日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅱ 第50課「心から感謝いたします」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 本冊』 ・ 会話「心から感謝いたします」

初級の最終課で、謙譲語が初めて出ます。第49課の尊敬語が「相手の行為を高める」形だったのに対し、この課は「自分の行為を低く言って、相手を立てる」形です。「お持ちします」「ご案内します」のように目上の人のために自分がする行為を言う形と、「伺います」「申します」「参ります」のような特別な語を扱います。行為をするのが相手か自分かで、尊敬語と謙譲語を選ぶのがこの課の芯で、「お〜になります」を自分に、「お〜します」を相手に使う取り違えを、二列の板書で毎回確かめます。特別な謙譲語は「相手に向かう行為に使う語」と「自分のことを改まって言う語」に分けて出すと、使う場面が整理しやすくなります。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「お持ちします」「ご案内します」で、目上の人のために自分がすることを申し出たり伝えたりできる
  • 行為をするのが相手か自分かで、尊敬語(お〜になります)と謙譲語(お〜します)を選び分けられる
  • 「伺います」「拝見します」「いただきます」などで、目上の人に向かう自分の行為を言える
  • 「申します」「参ります」「おります」「いたします」で改まった場の自己紹介や自分の予定を言い、初級で習った丁寧さの段階(普通体・です/ます・敬語)を相手と場面で選べる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)15分第49課の尊敬語を絵カードで数枚回し(先生がお帰りになります・召し上がります)、「だれがしますか」と聞いて主語が先生だと確かめる。次に教師が先生の荷物を持つ身ぶりで「わたしがお持ちします」と言い、板書を「先生がする(尊敬語)」「わたしがする(謙譲語)」の二列にする
文型1(お〈Vます形〉します)35分重い荷物・傘・地図の実物で、教師が申し出る場面を作り「お持ちしましょうか」「お貸しします」。ます形→お〜します の口頭練習を、使えない動詞(見ます・います・寝ます・来ます・します)の確認まで
文型2(ごNします)20分学校の案内・説明・連絡の場面で「ご案内します」「ご説明します」。「お」は ます形 に、「ご」は「N+します」の動詞に付くことが多い、と板書の二列で分け、「お電話します」は例外として一つだけ見せる
文型3(特別な謙譲語・目上のための行為)35分「ふつうの動詞|尊敬語|謙譲語」の三列表を作り、伺います・拝見します・いただきます・お目にかかります・申し上げます などを埋める。尊敬語の列は学生に言わせ、謙譲語の列を教師が足す。相手のところへ行く・相手の物を見る、と矢印で向かう先を示す
文型4(特別な謙譲語・自分自身のこと)30分改まった自己紹介と自分の予定で「〜と申します」「明日は大阪へ参ります」「午後は会社におります」「わたしがいたします」。文型3との違いは、向かう先に立てる相手がいるかどうか、で一本だけ線を引く
会話20分改まった場でお礼を述べる会話。謙譲語・尊敬語の部分に線を引かせてだれの行為かを言わせ、学生自身のお礼の相手と内容に置き換えて短いスピーチにする
練習C・問題・初級のまとめ25分練習Cは目上の人とのやり取り(申し出る・訪ねる・自分の予定を伝える)。問題は聞き取りを教室で。最後に同じ内容を「友達に(普通体)」「クラスの人に(です・ます)」「先生や会社の上の人に(敬語)」の三つで言い分けて、初級の丁寧さの段階を一枚の板書にまとめる

学習項目 1 お〈Vます形〉

意味・はたらき文型 1・活用

この項目は謙譲の形「お〜します」の作り方として扱います。「持ちます→お持ちします」「待ちます→お待ちします」のように、ます形の「ます」を取った形の前に「お」を付け、後ろに「します」を続けると謙譲の形になります。謙譲語は、自分(や自分の側の人)の行為を低く言って、その行為が向かう相手を立てる言い方なので、主語はいつも自分です。荷物を持つ・傘を貸す・知らせる のように、相手のためにする行為や相手に向かう行為に使い、「〜ましょうか」を付けて申し出るときによく使います。もっと改まった場では「します」を「いたします」にして「お持ちいたします」とも言います。文化審議会の「敬語の指針」の分け方では、お〜します は謙譲語Ⅰの代表的な形で、お〜いたします は謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)を重ねた形とされます。

接続

お+ます形(ます を取る)+します。ます の前が1拍の動詞(見ます・います・寝ます・着ます・来ます・します)には使わない

形
グループI: 持ちます→お持ちします、待ちます→お待ちします、貸します→お貸しします、送ります→お送りします、手伝います→お手伝いします、呼びます→お呼びしますグループII: 知らせます→お知らせします、見せます→お見せします、借ります→お借りします、調べます→お調べします、伝えます→お伝えします申し出: 荷物をお持ちしましょうか/駅までお送りしましょうかもっと改まった形: お待ちします→お待ちいたします

導入

  • 先生の荷物を持つ場面から学生の一人に先生役を頼み、その横に大きな紙袋を置く。教師が学生役になって紙袋を見て「先生、お持ちしましょうか」と言う。続けて重い本の箱・傘・地図を順に出し、「お持ちします」「お貸しします」「お見せします」と申し出る。板書は「お + ます形 + します」の枠で、「持ちます」の「ます」を消して前に「お」、後ろに「します」を書き、主語の欄に「わたし」と大きく書いておく。
  • 尊敬語と並べた二列の板書第49課の「お〈ます形〉になります」を左、「お〈ます形〉します」を右に書き、左の上に「先生が(相手が)」、右の上に「わたしが」と書く。同じ「待ちます」で「先生がお待ちになります」「わたしがお待ちします」を並べ、形がとても似ていることを色チョークで示す。この二列は課の終わりまで消さず、迷ったら「だれがしますか」と聞いて、学生に指で列を選ばせる。

板書案

〔青〕先生が:お + Vます + に なります(第49課)
〔赤〕わたしが:お + Vます + します
持ちます → 持ち(ます を消す)→ お持ちします
先生、その荷物、お持ちしましょうか。
〔×の印〕見ます・来ます・寝ます・います・します には付けない

場面と発話(自作)

  • 会社で、上の人が重そうな箱を一人で運ぼうとしている。手伝いを申し出る。部長、その箱、お持ちしましょうか。
  • 雨の日、授業のあとで先生が傘を持っていないのに気づいた。自分はもう一本持っている。先生、よかったら、この傘をお貸しします。
  • 先生にパーティーの時間を聞かれたが、まだ決まっていない。決まったら知らせると伝える。時間が決まったら、すぐお知らせします。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カード(持ちます・待ちます・貸します・送ります・呼びます・調べます・知らせます・見せます)で「ます形→お〜します」の言い換えを速いテンポで1周し、使えない動詞(見ます・来ます・寝ます)を混ぜて「使えません」と答えさせる。次に、困っている目上の人の絵を出し、学生が「お〜しましょうか」で申し出る問答(練習Bの型)にする。

  1. 口頭実物と絵カードをキューにする(紙袋=持ちます、傘=貸します、地図=見せます、時計=待ちます、電話の絵=知らせます)。教師がカードを上げて「持ちます」と言い、全体で「お持ちします」→ 列ごと → 個人の順で言わせる。慣れたらキューをカードだけにし、見ます・来ます・寝ます のカードを混ぜて「使えません」と答えさせる。最後に、困っている目上の人の絵(重い箱の部長、傘のない先生、道が分からないお客さん)を出し、「お〜しましょうか」の申し出に変える。
  2. ペアA は先生・上の人の役で、困りごとを書いたカードを3枚持つ(B には見せない)。A は「重いですね」「雨が降っていますね」のように言葉と身ぶりで困りごとを伝え、B は何に困っているかを考えて「お〜しましょうか」で申し出る。A は「ありがとう。お願いします」か「いいえ、大丈夫です」で答える。3枚終わったら役を替える。
  3. 産出「お手伝い申し出リレー」。一人ずつ、自分の生活の中の目上の人(アルバイト先の店長・ホストファミリーのお父さん・学校の先生など)と困る場面を一つ考え、その人に言う申し出を一文で言う。次の人は「ありがとう」と受けてから、自分の申し出につなぐ。教師が見るのは、主語が自分になっているか、お〜になります と混ざっていないか、1拍の動詞に付けていないか、〜てあげます を使っていないか。直すのは文の形だけにして、申し出の中身はほめる。

つまずきと手当て

  • 尊敬語と取り違える(自分のことに「わたしがお持ちになります」、先生のことに「先生がお待ちします」)。形は作れていても、自分を高め、先生を低める言い方になる。二列の板書に戻して「だれがしますか」と聞き、主語が自分なら右の列、と指で選ばせる
  • 「お〜してください」で相手に頼む(×先生、ここでお待ちしてください)。お〜します は自分の行為の形なので、相手に頼むときは第49課の「お待ちください」、と左の列の下に書き足す
  • 1拍の動詞や、相手に向かわない自分だけの行為に使う(×お見します、×毎朝6時にお起きします)。見ます・来ます・寝ます・います・します には使わない、相手のためでも相手に向かってもいない行為には使わない、と例を二つずつ見せる
  • 目上の人に「〜てあげます」で申し出る(「先生、荷物を持ってあげます」)。文法は正しいが、恩を着せるように聞こえて失礼なので、目上の人には「お持ちしましょうか」、と第24課の「〜てあげます」の板書の横に書く

既習の文型との違い

  • お〈Vます形〉になります(第49課)どちらも「お+ます形」で始まりますが、後ろが「になります」なら相手の行為を高める尊敬語、「します」なら自分の行為を低く言う謙譲語です。学習者は形の似た二つを混ぜ、自分のことを「わたしがお持ちになります」と言ったり、先生のことを「先生がお待ちします」と言ったりします。二列の板書の上に書いた「先生が」「わたしが」を指して、主語から列を選ばせます。
  • わたしは〈人〉に〈Vて形〉あげます(第24課)「〜てあげます」も自分がする親切を言う文型ですが、目上の人に向けて言うと、してやる という恩を着せた響きが出ます。同じ申し出を目上の人にするときは「お持ちしましょうか」と言い、「〜てあげます」は友達や年下の人との場面に残します。
  • 〈Vます形〉ましょうか(第14課)第14課の「持ちましょうか」と意味は同じ申し出ですが、「お持ちしましょうか」は相手を立てる分だけ改まります。友達には「持とうか」(普通体)、クラスの人には「持ちましょうか」、先生には「お持ちしましょうか」と三段で並べると、丁寧さの段階が見えます。
関連する文型

学習項目 2 ごNします

意味・はたらき文型 2

「案内します→ご案内します」「説明します→ご説明します」のように、「N+します」の動詞で、Nの前に「ご」を付けて謙譲の形にする文型です。意味とはたらきは文型1の「お〜します」と同じで、主語は自分、相手のためにする行為や相手に向かう行為に使います。「ご」が付くのは主に漢字の言葉(漢語)の名詞ですが、「お電話します」のように「お」が付く語もあるので、出てきたものから一つずつ覚えます。「勉強します」「運動します」のように相手に向かわない行為には使いません。「敬語の指針」の分け方では、ご〜します は お〜します と同じく謙譲語Ⅰの形で、「ご〜いたします」にすると謙譲語Ⅱの丁寧さも重なります。

接続

ご+N(案内・説明・連絡・紹介・相談 など)+します。もっと改まった場では ご+N+いたします

形
案内します→ご案内します、説明します→ご説明します、連絡します→ご連絡します紹介します→ご紹介します、相談します→ご相談します、招待します→ご招待します「お」が付く語: 電話します→お電話します申し出: 駅までご案内しましょうか/会議の時間をご連絡いたします

導入

  • 学校の案内役になる学生の一人に「新しく来た先生」の役を頼み、教室のドアから入ってもらう。教師が学生役になって「先生、学校の中をご案内します。こちらは図書室です」と言いながら教室の中を歩いて見せる。板書は「ご + N + します」の枠で、文型1の「お + ます形 + します」の下に並べる。案内・説明・連絡・紹介のカードを枠のNに入れ替えて、学生に言わせる。
  • 「お」と「ご」の分け方板書の左に「持ちます・待ちます・貸します」(お)、右に「案内します・説明します・連絡します」(ご)を並べ、右の列はどれも「N+します」の形だと気づかせる。「ご」は漢字の言葉に付くことが多い、とだけ言い、「お電話します」のカードを一枚だけ見せて、こういう語は出てきたら一つずつ覚える、と伝える。規則を細かく説明しすぎない。

板書案

〔赤〕お + Vます + します | 〔赤〕ご + N + します
持ちます・待ちます・貸します | 案内します・説明します・連絡します
会議室まで ご案内します。こちらへ どうぞ。
〔黄〕例外:電話します → お電話します
もっと改まって:ご案内 いたします

場面と発話(自作)

  • 会社に初めて来たお客さんが、会議室の場所が分からずに困っている。自分が連れて行くと言う。会議室までご案内します。こちらへどうぞ。
  • 来週の発表の内容について、先生に相談したい。授業のあとで声をかける。先生、発表のことでご相談したいことがあるんですが……。
  • 上の人に、明日の会議の時間が変わったら知らせると伝える。時間が変わったら、すぐご連絡します。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

N+します の絵カード(案内・説明・連絡・紹介・相談・招待)で「ご〜します」の言い換えをし、そこに文型1の動詞を混ぜて「お」か「ご」かを選ばせる(練習Bの型)。次に「ご〜しましょうか」で申し出るやり取りをし、最後に「お客さんを案内する」「先生に説明する」の短い場面練習(練習Cの型)につなぐ。

  1. 口頭「N+します」のカード(案内・説明・連絡・紹介・相談・招待)を順に上げ、教師が「案内します」と言って全体で「ご案内します」。次に文型1のカード(持ちます・知らせます・待ちます)を混ぜて、学生が「お」か「ご」かを選んで言う。最後に同じカードで「ご案内いたします」「お待ちいたします」まで言わせ、電話のカードを一枚だけ入れて「お電話します」を確かめる。
  2. ペアA は会社の受付(または学校の事務)の人、B は初めて来たお客さんの役。B は用事カード(会議室へ行きたい/書類の書き方が分からない/時間が変わったら知りたい)を1枚引き、A に用事を伝える。A は「ご案内します」「ご説明します」「ご連絡します」で答える。用事カードを3枚使ったら役を替え、2回目は「いたします」で言う。
  3. 産出「学校案内ロールプレイ」。3人組で、一人が新しく来た先生か学生の家族の役になり、二人が教室・図書室・事務室などを案内する。ご案内します・ご説明します・ご紹介します・お見せします を合わせて三つ以上使う、と決めておく。教師が見るのは、お と ご の選び方、自分の行為だけに使っているか、相手に頼むときに「ご〜してください」と言っていないか。終わったら一組ずつ前でやらせ、ほかの組は使った敬語の数を数える。

つまずきと手当て

  • 漢語の動詞に「お」を、ます形 の動詞に「ご」を付ける(×お案内します、×ご持ちします)。板書の左右の列に戻して、「N+します」なら「ご」が多い、と指す
  • 相手に向かわない行為に使う(×毎日ご勉強します、×休みにご旅行します)。相手のためにする・相手に向かう行為だけ、と文型1と同じ線を引く
  • 相手に頼むときに使う(×先生、もう一度ご説明してください)。相手の行為なら第49課の「ご説明ください」、と尊敬語の列を指す

既習の文型との違い

  • お〈Vます形〉/ごNください(第49課)同じ「ご+N」でも、後ろが「ください」なら相手に頼む尊敬の言い方、「します」なら自分の行為です。「ご説明ください」は相手が説明し、「ご説明します」は自分が説明します。学習者は二つを足して「もう一度ご説明してください」と言いがちなので、頼むなら「ご説明ください」、自分がするなら「ご説明します」と、二行で並べて見せます。
  • お〈Vます形〉(文型1)はたらきは同じで、違うのは前に付ける語です。ます形の動詞には「お」、「N+します」の動詞には「ご」が付くことが多く、学習者は「お案内します」「ご持ちします」と逆にします。どちらの列の動詞かを板書で指して選ばせます。
関連する文型

学習項目 3 特別な謙譲語(目上のための行為)

意味・はたらき文型 3

「行きます・聞きます→伺います」「見ます→拝見します」「もらいます・食べます・飲みます→いただきます」のように、「お〜します」の形ではなく、別の語で謙譲を表す動詞があります。この項目の語は、目上の人のところへ行く、目上の人の物を見る、目上の人から物をもらう のように、行為が向かう先に立てる相手がいるときに使います。だから「先生のお宅に伺います」は言えますが、会う人もいない場所へ一人で行くだけのときは「伺います」を使いません。文化審議会の「敬語の指針」(2007年)でいう「謙譲語Ⅰ(向かう先の人物を立てる謙譲語)」にほぼ当たると考えてよいでしょう。「食べます・飲みます」の意味の「いただきます」は、向かう先の人がはっきりしない場面でも使われるので、教室では「出してくれた人やその場の人を立てて、自分が食べる・飲むことを言う形」と説明すると扱いやすくなります。

接続

特別な謙譲語に「ます」を付けて使う(行きます・聞きます→伺います、見ます→拝見します、もらいます・食べます・飲みます→いただきます、会います→お目にかかります、言います→申し上げます、あげます→差し上げます)

形
行きます→伺います(明日、先生の研究室に伺います)/聞きます→伺います(ちょっと伺いたいんですが)見ます→拝見します(お写真を拝見しました)もらいます→いただきます(先生に辞書をいただきました)会います→お目にかかります、言います→申し上げます

導入

  • 三列表を埋める予定表の絵(来週の火曜日・先生の研究室)を見せ、学生に「火曜日に先生の研究室に行きます」と言わせてから、教師が「伺います」と言い直す。板書は「ふつうの動詞|尊敬語(第49課)|謙譲語」の三列表で、行きます/いらっしゃいます/伺います、見ます/ご覧になります/拝見します、食べます/召し上がります/いただきます、言います/おっしゃいます/申し上げます と書き埋める。尊敬語の列は学生に言わせ、謙譲語の列を教師が足していく。
  • 向かう先に先生がいるかどうか絵カードを二枚出し、一枚は先生の家の前、もう一枚は一人で行く海にする。先生の家の絵に「伺います」と書き、先生に向けて矢印を描いて「相手のところへ行くとき」と言う。海の絵には今は何も書かず、文型4で「参ります」を書き足すために残しておく。「拝見します」「いただきます」も、先生の物を見る・先生から物をもらう、と相手の絵に矢印を向けて見せる。

板書案

ふつう | 尊敬語(第49課)| 謙譲語(第50課)
行きます | いらっしゃいます | 伺います
見ます | ご覧になります | 拝見します
食べます・もらいます | 召し上がります | いただきます
〔赤〕わたし ──→ 先生(矢印:向かう先に先生がいる)
明日の3時に、先生の研究室に 伺います。

場面と発話(自作)

  • 先生に作文を見てもらう約束をした。何時に研究室へ行けばいいか確かめる。明日の3時ごろ、研究室に伺ってもいいでしょうか。
  • 会社の上の人の家に呼ばれ、上の人が旅行の写真を見せてくれた。きれいなお写真ですね。拝見して、わたしも行きたくなりました。
  • ほかの会社の受付で、約束していることを伝える。3時に部長さんにお目にかかる約束なんですが……。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

三列表の「ふつうの動詞」を教師が言い、学生が尊敬語と謙譲語の両方を言う(行きます→いらっしゃいます/伺います)。次に絵カードで主語を変えて(先生が見ます/わたしが見ます)どちらの列かを選ばせる練習Bの型。最後に「先生の研究室を訪ねる」「上の人の家に呼ばれる」場面のやり取りで、伺います・拝見します・いただきます を使わせる。

  1. 口頭教師がふつうの動詞(行きます・見ます・会います・言います・もらいます・聞きます)を言い、全体で尊敬語と謙譲語を続けて言う(行きます→いらっしゃいます、伺います)。次に矢印のついた絵カード(学生→先生の家、学生が先生の写真を見る、先生が学生に本をあげる、学生が会社の部長に会う)を出し、個人に「わたしは〜」で言わせる。主語が先生の絵を混ぜて、尊敬語の列も選ばせる。
  2. ペア「研究室を訪ねる約束」。A は先生の役で、来週の予定表を持つ(火曜の3時はいい、水曜はだめ など。B には見せない)。B は学生の役で、作文を見てもらいたい。B が「〜に伺ってもいいでしょうか」と聞き、A は予定表のとおりに答える。決まったら B が「では、火曜日の3時に伺います」と確かめる。予定表を替えて役も替える。
  3. 産出「先生の研究室訪問ロールプレイ」。研究室に入る・あいさつをする・先生の本や写真を見せてもらう・帰りに本をもらう・お礼を言って帰る、までを一続きでやる。伺います・拝見します・いただきます・お目にかかります から三つ以上使う。教師が見るのは、主語が自分か、相手のいない行為に使っていないか、尊敬語の列と混ざっていないか。先生役は教師が一度やって見せ、そのあと学生どうしで替わる。

つまずきと手当て

  • 尊敬語と取り違える(先生に「この写真を拝見してください」、自分のことに「わたしはもう召し上がりました」)。形は正しくても、先生を低め、自分を高める言い方になり失礼に聞こえる。三列表の列の上に書いた「相手が」「わたしが」に戻して選ばせる
  • 向かう先に立てる相手がいないのに使う(「休みに一人で海へ伺います」)。文の形は正しいが、伺う先に立てる相手がいないので、この語は使わない。相手のところへ行く・相手に聞くときだけ、と絵カードの矢印で確かめ、自分の予定を改まって言うなら文型4の「参ります」につなぐ
  • 「伺います」が「行きます」と「聞きます」の両方になることに戸惑う。「研究室に伺います(行く)」「ちょっと伺いたいんですが(聞く)」を二行で板書し、助詞と前後の言葉で分かる、と見せる
  • ニュースや店で聞いた「お伺いします」「拝見させていただきます」を混ぜて、どれが正しいのか迷う。「お伺いします」は二重敬語に当たる形だが、習慣として定着しているとされる(敬語の指針)。初級では「伺います」「拝見します」を言えれば十分で、ほかの形は聞いて分かればよい、と伝える

既習の文型との違い

  • 特別な尊敬語(第49課)同じ「行きます」でも、先生が行くなら「いらっしゃいます」、自分が先生のところへ行くなら「伺います」です。三列表の真ん中の列と右の列は主語で分かれます。学習者は覚えた語を主語を見ずに使い、先生に「この写真を拝見してください」と言ったり、自分のことを「もう召し上がりました」と言ったりします。
  • わたしは〈人〉にNをいただきます(第41課)「いただきます」は第41課で、目上の人から物をもらう言い方として既に習っています。この課では、それを三列表の謙譲語の列に入れ直し、「くださいます」(相手が主語)と向きが逆であることを確かめます。「先生がいただきました」のように主語を取り違える誤りは、この二つを並べると見つけやすくなります。
関連する文型

学習項目 4 特別な謙譲語(自分自身のこと)

意味・はたらき文型 4

「行きます・来ます→参ります」「います→おります」「言います→申します」「します→いたします」のように、自分のことを、聞いている相手に改まって丁寧に伝えるための語です。文型3の語と違って、行為が向かう先に立てる相手がいなくてもかまいません。「週末は京都へ参ります」は、京都に会う人がいなくても、聞き手に丁寧に伝える言い方として使えます。ふつうは「ます」の形で使い、自己紹介の「〜と申します」、「〜ています」を改まって言う「〜ております」、「ご〜いたします」の形でよく出ます。「敬語の指針」の「謙譲語Ⅱ(丁重語)」にほぼ当たると考えられますが、教室では「自分のことを丁寧に言う語」と言えば十分です。

接続

特別な謙譲語に「ます」を付けて使う(行きます・来ます→参ります、います→おります、言います→申します、します→いたします、知っています→存じております、知りません→存じません)

形
〈名前〉と申します(改まった自己紹介)明日は大阪へ参ります/駅の前で待っております(〜ています→〜ております)わたしがいたします/ご案内いたします知っています→存じております、知りません→存じません

導入

  • 改まった自己紹介から教師が上着をきちんと着る身ぶりをして、面接の場面を作る。いつもの自己紹介「わたしは〜です。〜から来ました」を言ったあと、「〜と申します。〜から参りました」と言い直す。板書は二段で、上にいつもの言い方、下に改まった言い方を書き、変わった語(〜です→〜と申します、来ました→参りました)を色チョークで囲む。学生も一人ずつ、改まった自己紹介を言う。
  • 文型3との違いを一本の線で文型3で使った海の絵カードを出し、ここに「参ります」を書き足す。板書に「伺います=相手のところへ行く」「参ります=自分が行くことを、聞いている人に丁寧に言う」と二行で書く。駅のアナウンスの「電車が参ります」を教師がまねて、だれかを立てているのではなく、聞いている人に丁寧に言っているのだと気づかせる。

板書案

いつもの言い方 → 改まった言い方
〜です → 〜と 申します/来ました → 参りました
います → おります/します → いたします
〔青〕伺います=相手のところへ行く 〔赤〕参ります=自分が行くことを、聞いている人に丁寧に言う
田中と申します。大阪から参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

場面と発話(自作)

  • アルバイトの面接で、店の人に初めて自己紹介をする。はじめまして。田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  • 上の人に明日の予定を聞かれた。午前は大阪の工場へ行き、午後は会社にいる。午前中は大阪の工場へ参ります。午後は会社におります。
  • 駅で、お客さんに知らない店の場所を聞かれた。申し訳ありません。その店は存じません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が普通の文(明日、空港へ行きます/3時まで会社にいます/それはわたしがします)を言い、学生が特別な謙譲語に言い換える(練習Bの型)。次に面接やアルバイト先への電話の場面で、改まった自己紹介と自分の予定を言うやり取り(練習Cの型)。文型3の語と混ぜたカードを出し、毎回「相手のところへ行きますか」と聞いて選ばせる。

  1. 口頭教師が普通の文をキューにする(名前カードで「わたしは田中です」、地図で「明日、空港へ行きます」、時計で「3時まで会社にいます」、自分を指して「それはわたしがします」)。全体で改まった言い方(申します・参ります・おります・いたします)に言い換え、列ごと → 個人へ。途中で文型3の「伺います」のカードを混ぜ、「相手のところへ行きますか」と聞いてから選ばせる。
  2. ペア「明日の予定の報告」。A は部長の役で質問カード(明日はどこへ行きますか/何時ごろ会社にいますか/その仕事はだれがしますか)を持つ。B は部下の役で、自分の予定表(午前は工場、午後は会社、夕方は空港)を持つ。A は第49課の尊敬語で聞き、B は参ります・おります・いたします で答える。予定表を交換して役を替える。
  3. 産出「面接の自己紹介1分」。一人ずつ、アルバイトや会社の面接を想定して、名前・出身・今どこに住んでいるか・今何をしているかを改まった言い方で言う。面接官の役の学生が質問を一つする。申します・参りました・おります・いたします を使う、と決めておく。教師が見るのは、自分の行為だけに使っているか、「申し上げます」と取り違えていないか、「〜ております」の形がくずれていないか。

つまずきと手当て

  • 目上の人の行為に使う(「先生は研究室におりますか」「先生、明日のパーティーに参りますか」)。文の形は正しいが、先生を低める言い方になり失礼に聞こえる。自分の行為だけに使う語なので、相手なら「いらっしゃいます」、と三列表の尊敬語の列を指す
  • 文型3の語と混同する(「休みに一人で海へ伺います」「〈名前〉と申し上げます」)。どちらも立てる相手に向かう語なので、自分の予定や名前を言うときには使わない。相手に向かうかどうかで分ける、と二行の板書を指し、名前を言うのは「申します」と決まった形で覚えさせる
  • 「おります」を「あります」の謙譲だと思う(×かばんの中にペンがおります)。おります は人(自分)がいるときの「います」の言い方、と第10課の「あります/います」の板書を思い出させる

既習の文型との違い

  • 特別な謙譲語(目上のための行為)(文型3)どちらも自分の行為を言う語ですが、文型3の語は行為が向かう先に立てる相手がいるときに使い、この項目の語は聞いている相手に自分のことを丁寧に言うときに使います。一人で海へ行くなら「参ります」で、「伺います」は使えません。名前を言うのは「申します」で、「申し上げます」は相手に何かを言うとき(お礼を申し上げます)です。
  • 〈場所〉にN(人)がいます(第10課)「おります」は人がいる意味の「います」を改まって言う語で、物の「あります」には使いません。第10課の「あります/います」の二列を思い出させ、「います」の列の下に「(自分が)おります」と書き足します。
  • 特別な尊敬語(第49課)先生に聞くときは「先生は明日、研究室にいらっしゃいますか」、先生に聞かれて答えるときは「はい、わたしは午後、研究室におります」のように、相手のことは尊敬語、自分のことはこの項目の語で言います。学習者は覚えたての「おります」を相手にも使い、先生に「明日は学校におりますか」と聞いてしまいます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、特別な謙譲語(伺います・拝見します・申します・参ります など)と、改まった場のあいさつやお礼に使う言葉が中心です。特別な謙譲語は単語だけで覚えさせず、ふつうの動詞・尊敬語・謙譲語の三列表に書き込んで、1組で練習させます。お礼やあいさつの決まった言い方は、意味を分解せずかたまりで覚えさせます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 伺います(うかがいます) 目上の人のところへ行くこと、目上の人に聞くことを、へりくだって言う言葉です。 お宅に〜・研究室に〜・ちょっと〜たいんですが
    先生に作文を見てもらう約束をしたい。
    「先生、明日の午後、研究室に伺ってもいいでしょうか。」
  • 拝見します(はいけんします) 目上の人の物や書いた物を見ることを、へりくだって言う言葉です。 写真を〜・お手紙を〜
    上の人が旅行の写真を見せてくれた。
    「すてきなお写真ですね。ゆっくり拝見します。」
  • お目にかかります(おめにかかります) 目上の人に会うことを、へりくだって言う言葉です。 部長に〜・初めて〜
    ほかの会社の人に、初めて会ったときのあいさつ。
    「初めてお目にかかります。どうぞよろしくお願いいたします。」
  • 申し上げます(もうしあげます) 目上の人に何かを言うことを、へりくだって言う言葉です。 お礼を〜・心から〜
    お世話になった先生に、卒業の日にお礼を言う。
    「先生、本当にありがとうございました。心からお礼を申し上げます。」
  • 申します(もうします) 自分の名前を言うとき、「言います」を改まって丁寧に言う言葉です。 〜と〜・田中と〜
    アルバイトの面接で、名前を言う。
    「はじめまして。田中と申します。」
  • 参ります(まいります) 自分が行く・来ることを、聞いている人に丁寧に言う言葉です。 大阪へ〜・すぐ〜
    上の人に呼ばれた。今すぐ行くと答える。
    「はい、すぐ参ります。」
  • おります(おります) 自分がいることを、聞いている人に丁寧に言う言葉です。「〜ています」は「〜ております」になります。 会社に〜・お待ちして〜
    上の人に、午後の予定を聞かれた。
    「午後は、ずっと会社におります。」
  • いたします(いたします) 自分がすることを、聞いている人に丁寧に言う言葉です。「ご〜いたします」の形でもよく使います。 わたしが〜・よろしくお願い〜・ご案内〜
    会議の準備をだれがするか、上の人が聞いた。
    「その準備は、わたしがいたします。」
  • 案内します(あんないします) 場所が分からない人と一緒に行ったり、道や中のことを説明したりします。 会議室まで〜・学校の中を〜
    初めて会社に来たお客さんが、会議室を探している。
    「会議室までご案内します。こちらへどうぞ。」
  • 連絡します(れんらくします) 電話やメールで、相手に必要なことを知らせます。 すぐ〜・電話で〜・メールで〜
    先生に、明日の授業に遅れるかもしれないと伝える。
    「遅れるときは、電話でご連絡します。」
  • 知らせます(しらせます) 相手がまだ知らないことを、言ったり書いたりして伝えます。 時間を〜・結果を〜
    パーティーの時間を、上の人にまだ伝えていない。
    「時間が決まったら、すぐお知らせします。」

会話の扱い

会話は、題のとおり、お世話になった人たちに改まった場でお礼を述べる流れです。「感謝いたします」の「いたします」は文型4の語で、聞いている人たち全体に向けて自分の気持ちを丁寧に述べる言い方になっていることを、三列表に戻して確かめます。最初はCDか教師の読みで流れをつかませ、謙譲語と尊敬語の部分に線を引かせて、だれの行為かを一つずつ言わせます。そのあと、学生自身がお礼を言いたい相手(先生・ホストファミリー・アルバイト先の人など)と内容に置き換えて、1分ほどの短いスピーチを作らせると、初級の締めくくりの活動になります。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

宿題は問題の文法部分と、お世話になった人へのお礼のスピーチ(または手紙)を、お〜します/ご〜します を一つ、特別な謙譲語を二つ以上使って書くこと。次のコマで発表させ、尊敬語と謙譲語の取り違えだけをその場で直す。初級のまとめとして、三列表(ふつうの動詞・尊敬語・謙譲語)と、普通体・です/ます・敬語の言い分けの板書を学生に写させ、中級に進んでも使える一枚にしておく。

よくある質問

  • 第50課の謙譲語と第49課の尊敬語は、どう区別させればいいですか?

    形よりも先に「だれがしますか」で区別させます。板書を「先生が(尊敬語)」「わたしが(謙譲語)」の二列にして課の終わりまで消さず、迷うたびに主語から列を選ばせます。三列表(ふつうの動詞・尊敬語・謙譲語)を学生に埋めさせると、二つの課の語を一度に整理できます。

  • 「伺います」と「参ります」の違いは、どう説明しますか?

    「伺います」は先生のところへ行く・先生に聞く のように、行為が向かう先に立てる相手がいるときの語です。「参ります」は自分が行く・来ることを、聞いている人に丁寧に言う語で、行き先に人がいなくても使えます。教室では、先生の家の絵と一人で行く海の絵を並べ、海には「参ります」だけが使える、と見せるのが分かりやすいでしょう。

  • 「お〜します」の「お」と「ご」は、どう教え分けますか?

    ます形の動詞(持ちます・待ちます)には「お」、「N+します」の動詞(案内します・説明します)には「ご」が付くことが多い、とだけ伝えます。「お電話します」のような例外は、出てきたものから一つずつ覚えさせます。和語と漢語の規則を細かく説明するより、板書の二列に動詞を振り分ける練習のほうが定着します。

  • 第50課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と文型1・文型2、文型3の三列表の導入まで、2コマ目は文型3の練習と文型4、会話、練習C、初級のまとめです。尊敬語の定着が弱いクラスでは、1コマ目の最初に第49課の三列表を10分ほど復習してから始めると、取り違えが減ります。

  • 初級の最後の課として、敬語はどこまで言えればいいですか?

    「お〜しましょうか」で申し出る、「伺ってもいいでしょうか」で訪ねる約束をする、「〜と申します」で改まった自己紹介をする、の三つが言えれば十分です。会社の外の人に自分の会社の人のことを言う言い方(ウチとソト)や、二重敬語の扱いは、聞いて分かる程度にとどめ、中級で改めて扱います。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。