「開きます・閉まります・壊れます・割れます」のような自動詞がまとめて出て、「窓が開いています」「このいすは壊れています」で、目の前の物がいまどうなっているかを言えるようになる課です。後半は「〜てしまいます/しまいました」で、仕事をすっかり終えることと、困ったことが起きて残念だという気持ちを言い分けます。「ています」は第14課の「いま〜している」とは別の意味(変わったあとの状態)だと、絵カードの前後2枚で見せるのがこの課の芯です。第14課で習った「開けます・消します」との対比(窓を開けます/窓が開いています)は、次の第30課の「〜てあります」の土台になるので、ここで助詞の「を」と「が」をはっきりさせておきます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第14課の「窓を開けます」「電気を消します」を教師の動作で言わせ、第15課の「結婚しています・住んでいます」も一言ずつ復習する。教室のドアを開けたまま手を離し、「いま、ドアは?」と聞いて、文型1への入口を作る |
| 自動詞の提出 | 20分 | この課の自動詞を絵カードの「前・後」2枚組で出す(閉まっているドア→開いたドア、ついている電気→消えた電気)。他動詞を知っているものは「開けます/開きます」と横に並べ、「人がする/自然になる」の違いだけを見せる |
| 文型1(Nが自動詞ています) | 30分 | 「後」のカードだけ見せて「窓が開いています」「コップが割れています」。第14課の「雨が降っています(いまの動作)」と並べ、「変わって、そのまま」の意味を板書の時間の線で示す |
| 文型2(Nは自動詞ています) | 25分 | 教室の物を一つずつ指して「このいすは?」と聞き、「このいすは壊れています」と答えさせる。「が」は見たままを言う、「は」はその物について話す、で一本だけ線を引く |
| 文型3(〜てしまいます/しまいました・完了) | 25分 | 教師が宿題の束を全部終える身ぶりで「もう全部やってしまいました」。「もう」「全部」「〜までに」といっしょに、すっかり終える意味を見せ、これからのことも言えることを確かめる |
| 文型4(〜てしまいました・遺憾) | 30分 | 財布をなくして困った顔、コップを落として割った絵で「なくしてしまいました」「割れてしまいました」。文型3と同じ形で気持ちが違うことを、顔の表情カードで見せる |
| 会話・練習C・問題 | 40分 | 会話は電車に忘れ物をして駅で相談する流れ。「〜てしまったんです」(第26課の「んです」)と、物の色・大きさ・置いた場所の説明が芯。練習Cは「壊れていますから取り替えてください」「〜てしまったんです」の場面。問題は聞き取りを教室で、残りは宿題に |
「窓が開いています」「電気が消えています」のように、ある変化が起きたあと、その結果がいまも続いている状態を、目に見えたまま言う文型です。使う動詞は、人がわざとする動作ではなく、物がひとりでにそうなることを表す自動詞(開きます・閉まります・壊れます・割れます・汚れます など)で、主語の物には「が」が付きます。第14課の「雨が降っています」は動作がいま続いていることでしたが、この課の「ています」は「変わって、そのまま」です。どちらの意味になるかは動詞で決まり、一瞬で変わる動詞(開く・壊れる・止まる)は結果の状態に、時間をかけて続く動詞(降る・走る)は動作の続きになります。文法の用語で言うと、これは「ている」のアスペクトのうち結果の状態(結果残存)の用法で、「開く・壊れる」のような変化を表す動詞(瞬間動詞・変化動詞)に「ている」が付くとこの意味になります。
N+が+自動詞のて形+います(ドアが開いて います/コップが割れて います)。だれがしたかは言わない
「後」の絵カードを10枚出して「ドアが閉まっています」「コップが割れています」と言わせる代入練習(練習Bの型)。次に、教師が教室の物をこっそり変えて(窓を開ける・電気を消す・机の上の紙を落とす)学生に目を閉じさせ、目を開けたら「何が違いますか」と聞くやり取り(練習Cの型)にする。助詞が「を」になったら、板書の「人がする=を/ひとりでに=が」を指す。
文型1と同じ「変わって、いまもその状態」の意味ですが、物を「は」で話題として取り上げ、その物がどうなっているかを説明する文型です。「このいすは壊れています」「あのコップは割れています」のように、「この・その・あの」で指した物や、相手の質問に出てきた物について答えるときに使います。文型1が見たまま気づいたことを言う(新しく目に入った)のに対して、文型2は「その物について言えば」という話し方です。「〜から、使わないでください」「取り替えてください」のように、だからどうしてほしいかを後ろに続けることが多いです。「は」と「が」の違いで言えば、文型1は目に入った物をそのまま言う(中立叙述の「が」)、文型2は物を主題にして説明する、という対応になります。
N+は+自動詞のて形+います(このいすは 壊れて います)。後ろに「〜から、〜てください」などを続けやすい
教師が実物や絵を持ち上げて「この〜は?」と聞き、「この〜は〜ています」と答える代入練習(練習Bの型)を10回。次に、学生を店員と客に分けて、客が「この〜は〜ていますから、取り替えてください」と言い、店員が「すみません。すぐ取り替えます」と答えるやり取り(練習Cの型)。品物のカード(汚れたシャツ・割れたコップ・外れたボタン)を客に配って回す。
「宿題はもう全部やってしまいました」のように、ある動作を最後まで終える・すっかり終えたことを言う文型です。「書きました」と言うより「残らず全部」「片づけた」という感じが強くなります。「〜てしまいました」で終えたこと、「〜てしまいます」でこれから全部終えるつもりであることを言い、「もう」「全部」「〜までに」といっしょによく使います。「〜てしまいます」はこれからのことなので、「今晩中に」「あしたまでに」のような時の言葉を付けると意味がはっきりします。文法の用語では、「〜てしまう」は動作が終わりまで行くことを表すアスペクトの形として説明され、文型4の気持ちの意味(モダリティに近い意味)と同じ形を持っています。
Vて形+しまいます/しまいました(書いて しまいます/食べて しまいました)。「しまいます」はグループI の動詞として活用する
仕事のカード(レポート・宿題・掃除・洗濯など)を見せて「〜はもう〜てしまいました」の言い換え(練習Bの型)。次に、手帳の絵を見せて「〜までに〜てしまいます」を言わせる。最後はペアで「週末までに何をしてしまいますか」と聞き合い、二つずつ答えるやり取り(練習Cの型)にする。
「財布をなくしてしまいました」「コップが割れてしまいました」のように、思ってもいなかった困ったことが起きて、残念だ・困った・申し訳ないという気持ちを言う文型です。形は文型3と同じですが、こちらは気持ちを伝えるのが中心で、ふつう「〜てしまいました」の過去の形で使います。自分の失敗を言うときは「なくす・忘れる・落とす」のような他動詞(「を」)が多く、物が勝手にそうなったと言うときは「壊れる・割れる」のような自動詞(「が」)が多いです。会話では第26課の「んです」を付けて「〜てしまったんです」と言い、事情を説明して助けを頼む前置きにすることがよくあります。文法の用語では、話し手の残念な気持ちを表すこの意味は、アスペクトではなく話し手の気持ち(モダリティ)に近い用法として、文型3の完了の意味と分けて扱われます。
Vて形+しまいました(なくして しまいました/壊れて しまいました)。事情を言うときは「〜てしまったんです」
困った出来事のカード(財布をなくす・かさを忘れる・服が汚れる・パソコンが壊れる)で「〜てしまいました」の言い換え(練習Bの型)。次に、駅の係の人と客、店員と客の役で、客が「〜てしまったんです」と事情を言い、相手が「どこで」「いつ」「どんな物ですか」と聞き返すやり取り(練習Cの型)。物の色・大きさを言わせる絵カードを客に持たせる。
この課の新出語は、文型1・2の材料になる自動詞(開きます・閉まります・つきます・消えます・壊れます・割れます・汚れます・外れます など)と、壊れたり割れたりする身の回りの物の語、会話で忘れ物の場所や形を説明するための語が中心です。自動詞は、第14課などで習った他動詞があるものは「開けます/開きます」のように組で、絵カードの裏表にして出し、助詞の「を/が」もいっしょに言わせます。物の語は割れた・汚れた状態の絵で覚えさせると、文型1の代入練習にそのまま使えます。下に、この課の文型の練習で使う語を選んで、連語と使う場面をつけました。
会話は、電車に物を忘れて駅の係の人に相談し、どんな物か(色・大きさ・中に入っている物)と、電車のどのあたりに置いたかを答えていく、という流れです。最初の「〜てしまったんです」は、文型4に第26課の「んです」が付いた形で、困った事情を説明して相手に聞いてもらう前置きになっていることに気づかせます。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、係の人の質問(どんな・どのくらい・どこ)を板書で抜き出してから、役割を替えて二回読みます。そのあと、学生がいま持っているかばんや傘を「忘れた物」にして、色・大きさ・入っている物を自分の言葉で説明させる再現にします。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題は問題の文法部分と、「教室や家の中で、いまどうなっているか」を文型1・2で三つ、「最近困ったこと」を「〜てしまいました」で二つ書くこと。次のコマの最初に自動詞と他動詞の組のカードテスト(開ける/開く など・10組)をしてから宿題を発表させ、第30課の「〜てあります」「〜ておきます」につなぐ。自動詞・他動詞の組の板書と時間の線は第30課で「〜てあります」と比べるときにも使うので、写真に撮っておく。
第29課の「〜ています」と第14課の「〜ています」の違いはどう教えればいいですか?
第14課の「雨が降っています」は動作がいま続いている意味、第29課の「窓が開いています」は変わったあとの状態が残っている意味です。説明より、黒板の時間の線で「ずっと動いている」と「変わって、そのまま」を上下に並べて見せるのが早いです。どちらになるかは動詞で決まり、開く・壊れる・止まる のように一瞬で変わる動詞は結果の状態になる、と動詞の側から整理します。
自動詞と他動詞の組は、この課でどこまで覚えさせますか?
この課で文型に使う組(開く/開ける、閉まる/閉める、つく/つける、消える/消す、止まる/止める)を中心に、組のカードで覚えさせます。形の規則の説明はこの課ではせず、「を+他動詞」「が+自動詞」の助詞の組だけを繰り返します。「壊れる・汚れる」は、この課では自動詞だけで覚えれば十分です。「割れる」だけは、文型4で「割る」と並べて、自分がしたか物がひとりでにそうなったかの違いを一度見せます。組は第30課の「〜てあります」で必ずまた使います。
「〜てしまいました」の「全部終えた」と「残念だ」は、どう見分けさせますか?
形は同じなので、動詞と場面で見分けます。書く・読む・片づける のように予定どおり終える動作なら完了、なくす・忘れる・壊れる のように思っていなかった出来事なら残念の意味になります。教室では笑顔と困った顔の表情カードを持ち替えて同じ形を言い、「よかったですね」と「大変ですね」のどちらが返事に合うかで確かめさせます。
「窓が開いています」と「窓が開けてあります」の違いを聞かれたら、どう答えますか?
「開けてあります」は第30課の文型で、だれかが目的があって開けた、その結果がいま残っている、という意味です。「開いています」は、だれがしたかを考えずに、いまの様子だけを言います。第29課で聞かれたら「だれかが何かのために開けたときの言い方を、次の課で習います」と予告にとどめ、この課では自動詞と「が」の組を固めるほうを優先します。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は自動詞の提出と文型1・2(物の状態を言う)まで、2コマ目は文型3・4(〜てしまいます/しまいました)と会話、練習C、問題です。自動詞と他動詞の組の定着が弱いクラスでは、2コマ目の最初に組のカードを5分入れてから文型3に進むと、文型4で助詞の誤りが減ります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。