「もしそうなったら、どうするか」と「そうなるはずなのに、そうならなかった」を言う課です。「〜場合は」で、規則や案内の中で起こるかもしれない状況とそのときの対応を言い、「〜のに」で、予想や期待と違う結果になった不満・残念な気持ち・驚きを言えるようにします。新しい活用形は出ないので、時間は二つの文型の接続(な形容詞と名詞の形)と、似た形との線引きにあてます。「場合は」の前は「起こるかもしれないこと」、「のに」の前は「事実として決まっていること」で、「のに」の後ろには話す人の意志や相手への働きかけが来ないという線を板書に残し、第25課の「〜ても」、第42課の目的の「のに」と混ぜないことがこの課の芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第25課の「〜たら」「〜ても」を絵カードで2〜3枚回す(雨が降ったら、雨が降っても)。「今日は、お知らせや規則でよく使う『もし』の言い方と、『それなのに』の気持ちの言い方」とだけ言う |
| 文型1(〜場合は、〜) | 25分 | 学校のお知らせや店の注意書きを模した掲示を一枚見せ、「休む場合は」「わからない場合は」の部分を指す。品詞ごとの接続(辞書形・ない形・た形・いA・なAな・Nの)を一列に板書し、後ろには指示・依頼・案内が来ることを示す |
| 文型1の練習 | 30分 | トラブルの絵カード(電車が止まる・かぎをなくす・熱がある・雨)で「〜場合は、〜てください」の代入。次に学生が係の人役、もう一人が質問役で「〜場合は、どうしたらいいですか」のやり取り |
| 文型2(〜のに、〜) | 25分 | 教師が「きのう、たくさん勉強しました」と言ってから、点の悪いテストを見せ、残念な顔で「勉強したのに、点が悪かったです」。予想(↑)と結果(↓)を矢印で板書し、「のに」は気持ちが入ることを見せる。な形容詞と名詞は「〜なのに」 |
| 「のに」の線引き | 20分 | 「雨が降っても、行きます(降るかどうかはまだわからない・後ろは自分の意志)」と「雨が降っているのに、弟は出かけました(降っているのは事実・後ろは実際に起きたこと)」を並べる。「あしたテストなのに、弟は遊んでいます」のように、予定として決まっていることなら「のに」の前に来られることも見せる。第42課の「切るのに使います」も横に書き、後ろの語で見分けることを確かめる |
| 会話 | 30分 | 大会の説明を聞いた参加者が、係の人に困ったときの対応を質問する流れ。「〜場合は、どうしたらいいですか」が芯。流れをつかんだら、学校の行事や会社の手続きに置き換えて再現させる |
| 練習C・問題 | 40分 | 練習Cは「〜場合はどうするか」をたずねる場面と、「〜のに」で不満を言い、相手がなぐさめる場面の二つ。問題は聞き取りを教室で、文法の部分は宿題に |
「もしそういう状況になったら」という仮定の状況を示し、そのときにどうするか、どうなるかを言う文型です。学校や会社の規則、店の案内、説明書など、起こるかもしれないいくつかの状況を想定して、それぞれの対応を決めておく話によく使います。後ろには「〜てください」「〜なければなりません」「〜ことができます」のような指示・決まり・案内や、「どうしたらいいですか」という質問がよく来ます。「〜たら」と意味は近いですが、「場合は」は少しかたい言い方で、お知らせや説明の文に向いています。また、きのう実際に起きた一回だけのことには使いません。文法の用語で言うと、「場合」は前の文に説明される名詞(形式名詞に近い使い方)で、全体で仮定の条件を表します。前に来る形が名詞を説明する形(連体形)になるのはそのためです。
V辞書形/Vない形+ない/Vた形+場合は、いA+場合は、なA+な+場合は、N+の+場合は(「場合」は名詞なので、名詞を説明するときと同じ形で前に付く)
トラブルの絵カード(電車が止まる・かぎをなくす・道がわからない・熱がある・雨)と対応の語カード(電話する・係の人に言う・地図を見る・休む・中止)を組にして、「〜場合は、〜てください」の言い換え(練習Bの型)を品詞を混ぜて10枚ほど。次に一人が係の人、一人が参加者になり、カードを引いた参加者が「〜場合は、どうしたらいいですか」と聞き、係の人が答えるやり取り(練習Cの型)にする。
前の文から当然こうなると思ったのに、実際には違う結果やようすになった、ということを言う文型です。前には事実として決まっていること(もう起きたこと・いまのようす・予定として決まっていること)が来て、後ろにはそれと合わない実際の結果やようすが来ます。話す人の不満・残念な気持ち・驚きがいっしょに伝わります(予約したのに、席がありませんでした/あしたテストなのに、弟は遊んでいます)。気持ちが入るので、「〜が、〜」「〜けど、〜」より強く聞こえます。後ろには、話す人の意志や相手への働きかけ(〜ます(意志)・〜てください・〜ましょう・〜たいです など)は来ません。第42課の「〜のに使います」(目的の「のに」)とは別のものです。文法の用語で言うと逆接の確定条件を表す接続助詞で、「〜ても」(逆接の仮定条件)と対になります。
V・いAの普通形+のに、なA・Nの普通形の「〜だ」を「〜な」にして+のに(静かなのに、休みなのに)。過去は「静かだったのに」「休みだったのに」
予想と結果を組にした絵カード(よく寝た→眠い、薬を飲んだ→治らない、日曜日→店が閉まっている、高いかばん→すぐ壊れた)で、「〜のに、〜」の言い換え(練習Bの型)を品詞を混ぜて10枚ほど。次に一人が「〜のに、〜んです」と不満を言い、もう一人が「それは大変ですね」「残念でしたね」と受けるやり取り(練習Cの型)にする。受ける側の言い方も板書に残しておく。
この課の新出語は、文型1の材料になる手続き・規則の語(キャンセルする・知らせる・領収書・保証書・中止 など)と、会話の大会の場面の語(係の人・コース・スタート・〜位 など)が中心です。手続きの語は、お知らせや注意書きの形の掲示の中で出すと、「〜場合は」の文型と一緒に覚えられます。「急に」「ちゃんと」のような副詞は、「〜のに」の不満の文(ちゃんと準備したのに、〜)の中で使わせ、単語だけで説明しません。
会話は、大会に参加する人が係の人から当日の説明を聞き、道をまちがえたときなど困った場合の対応を「〜場合は、どうしたらいいですか」でたずねる、という流れです。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、「何が起きたら、どうするのか」だけを聞いて表に書き込ませると、文型1の形が自然に耳に残ります。役割を替えて二回読んだら、場面を学校の遠足や会社の研修の説明会に置き換え、係の人役の学生が注意を説明し、参加者役の学生が「〜場合は」で質問する形で再現させます。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、自分の学校か会社の「お知らせ」を一枚作ること(「〜場合は、〜てください」を三つ)。あわせて「〜のに」で、最近あった残念なことを二つ書く。次のコマの最初に、「場合は/たら/ても/のに」のどれが入るかを選ぶ短い確認(6問ほど)をしてから、作ったお知らせを読み合い、聞き手が「〜場合は、どうしたらいいですか」と質問する。第46課の「〜ところです」「〜たばかりです」につなぐ。
第45課の「〜場合は」と第25課の「〜たら」の違いは何ですか?
どちらも「もしそうなったら」を言えますが、「場合は」は少しかたく、お知らせ・規則・説明書のように起こるかもしれない状況とその対応を決めておく話で使います。友達との会話や、必ず起こることの順番(駅に着いたら、電話します)は「〜たら」です。授業では掲示の形の教材で「場合は」を出し、会話の場面では「〜たら」に戻すと、使い分けが自然に身につきます。
「〜のに」と「〜ても」はどう教え分ければいいですか?
「前は本当のことか、もしのことか」と「後ろは自分の意志か」の二つで分けます。前が起こるかどうかわからないことで、後ろに自分の意志を言うなら「〜ても」(雨が降っても、行きます)です。前が事実として決まっていること(いま降っている・もう勉強した・あしたテストがある)で、後ろが予想と違う実際の結果やようすなら「〜のに」(雨が降っているのに、弟は出かけました)です。「〜のに」の後ろには意志や依頼が来ないので、「〜ましょう」「〜てください」で終わる文は「〜のに」にできない、と板書に残しておきます。
第42課の目的の「のに」と、第45課の「のに」を学習者が混同します。どう見せればいいですか?
形は同じなので、後ろの言葉で見分けさせます。後ろが「使います・便利です・かかります」なら目的の「のに」、後ろが予想と違う結果で、話す人の気持ちが入っていれば逆接の「のに」です。二つの文を上下に並べて板書し、後ろの部分だけ色を変えると、学習者が自分で判断できるようになります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と文型1「〜場合は」の導入・練習まで、2コマ目は文型2「〜のに」と「〜ても」「目的ののに」との線引き、会話、練習Cと問題です。新しい活用形が出ない課なので、余った時間はお知らせ作りやスピーチのような産出の活動にあてられます。
「〜のに」を使うと失礼になることはありますか?
あります。「のに」は不満の気持ちがはっきり出るので、相手がしたことについて言うと、責めているように聞こえます。先生や上司に「説明したのに」「言ったのに」と言うのは避け、「〜んですが」などでやわらかく言う方がいいと、練習Cの段階で伝えておきます。自分のことや物・天気についての残念な気持ちから練習を始めると安全です。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。