みんなの日本語 初級Ⅱ 第39課「遅れて、すみません」の教案
『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「遅れて、すみません」
原因・理由を言う三つの形を扱う課です。て形の「〜て、〜」と名詞の「〜で、〜」は、前の出来事の結果として起きた気持ちや状態を言い(母から手紙が来て、うれしかったです/雪で電車が遅れました)、普通形の「〜ので、〜」は、事情をやわらかく説明して、許可を求めたり断ったりするときに使います。この課の芯は、「て」「で」の後ろには「〜たいです・〜てください・〜ましょう」のような話し手の意志や頼みが来ないこと、そして頼む・断るときの理由は「ので」で言う、という使い分けを最後に一枚の板書にまとめることです。第9課の「から」、第16課の「〜くて/〜で」、第26課の普通形の接続(だ→な)を思い出させながら進めます。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ
この課のねらい(Can-do)
- 「母から手紙が来て、うれしかったです」「家族に会えなくて、寂しいです」のように、出来事とそのときの気持ちを一文で言える
- 「事故で電車が止まりました」「風邪で学校を休みました」のように、出来事・自然・病気を原因として言える
- 「用事があるので、早く帰ってもいいですか」のように、理由をやわらかく言ってから許可を求めたり、誘いを断ったりできる
- 遅れたり休んだりしたときに、理由を言ってわびることができる
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第16課の「〜くて/〜で」(この店は安くて、おいしいです)と第9課の「から」を数文ずつ言わせる。「きょうは、て形や で で『どうしてそうなったか』を言います」とだけ予告し、表情の絵カード(うれしい・悲しい・困った・びっくり)を黒板に貼る |
| 文型1(〜て/〜なくて/〜くて/〜で、気持ち・状態) | 40分 | 出来事の絵カードと表情カードを矢印でつなぎ「試験に合格して、うれしいです」。動詞→ない形(なくて)→い形容詞(くて)→な形容詞(で)の順に一列ずつ足し、後ろは気持ちと「できない」ことだけ、と板書の右側に書く |
| 文型2(Nで〜) | 25分 | 台風・地震・事故・火事の写真で「事故で電車が止まりました」。場所や道具の「で」と並べて、ここの「で」は原因、と色を変えて示す |
| 文型3(〜ので、〜) | 40分 | 教師が早退の許可をもらう寸劇で「用事があるので、早く帰ってもいいですか」。第26課の普通形の四列(だ→な)を出して「ので」を付ける。最後に「て」と「ので」を一枚に並べ、頼む文の前は「ので」と線を引く |
| 会話 | 20分 | 遅れて来た人が理由を言ってわびる流れを聞かせ、「遅れて、すみません」が文型1の形だと気づかせる。わびる→理由→相手の返事の三つの部分に分けて役割練習 |
| 練習C | 30分 | ①出来事を聞いて気持ちを返す ②遅刻・欠席の理由を言ってわびる ③理由を言って許可を求める・断る、の三場面。キューは出来事の絵カードと、相手役の一言 |
| 問題・まとめ | 15分 | 聞き取りは教室で。「て/で/ので」を選ぶ問題を板書でもう一度確かめ、残りは宿題に |
学習項目 1 〈Vて形〉/〈Vない形〉なくて、〜 / 〈いA(い)〉くて/〈なA〉で、〜
意味・はたらき文型 1
前の文が原因、後ろの文がその結果として起きた気持ちや状態を言う形です。後ろには「びっくりしました・安心しました・困りました・うれしいです・寂しいです」のような気持ちや、「わかりません・食べられません」のような「できない」状態がよく来ます。前の出来事が自然に後ろの気持ちにつながる、一続きの言い方です。後ろには話し手の意志や働きかけ(〜たいです・〜てください・〜ましょう・〜つもりです など)は来ません。否定の原因は「〜なくて」で言い、「〜ないで」は使いません。「遅れて、すみません」のように、わびるときにも、自分がしたことを前に置いて同じ形を使います。
接続
Vて形/Vない形→なくて/いA(〜い)→くて/なA→で +、気持ち・状態の文(いい→よくて。名詞の原因は次の文型2の「Nで」で扱う)
形
母の声を聞いて、安心しました家族に会えなくて、寂しいですこの問題は難しくて、わかりません説明が複雑で、よくわかりませんでした
導入
- 出来事の絵と表情の絵をつなぐ黒板の左に出来事の絵カード(試験の合格通知・財布が無い・国からの手紙)、右に表情カード(うれしい・困った・安心)を貼る。教師が二枚を指でつないで「試験に合格して、うれしいです」「財布をなくして、困りました」と言い、学生にも言わせる。板書は「[出来事]て、[気持ち]」の枠にし、左から右へ矢印を引いて「だから、こうなった」の向きを見せる。
- 一列ずつ形を足す動詞の列が言えたら、同じ枠に「〜なくて」(友達が来なくて、寂しかったです)、「〜くて」(カレーが辛くて、食べられませんでした)、「〜で」(説明が複雑で、わかりませんでした)を一列ずつ足す。第16課の「安くて、おいしいです」と見た目は同じなので、16課は「二つの特徴を並べる」、この課は「だから、こうなった」と、矢印の有無で区別して見せる。
板書案
[出来事]て/なくて/くて/で 、[気持ち・できない]
試験に 合格して、うれしいです。
漢字が 多くて、読めません。
〔赤〕て・なくて・くて・で 〔青〕左から右へ矢印(だから、こうなった)
右の欄に〔×〕〜ましょう・〜てください・〜たいです(来ない)
場面と発話(自作)
- 国を出て半年。日本人の友達に「国の家族はどうですか」と聞かれた。家族とはなかなか会えない。なかなか会えなくて、寂しいです。でも、毎週電話しています。
- きのうの夜、大きい地震があった。朝、クラスメートと話している。夜、急に揺れて、びっくりしました。
- 日本の料理を初めて作ってみたが、作り方の説明が分からなかった。友達に話す。本の説明が複雑で、よくわかりませんでした。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
出来事のカード(手紙が来る・試験に合格する・電話が来ない・漢字が多い・部屋が狭い など)と表情カードを組み合わせて「〜て、〜」の代入練習(練習Bの型)。動詞・ない形・い形容詞・な形容詞を混ぜて出す。次にペアで、一人が最近の出来事を言い(「きのう、財布を落としました」)、もう一人が「それは大変でしたね」と返し、最初の人が「ええ、〜て、困りました」と気持ちを足す(練習Cの型)。
- 口頭教師が出来事カードと表情カードを二枚組で見せる(「母から手紙が来ます」+うれしい/「電話が来ません」+寂しい/「部屋が狭いです」+勉強できない/「説明が複雑です」+わからない)→ 全体で「母から手紙が来て、うれしかったです」→ 個人指名。動詞・ない形・い形容詞・な形容詞の順に一種類ずつ固めてから混ぜる。最後は表情カードだけを見せて「どうしてびっくりしましたか」と聞き、前半(原因)を学習者に作らせる。
- ペアAは出来事カードを3枚、Bは表情カードを3枚持ち、互いに見せない。Aが「きのう、駅で財布を落としました」と出来事だけ言い、Bは「それは大変でしたね」と返して表情カードを1枚出す。Aはそのカードの気持ちで「ええ、財布を落として、困りました」と一文にまとめる。カードの組み合わせが合わないときは「〜て、〜ませんでした」のような「できない」文に言い換えてもよい。3枚終わったら役を交替。
- 産出「気持ちの3文日記」。この1か月の「びっくりしたこと・困ったこと・うれしかったこと」を、自分のことで一文ずつ「〜て/〜なくて/〜くて/〜で、〜」で書き、4人のグループで読む。聞く人は「それはよかったですね」「大変でしたね」で返す。教師が見るのは、後ろが気持ちや「できない」状態になっているか(意志・頼みが来ていないか)、否定が「なくて」になっているか、形容詞の「くて/で」の形。
つまずきと手当て
- 後ろに意志や頼みを置く(×時間がなくて、タクシーで行きましょう/×熱があって、休んでもいいですか)。後ろが「〜ましょう・〜てください・〜てもいいですか」なら文型3の「ので」(時間がないので、タクシーで行きましょう)に直す、と板書の右側の「気持ち・できない」の欄を指す
- 否定の原因を「ないで」で言う(×友達が来ないで、寂しかったです)。原因は「なくて」。「ないで」は第17課の「〜ないでください」の形で、ここでは使わない、と二つを並べて書く
- 形容詞の形の誤り(×難しいくて、×複雑くて、×いいくて)。い形容詞は「い」を取って「くて」、な形容詞は「で」、「いい」は「よくて」と、第16課の板書をもう一度出して確かめる
既習の文型との違い
- N1は〈いA(い)〉くて、 〜 / 〈なA〉/N2で、〜(第16課)第16課の「この店は安くて、おいしいです」は二つの性質を並べるだけで、前と後ろに「だから」の関係はありません。第39課の「部屋が狭くて、勉強できません」は前が原因、後ろが結果です。形は同じなので、後ろが気持ちや「できない」ことかどうかで見分けさせます。16課の並べ方の感覚のまま「*この店は安くて、行きましょう」と後ろに誘いを置く誤りが出ます。
- 〈文〉から(理由)、〈文〉(第9課)「から」は後ろの文を選ばず、「時間がないから、タクシーで行きましょう」のように誘い・頼みも置けます。「〜て」は後ろが気持ち・状態に限られるので、「から」に慣れた学習者は「*時間がなくて、急いでください」と言ってしまいます。また「どうして休みましたか」には「熱があったからです」と答えられますが、「〜て」の形で答えを言い切ることはできません。
- 〈Vて形〉、〈Vて形〉、〜(第16課)第16課のて形は「駅に着いて、電話しました」のように動作を順に並べる形で、後ろは自分で決めてする動作です。この課のて形は「母から手紙が来て、うれしかったです」のように、後ろが自然に起きた気持ちです。教師は「それから?」と聞ける文か「どうして?」と聞ける文かで二つを分けて見せると、用語を使わずに区別できます。
関連する文型
学習項目 2 Nで〜
意味・はたらき文型 2
出来事・自然・病気などの名詞(地震・台風・火事・事故・雨・雪・病気・風邪・けが)に「で」を付けて、原因を言う形です。後ろには、その結果どうなったか(倒れました・止まりました・遅れました・休みました)を言います。文型1と同じく、後ろに「〜てください」「〜ましょう」のような働きかけは来ません(「休みました」のような、起きたことの報告はかまいません)。原因になる名詞は出来事を表す語で、人の名前を原因にすることはふつうしません。「で」は場所(第6課)・乗り物(第5課)・道具(第7課)でも使うので、この課の「で」は「どうして?」の答えになる「で」だと区別させます。
接続
N(出来事・自然・病気)+で、結果の文
形
雪で電車が遅れました事故で電車が止まりました風邪で学校を休みました台風で飛行機が飛びませんでした
導入
- ニュースの写真から台風・地震・事故・火事の写真を一枚ずつ見せ、「何がありましたか」「どうなりましたか」と聞いて答えを集める(台風がありました/木が倒れました)。二つの答えを教師が「台風で木が倒れました」と一文にし、板書に「[出来事]で、[どうなったか]」の枠を書く。続けて学生自身の経験(雨で試合がありませんでした、風邪で休みました)を聞いて、枠に入れさせる。
- 四つの「で」を並べる板書に「教室で勉強します」「バスで来ます」「はしで食べます」「事故で遅れました」の四文を縦に並べ、それぞれ「どこで?」「何で?」「何で?」「どうして?」と質問を横に書く。最後の文だけ色を変え、「どうして?」と聞かれて答える「で」だと示す。
板書案
[出来事の名詞]で 、[どうなったか]
雪で 電車が 遅れました。
風邪で 会社を 休みました。
教室で/バスで/はしで/〔赤〕事故で ← どうして?
〔青〕名詞 → で 文 → て(雨で/雨が降って)
場面と発話(自作)
- 朝、電車が止まって会社に間に合わない。駅から会社に電話する。すみません。事故で電車が止まっています。少し遅れます。
- きのう授業を休んだ。きょう、先生にわびる。先生、きのうは風邪で休みました。すみませんでした。
- 週末の旅行の話をしていたら、天気予報で台風が来ると分かった。友達と話す。台風で旅行に行けないかもしれませんね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
出来事の絵カード(雨・雪・台風・地震・事故・風邪・けが)と結果の絵カード(電車が止まる・木が倒れる・会社を休む・試合が無い)を組み合わせて「〜で〜」の代入練習(練習Bの型)。次に、先生役に遅刻や欠席の理由を言ってわびる(「すみません。〜で遅れました」→先生役「そうですか。大丈夫ですか」)やり取り(練習Cの型)につなぐ。
- 口頭出来事の写真と結果のカードを組で見せる(台風+木が倒れる/雪+電車が遅れる/けが+試合に出られない/病気+学校を休む)→ 全体で「台風で木が倒れました」→ 個人。次に結果のカードだけを見せて「どうして電車が遅れましたか」と聞き、「雪で遅れました」と原因を答えさせる。最後に「雨」と「雨が降ります」のように名詞のカードと文のカードを混ぜて出し、「雨で」「雨が降って」を言い分けさせる。
- ペア「遅刻の電話」。Aは会社員か学生で、理由のカード(事故・雪・台風・大雨)を持つ。Bは上司か先生で、カードを見ない。Aが「もしもし、〜です。すみません、〜で電車が止まっています。30分ぐらい遅れます」と電話し、Bは聞いた理由と時間をメモして「わかりました。気をつけて来てください」と返す。Bのメモとカードが合っているかで確かめ、役を交替する。
- 産出「きょうのニュース」発表。小さい町の架空の一日について、出来事の名詞を3つ選び(台風・事故・火事・雪 など)、「きのうの台風で、駅の前の木が倒れました」のようなニュースを3文で書いて、前に出てアナウンサーのように読む。教師が見るのは、「で」の前が出来事の名詞になっているか(「*雨が降りで」になっていないか)、後ろが起きた結果になっているか、頼みや誘いが来ていないか。
つまずきと手当て
- 動詞の文に「で」を付ける(×雨が降りで、×事故がありで)。名詞なら「雨で」、文なら文型1の「雨が降って」、と二つの形を並べて言い直させる
- 後ろに頼みを置く(×台風で、あしたは来ないでください)。頼む・誘う文なら「台風なので、あしたは来ないでください」と文型3に直す
- 人を原因にする(×田中さんで遅れました)。人がしたことが原因なら、この課では「田中さんが遅れたので、〜」のように文で言う。「で」の前は出来事の名詞、と板書の枠に書いておく
既習の文型との違い
- 〈道具・手段〉でVます/〈言語〉でVます(第7課)第7課の「で」は「何で?」に答える道具・手段で、後ろは「はしで食べます」のように自分でする動作です。この課の「で」は「どうして?」に答える原因で、後ろは自然に起きた結果です。「バスで遅れました」は手段にも原因にも読めて迷わせるので、練習は「事故・雪」のような出来事の名詞で組みます。
- 〈文〉から(理由)、〈文〉(第9課)名詞の原因は「台風ですから、あしたは休みです」のように「から」でも言え、後ろに誘いや頼みも置けます。「で」の後ろは起きた結果の報告に限られます。学習者は「から」を名詞に直接付けて「*台風から、遅れました」と言うことがあるので、名詞なら「台風で」、「から」なら「台風だから/台風ですから」と並べて見せます。
- 〈場所〉でVます(第6課)「公園でけがをしました」の「で」は場所、「けがで休みました」の「で」は原因です。一文に「で」が二つ入ると学習者は区別を見失うので、導入と練習では一文に「で」を一つだけにしておきます。
関連する文型
学習項目 3 〈V/いA/なA/N 普通形(〜だ→〜な)〉ので、〜
意味・はたらき文型 3
理由を言う形です。第9課の「から」と同じく「どうして」に答えますが、「ので」は事情を客観的に、やわらかく説明する感じがあり、許可を求める・頼む・誘いを断る・わびる、といった相手に気をつかう場面でよく使います。文型1・2の「て」「で」と違って、後ろに「〜てもいいですか」「〜ていただけませんか」のような働きかけを置くことができます。「から」は話し手の判断や言い分を強く出すことがあるので、目上の人に許可を求めるときは「ので」のほうが自然に聞こえることが多いです。前は普通形で、な形容詞と名詞の現在肯定は「だ」が「な」に変わります(第26課の「〜んです」と同じ接続)。
接続
普通形+ので(V: 行くので・行かないので・行ったので/いA: 痛いので/なA: 静かなので/N: 休みなので。過去は「静かだったので」「休みだったので」)
形
用事があるので、お先に失礼します頭が痛いので、早く帰ってもいいですかあしたは試験なので、行けませんこの部屋は静かなので、よく勉強できます
導入
- 早退の許可をもらう寸劇教師が学生の一人を上司役にし、自分は会社員役で「すみません、子どもが病気なので、早く帰ってもいいですか」と頼む。上司役に「いいですよ」と言わせる。次に同じ場面を「子どもが病気ですから、早く帰ります」と言ってみせ、どちらが頼み方として感じがいいかを学生に聞く。板書に「[事情]ので、[頼む・許可を求める]」の枠を書く。
- 普通形の四列に「ので」を付ける第26課で使った普通形の四列(動詞・い形容詞・な形容詞・名詞)の板書をもう一度出し、右に「+ので」を付ける。な形容詞と名詞だけ「だ」を消して「な」を赤で書き、「静かなので」「休みなので」と全員で言う。最後に文型1の「て」の文と並べ、後ろが頼む文なら「ので」、と線を一本引く。
板書案
[事情(普通形)]ので 、[頼む・許可・断る]
頭が 痛いので、早く 帰っても いいですか。
あしたは 試験〔赤〕な ので、行けません。
静か〔赤〕な ので/休み〔赤〕な ので 〔×〕だので
〔青〕後ろが 頼み・許可・誘い → ので 〔青〕後ろが 気持ち・できない → て/で/ので
場面と発話(自作)
- アルバイト先で、店長に来週の休みをお願いする。国から家族が来る。来週、国から家族が来るので、休んでもいいですか。
- クラスメートに週末のパーティーに誘われたが、月曜日に試験がある。すみません。月曜日に試験があるので、今回は行けません。
- 会社の会議が終わった。きょうは病院へ行く予定がある。病院へ行くので、お先に失礼します。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
事情の絵カード(熱がある・用事がある・試験がある・子どもが病気・きょうは休み)と頼みのカード(早く帰る・休む・あした出す・行けない)を組み合わせて「〜ので、〜てもいいですか/〜ません」の代入練習(練習Bの型)。な形容詞・名詞のカードを混ぜて「〜なので」を何度も言わせる。次に、上司役・友達役に許可を求める・誘いを断るやり取りをペアで回す(練習Cの型)。相手役には「いいですよ」「そうですか。残念ですね」の返事を決めて渡す。
- 口頭事情のカードと頼みのカードを組で見せる(熱がある+早く帰る/子どもが病気+休む/この部屋は暑い+窓を開ける/日本語が下手+ゆっくり話していただく)→ 全体で「熱があるので、早く帰ってもいいですか」→ 個人。動詞の肯定・否定、い形容詞、な形容詞・名詞、過去の順にカードを替え、な形容詞・名詞のカードには「だ」に×を書いておく。最後は事情のカードだけを見せ、後ろ(頼み・断り)を学習者に考えさせる。
- ペア「お願いカード」。Aはアルバイトか社員で、事情のカードと頼みのカードを持つ。Bは店長か上司で、返事のカード(「いいですよ」「今週はちょっと…」)を持ち、Aには見せない。Aが「〜ので、〜てもいいですか」と頼み、Bはカードのとおりに返す。断られたらAは「わかりました。じゃ、来週はどうですか」とつなぐ。3回ごとに役を交替し、返事のカードはよく混ぜる。
- 産出「断りじょうずロールプレイ」。教師が誘いのカード(週末のパーティー・映画・食事・引っ越しの手伝い)を配り、学習者は自分の本当の事情で「すみません。〜ので、今回は行けません。また誘ってください」と断る。わび→理由→断り→次につなぐ一言、の順を板書しておく。教師が見るのは、「だので」になっていないか、文末が丁寧形で終わっているか、目上の役に「から」で強く言い切っていないか。
つまずきと手当て
- な形容詞・名詞で「だ」を残す(×休みだので、×静かだので)。第26課の「〜なんです」と同じ赤い「な」の板書を指し、「だ+ので」は無い、と言い切る
- 「ので」を使えば文全体が丁寧になると思い、文末の「ます」を落とす(「用事があるので、帰る」)。普通体の会話としては正しいが、先生や店の人に言うと丁寧さが文末で落ちる。丁寧さは文末で決まる、と「〜ので、〜ます/〜てもいいですか」の形で言い直させる。「ありますので」のように丁寧形に付ける言い方も丁寧な話し方では聞くが、この課ではまず普通形+ので を固める
- 頼む文の前に文型1の「て」を使う(×熱があって、休んでもいいですか)。後ろが頼み・許可・誘いのときは「ので」(熱があるので、休んでもいいですか)、と三つの形の比較の板書に戻る
既習の文型との違い
- 〈文〉から(理由)、〈文〉(第9課)どちらも理由を言いますが、「から」は話し手の判断が前に出やすく、「ので」は事情を説明する感じでやわらかく聞こえます。「どうして休みましたか」には「熱があったからです」と答えられますが、「*熱があったのでです」とは言いません。接続も違い、名詞・な形容詞は「休みだから」「休みなので」となるので、学習者は「*休みなから」「*休みだので」と混ぜます。
- 〈普通形(〜だ→〜な)〉んですが、 / 〈Vて形〉いただけませんか(第26課)第26課の「〜んですが」は事情を前置きして、相手の反応を見ながら頼みを切り出す言い方です。「〜ので」は理由と頼みを一続きに言うときに使います。どちらも名詞・な形容詞は「だ」が「な」になる接続なので、第26課の普通形の板書をそのまま使えます。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は、文型1の後ろに来る気持ちの語(びっくりします・安心します・がっかりします・うれしい・悲しい・恥ずかしい など)と、文型2の前に来る出来事の語(地震・台風・火事・事故 など)が中心です。気持ちの語は表情カードと一組にして出し、意味を説明するより「どんなときにそう感じるか」を学生に言わせて確かめます。出来事の語はニュースの写真と組にして、文型2の「〜で」の代入練習にそのまま使います。
この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)
- びっくりします(びっくりします) 思っていなかったことが急に起きて、心が大きく動きます。 話を聞いて〜・大きい音に〜
夜、家の外で急に大きい音がした。「大きい音がして、びっくりしました。」
- 安心します(あんしんします) 心配していたことが大丈夫だとわかって、気持ちが楽になります。 声を聞いて〜・結果を見て〜
国の母が病気だったが、電話で元気な声が聞けた。「母の声を聞いて、安心しました。」
- がっかりします(がっかりします) 楽しみにしていたことがだめになって、元気がなくなります。 結果に〜・試合に負けて〜
週末に楽しみにしていたサッカーの試合が、雨でなくなった。「雨で試合がなくなって、がっかりしました。」
- 困ります(こまります) どうしたらいいかわからない、大変な状態になります。 お金がなくて〜・言葉がわからなくて〜
旅行先の駅で財布をなくした。「財布をなくして、困っています。」
- 恥ずかしい(はずかしい) 人の前で失敗して、顔が赤くなるような気持ちです。 間違えて〜・人の前で〜
クラスで先生の名前を読み間違えた。「先生の名前を間違えて、恥ずかしかったです。」
- 地震(じしん) 地面が揺れることです。 〜がある・大きい〜・〜で〜が止まる
朝、きのうの夜の地震について、クラスメートと話す。「きのうの地震で、駅の時計が止まりました。」
- 台風(たいふう) 夏から秋に南の海から来る、とても強い風と雨です。 〜が来る・大きい〜・〜で飛行機が飛ばない
あしたから旅行の予定だが、天気予報を見た。「台風で、飛行機が飛ばないかもしれません。」
- 事故(じこ) 車や電車がぶつかったりして、けがや問題が起きることです。 〜がある・交通〜・〜で電車が止まる
朝、バスが来なくて、会社に間に合わない。「すみません。事故でバスが遅れています。」
- 遅れます(おくれます) 決まった時間より後に着いたり、始まったりします。 会社に〜・5分〜・電車が〜
友達と10時に駅で会う約束だったが、10時10分に着いた。「バスが来なくて、遅れました。すみません。」
- 倒れます(たおれます) 立っていた人や物が、横になって下に落ちます。 木が〜・自転車が〜・人が〜
台風の次の朝、公園の前を通った。「台風で、公園の木が倒れました。」
- 止まります(とまります) 動いていたものが動かなくなります。 電車が〜・時計が〜・エレベーターが〜
会社のビルで、エレベーターが動かない。「地震で、エレベーターが止まりました。」
会話の扱い
題のとおり、約束や仕事に遅れて来た人が、まず「遅れて、すみません」とわび、遅れた理由を説明する場面の会話です。「遅れて、すみません」そのものが文型1の「〜て、〜」の形で、わびるときに自分がしたことを前に置く言い方だと気づかせます。最初はCDか教師の読みで「わびる→理由→相手の返事」の流れをつかませ、役割を替えて二回読んだら、遅れた理由の部分を文型2の「〜で」(事故で・雨で)や、文型3の「〜ので」に置き換えて再現させます。理由を長く言う前に、まずわびの一言を先に言うのが職場で感じのいい順番だ、ということも、ここで一言添えておきます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題と次のコマ
宿題は問題の文法部分と、「最近びっくりしたこと・困ったこと・うれしかったこと」を文型1で一つずつ、「遅れた・休んだ理由」を文型2で一つ、「先生か上司にお願いする文」を文型3で一つ書くこと。次のコマの最初に「て/で/ので」の三択カード(後ろの文を見て選ぶ・10枚)をしてから宿題を発表させ、第40課へつなぐ。三つの形を並べた板書(後ろが気持ち・できない→て/で、後ろが頼み・許可→ので)は写真に撮っておき、作文の添削のときにも使う。
よくある質問
第39課の「〜くて」と第16課の「〜くて」はどう区別して教えればいいですか?
形は同じなので、後ろの文で見分けさせます。第16課は二つの性質を並べるだけ(安くて、おいしいです)、第39課は前が原因で、後ろが結果の気持ちや「できない」状態です(狭くて、勉強できません)。板書では39課の文にだけ左から右への矢印を付け、「だから、こうなった」と読ませると区別がつきます。
原因の「〜て」の後ろに「〜てください」「〜ましょう」が来ないことは、どう見せればいいですか?
板書の右の欄に「気持ち・できない」と書き、その下に×で「〜ましょう・〜てください・〜たいです」を並べておきます。誤りが出たら欄を指して、後ろが頼み・誘いなら文型3の「ので」に直させます。理屈を説明するより、「て/で」と「ので」を一枚に並べた比較の板書に何度も戻るほうが定着します。
「〜ので」と「〜から」の違いは学習者にどう説明しますか?
初級では、「ので」は事情をやわらかく説明する、「から」は自分の理由をはっきり言う、と場面で分けます。目上の人に許可を求める寸劇を「ので」と「から」の両方で演じ、どちらが感じがいいかを学習者に聞くと伝わります。「〜からです」で答えを終えられるのは「から」だけ、という形の違いも合わせて示します。
原因の「〜なくて」と「〜ないで」の使い分けは?
原因・理由は「なくて」で言います(友達が来なくて、寂しかったです)。「ないで」は第17課の「〜ないでください」や第34課の「〜ないで〜」(傘を持たないで出かけました)で使う形で、原因には使いません。誤りが出たら二つの形を板書で上下に並べ、「どうして?」に答える文かどうかで選ばせます。
第39課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で文型1と文型2(原因の「て」と「で」)まで、2コマ目で文型3の「ので」、三つを並べた比較の板書、会話と練習Cを扱います。文型1は動詞・ない形・い形容詞・な形容詞と形が多いので、ここに時間を厚く取ります。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。