第11課でて形と「〜てください」を習ったあとを受けて、この課でない形が初めて出ます。ない形を使う文型は「〜ないでください(しないように頼む)」「〜ないで、…(しないまま/しないで別のことをする)」「〜なければなりません(しなければいけない)」の三つで、どれも作り方さえ身につけば、あとは前の課までの文に付けるだけです。最後の「〜にします」はない形とは別の項目で、いくつかの中から一つを選んで決める言い方です。辞書形はまだ出ていないので、ない形はます形から作ると決め、課の最初にグループごとの作り方を十分に練習してから文型に入ると、後半で活用につまずいて止まることが少なくなります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第11課の「〜てください」を教室の指示(窓を開けてください・名前を書いてください)で2〜3問言わせる。そのあと教師が「書いてください」と「書かないでください」を並べて言い、反対の頼み方があること、そのために新しい形が要ることを予告する |
| ない形の作り方 | 35分 | て形のときと同じ三つのグループに分け、ます形から作る。グループⅠ(「ます」の前のい段→あ段+ない。「〜います」は「〜わない」)→グループⅡ(ます→ない)→グループⅢ(しない・こない)→例外の「あります→ない」の順で、動詞カードを使って速く言い換える |
| 学習項目1 〜ないでください | 25分 | 教室・図書館・病院の注意の絵で導入。「〜てください」と「〜ないでください」の頼み方を、同じ場面の二枚の絵で対にして練習する |
| 学習項目2 〜ないで、… | 20分 | 「コーヒーを飲んで、うちを出ました」と「コーヒーを飲まないで、うちを出ました」の二枚の絵で、しないままもう一つの動作をする意味を見せる。けさのことを聞き合って定着させる |
| 学習項目3 〜なければなりません | 30分 | 教師の一週間の予定表で「しなければいけないこと」を言って導入。学生の予定(宿題・アルバイト・病院)に広げる |
| 学習項目4 〜にします | 30分 | 喫茶店のメニューの絵で「何にしますか」「〜にします」を導入し、プレゼント選び・集まる日を決める場面に広げる |
| まとめの活動 | 30分 | 「クラスのパーティーの計画」を4人で話し合う活動。日と場所と料理を「〜にしましょう」で決め、「〜なければなりません」で準備を分け、「〜ないでください」で注意を一つ書いて発表する |
動詞の否定の形「ない形」を作ります。この本では辞書形がまだ出ていないので、知っている「ます形」から作ります。グループの分け方は第11課のて形と同じで、グループⅠは「ます」の前の音を「い段」から「あ段」に変えて「ない」を付けます(書きます→書かない)。「ます」の前が「い」の動詞(買います・会います・使います)は「あ」ではなく「わ」になります。グループⅡは「ます」を取って「ない」を付け、グループⅢは「します→しない」「来ます→こない」です。「あります」だけは特別で、ない形は「ない」です。この課では、ない形は文型の部品として使い、「ない」だけで文を終える言い方(普通の話し方)はまだ使いません。文法の用語では、ない形は学校文法の「未然形+ない」にあたります。日本語教育では活用を「ます形・て形・ない形」のように形の名前で呼ぶことが多く、この呼び方の違いも試験で問われます。
ます形から作る。Ⅰ: い段+ます→あ段+ない(い→わ)/Ⅱ: 〜ます→〜ない/Ⅲ: します→しない、来ます→こない(あります→ない)
代入練習では、教師が動詞カード(ます形)をグループを混ぜて1枚ずつ見せ、ない形をすぐ言わせる。慣れたら教師がない形を言い、学生がます形に戻す逆方向も入れる。最後はペアで、相手がめくったカードのない形を言い合う。
相手に「しないでほしい」ことを丁寧に頼む言い方です。第11課の「〜てください」の反対で、ない形に「でください」を付けます。お店や病院の注意、先生から学生への注意、友達へのお願いなど、相手に何かをやめてほしいとき・しないでほしいときに使います。目上の人に強く言うと失礼になることがあるので、「すみませんが」を前に付けるとやわらかくなります。文法の用語では否定の依頼(禁止の依頼)にあたり、発話行為としては相手に行動を求める言い方の一つです。
ない形+でください(書かないでください・食べないでください・来ないでください)
代入練習では、注意の絵カード(たばこ・写真・食べ物・大きい声・電話)を見せて「ここで〜ないでください」を言わせ、次に「〜てください」の絵と混ぜて、どちらの頼み方かを選ばせる。場面のやり取りでは、病院・図書館・寮の部屋の場面カードを引いて、係の人や医者の役になって注意を一つ言い、相手は「はい、わかりました」と答える。
ある動作を「しないまま」で、後ろの動作をすることを言います。「コーヒーを飲まないで、うちを出ました」は、コーヒーを飲まない状態でうちを出たという意味です。第11課の「〜て、…」(飲んで、出ました)の反対の形として教えると分かりやすくなります。この形には「AをしないでBをする(Aの代わりにBをする)」という使い方もありますが、この課ではまず「しないまま」の意味から入るのがよいでしょう。文法の用語では、しない状態で後ろの動作をする「付帯状況(の否定)」と、「代わりに」を表す「代替」の二つの用法に分けて説明されることが多く、原因・理由を表す「〜なくて」との使い分けがよく問われます。
ない形+で、後ろの動詞(後ろの文の時は、後ろの動詞の形で決まる)
代入練習では、「〜て」の絵と「〜ないで」の絵を対にしたカード(めがねをかけて/かけないで・砂糖を入れて/入れないで など)を見せて、後ろの動作を固定したまま前の部分だけ替えて言わせる。場面のやり取りでは、「けさ何をしないで、うちを出ましたか」「きのう何をしないで寝ましたか」をペアで聞き合い、聞いたことを「〜さんは〜ないで〜ました」とクラスに報告させる。
しなければいけないこと、しないと困ることを言う言い方です。決まりや約束、予定などで、自分の気持ちとは関係なくそうする必要があるときに使います。ない形の「ない」を「なければ」に変えて、「なりません」を付けます。長い形なので、「なければ」と「なりません」を二つに分けて言わせると口に乗りやすくなります。「〜なければなりませんか」と聞かれて「いいえ」と答える言い方(しなくてもいい)は次の課で習います。文法の用語では義務・必要を表すモダリティ(当為)の表現で、形は条件の「〜なければ」に「なりません」が付いた、否定を二つ重ねたつくりです。
ない形の「ない」→「なければ」+なりません(書かなければなりません・食べなければなりません・来なければなりません)
代入練習では、予定のカード(宿題を出す・病院へ行く・8時に来る・薬を飲む・部屋を掃除する)を見せて「〜なければなりません」を言わせ、慣れたら時のカード(あした・土曜日・毎日)を足して一文にする。場面のやり取りでは、ペアで「あした何をしなければなりませんか」と聞き合い、答えに「そうですか。大変ですね」と返すところまで続けさせる。
いくつかの中から一つを選んで決めたことを言う言い方です。喫茶店やレストランで注文するとき(コーヒーにします)、プレゼントや日にちを決めるとき(土曜日にします)によく使います。選ぶものの名詞に「に」を付けて「します」と言います。相手に「何にしますか」と聞いて、選んでもらうこともできます。その場で決めたことは「〜にします」、もう決めてあることを話すときは「〜にしました」が多く使われます。文法の用語では「決定」を表す言い方で、格助詞「に」が選んだ結果を示しています。第20課の「〜くします/〜にします」(様子を変える)とは形が同じでも意味が違います。
名詞+に+します(何にしますか/〜にしましょう)
代入練習では、メニューの絵カードを指さして「〜にします」、次に二枚のカードを見せて「〜と〜とどちらにしますか」「〜にします」の問答をさせる。場面のやり取りでは、喫茶店のロールプレイ(店員役と客役を交替)と、パーティーの日・場所・料理を三つ決める話し合いを「〜にしましょう」でさせる。
この課の練習では、ない形を作るための動詞と、注意の場面(病院・図書館・店)や注文の場面(飲み物・食べ物)の言葉を多く使います。授業の前に教科書の新出語を確かめ、動詞はます形のカードで入れて裏にない形を書いておくと、作り方の練習と語彙の確認が一度にできます。場面の言葉は「ここで〜ないでください」「〜にします」のように文型の枠に入れた形で、絵カードと一緒に練習します。
宿題は、①動詞20個(グループを混ぜる)のない形を書くこと、②自分の学校・寮・会社の決まりを「〜なければなりません」と「〜ないでください」で2文ずつ書くこと、③けさ・きのうのことを「〜ないで、…ました」で1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の決まりの文をクラスで読み合い、「〜ないでください」の文を使って「ここで〜てもいいですか」と聞いてみせてから、第13課の「〜てもいいです/〜なくてもいいです」に入ります。
第12課のない形はどの順で教えればいいですか?
この本では辞書形がまだ出ていないので、ます形から作ります。この教案では、グループⅠ(い段→あ段+ない、「〜います」は「〜わない」)→グループⅡ(ますを取ってない)→グループⅢ(しない・こない)→例外の「あります→ない」の順にしています。手間のかかるⅠに先に時間をとり、Ⅱで「ますを取るだけ」と楽にさせ、例外は最後にまとめると印象に残ります。グループの見分け方はて形と同じなので、第11課の動詞カードをそのまま使えます。
「〜ないで」と「〜なくて」の違いは何ですか?
「〜ないで」は、ある動作をしないまま後ろの動作をする(コーヒーを飲まないで、うちを出ました)か、代わりに別のことをする(バスで来ないで歩いて来ました)言い方です。「〜なくて」は、しないことが原因・理由になる(友達が来なくて困りました)言い方などで使い、前と後ろの文の主語が違ってもかまいません。「なくて」の形は第13課の「〜なくてもいいです」で出るので、この課では「ないで」だけを使わせ、「なくて」が出たら言い直させます。
第12課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課の復習、ない形の作り方、「〜ないでください」「〜ないで、…」まで、2コマ目は「〜なければなりません」「〜にします」とまとめの活動です。ない形の定着が弱いクラスでは、2コマ目の初めに5分ほどない形の小テストを入れてから文型に入ると、後半で止まりません。
「〜ないでください」は目上の人に使ってもいいですか?
形は丁寧ですが、相手の行動を止める頼み方なので、目上の人にそのまま言うと強く聞こえることがあります。初級のこの段階では、前に「すみませんが」を付けてやわらげる、と教えるのが使いやすい方法です。もっと丁寧な頼み方は、後の課で授受表現や敬語を習ってから足します。
この課の「〜にします」と第20課の「〜くします/〜にします」は同じですか?
形は同じ「Nにします」ですが、意味が違います。この課は、いくつかの中から一つを選んで決める(コーヒーにします)言い方で、第20課は、ものの様子を変える(部屋をきれいにします)言い方です。第20課で混ぜる学習者には、選ぶときは前に選ぶものの名詞だけ、変えるときは「〜を」とナ形容詞(イ形容詞なら「〜く」)が来る、と文の形で見分けさせます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。