動詞の可能形が初めて出る課です。第18課の「〜ことができます」で言っていた「できる・できない」を、一つの動詞の形で言えるようになり、「見えます・聞こえます」で目や耳に自然に入ってくることを、「〜ができます」で店や建物が新しくできることを言い分けます。あわせて「〜しか〜ません」で「それだけで足りない」という気持ちを、「〜は〜ますが、〜は〜ません」で二つを対比する言い方を扱います。可能形の作り方は最初の15分で片づけ、「を」が「が」に変わることを文型1で何度も口にさせるのがこの課の芯です。「見える」と「見られる」、三つの「できます」の区別は、この課で一度きちんと線を引いておくと、あとの課で崩れません。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第18課の「〜ことができます」を絵カードで数枚回し、「泳ぐことができます」を「泳げます」と短く言い直して見せる。「同じ意味、短い形」とだけ言って、辞書形のグループ分けの板書を復活させる |
| 可能形の作り方 | 15分 | グループI→II→IIIの順に板書し、ます形→可能形の口頭練習。可能形はグループIIの動詞として活用することまで一気に確かめ、「〜ません」「〜ませんでした」まで言わせる |
| 文型1(Nが可能V) | 40分 | 教師ができること・できないことを実演して「日本語が話せます」「ピアノが弾けません」。板書で「を」を消して「が」を書き、ほかの助詞は変わらないことを並べて示す。学生同士の「〜が〜ますか」のやり取りまで |
| 文型2(Nが見えます/聞こえます) | 25分 | 窓の外と教室の外の音で「山が見えます」「車の音が聞こえます」。「見られます」との違いは、見ようとするかどうか、で一本だけ線を引く。1コマ目はここまで |
| 文型3(Nができます) | 20分 | 2コマ目の最初に可能形のカードテスト(5分)をしてから入る。新しくできた店の写真や地図で「パン屋ができました」。第18課の「できます」、文型1の「します→できます」と並べて三つの意味を板書に整理する |
| 文型4・5(〜しか〜ません/〜は〜ますが、〜は〜ません) | 35分 | 財布の中身・できる料理の数で「〜しか〜ません」。「だけ」との違いは気持ちの違いとして見せる。文型5は文型1の答えを二つ並べて「〜は〜ますが、〜は〜ません」に組み替える |
| 会話・練習C・問題 | 35分 | 会話は手作りの物を見て感心する流れで、「可能形+んですね」が第26課とのつなぎになる。練習Cは「できますか」「見えますか」「しか」の三つの場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
「書きます→書けます」「食べます→食べられます」のように、動詞を「できる」という意味の形に変えたものを可能形と呼びます。第18課の「〜ことができます」と同じ意味で、一つの動詞で言えるぶん、会話では可能形のほうがよく使われます。作り方は て形・ない形・辞書形と同じ三つのグループで決まり、グループI は ます の前の音を い段 から え段 に変えて る を付け、グループII は ます を られる に替え、グループIII は「します→できる」「来ます→来られる」の二つを覚えます。できた可能形はすべてグループII の動詞なので、ます形・ない形・て形・た形はグループII の作り方で作れます。
ます形 → 可能形(グループI: い段→え段+る/グループII: ます→られる/グループIII: できる・来られる)。可能形はグループII として活用する(書ける→書けます・書けない・書けて・書けた)
絵カード20枚を速いテンポで「ます形→可能形」。I・II・III を混ぜて出し、間違えたカードだけ戻してもう一度。次に「可能形→可能形のます形(読める→読めます)」を1周して、文型1で「〜が読めますか」「はい、読めます」と答えるときに崩れないようにする。
「日本語が話せます」「漢字が読めません」のように、可能形で「できる・できない」を言う文型です。意味は第18課の「〜ことができます」と同じで、生まれつきや練習で身についた能力(泳げます)と、その場の状況で可能かどうか(この店でカードが使えます)の両方に使います。いちばん大事なのは助詞で、もとの文で「を」だった名詞は、可能形の文では「が」になります(漢字を読みます→漢字が読めます)。「に」「で」「へ」「と」などほかの助詞は変わりません。
N+が+可能V(もとの文の「を」→「が」。ほかの助詞は変わらない)。主語は「わたしは」のように は で示す
絵カードで「漢字を読みます→漢字が読めます」の言い換え(練習Bの型)を、「を」の付く動詞を中心に10枚。次に「〜が〜ますか」「はい/いいえ」の問答をペアで回し、最後に「わたしができること・できないこと」を三つずつ言い合うやり取り(練習Cの型)にする。助詞を言い落としたら、板書の「を→が」を指して言い直させる。
「窓から海が見えます」「隣の部屋から声が聞こえます」のように、見ようとしなくても目に入る、聞こうとしなくても耳に入る、ということを言う文型です。「見えます」「聞こえます」は可能形ではなく、それ自体が一つの動詞で、目や耳に入ってくるものを「が」で示します。可能形の「見られます」「聞けます」は、テレビで試合が見られます、ラジオで音楽が聞けます、のように、見よう・聞こうと思えば(その場所や道具があるから)できる、という意味で、ここに違いがあります。
N(見えるもの・聞こえるもの)+が+見えます/聞こえます(「〜から」「〜で」で場所を添えることが多い)
風景や部屋の絵カードで「〜から〜が見えます」「〜が聞こえます」の代入練習(練習Bの型)。次に「ここから何が見えますか」「何が聞こえますか」をペアで聞き合い、最後に自分の部屋や国の家から見えるもの・聞こえるものを紹介し合う(練習Cの型)。「見られます」との言い分けは、テレビ・映画のカードを混ぜて一度だけ確かめる。
「公園の前に新しいパン屋ができました」のように、建物や店、道などが新しく作られて生まれる、ということを言う「できます」です。「友達ができました」のように人との関係が生まれるときや、「晩ご飯ができました」のように準備が終わるときにも使います。第18課の「日本語ができます」(能力)、文型1の「します→できます」(可能形)と同じ形なので、この課では「新しく生まれる・出来上がる」という三つ目の意味を切り分けて、場所を「に」で示すことを押さえます。
〈場所〉に+N+ができます/できました(新しくできたものが「が」、場所が「に」)
地図と建物の絵カードで「〈場所〉に〜ができました」の代入練習(練習Bの型)。次に「あなたの町に最近何ができましたか」を聞き合い、「友達ができました」「ご飯ができました」も加えて短い会話にする(練習Cの型)。三つの「できます」は、文を聞いてどの意味かを指で示す聞き分けを一度だけ入れる。
「ひらがなしか書けません」「千円しかありません」のように、「それだけ」と限って言う文型で、必ず文末が否定になります。意味は「それ以外はない」ですが、「それだけでは少ない・足りない」という話し手の気持ちが入るところが「だけ」と違います。「だけ」は「ひらがなだけ書けます」のように肯定の文で使い、事実を言うだけで気持ちは入りません。「しか」は「が」「を」の代わりに付き、「に」「で」「へ」などの助詞には「ここでしか」「日本語でしか」のようにあとに付きます。
N+しか+Vません(「が」「を」は しか に替わる。ほかの助詞は「〜にしか」「〜でしか」とあとに付ける)。文末は必ず否定
絵カードと数字カードで「〜だけ〜ます」→「〜しか〜ません」の言い換え(練習Bの型)を、文末を否定にする練習として10枚。次に「何ができますか」「〜しか〜ません」の問答をペアで回し、最後に「わたしの財布・わたしの冷蔵庫」の場面で「〜しかありません」を使った短いやり取り(練習Cの型)にする。
「肉は食べますが、魚は食べません」のように、二つのものを並べて「こちらはする、こちらはしない」と対比する文型です。対比される名詞を「は」で取り立て、前半と後半を「が」でつなぎます。もとの文で「が」や「を」だった名詞は「は」に替わり(漢字が読めます→漢字は読めますが)、「に」「へ」「で」などは「東京へは行きますが、大阪へは行きません」のように「は」をあとに付けます。第17課で出た「〜は(取り立て)」と同じ働きで、ここでは文型1の可能形の文を材料にして、できることとできないことを対比させます。
N1+は+Vますが、N2+は+Vません(「が」「を」→「は」。ほかの助詞は「〜へは」「〜では」とあとに は を付ける)
○×付きの絵カード二枚組で「〜は〜ますが、〜は〜ません」の代入練習(練習Bの型)を、「を」の名詞から始めて「へ」「に」の名詞に広げる。次にペアで「〜が〜ますか」と二つずつ聞き、相手の答えを「(名前)さんは〜は〜ますが、〜は〜ません」と第三者に報告するやり取り(練習Cの型)にすると、自然に「は」で対比する文が出る。
この課の新出語は、可能形の練習に使う動詞(飼います・走ります など)と、「見えます」「聞こえます」の材料になる自然や音の語(海・鳥・声・花火 など)、「できます」の材料になる町の建物や店の語が中心です。動詞は ます形と可能形を1組にして絵カードで出し、文型1の代入練習にそのまま使います。「しか」「ほとんど」のような副詞的な語は、文型4の中で文ごと覚えさせ、単語だけで説明しません。
会話は、人の家で手作りの物を見せてもらい、「何でも作れるんですね」と感心して、作った人が自分の夢を話す、という流れです。可能形に第26課の「〜んです」が付いた「作れるんですね」が芯で、可能形の普通形(作れる)に「んです」が接続することをここで気づかせます。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、役割を替えて二回読んだら、「何でも〜られるんですね」の部分を、学生の中で得意なことがある人(料理・歌・運転など)に置き換えて再現させます。感心する言い方(すごいですね・すばらしいですね)は意味を分解せず、表情と声の調子をつけてかたまりで入れます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「わたしができること・できないこと」を五つ(可能形三つ・「〜しか〜ません」一つ・「〜は〜ますが、〜は〜ません」一つ)で書くこと。次のコマの最初に可能形のカードテスト(ます形→可能形・10語)をしてから宿題の作文を発表させ、第28課の「〜ながら」「〜し、〜し」につなぐ。可能形の板書(三列と、を→が)は第28課以降も使うので、写真に撮っておく。
第27課の可能形はどの順で教えればいいですか?
第18課の「〜ことができます」を言わせたあと、教師が同じ意味の短い形として可能形を聞かせ、ます形からの作り方をグループI→II→IIIの順に板書します。グループIは「い段をえ段にして る」の一つの規則だけなので、て形より短く済みます。作れたらすぐ「書けます・書けません」と可能形のます形まで言わせ、可能形がグループIIの動詞として活用することを確かめてから文型1に入ります。
可能形の文で「漢字を読めます」と「を」を使うのは間違いですか?
会話では「を」もよく聞き、誤りとは言い切れません。ただ、この課の文型は「Nが可能V」なので、初級のうちは「が」に統一して練習します。学生に「日本人は『を』と言っていました」と聞かれたら、どちらも聞くが、授業では「が」の形で覚える、と答えておくと混乱しません。
「見えます」と「見られます」の違いはどう教えますか?
「見えます」は見ようとしなくても目に入るとき、「見られます」は見ようと思えば見ることができるときです。窓から見える山と、テレビで見られる試合の二つの例を並べ、板書に二行で書いて、それ以上の細かい区別には入りません。「聞こえます」と「聞けます」も同じ線で分けます。迷う例が出たら、目をつぶっても入ってくるかどうかで考えさせます。
「〜しか〜ません」と「〜だけ」の違いは何ですか?
「だけ」は肯定の文で、数や範囲を事実として言います。「しか」は必ず否定の文で使い、「それでは足りない」という気持ちが入ります。財布の千円を見せて、平気な顔の「千円だけあります」と、困った顔の「千円しかありません」を並べると伝わります。「だけ」を否定の文にすると意味が反対になる点も一度見せておきます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と可能形の作り方、文型1「Nが可能V」、文型2「見えます/聞こえます」まで。2コマ目は可能形のカードテストから入り、文型3の「できます」、文型4・5、会話、練習Cと問題です。可能形の作り方に時間がかかるクラスでは、文型2を2コマ目の最初に回してもかまいません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。