日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第17課「どうしましたか」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「どうしましたか」

病院で具合の悪いところを伝え、医者の指示を聞いて確かめる課です。動詞のない形が初めて出て、それを使う「ないでください」「なければなりません」「なくてもいいです」の3つの文型と、目的語や時を前に出す「は」を学びます。教えるときの芯は3つ。ない形の変換を全員が言えるようにすること、「なければなりません」が「〜ません」で終わるのに否定ではないと体で分からせること、「なければなりません」と「なくてもいいです」を必ず問いと答えのペアで練習することです。活用の負荷が高い課なので、文型ごとに動詞の数を絞って回します。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞のます形から、3つのグループの作り方でない形を作れる
  • 「〜ないでください」で、相手に「しないで」と頼んだり、医者や係の人の指示を聞いて理解したりできる
  • 「〜なければなりません」で自分の予定や義務を言い、「〜なければなりませんか」に「はい/いいえ、〜なくてもいいです」で答えられる
  • 「薬は〜」「明日は〜」のように、目的語や時を「は」で前に出して、2つのことを対比して言える
  • 病院で具合の悪いところを言い、医者の指示を聞いて確かめられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習と前の課のつなぎ)10分第14・15課の絵カードで「〜てください」「〜てもいいですか」「〜てはいけません」を速く言わせる。動詞のグループ表(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)を黒板に残し、「今日はこの表で新しい形を作ります」と予告する
ない形の作り方40分グループ表の上でます形→ない形の変換を板書。カードで20語ほど回し、「〜います→〜わない」「きます→こない」を多めに。ここで文末に「ない」で言い切る文は作らせない。最後に「ない形ビンゴ」で全員の変換を確かめる
文型1 〜ないでください40分病院の絵カードで導入し、「〜てください」との対で板書。練習Bは絵カード、練習Cは医者と患者のやり取り。1コマ目はここまで
文型2・3 〜なければなりません/〜なくてもいいです40分2コマ目はない形のカードを3分回してから。2つを続けて入れ、「〜なければなりませんか」→「はい、〜なければなりません/いいえ、〜なくてもいいです」の対で練習する。「なければなりません=します」を板書に大きく残す
文型4 〜は(取り立て)15分「薬を飲みます」「お酒を飲みます」の絵を並べ、「薬は/お酒は」で対比。文型1〜3の文を「は」で言い換える練習
会話「どうしましたか」15分絵で場面を確かめてから音声を聞き、「どこで・だれが・何を言われたか」を聞き取る。「どうしましたか」「お大事に」は表現として覚えさせ、医者役・患者役で役割練習
練習C・問題20分練習Cを場面を替えて2〜3往復。問題の聴解は教室で、書く問題は宿題に。最後にない形のカードをもう一度回して閉じる

学習項目 1 ない形の作り方

意味・はたらき活用

ない形は「〜ません」の普通の形で、この課では「ないでください」「なければなりません」「なくてもいいです」の3つの文型の部品として出ます。初級Ⅰのこの段階では、文の終わりを「〜ない」で言い切る普通体はまだ教えないので(第20課)、この課では必ず後ろに文型を付けて練習します。作り方は動詞のグループで決まり、て形のような音の変化(いて・って・んで)はありません。学校文法でいえば「未然形+助動詞ない」にあたります。日本語教育では活用を「ない形」「て形」のように後ろに付く語で呼ぶので、学校文法の名前とも対応させて説明できるようにしておくと、学習者や同僚に聞かれたときに困りません。

接続

Ⅰグループ: ます形の「ます」の前の音をい段からあ段に替えて「ない」(かきます→かかない)。Ⅱグループ: 「ます」を取って「ない」(たべます→たべない)。Ⅲグループ: します→しない、きます→こない

形
Ⅰグループ: かきます→かかない/いそぎます→いそがない/のみます→のまない/あそびます→あそばない/とります→とらない/まちます→またない/はなします→はなさないⅠグループの「〜います」: かいます→かわない/あいます→あわない/すいます→すわない(「かあない」ではなく「わ」)Ⅱグループ: たべます→たべない/みます→みない/おきます→おきない/かります→かりないⅢグループ: します→しない/きます→こない/べんきょうします→べんきょうしない

導入

  • て形で使った動詞表の上で、最後の音を1つ動かす第14課で使った動詞のグループ表をもう一度出す。Ⅰグループの「かきます」の「き」の下に、五十音の「か行」を縦に板書し、「き」を「か」に動かして「ない」を付けて見せる。次に「のみます」「まちます」のカードを出して、学生に同じことをさせる。て形のときにあった音の変化(かいて・まって)がここには無いことを、て形と並べて確かめる。
  • Ⅱ・Ⅲは短く、例外は大きくⅡグループは「ます」を取るだけなので、カードを見せて即答させる。Ⅲは「しない」「こない」の2つだけ。「きます→こない」は音が変わるので、カードに大きく書いて黒板の端に残しておく。

板書案

ない形 = ます形 から つくる
Ⅰ い段 → あ段 + ない  かきます → かかない  のみます → のまない
〔赤〕〜います → 〜わない  かいます → かわない  あらいます → あらわない
Ⅱ ます → ない  たべます → たべない  みます → みない
Ⅲ します → しない  〔赤〕きます → こない
〔青〕ます形の「ます」の前の音に丸 → 五十音表の あ段へ 矢印

場面と発話(自作)

  • 教室で、教師が動詞のカード「のみます」を見せて「ない形は?」と聞く。学生が答える。のまない。
  • ペアで、1人がます形を言い、もう1人がない形に替える。「きます」の番になった。きます……こない。
  • 宿題の動詞表で、「買います」の行を埋める。かいます → かわない

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

カード20枚ほどを「ます形→ない形」で速く回す。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを混ぜ、「〜います」(かいます・あいます)と「きます」を多めに入れる。グループが分からない学生には、先に「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」と言わせてから変換させる。

  1. 口頭教師がます形を言う(または動詞カードを見せる)→ 全員 → 列 → 個人の順でない形を返させる。キューは「かきます」「のみます」「まちます」「とります」「あそびます」のⅠグループから入り、次に「かいます」「あらいます」「はらいます」の〜いますだけをまとめて、そのあと「たべます」「みます」「おきます」「わすれます」のⅡ、「します」「きます」「べんきょうします」のⅢ。2周目から混ぜ、「きます」は最後に単独で3回。つまった学生には「ますの前の音は何ですか」とだけ聞いて、五十音表を指させる。
  2. ペアⅠ・Ⅱ・Ⅲが混ざった動詞カード20枚を1組に渡す。Aがカードを見てます形を言い、Bがない形で返す。10枚で交替。2回目は、Aのます形にBが「て形」と「ない形」の両方で返す(かきます→かいて・かかない)。て形の音の変化がない形に入り込まないか、二人で黒板の表を見て確かめる。
  3. 産出「ない形ビンゴ」。学生が既習の動詞を9つ選び、3×3のマスにない形で書く。教師がます形を読み上げ、当たったマスに丸を付ける。ビンゴになった学生は、丸の付いた語をます形とない形で読み上げる。教師が見るのは、〜いますの「わ」(*かあない)、Ⅱグループの い段の動詞(みます・おきます・かります)をⅠのように変えていないか、「きます→こない」の3点。書き間違いはその場で全員で言い直す。

つまずきと手当て

  • 「かいます→かあない」「あいます→ああない」。「い」で終わるⅠグループは「わ」になることを表に書いて見せ、口の形を一緒に作る
  • て形の音の変化を持ち込んで「のんない」「かっない」と言う。ない形には音の変化が無いことを、て形と並べて確かめる
  • Ⅱグループを Ⅰ のように変えて「みます→まない」「おきます→おかない」。「ます」の前が1音の動詞(みます・います・ねます)はⅡが多いことを思い出させる
  • 「あります」のない形は「ない」(「あらない」ではない)。この課の文型ではほとんど使わないが、聞かれたら例外として教える

既習の文型との違い

  • て形の作り方(第14課)て形もない形もます形から作りますが、て形はⅠグループの最後の音が「って・んで・いて」のように変わり、ない形は音の段が い段から あ段に移るだけです。て形を覚えた直後なので、「*のんない」「*かいない」のようにて形の形を持ち込む学習者が出ます。黒板にて形とない形の列を並べ、「ない形には小さい っ や ん が出ない」と確かめます。
  • Vます/Vません/Vました/Vませんでした(第4課)「のみません」は丁寧な否定で、それだけで文を終えられます。「のまない」はその普通の形ですが、この課ではまだ文の終わりに使わず、必ず後ろに文型を付けます。学習者が「*のみませんでください」のように丁寧な否定に文型を付けてしまったら、「ません」ではなく「ない」に付くと枠で見せます。
関連する文型

学習項目 2 〈Vない形〉ないでください

意味・はたらき文型 1

相手に「〜しないで」と頼む表現です。第14課の「〜てください」の否定にあたります。第15課の「〜てはいけません」が規則としての禁止で強いのに対して、「〜ないでください」は話し手の頼みや気遣いとして使うので、医者の指示や係の人の案内に合います。「心配しないでください」のように、相手の気持ちを和らげる言い方にもなります。形の面では、第14課の「〜てください」の「て」の位置に「ないで」が入った形で、肯定と否定の依頼が一組になります。

接続

Vない形+でください(のまない+でください→のまないでください)

形
〈Vない形〉ないでください〈場所〉で 〜ないでください(場所は「で」で言う)心配しないでください(相手を気遣う決まった言い方)

導入

  • 病院の絵カードで、医者の指示として医者と患者の絵を見せ、患者が「お風呂に入ります?」と聞くしぐさをする。教師が医者になって首を振り、「今日はお風呂に入らないでください」。板書は「〜ないでください」の枠を作り、その横に既習の「薬を飲んでください」を並べて、「して/しないで」の対で見せる。
  • 教室や図書館の場面で、頼みとして教室の絵(電話・食べ物・たばこ)を指して、「ここで電話をかけないでください」「教室でお菓子を食べないでください」を学生に言わせる。第15課の「〜てはいけません」との違いは、教師がにこやかに言う「お願い」として扱うこと。

板書案

Vない + で ください
のまない → のまないで ください。
お酒を 飲まないで ください。
〔青〕Vて ください(第14課) ⇔ 〔赤〕Vないで ください
すみませんが、ここで たばこを 吸わないで ください。

場面と発話(自作)

  • 病院で、医者が風邪をひいた患者に今日のことを指示する。今日はお風呂に入らないでください。
  • 図書館で、係の人が電話をしている人に小さい声で言う。すみません、ここで電話をかけないでください。
  • 試験の前に、友だちが「大丈夫?」と心配している。自分は準備ができている。大丈夫です。心配しないでください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード(たばこ・お菓子・電話・お風呂・忘れ物)を見せて「〜ないでください」。練習Cの型: 「どうしましたか」「頭が痛いです」「じゃ、今日は〜ないでください」のやり取りを、学生が患者役と医者役で交代する。

  1. 口頭×印を付けた絵カード(たばこ・お菓子・電話・お酒・お風呂)を見せ、「たばこ・吸います」とキューを出す → 全員で「たばこを吸わないでください」。次にキューを動詞だけ(「かけます」)→ 絵だけと減らす。そのあと教師が「窓を開けてください」と言い、学生が反対の「窓を開けないでください」に言い換える練習を5〜6文。て形とない形を交互に使わせて、「で」の落ちを耳で確かめる。
  2. ペア「医者と患者」の情報差。患者役は「お酒を飲んでもいいですか」「お風呂に入ってもいいですか」のような質問のカード(第15課の形)、医者役は○×の付いた指示カードを持つ。患者が聞き、医者は×なら「いいえ、〜ないでください」、○なら「はい、〜てもいいです」と答える。4問で交替し、最後に患者役が言われたことを「お酒は…」と言い直して確かめる。
  3. 産出「お願いポスター」。学生が自分の部屋・寮・教室で「してほしくないこと」を3つ「〜ないでください」で書き、ポスターにして発表する(「ここで食べないでください」「わたしの辞書を使わないでください」など)。教師が見るのは、「で」の落ち(*飲まないください)、「なくて」との混同、「すみませんが」の前置きがあるか、目上に向けて強すぎないか。

つまずきと手当て

  • 「〜なくてください」「〜ないください」のように「で」が落ちたり形が混ざったりする。「ない+で+ください」と3つに分けて板書する
  • 「〜てはいけません」と同じ強さで使い、目上の人に命令のように聞こえる。頼むときは「すみませんが」を付けて「〜ないでください」、規則を言うときは「〜てはいけません」と分ける
  • 「心配をしないでください」も誤りではないが、この課では「心配しないでください」の形で覚えさせる。「心配します」は1語の動詞として扱う

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉ください(第14課)「〜てください」はしてほしいことを頼み、「〜ないでください」はしてほしくないことを頼みます。形はて形の位置にない形+「で」が入るだけですが、学習者は「*飲まなくてください」「*飲まないてください」とて形の作り方を混ぜます。板書で2つの枠を上下に並べ、「て」と「ないで」の位置をそろえて見せます。
  • 〈Vて形〉はいけません(第15課)「〜てはいけません」は決まりとしての禁止で、規則を知らせる人や目上の人が使います。「〜ないでください」は話し手からのお願いなので、図書館の係や医者の指示、友だちへの頼みに広く使えます。学習者が客や先生に「ここでたばこを吸ってはいけません」と言うと強く聞こえるので、頼むときは「すみませんが、〜ないでください」と言い換えさせます。
関連する文型

学習項目 3 〈Vない形〉なければなりません

意味・はたらき文型 2

「〜する必要がある」「〜しないと困る」という義務・必要を表します。形は否定が2つ重なっていますが、意味は肯定で、「します」の側です。自分のこと(予定・決まり・医者に言われたこと)を言うときに使うことが多く、「〜なければなりませんか」と聞かれたら、「いいえ」の答えは文型3の「〜なくてもいいです」になります。「〜ません」で終わるのに否定ではないことが、学習者のいちばん大きな混乱のもとです。文法用語ではモダリティのうち義務・必要を表す形です。話し言葉では「〜なければいけません」「〜なきゃ」も聞きますが、この課では「なりません」の形にそろえて練習します。

接続

Vない形の「い」を取って「ければなりません」(のまない→のまなければなりません)

形
〈Vない形(い)〉ければなりません〜なければなりませんか〈時〉までに 〜なければなりません

導入

  • 医者の指示を「必要」として見せる文型1と同じ病院の絵で、医者が薬を渡す場面。教師が「薬を飲みます。飲みませんか? だめです」と首を振るしぐさをしてから、「薬を飲まなければなりません」。板書は「のまない→のまなければなりません」を矢印でつなぎ、その横に「=のみます」と大きく書いて、「ません」で終わるが意味は「します」だと最初に押さえる。
  • 自分の予定で教師が手帳を見せて、「明日 9時に会社へ行かなければなりません」「金曜日までに宿題を出さなければなりません」。そのあと学生に「明日 何をしなければなりませんか」と聞き、1人ずつ答えさせる。

板書案

Vない(ーい)+ ければ なりません
のまない → のまなければ なりません。
〔赤〕= 飲みます(する)  〔青〕× 飲みません
薬を 1日に 3回 飲まなければ なりません。
〜までに:金曜日までに 本を 返さなければ なりません。

場面と発話(自作)

  • 病院で、医者が薬の飲み方を説明する。1日に3回、薬を飲まなければなりません。
  • 会社で、同僚に「今晩 いっしょに食事をしませんか」と誘われたが、仕事が残っている。すみません、今日は残業しなければなりません。
  • 学校で、友だちと来週の予定を話す。金曜日までに宿題を出さなければなりません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 絵カード(薬・会社・銀行・宿題・早く起きる)で「〜なければなりません」。活用の負荷が高いので、最初は教師がない形まで言い、学生が「ければなりません」を付ける段階を入れてから、ます形のカードだけで言わせる。練習Cの型: 誘いを断る場面で「すみません、〜なければなりません」。

  1. 口頭2段のキューで回す。1段目は教師がない形まで言い(「のまない」)、学生が「のまなければなりません」と付ける。2段目は教師がます形だけ(「払います」「出張します」「返します」「行きます」「持って行きます」)を出し、学生がない形を作ってから文にする。慣れたら手帳の絵(月曜日・病院、水曜日・出張、金曜日・図書館)を指して文で言わせる。1文ごとに「しますか、しませんか」と聞き、「します」と答えさせる。
  2. ペア「手帳のやりくり」。Bは用事が書かれた手帳カードを持ち、Aは「土曜日、いっしょに映画を見ませんか」のように第6課の形で誘う。Bは用事がある日なら「すみません、土曜日は〜なければなりません」と断り、ない日なら「いいですね」と受ける。3回誘ったら交替し、最後にAが「Bさんは土曜日、何をしなければなりませんか」とクラスに伝える。
  3. 産出「わたしの今週の予定発表」。学生が今週しなければならないことを3つ、「〜までに」を1回は入れて書き、1人ずつ発表する。聞いている学生は1つ質問する(「何時までに行かなければなりませんか」)。教師が見るのは、「ければ」の形(*飲まないければ・*飲みなければ)、否定と取り違えていないか、目上への指示に使っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「〜ません」で終わるので否定だと思い、「薬を飲まなければなりません」を「飲まなくていい」の意味に取る。絵と「します/しません」の確認を毎回入れる
  • 活用が崩れて「のまないければ」「のみなければ」になる。「ない」の「い」を「ければ」に替える、と板書で見せる
  • 目上の人に「〜なければなりません」で指示する(「先生は明日 来なければなりません」)。自分の必要を言う形で、相手に頼むときは「〜てください」を使うと分ける

既習の文型との違い

  • 〈Vます形〉たいです(第13課)「〜たいです」は話し手の希望で、「〜なければなりません」はしたいかどうかに関係なく必要なことです。誘いを断るときに「すみません、今晩は家へ帰りたいです」と言うと、自分の都合だけに聞こえます。「家へ帰らなければなりません」なら事情があって断る言い方になるので、断りの場面で2つを比べて見せます。
  • 〈Vて形〉ください(第14課)「〜てください」は相手にしてほしいことを頼む形、「〜なければなりません」はだれかがしなければならないことを述べる形です。医者は「薬を飲んでください」とも「薬を飲まなければなりません」とも言えますが、学習者が先生に「先生、明日来なければなりません」と言うと命令のように聞こえます。人に頼むときは「〜てください」を使うと分けます。
関連する文型

学習項目 4 〈Vない形〉なくてもいいです

意味・はたらき文型 3

「〜する必要はない」「〜しなくてもかまわない」という意味です。文型2「〜なければなりませんか」に「いいえ」で答える形として入れると、2つの文型が対になって覚えやすくなります。第15課の「〜てもいいです」(許可)と形が似ていますが、こちらは「しなくてよい」で、「してはいけない」(禁止)ではありません。モダリティでいえば「不必要」を表す形で、義務を表す「〜なければなりません」を否定したときの答えにあたります。

接続

Vない形の「い」を取って「くてもいいです」(こない→こなくてもいいです)

形
〈Vない形(い)〉くてもいいです〜なければなりませんか。——いいえ、〜なくてもいいです〜なくてもいいですか

導入

  • 文型2の質問に「いいえ」で答える文型2で作った「明日 来なければなりませんか」に、教師が首を振って「いいえ、来なくてもいいです」。板書は文型2の枠の下に並べ、「はい、〜なければなりません/いいえ、〜なくてもいいです」の対で見せる。そのまま学生に質問して、〇×のカードで答えさせる。
  • 「〜てもいいです」との違いを絵で第15課の「写真を撮ってもいいですか」を思い出させてから、「靴を脱いでもいいです(してもいい)」「靴を脱がなくてもいいです(しなくてもいい)」の絵を並べる。「なくてもいいです」は「しなくても、しても、どちらでもいい」とジェスチャーで確かめる。

板書案

Vない(ーい)+ くても いいです
こない → こなくても いいです。
〜なければ なりませんか。
 〔赤〕はい、〜なければ なりません。 〔青〕いいえ、〜なくても いいです。
〜ても いいですか(第15課)。 はい、〜ても いいです。/いいえ、〜ては いけません。

場面と発話(自作)

  • 病院の受付で、次の予約のことを聞く。明日 また来なければなりませんか。——いいえ、来なくてもいいですよ。
  • 会社で、新しい社員が土曜日のことを上司に聞いた。上司が答える。土曜日は会社へ来なくてもいいです。
  • 友だちの家に着いて、玄関で上着をどうするか聞く。上着は脱がなくてもいいですか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 文型2の絵カードをそのまま使い、教師が「〜なければなりませんか」と聞いて、〇のカードなら「はい、〜なければなりません」、×なら「いいえ、〜なくてもいいです」。練習Cの型: 新しい学校や会社の決まりを聞く場面で、学生同士が質問と答えを交代する。

  1. 口頭文型2の絵カードをそのまま使う。教師が「明日、学校へ来なければなりませんか」と聞き、カードの○×を見せる → ○なら「はい、来なければなりません」、×なら「いいえ、来なくてもいいです」。キューは「靴を脱ぎます」「名前を書きます」「お金を払います」「保険証を持って来ます」「明日また来ます」。慣れたら学生が質問する側、教師が答える側に入れ替える。「〜なくてもいいです」のたびに、手で「しても、しなくても」の両方を示す。
  2. ペア「学校の決まりインタビュー」。Aは新しく入った学生、Bは前からいる学生で、Bだけが○×の付いた決まりカード(土曜日に学校へ来る・授業の前にお金を払う・教室で靴を脱ぐ・毎日辞書を持って来る)を持つ。Aが「〜なければなりませんか」と聞き、Bが答える。Aは答えをメモし、最後にカードと見比べる。4問で交替。
  3. 産出「国のルールくらべ」。学生が自分の国の病院・学校・家の決まりを、日本と比べて2〜3文で言う(「わたしの国では、家で靴を脱がなくてもいいです」)。聞いている学生は「〜なければなりませんか」で1つ質問する。教師が見るのは、はい/いいえと文型2/3の対応、「くても」の「も」の落ち、禁止の「〜てはいけません」との混同。

つまずきと手当て

  • 「〜なくてもいいです」を「〜てはいけません」(禁止)の意味に取る。「しても、しなくてもいい」と両方の絵を見せて確かめる
  • 「〜ないでもいいです」「〜なくていいです」になる。後者は話し言葉では聞くが、教室では「も」を入れた形に統一する
  • 「〜なければなりませんか」に「いいえ、〜なければなりません」と答える。はい/いいえと文型2/3の対応表を板書に残す

既習の文型との違い

  • 〈Vて形〉もいいですか(第15課)「〜てもいいです」はしてもかまわないという許可で、「〜なくてもいいです」はしなくてもかまわないという不必要です。形が似ているので、「写真を撮ってもいいですか」に「いいえ、撮らなくてもいいです」と答える学習者がいます。質問の形と答えの形を組で板書し、「〜てもいいですか」には「〜てもいいです/〜てはいけません」、「〜なければなりませんか」には「〜なければなりません/〜なくてもいいです」と対応させます。
  • 〈Vて形〉はいけません(第15課)「〜てはいけません」はしてはだめ、「〜なくてもいいです」はしてもしなくてもよい、で意味が大きく違います。「靴を脱がなくてもいいです」を「脱いではいけない」と取る学習者がいるので、2つの絵(脱いでいる人と脱いでいない人)に両方○を付けて見せ、禁止との違いを確かめます。
関連する文型

学習項目 5 〜は(取り立て)

意味・はたらき文型 4

主語ではない名詞(目的語・時・場所)を文の前に出して「は」を付け、話題にしたり、ほかのものと対比したりする使い方です。「を」「が」は「は」に置き換わり、「に」「で」「へ」は「には」「では」「へは」のように重ねます。この課では「薬は〜」「明日は〜」のように、文型1〜3と組み合わせて出てきます。「取り立て」は、文の中のある部分を特に取り上げて示す、という意味の文法用語です。格助詞の「を」「が」は「は」と重ねずに置き換え、それ以外の格助詞は「には」「では」のように重ねる、という区別が要点で、取り立て助詞と格助詞の違いを説明するときの基本の例になります。

接続

Nを/Nが→Nは。Nに/Nで/Nへ→Nには/Nでは/Nへは。〈時〉は(助詞のない時の語にはそのまま「は」)。話し言葉では「に」「へ」が落ちて「は」だけになることも多い(日曜日は・お風呂は・会社は)

形
Nは 〜(薬は 飲まなければなりません)〈時〉は 〜(明日は 来なくてもいいです)Nでは/Nには 〜(教室では 物を食べないでください)

導入

  • 医者の指示を2つ並べて対比「薬を飲みます」「お酒を飲みます」の絵を並べ、「薬は飲まなければなりません。お酒は飲まないでください」。「を」が「は」に変わったところを色チョークで囲み、「2つを比べるときの は」と言う。そのあと「お菓子を食べます」「ここで電話をかけます」でも同じように言い換えさせる。
  • カレンダーで時間の対比カレンダーの「今日」と「明日」を指して、「今日は学校へ来なければなりません。明日は来なくてもいいです」。時の語には助詞が無いので「は」をそのまま付けることを見せる。

板書案

Nを → Nは  〈時〉 → 〈時〉は
Nで → Nでは  Nに → Nには  Nへ → Nへは
薬は 飲まなければ なりません。 お酒は 飲まないで ください。
今日は 来なければ なりません。 明日は 来なくても いいです。
〔赤〕「は」を丸で囲む 〔青〕2つの文を左右に並べて「くらべる」の矢印

場面と発話(自作)

  • 病院で、医者が患者に薬とお酒のことを続けて言う。薬は1日に3回 飲んでください。お酒は飲まないでください。
  • 会社で、上司が新しい社員に明日の予定を言う。明日は会社へ来なくてもいいです。
  • 図書館の入り口で、係の人が案内する。ここでは電話をかけないでください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

練習Bの型: 「を」の文を「は」の文に言い換える(薬を飲みます→薬は飲まなければなりません)。2枚の絵を見せて「Aは〜。Bは〜」と対比で言わせる。練習Cの型: 「明日は?」「土曜日は?」と予定を聞き合う。

  1. 口頭言い換えの練習から入る。教師が「を」の文を言い(「薬を飲まなければなりません」)、学生が「は」の文に直す(「薬は飲まなければなりません」)。次に「ここでたばこを吸わないでください」→「ここではたばこを吸わないでください」、「日曜日に会社へ行きます」→「日曜日(に)は会社へ行きません」のように、で・に・時の語も入れる。時の「に」や「お風呂に」「会社へ」の「に・へ」は、話すときに落ちて「は」だけになることも多いと一言添える。最後に2枚の絵(薬とお酒、今日と明日)を見せ、「Aは〜。Bは〜」の2文で対比させる。
  2. ペア「病院の注意カード」。医者役は薬・お酒・お風呂・たばこ・会社に○×が付いたカードを持つ。患者役は「お風呂は?」「会社は?」と1語ずつ聞き、医者役は「お風呂は入らないでください」「会社は行ってもいいです」のように「は」を使って答える。患者役は聞いた答えを「お酒は飲まないでください、お風呂は…」とまとめて言い直す。5語で交替。
  3. 産出「よていくらべ」。学生が自分の1週間を「月曜日から金曜日までは〜なければなりません。土曜日は〜なくてもいいです」のように、「は」を使った2文の対比で言う。聞いている学生は「日曜日は?」と聞き返す。教師が見るのは、「*をは」「*がは」の重ね、「では」「には」の「で」「に」の落ち、1文に「は」を2つ入れていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「は」を主語だと思い、「薬は飲みます」を「薬が飲む」と理解する。絵で「だれが飲みますか」を確かめる
  • 「で」「に」を落として「ここは電話を〜」と言う。「では」「には」の形を板書に残す
  • 1つの文に「は」をいくつも付けて「薬はお酒は飲まないでください」のように壊れる。取り立てる名詞は1文に1つを原則にする

既習の文型との違い

  • NをVます(他動詞)(第6課)第6課から「を」で目的語を示してきましたが、その目的語を話題にしたり、ほかのものと比べたりするときは「を」を「は」に置き換えます。学習者は「*薬をは飲まなければなりません」と重ねたり、「は」にしたあと文の意味が変わったと思ったりします。「薬を飲みます」と「薬は飲みます」の絵を並べ、飲む人もすることも同じだと確かめます。
  • N1はN2 です(第1課)第1課からの「わたしは学生です」の「は」は、だれのことを話すかを示し、多くは主語にあたります。この課の「薬は飲まなければなりません」の「は」は目的語に付いていて、飲む人は話し手や相手です。「は」の前の語がいつも主語だと思っている学習者には、「だれが飲みますか」と聞いて、動作をする人を言わせます。
関連する文型

語彙の扱い

病院の語(熱・風邪・薬・健康保険証・お風呂)と会社の語(残業します・出張します)が中心で、動詞が多めです。新しい動詞(忘れます・なくします・払います・返します・脱ぎます・心配します)はそのままない形の練習の材料にし、「〜までに」は文型2の「〜までに出さなければなりません」で場面と一緒に入れます。「大丈夫」「お大事に」は会話の決まった言い方として先に覚えさせると、役割練習が楽になります。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 忘れます(わすれます) 覚えていたことが分からなくなります。持って行かなければならない物を、持って行かないことにも使います。 傘を〜・名前を〜・宿題を〜
    会社を出る前。外は雨が降っている。同僚に言う。
    「雨ですよ。傘を忘れないでください。」
  • なくします(なくします) 持っていた物が、どこにあるか分からなくなります。 かぎを〜・財布を〜・切符を〜
    ホテルの受付で、係の人が部屋のかぎを渡す。
    「このかぎは大切です。なくさないでください。」
  • 払います(はらいます) 買った物や使ったもののお金を出します。 お金を〜・カードで〜・〜までに〜
    病院の受付で、患者がお金のことを聞く。
    「お金は今日払わなければなりませんか。」「いいえ、今日は払わなくてもいいです。」
  • 返します(かえします) 借りた物を、貸した人に戻します。 本を〜・お金を〜・〜までに〜
    図書館で本を借りた。係の人が言う。
    「この本は金曜日までに返さなければなりません。」
  • 脱ぎます(ぬぎます) 着ている服や、はいている靴を体から取ります。 靴を〜・上着を〜
    病院で、医者が患者に言う。
    「上着を脱いでください。靴は脱がなくてもいいです。」
  • 心配します(しんぱいします) よくないことがあるかもしれないと思って、気持ちが落ち着きません。 家族を〜・病気を〜
    試験の前の日。友だちが元気がない。
    「大丈夫ですよ。心配しないでください。」
  • 残業します(ざんぎょうします) 決まった時間が終わったあとも、会社で仕事をします。 今晩〜・毎日〜
    同僚に、今晩いっしょに食事に行こうと誘われた。
    「すみません、今週は毎日残業しなければなりません。」
  • 出張します(しゅっちょうします) 仕事で、ほかの町や国へ行きます。 大阪へ〜・来週〜
    会社で、上司が来週の予定を話す。
    「来週、大阪へ出張しなければなりません。」
  • 持って行きます(もっていきます) 物を持って、ほかの所へ行きます。 パスポートを〜・保険証を〜・傘を〜
    旅行の前の日に、友だちに確かめる。
    「パスポートを持って行かなければなりませんか。」「はい、持って行かなければなりません。」
  • 入ります(はいります) 部屋や店などの中へ行きます。「お風呂に入ります」は、お風呂を使うことです。 お風呂に〜・部屋に〜・店に〜
    病院で、医者が熱のある患者に言う。
    「熱がありますから、今晩はお風呂に入らないでください。」
  • 大丈夫(な)(だいじょうぶ) 問題がなくて、心配しなくてもいいようすです。 もう〜です・〜ですか
    道で転んだ友だちに声をかける。
    「大丈夫ですか。」「はい、大丈夫です。心配しないでください。」

会話の扱い

病院で患者が具合の悪いところを伝え、医者が診て今日の過ごし方を指示する会話です。まず絵で場面(どこで・だれが)を確かめ、音声を1回聞いて「医者は何をしないでくださいと言ったか」「何をしなければならないか」を聞き取らせます。「どうしましたか」「お大事に」は文型ではなく表現としてそのまま覚えさせ、「〜ないでください」「〜なければなりません」の文は文型の練習で作ったものに置き換えて、患者役・医者役で言い換えながら役割練習をします。会話の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。

宿題と次のコマ

動詞表のない形の列を埋める(既習の動詞を全部)。練習Bの書く問題と、問題の読んで答える部分。次のコマの最初に、ない形のカードを速く回して答え合わせをしてから、第18課の辞書形へ進む(同じ動詞表を使い続ける)。

よくある質問

  • 第17課のない形はどの順で教えればいいですか?

    第14課で作ったグループ表をそのまま使い、Ⅰグループの「い段→あ段+ない」から入ります。すぐに「〜います→〜わない」(かいます→かわない)を別の列で見せ、ⅡとⅢは短く片づけて「きます→こない」だけを大きく残します。文型1に入る前に、ます形→ない形の1分間の書き取りか「ない形ビンゴ」で落ちた語を直しておくと、あとの3つの文型の練習が止まりません。

  • 「〜ないでください」と「〜てはいけません」の違いは何ですか?

    「〜ないでください」は話し手からのお願いで、医者や係の人の指示、友だちへの頼みに使えます。「〜てはいけません」は決まりとしての禁止で、規則を知らせる立場の人が使う言い方です。頼む場面で「〜てはいけません」を使うと強く聞こえるので、「すみませんが、〜ないでください」と言い換えさせます。

  • 「〜なければなりません」を否定だと思う学習者にはどう教えますか?

    導入で「飲みます? 飲みません? だめです」と状況を作ってから「飲まなければなりません」を出し、板書に「=飲みます」と大きく書きます。練習では1文ごとに「しますか、しませんか」と聞き、「します」と答えさせます。「ません」で終わっても否定ではないことを、形の説明より、何度も意味を確かめることで分からせます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目はない形の作り方と文型1「〜ないでください」まで。2コマ目は最初にない形を3分回してから、文型2・3を対で入れ、文型4、会話、練習Cと問題に進みます。ない形が弱いクラスは、第18課の辞書形に入る前に5分の小テストを入れると、活用の混乱が広がりません。

  • 取り立ての「は」はこの課でどこまで教えますか?

    「を」「が」は「は」に置き換え、「で」「に」「へ」は「では」「には」「へは」と重ねること、時の語にはそのまま「は」を付けることまでです。使い方は2つのものを比べる対比を中心にし、「薬は〜。お酒は〜」のように2文で練習します。「は」と「が」の違いや、1文にいくつも「は」が入る文には、この課では入りません。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。