日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

みんなの日本語 初級Ⅰ 第8課「そろそろ 失礼します」の教案

『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 本冊』 ・ 会話「そろそろ 失礼します」

形容詞が初めて出る課です。述語にする形(〜です/〜じゃありません/〜くないです)と、名詞の前に置く形(〜な N/〜い N)を、な形容詞と い形容詞の2つのグループに分けて4つの文型で学びます。な形容詞は名詞と同じ扱い、い形容詞だけ形が変わるという骨組みを最初に見せておくと、4つの文型が1枚の板書に収まります。程度の「とても・あまり」、質問の「どう・どんな・どれ」、文をつなぐ「そして」「〜が、〜」も、この文型の練習の中で使えるようにします。会話は第7課で家を訪ねた場面の続きで、帰るときのあいさつを扱います。

このページについて教科書の会話・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。文型の表記は出版社のシラバス一覧に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • な形容詞と い形容詞を見分けて、「〜です/〜じゃありません/〜くないです」で人・物・場所の様子を言える
  • 「〜はどうですか」と聞かれて、「とても〜です」「あまり〜ないです」で感想を言える
  • 「どんな N ですか」に「〜な N/〜い N」で答え、「どれですか」に色や大きさで物を指して答えられる
  • 「そして」「〜が、〜」で文をつなぎ、自分の町や寮、生活について2〜3文で話せる
  • 家を訪ねたあと、時間に気づいて帰るときのあいさつができる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(復習とつなぎ)10分第1課の名詞文「〜は学生です/学生じゃありません」を板書に残し、第7課の訪問の場面(いらっしゃい)を思い出させる。「日本の生活はどうですか」と聞いて、様子を言う言葉がまだ無いことを学生に気づかせてから形容詞に入る
文型1(な形容詞の述語)35分対になる絵カードで な形容詞を10語ほど入れ、名詞文と同じ枠「N は __ です/じゃありません」で練習Bの型→「どうですか」「とても・あまり」を足して練習Cの型
文型2(い形容詞の述語)45分実物と教師の動作で い形容詞を入れ、語末の「い」を赤で印。「い」を消して「くないです」を書く操作を見せ、「いい→よくないです」は別枠。な形容詞の列と色分けして2列の板書を完成させる。1コマ目はここまでで、最後の5分に い/な のカードを混ぜた否定の言い分けを全員で
文型3・4(名詞の前に置く形)40分2コマ目の冒頭5分で、学生に言わせながら い/な の2列の板書を復元する。2列の板書から矢印を引いて「__な N」「__い N」の枠を作る。絵カード+名詞で名詞句を作らせ、「どんな N ですか」「どれですか」の問答へ。答えが1つ出たら「そして」「〜が、〜」でもう1文足させる
会話20分第7課の訪問の続きとして、話をしたあと時間に気づいて帰る場面。教師が家の人、学生が客で通してから、帰るときの決まり文句だけ取り出して練習
練習C20分場面のやり取りを3本(感想を聞く・人や町を説明する・物を指して選ぶ)。相手と役を替えて各2回。最後に会話とつないで、訪問→話題→帰るあいさつを通しでロールプレイ
問題・宿題10分聞き取りは授業内で。書く部分と、自分の町か寮について3文書く作文を宿題に

学習項目 1 Nは〈なA〉です/Nは〈なA〉じゃありません

意味・はたらき文型 1

な形容詞を述語にして、人・物・場所の様子や性質を言う文です。な形容詞は「静か」「親切」「暇」のように、語の形のまま「です」を付けて肯定、「じゃありません」を付けて否定にします。つまり第1課の名詞文「学生です/学生じゃありません」とまったく同じ形で、ここが い形容詞(文型2)との最大の違いです。質問は「〜は静かですか」のほかに、様子をたずねる「〜はどうですか」があり、答えには程度の「とても」(肯定)・「あまり」(否定)を添えます。学校文法では「形容動詞」と呼ばれる語で、日本語教育では名詞の前の形から「な形容詞」と呼びます。

接続

N は + な形容詞(語の形のまま)+ です/じゃありません。述語のときは「な」を付けない(「な」が要るのは文型3の名詞の前だけ)

形
Nは 静かですNは 静かじゃありませんNは 静かですか — はい、静かです/いいえ、静かじゃありませんNは どうですか — とても静かです/あまり静かじゃありません

導入

  • 対になる絵カードで様子を言わせるにぎやかな町と静かな町、片づいた部屋と散らかった部屋のように、対になる絵カードを用意する。片方を見せて「にぎやかです」、もう片方で「静かです」と教師が言い、学生に繰り返させる。次に同じ絵で「静かですか」と聞き、「はい、静かです」「いいえ、静かじゃありません」を引き出す。板書は「N は __ です/__ じゃありません」の枠で、その上に第1課の「学生です/学生じゃありません」を並べ、形が同じことを見せる。
  • 学生に聞いて回り、「どうですか」と程度の語を足す学生の寮・国の町・日本語の勉強について「〜さんの寮は静かですか」と聞いて回り、答えが出そろったら「寮はどうですか」の聞き方に替える。答えに「とても」「あまり」を足し、「とても+肯定」「あまり+否定」の組み合わせを板書の枠の横に書き足しておく。

板書案

N は __(なA)です/__(なA)じゃありません
(第1課)田中さんは 学生です/学生じゃありません
この町は 静かです。 この町は 静かじゃありません。
〔青〕な形容詞の列(静か・にぎやか・きれい・有名・親切・元気・暇・便利) 〔赤〕「です」「じゃありません」の下に線
とても + 〜です / あまり + 〜じゃありません(〔赤〕の線で対に)

場面と発話(自作)

  • 寮に入って1週間。クラスメートに「寮はどうですか」と聞かれて答える。とても静かです。そして、きれいです。
  • 会社に新しく来た山田さんについて、友だちに「山田さんはどうですか」と聞かれた。親切です。そして、とても元気です。
  • 友だちから「日曜日は暇ですか」と電話があったが、日曜日は仕事がある。いいえ、暇じゃありません。日曜日は仕事です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カード(にぎやか・静か・きれい・親切・元気・暇・便利・有名)と名詞のキュー(東京・この教室・〜さん・日曜日)を組み合わせて「東京はにぎやかです」と言わせ、カードに×を付けたら「〜じゃありません」に替える(練習Bの型)。次に2人組で「〜さんの国の町はどうですか」「とても〜です/あまり〜じゃありません」のやり取りを、相手を替えて3回(練習Cの型)。

  1. 口頭対の絵カード(にぎやかな町と静かな町、きれいな部屋、元気な人、暇な日曜日)を見せ、教師が「東京・にぎやか」とキューを出す → 全員で「東京はにぎやかです」。カードに×を重ねたら「東京はにぎやかじゃありません」。キューを「名詞+絵」→「絵だけ」と減らし、最後は教師が「どうですか」と聞いて、学生が「とても〜です/あまり〜じゃありません」を選んで答える。個人に当てるときは、きれい・有名を多めに混ぜる。
  2. ペアAに町の絵カード3枚(にぎやか・静か・きれい の○×の印つき)、Bに印のない同じカードを渡す。Bが「この町は静かですか」と聞き、Aは自分のカードの印を見て「はい、静かです/いいえ、静かじゃありません」と答える(Bには答えが見えない)。3枚で交替し、2回目からは「この町はどうですか」「とても〜です/あまり〜じゃありません」の聞き方に替える。
  3. 産出「寮・町インタビュー」。学生が教室を歩いて3人に「〜さんの町(寮)はどうですか」と聞き、答えをメモする。席に戻って「〜さんの町はとてもにぎやかです。そして、きれいです」と1人分を発表する。教師が見るのは、述語に「な」が入っていないか、きれい・有名の否定が「じゃありません」になっているか、「あまり」のあとが否定になっているか。

つまずきと手当て

  • 「きれい」「有名」を語末の「い」から い形容詞と思い、「×きれくないです」「×有名くないです」と言う。この2語は板書の な形容詞の列に最初から入れておき、否定は「きれいじゃありません」と何度も口で言わせる
  • 「×静かなです」「×元気なです」と「な」を付ける(「な形容詞」という名前の影響)。述語のときは名詞と同じで何も付けないことを、第1課の文を横に並べて見せる
  • 「あまり」を肯定文に使う(「×あまり静かです」)。「あまり」のカードは×のカードと必ずいっしょに出し、否定とセットで覚えさせる

既習の文型との違い

  • N1はN2じゃありません(第1課)形はまったく同じで、「学生じゃありません」の「学生」を「静か」に入れ替えるだけです。違うのは、名詞は人や物の名前、な形容詞は様子を言う語だという点で、な形容詞には「とても静かです」のように程度の語が付けられます。学習者が「*静かなです」と「な」を足したら、第1課の文を横に書いて名詞文と同じ形だと確かめさせます。
関連する文型

学習項目 2 Nは〈いA〉です/Nは〈いA(〜い)〉くないです

意味・はたらき文型 2

い形容詞を述語にする文です。い形容詞は「大きい」「新しい」のように語の最後が「い」で終わり、肯定はそのまま「です」を付けますが、否定は最後の「い」を「くないです」に替えます(大きい → 大きくないです)。な形容詞と違って語の形が変わるので、この課で初めて「形を変える」練習が入ります。「いい」だけは例外で、否定は「よくないです」になります。否定には「〜くありません」という形もありますが、まずは「〜くないです」で統一して練習したほうが混乱が少ないでしょう。文法用語ではイ形容詞と呼び、学校文法の「形容詞」にあたります。

接続

N は + い形容詞 + です/ い形容詞の語末の「い」を取って + くないです。「いい」→「よくないです」

形
Nは 大きいですNは 大きくないです(大き+くないです)Nは いいです → Nは よくないです(例外)Nは どうですか — とてもおいしいです/あまりおいしくないです

導入

  • 実物と教師の動作で語を入れる大きいかばんと小さいかばん、新しい本と古い本を教卓に並べ、持ち上げながら「大きいです」「小さいです」と言う。「寒い」「暑い」は教師が震える・あおぐ動作で、「冷たい」は水のペットボトルを触らせて出す。語が10個ほど出たら、板書の い形容詞の列に語末の「い」を赤で書き、「ここが い形容詞の印」と見せる。
  • 「い」を消して「くないです」を書く「大きいです」の板書の「い」を消し、その場所に「くないです」を書いて「大きくないです」と読ませる。同じ操作を3語で見せたあと、学生に語を言わせて教師が「い」を消す→学生が否定形を言う、の順で定着させる。「いい」は最後に別枠で「よくないです」と書き、「いくないです」と言わせない。

板書案

N は __(いA)です/__くないです
大きいです → 大き〔赤〕い を消す → 大き〔赤〕くないです
このかばんは 新しいです。 このかばんは 新しくないです。
〔別枠・赤で囲む〕いい → よくないです
左に〔青〕な形容詞の列、右に〔赤〕い形容詞の列。否定の形を列ごとに下へ書く

場面と発話(自作)

  • 友だちと駅の近くの店で昼ごはんを食べた。帰りながら感想を言う。あの店の魚はおいしいですが、ちょっと高いです。
  • 冬の朝、寮の廊下で友だちに会った。おはようございます。今日は寒いですね。
  • 先生に「日本語の勉強はどうですか」と聞かれた。おもしろいが、やさしくはない。おもしろいですが、あまりやさしくないです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カード(大きい・小さい・新しい・古い・高い・安い・おいしい・寒い・忙しい)に名詞のキュー(このかばん・寮の部屋・日本の食べ物・今週)を付けて肯定文、×を付けたら否定文(練習Bの型)。「いい」は「この本はいいです/よくないです」のように単独で10回は言わせる。次に「〜さんの部屋は新しいですか」「いいえ、あまり新しくないです」の問答を2人組で(練習Cの型)。最後に「日本の食べ物はどうですか」で感想を自由に言わせ、「とても」「あまり」の使い分けを確かめる。

  1. 口頭教卓の実物(大きいかばんと小さいかばん、新しい本と古い本、冷たい水)と動作(寒い・暑い)で、教師が「かばん・大きい」とキューを出す → 全員で「このかばんは大きいです」。×のカードを出したら「大きくないです」。次に い/な のカードを混ぜて「静か」「高い」「きれい」「おいしい」と1語ずつ出し、否定だけを素早く言わせる(静かじゃありません/高くないです)。「いい」は最後に単独で、肯定と否定を交互に5回ずつ。
  2. ペアAは「今日の昼ごはん」「寮の部屋」「日本語の勉強」「今週」の4枚のカードを持ち、Bに「〜はどうですか」と聞く。Bは自分のことで「とてもおいしいです/あまり忙しくないです」と答える。Aは答えの肯定・否定を表に○×で書き、4枚終わったら交替。最後にAが表を見ながら「〜さんの部屋はあまり新しくないです」と言い、Bが合っているか確かめる。
  3. 産出「反対ことばリレー」。列の先頭が「この教室は大きいです」と言い、次の人は「いいえ、大きくないです。小さいです」と否定と反対の語で返してから、新しい文を後ろへ渡す。名詞は教室の物・町・食べ物から自分で選ばせる。教師が見るのは「い」の消し忘れ(*大きいくないです)、な形容詞を「くない」にしていないか(*きれくないです)、「いい」が「よくないです」になっているか。

つまずきと手当て

  • 名詞・な形容詞の否定を流用して「×大きいじゃありません」と言う。板書の い形容詞の列と な形容詞の列を色分けし、否定を言う前に「どちらの列か」を指さして確かめる習慣を作る
  • 「い」を取らずに「×大きいくないです」、「いい」を「×いくないです」「×いいくないです」と言う。「い」を消す操作を見せた板書は、課の間は消さずに残しておく
  • 「あまり高くないです」のつもりで「とても高くないです」と言う。誤りとまでは言えないが意味がずれる(「とても」は否定とあまり組まない)ので、初級では「とても→肯定」「あまり→否定」をカードで対にして出す

既習の文型との違い

  • Vます/Vません(第4課)動詞は「ます」を「ません」に替えて否定にしますが、い形容詞は語末の「い」を「くないです」に替えます。動詞の型に引かれて「*高いません」「*おいしいません」と言う学習者がいるので、動詞・名詞・な形容詞・い形容詞の否定を4行で並べて見せます。
  • N1はN2じゃありません(第1課)名詞と な形容詞の否定は「じゃありません」、い形容詞だけが「くないです」です。いちばん多い誤りは「*大きいじゃありません」で、名詞文の否定をそのまま い形容詞に当てたものです。言う前に板書のどちらの列の語かを指さす手順を、課の間ずっと続けます。
関連する文型

学習項目 3 〜は〈なA〉なNです

意味・はたらき文型 3

な形容詞で名詞を修飾するときの形です。名詞の前に置くときは「静かな町」「親切な人」のように、な形容詞と名詞の間に「な」を入れます。この「な」が「な形容詞」という名前のもとで、述語のとき(文型1)には出てこなかったものです。できた名詞句は「〜は静かな町です」のように文の述語にも、「きれいな花をあげます」のように目的語にもなります。「どんな N ですか」という質問とセットで練習します。文法用語では連体修飾(名詞を修飾する形)の一つで、な形容詞は名詞の前に来たときだけ「な」が現れる、というのが い形容詞との境目です。

接続

な形容詞 + な + N(「きれい」「有名」も「きれいな」「有名な」)

形
静かな 町/親切な 人〜は どんな N ですか — 〜は にぎやかな町ですきれいな花を 買います(名詞句を文の中で使う)

導入

  • 文型1の板書に「な」を足して名詞句にする文型1で使った絵カード(にぎやかな町・静かな町)をもう一度見せ、「この町はにぎやかです」と言ってから、カードの下に「町」と書いた紙を置いて「にぎやかな町」と言う。板書は「N は __ です」の枠から矢印を引いて「__な N」の枠を作り、な形容詞の列の横にかっこで書いておいた(な)をかっこなしにする。
  • 「どんな N ですか」をクラスメートで学生を1人指して「〜さんはどんな人ですか」と聞き、「親切な人です」「元気な人です」を引き出す。次に学生の国の町について「どんな町ですか」と聞いて回り、答えを板書の枠に当てはめさせる。

板書案

__(なA)〔赤〕な + N
静かです → 静か〔赤〕な 町
京都は 静かな 町です。 田中さんは 親切な 人です。
〜は どんな N ですか — 〜な N です(質問の N を〔青〕の丸で囲み、答えの N にも同じ丸)
文型1の枠「N は __ です」から下へ矢印を引いて「__な N」の枠へ

場面と発話(自作)

  • 友だちに旅行の写真を見せたら「どんな所ですか」と聞かれた。とても静かな所です。
  • 会社の友だちに「田中さんはどんな人ですか」と聞かれた。親切な人です。そして、とても元気な人です。
  • 母の誕生日に花を送った。そのことを先生に話す。母の誕生日にきれいな花を送りました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カードと名詞のキューで「静か・町 → 静かな町」を作らせたあと、「〜は+名詞句+です」「名詞句+を+動詞」の文に入れる(練習Bの型。「きれいな花を買います」「有名な人に会いました」)。次に「〜さんの学校はどんな学校ですか」「〜さんの先生はどんな先生ですか」を2人組で聞き合う(練習Cの型)。答えが1つ出たら「そして」でもう1つ足させる。

  1. 口頭教師が な形容詞のカード(静か・にぎやか・きれい・有名・親切・元気)と名詞のカード(町・人・所・花・レストラン)を1枚ずつ出す → 全員で「静かな町」。次に名詞句を文に入れる段に進み、「京都・静か・町」で「京都は静かな町です」、「花・きれい・買います」で「きれいな花を買います」と、述語と目的語の両方の位置で言わせる。
  2. ペアAに人物の絵カード(裏に「親切」「元気」などの語を書いたもの)を持たせ、Bが「この人はどんな人ですか」と聞く。Aは裏の語を見て「親切な人です」と答え、Bは答えに合う絵を自分の机の絵の中から選ぶ。3枚で交替。慣れたら名詞を「町」「所」「レストラン」に替える。
  3. 産出「どんな人?当てクイズ」。学生がクラスメート1人を選んで、名前を言わずに「この人は元気な人です。そして、親切な人です」と2文で紹介し、ほかの学生が「〜さんですか」と当てる。人を言いにくいクラスでは、有名な町や店に替えてもよい。教師が見るのは「な」の落ち(*元気人)と「の」の混入(*元気の人)、答えに名詞が入っているか。

つまずきと手当て

  • 文型1の形のまま「×静か町」「×親切人」と「な」を落とす。名詞の前に来たら「な」の合図、と板書の矢印を指して直す
  • 母語の影響で「×きれいの花」「×有名の先生」と「の」でつなぐ(中国語の「的」など)。第2課の「N1のN2」は名詞と名詞、ここは形容詞と名詞、と並べて見せる
  • 「どんな人ですか」に「×親切です」と名詞を落として答える。質問の「人」を指さして、答えにも「人」を入れさせる

既習の文型との違い

  • N1のN2(第2課)「日本語の本」は名詞と名詞を「の」でつなぎ、「きれいな花」は な形容詞と名詞を「な」でつなぎます。母語の影響もあって「*きれいの花」「*有名の人」と言う学習者が多いので、前の語が名詞なら「の」、な形容詞なら「な」と、板書で2つの枠を上下に並べます。
  • Nは〈なA〉です/Nは〈なA〉じゃありません(第8課 文型1)同じ「静か」でも、文の終わりに来るときは「静かです」で「な」を付けず、名詞の前に来るときだけ「静かな町」と「な」を付けます。文型1のすぐあとなので「*静か町」も「*静かなです」も両方出ます。名詞の前かどうかで決まることを、板書の矢印で見せます。
関連する文型

学習項目 4 〜は〈いA(〜い)〉Nです

意味・はたらき文型 4

い形容詞で名詞を修飾する形です。い形容詞は「大きいかばん」「新しい本」のように、語の形を変えずにそのまま名詞の前に置きます。な形容詞(文型3)には「な」が要るのに対して、い形容詞は何も足さない、という対比がこの課の最後の整理です。「いい」も「いい人」「いい本」とそのまま付きます。色の語(白い・黒い・赤い・青い)は い形容詞なので、「〜さんの傘はどれですか」「あの青い傘です」のように、物を指して選ぶ練習に向いています。文型3と同じ連体修飾ですが、い形容詞は辞書に載っている形のまま名詞に続くので、新しく覚える形がありません。

接続

い形容詞(語の形のまま)+ N。「な」も「の」も入れない

形
大きい かばん/新しい 本/いい 人〜は どんな N ですか — 〜は 大きい町です〜さんの傘は どれですか — あの青い傘です

導入

  • 教室の実物で2つを比べる大きいかばんと小さいかばんを持ち上げて「大きいかばんです」「小さいかばんです」と言い、学生の机の上の物(赤いペン・黒いかばん・新しい本)を指して名詞句を言わせる。板書は文型3の「__な N」の横に「__い N」を並べ、い形容詞は何も足さないことを矢印で見せる。
  • 「どれですか」で物を選ばせる色の違う傘やかばんを3つ教卓に並べ、「わたしの傘はどれですか」と聞いて「その赤い傘です」と答えさせる。学生の持ち物を集めて「〜さんのかばんはどれですか」と聞き合わせると、色の語とこの文型がいっしょに定着する。

板書案

__(いA)+ N (何も足さない)
左:静か〔赤〕な 町  右:大きい 町(「な」「の」に〔赤〕の×)
わたしの傘は あの 青い 傘です。
〜は どれですか — この/その/あの + __い + N です
色の語(白い・黒い・赤い・青い)を〔赤〕い形容詞の列に足す

場面と発話(自作)

  • 友だちの家から帰るとき、玄関に傘が何本もある。「〜さんの傘はどれですか」と聞かれた。その青い傘です。
  • 友だちに「昼ごはんはどこで食べますか」と聞かれた。いつも行く安い店を教える。いつもあの安い店で食べます。
  • 先生に「〜さんの町はどんな町ですか」と聞かれた。小さいが、きれいな町だ。小さい町ですが、きれいな町です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

絵カードと名詞で「大きい・町 → 大きい町」を作らせ(練習Bの型)、次に な形容詞のカードを混ぜて「静か・町 → 静かな町」と交互に出し、「な」の有無をその場で判断させる。2人組で「〜さんの国はどんな国ですか」と聞き、「大きい国です。そして、にぎやかな国です」のように い形容詞と な形容詞を1つずつ使って答える(練習Cの型)。最後に教卓の物で「どれですか」の問答。

  1. 口頭教卓に色と大きさの違うかばん・傘・本を並べ、教師が物を指して「かばん・大きい」とキュー → 全員で「大きいかばん」。次に い/な のカードを交互に出し(大きい→静か→新しい→有名→白い→きれい)、名詞を「町」「人」「本」に固定して「な」の有無を即答させる。最後は教師が物を指さずに「黒いかばんはどれですか」と聞き、学生が「それです」「あの黒いかばんです」と答える。
  2. ペア色と大きさの違う6本の傘が描かれた同じ絵を2人に配る。Aは自分の傘を1本だけ心の中で決め、Bが「〜さんの傘はどれですか」と聞く。Aは「青い傘です」「小さい傘です」とヒントを出し、Bが指で当てる。当たったら交替。1つのヒントで決まらないときは「そして」で2つ目の特徴を足させる。
  3. 産出「忘れ物さがし」。授業の初めに学生の持ち物(ペン・ノート・かばん・傘)を1つずつ集めて教卓に置き、1人ずつ前に出て「わたしのペンは赤いペンです。そして、新しいペンです」と言ってから、自分の物を取る。ほかの学生は言った特徴が合っているかを確かめる。教師が見るのは「*赤いなペン」「*赤いのペン」がないか、指示詞と形容詞の順(あの青い傘)。

つまずきと手当て

  • 文型3の直後なので「×大きいな町」「×新しいな本」と「な」を付ける。い/な のカードを混ぜた練習で、言う前に語末を見る癖を付ける
  • 「×大きいの町」と「の」でつなぐ。文型3と同じ手当てで、第2課の「N1のN2」と区別する
  • 否定の名詞修飾(「高くない店」)はまだ扱わないのに「×高くないです店」と作る。この課では反対の語で「安い店」と言い換えさせる

既習の文型との違い

  • この/その/あのN1はN2 のです(第2課)第2課では「この傘」のように指示詞をすぐ名詞に付けましたが、この課では間に い形容詞が入って「この青い傘」になります。初級では指示詞が先、形容詞があと、の順に統一して練習させます。「どれですか」の答えも、第2課の「これです」だけでなく「その青い傘です」と特徴で言えるようになるのがこの課の伸びです。
  • 〜は〈なA〉なNです(第8課 文型3)な形容詞は「静かな町」と「な」が入り、い形容詞は「大きい町」と何も入りません。直前の文型3に引かれて「*大きいな町」「*新しいな本」と言う誤りが出るので、語末が「い」かどうかを先に見る癖を付けます。ただし「きれい」「有名」は語末が「い」でも な形容詞なので、この2語は例外として何度も混ぜて出します。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語は形容詞が中心なので、新出語の段階から い形容詞と な形容詞を2列に分けて板書し、「きれい」「有名」は な形容詞の列に最初から入れておきます(第9課の「嫌い」も同じ扱いになります)。「大きい/小さい」「新しい/古い」「高い/安い」「暑い/寒い」「にぎやか/静か」のように対になる語は絵カードを対で作ると、肯定・否定と名詞修飾の練習がそのまま回せます。「どう・どんな・どれ」の3つの疑問詞と、文をつなぐ「そして」「〜が、〜」もこの課の語なので、文型の練習の中で必ず使う場面を作っておきます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 静か(しずか) 音や声が少なくて、うるさくないようすです。な形容詞です。 〜な町・〜な所・〜じゃありません
    寮に入った次の日、クラスメートに寮のことを聞かれた。
    「わたしの寮はとても静かです。」
  • にぎやか(にぎやか) 人や店が多くて、明るく活気があるようすです。な形容詞です。 〜な町・〜なレストラン
    友だちに自分の国の町を紹介する。
    「わたしの町はにぎやかな町です。」
  • きれい(きれい) 形や色が美しいようすです。よごれていないようすにも使います。語末が「い」ですが、な形容詞です。 〜な花・〜な部屋・〜じゃありません
    友だちの家で、テーブルの花を見て言う。
    「きれいな花ですね。」
  • 親切(しんせつ) ほかの人のために、やさしくいろいろしてくれるようすです。な形容詞です。 〜な人・〜な先生
    会社の同僚について、友だちに聞かれた。
    「田中さんは親切な人です。」
  • 便利(べんり) 使うと、早く簡単にできて、役に立つようすです。な形容詞です。 〜な辞書・とても〜です
    クラスメートに、いつも使っている電子辞書を見せる。
    「この辞書はとても便利です。」
  • 大きい(おおきい) 形や量がふつうより多いようすです。反対は「小さい」です。い形容詞です。 〜かばん・〜町・〜くないです
    友だちに、どのかばんか聞かれた。
    「わたしのかばんはあの大きいかばんです。」
  • 新しい(あたらしい) できてから、または買ってから、時間がたっていないようすです。反対は「古い」です。 〜本・〜寮・〜くないです
    クラスメートに「〜さんの寮は新しいですか」と聞かれた。
    「いいえ、あまり新しくないです。」
  • 高い(たかい) 値段がたくさんかかるようすです。山などが上のほうまであるようすにも使います。反対は「安い」「低い」です。 〜時計・〜山・とても〜
    デパートで、かばんの値段を見て友だちに言う。
    「このかばんは高いですね。」
  • おいしい(おいしい) 食べ物や飲み物の味がいいようすです。い形容詞です。 〜食べ物・とても〜・あまり〜くないです
    友だちの家で料理を食べた。
    「とてもおいしいです。」
  • いい(いい) よいようすです。否定は「よくないです」になります。 〜人・〜本・よくないです
    友だちに、読んでいる本はどうか聞かれた。
    「とてもいい本です。」
  • 忙しい(いそがしい) することがたくさんあって、時間がないようすです。反対は「暇」です。 仕事が〜・とても〜
    友だちに「今週はどうですか」と聞かれた。
    「今週はとても忙しいです。」
  • どんな(どんな) 人や物の様子・性質をたずねる言葉です。あとに名詞が来ます。 〜人・〜町・〜所
    友だちの国の話を聞いて、もっと聞きたい。
    「〜さんの町はどんな町ですか。」

会話の扱い

会話は第7課「いらっしゃい」で家を訪ねた場面の続きで、話をしたあと時間に気づいて帰るあいさつをする場面です。教室の前にいす2つと時計の絵を置いて「家」を作り、教師が家の人・学生が客になって、まず第7課のあいさつで家に入ってから、「日本の生活はどうですか」「仕事はどんな仕事ですか」のようにこの課の文型で話をさせます。時計の絵の針を進めて時間に気づかせ、帰るときの決まり文句(「失礼します」は入るときにも帰るときにも使えること、家の人が「また来てほしい」と言う決まり文句への返し)をジェスチャーといっしょに練習します。ロールプレイは、客を2人にして家族の話を足す・話題を自分の国の町に替える・帰るのを引き止められてもう一度断る、の3段階で広げると、文型と会話の両方が回ります。

宿題と次のコマ

宿題は練習Bの残りの番号と、問題の書く部分(聞き取りは授業内で)。それに加えて、自分の町・寮・学校のどれかについて「〜は__です。そして、__です」「__ですが、__です」の形で3文書かせ、い形容詞と な形容詞を1つずつは入れるよう指定します。次のコマは冒頭で宿題の文を2〜3人に読ませ、「な」の有無と否定の形だけ直して、そのまま第9課「Nが好きです/嫌いです」「Nが上手です/下手です」へ入ります。第9課の「好き・嫌い・上手・下手」は な形容詞なので、この課の「〜です/〜じゃありません」「〜な N」がそのまま使えることを最初に言うとつながりがよくなります。

よくある質問

  • 第8課の形容詞は、な形容詞と い形容詞のどちらから教えればいいですか?

    この課の文型の順どおり、な形容詞の述語から入ると負担が小さくなります。「静かです/静かじゃありません」は第1課の名詞文と同じ形なので、新しく覚えるのは語だけで済みます。そのあとで い形容詞の「大きくないです」を出すと、「い形容詞だけ形が変わる」という対比がはっきりします。名詞の前に置く形(〜な N/〜い N)は、述語の形が両方そろってから2コマ目にまとめます。

  • 「きれい」「有名」は い形容詞ではないのですか?どう教えればいいですか?

    どちらも な形容詞です。語末の「い」は語の一部で、名詞の前では「きれいな花」「有名な人」と「な」が付きます。語末だけで判断すると「*きれくないです」と言ってしまうので、新出語の段階から板書の な形容詞の列に入れ、否定は「きれいじゃありません」と口で何度も言わせます。い/な のカードを混ぜる練習に、この2語を毎回入れておくと定着します。

  • い形容詞の否定は「〜くないです」と「〜くありません」のどちらで教えますか?

    この課では「〜くないです」に統一して練習するほうが混乱が少ないでしょう。「〜くありません」も正しい形なので、学習者が見つけて質問したら「同じ意味です」と答えておきます。2つを同時に練習させると、「*大きいじゃありません」のような名詞文との混ざりが増えやすくなります。

  • 第8課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と文型1・2(述語の形)、2コマ目は文型3・4(名詞の前の形)、会話、練習C、問題です。形容詞の語が多い課なので、語の導入に時間がかかるクラスでは、1コマ目の終わりの5分を い/な の否定の言い分けだけに使い、2コマ目の初めに2列の板書を学生に復元させます。

  • 第8課の板書はどう組みますか?

    黒板を左右に分けて、左に な形容詞の列、右に い形容詞の列を色を変えて書きます。それぞれの下に肯定・否定の形を書き、い形容詞は「い」を消して「くないです」を書く操作を見せ、「いい→よくないです」を別枠で囲みます。2コマ目は列の下から矢印を引いて「〜な N」「〜い N」の枠を作ると、4つの文型が1枚の板書に収まります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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