みんなの日本語 初級Ⅱ 第41課「ご結婚おめでとうございます」の教案
『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「ご結婚おめでとうございます」
第7課の「あげます・もらいます」、第24課の「くれます」と「〜てあげます・〜てもらいます・〜てくれます」に、相手が目上か、自分より下かという関係を重ねる課です。目上の人から受け取るときは「いただきます」、目上の人がわたしにくれるときは「くださいます」、自分の子どもや弟・妹、動物や植物に与えるときは「やります」と、矢印の向きは第24課のまま、相手によって動詞を選び替えます。物の受け渡しで三つの動詞を入れたら、同じ三つを行為(〜ていただきます・〜てくださいます・〜てやります)に広げ、最後に「〜てくださいませんか」で目上の人に丁寧に頼む言い方を足します。第24課の矢印の板書をそのまま出し、動詞の札だけを貼り替えていくのがこの課の芯で、新しい規則を足すのではなく、知っている向きに相手との関係を乗せるだけだと見せると混乱しません。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目7時間90分×2コマ
この課のねらい(Can-do)
- 目上の人から物をもらったことを「〈人〉にいただきました」「〈人〉がくださいました」の両方で言える
- 目上の人にしてもらったことを「〜ていただきました」「〜てくださいました」で話し、お礼やあいさつの中で使える
- 自分の子どもや弟・妹、動物や植物のためにすることを「やります」「〜てやります」で言い、友だちや目上の人には使わないと分かる
- 目上の人や知らない人に「〜てくださいませんか」で丁寧に頼み、引き受ける・断る返事ができる
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入(第24課の復習とつなぎ) | 10分 | 第24課の矢印の板書(わたし⇄友だち と あげます・もらいます・くれます)を復活させ、物と行為の両方で数文ずつ言わせる。次に教師が「この本は、わたしの先生が……」と言いよどみ、目上の人のときは同じ矢印でも別の動詞を使うことに気づかせて文型1へ |
| 文型1・2(いただきます・くださいます) | 35分 | 図の上に「先生」の段を足し、もらいます→いただきます、くれます→くださいます と札を貼り替える。同じ出来事を二つの文で言い、助詞(〈人〉に/〈人〉が)の違いを第24課と同じ色分けで確かめる。「くださります」にならないことはここで一度だけ板書 |
| 文型3(やります) | 15分 | 図の下に「子ども・弟・妹/犬・花」の段を足し、あげます→やります。教室の花に水をやる動作で導入し、今は あげます を使う人も多いことを添える。1コマ目はここまで |
| 文型4・5(〜ていただきます・〜てくださいます) | 40分 | 文型1・2の矢印に行為を書き足す。教師が学生に「先生役」を頼み、してもらったことを二通りに言わせる。受ける人の助詞(わたしに/わたしを/わたしの〜を)は第24課と同じ |
| 文型6(〜てやります) | 20分 | 家族や動物の世話の絵カードで「〜てやりました」。友だちや目上の人には使わず、相手に申し出るときは「〜ましょうか」に戻ることを確認 |
| 文型7(〜てくださいませんか) | 30分 | 「〜てください」「〜てくださいませんか」「〜ていただけませんか(第26課)」を丁寧さの順に板書。目上の人に頼む場面で、前置きの「すみませんが」「〜んですが」と返事の仕方までセットで |
| 会話・練習C・問題 | 30分 | 会話はお祝いの席のあいさつ。練習Cは「もらった物を紹介する」「してもらったことにお礼を言う」「目上の人に頼む」の三つの場面。問題の聴解は授業内で、書く部分は宿題に |
学習項目 1 わたしは〈人〉にNをいただきます
意味・はたらき文型 1
「わたしは先生に辞書をいただきました」のように、目上の人や、あまり親しくない人から物を受け取るときの言い方です。矢印の向きと意味は第7課の「もらいます」と同じで、受け取る自分の動作を低くして言うことで、渡してくれた相手を高める謙譲語(へりくだって言うことば)です。渡した人には「もらいます」と同じく「に」が付き、「から」を使うこともあります。主語はいつも受け取る側の「わたし」なので、言わないことが多いです。
接続
わたしは+〈人〉+に(から)+N+を+いただきます(いただきました・いただきません。主語は受け取る人)
形
わたしは〈人〉にNをいただきました〈人〉からNをいただきました(「に」の代わりに「から」)このNは〈人〉にいただきました(物を話題にした形)
導入
- 第24課の図に「目上」の段を足す第24課の「わたし」と「友だち」の図の上に、一段高いところへ「先生」の絵を描く。先生からわたしへ下りてくる矢印を引き、わたしの側から見た動詞として「もらいます」と書いてから、その札を「いただきます」に貼り替える。向きは同じで、相手が目上なので言い方を低くする、と添える。この図は課の終わりまで消さない。
- 教師が配った物で言わせる教師が学生一人ずつにあめやプリントを手渡し、受け取った学生に「先生に何をもらいましたか」と聞いて「あめをもらいました」と答えさせる。続けて教師が「先生ですから……」と言い、図の札を指して「先生にあめをいただきました」と言い直させる。次に教師の持ち物(本やペン)を見せて「この本は、わたしの先生にいただきました」と、物を話題にした形も出しておく。
板書案
わたしは + 〈人〉 + に(から) + N を + いただきます
わたしは 先生に 辞書を いただきました。
〔赤〕先生 ↓ わたし (上の段から下りる矢印)
もらいます → 〔赤〕いただきます (札を貼り替える)
〔青〕主語は いつも 受け取る人(わたし)
場面と発話(自作)
- 日本語学校を卒業するとき、先生が辞書をくれた。新しい学校で友だちにその辞書のことを聞かれた。この辞書は、前の学校の先生にいただきました。
- 結婚した留学生が、国の家族に電話でお祝いの話をしている。アルバイト先の社長から時計をもらった。お祝いに、社長に時計をいただきました。
- 隣の家のおばあさんから、庭で作った野菜をもらった。ルームメートに話す。隣のおばあさんに野菜をいただきましたから、晩ご飯に使いましょう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
目上の人(先生・社長・隣のおばあさん)の絵と物の絵カードを組にして「わたしは〜に〜をいただきました」の代入練習(練習Bの型)。次に友だち・家族のカードを混ぜ、相手によって「もらいました」と「いただきました」を選ばせる。最後に、目上の人からもらった物を一つ紹介し合うやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭目上の人の絵カード(先生・社長・隣のおばあさん)と物の絵カード(辞書・時計・野菜・絵はがき)を組にして出し、「先生・辞書」とキューを出す → 全員で「先生に辞書をいただきました」。次に教師が学生の机の上の物を指して「それは?」と聞き、「〜にいただきました」と物を話題にした形でも答えさせる。最後に友だち・家族の絵を混ぜ、「もらいました」と「いただきました」を一人ずつ選んで言わせる。
- ペアAは「だれに、何を」が書いてあるカードを持ち、Bは持っていない(情報差)。Bが「その時計、すてきですね。だれにもらいましたか」と聞き、Aがカードを見て「社長にいただきました」か「友だちにもらいました」かを選んで答える。3枚で役を交替する。Bは答えの動詞が相手に合っているかを聞き、合っていなければ図を指して返す。
- 産出「宝物しょうかい」。学生が自分の持ち物や国の家にある大切な物を一つ選び、「これは〜に(から)いただきました。〜のときにいただきました」と2〜3文で紹介する。教師が見るのは、主語が受け取る自分になっているか、目上の人には「いただきました」、家族と友だちには「もらいました」になっているか、物を話題にした形「このNは〜に」が言えるか。
つまずきと手当て
- 渡した人を主語にして「×先生がわたしに辞書をいただきました」と言う。「いただきます」は受け取る人の動詞、と図の矢印の先(わたし)を指して、主語を「わたし」に直させる
- 自分の家族のことを外の人に話すときに「母に時計をいただきました」と言ってしまう。文としては正しいが、自分の側の家族を高めることになり、聞く人に不自然に聞こえる。外の人に話すときは家族は自分の側の人なので「もらいました」でよい、と図の「わたし」の側に家族を描き足して示す
- 目上の人なのに「もらいました」のまま言う。誤りではないが、本人やその知り合いの前では失礼に聞こえることがある、と場面を添えて伝え、ここでは「いただきました」に言い直す練習を重ねる
既習の文型との違い
- わたしは〈人〉にNをもらいました(第7課)形と矢印の向きは同じで、変わるのは相手との関係だけです。友だちや家族なら「もらいました」、先生や社長、あまり親しくない人なら「いただきました」にします。家族のことを外の人に話すときに「母に時計をいただきました」と言う学習者がいるので、家族は自分の側の人だと図で確かめます。
- 〈人〉が(わたしに)Nをくださいます(この課の文型2)同じ出来事を、受け取ったわたしを主語にすれば「〜にいただきました」、くれた先生を主語にすれば「〜がくださいました」と言います。二つが混ざって「*先生がわたしに辞書をいただきました」「*先生にくださいました」になりやすいので、「に+いただく/が+くださる」を二行で板書に残します。
関連する文型
学習項目 2 〈人〉が(わたしに)Nをくださいます
意味・はたらき文型 2
「先生がわたしに本をくださいました」のように、目上の人が話し手に物をくれるときの言い方で、第24課の「くれます」を尊敬語(相手を高めることば)にしたものです。矢印の向きは「くれます」と同じで、外から「わたし」に向かってきます。受け取るのが話し手の子どもなど自分の側の人のときにも使えます(先生が子どもに絵本をくださいました)。辞書形は「くださる」ですが、ます形は「くださります」ではなく「くださいます」になる特別な動詞で、第14課の「〜てください」の「ください」もこの動詞から来ています。
接続
〈人〉+が(は)+(わたしに)+N+を+くださいます(くださいました。ます形は「くださいます」。「わたしに」は言わないことが多い)
形
〈人〉がわたしにNをくださいましたこのNは〈人〉がくださいました(物を話題にした形)〈人〉が子どもにNをくださいました(自分の家族が受け取る)くださいます(×くださります)
導入
- 同じ出来事を二つの文で文型1の「わたしは先生にあめをいただきました」の下に、「先生がわたしにあめをくださいました」と書く。第24課の「〜にもらいました/〜がくれました」と同じ組み合わせだと、上の段の板書を指して見せ、「に」と「が」を同じ色で囲む。図の「くれます」の札を「くださいます」に貼り替え、これで先生の段の矢印に二つの動詞がそろう。
- 「くださいます」の形をはっきり板書に「くださる → ×くださります ○くださいます」と書き、ます形だけ形が変わることを一度だけ示す。続けて「〜てください」を指し、「この ください と同じことば」と言うと、学生は形を覚えやすい。そのあと教師の持ち物(もらった手紙や絵はがき)を見せ、「この絵はがきは、わたしの先生がくださいました」と物を話題にした形まで出す。
板書案
〈人〉が + (わたしに) + N を + くださいます
先生が わたしに 本を くださいました。
くれます → 〔赤〕くださいます (札を貼り替える)
くださる → ×くださります 〔赤〕○くださいます
〔青〕〜に いただきました / 〜が くださいました (同じ出来事)
場面と発話(自作)
- 病気で寝ていたとき、アルバイト先の社長がお見舞いに来た。元気になってから友だちに話す。社長がお見舞いに花をくださいました。
- 子どもが幼稚園から絵本を持って帰ってきた。同じ幼稚園のお母さんに聞かれる。先生が子どもに絵本をくださいました。
- クラスメートに、机の上のきれいな絵はがきのことを聞かれた。国に帰った前の先生から届いたものだ。この絵はがきは、前の先生がくださいました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
文型1の絵カードをそのまま使い、「〜に〜をいただきました」を「〜が〜をくださいました」に言い換える練習(練習Bの型)。次に物の絵カードを見せて「このNはだれがくださいましたか」「〜がくださいました」の問答へ。最後に、友だち・家族・目上の人のカードを混ぜて「くれました」「くださいました」を選ばせる。
- 口頭文型1の絵カードをそのまま使い、教師が「先生に辞書をいただきました」と言う → 学生が「先生が辞書をくださいました」と言い換える。次に物の絵カードだけ(花・絵本・時計)を見せて「この花は、だれがくださいましたか」と聞き、「社長がくださいました」と答えさせる。「くださいます・くださいました・くださいませんでした」の形だけを全員で3回ずつ言う時間も短く入れる。
- ペアAが「人と物」のカードを1枚引き、「〜に〜をいただきました」で言う。Bは同じ出来事を「〜が〜をくださいましたか。よかったですね」と言い換えて返す。友だち・家族のカードも混ぜ、Bはくれた人に合わせて「くれましたか」と「くださいましたか」を選ぶ。5枚で交替する。
- 産出「お見舞い・お祝いの話」。病気のときや誕生日・結婚・卒業のときに、だれが何をくれたかを一つ思い出し、「〜のとき、〜が〜をくださいました。うれしかったです」と話す。教師が見るのは、くれた人に「が」が付いているか、「くださります」になっていないか、家族や友だちのことに「くださいました」を使っていないか。
つまずきと手当て
- ます形を「×くださります」と言う。辞書形からの類推で出やすい。板書の「×くださります ○くださいます」と「〜てください」を並べて指し、口で何度か言わせる
- くれた人に「に」を付けて「×先生にくださいました」と言う。「いただきました」の「に」と混ざる誤り。「〜に いただきました/〜が くださいました」を二行で板書に残して指す
- 自分が目上の人に渡すときに「×わたしは先生に花をくださいました」と言う。矢印の向きが逆なので「くださいます」は使えない。渡す向きは第7課の「あげました」で文は正しい、と図の矢印の根元を指して確かめる。ただし先生本人に向かって「花をあげました」と言うと恩着せがましく聞こえることがあるので、本人の前では「どうぞ」と言って渡せばよい、と一言添える
- 自分の家族のことを外の人に話すときに「父が時計をくださいました」と言ってしまう。文としては正しいが、外の人には家族を高めて聞こえる。家族には「くれました」でよい、と文型1と同じ手当てをする
既習の文型との違い
- 〈人〉はわたしにNをくれます(第24課)矢印の向き(外からわたしへ)は同じで、くれた人が目上なら「くださいます」にします。「くれます」と同じく、主語にはくれた人が来て、受け取るのは話し手か話し手の側の人だけです。自分が目上の人に渡すときに「*わたしは先生に花をくださいました」と言う誤りは、第24課の「くれます」で起きた向きの取り違えと同じです。
- 〈Vて形〉ください(第14課)第14課の「〜てください」の「ください」は、この「くださいます」の命令の形から来ています。形がそろって見えることを使うと、「くださいます」のます形が覚えやすくなります。ただし「〜てください」は相手に頼む形で、文型2は相手がもうくれた出来事を言う形なので、場面は違います。
関連する文型
学習項目 3 わたしは〜にNをやります
意味・はたらき文型 3
「わたしは犬にえさをやります」「花に水をやります」のように、動物や植物、自分の子どもや弟・妹など、自分より下の人に物を与えるときの言い方です。矢印の向きは第7課の「あげます」と同じです。ただ、今の日本語では動物や植物にも「あげます」を使う人が多く、人に「やります」を使うとぞんざいに聞こえることもあります。そのため、自分から使うのは動物・植物と、自分の家族の年下の人の話に限ると教えるのが安全です。
接続
わたしは+〈年下の家族・動物・植物〉+に+N+を+やります(やりました)
形
わたしは犬にえさをやります毎朝、花に水をやります弟に古い自転車をやりました(今は あげます も多い)花に水をあげます
導入
- 図に「下」の段を足す第24課の図の「わたし」の下に、子ども・犬・花の絵を描き、わたしから下へ向かう矢印を引く。先に「あげます」と書いてから「やります」の札を横に足し、「下の人や、動物・花のとき」と添える。上の段(いただきます・くださいます)と下の段(やります)を一枚の図で見せると、矢印の向きと相手の関係の二つで動詞が決まることが目で分かる。
- 教室の花に水をやる教室に花の鉢やコップを置いておき、教師が水をやりながら「花に水をやります」と言う。学生に順番に同じ動作をさせて言わせ、次に犬や猫の絵カードで「犬にえさをやります」。最後に「花に水をあげます、と言う人も多い」と一言だけ添えて、どちらも聞いて分かるようにしておく。
板書案
わたしは + 〈子ども・弟・妹/犬・花〉 + に + N を + やります
毎朝 花に 水を やります。
わたし ↓ 〔赤〕子ども・犬・花 (下の段へ下りる矢印)
あげます → 〔赤〕やります (今は あげます も多い)
〔青〕友だち・先生には 使わない
場面と発話(自作)
- 朝、何をしてから学校に来るのか、クラスメートに聞かれた。家で犬を飼っている。毎朝、犬にえさをやってから、学校に来ます。
- 友だちが部屋に来て、窓のそばの花が元気だと言った。毎日水をやっていますから。
- 国に帰ったとき、使わなくなった物を家族にあげた話をしている。わたしの古いパソコンは、妹にやりました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
動物・植物・年下の家族の絵と物の絵カードで「〜に〜をやります」の代入練習(練習Bの型)。次に先生・友だち・子ども・犬のカードを混ぜて出し、「いただきます/もらいます/やります/あげます」のどれかを図を見ながら選ばせる。最後に、ペットや植物の世話について「毎日何をやりますか」と聞き合うやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭教室の花の鉢とコップの水で、教師が動作をしながら「花に水をやります」。続けて絵カード(犬・えさ/魚・えさ/子ども・おかし/弟・古い自転車)を出し、「犬・えさ」のキューで全員が「犬にえさをやります」と言う。最後に先生・友だち・子ども・犬のカードを順不同で出し、一人ずつ「いただきます・もらいます・あげます・やります」のどれになるかを言わせる。
- ペアAは動物や植物を育てている人の役、Bは旅行の間に世話を頼まれる人の役。Bが「えさは何をやりますか」「水は毎日やりますか」と質問し、Aが答える。Bはメモを取り、最後にAに確かめて読み上げる。生き物のカード(犬・猫・魚・花)を替えて役を交替する。
- 産出「わたしの家の生き物」。自分の家や国の家族が飼っている動物・育てている植物について、「何に、何を、いつやるか」を3文で話す。飼っていない学生は、子どものころのことや、飼いたい動物で話す。教師が見るのは、「〜に〜を」の助詞、友だちや目上の人に「やります」を使っていないか、「宿題をやります」のような「する」の意味と混ざっていないか。
つまずきと手当て
- 友だちや目上の人について「先生に本をやりました」「友だちにお土産をやりました」と言ってしまう。文の形は正しいが、相手を下に見ているように聞こえ、失礼になる。図の下の段(子ども・動物・花)だけに使う、と指して「あげました」に直させる
- 「宿題をやります」「仕事をやります」の「やります」(=します)と混ざって意味が分からなくなる。話し言葉では「する」の意味の「やる」もよく使うが、この課の「やります」は「〜に〜をやります」と、だれかに物を与える形、と助詞の形で見分けさせる
- 学生が「花に水をあげます」と言ったのを、教師が誤りとして直してしまう。今はふつうに使われる言い方なので、どちらも正しいと認める
既習の文型との違い
- わたしは〈人〉にNをあげます(第7課)矢印の向きと助詞は同じで、相手が年下の家族や動物・植物のときに「やります」にします。今は動物や花にも「あげます」を使う人が多いので、「あげます」と言った学習者を直す必要はありません。反対に、友だちに「お土産をやりました」と言うと相手を下に見ているように聞こえるので、人に向けては使わせません。
- わたしは〈人〉にNをいただきます(この課の文型1)文型1は上の段の人から受け取る向き、文型3は下の段へ与える向きで、矢印も主語の役も逆です。図の上の段と下の段を一枚で見せると、「相手が上か下か」と「向き」の二つで動詞が決まることが分かります。学習者が「犬にえさをいただきました」のように段を取り違えたら、図の矢印を指でたどらせます。
関連する文型
学習項目 4 〈Vて形〉いただきます
意味・はたらき文型 4
目上の人や、あまり親しくない人に何かをしてもらったことを、受ける側(わたし)を主語にして言う形で、第24課の「〜てもらいます」の謙譲の言い方です。してくれた人には「に」が付きます。「〜てもらいます」と同じく、してもらってありがたいという気持ちが入るので、お礼やあいさつ、スピーチでよく使います。第26課で頼むときに使った「〜ていただけませんか」は、この「いただきます」を可能形にして疑問にした形だった、とここでつなげると、形の理由が分かります。
接続
わたしは+〈人〉+に+Vて形+いただきます(いただきました。目的語などはもとの動詞のまま)
形
わたしは〈人〉にVていただきましたわたしは〈人〉にNをVていただきました〈人〉に〈場所〉までVていただきました(第26課の頼み方)Vていただけませんか ← いただけます(可能形)
導入
- 教師が「先生役」の学生にしてもらう学生の一人に「先生」の名札を付けてもらい、教師がその学生に「この漢字の読み方を教えてください」と頼んで、教えてもらう。終わったら教師が「わたしは先生に漢字の読み方を教えていただきました」と言い、図の上の段の矢印のそばに「教える」と行為を書き足す。第24課の「〜てもらいました」の文を上に並べ、「もらいました」が「いただきました」に変わっただけだと示す。
- 第26課の頼み方とつなぐ板書に第26課の「〜ていただけませんか」を書き、「いただきます」の可能形が「いただけます」であることを第27課の可能形の作り方で確かめる。「してもらうことが、できますか」と聞いている形なので丁寧になる、と短く添える。学生が覚えていた頼み方の形が、この課の動詞から作られていたと分かると、文型7の比べ方もすっと入る。
板書案
わたしは + 〈人〉 + に + Vて + いただきます
わたしは 先生に 作文を 直して いただきました。
〔赤〕先生 ↓ わたし (矢印のそばに「直す」と行為を書く)
Vて もらいました → Vて 〔赤〕いただきました
〔青〕いただきます → いただけます(可能形)→ いただけませんか(第26課)
場面と発話(自作)
- 日本語学校の卒業式のあと、先生にお礼を言う。先生にいろいろ教えていただきました。ありがとうございました。
- 初めて行く町で道が分からなかったが、知らない人が駅まで一緒に来た。次の日、友だちに話す。知らない人に駅まで連れて行っていただきました。
- 大学に出す作文について、クラスメートに聞かれた。作文は先生に直していただきましたから、大丈夫です。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
目上の人の絵と行為の絵カード(作文を直す・道を教える・写真を撮る・駅まで送る など)を組にして「〜に〜ていただきました」の代入練習(練習Bの型)。次に友だちのカードを混ぜて「〜てもらいました」と言い分けさせる。最後に、日本に来て目上の人にしてもらったことを一つずつ話し、聞いた人が「よかったですね」と返すやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭目上の人の絵と行為の絵カード(作文を直す・道を教える・写真を撮る・駅まで送る・漢字の読み方を教える)を組にし、「社長・駅まで送る」とキューを出す → 全員で「社長に駅まで送っていただきました」。先にて形だけを言わせてから文にする段(送って → 送っていただきました)を入れ、て形の誤りをここで拾う。最後に友だちのカードを混ぜて「〜てもらいました」と言い分けさせる。
- ペアAは「困ったこと」のカード(道が分からない・作文が難しい・荷物が多い)を持ち、Bは「助けてくれた人」のカード(先生・知らない人・隣の人)を持つ。Aが「きのう〜て困りました」と言い、Bが自分のカードを見せて「だれに手伝っていただきましたか」と聞く。Aはカードの人に合わせて「〜に〜ていただきました」で答える。3往復で交替する。
- 産出「ありがとうスピーチ」。日本に来てから目上の人にしてもらったことを二つ選び、「日本に来てから、〜に〜ていただきました。〜にも〜ていただきました。本当にありがとうございました」と短いお礼のスピーチにして発表する。教師が見るのは、してくれた人に「に」が付いているか、主語がわたしのままか、て形の形、家族のことに「いただきました」を使っていないか。
つまずきと手当て
- してくれた人に「が」を付けて「×先生が作文を直していただきました」と言う。「いただきます」はしてもらう人(わたし)の動詞、と主語に下線を引いて「先生に」に直させる
- 主語と向きが逆になり「×先生はわたしに日本語を教えていただきました」と言う。だれが助かったのか、と聞き返し、主語を「わたし」に戻させる。先生を主語にしたいときは文型5の「〜てくださいました」、と次の文型へつなぐ
- 自分の家族にしてもらったことを、外の人に話すときに「父に駅まで送っていただきました」と言ってしまう。文としては正しいが、外の人には家族を高めて聞こえる。家族は「〜てもらいました」でよい、と文型1と同じ手当てをする
既習の文型との違い
- わたしは〈人〉に〈Vて形〉もらいます(第24課)助詞と主語(してもらうわたし)は同じで、してくれた人が目上なら「もらいます」を「いただきます」に替えます。どちらにも「ありがたい」という気持ちが入るので、お礼の場面では目上の人に「〜てもらいました」より「〜ていただきました」が自然です。家族や友だちには「〜てもらいました」に戻す、と相手のカードで切り替えさせます。
- 〈普通形(〜だ→〜な)〉んですが、 / 〈Vて形〉いただけませんか(第26課)第26課の頼み方は、この課の「いただきます」を可能形「いただけます」にして否定の疑問にした形です。文型4はもうしてもらった出来事を言う形、第26課はこれからしてほしいことを頼む形で、時の向きが違います。学習者が「*見ていただきませんか」と言ったら、可能形の「け」が抜けていると板書の矢印で示します。
関連する文型
学習項目 5 〈Vて形〉くださいます
意味・はたらき文型 5
目上の人が自分のために何かをしてくれたことを、してくれた人を主語にして言う形で、第24課の「〜てくれます」の尊敬の言い方です。文型4の「〜ていただきます」と同じ出来事を、見る側を変えて言ったものと考えると分かりやすく、どちらにも「ありがたい」という気持ちが入ります。受ける人の示し方は第24課と同じで、もとの動詞の助詞のまま(わたしに・わたしを・わたしのNを)です。受けるのが自分の子どもなど自分の側の人のときにも使えます。
接続
〈人〉+が(は)+Vて形+くださいます(受ける人は動詞に合わせて わたしに/わたしを/わたしのNを。言わないことが多い)
形
〈人〉が(わたしに)NをVてくださいました〈人〉がわたしを〈場所〉までVてくださいました〈人〉がわたしのNをVてくださいましただれがVてくださいましたか
導入
- 文型4の文を言い直す文型4で板書した「わたしは先生に漢字の読み方を教えていただきました」の下に、「先生が漢字の読み方を教えてくださいました」と書く。第24課の「〜てもらいました/〜てくれました」の二行と並べて見せ、主語が変わると「に」が「が」に変わることを同じ色で囲む。どちらの文も先生にお礼を言いたい気持ちだ、と添える。
- 受ける人の助詞は第24課のまま絵カード三枚(傘を貸す・駅まで送る・かばんを持つ)を、今度は目上の人の絵と組にして見せ、「〜がわたしに傘を貸してくださいました」「〜がわたしを駅まで送ってくださいました」「〜がわたしのかばんを持ってくださいました」と言う。第24課で書いた三つの文の「くれました」を「くださいました」に貼り替えるだけだと示し、新しい規則はないことを確かめる。
板書案
〈人〉が + Vて + くださいます
先生が 作文を 直して くださいました。
〔青〕わたしは 先生に 直して いただきました。 (同じ出来事)
〔赤〕に ⇔ が (主語が替わると助詞も替わる)
受ける人: わたしに 貸す / わたしを 送る / わたしの N を 持つ
場面と発話(自作)
- 急に雨が降ってきて困っていたら、隣の家のおばあさんが傘を出してくれた。家に帰ってルームメートに話す。隣のおばあさんが傘を貸してくださいました。
- アルバイトの帰りが遅くなった日、店の社長が車で家まで送った。次の日、友だちに話す。社長がわたしをうちまで送ってくださいました。
- 子どもが幼稚園で描いた絵を家に持って帰ってきた。家族に話す。先生が子どもの絵を見て、ほめてくださいました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
文型4の絵カードをそのまま使い、「〜に〜ていただきました」を「〜が〜てくださいました」に言い換える練習(練習Bの型)。続けて「貸す・送る・持つ・案内する・直す」で受ける人の助詞を変える練習へ。最後に、お世話になった目上の人について「〜が〜てくださいました」で紹介し合うやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭文型4の絵カードを使い、教師が「先生に作文を直していただきました」と言う → 学生が「先生が作文を直してくださいました」と言い換える。次に受ける人の助詞が違う三枚(傘を貸す/駅まで送る/かばんを持つ)を目上の人と組にして出し、「わたしに」「わたしを」「わたしの〜を」を入れて言わせる。最後に「だれが〜てくださいましたか」の質問に、絵を見て答えさせる。
- ペアAが「〜に〜ていただきました」の文で言い、Bが同じ出来事を「〜が〜てくださいましたか。よかったですね」と言い換えて返す。慣れたら役を逆にし、Aが「〜が〜てくださいました」、Bが「〜に〜ていただきましたか」と言い換える。カードには目上の人と友だちを混ぜ、してくれた人によっては「くれました」に戻す判断もさせる。
- 産出「お世話になった人しょうかい」。お世話になった目上の人(先生・アルバイト先の人・ホームステイの家族など)を一人選び、その人がしてくれたことを「〜が〜てくださいました」で三つ挙げて紹介する。教師が見るのは、してくれた人に「が」が付いているか、受ける人の助詞が動詞に合っているか、途中で「〜ていただきました」に言い換えたときに主語と助詞もそろって変わっているか。
つまずきと手当て
- してくれた人に「に」を付けて「×先生に作文を直してくださいました」と言う。文型4の「に」と混ざる誤り。「〜に 〜ていただきました/〜が 〜てくださいました」を二行で板書に残して指す
- 受ける人をいつも「わたしに」にして「×社長がわたしに駅まで送ってくださいました」と言う。「人を送ります」なら「わたしを」、と第24課の三つの文に戻って確かめる
- 外の人に話すときに、自分の家族を主語にして「母が料理を作ってくださいました」と言ってしまう。文としては正しいが、外の人には家族を高めて聞こえる。家族は「〜てくれました」でよい、と文型1・2と同じ図で確かめる
既習の文型との違い
- 〈人〉は〈Vて形〉くれます(第24課)主語(してくれた人)と受ける人の助詞は同じで、してくれた人が目上なら「くれます」を「くださいます」にします。家族のことを外の人に話すときに「母が料理を作ってくださいました」と言う学習者がいるので、家族は「〜てくれました」でよいと、図の「わたし」の側を指して確かめます。
- 〈Vて形〉いただきます(この課の文型4)同じ出来事を、してもらったわたしから言えば「〜に〜ていただきました」、してくれた人から言えば「〜が〜てくださいました」です。どちらにもありがたい気持ちが入り、意味の差はほとんどありません。混ざると「*先生に直してくださいました」「*先生が直していただきました」になるので、「に+いただく/が+くださる」の組を板書から消さずに残します。
関連する文型
学習項目 6 〈Vて形〉やります
意味・はたらき文型 6
自分の子どもや弟・妹、動物のために何かをすることを言う形で、第24課の「〜てあげます」と同じ向きです。「子どもに絵本を読んでやりました」「犬を散歩に連れて行ってやります」のように、受ける人の示し方はもとの動詞の助詞のままです。文型3の「やります」と同じく、今は年下の家族や動物にも「〜てあげます」を使う人が多いので、聞いて分かることを中心にし、自分で使うのは家族や動物の話に限ると教えます。友だちや目上の人に使うと、相手を下に見ていると聞こえます。
接続
わたしは+〈年下の家族・動物〉に(を/のNを)+Vて形+やります(受ける人は動詞に合わせる)
形
わたしは子どもに絵本を読んでやりました犬を散歩に連れて行ってやります弟の宿題を見てやりました(今は あげます も多い)子どもに絵本を読んであげました
導入
- 家族や動物の世話の話から教師が自分の家族やペットの写真(または絵)を見せ、「きのう、子どもに本を読んでやりました」「夜、犬を散歩に連れて行ってやりました」と話す。図の下の段の矢印に行為を書き足して「〜てやります」と書き、第24課の「〜てあげます」と同じ向きだと示す。上の段の「〜ていただきます・〜てくださいます」と並べ、これで三つの段すべてに て形が付いた形がそろう、と図をまとめる。
- 友だちには使わない、を一度見せる教師が学生の重そうな荷物を指して、わざと「荷物を持ってやります」と言い、学生の反応を見る。次に「荷物を持ちましょうか」と言い直し、相手に申し出るときは第14課の「〜ましょうか」、と第24課と同じ対比を板書する。「〜てやります」は、家族や動物のことを人に話すときだけ、と枠で囲む。
板書案
わたしは + 〈子ども・弟・妹/犬〉 + に(を) + Vて + やります
子どもに 絵本を 読んで やりました。
犬を 散歩に 連れて 行って やります。
〔赤〕友だち・先生に「持って やります」 → 「持ちましょうか」
〔青〕上の段 Vて いただきます・くださいます / 下の段 Vて やります
場面と発話(自作)
- 週末に何をしたか、クラスメートに聞かれた。小さい子どもがいる。日曜日は、子どもを動物園に連れて行ってやりました。
- 家族の話をしている。高校生の妹が日本語を勉強し始めた。国に帰ったとき、妹にひらがなを教えてやりました。
- 子どもの誕生日に何をあげたか、友だちに聞かれた。ケーキを作ってやりました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
家族・動物の世話の絵カード(本を読む・散歩に連れて行く・宿題を見る・おもちゃを作る)で「〜に〜てやりました」の代入練習(練習Bの型)。次に先生・友だち・子ども・犬のカードを混ぜ、「〜ていただきました/〜てもらいました/〜てやりました/〜ましょうか」を選ばせる。最後に、家族やペットのためにしていることを話すやり取り(練習Cの型)にする。
- 口頭家族や動物の世話の絵カード(子どもに絵本を読む・犬を散歩に連れて行く・弟の宿題を見る・妹に料理を作る)を出し、「子ども・絵本を読む」とキューを出す → 全員で「子どもに絵本を読んでやりました」。次に受ける人の助詞が違うカード(犬を連れて行く/弟の宿題を見る)で、助詞を替えて言わせる。最後に先生・友だち・子ども・犬のカードを混ぜ、「〜ていただきました/〜てもらいました/〜てやりました/〜ましょうか」のどれかを一人ずつ選ばせる。
- ペアAは小さい子どもかペットがいる人の役、Bはその友だちの役。Bが「週末、何をしましたか」と聞き、Aが場面カード(動物園・公園・誕生日)を見て「〜てやりました」で二つ答える。次にBの荷物が重いという場面カードを出し、Aが申し出る役になって「持ちましょうか」に切り替える。相手が友だちに替わったところで「〜てやります」を使わない判断を言わせる。
- 産出「家族のためにしたこと日記」。国の家族や自分の子ども・弟・妹、ペットのために最近したことを、日記の形で3文書いて読む。家族がいっしょにいない学生は、子どものころ弟や妹にしたことで書く。教師が見るのは、受ける人の助詞が動詞に合っているか、相手が年下の家族か動物になっているか、友だちのことに使っていないか。
つまずきと手当て
- 友だちや目上の人に「先生、かばんを持ってやります」と言ってしまう。相手を下に見る言い方になり、とても失礼に聞こえる。「持ちましょうか」に言い換えさせ、「〜てやります」は家族や動物のことを人に話すときだけ、と枠の板書に戻す
- 受ける人の助詞を「に」に固定して「×犬に散歩に連れて行ってやりました」と言う。「犬を連れて行きます」なので「犬を」、と第24課の三つの文と同じように確かめる
- 「〜てやる」を、まんがやドラマで聞く強い言い方(けんかの場面など)と同じだと思って怖がる。この課の「〜てやります」は家族や動物の世話の話で、ふつうの言い方だと場面で示す
既習の文型との違い
- わたしは〈人〉に〈Vて形〉あげます(第24課)向きと助詞は同じで、相手が年下の家族や動物のときに「〜てやります」にできます。今は子どもやペットにも「〜てあげます」を使う人が多いので、学習者が「〜てあげました」と言っても直しません。この課では、聞いて分かることと、家族や動物の話で自分も言えることを目標にします。
- 〈Vます形〉ましょうか(第14課)相手のためにすることを相手に申し出るときは、「〜てやります」でも「〜てあげます」でもなく「〜ましょうか」を使います。「荷物を持ってやります」は相手を下に見ているように聞こえ、「〜てあげます」でも恩着せがましく聞こえることがあります。申し出は「〜ましょうか」、あとで家族のことを人に話すときは「〜てやりました」、と場面で分けます。
関連する文型
学習項目 7 〈Vて形〉くださいませんか
意味・はたらき文型 7
目上の人や知らない人に、丁寧に頼むときの言い方です。第14課の「〜てください」も丁寧な形ですが、相手にしてほしいことをそのまま言う形なので、目上の人に頼むには少し強く聞こえることがあります。「〜てくださいませんか」は、文型2の「くださいます」を否定の疑問にして、するかどうかを相手に決めてもらう形にしたもので、ずっと柔らかくなります。第26課の「〜ていただけませんか」も同じくらい丁寧な頼み方で、どちらを使ってもよく、「いただけませんか」のほうが少し丁寧だと感じる人が多いようです。
接続
Vて形+くださいませんか(前に「すみませんが、」や第26課の「〜んですが、」を置くことが多い)
形
すみませんが、Vてくださいませんか〜んですが、Vてくださいませんか丁寧さの順: Vてください → Vてくださいませんか → Vていただけませんか返事: ええ、いいですよ/すみません、ちょっと……
導入
- 三つの頼み方を並べる教師が先生役の学生に、まず「この漢字を書いてください」と言い、学生の顔を見て「先生に、ちょっと強いですね」と首をかしげる。次に「すみませんが、この漢字を書いてくださいませんか」と言い直す。板書に「〜てください」「〜てくださいませんか」「〜ていただけませんか(第26課)」を階段のように下から上へ並べ、上ほど丁寧と矢印で示す。「くださいませんか」の「ません」を色チョークで囲み、相手に選んでもらう形だと添える。
- 前置きと返事をセットで頼む文だけを練習すると会話にならないので、前置き(すみませんが/〜んですが)と返事(ええ、いいですよ/すみません、ちょっと……)を板書の左右に書いておく。教師が頼む役、学生が先生役になって、引き受ける返事と断る返事を一回ずつ通す。第26課の「〜んですが、〜ていただけませんか」と同じ流れだと気づかせる。
板書案
(すみませんが、/〜んですが、) + Vて + くださいませんか
すみませんが、写真を 撮って くださいませんか。
〔青〕丁寧さの階段: Vて ください → Vて くださいませんか → Vて いただけませんか(第26課)
〔赤〕ません か (相手に決めてもらう形)
返事: 〔青〕ええ、いいですよ。 / すみません、ちょっと……。
場面と発話(自作)
- 初めて行く町で、駅の前で地図を見ても場所が分からない。近くにいる人に声をかける。すみません、この地図の場所を教えてくださいませんか。
- 大学に出す作文を書いた。日本語の先生に頼む。作文を書いたんですが、ちょっと見てくださいませんか。
- 来週から一週間、国に帰る。アパートの隣の人に、部屋の花のことを頼む。来週から国へ帰るんですが、花に水をやってくださいませんか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
頼みごとの絵カード(写真を撮る・道を教える・作文を見る・荷物を預かる など)で「〜てください」を「〜てくださいませんか」に言い換える練習(練習Bの型)。次に「すみませんが」「〜んですが」を付けて言わせ、最後に、だれに頼むかのカード(先生・知らない人・隣の人)を引いて、前置き・頼み・返事までのやり取りをペアでする(練習Cの型)。
- 口頭頼みごとの絵カード(写真を撮る・道を教える・作文を見る・ゆっくり話す・ペンを貸す)を出し、教師が「写真を撮ってください」と言う → 学生が「写真を撮ってくださいませんか」と言い換える。次にキューを絵だけにし、前置きの「すみませんが、」を付けて言わせる。最後に理由のカード(カメラの使い方が分からない・道が分からない)を足し、「〜んですが、〜てくださいませんか」の形にまとめる。
- ペアAは頼む人、Bは頼まれる人。Bは「引き受ける」か「断る」かを書いた札を伏せて持ち、Aには見せない(情報差)。Aが前置き→頼みの順で言い、Bは札に合わせて「ええ、いいですよ」か「すみません、ちょっと……」と返す。断られたらAは別の人に頼み直す。3回で交替し、相手のカード(先生・知らない人・友だち)によって「〜てください」でよいかも選ばせる。
- 産出「お願いロールプレイ」。町の中の場面カード(駅で知らない人に・大学で先生に・アパートで隣の人に)を引き、前置き・理由・頼み・お礼までを自分で組み立てて演じる。教師が見るのは、相手に合った丁寧さを選んでいるか、「〜んですが、」の理由が付いているか、断られたときに「そうですか。すみませんでした」と終われるか。
つまずきと手当て
- 第26課の形と混ぜて「×見ていただきませんか」と言う。「いただけませんか」は可能形(いただけます)の否定疑問、と文型4の板書に戻って形を確かめる
- 頼まれた側が「×はい、見てくださいます」と答える。「くださいます」は頼んだ人から見たことばなので、返事は「ええ、いいですよ」「すみません、ちょっと……」の形で、と板書の返事の列を指す
- 親しい友だちにも「〜てくださいませんか」ばかり使い、よそよそしく聞こえる。相手との関係で、第14課の「〜てください」と使い分ける、と三段の板書のどこを使うかを相手ごとに選ばせる
既習の文型との違い
- 〈Vて形〉ください(第14課)どちらも相手に何かをしてもらう言い方ですが、「〜てください」はしてほしいことをそのまま言い、「〜てくださいませんか」は相手に決めてもらう形にするので柔らかくなります。目上の人や知らない人には「〜てくださいませんか」、親しい友だちや指示の場面では「〜てください」が自然です。学習者は「*書いてくださりませんか」のように形をくずしやすいので、「くださいませんか」を一つのかたまりで言わせます。
- 〈普通形(〜だ→〜な)〉んですが、 / 〈Vて形〉いただけませんか(第26課)「〜てくださいませんか」は相手を主語にした尊敬の形、「〜ていただけませんか」は自分を主語にした謙譲の形を可能の否定疑問にしたもので、どちらも丁寧に頼む言い方です。教室ではどちらを使ってもよいとし、二つが混ざった「*見ていただきませんか」を形の誤りとして直します。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は「いただきます・くださいます・やります」のほか、物の受け渡しや世話の話の材料になる語(お祝い・お見舞い・えさ・おもちゃ・絵本・絵はがき など)と、目上・年下の関係をはっきりさせる人の語(祖父・祖母・孫・おじ・おば など)が中心です。人の語は、図の上の段・下の段のどこに置く人かをカードの裏に印を付けて出すと、動詞の選び分けの練習にそのまま使えます。「お祝い」「お見舞い」は「〜に〜をいただきました」「〜をくださいました」の文の中でかたまりで覚えさせます。
この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)
- いただきます(いただきます) 目上の人から物をもらいます。「もらいます」の丁寧な言い方です。 先生に〜・お祝いを〜・Vて〜
卒業のとき、先生から辞書をもらった。友だちに話す。この辞書は、先生にいただきました。
- くださいます(くださいます) 目上の人がわたしに物をくれます。「くれます」の丁寧な言い方です。 先生が〜・Vて〜・Vて〜ませんか
アルバイト先の社長が、誕生日に花をくれた。社長が花をくださいました。
- やります(やります) 動物や植物、年下の家族に物をあげます。 花に水を〜・犬にえさを〜・Vて〜
朝、家を出る前にすること。毎朝、犬にえさをやってから、学校に来ます。
- お祝い(おいわい) 結婚や誕生日など、うれしいことがあった人にあげる物や、喜ぶことばです。 結婚の〜・〜にいただきます・〜をくださいます
留学生が、誕生日にもらった物の話をしている。誕生日のお祝いに、先生に本をいただきました。
- お見舞い(おみまい) 病気やけがの人に会いに行くことや、そのときに持って行く物です。 〜に行きます・〜に花をいただきます・〜に来てくださいます
入院していたとき、アルバイト先の社長が来た。社長がお見舞いに来てくださいました。
- えさ(えさ) 動物が食べる物です。 犬に〜をやります・魚の〜・〜を買います
友だちが旅行に行くので、家の猫の世話を頼まれた。一日に二回、猫にえさをやってください。
- 教えます(おしえます) 知らないことを、ほかの人が分かるように話したり見せたりします。 道を〜・読み方を〜・〜ていただきます
駅で迷ったとき、知らない人が道を説明してくれた。知らない人に駅までの道を教えていただきました。
- 直します(なおします) まちがっているところを、正しくします。 作文を〜・まちがいを〜・〜てくださいます
大学に出す作文を、日本語の先生が見てくれた。先生が作文を直してくださいました。
- 送ります(おくります) 人といっしょに行って、その人を家や駅まで連れて行きます。 駅まで〜・うちまで〜・車で〜
アルバイトの帰りが遅くなり、社長が車に乗せてくれた。社長に車でうちまで送っていただきました。
- 連れて行きます(つれていきます) 人や動物といっしょに、ある場所へ行きます。 子どもを〜・犬を散歩に〜・病院へ〜
週末に子どもと出かけた話を、同僚にする。日曜日、子どもを公園に連れて行ってやりました。
- 貸します(かします) 自分の物を、あとで返してもらう約束で、ほかの人に使わせます。 傘を〜・本を〜・〜てくださいませんか
急に雨が降ってきて、傘がない。近くの店の人に頼む。すみませんが、傘を貸してくださいませんか。
会話の扱い
会話は、結婚のお祝いの席でお祝いのことばを述べる場面です。目上の人や世話になった人に向けて話すので、この課の「〜ていただきました」「〜てくださいました」がお礼や思い出の部分に自然に入ること、「ご結婚おめでとうございます」「どうぞお幸せに」のようなお祝いの決まり文句があることを確かめます。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、だれが、だれのことを、だれに向かって話しているのかを図の上の段・下の段で確かめてから、役を替えて読みます。決まり文句は意味を分解せず、表情と声の調子をつけてかたまりで言わせます。仕上げに、学生自身がお世話になった人(先生・アルバイト先の人・ホームステイの家族など)へのお礼のスピーチを3〜4文で作らせ、「〜にいろいろ〜ていただきました」「〜がいつも〜てくださいました」を入れて発表させると、会話の型を自分のことに置き換えられます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題と次のコマ
宿題は問題の文法部分と、「日本に来て、目上の人にしてもらったこと」を「〜ていただきました」「〜てくださいました」で一つずつ、「家族や動物のためにしたこと」を「〜てやりました」で一つ、「目上の人に頼みたいこと」を「〜てくださいませんか」で一つ書くこと。次のコマの最初に、相手のカード(先生・友だち・子ども・犬)を見て あげます・もらいます・くれます・いただきます・くださいます・やります を選ぶカードテストをしてから宿題を発表させ、第42課の「〜ために」につなぐ。三段の矢印の図は、敬語を学ぶ第49課・第50課でも使うので写真に撮っておく。
よくある質問
第41課のいただきます・くださいます・やりますは、どの順で教えればいいですか?
第24課の「わたし⇄友だち」の矢印の図を最初に復活させ、その上に「先生」の段を足して「いただきます・くださいます」、下に「子ども・犬・花」の段を足して「やります」を入れる順が分かりやすいです。物の受け渡しで三つを入れてから、同じ図に行為を書き足して「〜ていただきます・〜てくださいます・〜てやります」へ広げ、最後に頼み方の「〜てくださいませんか」を置きます。新しい規則を足すのではなく、知っている矢印の動詞の札を貼り替えるだけだと見せるのが要です。
「〜ていただきます」と「〜てくださいます」の違いは何ですか?
同じ出来事を、どちらから見て言うかの違いです。してもらったわたしを主語にすると「先生に直していただきました」、してくれた先生を主語にすると「先生が直してくださいました」になり、助詞も「に」と「が」で入れ替わります。意味の差はほとんどなく、どちらにもありがたい気持ちが入ります。学習者は助詞と動詞の組み合わせを混ぜやすいので、「に+いただく/が+くださる」を板書に残しておきます。
「やります」は教えたほうがいいですか?「あげます」ではだめですか?
今は動物や植物、年下の家族にも「あげます」を使う人が多く、学習者が「花に水をあげます」と言っても誤りではありません。ただ「やります」は日常の会話でよく聞く語なので、聞いて分かるようにしておく必要があります。自分から使うのは動物・植物と、家族の年下の人の話に限ると教え、友だちや目上の人には使わないことを場面で一度見せます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は第24課の復習から文型1〜3(物の受け渡し)まで、2コマ目は文型4〜6(行為)と文型7の頼み方、会話・練習C・問題です。て形がまだ不安なクラスでは、文型4に入る前にて形のカードを5分入れると、そのあとの練習が止まりません。
「〜てくださいませんか」と「〜ていただけませんか」はどちらが丁寧ですか?
どちらも目上の人や知らない人に丁寧に頼むときの言い方で、教室ではどちらを使ってもよいと教えます。「いただけませんか」のほうが少し丁寧だと感じる人が多いようですが、大きな差はありません。それよりも、前置きの「すみませんが」「〜んですが」を付けること、親しい友だちには「〜てください」で十分なことを、相手のカードを替えて練習させるほうが役に立ちます。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。