みんなの日本語 初級Ⅰ 第12課「祇園祭はどうでしたか」の教案
『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「祇園祭はどうでしたか」
週末や旅行の思い出を「〜でした」「〜かったです」で話し、2つのものや、あるまとまりの中のものを比べて自分の好みを言えるようになる課です。文法の芯は2つあります。前半は形容詞と名詞の文の過去形で、学習者はここで初めて形容詞そのものの形が変わることに出会います。後半は比較の3つの形(より・どちら/のほうが・いちばん)で、「2つを比べる」と「3つ以上から選ぶ」を分けて教えると混ざりません。
このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ
この課のねらい(Can-do)
- 過去の天気・行った場所・食べた物の感想を「〜でした」「〜かったです」で言える
- い形容詞と、な形容詞・名詞とで過去・否定の作り方が違うことを分けて言える(「いい→よかった」を含む)
- 2つを比べて「N1はN2より〜」「どちらが〜/〜のほうが」で聞いたり答えたりできる
- まとまりの中から「〜で〜がいちばん〜」で自分の好みを言える
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 導入(復習と第8課のつなぎ) | 10分 | 第8課の形容詞カードで現在の肯定・否定を素早く復習し、い形容詞と な形容詞を色分けして板書に残す。第4課の「昨日・先週」と「〜ました」も出して、過去の時間語をそろえておく |
| 文型1 | 30分 | 昨日の天気の絵カードで「でした」「じゃありませんでした」。板書は第8課の枠の横に過去を並べ、語は変わらず文末だけが変わると見せる |
| 文型2 | 50分 | い形容詞の「〜かったです」「〜くなかったです」。「いい→よかった」は別枠。文型1と混ざらないように、い/な の色分けを保ったまま進める。1コマ目の残りで文型1と2を混ぜた変換(カードの色を伏せて、い/な を学生に判断させる)を入れ、1コマ目はここまで |
| 文型3・4 | 35分 | 実物2つで「より」→ 同じ2つで「どちらが/のほうが」「どちらも」。文型3の答えを文型4の質問に戻す流れで一続きに練習する。2コマ目はここから |
| 文型5 | 25分 | カードを3枚以上にして「〜で〜がいちばん」。範囲と疑問詞(何・だれ・どこ・いつ)の対応表を板書に残す |
| 会話 | 15分 | 祇園祭の絵・写真で場面を作り、「ただいま/お帰りなさい」の定型と「〜はどうでしたか」→ 感想(文型1・2)の流れを練習。学生自身の週末に置き換えてロールプレイ |
| 練習C・問題 | 15分 | 練習Cは「感想を聞く」「どちらがいいか相談する」の2場面をペアで。問題(聞き取り・穴埋め)は時間がなければ宿題に回す |
学習項目 1 〈なA〉/Nでした 〈なA〉/Nじゃありませんでした
意味・はたらき文型 1
名詞文と な形容詞文を過去にする形です。「です」を「でした」に、「じゃありません」を「じゃありませんでした」に替えるだけで、語そのものは変わりません。昨日の天気・先週の予定・行った場所の様子など、終わったことの評価や説明に使います。第4課の「〜ました」で動詞の過去はすでに知っているので、「過去=終わったこと」の感覚はあり、新しいのは形だけです。文法の見方で言えば、名詞述語文・ナ形容詞述語文のテンス(過去)を、述語の「です」を「でした」にすることで表す形で、語の部分は活用しません。
接続
なA/N+でした(否定は なA/N+じゃありませんでした。「では」も可)
形
昨日は雨でした先週は暇じゃありませんでした京都はにぎやかでしたか。…はい、とてもにぎやかでした
導入
- 「昨日の天気」で でした を出す黒板に「今日」と「昨日」を書き、窓の外を指して「今日はいい天気です」と言う。次に昨日の天気の絵カード(雨)を「昨日」の下に貼り、「昨日は…」と止めて学生に言わせる。「雨です」と出たら首を振って「雨でした」と直し、「です→でした」を枠で板書する。否定は「昨日は暇でしたか」と学生に聞き、「いいえ、暇じゃありませんでした」まで引き出す。
- 板書の枠第8課の枠「N/なA+です/じゃありません」の横に「でした/じゃありませんでした」を並べ、変わるのは文末だけで語は変わらないことを見せる。質問の「でしたか」もここで足す。
板書案
N/なA + でした
N/なA + じゃありませんでした
昨日は 雨でした。
先週は 暇じゃありませんでした。
〔青〕です → でした 〔青〕じゃありません → じゃありませんでした(語は変わらない)
場面と発話(自作)
- 月曜日の朝、先生がクラスに週末のことを聞く。学生が答える。日曜日は雨でした。うちで休みました。
- 先週コンサートに行った友達に、感想を聞かれて答える。とてもにぎやかでした。人がたくさんいました。
- 昨日の試験は簡単だったかと同じクラスの人に聞かれた。実際は難しかった。いいえ、簡単じゃありませんでした。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
絵カード(雨・雪・曇り・いい天気)と「昨日・おととい・先週」のカードを組み合わせ、「昨日は雨でした」を代入。次に「昨日は暇でしたか」と1人ずつ聞き、はい/いいえで答えさせてから、隣の人に同じ質問をさせる(練習Cの型)。
- 口頭時の語のカード(昨日・おととい・先週)と天気の絵カード(雨・雪・曇り・いい天気)を並べ、「昨日・雨」とキューを出す → 全員で「昨日は雨でした」。次に「先週・暇・いいえ」→「いいえ、暇じゃありませんでした」、「京都・にぎやか」→「京都はにぎやかでした」と、名詞・な形容詞・否定を混ぜる。最後はカードを指すだけで1人ずつ言わせる。
- ペア「先週の天気カレンダー」の情報差。Aのカードには月〜水曜日、Bのカードには木〜土曜日の天気だけが描いてある。Bが「月曜日は雨でしたか」と聞き、Aは「はい、雨でした」か「いいえ、雨じゃありませんでした。曇りでした」と答え、Bが空欄に絵を描く。3日分で役を交替し、最後に2人のカレンダーを見比べて答え合わせをする。
- 産出「週末の天気レポート」。先週の土曜日と日曜日について、自分の町の天気と、行った場所の様子を「〜は雨でした。図書館は静かでした。」のように2〜3文で発表する。教師が見るのは、「じゃありません+でした」の順、動詞の「ました」を付けていないか(「雨ました」)、い形容詞を「でした」で言っていないか(「寒いでした」)。最後の誤りが出たら直さずにメモし、文型2の導入に使う。
つまずきと手当て
- 「雨でしたじゃありません」のように過去と否定の順を逆にする。「じゃありません+でした」の順を枠で見せ、「じゃありませんでした」を一語のように何度も発音させる
- 「昨日は雨ました」と動詞の「ました」を付ける。名詞・な形容詞の文は「です」の仲間で「ます」の仲間ではないことを、第8課の枠に戻って確かめる
- 「でした」を「今はそうではない」の意味だと思い込む(「京都は有名でした」=今は有名ではない、と取る)。過去にそう感じた・そうだったと言う形で、今のことは言っていないと一言添える程度でよい
既習の文型との違い
- Vます/Vません/Vました/Vませんでした(第4課)動詞の過去は「ます」を「ました」に替え、名詞・な形容詞の過去は「です」を「でした」に替えます。どちらも「昨日・先週」と一緒に使うので、学習者は形を混ぜて「*昨日は雨ました」「*暇ました」と言います。板書で「ます」の仲間と「です」の仲間を左右に分け、語がどちらの列に入るかで形を選ばせます。
- Nは〈なA〉です/Nは〈なA〉じゃありません(第8課)第8課の現在の文に、文末の「でした」を足すだけで過去になります。否定は「じゃありません」の後ろに「でした」を足す形で、学習者が自分で作ると「*暇じゃないでした」のような形が出ます。第8課の枠の右に1列足して、増えるのは文末だけだと見せます。
関連する文型
学習項目 2 〈いA(い)〉かったです 〈いA(い)〉くなかったです
意味・はたらき文型 2
い形容詞の過去の形です。名詞・な形容詞と違って「です」は変わらず、形容詞そのものが「〜い→〜かった」「〜くない→〜くなかった」と変わります。学習者にとって初めて「語の形が変わる形容詞」なので、第8課の否定「〜くない」と並べて、語の終わりだけが動くと見せます。「いい」は「よかった/よくなかった」と特別な形になります。文法の見方で言えば、イ形容詞は語の終わり(「い」)が活用する語で、過去は「かった」、否定は「くない」で表します。「きれい」「有名」のように「い」で終わっても な形容詞の語があるので、どちらの仲間かは第8課の分類で決めます。
接続
いA の「い」を取って+かったです(否定は「い」を取って+くなかったです。いい→よかったです/よくなかったです)
形
寒い→寒かったです/寒くなかったですおいしい→おいしかったです/おいしくなかったですいい→よかったです/よくなかったですどうでしたか。…とても楽しかったです
導入
- 気温の絵カードで「今日」と「昨日」を対比第8課の「暑い/寒い」の絵カードを使い、「今日は暑いです」と言わせたあと、昨日のカード(もっと強い太陽)を出して「昨日は…」で止める。学生が「暑いでした」と言ったら、板書の上でその「い」を消して「かった」に書き直し、色チョークで変わる部分を示す。否定は「〜くない」のカードから「〜くなかった」を同じ手順で。
- 「いい」だけ別枠「いい天気」の絵カードで「昨日はいい天気でした」(名詞文なので文型1)と「昨日は天気がよかったです」の2つを板書し、「いい」は「よかった」になると枠の外に書く。否定「よくない→よくなかった」も一緒に出す。
板書案
いA:〜い → 〜かったです
いA:〜くない → 〜くなかったです
寒い → 寒かったです / 寒くなかったです
〔赤〕いい → よかったです/よくなかったです(別枠)
〔青〕なA:暇でした ←→ 〔赤〕いA:寒かったです
場面と発話(自作)
- 友達と日本料理の店に行った。次の日、別の友達に感想を聞かれた。天ぷらはおいしかったです。でも、高かったです。
- 週末に海へ行った。先生に「海はどうでしたか」と聞かれた。水が冷たかったです。でも、楽しかったです。
- 昨日の試験について、同じクラスの人と話す。思ったほど難しくなかった。試験は難しくなかったです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
第8課のい形容詞カード(高い・安い・楽しい・面白い・寒い・暑い)を1枚ずつ見せ、「〜かったです」「〜くなかったです」を全員で、次に1人ずつ。慣れたら「先週の休みはどうでしたか」をペアで聞き合い、「〜でした」(文型1)と「〜かったです」(文型2)が混ざった答えを言わせる。
- 口頭い形容詞の絵カードを見せ、「昨日・寒い」とキューを出す → 全員で「昨日は寒かったです」。続けて「旅行・楽しい」→「旅行は楽しかったです」、「試験・難しい・いいえ」→「いいえ、難しくなかったです」、「天気・いい」→「天気がよかったです」。教師が現在形を言い学生が過去形で返す変換を、肯定・否定・「いい」を混ぜて速く回す。慣れたら な形容詞と名詞のカードも混ぜ、色を伏せてどちらの形にするかを学生に判断させる。
- ペア「旅行カード」の情報差。Aが引くカードには、行った場所(海・山・京都)と感想の絵(暑い・楽しい・人が多い)が描いてある。Bはカードを見ずに「どこへ行きましたか」「暑かったですか」と質問し、Aはカードのとおりに答える。Bは聞いたことをメモし、最後に「海は暑かったです。でも、楽しかったです。」とまとめて言う。2枚で交替。
- 産出「週末どうでしたかインタビュー」。教室を歩いて3人に「先週の休みは何をしましたか」「どうでしたか」と聞き、メモを取る。席に戻って1人を選び、「〇〇さんは山へ行きました。寒かったです。でも、楽しかったです。」とクラスに紹介する。教師が見るのは、「寒いでした」「寒かったでした」の形、「いいかった」、きれい・有名を い形容詞のように「きれかった」としていないか。
つまずきと手当て
- 「寒いでした」「寒かったでした」。「です」はそのままで、変わるのは形容詞の方だと枠で確かめ、な形容詞の「でした」と並べて違いを見せる
- 「いかったです」「いくなかったです」。「いい」は「よい」が元の形で、過去と否定は「よ〜」になると覚えさせる。頻度が高いので毎回の口慣らしに入れる
- 「おいしいじゃありませんでした」と な形容詞の否定の形を借りる。第8課で「〜くない」が言えていても過去で混ざるので、「〜くなかった」と「〜じゃありませんでした」を聞き分けるクイズを1回入れる
既習の文型との違い
- Nは〈いA〉です/Nは〈いA(〜い)〉くないです(第8課)第8課で覚えた否定「〜くない」は、最後の「い」を「かった」に替えて「〜くなかった」になります。つまり過去の肯定も否定も、「い」を「かった」に替える同じ規則でできます。この規則を使わずに文型1の「でした」を足し、「*寒くないでした」と言う学習者が多いので、「くない」の「い」に印を付けて替えさせます。
- 〈なA〉/Nでした 〈なA〉/Nじゃありませんでした(第12課 文型1)同じ課の文型1では文末の「です」が「でした」に変わり、この文型では形容詞の終わりが変わって「です」はそのままです。学習者は2つを混ぜて「*寒いでした」「*暇かったです」と言います。「きれい」「有名」は「い」で終わっても な形容詞なので、「*きれかったです」にならないよう、カードの色で仲間を確かめてから変換させます。
関連する文型
学習項目 3 N1はN2よりAです
意味・はたらき文型 3
2つのものを比べて、N1の方が程度が上だと言う形です。「より」は比べる相手(基準)に付き、「N2と比べると」の意味です。形容詞の形を変えずに比べられ(英語の -er のような比較の形は無い)、い形容詞・な形容詞のどちらも使えます。過去のことも「きのうはきょうより寒かったです」と言えます。質問は「N1はN2よりAですか」で、答えは「はい、〜より〜です」か「いいえ」になります。差が大きいことを言いたいときは「ずっと」を形容詞の前に入れます。文法の見方で言えば、「より」は比較の基準を示す格助詞で、この文は2つのものの程度の差を言う比較の文です。「より」の文は比べた結果を言うだけなので、「この本はあの本より高いです」と言っても、この本が高い本だとは限りません。
接続
N1+は+N2+より+A(いA/なA)+です(程度を強めるときは「より」のあとに「ずっと」)
形
N1はN2よりAですN1はN2よりずっとAですN1はN2よりAですか。…はい、N2よりAです
導入
- 実物を2つ並べる大きさの違う本を2冊、机の上に置き、「この本は大きいです」「この本は小さいです」と第8課の形で言わせる。次に2冊を近づけ、大きい方を持ち上げて「この本はこの本より大きいです」と言い、「より」を枠で板書する。教室の中のもの(かばん・辞書・窓)で2〜3回言わせる。人の背の高さで言うと気にする学生がいるので、物で始める。
- 板書の形と「ずっと」「N1 は N2 より A です」の枠を書き、「より」の下に「←比べる相手」と矢印を付ける。差が大きいときは「ずっと」を「より」のあとに入れると見せ、同じ文を「ずっと大きいです」と言い直させる。
板書案
N1 は N2 より A です。
新幹線 は バス より 速いです。
〔赤〕より = 比べる相手(基準)に付く
〔矢印〕新幹線(↑ 速い) バス(基準)
ずっと:新幹線は バスより ずっと 速いです。
場面と発話(自作)
- 留学生が、日本の夏と自分の国の夏について先生に話す。日本の夏はわたしの国の夏より暑いです。
- 新幹線と電車、どちらで京都へ行くか友達と話している。新幹線は電車よりずっと速いです。でも、高いです。
- 寮と前のうちを比べて、同じ国の友達に説明する。寮は前のうちより安いです。でも、駅から遠いです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
絵カードを2枚ずつ(飛行機/船、りんご/みかん、東京/京都)出し、形容詞のカード(速い・大きい・にぎやか)を添えて「N1はN2よりAです」を作らせる。次に「〜はどうですか」と聞かれたら「〜より〜です」で答える短いやり取りをペアで。
- 口頭実物(大きい本と小さい本、重いかばんと軽いかばん)を2つずつ持ち、「この本・あの本・大きい」とキューを出す → 全員で「この本はあの本より大きいです」。次に絵カードで「新幹線・バス・速い」「北海道・東京・寒い」「東京・大阪・人が多い」。キューの順を入れ替えて(「バス・新幹線・遅い」)向きを考えさせ、最後に「ずっと」のカードを足して差の大きさも言わせる。
- ペア「比べっこカード」。Aがカード2枚と形容詞カード1枚を引き、「〜は〜より〜です」と言う。Bは自分の考えと同じなら「はい、そうですね」、違うなら「いいえ、〜は〜より〜です」と向きを変えて言い返す。答えが割れたらその場で理由を「〜から」で1文足す。5組で交替。
- 産出「わたしの国と日本」。自分の国と日本について、季節・町・食べ物・物の値段を1つずつ比べて3文を書き、発表する(「わたしの国の夏は日本の夏より暑いです」)。教師が見るのは、「より」が比べる相手に付いているか、主語と相手の向きが言いたいことと合っているか、「のほうが」と混ざっていないか。
つまずきと手当て
- 「N1はN2よりのほうがAです」と文型4の「のほうが」を混ぜる。「より」と「のほうが」は付く相手が逆(より=程度が低い方、のほうが=高い方)だと矢印で見せる
- 「N1はN2よりAじゃありません」で「N1の方が低い」と言おうとする。日本語では向きを変えて「N2はN1よりAです」と言うのが普通だと、2つの文を並べて示す
- 「より」を「から」と置き換える(母語の影響)。「より」は比べるときだけの助詞で、「から」(出発点・理由)とは別だと例で区別する
既習の文型との違い
- N1 とN2 とどちらがAですか。 / …N1 のほうがAです(第12課 文型4)「より」は比べる相手(程度が低い方)に付き、「のほうが」は選んだ方(程度が高い方)に付きます。答えでは「〜のほうが」を使い、比べる相手も言いたいときに「新幹線のほうがバスより速いです」と2つを一緒に使えます。学習者は「*新幹線はバスよりのほうが速いです」と同じ語に両方を付けるので、矢印で付く相手が逆だと見せます。
- Nは〈いA〉です(第8課)第8課の「東京は大きいです」はそのものだけの評価で、「東京は大阪より大きいです」は2つを比べた結果です。比べた結果なので、「この部屋はあの部屋より広いです」と言っても、この部屋が広い部屋だとは限りません。学習者が「より」の文をほめ言葉のつもりで使ったときに、この違いを一言添えます。
関連する文型
学習項目 4 N1 とN2 とどちらがAですか。 / …N1 のほうがAです
意味・はたらき文型 4
2つのものを並べて、どちらの程度が上か尋ねる形と、その答え方です。選ぶ相手が2つのときは、人でも物でも場所でも時でも、疑問詞は「どちら」を使います。答えは「〜のほうが」で選んだ方を言い、同じなら「どちらも〜です」と答えます。疑問詞が主語なので助詞は「が」で、「は」にはなりません。文法の見方で言えば、2つの中から選ばせる疑問詞疑問文で、疑問詞「どちら」が主語なので「が」で示し、答えでも選んだものを「が」で示します。
接続
N1+と+N2+と+どちらが+A+ですか/答えは N1+のほうが+A+です(同じなら どちらも+A+です)
形
N1とN2とどちらがAですかN1のほうがAですどちらもAです
導入
- 文型3の答えを質問に戻す文型3で使った2冊の本をもう一度並べ、教師が「この本とこの本と、どちらが大きいですか」と聞く。学生は文型3の形で「この本はこの本より…」と言い始めるので、「こちらのほうが大きいです」と答えを見せて「のほうが」を板書する。「どちらが」の「が」を丸で囲み、「どちらは」ではないと先に言っておく。
- 「どちらも」を足す同じ大きさの本を2冊出して同じ質問をし、学生が困ったところで「どちらも大きいです」を出す。学生同士を比べる質問(背・年齢)は避け、飲み物や食べ物の好みで聞く。
板書案
N1 と N2 と どちら が A ですか。
…N1 の ほう が A です。 / …どちらも A です。
夏と 冬と、どちらが 好きですか。…夏の ほうが 好きです。
〔赤〕疑問詞の「が」を〇で囲む(「は」にしない)
2つ → どちら 3つ以上・まとまり → 文型5
場面と発話(自作)
- 京都へ行く時期を友達に相談している。春と秋のどちらがよいか聞く。春と秋と、どちらがいいですか。…秋のほうがいいです。紅葉がきれいです。
- 留学生同士で、自分の国の食べ物について聞き合う。タイ料理と日本料理と、どちらが辛いですか。…タイ料理のほうがずっと辛いです。
- 喫茶店で、紅茶とコーヒーのどちらを頼むか決める前に、店の人に聞く。紅茶とコーヒーと、どちらがおいしいですか。…どちらもおいしいです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
絵カード2枚と形容詞1語で「〜と〜と、どちらが〜ですか」を作り、隣の人が「〜のほうが〜です」か「どちらも〜です」で答える。答えに文型3の「〜より」や、理由の「〜から」(第9課)を1文足させると会話に近づく。
- 口頭教師が絵カード2枚と形容詞で質問を出し、全員で「〜のほうが」で答える。キューは「コーヒー・紅茶・好き」「電車・バス・速い」「春・秋・好き」「りんご・みかん・甘い」。次に役を替え、教師がカード2枚と形容詞を見せるだけで、学生に質問「〜と〜と、どちらが〜ですか」を作らせる。答えが同じなら「どちらも〜です」と言う絵(同じ大きさの2つ)も入れる。
- ペア「好みアンケート」の情報差。Aは2択の質問が5つ書いてある表を持ち、Bに質問して答えに〇を付ける。Bは自分の好みで答え、答えに「〜から」で理由を1つ足す。終わったら交替し、最後に2人の表を見比べて「わたしもコーヒーのほうが好きです」のように同じ答えを言い合う。
- 産出「二択アンケート」。学生が自分で2択の質問を1つ作り(「海と山と、どちらが好きですか」)、クラスの全員に聞いて数を数え、「5人は海のほうが好きです。3人は山のほうが好きです。」と結果を発表する。教師が見るのは、疑問詞と答えの「が」、2つ目の「と」、3つ以上の選択に「どちら」を使っていないか。
つまずきと手当て
- 「どちらは」「N1のほうは」と「は」にする。質問の「が」は疑問詞に付く「が」(第10課「何がありますか」と同じ)だと思い出させる
- 2つ目の「と」を落として「N1とN2どちらが」と言う。話し言葉では落ちることもあるが、まず「〜と〜と」をそろえて言わせ、リズムで覚えさせる
- 3つ以上のものに「どちら」を使う(「りんごとみかんとバナナと、どちらが」)。3つ以上は文型5の「何がいちばん」に送る
既習の文型との違い
- N1はN2よりAです(第12課 文型3)文型3は話し手が結論を言う文、文型4は相手に選ばせる質問とその答えです。質問の「どちらが」に「新幹線はバスより速いです」と文型3で答えても誤りではありませんが、答えの中心は「新幹線のほうが速いです」です。2つの文型を、質問(文型4)→ 答え(のほうが)→ 理由を足す文(文型3)の順につなげて練習します。
- これ/それ/あれはN1 ですか、N2 ですか(第2課)第2課の「これは本ですか、ノートですか」は、それが何かを2つのうちから当てる質問で、程度は比べていません。「どちらが」の質問は、2つとも分かっている物の程度を比べる質問です。学習者が「*コーヒーですか、紅茶ですか、好きですか」と第2課の形で好みを聞こうとしたら、「どちらが好きですか」に言い換えさせます。
関連する文型
学習項目 5 N1でN2 がいちばんAです
意味・はたらき文型 5
ある範囲の中で、程度がいちばん上のものを言う形です。「N1で」が範囲(グループ・場所・時)、「N2が」が選ばれるものです。尋ねるときは、範囲に合わせて「何」「だれ」「どこ」「いつ」を「が」で立てます。2つから選ぶ文型4と違って、3つ以上や、まとまり全体(日本料理・家族・1年)から選ぶときの形です。文法の見方で言えば、ほかの言語の最上級に当たる言い方で、「で」は範囲(比べる仲間の集まり)を示します。「いちばん」は副詞なので、形容詞の形はそのままです。
接続
N1(範囲)+で+N2/疑問詞(何・だれ・どこ・いつ)+が+いちばん+A+です
形
N1でN2がいちばんAですN1で何がいちばんAですかN1でだれ/どこ/いつがいちばんAですか
導入
- カードを「2つ」から「たくさん」へ文型4で使ったりんご・みかんの絵カードにバナナを足して3枚並べ、「りんごとみかんと…」と言いかけて止まり、指で「3つ」を見せてから「果物で何がいちばん好きですか」と聞く(「好き」は第9課)。学生の答えを「〜がいちばん好きです」と受けて、「で=この中で」と範囲を丸で囲んで板書する。
- 疑問詞を範囲ごとに替える「果物で何が」「クラスでだれが」「日本でどこが」「1年でいつが」の4つを板書し、範囲に合わせて疑問詞が変わることを見せる。「どちら」は2つのとき、ここは3つ以上、と文型4の枠と並べておく。
板書案
N1(範囲) で N2 が いちばん A です。
果物 で 何 が いちばん 好きですか。
…りんご が いちばん 好きです。
範囲 → 疑問詞:物 何/人 だれ/場所 どこ/時 いつ
〔赤〕で(範囲)を□で囲む 〔赤〕が(疑問詞・答え)を〇で囲む
場面と発話(自作)
- 留学生が、日本で行った町の中でいちばん好きなところを友達に話す。日本で京都がいちばん好きです。町がきれいです。
- 先生が留学生に、日本の季節の印象を聞く。1年でいつがいちばん寒いですか。…2月がいちばん寒いです。
- 日本料理の店で、何を注文するか友達に聞く。この店で何がいちばんおいしいですか。…すき焼きがいちばんおいしいです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
範囲のカード(果物・スポーツ・季節・日本・クラス)と疑問詞のカードを組み合わせて質問を作らせ、答えは「〜がいちばん〜です」。「クラスでだれが」は背や成績ではなく「歌が上手」(第9課)のような話題で聞く。最後に「あなたの国で」に替えて、1人ずつ発表させる。
- 口頭範囲のカードを見せ、学生に疑問詞を選ばせて質問を作らせる。キューは「季節・好き」→「季節でいつがいちばん好きですか」、「日本料理・おいしい」→「日本料理で何がいちばんおいしいですか」、「日本・寒い」→「日本でどこがいちばん寒いですか」、「クラス・歌が上手」→「クラスでだれがいちばん歌が上手ですか」。全体で言わせたあと、1人ずつ質問と答えを続けて言わせる。
- ペア「いちばん表」の情報差。Aのカードにはある国の町3つの「人の多さ・寒さ・大きさ」の順位が書いてあり、Bのカードは空欄。Bが「この国でどこがいちばん人が多いですか」と聞いて表を埋め、Aは「〜がいちばん多いです」で答える。次は別の国のカードで役を交替する。
- 産出「わたしの国のいちばん紹介」。自分の国でいちばん人が多い町、いちばん暑い季節、いちばんおいしい料理を3文で紹介し、聞いている学生が「〜と〜と、どちらが〜ですか」で1つ質問する。教師が見るのは、範囲の「で」(「に」「は」になっていないか)、疑問詞と答えの「が」、範囲と疑問詞の対応、2つの比較と3つ以上の比較の使い分け。
つまずきと手当て
- 「何はいちばん」「すき焼きはいちばん」と「は」を使う。疑問詞とその答えは「が」で立てると、文型4の「どちらが」と同じ理屈で確かめる
- 「日本料理の中で」と言えるかと聞かれる。「〜の中で」も自然だが、この課ではまず「で」で統一し、「の中で」はあとで出ると答える
- 範囲と疑問詞が合わない(「果物でいつが」「家族でどこが」)。範囲→疑問詞の対応表を板書に残し、代入練習の前にカードで一度確かめる
既習の文型との違い
- N1 とN2 とどちらがAですか。 / …N1 のほうがAです(第12課 文型4)文型4は2つを並べて言い、疑問詞は物でも人でも「どちら」です。文型5は範囲を「で」で言い、中身に合わせて「何・だれ・どこ・いつ」を使い分けます。学習者は「*果物で、どちらがいちばん好きですか」と2つの文型を混ぜるので、選ぶ数が2つか、3つ以上かで文型を選ばせます。
- 〈場所〉でVます(第6課)第6課の「図書館で勉強します」の「で」は動作をする場所で、この文型の「日本で」は比べる範囲です。形は同じでも、後ろに動作の動詞が来ないので役割が違います。学習者は第10課の「に」に引かれて「*日本にどこがいちばん寒いですか」と言うことがあるので、「あります・います」の「に」と範囲の「で」を2つの枠で分けます。
関連する文型
語彙の扱い
この課は形容詞が一度に増える課で、「近い/遠い」「速い/遅い」「多い/少ない」「重い/軽い」「甘い/辛い」のように反対の語が組になっています。絵カードも対で作り、文型3・4の比較の材料にすると語彙と文型が同時に定着します。季節・天気の語(春夏秋冬・雨・雪・曇り)は文型1・5の材料に、日本の食べ物(すき焼き・刺身・天ぷら)は文型5の「日本料理で」の材料に使い、「ただいま/お帰りなさい/すごいですね/疲れました」は会話の定型として場面ごと覚えさせます。
この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)
- 季節(きせつ) 1年の中の春・夏・秋・冬のことです。 好きな〜・日本の〜
留学生と、好きな季節の話をする。「季節で、いつがいちばん好きですか。」「秋がいちばん好きです。」
- 天気(てんき) 雨・雪・曇りなど、その日の空のようすです。 いい〜・〜がいい・昨日の〜
週末に旅行した友達に聞く。「京都の天気はどうでしたか。」「雨でした。」
- 簡単(かんたん) やさしくて、すぐできるようすです。な形容詞です。 〜な試験・〜な料理
昨日の試験について、同じクラスの人と話す。「試験は簡単でしたか。」「いいえ、簡単じゃありませんでした。」
- 暖かい(あたたかい) 寒くなくて、気持ちがいいくらいの温度です。 〜部屋・今日は〜・〜春
朝、教室に入って先生と話す。「今日は昨日より暖かいですね。」
- 近い(ちかい) 場所と場所の間が短いようすです。「遠い」の反対です。 駅が〜・うちから〜
友達と、どこでバスに乗るか話す。「駅とバス停と、どちらが近いですか。」「バス停のほうが近いです。」
- 遠い(とおい) 場所と場所の間が長いようすです。 空港が〜・うちから〜
旅行から帰った同僚に聞く。「空港はホテルから遠かったですか。」「いいえ、遠くなかったです。」
- 速い(はやい) 動くのに時間がかからないようすです。 新幹線が〜・〜電車
東京から大阪へ行く方法を相談する。「新幹線は飛行機より速いですか。」「いいえ、飛行機のほうが速いです。」
- 重い(おもい) 持ち上げるのに力がいるようすです。「軽い」の反対です。 〜かばん・荷物が〜
空港で、2つのかばんを持ってみる。「このかばんとあのかばんと、どちらが重いですか。」
- 甘い(あまい) 砂糖のような味です。 〜果物・〜お菓子
果物の店で、どれを買うか考える。「りんごとみかんと、どちらが甘いですか。」
- 多い(おおい) 数や量がたくさんあるようすです。「少ない」の反対です。 人が〜・車が〜
日本の町について、先生が留学生に聞く。「日本でどこがいちばん人が多いですか。」「東京がいちばん多いです。」
- ずっと(ずっと) 2つを比べて、差がとても大きいことを言うときの言葉です。 〜速い・〜大きい
国の町と日本の町を比べて話す。「東京はわたしの町よりずっと大きいです。」
- いちばん(いちばん) 3つ以上の中で、程度がいちばん上のものを言う言葉です。 〜好き・〜おいしい
日本料理の店で、何を頼むか友達に聞く。「この店で何がいちばんおいしいですか。」「天ぷらがいちばんおいしいです。」
会話の扱い
祇園祭から帰ってきた人を「お帰りなさい」と迎え、「どうでしたか」と感想を聞く場面です。まず祇園祭の写真か絵(山車・たくさんの人)を見せて「京都のお祭りです。7月です」と場面を作り、「人がたくさんいましたか」「暑かったですか」と文型1・2の質問で感想を引き出してから、CD か教師の音読で会話を聞かせます。「ただいま/お帰りなさい」は意味を説明するより、ドアから入る動作と組にして定型として覚えさせます。ロールプレイは、①教科書の設定のまま、②「先週の休みはどうでしたか」に替えて学生自身の週末や国のお祭りで、の2段階にし、答えには「〜でした/〜かったです」に加えて「でも、疲れました」「日本の夏は国の夏より暑かったです」のような1文を足させると会話らしくなります。
宿題と次のコマ
練習Bの代入練習を書いて提出(文型1・2は「昨日/先週」の文を各3つ、文型3〜5は授業で使った絵カードの組で)。あわせて「先週の休み」について「〜へ行きました。〜でした/〜かったです。〜より〜です。」の3文を書かせ、次のコマの最初に隣の人へ「どうでしたか」と聞く形で発表させる。問題の聞き取りは授業で答え合わせ。次のコマは第13課「〜が欲しいです/〜たいです」で、「どちらが/いちばん」で選んだものを「〜が欲しいです」につなぐと復習になる。
よくある質問
第12課の形容詞の過去形はどの順で教えればいいですか?
先に名詞と な形容詞の「でした/じゃありませんでした」を出します。語の形が変わらず文末だけが変わるので、第4課の「ました」の感覚のまま入れます。次に い形容詞の「〜かったです/〜くなかったです」を出し、「いい→よかった」は別枠にします。最後に両方のカードを色を伏せて混ぜ、学生にどちらの形にするかを判断させる練習を入れます。
「〜より」と「〜のほうが」の違いは何ですか?
「より」は比べる相手(程度が低い方)に付き、「のほうが」は選んだ方(程度が高い方)に付きます。「新幹線はバスより速いです」と「新幹線のほうが速いです」は同じことを言い、両方を使って「新幹線のほうがバスより速いです」とも言えます。「どちらが」の質問への答えは「〜のほうが」が中心です。同じ語に両方を付ける「バスよりのほうが」という誤りが出るので、矢印で付く相手を見せます。
3つ以上のものを比べるとき、なぜ「どちら」ではなく「何」を使うのですか?
「どちら」は2つの中から選ぶときの疑問詞で、3つ以上やまとまり全体から選ぶときは、選ぶものの中身に合わせて「何(物)・だれ(人)・どこ(場所)・いつ(時)」を使います。そのため文型5では、範囲を「で」で示し、疑問詞に「いちばん」を続けます。学習者は「りんごとみかんとバナナと、どちらが」と言いがちなので、カードを2枚から3枚に増やすところで、疑問詞が変わることを見せます。
学習者が「寒いでした」と言ったら、どう直しますか?
い形容詞の過去は形容詞の終わりを「かった」に替える形で、「です」はそのままだと、文型2の枠に戻して言い直させます。「寒いでした」は話し言葉で耳にすることもありますが、この課では「寒かったです」を基準にします。な形容詞の「暇でした」と並べ、変わる場所が文末か語の終わりかを比べると定着します。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と文型1・2(名詞・形容詞の過去)で、最後に両方を混ぜた変換まで行います。2コマ目は比較の文型3〜5と会話、練習Cです。形容詞の過去が不安なクラスでは、2コマ目の最初に5分の変換テストを入れてから比較に入ります。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。