日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第12課「たばこを吸わないでください」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第11課でて形と「〜てください」を習ったあとを受けて、この課でない形が初めて出ます。ない形を使う文型は「〜ないでください(しないように頼む)」「〜ないで、…(しないまま/しないで別のことをする)」「〜なければなりません(しなければいけない)」の三つで、どれも作り方さえ身につけば、あとは前の課までの文に付けるだけです。最後の「〜にします」はない形とは別の項目で、いくつかの中から一つを選んで決める言い方です。辞書形はまだ出ていないので、ない形はます形から作ると決め、課の最初にグループごとの作り方を十分に練習してから文型に入ると、後半で活用につまずいて止まることが少なくなります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞のます形からない形を作れる(グループごとの規則と、来ます・します・あります の形)
  • 「〜ないでください」で、相手にしないでほしいことを丁寧に頼める
  • 「〜ないで、…」で、あることをしないまま別の動作をしたことを言える
  • 「〜なければなりません」でしなければいけないことを言い、「〜にします」で選んだものを相手に伝えられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第11課の「〜てください」を教室の指示(窓を開けてください・名前を書いてください)で2〜3問言わせる。そのあと教師が「書いてください」と「書かないでください」を並べて言い、反対の頼み方があること、そのために新しい形が要ることを予告する
ない形の作り方35分て形のときと同じ三つのグループに分け、ます形から作る。グループⅠ(「ます」の前のい段→あ段+ない。「〜います」は「〜わない」)→グループⅡ(ます→ない)→グループⅢ(しない・こない)→例外の「あります→ない」の順で、動詞カードを使って速く言い換える
学習項目1 〜ないでください25分教室・図書館・病院の注意の絵で導入。「〜てください」と「〜ないでください」の頼み方を、同じ場面の二枚の絵で対にして練習する
学習項目2 〜ないで、…20分「コーヒーを飲んで、うちを出ました」と「コーヒーを飲まないで、うちを出ました」の二枚の絵で、しないままもう一つの動作をする意味を見せる。けさのことを聞き合って定着させる
学習項目3 〜なければなりません30分教師の一週間の予定表で「しなければいけないこと」を言って導入。学生の予定(宿題・アルバイト・病院)に広げる
学習項目4 〜にします30分喫茶店のメニューの絵で「何にしますか」「〜にします」を導入し、プレゼント選び・集まる日を決める場面に広げる
まとめの活動30分「クラスのパーティーの計画」を4人で話し合う活動。日と場所と料理を「〜にしましょう」で決め、「〜なければなりません」で準備を分け、「〜ないでください」で注意を一つ書いて発表する

学習項目 1 ない形の作り方

意味・はたらき活用

動詞の否定の形「ない形」を作ります。この本では辞書形がまだ出ていないので、知っている「ます形」から作ります。グループの分け方は第11課のて形と同じで、グループⅠは「ます」の前の音を「い段」から「あ段」に変えて「ない」を付けます(書きます→書かない)。「ます」の前が「い」の動詞(買います・会います・使います)は「あ」ではなく「わ」になります。グループⅡは「ます」を取って「ない」を付け、グループⅢは「します→しない」「来ます→こない」です。「あります」だけは特別で、ない形は「ない」です。この課では、ない形は文型の部品として使い、「ない」だけで文を終える言い方(普通の話し方)はまだ使いません。文法の用語では、ない形は学校文法の「未然形+ない」にあたります。日本語教育では活用を「ます形・て形・ない形」のように形の名前で呼ぶことが多く、この呼び方の違いも試験で問われます。

接続

ます形から作る。Ⅰ: い段+ます→あ段+ない(い→わ)/Ⅱ: 〜ます→〜ない/Ⅲ: します→しない、来ます→こない(あります→ない)

形
Ⅰ 書きます→書かない/飲みます→飲まない/待ちます→待たない/帰ります→帰らないⅠ 買います→買わない/会います→会わない(「い」の前は「わ」)Ⅱ 食べます→食べない/見ます→見ない/起きます→起きないⅢ します→しない/来ます→こない(あります→ない)

導入

  • 五十音図の段を指でたどる黒板に五十音図の「あ段」と「い段」の2行だけを書き、教師が「書きます」の「き」を指してから一つ上の「か」へ指を動かし、「か・ない、書かない」と言う。「飲みます→飲まない」「待ちます→待たない」と続けたあと、「買います」で「い」から上へ動かすと「あ」になるが、ここだけは「わ」だと赤で書く。学生に指でたどらせながら言わせると、規則が目と手で入る。
  • グループごとに動詞カードを分けるて形のときに使った動詞カードを、グループⅠ・Ⅱ・Ⅲの3列に貼り直す。グループⅡは「ます」の上に手を置いて隠し「ない」と言うだけでよいことを見せ、グループⅢの「します・来ます」は形が変わるので丸ごと覚えると伝える。最後に「あります」のカードを1枚だけ別に貼り、「ない」と言わせて例外を印象づける。

板書案

Ⅰ 書きます → 書かない (い段 → あ段 + ない)
  買います → 買わない 〔赤〕い → わ
Ⅱ 食べます → 食べない (ます → ない)
Ⅲ します → しない  来ます → こない
〔赤〕あります → ない(例外)

場面と発話(自作)

  • 教師がカードの「飲みます」を見せ、学生が形を変えて答える(形の練習)。飲みます——飲まない。
  • 学生が「来ます」のない形を「きない」と言ったので、教師がもう一度カードを見せる。来ます——こない。
  • 教師が「あります」のカードを出して、例外を確かめる。あります——ない。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、教師が動詞カード(ます形)をグループを混ぜて1枚ずつ見せ、ない形をすぐ言わせる。慣れたら教師がない形を言い、学生がます形に戻す逆方向も入れる。最後はペアで、相手がめくったカードのない形を言い合う。

  1. 口頭教師が動詞カード(ます形)を見せ、全体でない形を言わせる。キューの例は「書きます」→書かない、「買います」→買わない、「食べます」→食べない、「来ます」→こない、「あります」→ない。はじめはグループごとに、次にグループを混ぜて速く出し、最後に一人ずつ指名して言わせる。
  2. ペアカードの束を二人で半分ずつ持つ。Aがます形を読み上げ、Bがない形で答える。5枚で役を交替し、2回目は逆に、ない形を聞いてます形に戻させる。答えに詰まったカードは別の山に置き、最後にその山だけをもう一度言い合う。
  3. 産出「マイ動詞カードづくり」。学習者が自分が毎日する動作の動詞を5つ選び、カードの表にます形、裏にない形を書いてペアで見せ合う。教師は「〜います」の動詞が「わ」になっているか、グループⅡをⅠのように作っていないか、来ます・あります の形を見て回って直す。このカードは後の文型の練習でも使う。

つまずきと手当て

  • 「*買あない」「*会あない」と、「い」の前の動詞で「あ」にしてしまう。五十音図の「い→わ」の赤い印に戻り、買います・会います・使います・言います など「〜います」で終わるグループⅠの動詞だけを集めて集中して言わせる
  • 「*帰ない」「*入ない」と、帰ります・入ります などをグループⅡのように作る。「〜ります」で終わる動詞はグループⅠが多いことを見せ、グループの確かめはて形のとき(帰って・入って)を思い出させる
  • 「*起かない」「*見らない」と、グループⅡの動詞をグループⅠのように作る。起きます・見ます・寝ます・食べます をグループⅡの列でまとめて言い、「ますを取るだけ」をくり返す
  • 「*きない」「*あらない」と、来ます・あります を規則どおりに作る。この二つは規則の外だと決め、毎回の練習の最後に必ず1回ずつ入れる

既習の文型との違い

  • て形の作り方(第11課)グループの分け方はて形と同じですが、作り方の手がかりが違います。て形はグループⅠの中を「き→いて」「み・び・に→んで」のように音で分けましたが、ない形はい段をあ段に替えるだけで、例外は「〜います→〜わない」と「あります→ない」です。て形の音が残って「*書いない」「*飲んない」と混ぜる学習者がいるので、出発点はいつもます形だと確かめます。
  • Vません(ます形の否定)「書きません」と「書かない」はどちらも否定ですが、「ません」は文の終わりの丁寧な形で、ない形はこの課では文型の部品です。「*書きませんでください」のように「ません」に文型を付ける誤りが出るので、ない形を別に作ってからつなげさせます。
関連する文型

学習項目 2 〜ないでください

意味・はたらき学習項目 1

相手に「しないでほしい」ことを丁寧に頼む言い方です。第11課の「〜てください」の反対で、ない形に「でください」を付けます。お店や病院の注意、先生から学生への注意、友達へのお願いなど、相手に何かをやめてほしいとき・しないでほしいときに使います。目上の人に強く言うと失礼になることがあるので、「すみませんが」を前に付けるとやわらかくなります。文法の用語では否定の依頼(禁止の依頼)にあたり、発話行為としては相手に行動を求める言い方の一つです。

接続

ない形+でください(書かないでください・食べないでください・来ないでください)

形
Vないでくださいここで〜ないでくださいすみませんが、〜ないでください

導入

  • 同じ場面の二枚の絵で対にする図書館の絵を2枚用意し、1枚目に「静かに本を読む人」、2枚目に「大きい声で話す人」を描いておく。1枚目を指して「ここで本を読んでください」、2枚目に大きい×を付けて「ここで話さないでください」と言う。板書は「〜てください」と「〜ないでください」を上下に並べ、ない形に「でください」が付くところに色を付ける。
  • 教室の注意を学生に言わせる教師が教室で、わざと教室で飲み物を飲もうとしたり、開いている窓を閉めようとしたりする動作をして、学生に「先生、飲まないでください」「閉めないでください」と止めさせる。動作を見てすぐ言う練習になり、ない形の作り方の復習にもなる。

板書案

V ない + で ください
ここで 写真を 撮ります → 撮らないでください。
〔青〕V て ください(してほしい) ⇔ 〔赤〕V ないで ください(しないでほしい)
すみませんが、+ V ないでください(やわらかく)

場面と発話(自作)

  • 病院で、医者が薬を出したあとに、患者に今晩の注意をする。今晩はおふろに入らないでください。
  • 美術館の入り口で、係の人が来館者に写真のことを伝える。すみませんが、中で写真を撮らないでください。
  • 寮の部屋で、留学生がルームメートに、自分の机のパソコンのことを頼む。わたしのパソコンを使わないでください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、注意の絵カード(たばこ・写真・食べ物・大きい声・電話)を見せて「ここで〜ないでください」を言わせ、次に「〜てください」の絵と混ぜて、どちらの頼み方かを選ばせる。場面のやり取りでは、病院・図書館・寮の部屋の場面カードを引いて、係の人や医者の役になって注意を一つ言い、相手は「はい、わかりました」と答える。

  1. 口頭注意の絵カードと場所のカードを組み合わせてキューを出す。例は「写真・撮ります」→写真を撮らないでください、「ここ・電話をかけます」→ここで電話をかけないでください、「この絵・触ります」→この絵に触らないでください、「大きい声・話します」→大きい声で話さないでください。全体で言ったあと、○と×の付いた絵を混ぜ、「〜てください」か「〜ないでください」かを選んで一人ずつ言わせる。
  2. ペアAは係の人(美術館・図書館・病院)で、その場所の決まりが書かれたカードを持つ。Bは客で、決まりを知らないまま動作をジェスチャーでして見せる。Aは決まりに合わない動作を見たら「すみませんが、〜ないでください」と止め、Bは「あ、すみません」と答える。決まりはAにしか見えないので、Bはどの動作が止められるかを当てる楽しみがある。3回で役を交替する。
  3. 産出「教室のルールポスター」。3〜4人で自分たちのクラスの決まりを考え、「〜てください」を2つ、「〜ないでください」を3つ書いてポスターにし、クラスに発表する。教師は「で」が落ちていないか、ない形が正しいか、注意の文の前に「すみませんが」を付けるとよい場面かを見て、発表のあとに一つずつ返す。

つまずきと手当て

  • 「*飲まないください」「*飲まなくてください」と「で」を落としたり「くて」にしたりする。板書の「ない+で+ください」の「で」に色を付け、「〜てください」の「て」の位置に「で」が来ると見せる
  • ない形を作らずに「*飲みませんでください」「*飲みないでください」とます形から直接つなぐ。ない形の作り方の練習に一度戻り、カードで「飲みます→飲まない→飲まないでください」と二段で言わせる
  • 「〜ないでください」をいつでも丁寧だと思い、先生や上司にもそのまま強く言う。禁止の頼み方は相手によっては強く聞こえるので、目上の人には「すみませんが」を付ける、と場面の練習で役を替えて体験させる

既習の文型との違い

  • 〜てください(第11課)「〜てください」はしてほしいこと、「〜ないでください」はしないでほしいことを頼む言い方で、付く形がて形とない形で違います。「て」の位置に「ないで」が来るだけなので、学習者は「*撮らないてください」と「て」のまま言うことがあります。二つを上下に並べた板書で、「で」に濁点が付く所に色を付けて見せます。
関連する文型

学習項目 3 〜ないで、…

意味・はたらき学習項目 2

ある動作を「しないまま」で、後ろの動作をすることを言います。「コーヒーを飲まないで、うちを出ました」は、コーヒーを飲まない状態でうちを出たという意味です。第11課の「〜て、…」(飲んで、出ました)の反対の形として教えると分かりやすくなります。この形には「AをしないでBをする(Aの代わりにBをする)」という使い方もありますが、この課ではまず「しないまま」の意味から入るのがよいでしょう。文法の用語では、しない状態で後ろの動作をする「付帯状況(の否定)」と、「代わりに」を表す「代替」の二つの用法に分けて説明されることが多く、原因・理由を表す「〜なくて」との使い分けがよく問われます。

接続

ない形+で、後ろの動詞(後ろの文の時は、後ろの動詞の形で決まる)

形
Vないで、Vます/Vました〜を食べないで、〜へ行きました〜で行かないで、歩いて行きました(代わりに)

導入

  • 「〜て」と「〜ないで」の二枚の絵朝の絵を2枚用意する。1枚目はコーヒーを飲んでから家を出る人、2枚目はコーヒーを飲まずに急いで家を出る人。1枚目を指して「コーヒーを飲んで、うちを出ました」、2枚目を指して「コーヒーを飲まないで、うちを出ました」と言い、板書で二文を上下に並べて「て」と「ないで」の部分だけを替える。
  • けさのことを聞く学生一人ひとりに「けさ、朝ご飯を食べましたか」「コーヒーを飲みましたか」と聞き、食べなかった学生の答えを教師が「ああ、何も食べないで、うちを出ましたね」と言い換えて見せる。そのあと学生自身に言わせ、事実を言う文なので後ろは「出ました」と過去になることも確かめる。

板書案

V1 ないで、V2 ます/ました
コーヒーを 飲んで、  うちを 出ました。
コーヒーを 飲まないで、うちを 出ました。 〔赤〕て → ないで
バスで 来ないで、歩いて 来ました。(代わりに)
〔青〕前と後ろの動作は 同じ人

場面と発話(自作)

  • 1時間目の授業のあと、おなかがすいている留学生が、友達に理由を話す。けさは時間がありませんでしたから、何も食べないで、うちを出ました。
  • 会社で、きのう遅くまで仕事をした同僚が、休み時間に話す。きのうは夜ご飯を食べないで、12時まで仕事をしました。
  • いつもバスで来る学生が、きょうは駅から歩いて来た理由を先生に話す(代わりにの使い方)。きょうはバスで来ないで、歩いて来ました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、「〜て」の絵と「〜ないで」の絵を対にしたカード(めがねをかけて/かけないで・砂糖を入れて/入れないで など)を見せて、後ろの動作を固定したまま前の部分だけ替えて言わせる。場面のやり取りでは、「けさ何をしないで、うちを出ましたか」「きのう何をしないで寝ましたか」をペアで聞き合い、聞いたことを「〜さんは〜ないで〜ました」とクラスに報告させる。

  1. 口頭対になった絵カードを見せ、後ろの動作を固定して前だけ替えさせる。キューの例は「めがね・かけます/本を読みました」→めがねをかけないで、本を読みました、「砂糖・入れます/コーヒーを飲みます」→砂糖を入れないで、コーヒーを飲みます、「辞書・使います/作文を書きました」→辞書を使わないで、作文を書きました、「バスで来ます/歩いて来ました」→バスで来ないで、歩いて来ました。全体→個人の順で言わせ、後ろの時の形(ます・ました)も確かめる。
  2. ペアけさときのうの行動を書く表(朝ご飯・シャワー・新聞・コーヒー・電話)を配る。Aが「けさ、朝ご飯を食べましたか」と聞き、Bは「はい、食べて、うちを出ました」か「いいえ、食べないで、うちを出ました」で答え、Aが表に○か×を付ける。全部聞いたら交替し、最後に相手のことを「〜さんはけさ〜ないで、うちを出ました」とクラスに一文で報告する。
  3. 産出「いつもと違う一日」スピーチ。最近、いつもすることをしないで別のことをした日を、自分のことで3文で話す(例: きのうは電車で帰らないで、友達と歩いて帰りました)。教師は「なくて」になっていないか、後ろが過去の形になっているか、前と後ろの動作が同じ人になっているかを聞いて、終わったあとに直す。

つまずきと手当て

  • 「*コーヒーを飲まなくて、うちを出ました」と「なくて」を使う。「なくて」は理由の言い方として後で出るもので、「しないまま」の意味は「ないで」だけだと板書で示す。この課では「なくて」は使わせず、出てきたら「ないで」に言い直させる
  • 「*飲まないでください、うちを出ました」と学習項目1の形と混ざる。「ないで」で文が切れずに後ろへ続くこと、「ください」は頼むときだけだと、二つの板書を並べて見せる
  • 前と後ろの主語が違う文を作ろうとして止まる(友達が来ないで、わたしは…)。この課では前と後ろの動作をする人が同じ文に限って練習し、主語が替わる文はまだ扱わない

既習の文型との違い

  • 〜て、…て、―ます(第11課)「〜て、…」は前の動作をしてから後ろの動作をする、という順番を言い、「〜ないで、…」は前の動作をしないまま後ろの動作をすることを言います。形が「て」と「ないで」で対になるので、同じ場面の二枚の絵で教えられます。否定をいくつも続けて並べると文が分かりにくくなるので、この課では「ないで」は一文に一つにします。
  • 〜てから、…(第11課)「〜てから」は前の動作が終わったあとに後ろの動作をすると、時の順をはっきり言う形です。「〜ないで」には順番の意味はなく、前の動作をしなかったことを言います。「*食べないでから」と二つを重ねる誤りが出たら、「から」は「〜て」に付くと板書で並べて見せます。
  • 〜ながら、…(第11課)「〜ながら」は二つの動作を同時にすること、「〜ないで」は片方をしないことを言います。「音楽を聞きながら勉強しました」と「音楽を聞かないで勉強しました」を並べると、同じ場面で意味の違いが見えます。
関連する文型

学習項目 4 〜なければなりません

意味・はたらき学習項目 3

しなければいけないこと、しないと困ることを言う言い方です。決まりや約束、予定などで、自分の気持ちとは関係なくそうする必要があるときに使います。ない形の「ない」を「なければ」に変えて、「なりません」を付けます。長い形なので、「なければ」と「なりません」を二つに分けて言わせると口に乗りやすくなります。「〜なければなりませんか」と聞かれて「いいえ」と答える言い方(しなくてもいい)は次の課で習います。文法の用語では義務・必要を表すモダリティ(当為)の表現で、形は条件の「〜なければ」に「なりません」が付いた、否定を二つ重ねたつくりです。

接続

ない形の「ない」→「なければ」+なりません(書かなければなりません・食べなければなりません・来なければなりません)

形
Vなければなりません〈時〉に〜なければなりません(あした・月曜日・8時)〜なければなりませんか

導入

  • 教師の一週間の予定表黒板に月曜日から金曜日までの教師の予定表を書き、「月曜日:会議」「水曜日:病院」「金曜日:テストの準備」のように書いておく。月曜日を指して「月曜日は会議があります。8時に学校へ来なければなりません」と言い、「会議はあまり好きじゃありませんが、来なければなりません」と顔の表情をつけて、自分の気持ちと関係なくすることだと見せる。
  • 形を二つに割って言う板書で「書かない」の「ない」を消して「なければ」と書き、その後ろに少しあけて「なりません」と書く。全員で「書かなければ」「なりません」と二回に分けて言い、次に続けて言う。グループⅡ・Ⅲの動詞でも同じことをして、長さに慣れさせる。

板書案

V ない → V なければ + なりません
書かない → 書かなければ/なりません
あした 病院へ 行かなければ なりません。
〔赤〕来ます → こない → こなければ
〜たいです(気持ち) ⇔ 〜なければなりません(決まり・予定)

場面と発話(自作)

  • 金曜日の授業のあと、友達に週末の予定を聞かれた留学生が答える。土曜日はアルバイトがありますから、朝7時に起きなければなりません。
  • 会社で、新しく来た社員に、先輩が朝の決まりを教える。朝の会議がありますから、毎朝8時半に会社へ来なければなりません。
  • 病院で、薬をもらった患者が、薬局の人に飲み方を確かめる。この薬は毎日飲まなければなりませんか。——はい、朝と晩に飲んでください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、予定のカード(宿題を出す・病院へ行く・8時に来る・薬を飲む・部屋を掃除する)を見せて「〜なければなりません」を言わせ、慣れたら時のカード(あした・土曜日・毎日)を足して一文にする。場面のやり取りでは、ペアで「あした何をしなければなりませんか」と聞き合い、答えに「そうですか。大変ですね」と返すところまで続けさせる。

  1. 口頭予定のカードを見せて言わせる。キューの例は「あした・病院へ行きます」→あした病院へ行かなければなりません、「毎日・薬を飲みます」→毎日薬を飲まなければなりません、「月曜日・作文を出します」→月曜日に作文を出さなければなりません、「8時・学校へ来ます」→8時に学校へ来なければなりません。はじめは「なければ」「なりません」の二つに区切って全体で言い、次に続けて、最後に一人ずつ言わせる。
  2. ペアAとBに中身の違う一週間の予定表を渡す(情報差)。Aは「土曜日にいっしょに映画を見ませんか」と誘い、Bは自分の予定表を見て、用事がある日は「すみません、土曜日はアルバイトをしなければなりません」と断る。空いている日が見つかるまで曜日を替えて続け、決まったら「日曜日はどうですか」「いいですね」で終える。役を交替して2回行う。
  3. 産出「わたしの一週間」発表。自分の一週間の予定表を書き、しなければならないことを3つ、したいことを1つ、「〜なければなりません」と「〜たいです」で言い分けてクラスで話す。教師はない形から作れているか、長い形が途中で崩れていないか、気持ちの文と決まりの文が混ざっていないかを聞く。

つまずきと手当て

  • 「*書かないければなりません」「*書かなければなりますん」など、長い形が途中で崩れる。「なければ」「なりません」の二つに割った板書に戻り、手拍子で区切って言わせる
  • ない形を作らずに「*書きなければなりません」「*来なければ(きなければ)なりません」とする。ない形のカードに一度戻ってから付けさせ、特に「来ます→こない→こなければ」を毎回入れる
  • 「〜なければなりませんか」に、否定の答えのつもりで「いいえ、〜なければなりません」と同じ形を言う(文としては正しいが、「しなければならない」という逆の意味になる)。否定の答えは次の課で習うことを伝え、この課では「はい」で答えられる質問だけでやり取りさせる
  • 「〜たいです」の気持ちの文と混ぜて「*行きたいなければなりません」とする。したい気持ちの文と、しなければいけない文は別の形だと、予定表の表情つきの導入に戻って区別させる

既習の文型との違い

  • 〜たいです(第9課)「〜たいです」は自分がしたいという気持ち、「〜なければなりません」は気持ちと関係なく決まりや予定でする必要があることを言います。学習者は二つを重ねて「*行きたいなければなりません」とすることがあるので、予定表の同じ行に「したいこと」と「しなければならないこと」を別の色で書かせます。
  • 〜ないでください(この課の学習項目1)どちらもない形から作りますが、「〜ないでください」は相手にしないでほしいことを頼む言い方で、「〜なければなりません」はする必要があることを言う言い方です。ない形の後ろが「で」か「ければ」かで、意味がほぼ反対になると板書で並べて見せます。
関連する文型

学習項目 5 〜にします

意味・はたらき学習項目 4

いくつかの中から一つを選んで決めたことを言う言い方です。喫茶店やレストランで注文するとき(コーヒーにします)、プレゼントや日にちを決めるとき(土曜日にします)によく使います。選ぶものの名詞に「に」を付けて「します」と言います。相手に「何にしますか」と聞いて、選んでもらうこともできます。その場で決めたことは「〜にします」、もう決めてあることを話すときは「〜にしました」が多く使われます。文法の用語では「決定」を表す言い方で、格助詞「に」が選んだ結果を示しています。第20課の「〜くします/〜にします」(様子を変える)とは形が同じでも意味が違います。

接続

名詞+に+します(何にしますか/〜にしましょう)

形
Nにします何にしますかNにしましょうNにしました

導入

  • 喫茶店のメニューの絵黒板に喫茶店のメニューの絵(コーヒー・紅茶・ジュース・ケーキ・サンドイッチ)を貼り、教師が店員役になって「何にしますか」と学生に聞く。学生が指さしたら教師が「〜にしますね」と言い直し、学生に「〜にします」と言わせる。板書は「[名詞]に します」の枠にし、「を」ではなく「に」であることに色を付ける。
  • クラスで日にちと場所を決める「来週、クラスでご飯を食べに行きましょう」と教師が言い、カレンダーを指して「何曜日にしましょうか」と聞く。学生の意見から「じゃ、金曜日にしましょう」と決め、店も「〜と〜とどちらがいいですか」と聞いてから「〜にしましょう」で決める。第7課の「どちら」や第5課の「〜ましょう」と自然につながる。

板書案

N + に + します
何に しますか。——コーヒーに します。
〔赤〕に(を ではない)
決める前: 〜にします/〜にしましょう  決めたあと: 〜にしました

場面と発話(自作)

  • 喫茶店で、店員にメニューを渡された会社員が、飲み物を選ぶ。何にしますか。——わたしは紅茶にします。
  • 友達の誕生日のプレゼントを、留学生二人がデパートで選んでいる。このかばんは高いですね。じゃ、この時計にしましょう。
  • 会社で、来週の会議の日を同僚に伝える。会議は木曜日の3時にしました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、メニューの絵カードを指さして「〜にします」、次に二枚のカードを見せて「〜と〜とどちらにしますか」「〜にします」の問答をさせる。場面のやり取りでは、喫茶店のロールプレイ(店員役と客役を交替)と、パーティーの日・場所・料理を三つ決める話し合いを「〜にしましょう」でさせる。

  1. 口頭教師が店員役になり、メニューの絵を指して「何にしますか」と聞き、学生に「コーヒーにします」と答えさせる。キューの例は、メニューの絵(コーヒー・紅茶・ケーキ)→〜にします、二枚の絵を見せて「紅茶とコーヒーとどちらにしますか」→紅茶にします、カレンダーを指して「何曜日にしましょうか」→金曜日にしましょう、プレゼントの絵→この時計にしましょう。全体→個人の順で言わせる。
  2. ペア店員と客のロールプレイ。店員役はメニューを渡して「何にしますか」と聞き、客役は飲み物と食べ物を一つずつ選んで「〜と〜にします」と答える。店員役は注文を紙に書いて確かめ、客役がそれを見て合っているかを言う。メニューを替えて役を交替する。
  3. 産出「旅行の計画会議」。3〜4人で週末の旅行の行き先・乗り物・日を話し合って決める(例: どこへ行きましょうか——京都にしましょう/何で行きますか——電車にしましょう)。決まったら「わたしたちは〜にしました」でクラスに発表する。教師は「に」と「を」の取り違え、決めたあとに「〜にしました」と言えているかを見て直す。

つまずきと手当て

  • 「*コーヒーをします」「*コーヒーがします」と助詞を取り違える。「〜を…ます」(第5課)の「を」と混ざりやすいので、板書の枠の「に」に色を付け、「選ぶときは に」とだけ言って代入をくり返す
  • 店で聞いた「こちら、コーヒーになります」を覚えていて、自分の注文の意味で「コーヒーになります」と言う(文としては正しいが、注文の言い方にならない)。「〜になります」は後の課で別の意味(変わる)を習う形で、注文するときは「〜にします」だと店員役と客役を替えて確かめる
  • 注文が終わってから「何にしましたか」と聞かれて「〜にします」と答える。もう決めたことを言うときは「〜にしました」が自然なので、メニューを選ぶ前と後の二つの場面で言い分けさせる(どちらも誤りではないので強くは直さない)

既習の文型との違い

  • 〜を…ます(第5課)「コーヒーを飲みます」の「を」は動作の相手を示し、「コーヒーにします」の「に」はいくつかの中から選んだものを示します。注文の場面では「*コーヒーをします」と言いやすいので、「飲みます・食べます」のときは を、「します」で選ぶときは に、と動詞で見分けさせます。
  • 〜と…とどちらが―ですか(第7課)「どちらがいいですか」は二つを比べて相手の考えを聞く言い方で、「どちらにしますか」は相手にどちらを選ぶか決めてもらう言い方です。答えも「〜がいいです」ではなく「〜にします」になるので、聞き方と答え方を組にして練習します。
  • いっしょに〜ませんか/〜ましょう(第5課)「〜ましょう」は一緒にする動作を誘う形ですが、「〜にしましょう」と組むと、二人で選んだものを決める言い方になります。「*金曜日に行きにしましょう」のように動詞に付ける誤りが出たら、前に来るのは名詞だけだと枠で示します。
関連する文型

語彙の扱い

この課の練習では、ない形を作るための動詞と、注意の場面(病院・図書館・店)や注文の場面(飲み物・食べ物)の言葉を多く使います。授業の前に教科書の新出語を確かめ、動詞はます形のカードで入れて裏にない形を書いておくと、作り方の練習と語彙の確認が一度にできます。場面の言葉は「ここで〜ないでください」「〜にします」のように文型の枠に入れた形で、絵カードと一緒に練習します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 吸います(すいます) たばこの煙などを、口から体の中に入れます。 たばこを〜
    会社の飲み会で、同僚にたばこを勧められる。
    「すみません、わたしはたばこを吸いません。」
  • 撮ります(とります) カメラや電話で写真を作ります。 写真を〜・ここで〜
    お寺の中で、案内の人が観光客に言う。
    「中で写真を撮らないでください。」
  • 触ります(さわります) 手で物にそっと付けます。 絵に〜・手で〜
    美術館で、係の人が子どもに言う。
    「この絵に触らないでください。」
  • 遅れます(おくれます) 決まった時間より後になります。 時間に〜・授業に〜・電車が〜
    あしたはテストがある。先生が学生に言う。
    「あしたは9時からテストです。遅れないでください。」
  • 忘れます(わすれます) 要る物を、持って来ません。また、言葉や名前が頭から消えて、わかりません。 宿題を〜・かさを〜・名前を〜
    あした旅行に行く。先生が学生に注意する。
    「8時に駅に来てください。パスポートを忘れないでください。」
  • 出します(だします) 作文や宿題を、先生に渡します。 宿題を〜・作文を〜・手紙を〜
    授業のあとで、留学生が友達に週末の予定を話す。
    「月曜日に作文を出さなければなりません。」
  • 払います(はらいます) 買い物や食事のお金を、店の人に渡します。 お金を〜・カードで〜
    初めて行く食堂で、友達が入り方を教える。
    「この店は、先にお金を払わなければなりません。」
  • 返します(かえします) 人や図書館から借りました。その物を、その人や場所に戻します。 本を〜・図書館に〜
    図書館で借りた本を、あした返す約束になっている。
    「あした図書館に本を返さなければなりません。」
  • 持ちます(もちます) 物を手に取ります。かばんなどに入れて、自分といっしょに持って行きます。 荷物を〜・かばんを〜
    駅の階段で、友達が重い荷物を二つ運んでいる。
    「重いですね。わたしも一つ持ちます。」
  • 決めます(きめます) いくつかの中から、どれがいいかを考えて、一つに選びます。 日を〜・場所を〜
    クラスでパーティーの話し合いをしている。
    「パーティーの日を決めましょう。何曜日にしますか。」
  • 定食(ていしょく) ご飯とおかずとみそ汁がセットの料理です。店がメニューを決めています。 魚の〜・〜にします
    昼ご飯の食堂で、同僚と注文を決める。
    「わたしは魚の定食にします。」
  • 飲み物(のみもの) コーヒーやお茶やジュースなど、飲む物です。 冷たい〜・温かい〜
    喫茶店で、友達に聞く。
    「飲み物は何にしますか。——冷たいお茶にします。」

宿題と次のコマ

宿題は、①動詞20個(グループを混ぜる)のない形を書くこと、②自分の学校・寮・会社の決まりを「〜なければなりません」と「〜ないでください」で2文ずつ書くこと、③けさ・きのうのことを「〜ないで、…ました」で1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の決まりの文をクラスで読み合い、「〜ないでください」の文を使って「ここで〜てもいいですか」と聞いてみせてから、第13課の「〜てもいいです/〜なくてもいいです」に入ります。

よくある質問

  • 第12課のない形はどの順で教えればいいですか?

    この本では辞書形がまだ出ていないので、ます形から作ります。この教案では、グループⅠ(い段→あ段+ない、「〜います」は「〜わない」)→グループⅡ(ますを取ってない)→グループⅢ(しない・こない)→例外の「あります→ない」の順にしています。手間のかかるⅠに先に時間をとり、Ⅱで「ますを取るだけ」と楽にさせ、例外は最後にまとめると印象に残ります。グループの見分け方はて形と同じなので、第11課の動詞カードをそのまま使えます。

  • 「〜ないで」と「〜なくて」の違いは何ですか?

    「〜ないで」は、ある動作をしないまま後ろの動作をする(コーヒーを飲まないで、うちを出ました)か、代わりに別のことをする(バスで来ないで歩いて来ました)言い方です。「〜なくて」は、しないことが原因・理由になる(友達が来なくて困りました)言い方などで使い、前と後ろの文の主語が違ってもかまいません。「なくて」の形は第13課の「〜なくてもいいです」で出るので、この課では「ないで」だけを使わせ、「なくて」が出たら言い直させます。

  • 第12課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課の復習、ない形の作り方、「〜ないでください」「〜ないで、…」まで、2コマ目は「〜なければなりません」「〜にします」とまとめの活動です。ない形の定着が弱いクラスでは、2コマ目の初めに5分ほどない形の小テストを入れてから文型に入ると、後半で止まりません。

  • 「〜ないでください」は目上の人に使ってもいいですか?

    形は丁寧ですが、相手の行動を止める頼み方なので、目上の人にそのまま言うと強く聞こえることがあります。初級のこの段階では、前に「すみませんが」を付けてやわらげる、と教えるのが使いやすい方法です。もっと丁寧な頼み方は、後の課で授受表現や敬語を習ってから足します。

  • この課の「〜にします」と第20課の「〜くします/〜にします」は同じですか?

    形は同じ「Nにします」ですが、意味が違います。この課は、いくつかの中から一つを選んで決める(コーヒーにします)言い方で、第20課は、ものの様子を変える(部屋をきれいにします)言い方です。第20課で混ぜる学習者には、選ぶときは前に選ぶものの名詞だけ、変えるときは「〜を」とナ形容詞(イ形容詞なら「〜く」)が来る、と文の形で見分けさせます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。