日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅱ 第29課「忘れ物をしてしまったんです」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「忘れ物をしてしまったんです」

「開きます・閉まります・壊れます・割れます」のような自動詞がまとめて出て、「窓が開いています」「このいすは壊れています」で、目の前の物がいまどうなっているかを言えるようになる課です。後半は「〜てしまいます/しまいました」で、仕事をすっかり終えることと、困ったことが起きて残念だという気持ちを言い分けます。「ています」は第14課の「いま〜している」とは別の意味(変わったあとの状態)だと、絵カードの前後2枚で見せるのがこの課の芯です。第14課で習った「開けます・消します」との対比(窓を開けます/窓が開いています)は、次の第30課の「〜てあります」の土台になるので、ここで助詞の「を」と「が」をはっきりさせておきます。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「窓が開いています」「電気が消えています」のように、自動詞の「ています」で物のいまの状態を言える
  • 「このコップは割れています」のように、話題にしている物の状態を「は」で言い、だから使えない・取り替えてほしいと伝えられる
  • 「レポートはもう書いてしまいました」「今晩この本を読んでしまいます」で、全部終える・終えたことを言える
  • 「財布をなくしてしまいました」「タクシーに手袋を忘れてしまったんです」で、困ったことを残念な気持ちといっしょに伝え、助けを頼める

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)10分第14課の「窓を開けます」「電気を消します」を教師の動作で言わせ、第15課の「結婚しています・住んでいます」も一言ずつ復習する。教室のドアを開けたまま手を離し、「いま、ドアは?」と聞いて、文型1への入口を作る
自動詞の提出20分この課の自動詞を絵カードの「前・後」2枚組で出す(閉まっているドア→開いたドア、ついている電気→消えた電気)。他動詞を知っているものは「開けます/開きます」と横に並べ、「人がする/自然になる」の違いだけを見せる
文型1(Nが自動詞ています)30分「後」のカードだけ見せて「窓が開いています」「コップが割れています」。第14課の「雨が降っています(いまの動作)」と並べ、「変わって、そのまま」の意味を板書の時間の線で示す
文型2(Nは自動詞ています)25分教室の物を一つずつ指して「このいすは?」と聞き、「このいすは壊れています」と答えさせる。「が」は見たままを言う、「は」はその物について話す、で一本だけ線を引く
文型3(〜てしまいます/しまいました・完了)25分教師が宿題の束を全部終える身ぶりで「もう全部やってしまいました」。「もう」「全部」「〜までに」といっしょに、すっかり終える意味を見せ、これからのことも言えることを確かめる
文型4(〜てしまいました・遺憾)30分財布をなくして困った顔、コップを落として割った絵で「なくしてしまいました」「割れてしまいました」。文型3と同じ形で気持ちが違うことを、顔の表情カードで見せる
会話・練習C・問題40分会話は電車に忘れ物をして駅で相談する流れ。「〜てしまったんです」(第26課の「んです」)と、物の色・大きさ・置いた場所の説明が芯。練習Cは「壊れていますから取り替えてください」「〜てしまったんです」の場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に

学習項目 1 Nが〈V(自動詞)て形〉います

意味・はたらき文型 1

「窓が開いています」「電気が消えています」のように、ある変化が起きたあと、その結果がいまも続いている状態を、目に見えたまま言う文型です。使う動詞は、人がわざとする動作ではなく、物がひとりでにそうなることを表す自動詞(開きます・閉まります・壊れます・割れます・汚れます など)で、主語の物には「が」が付きます。第14課の「雨が降っています」は動作がいま続いていることでしたが、この課の「ています」は「変わって、そのまま」です。どちらの意味になるかは動詞で決まり、一瞬で変わる動詞(開く・壊れる・止まる)は結果の状態に、時間をかけて続く動詞(降る・走る)は動作の続きになります。文法の用語で言うと、これは「ている」のアスペクトのうち結果の状態(結果残存)の用法で、「開く・壊れる」のような変化を表す動詞(瞬間動詞・変化動詞)に「ている」が付くとこの意味になります。

接続

N+が+自動詞のて形+います(ドアが開いて います/コップが割れて います)。だれがしたかは言わない

形
窓が開いています/ドアが閉まっています電気がついています/テレビが消えていますこのシャツは……あ、ボタンが外れています車が止まっています(結果)/車が走っています(動作の続き・第14課)

導入

  • 「前・後」2枚の絵カードで変化を見せる閉まった窓の絵を見せてから、開いた窓の絵に替える。教師が「窓が開きました」と言い、もう一度「後」の絵だけを指して「いま、窓が開いています」と言う。黒板に左から右へ時間の線を引き、「開きました」の点から右へ太い線を伸ばして「開いています」と書く。「変わった。そのまま、いまも」と短く言って、第14課の「降っています」(線の上の動作がずっと続く絵)と上下に並べて板書する。
  • 教室の実物で言わせる教師が教室の電気を消し、ドアを開け、ペンのキャップを外したまま席に戻り、「何が見えますか」と学生に聞く。学生が気づいた順に「電気が消えています」「ドアが開いています」と言わせ、板書の枠「__が __て います」に入れていく。だれがしたかは聞かず、見えたままを言えばよいことを、教師が自分を指して首を振る動作で示す。

板書案

〔青〕人が する: 窓 を 開けます  電気 を 消します
〔赤〕ひとりでに なる: 窓 が 開きます  電気 が 消えます
N が + 自動詞て + います
窓が 開いて います。 コップが 割れて います。
時間の線: ●開きました ━━━━━→ いま(開いています)
くらべる: 雨が 降って います(〜〜〜〜 ずっと 動いている)

場面と発話(自作)

  • 会議室に入ると、だれもいないのに電気がついていた。同僚に電話で知らせる。会議室の電気がついていますよ。
  • 朝、教室に来たら窓が開いていて、少し寒い。先生に言う。先生、窓が開いています。閉めてもいいですか。
  • 店で買ったシャツを家で見たら、ボタンが一つ取れていた。店に持って行って説明する。すみません、このシャツ、ボタンが外れているんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「後」の絵カードを10枚出して「ドアが閉まっています」「コップが割れています」と言わせる代入練習(練習Bの型)。次に、教師が教室の物をこっそり変えて(窓を開ける・電気を消す・机の上の紙を落とす)学生に目を閉じさせ、目を開けたら「何が違いますか」と聞くやり取り(練習Cの型)にする。助詞が「を」になったら、板書の「人がする=を/ひとりでに=が」を指す。

  1. 口頭「後」の絵カードを1枚ずつ見せ、全員 → 列 → 個人の順で言わせる。キューは「窓」「電気・消えます」「コップ・割れます」「ドア・閉まります」「シャツ・汚れます」「ボタン・外れます」のように、最初は名詞と動詞の両方、2周目は名詞だけ、3周目は絵だけにする。他動詞のカード(開けます)を混ぜて出し、学生に「が+開きます」の組に言い直させる練習も1周入れる。
  2. ペアAには「前」の部屋の絵、Bには「後」の部屋の絵(窓・電気・テレビ・ドア・コップが少しずつ違う)を渡し、相手の絵を見せずに違いを探させる。Bが「窓が開いています」と言い、Aが「この絵では閉まっています」と答える形で、違いが5つ見つかるまで続ける。終わったら絵を交換して、Aが言う役にする。
  3. 産出「間違いさがし教室」: 学生全員に目を閉じさせ、教師が教室の物を5か所変える(窓を開ける・電気を一つ消す・かばんのポケットを開ける・本を落とす など)。目を開けたら、気づいたことを一人一文ずつ言わせ、言えた物から元に戻す。次は学生の一人が教師の役になって変える。教師が見るのは、助詞が「が」になっているか、自動詞の形(開いて・消えて)が正しいか、「開きました」だけで止まっていないか。

つまずきと手当て

  • 他動詞を使ってしまう(*窓が開けています、*電気を消えています)。「開けます/開きます」「消します/消えます」を板書で上下に並べ、「を+開けます」「が+開きます」の組で何度も言わせる
  • いまの状態を言いたいのに「〜ました」だけで済ます(窓が開きました)。誤りではないが、「いつ?」の話になる。教室の窓を指して「いま、どうですか」と聞き返し、「開いています」を引き出す
  • 動作がいま進んでいる意味だと思う(「ドアが開いています」を「ドアがいま動いている」と取る)。時間の線の板書に戻り、「開く」は一瞬、「降る」はずっと、と動詞の種類で分ける
  • 自動詞と他動詞の形の対応を覚えられない(開く/開ける、閉まる/閉める、消える/消す)。この課では一つずつ組で覚えさせ、規則の説明はしない。組のカードを裏表にして持たせる

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉います(第14課)第14課の「いま、手紙を書いています」は、動作がいま続いている意味で、だれかが動いています。この課の「窓が開いています」は、開くという変化が終わって、その結果が残っている意味で、窓は動いていません。学習者は「ドアが開いています」を「ドアがいま開いていく途中」と取ることがあるので、時間の線で「ずっと動いている」と「変わったあと、そのまま」を上下に並べて見せます。
  • 〈Vて形〉います(結果の状態)(第15課)第15課の「結婚しています」「東京に住んでいます」も同じ結果の状態ですが、主語は人で、自分のことを話す文型でした。この課は主語が物で、だれがしたかは言わず、見えたまま言う点が新しいところです。「結婚しています」と同じ形だと気づかせると、意味の説明が短くて済みます。
  • もうVました(第7課)「窓が開きました」は、開くという出来事が起きたことを言い、「窓が開いています」はいまの様子を言います。学習者は寒い教室で「先生、窓が開きました」と言いがちですが、これだとたったいま開いたように聞こえます。「いつ?」と聞いて、出来事か、いまの様子かを確かめさせます。
関連する文型

学習項目 2 Nは〈V(自動詞)て形〉います

意味・はたらき文型 2

文型1と同じ「変わって、いまもその状態」の意味ですが、物を「は」で話題として取り上げ、その物がどうなっているかを説明する文型です。「このいすは壊れています」「あのコップは割れています」のように、「この・その・あの」で指した物や、相手の質問に出てきた物について答えるときに使います。文型1が見たまま気づいたことを言う(新しく目に入った)のに対して、文型2は「その物について言えば」という話し方です。「〜から、使わないでください」「取り替えてください」のように、だからどうしてほしいかを後ろに続けることが多いです。「は」と「が」の違いで言えば、文型1は目に入った物をそのまま言う(中立叙述の「が」)、文型2は物を主題にして説明する、という対応になります。

接続

N+は+自動詞のて形+います(このいすは 壊れて います)。後ろに「〜から、〜てください」などを続けやすい

形
このいすは壊れていますそのコップは割れていますから、使わないでくださいA: 銀行は?——B: 銀行はもう閉まっていますこの皿は汚れていますから、取り替えてください

導入

  • 物を一つずつ指して「〜は?」と聞く教室に、壊れたかさ・汚れたシャツ・割れた皿(紙で作った物でよい)を並べる。教師が一つずつ持ち上げて「このかさは?」と聞き、学生に「このかさは壊れています」と答えさせる。板書の枠を「__は __て います」にして、文型1の「__が」の枠の下に並べる。「が=見て、気づいた」「は=この物は」と矢印で書き分ける。
  • 「〜から、〜てください」につなげる壊れたかさを差し出して「このかさは壊れていますから……」と言葉を止め、学生に「使わないでください」「取り替えてください」と続けさせる。第17課・第26課で習った頼み方とつなぐと、文型2が店や事務所で本当に使う形になる。

板書案

N が + 自動詞て います → 見て、気づいた
N は + 自動詞て います → この物は……
この いすは 壊れて います。
A: 銀行は?  B: 銀行は もう 閉まって います。
〜は 〜て いますから、〔赤〕取り替えて ください/使わないで ください

場面と発話(自作)

  • 会社で、同僚がコピー機を使おうとしている。そのコピー機はきのうから動かない。あ、そのコピー機は壊れていますから、二階のコピー機を使ってください。
  • ホテルの部屋に入ったら、テレビがつかない。フロントに電話して部屋を替えてほしいと頼む。すみません、部屋のテレビは壊れているんです。ほかの部屋に替えていただけませんか。
  • 夜、友達に「郵便局へ行きたい」と言われた。もう時間が遅い。郵便局はもう閉まっていますよ。あした行きましょう。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が実物や絵を持ち上げて「この〜は?」と聞き、「この〜は〜ています」と答える代入練習(練習Bの型)を10回。次に、学生を店員と客に分けて、客が「この〜は〜ていますから、取り替えてください」と言い、店員が「すみません。すぐ取り替えます」と答えるやり取り(練習Cの型)。品物のカード(汚れたシャツ・割れたコップ・外れたボタン)を客に配って回す。

  1. 口頭教師が実物や絵を持ち上げて「このかさは?」「その皿は?」「あの電気は?」と聞き、学生が「このかさは壊れています」「その皿は汚れています」と答える。キューの物は、かさ・皿・コップ・シャツ・時計・袋・電気・パソコン。2周目は答えのあとに「〜から、〜てください」を続けさせ、「使わないでください」「取り替えてください」「見てください」を言い分けさせる。
  2. ペア客と店員の役。客は品物のカード(裏に「汚れています」「割れています」「ボタンが外れています」などが書いてある)を持ち、「すみません。この〜は〜ていますから、取り替えてください」と言う。店員は「申し訳ありません。すぐ取り替えます」か「では、こちらはどうですか」で答える。3枚で役を替える。
  3. 産出「返品カウンター ロールプレイ」: 学生は、買った物(シャツ・時計・コップ・かばん)のどこがどうなっているかを自分で決め、店員役の教師に説明して取り替えてもらう。教師は「どこですか」「いつ買いましたか」と聞き返す。教師が見るのは、物を「は」で出しているか、自動詞の形か(*ボタンが外していますになっていないか)、「〜から、〜てください」で頼みまで言えているか。

つまずきと手当て

  • 質問の物に答えるときに「が」を使う(A: パソコンは?——B: パソコンが壊れています)。文としては言えるが、聞かれた物について答える形にはならない。質問に「は」で出た物は、答えでも「は」で受ける、と板書の問答で示す
  • 「は」と「が」の使い分けを細かく説明しすぎる。この課では「見て気づいた=が」「この物について=は」の一本だけにして、例外の話はしない
  • 自動詞の否定の意味を取り違える(「閉まっていません」を「閉めていません」と言う)。否定でも自動詞のまま「〜ていません」になることを、開いたままのドアで確かめる
  • 形容詞の文と混ぜる(このいすは古いですから、取り替えてください)。古いのはいすの性質で、壊れているのは変わったあとの状態。店で取り替えてもらう理由になるのはふつう後のほうだ、と実物で確かめる

既習の文型との違い

  • Nが〈V(自動詞)て形〉います(この課の文型1)文型1は、部屋に入って目に入ったことをそのまま知らせる言い方で、「あ、窓が開いています」のように新しい情報になります。文型2は、話題に出ている物や指した物について「その物は」と説明します。学習者が迷ったら、「何がありましたか(気づいた)」と「この物はどうですか(説明する)」のどちらの質問の答えか、で分けさせます。
  • Nは〈いA〉です(第8課)「このいすは古いです」は、いすの性質を言う文で、変わったことは言っていません。「このいすは壊れています」は、前は使えたのに、変わって使えなくなった、という意味です。学習者は「壊れています」を形容詞と同じように「*壊れいです」「*壊れくないです」と活用させることがあるので、否定は「壊れていません」だと板書で並べます。
関連する文型

学習項目 3 〈Vて形〉しまいます/しまいました(完了)

意味・はたらき文型 3

「宿題はもう全部やってしまいました」のように、ある動作を最後まで終える・すっかり終えたことを言う文型です。「書きました」と言うより「残らず全部」「片づけた」という感じが強くなります。「〜てしまいました」で終えたこと、「〜てしまいます」でこれから全部終えるつもりであることを言い、「もう」「全部」「〜までに」といっしょによく使います。「〜てしまいます」はこれからのことなので、「今晩中に」「あしたまでに」のような時の言葉を付けると意味がはっきりします。文法の用語では、「〜てしまう」は動作が終わりまで行くことを表すアスペクトの形として説明され、文型4の気持ちの意味(モダリティに近い意味)と同じ形を持っています。

接続

Vて形+しまいます/しまいました(書いて しまいます/食べて しまいました)。「しまいます」はグループI の動詞として活用する

形
レポートはもう書いてしまいましたこの本は今晩読んでしまいます金曜日までに仕事を全部やってしまいますA: 晩ご飯は?——B: もう食べてしまいました

導入

  • 教師の身ぶりで「全部終わった」を見せる机の上に紙を5枚置き、教師が1枚ずつ書く身ぶりをして横へ移す。最後の1枚を移したら手をはらって「全部書いてしまいました」と言う。途中で止めた場合の「3枚書きました」と比べ、「全部・最後まで」を板書で丸く囲む。次に、残りの仕事のカードを指して「あしたまでにやってしまいます」と言い、これからのことも言えることを見せる。
  • 板書の形枠を「__は もう __て しまいました」と「__までに __て しまいます」の2段にする。「しまいます」が「書いて」「読んで」の後ろに付くことを、て形の板書の横に矢印で示す。「もう」「全部」「〜までに」を枠の外に札で貼り、文に入れて言わせる。

板書案

Vて + しまいます/しまいました = 〔赤〕全部・最後まで
書きます → 書いて → 書いて しまいました
レポートは もう 書いて しまいました。
金曜日までに 仕事を 全部 やって しまいます。
〔青〕もう/全部/〜までに/今晩中に の札

場面と発話(自作)

  • 週末の前、同僚に「レポートは?」と聞かれた。きのうの夜、最後まで書いた。レポートは、もう書いてしまいました。
  • 友達に本を借りた。あした返す約束をしている。この本は、今晩読んでしまいます。あした返しますね。
  • 引っ越しの前の日。手伝いに来た友達に、今日の予定を話す。今日中に、荷物を全部箱に入れてしまいます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

仕事のカード(レポート・宿題・掃除・洗濯など)を見せて「〜はもう〜てしまいました」の言い換え(練習Bの型)。次に、手帳の絵を見せて「〜までに〜てしまいます」を言わせる。最後はペアで「週末までに何をしてしまいますか」と聞き合い、二つずつ答えるやり取り(練習Cの型)にする。

  1. 口頭仕事のカード(レポート・宿題・洗濯・掃除・手紙・本)を見せ、教師が「レポート・書きます」とキューを出す → 全員で「レポートはもう書いてしまいました」。2周目は時の札(「今晩」「金曜日までに」「あしたまでに」)を足して「この本は今晩読んでしまいます」のように、これからの形に替えさせる。最後はカードだけ見せて、過去か、これからかを教師の指(後ろ・前)で示す。
  2. ペア手帳の絵(月曜〜金曜に仕事が書いてあり、終わった物に印がついている)をAとBに1枚ずつ配る。Aが「レポートは?」と聞き、Bは印があれば「もう書いてしまいました」、なければ「水曜日までに書いてしまいます」と答える。手帳の中身はAとBで違うので、聞かないと分からない。5つ聞いたら交替。
  3. 産出「週末までにリスト」: 学生が、週末までに全部終えたいことを3つノートに書き、「金曜日までに〜てしまいます」の文で発表する。聞いた学生が一つ選んで「〜はもう〜てしまいましたか」と聞き、発表した学生は「いいえ、これから〜てしまいます」か「はい、もう〜てしまいました」で答える。教師が見るのは、て形、時の言葉が付いているか、ただの過去の報告(きのう〜てしまいました)になっていないか。

つまずきと手当て

  • て形の誤り(*書きてしまいました、*読みてしまいます)。「しまいます」の前は必ずて形、と第14課のて形の板書を出して直す
  • 否定で使おうとする(まだ書いてしまいませんでした)。「まだ終わっていない」は「まだ書いていません」(第31課で正式に出る)で言う、とだけ伝え、この課では肯定の形に絞る
  • 「〜てしまいました」を普通の過去と同じに使う(きのう映画を見てしまいました)。文としては言えるが、「全部終えた」か「残念だ」の意味が入るので、ただの過去の報告には使わない。文型4の残念な意味で聞こえてしまうことを、表情で見せる

既習の文型との違い

  • もうVました(第7課)「もう晩ご飯を食べました」は、食べたという事実を言うだけです。「もう晩ご飯を食べてしまいました」は、全部食べて、もう残っていない・もう終わった、という感じが強くなります。答えるときに毎回「〜てしまいました」を使う学習者がいるので、ふつうの答えは「もう〜ました」で十分だと押さえます。
  • 〈Vて形〉しまいました(遺憾)(この課の文型4)同じ「〜てしまいました」でも、文型3は全部終えた満足、文型4は困った・残念という気持ちです。どちらの意味かは、動詞(書く・片づける か、なくす・忘れる か)と前後の文で決まります。学習者が「宿題をしてしまいました」をどちらで言っているか分からないときは、「よかったですね」と「大変ですね」のどちらが合うかを聞きます。
関連する文型

学習項目 4 〈Vて形〉しまいました(遺憾)

意味・はたらき文型 4

「財布をなくしてしまいました」「コップが割れてしまいました」のように、思ってもいなかった困ったことが起きて、残念だ・困った・申し訳ないという気持ちを言う文型です。形は文型3と同じですが、こちらは気持ちを伝えるのが中心で、ふつう「〜てしまいました」の過去の形で使います。自分の失敗を言うときは「なくす・忘れる・落とす」のような他動詞(「を」)が多く、物が勝手にそうなったと言うときは「壊れる・割れる」のような自動詞(「が」)が多いです。会話では第26課の「んです」を付けて「〜てしまったんです」と言い、事情を説明して助けを頼む前置きにすることがよくあります。文法の用語では、話し手の残念な気持ちを表すこの意味は、アスペクトではなく話し手の気持ち(モダリティ)に近い用法として、文型3の完了の意味と分けて扱われます。

接続

Vて形+しまいました(なくして しまいました/壊れて しまいました)。事情を言うときは「〜てしまったんです」

形
タクシーに手袋を忘れてしまいましたパスポートをなくしてしまったんですパソコンが壊れてしまいましたすみません、お皿を割ってしまいました

導入

  • 表情カードで文型3と分ける笑顔のカードと困った顔のカードを用意する。笑顔のカードを持って「宿題を全部やってしまいました」、困った顔のカードを持って「宿題を家に忘れてしまいました」と言う。同じ「〜てしまいました」でも気持ちが違うことを、カードを持ち替えながら何度か見せる。板書では文型3の枠の横に困った顔の絵を描き、「残念・困った」と書き添える。
  • 「〜てしまったんです」で助けを頼む教師が困った様子で学生に近づき、「すみません、かぎをなくしてしまったんです」と言う。学生に「どこでなくしたんですか」と聞き返させ、第26課の「んです」の問答の形で続ける。板書は「〜てしまったんです。(だから)〜ていただけませんか」の2段にして、事情→お願い、の流れを見せる。

板書案

〔困った顔〕 Vて + しまいました = 残念・困った
わたしが: 財布 を なくして しまいました。
物が: パソコン が 壊れて しまいました。
すみません、〜て しまったんです。 → 〜て いただけませんか。
〔赤〕を+他動詞(自分が) 〔青〕が+自動詞(ひとりでに)

場面と発話(自作)

  • バス会社の事務所で。さっき降りたバスの中に、帽子を置いて降りてしまった。すみません、バスに帽子を忘れてしまったんです。
  • 友達の家でお茶を飲んでいて、手が当たってコップを落とした。あっ、すみません。コップを割ってしまいました。
  • 会社で、朝からパソコンが動かない。仕事が進まないことを上司に伝える。パソコンが壊れてしまったんです。ちょっと見ていただけませんか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

困った出来事のカード(財布をなくす・かさを忘れる・服が汚れる・パソコンが壊れる)で「〜てしまいました」の言い換え(練習Bの型)。次に、駅の係の人と客、店員と客の役で、客が「〜てしまったんです」と事情を言い、相手が「どこで」「いつ」「どんな物ですか」と聞き返すやり取り(練習Cの型)。物の色・大きさを言わせる絵カードを客に持たせる。

  1. 口頭困った出来事の絵カードを見せ、全員で言わせる。キューは「財布・なくします」「かさ・忘れます」「コップ・割ります」「コップ・割れます」「シャツ・汚れます」「パソコン・壊れます」。同じコップの絵で「割ってしまいました(自分が)」と「割れてしまいました(ひとりでに)」の両方を言わせ、助詞を変えさせる。2周目は前に「すみません」、後ろに「〜んです」を付けて、事情を言う形にする。
  2. ペアAは困った人、Bは友達か同僚。Aが出来事カードを引いて「すみません、〜てしまったんです」と言い、Bが「えっ、どこで〜んですか」「大丈夫ですか」と聞き返す。Aはカードの裏の情報(場所・時間・物の色)で答える。最後にAが「〜ていただけませんか」で一つ頼み、Bが受ける。3枚で交替。
  3. 産出「忘れ物センター ロールプレイ」: 教室の前を駅の忘れ物の窓口にし、学生が自分のかばん・かさ・手帳を「電車に忘れた物」にして、係の人役(教師か学生)に説明する。係の人は「どんな〜ですか」「何色ですか」「中に何が入っていますか」「何時ごろの電車ですか」と聞く。教師が見るのは、最初の「〜てしまったんです」で事情を言えるか、物の色・大きさ・場所を説明できるか、「すみません」で始めているか。

つまずきと手当て

  • 自動詞と他動詞を取り違える(*コップが割ってしまいました、*財布が落としてしまいました)。「自分がした=を+他動詞」「物が勝手に=が+自動詞」と文型1の板書に戻る。どちらでも言える場面(割った/割れた)では、言い方で責任の感じが変わることも一言添える
  • いい出来事に使って意外な意味になる(試験に合格してしまいました)。「残念」「思っていなかった」の気持ちが入るので、うれしいことはふつう「〜ました」で言う、と表情カードで確かめる
  • 謝るときに「しまいました」だけで終わる。日本語では「すみません」を先に言うことが多い、と場面の練習で必ず前に付けさせる

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉しまいます/しまいました(完了)(この課の文型3)文型3は「最後まで終えた」ことで、言う人は困っていません。文型4は思っていなかったことが起きて残念だという気持ちで、ふつう過去の形で言います。うれしい出来事に「てしまいました」を付けると、残念がっているように聞こえることを、表情カードで確かめます。
  • 〜。〈普通形(〜だ→〜な)〉んです(第26課)第26課の「んです」は、事情を説明する言い方でした。この課では「なくしてしまったんです」のように、て形+しまう の普通形「しまった」に「んです」が付きます。学習者は「*なくしてしまいましたんです」と丁寧形に付けやすいので、「しまいました → しまった → しまったんです」の3段で言わせます。
  • Nが〈V(自動詞)て形〉います(この課の文型1)「コップが割れてしまいました」は、割れたという出来事と残念な気持ちを言います。「コップが割れています」は、いま割れた状態だということを言うだけで、気持ちは入りません。店で取り替えてもらうときは文型1・2、謝るときは文型4、と場面で分けます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、文型1・2の材料になる自動詞(開きます・閉まります・つきます・消えます・壊れます・割れます・汚れます・外れます など)と、壊れたり割れたりする身の回りの物の語、会話で忘れ物の場所や形を説明するための語が中心です。自動詞は、第14課などで習った他動詞があるものは「開けます/開きます」のように組で、絵カードの裏表にして出し、助詞の「を/が」もいっしょに言わせます。物の語は割れた・汚れた状態の絵で覚えさせると、文型1の代入練習にそのまま使えます。下に、この課の文型の練習で使う語を選んで、連語と使う場面をつけました。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 開きます(あきます) 閉まっていたドアや窓が、開いた状態になります。「開けます」はだれかがする、「開きます」はドアや窓が主語です。 ドアが〜・窓が〜・店が〜
    朝、教室に来たら窓が開いていて寒い。
    「先生、窓が開いています。閉めてもいいですか。」
  • 閉まります(しまります) 開いていたドアや店が、閉まった状態になります。「閉めます」の自動詞です。 ドアが〜・銀行が〜・デパートが〜
    夜、友達が郵便局へ行きたいと言う。
    「郵便局はもう閉まっていますよ。あした行きましょう。」
  • つきます(つきます) 電気やテレビが、ついた状態になります。「つけます」の自動詞です。 電気が〜・テレビが〜・エアコンが〜
    だれもいない会議室の電気がついている。
    「会議室の電気がついていますよ。」
  • 消えます(きえます) ついていた電気や火が、消えた状態になります。「消します」の自動詞です。 電気が〜・テレビが〜
    友達の部屋に行ったら、窓が暗い。
    「部屋の電気が消えていますね。留守ですか。」
  • 壊れます(こわれます) 物が、使えない状態になります。機械やいす、かさなどに使います。 パソコンが〜・いすが〜・時計が〜
    会社で、朝からパソコンが動かない。
    「パソコンが壊れているんです。ちょっと見ていただけませんか。」
  • 割れます(われます) コップや皿、ガラスなどが、いくつかに分かれて使えなくなります。 コップが〜・皿が〜・ガラスが〜
    買って家に帰ったら、箱の中の皿が一枚だめになっていた。
    「この皿は割れていますから、取り替えてください。」
  • 汚れます(よごれます) 服や物に、ほかの物が付いて、きれいではなくなります。 シャツが〜・手が〜・くつが〜
    レストランで、出てきたコップがきれいではない。
    「すみません、このコップは汚れています。」
  • 外れます(はずれます) 付いていた物が、その場所から取れた状態になります。 ボタンが〜・ポケットが〜
    店で買ったシャツを家で見たら、ボタンが一つ取れていた。
    「このシャツは、ボタンが外れているんです。」
  • 止まります(とまります) 動いていた車やエレベーター、時計が、動かなくなります。「止めます」の自動詞です。 車が〜・時計が〜・エレベーターが〜
    会社に行く途中、駅で電車が動かない。同僚に電話する。
    「すみません、電車が止まっているんです。少し遅れます。」
  • 落とします(おとします) 持っていた物を、手から下に落としてしまいます。うっかりすることによく使います。 財布を〜・かぎを〜・コップを〜
    駅の交番で、困ったことを話す。
    「すみません、駅で財布を落としてしまったんです。」
  • 取り替えます(とりかえます) よくない物を、新しい物や別の物に替えます。 シャツを〜・電池を〜・新しいのと〜
    店で買った時計が、次の日にもう動かない。
    「この時計は止まっていますから、取り替えていただけませんか。」
  • 片づけます(かたづけます) 出ている物を、元の場所に入れて、部屋や机をきれいにします。 部屋を〜・机の上を〜・本を〜
    友達が来る前に、部屋に物がたくさん出ている。
    「友達が来る前に、部屋を片づけてしまいます。」

会話の扱い

会話は、電車に物を忘れて駅の係の人に相談し、どんな物か(色・大きさ・中に入っている物)と、電車のどのあたりに置いたかを答えていく、という流れです。最初の「〜てしまったんです」は、文型4に第26課の「んです」が付いた形で、困った事情を説明して相手に聞いてもらう前置きになっていることに気づかせます。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、係の人の質問(どんな・どのくらい・どこ)を板書で抜き出してから、役割を替えて二回読みます。そのあと、学生がいま持っているかばんや傘を「忘れた物」にして、色・大きさ・入っている物を自分の言葉で説明させる再現にします。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

宿題は問題の文法部分と、「教室や家の中で、いまどうなっているか」を文型1・2で三つ、「最近困ったこと」を「〜てしまいました」で二つ書くこと。次のコマの最初に自動詞と他動詞の組のカードテスト(開ける/開く など・10組)をしてから宿題を発表させ、第30課の「〜てあります」「〜ておきます」につなぐ。自動詞・他動詞の組の板書と時間の線は第30課で「〜てあります」と比べるときにも使うので、写真に撮っておく。

よくある質問

  • 第29課の「〜ています」と第14課の「〜ています」の違いはどう教えればいいですか?

    第14課の「雨が降っています」は動作がいま続いている意味、第29課の「窓が開いています」は変わったあとの状態が残っている意味です。説明より、黒板の時間の線で「ずっと動いている」と「変わって、そのまま」を上下に並べて見せるのが早いです。どちらになるかは動詞で決まり、開く・壊れる・止まる のように一瞬で変わる動詞は結果の状態になる、と動詞の側から整理します。

  • 自動詞と他動詞の組は、この課でどこまで覚えさせますか?

    この課で文型に使う組(開く/開ける、閉まる/閉める、つく/つける、消える/消す、止まる/止める)を中心に、組のカードで覚えさせます。形の規則の説明はこの課ではせず、「を+他動詞」「が+自動詞」の助詞の組だけを繰り返します。「壊れる・汚れる」は、この課では自動詞だけで覚えれば十分です。「割れる」だけは、文型4で「割る」と並べて、自分がしたか物がひとりでにそうなったかの違いを一度見せます。組は第30課の「〜てあります」で必ずまた使います。

  • 「〜てしまいました」の「全部終えた」と「残念だ」は、どう見分けさせますか?

    形は同じなので、動詞と場面で見分けます。書く・読む・片づける のように予定どおり終える動作なら完了、なくす・忘れる・壊れる のように思っていなかった出来事なら残念の意味になります。教室では笑顔と困った顔の表情カードを持ち替えて同じ形を言い、「よかったですね」と「大変ですね」のどちらが返事に合うかで確かめさせます。

  • 「窓が開いています」と「窓が開けてあります」の違いを聞かれたら、どう答えますか?

    「開けてあります」は第30課の文型で、だれかが目的があって開けた、その結果がいま残っている、という意味です。「開いています」は、だれがしたかを考えずに、いまの様子だけを言います。第29課で聞かれたら「だれかが何かのために開けたときの言い方を、次の課で習います」と予告にとどめ、この課では自動詞と「が」の組を固めるほうを優先します。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は自動詞の提出と文型1・2(物の状態を言う)まで、2コマ目は文型3・4(〜てしまいます/しまいました)と会話、練習C、問題です。自動詞と他動詞の組の定着が弱いクラスでは、2コマ目の最初に組のカードを5分入れてから文型3に進むと、文型4で助詞の誤りが減ります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。