タクシーで行き先を伝える場面の課で、動詞の「て形」が初めて出ます。て形は第15課から先の「〜てもいいですか」「〜てから」「〜ている」の土台なので、この課は時間の半分を活用の練習に使うつもりでいてよい課です。文型は「〜てください」(頼む・指示する・勧める)、「〜ましょうか」(相手のためにすることを申し出る)、「〜ています」(今している最中)の3つで、どれも教室の中の動作で状況が作れます。て形を目ではなく音で覚えさせることが、この課のいちばんの仕事です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第13課の「〜たいです」「〜に行きます」を絵カードで復習。あわせて既習の動詞をます形で黒板に並べ、「ます」を取った形(ます形)を全員で言わせておく。これがグループ分けの材料になる |
| て形の作り方 | 35分 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのグループの見分け方 → Ⅰグループの音便4型を唱える → 動詞カードでます形→て形の変換を型ごと・混ぜて。ここに20〜30分かけてよい |
| 文型1 〜てください | 35分 | 教師の指示(立ってください)を動作で示して導入 → 板書の枠 → 練習Bの型(絵カード)→ 練習Cの型(頼む・勧める)。1コマ目はここまで |
| 文型2 〜ましょうか | 25分 | 教師が暑がる・学生の荷物が重い、という状況で申し出て導入。答え方(お願いします/けっこうです)をセットで練習し、第6課の「いっしょに〜ましょう」と分ける |
| 文型3 〜ています | 30分 | 教師と学生の動作で「今、何をしていますか」。絵カードで人物ごとに言わせ、否定「〜ていません」まで |
| 会話 | 20分 | タクシーの場面。聞く前に「どこへ行くか・どこで止まるか」を予告 → 2回聞く → 机をタクシーに見立てて役割練習 |
| 練習C・問題・宿題 | 25分 | 場面のやり取り3本をペアで。問題の聞き取りでて形の聞き分けを確かめる。宿題はて形の書き取り |
「て形」は、動詞の「ます」の前の形(ます形)から作る活用形です。この課の「〜てください」「〜ています」だけでなく、第15課以降の「〜てもいいですか」「〜てから」「〜ている」など、初級の文型の多くがこの形に乗ります。作り方は動詞のグループで決まり、Ⅱ・Ⅲグループは「ます」を「て」に替えるだけですが、Ⅰグループはます形の最後の音(い・ち・り/み・び・に/き・ぎ/し)で4つの型に分かれます(音便)。教科書はここで初めてⅠ・Ⅱ・Ⅲのグループ分けを出すので、グループの見分け方もこの課で扱います。
ます形(「ます」を取った形)の最後の音で決まる。Ⅱ・Ⅲは「ます→て」、Ⅰは最後の音によって「って/んで/いて・いで/して」
ます形→て形の口頭変換をカードで。Ⅰグループの型ごと → Ⅰの4型を混ぜて → Ⅱ・Ⅲも混ぜて既習の動詞全部、の順で、1周ごとに速くする。文型1に乗せる前に、て形だけの1分間テスト(教師が10語言い、学生が書く)をして、落ちた語をその場で直す。
相手にある動作をするように頼む・指示する・勧める言い方です。先生が学生に出す指示、客が店の人やタクシーの運転手に頼むこと、家に来た人に「どうぞ食べてください」と勧めることまで、同じ形で言えます。丁寧な形ですが、目上の人に「こうしてください」と頼むには直接すぎることがあるので、「すみませんが」「ちょっと」を前に付けてやわらげる言い方もいっしょに出します。第3課の「Nをください」(物をもらう)と似ているので、こちらは動詞のて形に付く、という点を強調します。
動詞のて形+ください
練習Bの型: 絵カード(窓を開ける・電気を消す・名前を書く・ここで待つ)を見せ、教師が「窓・開けます」とキューを出し、学生が「窓を開けてください」。て形が怪しい学生には、ます形を先に言わせてから作らせる。練習Cの型: 場面カード(タクシー・教室・友達のうち)で、頼む人と受ける人(「はい、いいですよ」「はい、分かりました」)のペア練習。受ける側の返事まで一組で覚えさせる。
相手のために自分が何かをすることを申し出る言い方です。「(わたしが)持ちましょうか」のように、する人は話し手で、相手は「すみません、お願いします」と受けるか、「いいえ、けっこうです」と断ります。第6課の「いっしょに行きましょう」は相手を誘う言い方で、こちらは相手の負担を引き受ける申し出なので、「いっしょに」が付かない・「か」で終わる、という形の違いと、相手が困っている状況から導入します。
動詞のます形(「ます」を取った形)+ましょうか
練習Bの型: 困っている人の絵(重い荷物・暗い部屋・暑い部屋)を見せ、教師が「荷物・持ちます」とキューを出し、学生が「持ちましょうか」。次に教師が「はい」「いいえ」のカードを出し、受け答え(すみません、お願いします/いいえ、けっこうです)までセットで返させる。練習Cの型: 3人組で「困っている人・申し出る人・見ている人」を回し、見ている人が形を直す。
今その動作をしている最中であることを表します。「今、何をしていますか」「本を読んでいます」のように「今」といっしょに使うと意味がはっきりします。否定は「〜ていません」。この課で扱うのは目の前で進んでいる動作だけで、「結婚しています」「住んでいます」のような結果の状態や、「毎日〜ています」のような習慣は第15課に回します。「います」は人や動物の存在の「います」と形が同じですが、ここでは「雨が降っています」のように物が主語でも「います」のままです。
動詞のて形+います(否定は Vていません)
練習Bの型: 動作の絵カード(食べる・書く・泳ぐ・電話をかける)で、教師「今、何をしていますか」→ 学生「〜ています」。て形が崩れたら、その場でます形から言い直させる。否定は「〜さんは食べていますか」→「いいえ、食べていません。〜ています」の形で。練習Cの型: 電話の場面でペア。「もしもし、今、何をしていますか」→「〜ています」→「じゃ、あとで電話をかけます」まで一組で。
この課の新出語は「開けます・閉めます・つけます・消します・待ちます・持ちます・手伝います」のような、教室で動作にできる動詞が中心です。語の導入は意味の説明より、教師の動作と絵カードで「ます形→て形」をセットで出し、文型1の指示の練習の中で定着させます。「ゆっくり・すぐ・あとで・もう少し」の副詞は会話と文型2・3の受け答えに使う語なので、単独で教えず、場面のやり取りの中で出します。
タクシーに乗って行き先を告げ、途中で道を指示し、目的地で降りる、という流れの会話です。「〜てください」の指示と「〜ましょうか」の申し出が自然に入るので、文型1・2のあとに聞かせます。聞く前に「どこへ行きますか」「どこで止まりますか」の2点を予告しておき、1回目は聞くだけ、2回目は客が指示している文のところで手を挙げさせます。そのあと教室の机をタクシーに見立て、客と運転手で役割練習をし、行き先と止まる場所を学生の住む町のものに替えて言わせると、会話の形がそのまま使えることが伝わります。
宿題は、既習の動詞30語ほどのます形→て形の書き取り(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの記号も書かせる)と、「〜てください」を使った頼みの文を3つ。次のコマは最初にて形のカードを5分やってから、第15課の「〜てもいいですか」「〜てはいけません」に入ります。て形が定着していないとそのまま崩れるので、ここで一度て形の小テストにしてもよいところです。
第14課のて形はどの順で教えればいいですか?
先に既習の動詞をⅠ・Ⅱ・Ⅲの3つの列に分けます(「ます」の前が え段ならⅡ、します・来ますはⅢ、残りがⅠ)。次にⅠグループの4つの型(い・ち・り→って/み・び・に→んで/き→いて・ぎ→いで/し→して)をリズムで唱え、Ⅱ・Ⅲは「ます→て」だけと短く片づけます。「行きます→行って」は最後に別枠で1語だけ出します。文型1に入る前に、て形だけの1分間テストで落ちた語を直しておくと、あとの文型の練習が止まりません。
「〜ましょうか」と「〜ましょう」「〜ませんか」の違いは何ですか?
「〜ましょうか」は話し手が相手のために何かをする申し出で、する人は「わたし」です。第6課の「いっしょに〜ましょう」「〜ませんか」は誘いで、する人は「わたしたち」です。形では「か」の有無と「いっしょに」の有無で分かれます。導入では相手が困っている状況を作り、「だれがしますか」と主語を言わせて区別させます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習とて形の作り方、文型1「〜てください」まで。2コマ目は文型2「〜ましょうか」と文型3「〜ています」、会話、練習Cと問題です。て形の定着が弱いクラスでは、次の課の頭にて形の小テストを5分入れると、第15課の「〜てもいいですか」で崩れません。
「〜てください」の板書はどう組みますか?
左にます形、真ん中にて形、右に「Vて+ください」の枠を置き、「立ちます→立って→立ってください」の3段を矢印でつなぎます。て形の部分は赤で目立たせ、ます形から作る流れが一目で分かるようにします。枠の下に「すみませんが、ちょっと」(頼む)と「どうぞ」(勧める)の前置きを足して、指示・頼み・勧めが同じ形で言えることを示します。
「〜ています」はこの課でどこまで教えますか?
この課では「今、〜ています」で目の前で進んでいる動作だけを扱います。「結婚しています」「住んでいます」のような結果の状態と、「毎日〜ています」のような習慣は第15課に回します。学習者から「行っています」が出たら、意味がずれるので今は使わないと言って止めておきます。くだけた「〜てる」もまだ出しません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。