日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第14課「みどり町までお願いします」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「みどり町までお願いします」

タクシーで行き先を伝える場面の課で、動詞の「て形」が初めて出ます。て形は第15課から先の「〜てもいいですか」「〜てから」「〜ている」の土台なので、この課は時間の半分を活用の練習に使うつもりでいてよい課です。文型は「〜てください」(頼む・指示する・勧める)、「〜ましょうか」(相手のためにすることを申し出る)、「〜ています」(今している最中)の3つで、どれも教室の中の動作で状況が作れます。て形を目ではなく音で覚えさせることが、この課のいちばんの仕事です。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞をⅠ・Ⅱ・Ⅲのグループに分け、ます形からて形に変えられる(Ⅰグループの音便の型を見て言える)
  • 「〜てください」で、人に頼む・指示する・勧めることができ、「すみませんが」でやわらげられる
  • 「〜ましょうか」で、相手のためにすることを申し出、「お願いします」「けっこうです」で受け答えができる
  • 「〜ています」で、今している最中の動作を言える・「今、何をしていますか」と尋ねられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)10分第13課の「〜たいです」「〜に行きます」を絵カードで復習。あわせて既習の動詞をます形で黒板に並べ、「ます」を取った形(ます形)を全員で言わせておく。これがグループ分けの材料になる
て形の作り方35分Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのグループの見分け方 → Ⅰグループの音便4型を唱える → 動詞カードでます形→て形の変換を型ごと・混ぜて。ここに20〜30分かけてよい
文型1 〜てください35分教師の指示(立ってください)を動作で示して導入 → 板書の枠 → 練習Bの型(絵カード)→ 練習Cの型(頼む・勧める)。1コマ目はここまで
文型2 〜ましょうか25分教師が暑がる・学生の荷物が重い、という状況で申し出て導入。答え方(お願いします/けっこうです)をセットで練習し、第6課の「いっしょに〜ましょう」と分ける
文型3 〜ています30分教師と学生の動作で「今、何をしていますか」。絵カードで人物ごとに言わせ、否定「〜ていません」まで
会話20分タクシーの場面。聞く前に「どこへ行くか・どこで止まるか」を予告 → 2回聞く → 机をタクシーに見立てて役割練習
練習C・問題・宿題25分場面のやり取り3本をペアで。問題の聞き取りでて形の聞き分けを確かめる。宿題はて形の書き取り

学習項目 1 て形の作り方

意味・はたらき活用

「て形」は、動詞の「ます」の前の形(ます形)から作る活用形です。この課の「〜てください」「〜ています」だけでなく、第15課以降の「〜てもいいですか」「〜てから」「〜ている」など、初級の文型の多くがこの形に乗ります。作り方は動詞のグループで決まり、Ⅱ・Ⅲグループは「ます」を「て」に替えるだけですが、Ⅰグループはます形の最後の音(い・ち・り/み・び・に/き・ぎ/し)で4つの型に分かれます(音便)。教科書はここで初めてⅠ・Ⅱ・Ⅲのグループ分けを出すので、グループの見分け方もこの課で扱います。

接続

ます形(「ます」を取った形)の最後の音で決まる。Ⅱ・Ⅲは「ます→て」、Ⅰは最後の音によって「って/んで/いて・いで/して」

形
Ⅰグループ い・ち・り → って(買います→買って/待ちます→待って/取ります→取って)Ⅰグループ み・び・に → んで(読みます→読んで/遊びます→遊んで/呼びます→呼んで)Ⅰグループ き → いて/ぎ → いで(書きます→書いて/泳ぎます→泳いで)。例外: 行きます→行ってⅠグループ し → して(話します→話して/貸します→貸して)Ⅱグループ ます → て(食べます→食べて/見ます→見て/開けます→開けて)Ⅲグループ します→して/来ます→来て(勉強します→勉強して)

導入

  • グループ分けを先にする既習の動詞カード(ます形)を黒板に並べ、「ます」の前の音を一語ずつ言わせる。「ます」の前が え段(食べ・開け・教え)ならⅡ、「します・来ます」はⅢ、残り(い段)はⅠ、と3つの列に分けて貼る。い段なのにⅡに入る動詞(見ます・います・起きます・借ります)は「特別」と言って別の色で囲み、数が少ないので覚えてしまうように言う。
  • Ⅰグループは音でまとめて唱える板書の横に「い・ち・り → って」「み・び・に → んで」「き → いて/ぎ → いで」「し → して」と書き、リズムをつけて全員で唱える。そのあと教師がます形を言い、学生がて形で返す(カードを見せながらテンポよく)。「行きます→行って」だけは最後に「特別」と言って別枠に板書し、「行いて」は無いと先に言っておく。

板書案

て形 = ます形 から つくる
Ⅰ い・ち・り → って  み・び・に → んで  き → いて/ぎ → いで  し → して
Ⅱ ます → て   Ⅲ します → して/来ます → 来て
買います → 買って  読みます → 読んで  書きます → 書いて  話します → 話して
食べます → 食べて  見ます → 見て  勉強します → 勉強して
〔赤〕行きます → 行って(特別)  〔青〕ます形の最後の音に丸

場面と発話(自作)

  • て形の練習。教師がⅠグループのカードを次々に見せ、学生が口をそろえて答える。「買います、買って。待ちます、待って。帰ります、帰って。」
  • 学生がペアになり、ひとりがます形、相手がて形を言う。ⅠとⅡが混ざるカードで確かめる。「食べます。」「食べて。」「起きます。」「起きて。」「書きます。」「書いて。」
  • 宿題の答え合わせ。教師が「行きます」のて形をクラスに聞き、規則どおりに作った学生を直す。「行きます、行って。『行いて』じゃありません。」

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

ます形→て形の口頭変換をカードで。Ⅰグループの型ごと → Ⅰの4型を混ぜて → Ⅱ・Ⅲも混ぜて既習の動詞全部、の順で、1周ごとに速くする。文型1に乗せる前に、て形だけの1分間テスト(教師が10語言い、学生が書く)をして、落ちた語をその場で直す。

  1. 口頭教師がます形を言う(または動詞カードを見せる)→ 全員 → 列 → 個人の順でて形を返させる。キューは「買います」「待ちます」「読みます」「書きます」「泳ぎます」「話します」「食べます」「見ます」「来ます」のように型ごとにまとめ、2周目から混ぜる。「行きます」は最後に単独で3回。テンポを落とさず、つまった学生には「ますの前の音は何ですか」とだけ聞いて、型の表を見させる。
  2. ペアⅠ・Ⅱ・Ⅲが混ざった動詞カード20枚を1組に渡す。Aがカードを見てます形を言い、Bがて形で返す。10枚で交替。正しいかどうかは黒板の4型の表を見て二人で確かめる。終わったら「Ⅱなのに い段の動詞」(見ます・起きます・借ります・います)だけを二人で集め直して言わせる。
  3. 産出学生が既習の動詞を自分で5つ選び、ます形→て形をノートに書いて隣と見せ合う。そのあと教師が10語を言う1分間テスト(書き取り)。教師が見るのは、小さい「っ」「ん」濁点の書き落とし、帰ります・入ります・切ります(Ⅰ)と借ります・起きます(Ⅱ)の取り違え、行きますの3点。落ちた語はその場で全員で言い直してから文型1に入る。

つまずきと手当て

  • ⅠとⅡの取り違え。「帰ります」「入ります」「切ります」はⅠだが、ます形で見るとⅡの「借ります」「起きます」と同じく「り・き」(い段)で終わるので、「借りて」につられて「帰て」「入て」「切て」と作る(正しくは帰って・入って・切って)。逆に「起きます」「借ります」はⅡなので「起きて」「借りて」。見た目で判断させず、まぎらわしい動詞を早めにカードに入れて、音で覚えさせる
  • 「行きます」を規則どおり「行いて」にする。例外はこの1語だけなので、最初から別枠で見せる。同じ「き」の「書きます→書いて」「聞きます→聞いて」と並べて違いを目立たせる
  • 小さい「っ」と「ん」、濁点の書き落とし・聞き落とし。「まって」を「まて」、「よんで」を「よで」、「泳いで」を「泳いて」と書く。書き取りでは「っ・ん・゛」を赤で丸をつけ、発音でも「まって」と「まて」を聞き比べさせる

既習の文型との違い

  • 〈Vます形〉たいです(第13課)第13課の「〜たいです」は、ます形(「ます」を取った形)にそのまま「たい」を付けるだけで、動詞のグループは関係ありませんでした。て形は同じくます形から作りますが、Ⅰグループだけ最後の音が変わる(音便)ので、ここで初めてグループ分けが必要になります。「買いたい」の感覚で「*買いて」「*読みて」と作る誤りが出たら、Ⅰグループは音が変わると表に戻します。
関連する文型

学習項目 2 〈Vて形〉ください

意味・はたらき文型 1

相手にある動作をするように頼む・指示する・勧める言い方です。先生が学生に出す指示、客が店の人やタクシーの運転手に頼むこと、家に来た人に「どうぞ食べてください」と勧めることまで、同じ形で言えます。丁寧な形ですが、目上の人に「こうしてください」と頼むには直接すぎることがあるので、「すみませんが」「ちょっと」を前に付けてやわらげる言い方もいっしょに出します。第3課の「Nをください」(物をもらう)と似ているので、こちらは動詞のて形に付く、という点を強調します。

接続

動詞のて形+ください

形
VてくださいちょっとVてくださいすみませんが、VてくださいどうぞVてください(勧め)

導入

  • 教師の指示で状況を作る前の段階で作ったて形をそのまま使う。「立ってください」「座ってください」「本を開けてください」「窓を見てください」と教師が言いながら動作で示し、学生にそのとおり動かせる。何度か繰り返して意味が伝わってから、板書は「Vて + ください」の枠。枠の左にます形、右にて形を並べて、ます形から作る流れを見せる。
  • 頼む・勧めるに広げる教師が重い荷物を持って困った顔をし、学生に「すみませんが、ちょっと手伝ってください」と頼む。次に菓子の絵カードを出して「どうぞ、食べてください」と勧める。指示・頼み・勧めの3つを同じ形で言えることを、場面の絵3枚(教室・荷物・お茶)で並べて見せる。

板書案

Vて + ください
立ちます → 立って → 立ってください。
窓を 開けます → 開けて → 窓を 開けてください。
〔赤〕て  〔青〕ます → て の矢印
すみませんが、ちょっと + Vてください(頼む)  どうぞ + Vてください(勧める)

場面と発話(自作)

  • タクシーで目的地の近くまで来た。駅の前で降りたいので、客が運転手に言う。「すみません、駅の前で止めてください。」
  • 会社で、コピー機の使い方が分からない。隣の席の同僚に頼む。「すみませんが、ちょっと教えてください。」
  • 友達が初めてうちに来た。玄関で中に入るように言い、お茶を出して勧める。「どうぞ、入ってください。お茶を飲んでください。」

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード(窓を開ける・電気を消す・名前を書く・ここで待つ)を見せ、教師が「窓・開けます」とキューを出し、学生が「窓を開けてください」。て形が怪しい学生には、ます形を先に言わせてから作らせる。練習Cの型: 場面カード(タクシー・教室・友達のうち)で、頼む人と受ける人(「はい、いいですよ」「はい、分かりました」)のペア練習。受ける側の返事まで一組で覚えさせる。

  1. 口頭動作の絵カード(窓を開ける・電気を消す・名前を書く・ここに座る・パスポートを見せる)を見せ、「窓・開けます」とキューを出す → 全員で「窓を開けてください」。次にキューをます形だけ(「書きます」)→ 名詞だけ(「名前」)と減らし、最後は絵だけで言わせる。同じ絵で、指示(教師の声で)・頼み(すみませんが)・勧め(どうぞ)の3通りの前置きでも言わせる。
  2. ペア「先生役」と「学生役」。先生役が絵カードを引いて「〜てください」と言い、学生役はそのとおりに動く(立つ・座る・本を開ける・窓を見る)か、教室でできないものは「はい、分かりました」と答える。5枚で交替。次に場面カード(タクシー・会社・友達のうち)を渡し、頼む人と受ける人(「はい、いいですよ」)で1往復ずつ言わせる。
  3. 産出学生が「教室で先生に」「タクシーで運転手に」「友達に」頼みたいことを一つずつ考えて言う(書かせてもよい)。教師が見るのは、て形が正しいか、頼みに「すみませんが」が付いているか、「Nをください」と混ざっていないか(「水をください」と「水を飲んでください」)。目上に向けた言い方が強いときは「ちょっと」を足させる。

つまずきと手当て

  • 「書きますください」「書くください」のように、て形を経由せずに付ける。板書の枠を「Vて」まで含めて示し、「書きます → 書いて → 書いてください」の3段で言わせる
  • 「水を飲んでください」と「水をください」の混同。「Nをください」は物をもらうとき、「Vてください」は動作を頼むとき。店で言う「水をください」と、客に勧める「水を飲んでください」を並べて見せる
  • 目上の人に「〜てください」だけで言って、指示のように聞こえる(先生に「あした来てください」)。この課では「すみませんが」「ちょっと」を付けるところまで。もっと丁寧な頼み方(〜ていただけませんか)は第26課で扱うと言っておく

既習の文型との違い

  • Nをください(第3課の会話)第3課の「これをください」は名詞に付いて物を求める言い方で、「〜てください」は動詞のて形に付いて動作を求める言い方です。学習者は「*水を飲みますください」のように動詞に直接付けたり、店で「水をください」と言うべきところを「水を飲んでください」と言ったりします。「Nを+ください」と「Vて+ください」の2つの枠を板書で並べ、前に来るのが名詞か動詞かで分けます。
  • Vませんか(第6課)「いっしょに映画を見ませんか」は相手を誘う言い方で、する人は話し手と相手の両方です。「〜てください」はする人が相手だけで、話し手はしません。「映画を見てください」で誘ったつもりになる学習者がいるので、「だれが見ますか」と聞いて、する人を確かめさせます。
関連する文型

学習項目 3 〈Vます形〉ましょうか

意味・はたらき文型 2

相手のために自分が何かをすることを申し出る言い方です。「(わたしが)持ちましょうか」のように、する人は話し手で、相手は「すみません、お願いします」と受けるか、「いいえ、けっこうです」と断ります。第6課の「いっしょに行きましょう」は相手を誘う言い方で、こちらは相手の負担を引き受ける申し出なので、「いっしょに」が付かない・「か」で終わる、という形の違いと、相手が困っている状況から導入します。

接続

動詞のます形(「ます」を取った形)+ましょうか

形
VましょうかNをVましょうか(受ける)すみません、お願いします(断る)いいえ、けっこうです

導入

  • 教師が困っている学生に申し出る教師が暑そうに顔をあおぐ演技をして「暑いですね。エアコンをつけましょうか」と言い、学生の返事を待たずに「すみません、お願いします」と自分で答えて見せる。次に荷物をたくさん持った学生を指名して「持ちましょうか」。板書は「Vましょうか」の枠と、矢印で「すみません、お願いします/いいえ、けっこうです」の二つの答え。
  • 第6課の「ましょう」と分ける「いっしょに昼ご飯を食べましょう」(誘い)と「写真を撮りましょうか」(申し出)を並べて板書し、誘いは「いっしょに(わたしたち)」、申し出は「わたしが」と、主語を手で指して見せる。学生に「だれがしますか」と聞いて確かめる。

板書案

Vます → Vましょうか (わたしが します)
持ちます → 持ちましょうか。
→ すみません、お願いします。 / → いいえ、けっこうです。
〔比べる〕いっしょに 食べましょう(第6課・わたしたち) ⇔ 持ちましょうか(わたし)
〔赤〕か  〔青〕「わたしが」に丸

場面と発話(自作)

  • タクシーを降りるとき、客が大きな箱を二つ持っている。運転手が客に声をかける。「箱を一つ持ちましょうか。」「すみません、お願いします。」
  • 会社で、同僚が急いで資料のコピーをしている。手が空いているので声をかける。「コピーしましょうか。」「いいえ、けっこうです。すぐ終わります。」
  • 教室で、学生が教師の説明を聞き取れずに困った顔をしている。「もう少しゆっくり話しましょうか。」「はい、お願いします。」

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 困っている人の絵(重い荷物・暗い部屋・暑い部屋)を見せ、教師が「荷物・持ちます」とキューを出し、学生が「持ちましょうか」。次に教師が「はい」「いいえ」のカードを出し、受け答え(すみません、お願いします/いいえ、けっこうです)までセットで返させる。練習Cの型: 3人組で「困っている人・申し出る人・見ている人」を回し、見ている人が形を直す。

  1. 口頭困っている人の絵カード(重い荷物・暗い部屋・暑い部屋・遠くにある塩)を見せ、教師が「荷物・持ちます」「電気・つけます」「エアコン・つけます」「塩・取ります」とキューを出す → 全員で「〜ましょうか」。次に教師が「はい」「いいえ」のカードを上げ、「すみません、お願いします」「いいえ、けっこうです」を返させる。問いと答えを一組で、全員 → 個人。
  2. ペアAが困っている人(絵カードを持つ)、Bが申し出る人。Bは絵を見て「〜ましょうか」、Aはカードの裏の「はい/いいえ」を見て答える。5枚で交替。慣れたら、Aは自分で困った演技をし(寒そうにする・荷物を落とす)、Bは何をすべきか考えて申し出る。
  3. 産出3人組で「困っている人・申し出る人・見ている人」を回す。困っている人は教室にある物で状況を作り、申し出る人は自分の言葉で言い、見ている人は「ましょうか」が「わたしが」になっているか、「いっしょに」が混ざっていないか、断り方が「いいえ、けっこうです」になっているかを見て、終わってから一言ずつ伝える。教師は、相手に頼むつもりで「教えましょうか」と言う主語の取り違えだけを拾って全体に戻す。

つまずきと手当て

  • 「先生、教えましょうか」(教えてほしいつもり)のように、する人を取り違える。「ましょうか」はいつも「わたしが」する、と主語を言わせて確かめる。相手に頼むときは文型1の「教えてください」
  • 「いっしょに持ちましょうか」のように誘いと混ざる。「いっしょに」が付くのは誘い(第6課)、申し出には付かない、と並べて切る
  • 断りの答えが「いいえ、いいです」だけになり、相手に冷たく聞こえることがある。この課では「いいえ、けっこうです」を一つの決まり文句として覚えさせる

既習の文型との違い

  • Vましょう(第6課)「いっしょに行きましょう」は誘いで、する人は話し手と相手の両方です。「持ちましょうか」はする人が話し手だけで、相手の負担を引き受ける申し出です。形は「か」の有無と「いっしょに」の有無で分かれます。学習者は「いっしょに持ちましょうか」のように誘いの形で申し出てしまうので、「だれがしますか」で主語を言わせます。
  • Vませんか(第6課)「ませんか」は相手の気持ちを聞く誘いで、「ましょうか」は自分がすることの申し出です。「手伝いませんか」は「あなたも手伝いますか」、「手伝いましょうか」は「わたしが手伝います」で、する人が逆になります。
  • 〈Vて形〉ください(この課の文型1)同じ場面でも、相手にしてほしいときは「持ってください」、自分がするときは「持ちましょうか」です。手伝ってほしいときに「手伝いましょうか」と言ってしまう学習者がいるので、文型1と2を並べて「する人」を矢印で示します。
関連する文型

学習項目 4 〈Vて形〉います

意味・はたらき文型 3

今その動作をしている最中であることを表します。「今、何をしていますか」「本を読んでいます」のように「今」といっしょに使うと意味がはっきりします。否定は「〜ていません」。この課で扱うのは目の前で進んでいる動作だけで、「結婚しています」「住んでいます」のような結果の状態や、「毎日〜ています」のような習慣は第15課に回します。「います」は人や動物の存在の「います」と形が同じですが、ここでは「雨が降っています」のように物が主語でも「います」のままです。

接続

動詞のて形+います(否定は Vていません)

形
Vています今、Vています今、何をしていますかVていません

導入

  • 教師の動作と学生の動作で「今」を作る教師が本を読む動作をしながら「今、何をしていますか」と自分に問い、「本を読んでいます」と答える。次に学生ひとりに動作(書く・飲む・電話をかける)をさせ、ほかの学生に「〜さんは今、何をしていますか」と聞く。板書は「今 + Vて + います」の枠。
  • 絵の人物で「している最中」を見せる公園でいろいろな人が何かをしている絵(散歩する・写真を撮る・泳ぐ・遊ぶ)を見せ、「この人は?」と一人ずつ言わせる。ます形(これからする)との違いは、「あした映画を見ます」と「今、映画を見ています」を並べ、時間の線を板書して「あした」と「今」を指で示す。

板書案

今、Vて + います
読みます → 読んで → 今、本を 読んでいます。
今、何を していますか。 → 〜ています。
〜ていますか。 → いいえ、〜ていません。
〔時間の線〕きのう ── 今 ── あした  〔赤〕「今」の上に ています  〔青〕「あした」の上に ます

場面と発話(自作)

  • 友達から電話がかかってきた。今何をしているか聞かれて答え、あとでかけ直すと言う。「今、晩ご飯を食べています。あとで電話をかけます。」
  • 会社で、客が田中さんを訪ねてきた。受付の人が、田中さんが今どこで何をしているか答える。「田中さんは今、会議室で話しています。少し待ってください。」
  • 休み時間の教室。教師が入ってきて、学生に何をしているか聞く。「何をしていますか。」「音楽を聞いています。」

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 動作の絵カード(食べる・書く・泳ぐ・電話をかける)で、教師「今、何をしていますか」→ 学生「〜ています」。て形が崩れたら、その場でます形から言い直させる。否定は「〜さんは食べていますか」→「いいえ、食べていません。〜ています」の形で。練習Cの型: 電話の場面でペア。「もしもし、今、何をしていますか」→「〜ています」→「じゃ、あとで電話をかけます」まで一組で。

  1. 口頭動作の絵カード(食べる・書く・泳ぐ・電話をかける・音楽を聞く・写真を撮る)で、教師「今、何をしていますか」→ 全員「〜ています」。次に人物名(山田さん・田中さん)を足して「山田さんは今、何をしていますか」→「〜ています」。否定は、食べている絵を見せて「書いていますか」と聞き、「いいえ、書いていません。食べています」まで一息で言わせる。
  2. ペア公園や会社の絵(5〜6人がそれぞれ違うことをしている)を1枚渡す。Aが人物を指して「この人は今、何をしていますか」、Bが「〜ています」。3人で交替。次にAだけが絵を見てBは見ない形にし、Bが「〜さんは〜ていますか」と推測で聞き、Aが「はい、〜ています/いいえ、〜ていません」と答える。
  3. 産出電話のロールプレイ。Aが友達に電話をかけて「もしもし、今、何をしていますか」、Bは今実際にしていることを演技しながら答え、「じゃ、あとで電話をかけます」で終える。教師が見るのは、「今」なのにます形(「今、食べます」)になっていないか、て形が崩れていないか、「*雨が降ってあります」のように「あります」に置き換えていないか。

つまずきと手当て

  • 「今、ご飯を食べます」のように、今している最中にもます形を使う(母語で進行形を区別しない学習者に多い)。「今」を強く言って、て形に直させる
  • 「います/あります」の区別を持ち込んで「雨が降ってあります」と言う。「ています」の「います」は存在の「います」とは別物で、主語が物でも「います」のまま、と押さえる
  • 「行っています」「来ています」「結婚しています」を「今、行くところ」「今、結婚するところ」と取る。これらは動作の最中ではなく結果の状態なので、この課では出さず、出たら第15課で扱うと言う。くだけた「食べてる」もまだ教えない

既習の文型との違い

  • NをVます(他動詞)(第6課)第6課からのます形は、これからすること(あした映画を見ます)や習慣(毎朝パンを食べます)を表し、今まさにしている最中は言えません。「今、ご飯を食べます」は「これから食べる」の意味になると伝え、「今」を付けて区別させます。時間の線を板書して、「今」の上だけが「ています」になることを見せます。
  • 〈場所〉にN(人)がいます(第10課)第10課の「います」は人や動物がそこにいること、「あります」は物があることを言う動詞でした。「ています」の「います」は動詞に付く部品で、主語が人でも物でも「います」のままです。第10課の区別を持ち込んで「*雨が降ってあります」「*バスが止まってあります」と言う誤りが出ます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は「開けます・閉めます・つけます・消します・待ちます・持ちます・手伝います」のような、教室で動作にできる動詞が中心です。語の導入は意味の説明より、教師の動作と絵カードで「ます形→て形」をセットで出し、文型1の指示の練習の中で定着させます。「ゆっくり・すぐ・あとで・もう少し」の副詞は会話と文型2・3の受け答えに使う語なので、単独で教えず、場面のやり取りの中で出します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 開けます(あけます) 閉まっているドアや窓を、開いた状態にします。 窓を〜・ドアを〜・かばんを〜
    教室が暑い。窓のそばの学生に頼む。
    「すみませんが、窓を開けてください。」
  • 閉めます(しめます) 開いているドアや窓を、閉じた状態にします。 ドアを〜・窓を〜
    外の音がうるさい。隣の人に申し出る。
    「うるさいですね。ドアを閉めましょうか。」
  • つけます(つけます) 電気やエアコンのスイッチを入れます。 電気を〜・エアコンを〜・テレビを〜
    部屋が暗い。
    「暗いですね。電気をつけましょうか。」「はい、お願いします。」
  • 消します(けします) 電気やエアコンを止めます。「つけます」の反対です。 電気を〜・エアコンを〜・テレビを〜
    エアコンが強くて寒い。
    「すみませんが、エアコンを消してください。寒いです。」
  • 待ちます(まちます) 人や物が来るまで、その場所にいます。 ここで〜・少し〜・友達を〜
    会社の受付で、客に声をかける。
    「ここで少し待ってください。」
  • 持ちます(もちます) 物を手に取ります。重い物を運ぶときにも使います。 荷物を〜・かばんを〜
    友達の荷物が重そうに見える。
    「重いですね。持ちましょうか。」
  • 手伝います(てつだいます) ほかの人の仕事をいっしょにして、その人を助けます。 仕事を〜・〜さんを〜
    会社で、同僚がコピーをたくさん持って忙しそう。
    「忙しいですね。手伝いましょうか。」
  • 止めます(とめます) 動いている車などを、動かないようにします。 車を〜・タクシーを〜・ここで〜
    タクシーで、降りたい場所が近づいた。
    「あの信号の前で止めてください。」
  • 急ぎます(いそぎます) 時間がないので、速くします。 少し〜・仕事を〜
    会議の時間が近い。同僚に頼む。
    「会議は3時からです。すみませんが、急いでください。」
  • 使います(つかいます) 道具や物で、何かをします。 辞書を〜・パソコンを〜・はしを〜
    練習の時間。学生が辞書を見ていいか迷っている。
    「どうぞ、辞書を使ってください。」
  • ゆっくり(ゆっくり) 速くないようすです。急がないで、時間をかけてします。 〜話します・〜食べます・〜休みます
    教師の話が速くて聞き取れない。
    「すみませんが、もう少しゆっくり話してください。」
  • あとで(あとで) 今ではなくて、少し時間がたってからです。 〜電話をかけます・〜行きます・〜話します
    電話がかかってきたが、今は会議の最中。
    「今、会議をしています。あとで電話をかけます。」

会話の扱い

タクシーに乗って行き先を告げ、途中で道を指示し、目的地で降りる、という流れの会話です。「〜てください」の指示と「〜ましょうか」の申し出が自然に入るので、文型1・2のあとに聞かせます。聞く前に「どこへ行きますか」「どこで止まりますか」の2点を予告しておき、1回目は聞くだけ、2回目は客が指示している文のところで手を挙げさせます。そのあと教室の机をタクシーに見立て、客と運転手で役割練習をし、行き先と止まる場所を学生の住む町のものに替えて言わせると、会話の形がそのまま使えることが伝わります。

宿題と次のコマ

宿題は、既習の動詞30語ほどのます形→て形の書き取り(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの記号も書かせる)と、「〜てください」を使った頼みの文を3つ。次のコマは最初にて形のカードを5分やってから、第15課の「〜てもいいですか」「〜てはいけません」に入ります。て形が定着していないとそのまま崩れるので、ここで一度て形の小テストにしてもよいところです。

よくある質問

  • 第14課のて形はどの順で教えればいいですか?

    先に既習の動詞をⅠ・Ⅱ・Ⅲの3つの列に分けます(「ます」の前が え段ならⅡ、します・来ますはⅢ、残りがⅠ)。次にⅠグループの4つの型(い・ち・り→って/み・び・に→んで/き→いて・ぎ→いで/し→して)をリズムで唱え、Ⅱ・Ⅲは「ます→て」だけと短く片づけます。「行きます→行って」は最後に別枠で1語だけ出します。文型1に入る前に、て形だけの1分間テストで落ちた語を直しておくと、あとの文型の練習が止まりません。

  • 「〜ましょうか」と「〜ましょう」「〜ませんか」の違いは何ですか?

    「〜ましょうか」は話し手が相手のために何かをする申し出で、する人は「わたし」です。第6課の「いっしょに〜ましょう」「〜ませんか」は誘いで、する人は「わたしたち」です。形では「か」の有無と「いっしょに」の有無で分かれます。導入では相手が困っている状況を作り、「だれがしますか」と主語を言わせて区別させます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習とて形の作り方、文型1「〜てください」まで。2コマ目は文型2「〜ましょうか」と文型3「〜ています」、会話、練習Cと問題です。て形の定着が弱いクラスでは、次の課の頭にて形の小テストを5分入れると、第15課の「〜てもいいですか」で崩れません。

  • 「〜てください」の板書はどう組みますか?

    左にます形、真ん中にて形、右に「Vて+ください」の枠を置き、「立ちます→立って→立ってください」の3段を矢印でつなぎます。て形の部分は赤で目立たせ、ます形から作る流れが一目で分かるようにします。枠の下に「すみませんが、ちょっと」(頼む)と「どうぞ」(勧める)の前置きを足して、指示・頼み・勧めが同じ形で言えることを示します。

  • 「〜ています」はこの課でどこまで教えますか?

    この課では「今、〜ています」で目の前で進んでいる動作だけを扱います。「結婚しています」「住んでいます」のような結果の状態と、「毎日〜ています」のような習慣は第15課に回します。学習者から「行っています」が出たら、意味がずれるので今は使わないと言って止めておきます。くだけた「〜てる」もまだ出しません。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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