形容詞が初めて出る課です。述語にする形(〜です/〜じゃありません/〜くないです)と、名詞の前に置く形(〜な N/〜い N)を、な形容詞と い形容詞の2つのグループに分けて4つの文型で学びます。な形容詞は名詞と同じ扱い、い形容詞だけ形が変わるという骨組みを最初に見せておくと、4つの文型が1枚の板書に収まります。程度の「とても・あまり」、質問の「どう・どんな・どれ」、文をつなぐ「そして」「〜が、〜」も、この文型の練習の中で使えるようにします。会話は第7課で家を訪ねた場面の続きで、帰るときのあいさつを扱います。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(復習とつなぎ) | 10分 | 第1課の名詞文「〜は学生です/学生じゃありません」を板書に残し、第7課の訪問の場面(いらっしゃい)を思い出させる。「日本の生活はどうですか」と聞いて、様子を言う言葉がまだ無いことを学生に気づかせてから形容詞に入る |
| 文型1(な形容詞の述語) | 35分 | 対になる絵カードで な形容詞を10語ほど入れ、名詞文と同じ枠「N は __ です/じゃありません」で練習Bの型→「どうですか」「とても・あまり」を足して練習Cの型 |
| 文型2(い形容詞の述語) | 45分 | 実物と教師の動作で い形容詞を入れ、語末の「い」を赤で印。「い」を消して「くないです」を書く操作を見せ、「いい→よくないです」は別枠。な形容詞の列と色分けして2列の板書を完成させる。1コマ目はここまでで、最後の5分に い/な のカードを混ぜた否定の言い分けを全員で |
| 文型3・4(名詞の前に置く形) | 40分 | 2コマ目の冒頭5分で、学生に言わせながら い/な の2列の板書を復元する。2列の板書から矢印を引いて「__な N」「__い N」の枠を作る。絵カード+名詞で名詞句を作らせ、「どんな N ですか」「どれですか」の問答へ。答えが1つ出たら「そして」「〜が、〜」でもう1文足させる |
| 会話 | 20分 | 第7課の訪問の続きとして、話をしたあと時間に気づいて帰る場面。教師が家の人、学生が客で通してから、帰るときの決まり文句だけ取り出して練習 |
| 練習C | 20分 | 場面のやり取りを3本(感想を聞く・人や町を説明する・物を指して選ぶ)。相手と役を替えて各2回。最後に会話とつないで、訪問→話題→帰るあいさつを通しでロールプレイ |
| 問題・宿題 | 10分 | 聞き取りは授業内で。書く部分と、自分の町か寮について3文書く作文を宿題に |
な形容詞を述語にして、人・物・場所の様子や性質を言う文です。な形容詞は「静か」「親切」「暇」のように、語の形のまま「です」を付けて肯定、「じゃありません」を付けて否定にします。つまり第1課の名詞文「学生です/学生じゃありません」とまったく同じ形で、ここが い形容詞(文型2)との最大の違いです。質問は「〜は静かですか」のほかに、様子をたずねる「〜はどうですか」があり、答えには程度の「とても」(肯定)・「あまり」(否定)を添えます。学校文法では「形容動詞」と呼ばれる語で、日本語教育では名詞の前の形から「な形容詞」と呼びます。
N は + な形容詞(語の形のまま)+ です/じゃありません。述語のときは「な」を付けない(「な」が要るのは文型3の名詞の前だけ)
絵カード(にぎやか・静か・きれい・親切・元気・暇・便利・有名)と名詞のキュー(東京・この教室・〜さん・日曜日)を組み合わせて「東京はにぎやかです」と言わせ、カードに×を付けたら「〜じゃありません」に替える(練習Bの型)。次に2人組で「〜さんの国の町はどうですか」「とても〜です/あまり〜じゃありません」のやり取りを、相手を替えて3回(練習Cの型)。
い形容詞を述語にする文です。い形容詞は「大きい」「新しい」のように語の最後が「い」で終わり、肯定はそのまま「です」を付けますが、否定は最後の「い」を「くないです」に替えます(大きい → 大きくないです)。な形容詞と違って語の形が変わるので、この課で初めて「形を変える」練習が入ります。「いい」だけは例外で、否定は「よくないです」になります。否定には「〜くありません」という形もありますが、まずは「〜くないです」で統一して練習したほうが混乱が少ないでしょう。文法用語ではイ形容詞と呼び、学校文法の「形容詞」にあたります。
N は + い形容詞 + です/ い形容詞の語末の「い」を取って + くないです。「いい」→「よくないです」
絵カード(大きい・小さい・新しい・古い・高い・安い・おいしい・寒い・忙しい)に名詞のキュー(このかばん・寮の部屋・日本の食べ物・今週)を付けて肯定文、×を付けたら否定文(練習Bの型)。「いい」は「この本はいいです/よくないです」のように単独で10回は言わせる。次に「〜さんの部屋は新しいですか」「いいえ、あまり新しくないです」の問答を2人組で(練習Cの型)。最後に「日本の食べ物はどうですか」で感想を自由に言わせ、「とても」「あまり」の使い分けを確かめる。
な形容詞で名詞を修飾するときの形です。名詞の前に置くときは「静かな町」「親切な人」のように、な形容詞と名詞の間に「な」を入れます。この「な」が「な形容詞」という名前のもとで、述語のとき(文型1)には出てこなかったものです。できた名詞句は「〜は静かな町です」のように文の述語にも、「きれいな花をあげます」のように目的語にもなります。「どんな N ですか」という質問とセットで練習します。文法用語では連体修飾(名詞を修飾する形)の一つで、な形容詞は名詞の前に来たときだけ「な」が現れる、というのが い形容詞との境目です。
な形容詞 + な + N(「きれい」「有名」も「きれいな」「有名な」)
絵カードと名詞のキューで「静か・町 → 静かな町」を作らせたあと、「〜は+名詞句+です」「名詞句+を+動詞」の文に入れる(練習Bの型。「きれいな花を買います」「有名な人に会いました」)。次に「〜さんの学校はどんな学校ですか」「〜さんの先生はどんな先生ですか」を2人組で聞き合う(練習Cの型)。答えが1つ出たら「そして」でもう1つ足させる。
い形容詞で名詞を修飾する形です。い形容詞は「大きいかばん」「新しい本」のように、語の形を変えずにそのまま名詞の前に置きます。な形容詞(文型3)には「な」が要るのに対して、い形容詞は何も足さない、という対比がこの課の最後の整理です。「いい」も「いい人」「いい本」とそのまま付きます。色の語(白い・黒い・赤い・青い)は い形容詞なので、「〜さんの傘はどれですか」「あの青い傘です」のように、物を指して選ぶ練習に向いています。文型3と同じ連体修飾ですが、い形容詞は辞書に載っている形のまま名詞に続くので、新しく覚える形がありません。
い形容詞(語の形のまま)+ N。「な」も「の」も入れない
絵カードと名詞で「大きい・町 → 大きい町」を作らせ(練習Bの型)、次に な形容詞のカードを混ぜて「静か・町 → 静かな町」と交互に出し、「な」の有無をその場で判断させる。2人組で「〜さんの国はどんな国ですか」と聞き、「大きい国です。そして、にぎやかな国です」のように い形容詞と な形容詞を1つずつ使って答える(練習Cの型)。最後に教卓の物で「どれですか」の問答。
この課の語は形容詞が中心なので、新出語の段階から い形容詞と な形容詞を2列に分けて板書し、「きれい」「有名」は な形容詞の列に最初から入れておきます(第9課の「嫌い」も同じ扱いになります)。「大きい/小さい」「新しい/古い」「高い/安い」「暑い/寒い」「にぎやか/静か」のように対になる語は絵カードを対で作ると、肯定・否定と名詞修飾の練習がそのまま回せます。「どう・どんな・どれ」の3つの疑問詞と、文をつなぐ「そして」「〜が、〜」もこの課の語なので、文型の練習の中で必ず使う場面を作っておきます。
会話は第7課「いらっしゃい」で家を訪ねた場面の続きで、話をしたあと時間に気づいて帰るあいさつをする場面です。教室の前にいす2つと時計の絵を置いて「家」を作り、教師が家の人・学生が客になって、まず第7課のあいさつで家に入ってから、「日本の生活はどうですか」「仕事はどんな仕事ですか」のようにこの課の文型で話をさせます。時計の絵の針を進めて時間に気づかせ、帰るときの決まり文句(「失礼します」は入るときにも帰るときにも使えること、家の人が「また来てほしい」と言う決まり文句への返し)をジェスチャーといっしょに練習します。ロールプレイは、客を2人にして家族の話を足す・話題を自分の国の町に替える・帰るのを引き止められてもう一度断る、の3段階で広げると、文型と会話の両方が回ります。
宿題は練習Bの残りの番号と、問題の書く部分(聞き取りは授業内で)。それに加えて、自分の町・寮・学校のどれかについて「〜は__です。そして、__です」「__ですが、__です」の形で3文書かせ、い形容詞と な形容詞を1つずつは入れるよう指定します。次のコマは冒頭で宿題の文を2〜3人に読ませ、「な」の有無と否定の形だけ直して、そのまま第9課「Nが好きです/嫌いです」「Nが上手です/下手です」へ入ります。第9課の「好き・嫌い・上手・下手」は な形容詞なので、この課の「〜です/〜じゃありません」「〜な N」がそのまま使えることを最初に言うとつながりがよくなります。
第8課の形容詞は、な形容詞と い形容詞のどちらから教えればいいですか?
この課の文型の順どおり、な形容詞の述語から入ると負担が小さくなります。「静かです/静かじゃありません」は第1課の名詞文と同じ形なので、新しく覚えるのは語だけで済みます。そのあとで い形容詞の「大きくないです」を出すと、「い形容詞だけ形が変わる」という対比がはっきりします。名詞の前に置く形(〜な N/〜い N)は、述語の形が両方そろってから2コマ目にまとめます。
「きれい」「有名」は い形容詞ではないのですか?どう教えればいいですか?
どちらも な形容詞です。語末の「い」は語の一部で、名詞の前では「きれいな花」「有名な人」と「な」が付きます。語末だけで判断すると「*きれくないです」と言ってしまうので、新出語の段階から板書の な形容詞の列に入れ、否定は「きれいじゃありません」と口で何度も言わせます。い/な のカードを混ぜる練習に、この2語を毎回入れておくと定着します。
い形容詞の否定は「〜くないです」と「〜くありません」のどちらで教えますか?
この課では「〜くないです」に統一して練習するほうが混乱が少ないでしょう。「〜くありません」も正しい形なので、学習者が見つけて質問したら「同じ意味です」と答えておきます。2つを同時に練習させると、「*大きいじゃありません」のような名詞文との混ざりが増えやすくなります。
第8課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は復習と文型1・2(述語の形)、2コマ目は文型3・4(名詞の前の形)、会話、練習C、問題です。形容詞の語が多い課なので、語の導入に時間がかかるクラスでは、1コマ目の終わりの5分を い/な の否定の言い分けだけに使い、2コマ目の初めに2列の板書を学生に復元させます。
第8課の板書はどう組みますか?
黒板を左右に分けて、左に な形容詞の列、右に い形容詞の列を色を変えて書きます。それぞれの下に肯定・否定の形を書き、い形容詞は「い」を消して「くないです」を書く操作を見せ、「いい→よくないです」を別枠で囲みます。2コマ目は列の下から矢印を引いて「〜な N」「〜い N」の枠を作ると、4つの文型が1枚の板書に収まります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。