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学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第2課「ここは日本語学校です」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第1課で「これ/それ/あれ」で物を指し、「〜は…です」で名前を言えるようになったのを受けて、指す相手を物から場所へ広げ、最後に物に名詞をつけて値段を言うところまで進む課です。新しい動詞も活用もなく、文の形はずっと名詞文のままなので、教室の中では「どこを指しているか」「だれの近くか」を教師の体と矢印で見せることに時間を使います。前半の二つは、学校や店で「ここは何か」「〜はどこか」を聞いて答えるための項目で、後半の「この/その/あの」は「これ/それ/あれ」との形の違い(後ろに名詞が要るかどうか)がいちばんの山です。課の終わりには、学校の中で場所を聞き、店で値段を聞くという、来日してすぐに必要なやり取りができるようになります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 自分のいる場所や指さした場所が何かを「ここ/そこ/あそこは〜です」で言い、「ここはどこですか」に答えられる
  • 探している場所がどこかを「〜はどこですか」「〜はどちらですか」で聞き、「こちら/そちら/あちらです」の答えを聞き取れる
  • 「この/その/あの+名詞」で物を一つ取り出し、その値段を「いくらですか」で聞いて「…円です」で答えられる
  • 話し手と聞き手の位置から、こ・そ・あのどれを使うかを場所でも物でも選べる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)15分第1課の「これ/それ/あれは〜です」を、教室にある物(本・かばん・時計)で2〜3問。教師が物を持つ・学生の物を指す・遠くの物を指すの三つの位置を体で再現してから、「きょうは物ではなく場所を指します」と予告する。教室・事務室・食堂・トイレなどの場所の語は、校内の絵地図と絵カードでここで先に入れておく
学習項目1 ここ/そこ/あそこは〜です40分教師が立っている床を指して「ここ」、学生の席のあたりを指して「そこ」、窓の外の建物を指して「あそこ」。教室の中で三つの範囲を見せたあと、校内の絵地図で「ここは事務室です」と場所の名前を言い、「ここはどこですか」まで
学習項目2 〜はこちら/そちら/あちらです35分主語と述語を入れ替えて「食堂はあそこです」「食堂はどこですか」を作り、その丁寧な言い方として「こちら/そちら/あちら」「どちら」を重ねる。受付や店の人の役を教師がして、手のひらで方向を示しながら言って見せる
学習項目3 この/その/あの〜は…円です55分数字の読み(百・千・万)を先に練習してから、値札をつけた実物で「このペンは120円です」。「これ」と「このペン」を板書で上下に並べ、後ろに名詞が要るかどうかを見せてから、「いくらですか」で聞き合う
まとめの活動35分教室を店に見立てた買い物ごっこ(値札つきの実物を3か所に置き、売り場の場所を聞いて行き、値段を聞く)。最後に校内の絵地図を配り、ペアで「〜はどこですか」を聞き合って地図に名前を書き込む

学習項目 1 ここ/そこ/あそこは〜です

意味・はたらき学習項目 1

第1課の「これ/それ/あれ」が物を指す言葉だったのに対して、「ここ/そこ/あそこ」は場所を指す言葉です。話し手のいる所が「ここ」、聞き手のいる所やその近くが「そこ」、二人から離れた所が「あそこ」です。話し手と聞き手が並んで同じ所にいるときは、二人のいる所が「ここ」、少し離れた所が「そこ」、遠い所が「あそこ」になります。場所の名前を聞くときは「ここはどこですか」と「どこ」を使います。

接続

ここ/そこ/あそこ+は+場所の名詞+です(聞くときは「ここはどこですか」)

形
ここは〜ですそこは〜です/あそこは〜ですここはどこですかここは〜ですか——はい、そうです

導入

  • 教師の体で三つの範囲を見せる教師が教壇の床を両手で示して「ここ」、教室のうしろの学生の席を指して「そこ」、窓の外の建物を指して「あそこ」と言う。次に教師が学生の席の横まで歩いて行き、学生と並んで立ってから同じことをすると、「ここ」の範囲が二人のいる所に変わることが見える。板書は「ここ そこ あそこ どこ」を横に並べ、第1課の「これ それ あれ どれ」をその上の段に書いて、こ・そ・あ・どが同じ並びだと見せる。
  • 校内の絵地図で場所の名前を言う黒板に学校の絵地図(教室・事務室・食堂・図書室・トイレ)を貼り、教師が地図の上の人の絵を動かしながら「ここは食堂です」と言う。人の絵を事務室の前に置いて「ここはどこですか」と学生に聞き、「事務室です」の答えを引き出す。板書は「ここは [場所]です」の枠にし、場所の絵カードを差し替えて全員でくり返す。

板書案

(物)これ それ あれ どれ  ←第1課
(場所)ここ そこ あそこ どこ
ここは [場所]です。 → ここは 事務室です。
ここは どこですか。——図書室です。
〔赤〕話し手と聞き手の人の絵を描き、「ここ」「そこ」の範囲を丸で囲む 〔青〕二人から遠い所に「あそこ」

場面と発話(自作)

  • 入学した日に、学校の職員が新しい留学生を連れて校内を回り、ドアの前で止まって説明する。ここは事務室です。あそこは食堂です。
  • 初めて来た建物で迷った留学生が、近くにいた人に今いる場所を確かめる。すみません、ここはどこですか。——ここは図書室です。
  • 駅の前で待ち合わせた友達に、留学生が向こうの建物を指して聞く。あそこは銀行ですか。——はい、そうです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、校内の絵地図の場所を教師が指示棒で指し、学生は「ここは〜です」と言う。慣れたら教師の位置と指す場所を変え、学生が「ここ/そこ/あそこ」を選んで言う。場面のやり取りでは、ペアの一人が絵地図の上で人の絵を動かして「ここはどこですか」と聞き、もう一人が答える。

  1. 口頭教師が指す場所をキューにする。教壇の床を両手で示す→「ここは教室です」、窓の外の建物を指す→「あそこは図書室です」、絵地図の食堂を指示棒で指す→「ここは食堂です」、絵地図の人の絵を受付の前に置いて「ここはどこですか」→「受付です」。全員→列→個人の順で言わせ、2周目は教師が学生の席の横へ移動して、同じ場所でも「ここ」「そこ」が入れ替わることを体で確かめさせる。
  2. ペア「案内係と新入生」。案内係は場所の名前が書いてある校内の絵地図、新入生は名前の欄が空いた同じ地図を持つ。新入生が人の絵を地図の上で動かして「ここはどこですか」と聞き、案内係が「ここは〜です」と答え、新入生が名前を書き込む。5か所で交替し、最後に二人の地図を重ねて答えが合っているかを見る。
  3. 産出「わたしの学校ツアー」。学生が自分の学校(または前に通った学校)の地図を簡単に描き、ペアの相手を新入生として3か所以上案内する。「ここは〜です。あそこは〜です」と言い、相手は「あそこは〜ですか」で確かめる。教師が見るのは、立っている所を「これ」と言っていないか、聞き手の近くに「あそこ」を使っていないか、「は」が落ちていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 物を指すときと場所を指すときで言葉を取り違え、立っている教室そのものを言うのに「これは教室です」と言う。教室の絵カードを手に持って言うなら正しいので、手に持つ物を言うときは「これ」、立っている所や床を指すときは「ここ」と、動作で分けて言い直させる
  • 聞き手の近くの場所に「あそこ」を使う。文法の誤りではないが位置が合わないので、教師が学生の席の横に立ち、学生の足もとを指して「そこ」と言い直させる。母語で場所を「近い・遠い」の二つに分ける学習者は、聞き手の側を指す「そこ」の範囲をつかみにくい
  • 「ここはどこですか」と聞かれて「*どこは事務室です」のように、答えの中に「どこ」を残す。疑問詞の所に答えの語が入ることを、板書の「どこ」の上に場所の絵カードを重ねて見せる
  • 「*ここ 事務室です」のように「は」を落とす。話し言葉では通じることもあるが、この段階では板書の枠どおり「は」を入れて言わせる

既習の文型との違い

  • これ/それ/あれは〜です(第1課)第1課の「これ/それ/あれ」は手に持てる物を指し、この課の「ここ/そこ/あそこ」は人が立つ場所を指します。こ・そ・あ・どの並びも、話し手の近く・聞き手の近く・二人から遠い、という分け方も同じです。教室の中に立って「これは教室です」と言う学習者には、絵カードを持たせて「これは教室です」、床を指して「ここは教室です」と、指す物を変えて言い分けさせます。
  • 〜は…です(第1課)「わたしは学生です」の「わたし」の位置に「ここ」が、「学生」の位置に場所の名前が入っただけで、文の形は第1課と変わりません。新しいのは疑問詞「どこ」で聞くことで、答えるときに「*どこは事務室です」と疑問詞を残す誤りが出ます。疑問詞の位置に答えの語が入ると、カードを重ねて見せます。
関連する文型

学習項目 2 〜はこちら/そちら/あちらです

意味・はたらき学習項目 2

学習項目1の文の前と後ろを入れ替えると、「食堂はあそこです」のように、探している場所がどこにあるかを言う文になります。この形で使う「こちら/そちら/あちら」は「ここ/そこ/あそこ」の丁寧な言い方で、「この方向」という向きの意味も持ちます。受付や店の人が客に案内するときや、目上の人や知らない人に場所を聞くときに使います。聞くときは「〜はどちらですか」で、「どこですか」より丁寧です。

接続

場所の名詞+は+こちら/そちら/あちら+です(ふつうの言い方は ここ/そこ/あそこ。聞くときは「〜はどちらですか」「〜はどこですか」)

形
〜はこちら/そちら/あちらです〜はここ/そこ/あそこです〜はどちらですか〜はどこですか

導入

  • 文の前と後ろを入れ替える学習項目1の板書「あそこは 食堂です」の下に、カードを入れ替えて「食堂は あそこです」と並べ、同じ二つの言葉が逆に並んでいるだけだと見せる。そのうえで教師が「食堂はどこですか」と学生に聞き、学生が絵地図を指して「あそこです」と答える。ここまでは学習項目1の語だけで進められる。
  • 受付の人になって案内する教師が首から「受付」の札をさげて机の前に立ち、学生に「すみません、トイレはどこですか」と聞かせる。教師は手のひらを上にして方向を示しながら「トイレは あちらです」と答え、板書の「あそこ」の横に「あちら」と書き足す。続けて学生を受付の役にし、教師が客になって「エレベーターはどちらですか」と聞くと、聞く側の丁寧な言い方「どちら」も入る。

板書案

あそこは 食堂です。 ⇔ 食堂は あそこです。
〔青〕ここ そこ あそこ どこ(ふつう)
〔赤〕こちら そちら あちら どちら(ていねい)
トイレは どちらですか。——あちらです。
〔矢印〕手のひらを上にして方向を示す手の絵

場面と発話(自作)

  • デパートの入り口で、客がトイレの場所を店の人に聞く。すみません、お手洗いはどちらですか。——あちらです。
  • 市役所の受付で、職員が手続きに来た留学生に窓口の場所を案内する。外国人の窓口はこちらです。どうぞ。
  • 学校の廊下で、先生が新しい学生に聞かれて、学生のすぐうしろのドアを手で示す。先生、職員室はどちらですか。——職員室はそちらです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、場所の絵カード(トイレ・エレベーター・階段・受付・売り場)を見せて「〜はどちらですか」と言わせ、教師が絵地図の上の位置を示して学生が「こちら/そちら/あちらです」で答える。次に同じ問いを「どこ」で聞き、答えも「ここ/そこ/あそこ」で返す型と交互に回す。場面のやり取りでは、受付の札を学生が順番に持ち、客役の学生の問いに方向を手で示しながら答える。

  1. 口頭場所の絵カード(トイレ・エレベーター・階段・受付・売り場)をキューにする。カードを見せる→全員で「トイレはどこですか」、教師が絵地図の上で位置を示す→「あそこです」。次に教師が首に「受付」の札をさげ、同じカードで「トイレはどちらですか」「あちらです」と丁寧な形で言わせる。最後に「友達に」「店の人に」と相手のカードを出し、学生が「どこ」と「どちら」のどちらで聞くかを選んで言う。
  2. ペア「受付と客」の情報差。受付役は場所の位置を矢印で書いた建物の案内図、客役は探す場所の名前だけの表(5つ)を持つ。客が「〜はどちらですか」と聞き、受付役は案内図を見せずに手で方向を示して「こちら/そちら/あちらです」と答える。客は表に方向の矢印を書き、5つ終わったら交替して、案内図と矢印が合っているかを二人で確かめる。
  3. 産出「デパート案内ロールプレイ」。教室の四隅に売り場の札(傘・かばん・本・お手洗い)を貼り、教室をデパートに見立てる。案内係の学生が教室の真ん中に立ち、客役の学生は行きたい所を自分で決めて「すみません、〜はどちらですか」と聞き、案内係は自分と客の位置から「こちら/そちら/あちら」を選んで答える。教師が見るのは「は」の位置、方向に合った語が選べているか、客が「どちら」、案内係が「こちら」系で話せているか。

つまずきと手当て

  • 「こちら」を相手の近くの場所に使う。「ここ」と「こちら」は指す範囲が同じで、丁寧さだけが違うことを、板書の上下の段(ここ/こちら、そこ/そちら、あそこ/あちら)で確かめる
  • 答えで「*あちらは です」「*トイレ あちらです」のように「は」の位置を間違える。学習項目1の「あそこは食堂です」と並べて、「は」の前に何を置くかで文の意味が変わることを見せる
  • 「どちら」を二つのうちから選ぶ問い(どちらが〜)と同じだと思って戸惑う学生がいる。この課では「場所を丁寧に聞く言葉」とだけ言い、選ぶ使い方は先の課に任せる
  • 「こちらは山田さんです」のように人を紹介する「こちら」を知っていて、場所の「こちら」と混ぜる。人を紹介するときにも使うことは一言認め、この課の練習は場所だけに絞る

既習の文型との違い

  • ここ/そこ/あそこは〜です(第2課)学習項目1は「ここ」が文の主題で、その場所の名前を言う文です。学習項目2は場所の名前が主題で、それがどこにあるかを言う文で、同じ二つの言葉の並びが逆になります。「食堂はどこですか」と聞かれて「あそこは食堂です」と答えると、聞かれたことへの答えになっていないので、「食堂は」を残して「あそこです」と答える形を練習します。
  • これ/それ/あれは〜です(第1課)第1課の「これ/それ/あれ」で指していた物や人も、丁寧に言うときは「こちら/そちら/あちら」で指せます。店の人が商品を見せて「こちらは1,200円です」と言ったり、人を紹介して「こちらは山田さんです」と言ったりするのがその使い方です。この課の練習では「こちら/そちら/あちら」を場所と方向の丁寧な言い方に絞り、物はこれまでどおり「これ/それ/あれ」で指します。学習者が「こちらはノートです」のように物に使ったら、誤りではないと認めたうえで、この課では場所に使う形を練習すると伝えます。
関連する文型

学習項目 3 この/その/あの〜は…円です

意味・はたらき学習項目 3

「この/その/あの」は後ろに必ず名詞をつけて、たくさんある物の中から一つを取り出して指す言葉です。第1課の「これ/それ/あれ」はそれだけで物を指せますが、「この」はそれだけでは使えず、「このペン」「その傘」のように名詞といっしょに使います。どれを使うかは第1課と同じで、話し手の近くが「この」、聞き手の近くが「その」、二人から遠い物が「あの」です。値段を聞くときは「いくらですか」と言い、「…円です」で答えます。

接続

この/その/あの+名詞+は+数字+円です(聞くときは「〜はいくらですか」。「これ/それ/あれ」には名詞をつけない)

形
この〜は…円ですその〜/あの〜は…円です〜はいくらですかこれは…円です(名詞をつけないとき)

導入

  • 値札をつけた実物で「これ」と「このペン」を比べるペン・ノート・傘・かばんに値札をつけて教卓に並べる。教師がペンを持って「これは120円です」と言ったあと、ペンとノートを両手に持って「どれですか」と学生に聞かせ、ペンを上げて「このペンは120円です」と言い直す。物が二つ以上あって一つを取り出したいときに名詞を足すのだと、状況で見せる。板書は「これは 120円です」の下に「この[名詞]は 120円です」を並べ、「この」の後ろの[名詞]の枠を赤で囲む。
  • 数字の読みを先に固める値段を言う前に、百・千・万の読みを数字カードで練習する。300(さんびゃく)・600(ろっぴゃく)・800(はっぴゃく)・3000(さんぜん)・8000(はっせん)は音が変わるので赤で書き、千は「せん」、万は「いちまん」と読むことも板書しておく。教師がカードを見せて全員で読み、次に教師が読んで学生がカードを選ぶ、の両方向で回してから文に入る。

板書案

これは 120円です。
この [名詞]は 120円です。 〔赤〕[名詞]の枠を囲む
このペンは いくらですか。——120円です。
〔赤〕×このは ×これペンは ×これのペンは
百 ひゃく 〔赤〕さんびゃく ろっぴゃく はっぴゃく
千 せん 〔赤〕さんぜん はっせん  万 いちまん

場面と発話(自作)

  • 文房具の店で、留学生が棚のノートを手に取って店の人に聞く。すみません、このノートはいくらですか。——150円です。
  • 店の人が客の手にある傘を見て、値段を答える。その傘は1,800円です。
  • 学校の食堂で、留学生が壁の写真のメニューを指して、隣の友達に聞く。あのカレーはいくらですか。——450円です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、値札つきの実物を教師が持つ・学生に持たせる・遠くに置くの三つの位置に置き、教師が物を指して「この〜は…円です」と位置に合った言葉で言わせる。次に値札を隠して「〜はいくらですか」と聞かせ、教師が値段を答える。場面のやり取りでは、ペアの一人が店の人になって値札を書いた物を並べ、客役が「この/その〜はいくらですか」と聞いて値段を表にメモし、最後に表をペアで見せ合って値段が合っているかを確かめる。

  1. 口頭先に数字カードで百・千・万の読みを回してから、値札つきの実物をキューにする。教師がペンを持つ→「このペンは120円です」、学生の手にある傘を指す→「その傘は1,800円です」、教室のうしろの棚の時計を指す→「あの時計は3,000円です」、値札を手で隠す→「このペンはいくらですか」。全員→個人の順で、物の位置を動かすたびに「この/その/あの」を言い換えさせる。
  2. ペア「値札あて」の情報差。A・Bは物の絵カードを5枚ずつ持ち、自分のカードにだけ値段が書いてある。Bが相手の持っているカードを指して「そのかばんはいくらですか」と聞き、Aは自分のカードを持ち上げて「このかばんは2,000円です」と答え、Bは表に値段を書く。5枚で交替し、最後にカードと表を見せ合って数字が合っているかを確かめる。
  3. 産出「教室フリーマーケット」。学生が自分の持ち物(ペン・ノート・かばん・辞書)に自分で値段をつけた札を置き、半分が店の人、半分が客になる。客は3つ以上の店を回って「この/その〜はいくらですか」と聞き、聞いた値段をメモし、最後に「あの〜は…円です」とクラスに一つ報告する。教師が見るのは「この」の後ろの名詞の有無、「これ」と「この」の混同、数字の読み(さんびゃく・はっせん)、物の位置に合った語の選び方。

つまずきと手当て

  • 「*このは120円です」と「この」だけで言う。「この」の後ろには名詞が要ることを板書の赤い枠で示し、名詞を言わないなら「これは120円です」と言い直させる
  • 「*これペンは120円です」「*これのペンは120円です」のように「これ」に名詞をつける。第1課の「これは〜の…です」の「の」と混ざりやすいので、「これ」は一人で立つ、「この」は名詞と手をつなぐ、と板書の上下の段で区別させる
  • 数字の読みで、300を「さんひゃく」、800を「はちひゃく」、1000を「いちせん」と読む。文法ではなく読みの問題なので、値段の練習の前に数字カードで毎回確認し、音が変わる数だけ赤で書いておく
  • 店の人が持っている物を指すのに「あの」を使う。誤りではないが位置が合わないので、物が聞き手(店の人)の手にあるときは「その」、二人から離れた棚にあるときは「あの」と、物を動かしながら言い直させる

既習の文型との違い

  • これ/それ/あれは〜です(第1課)「これ」はそれだけで物を指せますが、「この」は後ろに名詞がないと使えません。物が一つしかないなら「これは120円です」で足り、いくつかある中から一つを取り出すときに「このペンは」と名詞を足します。学習者は「*このは120円です」「*これペンは120円です」と混ぜるので、板書の上下の段で一人で立つ語と名詞と組む語を分けて見せます。
  • これ/それ/あれは〜の…です(第1課)第1課の「の」は「わたしのかさ」のように名詞と名詞をつなぐ語で、「この」の「の」とは働きが違います。「この」はそれで一語なので、後ろにさらに「の」を入れて「*この のペン」と言ったり、「これ」に「の」を足して「*これのペン」と言ったりしないように、「この+名詞」を一つのかたまりで練習させます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、学校や建物の中の場所(教室・事務室・食堂・図書室・トイレ/お手洗い・受付・エレベーター・階段・売り場)と、数字の百・千・万、店で目にする身の回りの物の三つのかたまりに分かれます。場所の語は校内の絵地図、物の語は値札をつけた実物、数字は数字カードで入れ、どれも単語だけで覚えさせず「食堂はあそこです」「このノートは150円です」のように文型の枠の中で練習します。「トイレ」と「お手洗い」は同じ場所の言い方で、店や受付の人は「お手洗い」を使うことが多いと一言添えると、学習項目2の丁寧な言い方とつながります。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 事務室(じむしつ) 学校や会社で、書類や手続きの仕事をする部屋です。 学校の〜・〜の人
    入学の書類を持った新しい留学生が、廊下で先生に聞く。
    「すみません、事務室はどこですか。」——「あそこです。」
  • 食堂(しょくどう) 学校や会社の中にある、ごはんを食べる所です。 学校の〜・社員〜・〜のカレー
    昼休みに、留学生が友達に聞く。
    「食堂はどこですか。」——「食堂はあそこです。」
  • 図書室(としょしつ) 学校の中の、本がたくさんある部屋です。 学校の〜・〜の本
    校内を案内されている留学生が、ドアの前で確かめる。
    「ここは図書室ですか。」——「はい、そうです。」
  • お手洗い(おてあらい) 「トイレ」の丁寧な言い方です。店や会社の人がよく使います。 〜はどちらですか・駅の〜
    レストランで、客が店の人に聞く。
    「すみません、お手洗いはどちらですか。」——「あちらです。」
  • 受付(うけつけ) 建物の入り口の近くで、来た人の用事を聞く所です。 病院の〜・会社の〜・〜の人
    初めて来た病院で、職員が入り口の客を案内する。
    「受付はこちらです。どうぞ。」
  • エレベーター(えれべーたー) 人を上や下の階へ運ぶ機械です。 デパートの〜・〜の前
    デパートで、客が近くの店の人に聞く。
    「エレベーターはどちらですか。」——「そちらです。」
  • 階段(かいだん) 上や下へ歩いて行くための段です。 駅の〜・〜の前
    駅の中で、友達が向こうを指して教える。
    「階段はあそこです。」
  • 売り場(うりば) 店の中で、物を売っている所です。 傘の〜・かばんの〜・〜の人
    デパートの入り口で、客が案内係に聞く。
    「傘の売り場はどちらですか。」——「あちらです。」
  • いくら(いくら) 値段を聞くときに使う言葉です。 〜ですか
    文房具の店で、留学生が手に取ったノートの値段を聞く。
    「このノートはいくらですか。」——「150円です。」
  • 〜円(〜えん) 日本のお金の数え方です。数字の後ろにつけます。 百〜・千〜・一万〜
    店の人が、客の手にあるかばんの値段を答える。
    「そのかばんは3,000円です。」
  • 傘(かさ) 雨の日に、手に持って頭の上に広げる物です。 〜の売り場・わたしの〜
    雨の日、コンビニで留学生が店の人に聞く。
    「この傘はいくらですか。」——「800円です。」

宿題と次のコマ

宿題は、学校の簡単な地図を自分で描いて場所の名前を書き、「ここは〜です」「〜はあそこです」の文を3つ書くことと、近くの店で見た物を3つ選んで「この〜は…円です」と値段を書いてくること。次のコマの最初に、宿題の地図を使ってペアで「〜はどこですか」を聞き合い、値段の文は数字の読みを確かめながら一人ずつ読ませてから、第3課の「〜は…時から…時までです」(食堂や図書室は何時から何時までか)に入ります。

よくある質問

  • 「ここ/そこ/あそこ」の範囲はどう見せればいいですか?

    教師の体を基準にして、教壇の床が「ここ」、学生の席が「そこ」、窓の外が「あそこ」と、指す動作をつけて見せます。次に教師が学生の横へ移動して並んで立ち、二人のいる所が「ここ」に変わることを見せると、話し手と聞き手の位置で決まることが伝わります。板書には人の絵を二つ描き、範囲を丸で囲んでおくと、練習の途中で何度も戻れます。

  • 「ここ」と「こちら」の違いは何ですか?

    指す場所の範囲は同じで、「こちら」のほうが丁寧です。この課では、受付や店の人が客に場所を案内するとき、また客が知らない人に場所を聞くときに「こちら/そちら/あちら」「どちら」を使う、と場面で分けます。「こちら」は方向の意味も持つので、手のひらで向きを示しながら言わせると定着しやすくなります。

  • 第2課の「これ」と「この」の違いはどう教えますか?

    値札をつけた物を二つ以上並べ、一つを取り出したいときに「このペン」と名詞を足すのだと、状況で見せます。板書は「これは120円です」と「この[名詞]は120円です」を上下に並べ、名詞の枠を赤で囲みます。「*このは」「*これペンは」の誤りが出たら、その板書に戻って言い直させます。

  • 第2課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で前の課の復習と「ここ/そこ/あそこは〜です」「〜はこちら/そちら/あちらです」まで、2コマ目で数字の読みと「この/その/あの〜は…円です」、まとめの活動です。数字の読みに慣れていないクラスでは、2コマ目の数字の練習を長めに取ります。

  • 値段の数字はこの課でどこまで扱いますか?

    値段を言うのに要る百・千・万までを扱い、とくに音が変わる300・600・800・3000・8000の読みを繰り返します。実物の値段は数百円から数千円の範囲にしておくと、練習の文が言いやすくなります。万の位を超える大きな数は、必要になる課で足せば十分です。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。