第19課まで丁寧体(です・ます)だけで進んできた学習者が、初めて普通体(友達や家族との話し方)に出会う課です。動詞・い形容詞・な形容詞・名詞のそれぞれに普通形があり、肯定・否定・過去・過去否定の4つの形を、すでに習った辞書形・ない形・た形を並べ直して作ります。新しく覚える形は動詞の「〜なかった」と、な形容詞・名詞の「だ」の列だけなので、「形はもう知っている。並べ直して、誰に使うかを決める」課だと考えると、学習者の負担も教師の説明も軽くなります。会話の題「いっしょに行かない?」は第6課の「いっしょに行きませんか」の普通体で、課の間ずっと丁寧体との対応を見せながら進めます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 15分 | 第19課までの動詞の活用(ます形・て形・ない形・辞書形・た形)をフラッシュカードで速く回す。普通形はこの形の組み合わせなので、ここが滑らかでないと先に進めない。次に「先生と学生」「友達と友達」の絵を見せ、相手によって言い方が変わることを学習者の母語の例で気づかせる |
| 活用(普通形の作り方) | 30分 | 板書に「肯定・否定・過去・過去否定」の4列×「動詞・い形容詞・な形容詞・名詞」の4行の表を作り、丁寧形から普通形へ1マスずつ埋める。この表がこの課の地図になるので、消さずに残す |
| 文型1(動詞) | 25分 | 表の動詞の行だけを使って、質問と答え(「行く?」「うん、行く」「ううん、行かない」)を口頭で。「か」を使わず文末を上げる練習を、全員で声に出して |
| 文型2〜4(い形容詞・な形容詞・名詞) | 35分 | 同じ要領で1行ずつ。な形容詞と名詞は「だ」の扱い(質問では落とす・答えでも落としてよい・「ね」「よ」の前では付く)を丁寧に。い形容詞に「だ」が付かないことを対比で見せる |
| 会話 | 25分 | CD を聞いて「友達どうし」の会話だと当てさせる。教師が丁寧体に直した文を板書し、教科書の普通体と見比べて違う所に線を引かせる。誘い「〜ない?」と「うん/ううん」の応答をロールプレイ |
| 文型5(後続句)と練習C | 35分 | 「〜ている」「〜てもいい」「〜なければならない」「〜ことができる」「〜たい」を、最後の部分だけ普通形にする練習。練習Cの場面(誘う・都合を聞く・断る)をペアで普通体で演じる |
| 問題・まとめ | 15分 | 聞き取り(丁寧体か普通体か・誰と誰の会話か)と変換問題。最後に4×4の表を自分のノートに書かせ、第21課の「〜と思います」で普通形が文の中に入ることを予告する |
普通形は、「です・ます」を使わない文の終わりの形です。動詞は辞書形・ない形・た形・「ない形の い→かった」の4つ、い形容詞は「〜い/〜くない/〜かった/〜くなかった」、な形容詞と名詞は「〜だ/〜じゃない/〜だった/〜じゃなかった」です。動詞の4つのうち辞書形(第18課)・ない形(第17課)・た形(第19課)はすでに習っているので、新しく覚えるのは動詞の「〜なかった」と、な形容詞・名詞の「だ」の列だけです。この課では文末に使う「普通体」として学びますが、第21課からは文の中(「〜と思います」)にも入るので、表を見ないで作れるところまで仕上げておきます。
ます形から作る: Vます→辞書形/Vません→ない形/Vました→た形/Vませんでした→ない形の「い」を「かった」に。いAです→いA/いAくないです→いAくない/いAかったです→いAかった/いAくなかったです→いAくなかった。なA・Nです→だ/じゃありません→じゃない/でした→だった/じゃありませんでした→じゃなかった
ます形をキューにして普通形を即答させる(「食べます→食べる」「食べませんでした→食べなかった」)。動詞→い形容詞→な形容詞→名詞の順で回し、最後は4種類を混ぜる。表を見ないで言えるまで、1人ずつ速く当てる。
動詞の普通形を文の終わりに使う文が、動詞文の普通体です。家族・友達・親しい同僚など距離の近い相手に使い、先生や初めて会う人、店や会社の客には丁寧体を使います。質問は「か」を付けず、文末を上げて言います。答えは「はい/いいえ」ではなく「うん/ううん」です。誘うときの「〜ませんか」は「〜ない?」になり、これが会話の題です。
文末を V普通形(辞書形/ない形/た形/なかった形)にする。質問は V普通形+上昇イントネーション(「か」は付けない)
動詞の絵カード(食べる・飲む・見る・読む・買う・行く・帰る)を1枚ずつ見せ、教師が「〜ますか」で聞いたものを学生が「〜る?」に変換し、隣の学生が「うん/ううん」で答える(練習Bの型)。次にペアで、週末の予定を「〜ない?」で誘い、受ける・断るのやり取り(練習Cの型)。断るときは「〜から」を付けさせる。
い形容詞の普通形は、丁寧形から「です」を取った形です。肯定「寒い」、否定「寒くない」、過去「寒かった」、過去否定「寒くなかった」。文の終わりにそのまま使えば普通体の文になります。質問は動詞と同じく「か」を付けず、文末を上げます。4つの形のうち新しい形は一つもなく、「です」を落とすだけなので、学習者がいちばん楽に入れる文型です。終助詞「ね」「よ」はそのまま付きます。
いA普通形(〜い/〜くない/〜かった/〜くなかった)を文末に置く。「です」も「だ」も付けない
い形容詞の絵カード(暑い・寒い・おいしい・高い・安い・忙しい・楽しい・おもしろい)で、「〜ですか」→「〜い?」、「〜かったですか」→「〜かった?」に変換(練習Bの型)。次にペアで「きのう」「先週」をテーマに「〜かった?」で聞き合い、「うん/ううん」のあとに一言足す(練習Cの型)。
な形容詞の普通形は、「です」を「だ」に替えた形です。肯定「暇だ」、否定「暇じゃない」、過去「暇だった」、過去否定「暇じゃなかった」。「だ」は文を言い切る形ですが、質問では落として「暇?」と上げて言い、答えでも「うん、暇」のように落とすことが多いです(「暇だ」と言い切ると強く聞こえます)。「ね」「よ」を付けるときは「暇だね」「暇だよ」と「だ」が付きます。名詞とまったく同じ変化なので、文型4と組にして教えます。
なA+だ/じゃない/だった/じゃなかった。質問は「だ」を取って上昇イントネーション
な形容詞の絵カード(静か・にぎやか・便利・暇・元気・親切・有名・きれい)で、丁寧形の文を普通形に変える(練習Bの型)。「ね」「よ」を付けた形も混ぜて「だ」が戻ることを確かめる。次にペアで、自分の国の町や学校の近くの店について「〜?」「うん、〜だよ」と話す(練習Cの型)。
名詞文の普通形は、な形容詞とまったく同じ変化です。「学生だ/学生じゃない/学生だった/学生じゃなかった」。質問は「学生?」と上げて言い、「だ」は付けません。答えも「うん、学生」のように「だ」を落とすことが多く、「ね」「よ」を付けるときは「学生だよ」と「だ」が戻ります。第1課の「わたしは学生です」から始まった名詞文を、友達との会話の形に移す文型です。会話では主題の「は」も落として「あの人、学生?」のように言うことが多いです。
N+だ/じゃない/だった/じゃなかった。質問は N+上昇イントネーション(「だ」なし)
名詞カード(学生・会社員・医者・日本人・休み・雨・試験・誕生日)で、「〜ですか」→「〜?」、「〜でした」→「〜だった」に変換(練習Bの型)。次に、絵の人物について「学生?」「何人?」「仕事は?」と友達どうしで聞き合う(練習Cの型)。助詞「は」を落とした「あの人、学生?」の形も認める。
「〜ています」「〜てもいいです」「〜なければなりません」「〜ことができます」「〜たいです」のように、動詞のあとに続く句(後続句)を持つ文も、最後の「です・ます」の部分を普通形にすれば普通体になります。「〜ています→〜ている」「〜てもいいです→〜てもいい」「〜なければなりません→〜なければならない」「〜ことができます→〜ことができる」「〜たいです→〜たい」のように、最後の部分が動詞か い形容詞かを見分けて、文型1〜2の作り方を当てはめます。文が長くなっても変わるのは最後だけ、と押さえる文型です。
後続句の最後の語を普通形にする: 〜ています→〜ている/〜てもいいです→〜てもいい/〜てはいけません→〜てはいけない/〜なければなりません→〜なければならない/〜なくてもいいです→〜なくてもいい/〜ことができます→〜ことができる/〜ことがあります→〜ことがある/〜たいです→〜たい/〜たり〜たりします→〜たり〜たりする
後続句つきの丁寧体の文をカードで見せ、最後の部分だけ普通形に言い換える(練習Bの型)。「〜ています」「〜てもいいです」「〜なければなりません」「〜ことができます」「〜たいです」を1つずつ、次に混ぜて。ペアでは「今、何をしている?」「週末、何をしたい?」の2つを普通体で聞き合う(練習Cの型)。
この課の新出語は、普通体の会話で使う語と、会話の場面の語が中心です。「うん/ううん」は文型1の答えとセットで出し、使ってよい相手(同年代の友達・家族・年下)を添えて、丁寧体の「はい/いいえ」との対応で導入します。
会話は、題のとおり親しい相手を普通体で誘う場面です。扱い方は、まず CD を聞いて「先生と学生」か「友達どうし」かを当てさせ、次に教師が会話の文を丁寧体に直して板書し、学生に教科書の普通体と見比べて違う所(「か」が無い・「です」が消える・「うん/ううん」)に線を引かせる。そのあとペアで役を交代して読み、最後に行き先と日時を自分たちの町のものに替えて演じさせる。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
文型1〜4の変換練習(丁寧体の文20文を普通体に)を宿題に。次のコマの最初に、ペアで「週末、何をした?」を普通体で聞き合うウォームアップをしてから、な形容詞・名詞の普通形(文型3・4)に入る。普通形の4×4の表を自分のノートに書いて持ってくるよう指示し、第21課の「〜と思います」でそのまま使う。
第20課の普通形はどの順で教えればいいですか?
先に動詞・い形容詞・な形容詞・名詞の4行と、肯定・否定・過去・過去否定の4列の表を一度に作り、課の地図にします。そのあと動詞→い形容詞→な形容詞→名詞の順に、1行ずつ質問と答えの練習をします。な形容詞と名詞は変化が同じなので続けて扱い、最後に後続句のある文に進みます。
普通体の質問に「か」を付けてはいけないのですか?
友達との会話では「か」を付けず、文末を上げて「行く?」と言うのがふつうです。「行くか?」は、ぞんざいに聞こえたり、強く問いただす感じになったりするので、初級では使わないように指導します。声を上げる練習を、全員で何度も声に出してさせます。
な形容詞と名詞の「だ」は、いつ付けていつ落とすのですか?
質問では落とし(「暇?」)、答えでは落としても付けてもよく(付けると言い切る強さが出ます)、「ね」「よ」の前では付けます(「暇だね」)。否定と過去否定の「じゃない」「じゃなかった」の前には付きません。板書では「だ」を( )に入れて表に残すと、学習者が迷ったときに戻れます。
第20課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で復習・普通形の表・文型1(動詞)・い形容詞まで、2コマ目で な形容詞と名詞・会話・後続句の文・練習C・問題を扱います。活用の復習が滑らかでないクラスでは、1コマ目の導入を長めにとり、表を作る時間を削らないほうが後が楽です。
「〜てる」のような話し言葉の縮約もこの課で教えますか?
この課では、板書も練習も「〜ている」「〜じゃない」の形でそろえます。「〜てる」のような縮約は会話を聞いたときに耳で気づかせる程度にとどめ、学習者が使ったら通じることは認めます。まず普通形の表を正確に作れることを優先し、縮約は普通形が文の中に入る課を終えてから扱うほうが混乱しません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。