第1課で「これ/それ/あれ」で物を指し、「〜は…です」で名前を言えるようになったのを受けて、指す相手を物から場所へ広げ、最後に物に名詞をつけて値段を言うところまで進む課です。新しい動詞も活用もなく、文の形はずっと名詞文のままなので、教室の中では「どこを指しているか」「だれの近くか」を教師の体と矢印で見せることに時間を使います。前半の二つは、学校や店で「ここは何か」「〜はどこか」を聞いて答えるための項目で、後半の「この/その/あの」は「これ/それ/あれ」との形の違い(後ろに名詞が要るかどうか)がいちばんの山です。課の終わりには、学校の中で場所を聞き、店で値段を聞くという、来日してすぐに必要なやり取りができるようになります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 15分 | 第1課の「これ/それ/あれは〜です」を、教室にある物(本・かばん・時計)で2〜3問。教師が物を持つ・学生の物を指す・遠くの物を指すの三つの位置を体で再現してから、「きょうは物ではなく場所を指します」と予告する。教室・事務室・食堂・トイレなどの場所の語は、校内の絵地図と絵カードでここで先に入れておく |
| 学習項目1 ここ/そこ/あそこは〜です | 40分 | 教師が立っている床を指して「ここ」、学生の席のあたりを指して「そこ」、窓の外の建物を指して「あそこ」。教室の中で三つの範囲を見せたあと、校内の絵地図で「ここは事務室です」と場所の名前を言い、「ここはどこですか」まで |
| 学習項目2 〜はこちら/そちら/あちらです | 35分 | 主語と述語を入れ替えて「食堂はあそこです」「食堂はどこですか」を作り、その丁寧な言い方として「こちら/そちら/あちら」「どちら」を重ねる。受付や店の人の役を教師がして、手のひらで方向を示しながら言って見せる |
| 学習項目3 この/その/あの〜は…円です | 55分 | 数字の読み(百・千・万)を先に練習してから、値札をつけた実物で「このペンは120円です」。「これ」と「このペン」を板書で上下に並べ、後ろに名詞が要るかどうかを見せてから、「いくらですか」で聞き合う |
| まとめの活動 | 35分 | 教室を店に見立てた買い物ごっこ(値札つきの実物を3か所に置き、売り場の場所を聞いて行き、値段を聞く)。最後に校内の絵地図を配り、ペアで「〜はどこですか」を聞き合って地図に名前を書き込む |
第1課の「これ/それ/あれ」が物を指す言葉だったのに対して、「ここ/そこ/あそこ」は場所を指す言葉です。話し手のいる所が「ここ」、聞き手のいる所やその近くが「そこ」、二人から離れた所が「あそこ」です。話し手と聞き手が並んで同じ所にいるときは、二人のいる所が「ここ」、少し離れた所が「そこ」、遠い所が「あそこ」になります。場所の名前を聞くときは「ここはどこですか」と「どこ」を使います。
ここ/そこ/あそこ+は+場所の名詞+です(聞くときは「ここはどこですか」)
口頭の代入練習では、校内の絵地図の場所を教師が指示棒で指し、学生は「ここは〜です」と言う。慣れたら教師の位置と指す場所を変え、学生が「ここ/そこ/あそこ」を選んで言う。場面のやり取りでは、ペアの一人が絵地図の上で人の絵を動かして「ここはどこですか」と聞き、もう一人が答える。
学習項目1の文の前と後ろを入れ替えると、「食堂はあそこです」のように、探している場所がどこにあるかを言う文になります。この形で使う「こちら/そちら/あちら」は「ここ/そこ/あそこ」の丁寧な言い方で、「この方向」という向きの意味も持ちます。受付や店の人が客に案内するときや、目上の人や知らない人に場所を聞くときに使います。聞くときは「〜はどちらですか」で、「どこですか」より丁寧です。
場所の名詞+は+こちら/そちら/あちら+です(ふつうの言い方は ここ/そこ/あそこ。聞くときは「〜はどちらですか」「〜はどこですか」)
口頭の代入練習では、場所の絵カード(トイレ・エレベーター・階段・受付・売り場)を見せて「〜はどちらですか」と言わせ、教師が絵地図の上の位置を示して学生が「こちら/そちら/あちらです」で答える。次に同じ問いを「どこ」で聞き、答えも「ここ/そこ/あそこ」で返す型と交互に回す。場面のやり取りでは、受付の札を学生が順番に持ち、客役の学生の問いに方向を手で示しながら答える。
「この/その/あの」は後ろに必ず名詞をつけて、たくさんある物の中から一つを取り出して指す言葉です。第1課の「これ/それ/あれ」はそれだけで物を指せますが、「この」はそれだけでは使えず、「このペン」「その傘」のように名詞といっしょに使います。どれを使うかは第1課と同じで、話し手の近くが「この」、聞き手の近くが「その」、二人から遠い物が「あの」です。値段を聞くときは「いくらですか」と言い、「…円です」で答えます。
この/その/あの+名詞+は+数字+円です(聞くときは「〜はいくらですか」。「これ/それ/あれ」には名詞をつけない)
口頭の代入練習では、値札つきの実物を教師が持つ・学生に持たせる・遠くに置くの三つの位置に置き、教師が物を指して「この〜は…円です」と位置に合った言葉で言わせる。次に値札を隠して「〜はいくらですか」と聞かせ、教師が値段を答える。場面のやり取りでは、ペアの一人が店の人になって値札を書いた物を並べ、客役が「この/その〜はいくらですか」と聞いて値段を表にメモし、最後に表をペアで見せ合って値段が合っているかを確かめる。
この課の新出語は、学校や建物の中の場所(教室・事務室・食堂・図書室・トイレ/お手洗い・受付・エレベーター・階段・売り場)と、数字の百・千・万、店で目にする身の回りの物の三つのかたまりに分かれます。場所の語は校内の絵地図、物の語は値札をつけた実物、数字は数字カードで入れ、どれも単語だけで覚えさせず「食堂はあそこです」「このノートは150円です」のように文型の枠の中で練習します。「トイレ」と「お手洗い」は同じ場所の言い方で、店や受付の人は「お手洗い」を使うことが多いと一言添えると、学習項目2の丁寧な言い方とつながります。
宿題は、学校の簡単な地図を自分で描いて場所の名前を書き、「ここは〜です」「〜はあそこです」の文を3つ書くことと、近くの店で見た物を3つ選んで「この〜は…円です」と値段を書いてくること。次のコマの最初に、宿題の地図を使ってペアで「〜はどこですか」を聞き合い、値段の文は数字の読みを確かめながら一人ずつ読ませてから、第3課の「〜は…時から…時までです」(食堂や図書室は何時から何時までか)に入ります。
「ここ/そこ/あそこ」の範囲はどう見せればいいですか?
教師の体を基準にして、教壇の床が「ここ」、学生の席が「そこ」、窓の外が「あそこ」と、指す動作をつけて見せます。次に教師が学生の横へ移動して並んで立ち、二人のいる所が「ここ」に変わることを見せると、話し手と聞き手の位置で決まることが伝わります。板書には人の絵を二つ描き、範囲を丸で囲んでおくと、練習の途中で何度も戻れます。
「ここ」と「こちら」の違いは何ですか?
指す場所の範囲は同じで、「こちら」のほうが丁寧です。この課では、受付や店の人が客に場所を案内するとき、また客が知らない人に場所を聞くときに「こちら/そちら/あちら」「どちら」を使う、と場面で分けます。「こちら」は方向の意味も持つので、手のひらで向きを示しながら言わせると定着しやすくなります。
第2課の「これ」と「この」の違いはどう教えますか?
値札をつけた物を二つ以上並べ、一つを取り出したいときに「このペン」と名詞を足すのだと、状況で見せます。板書は「これは120円です」と「この[名詞]は120円です」を上下に並べ、名詞の枠を赤で囲みます。「*このは」「*これペンは」の誤りが出たら、その板書に戻って言い直させます。
第2課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で前の課の復習と「ここ/そこ/あそこは〜です」「〜はこちら/そちら/あちらです」まで、2コマ目で数字の読みと「この/その/あの〜は…円です」、まとめの活動です。数字の読みに慣れていないクラスでは、2コマ目の数字の練習を長めに取ります。
値段の数字はこの課でどこまで扱いますか?
値段を言うのに要る百・千・万までを扱い、とくに音が変わる300・600・800・3000・8000の読みを繰り返します。実物の値段は数百円から数千円の範囲にしておくと、練習の文が言いやすくなります。万の位を超える大きな数は、必要になる課で足せば十分です。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。