていただけませんか」を並べ、横に「だれが書く?」と書いて答えさせるのがいちばん早い見せ方です。使役の「せ」が入ると、する人が自分に変わります。

  • 使役形と受身形を混ぜてしまう学習者には、どう対応すればいいですか?

    可能形・受身形・使役形を三列に並べた板書を作り、課の終わりまで消さずに残します。グループI はどちらもない形から作り、違いは「れる」と「せる」の一字なので、その字に印を付けておきます。教師が二つの形を続けて言い、どちらが使役かを手を挙げて答えさせる短い聞き分けを、毎時間の最初に入れると定着します。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習、使役形の作り方、文型1・2(強制)まで、2コマ目は文型3・4(容認)、文型5「〜させていただけませんか」、会話、練習Cと問題です。使役形の作り方が定着しないクラスでは、2コマ目の最初に変換の小テストを5分入れてから容認に入ります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

PRこの教科書

手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。