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学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第19課「雨が降ったら、行きません」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第18課で連体修飾と「〜とき、…」を習ったあとを受けて、この課では文と文をつなぐ言い方を四つ学びます。原因の「〜て」・条件の「〜たら」・思ったとおりにならない「〜ても」・理由を並べる「〜し」で、どれも新しい活用形はなく、第11課のテ形・第16課のタ形・第17課の普通の形をそのまま使い回します。「〜たら」と「〜ても」は、同じ前の文(あした寒かったら/あした寒くても)から後ろの結果が逆になる組なので、黒板に上下に並べて書いておくと二つの違いが一目で分かります。形の作り方よりも、後ろにどんな文が来られるか(頼む・誘う文を置けるかどうか)が教えどころです。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 困ったこと・うれしかったことを、その原因といっしょに「〜て、…ました」で言える
  • 「〜たら」で、もしもの場合と「そのあとで」の予定を言い、相手に頼むこともできる
  • 「〜ても」で、思ったとおりにならないこと・それでもすることを言い、「〜たら」と言い分けられる
  • 「〜し」で理由をいくつか並べて、選んだ理由や誘いを断る理由を説明できる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第18課の「〜とき」で「日本へ来たとき、何が大変でしたか」と2〜3人に聞き、続けて「どうして大変でしたか」と聞いて、理由を言いたくなる場面を作る。この課は文と文をつなぐ課だと予告し、テ形(第11課)とタ形(第16課)を動詞カードで速く確かめておく
学習項目1 〜て、…ました35分原因の絵と結果の絵の2枚組カードで導入。第11課の「順番のて」の文と並べて板書し、こちらは「どうして」に答える「て」だと見せる。後ろに頼む・誘う文は来ないことまで
学習項目2 〜たら、…45分晴れと雨の分かれ道の絵で「もし」の使い方、時計の絵で「そのあとで」の使い方を導入。タ形に「ら」をつける形を先に口でそろえてから、文の練習へ。1コマ目はここまでで終え、2コマ目の頭で分かれ道の絵を貼り直してから項目3に入る
学習項目3 〜ても、…35分項目2の板書の下に「ても」の行を足し、同じ前の文から結果が逆になることを見せる。本当にあったこと(薬を飲んでも治らない)にも使えると広げる
学習項目4 〜し、…し、―/〜し、…から、―30分部屋さがしの2枚の絵で特徴を並べて導入。ナ形容詞と名詞の「だし」を赤で板書し、最後の理由を「から」にする形まで
まとめの活動25分「週末の予定」インタビュー。「もし雨が降ったら、何をしますか」「雨が降っても、しますか」「どうしてそれがいいですか(〜し、…し)」の3問をペアで聞き合い、最後に相手の予定を一人ずつ発表する

学習項目 1 〜て、…ました

意味・はたらき学習項目 1

第11課の「〜て、…て、―ます」では動作を順番に並べましたが、ここでのテ形は「前のことが原因で、後ろのことが起きた」ことを表します。後ろには、気持ち(びっくりしました・困りました・うれしかったです)や、その結果どうなったか(遅れました・休みました)が来ることが多く、すでに起きたことを話すので「〜ました」の形でよく使います。形容詞のテ形(高くて・大変で)も同じように原因を表せます。後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」のような頼む・誘う・希望の文は来ないので、そのときは第7課の「から」を使います。文法の用語で言うと、テ形が原因・理由を表す用法で、後ろに頼む・誘う・希望・意志の表明(〜てください・〜ましょう・〜たいです)は来ない、という点がよく問われます。「熱があって、休みました」のように、すでにした過去の事実なら、自分でしたことでも言えます。

接続

Vて/いAくて/なAで +、…ました(後ろは気持ちや結果の文。頼む・誘う・希望の文は来ない)

形
Vて、…ました(電車が止まって、遅れました)いAくて、…(宿題が多くて、大変です)なAで、…(仕事が大変で、疲れました)〜て、びっくりしました/困りました/うれしかったです

導入

  • 原因と結果の2枚組カード「電車が止まっている絵」と「時計を見てあわてて教室に入る人の絵」を左右に貼り、間に矢印を描く。教師が自分の話として「けさ、電車が止まって、遅れました」と言い、板書は「[原因]て、[結果]ました」の枠にする。同じ形で「財布を忘れて、困りました」「友達から手紙をもらって、うれしかったです」とカードを差し替え、全員でくり返す。
  • 第11課の「て」と並べる黒板の上に第11課の型の文「朝ご飯を食べて、学校へ来ました」、下にこの課の文「雨が降って、寒かったです」を書き、「どちらが『どうして』に答えていますか」と聞く。そのあと学生に「きのう、どうして疲れましたか」「どうして困りましたか」と聞き、「〜て、…ました」で答えを引き出す。

板書案

[原因]Vて/いAくて/なAで +、[結果・気持ち]ました
電車が 止まって、遅れました。
宿題が 多くて、大変でした。
〔青〕第11課の て=順番(それから) 〔赤〕この課の て=「どうして?」の答え
後ろ ×〜てください ×〜ましょう ×〜たいです → 〜から

場面と発話(自作)

  • 朝、授業が始まったあとに教室へ入った留学生が、先生に遅れた理由を言う。すみません、電車が止まって、遅れました。
  • 休み時間に、国の母から荷物が届いた話をクラスメートにする。きのう、母から国のお菓子をもらって、とてもうれしかったです。
  • 会社で、前の日に早く帰った社員が、上司に子どものことを聞かれて答える。きのうは子どもが熱を出して、心配しました。でも、もう元気です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、原因と結果の2枚組カードを見せて「〜て、〜ました」で一文にさせ、慣れたら結果のカードを気持ちの絵(びっくり・困る・うれしい・悲しい)に替える。場面のやり取りでは、「どうして〜ましたか」「〜て、〜ました」の形で、先週あった困ったこと・うれしかったことをペアで聞き合う。

  1. 口頭原因と結果の2枚組カード(電車が止まる→遅れる/財布を忘れる→困る/雨が降る→寒い/手紙をもらう→うれしい/熱がある→休む)を見せ、全員で「電車が止まって、遅れました」と言わせてから、一人ずつ当てる。次に原因のカードだけを出して「どうでしたか」と聞き、結果は学生に考えさせる。最後に結果のカードだけを出して「どうして?」と聞き、原因を言わせる。形容詞のカード(高い・暑い・大変)も混ぜ、くて/で を言い分けさせる。
  2. ペア「どうして?」カード合わせ。Aは結果だけが書いてあるカード(遅れました・休みました・困りました)、Bは原因の絵のカードを持ち、AがBに「どうして遅れましたか」と聞く。Bは手元の絵から合うものを選んで「電車が止まって、遅れました」と答え、合わなければ「すみません、わかりません」と言ってAが次のカードへ進む。4枚で役を交替する。
  3. 産出「困った・うれしかった一週間」。先週あった困ったことと、うれしかったことを一つずつ、「〜て、…ました」で2文にして言う(書いてから言わせてもよい)。聞いた人は「どうして〜ましたか」と一つ質問する。教師が見るのは、後ろが頼み・誘い・希望の文になっていないか、形容詞のテ形(高くて・大変で)が正しいか、すでに起きたことを「〜ました」で言えているか。

つまずきと手当て

  • 後ろに誘う・頼む文を置いて「*雨が降って、タクシーで行きましょう」「*時間がなくて、急いでください」と言う。後ろが話し手の誘い・頼み・希望のときは「雨が降っていますから、タクシーで行きましょう」と第7課の「から」に替えさせ、板書の枠の結果の欄に「気持ち・結果」と書いておく
  • 形容詞のテ形を「*高いて」「*静かくて」と作る。第11課の形容詞のテ形(高くて・静かで)の表を黒板の端に出し、イ形容詞とナ形容詞を2列に分けて言い直させる
  • 「電車が止まりましたから、遅れました」と「から」で言う学生は誤りではないので直さない。「て」のほうが、起きたことを順にそのまま話す感じになると一言添えて、両方言えればよいとする

既習の文型との違い

  • 〜て、…て、―ます(第11課)第11課の「て」は動作を起きた順に並べる「て」で、「それから」と言い換えられます。この課の「て」は「どうして」に答える「て」で、前が原因、後ろが結果です。原因の文と順番の文は形が同じなので、「どうして寒かったですか」のように「どうして」で聞いて答えになるかを確かめさせます。
  • 〜は…て、―です(第11課)「この部屋は広くて、明るいです」は特徴を並べるだけで、前と後ろに原因と結果の関係はありません。「この部屋は狭くて、困ります」なら、狭いことが困る原因です。形は同じなので、後ろが気持ちや結果になっているかで見分けさせます。
  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(第7課)「から」は理由をはっきり示す言い方で、後ろに「〜てください」「〜ましょう」も置けます。原因の「て」は後ろに頼む・誘う文を置けないので、「*雨が降って、タクシーで行きましょう」は「雨が降っていますから、タクシーで行きましょう」に替えます。すでに起きたことを話すときは、どちらで言ってもかまいません。
関連する文型

学習項目 2 〜たら、…

意味・はたらき学習項目 2

「〜たら」は、前のことが起きた場合に、または起きたあとで、後ろのことをする・後ろのことになる、と言う言い方です。使い方は大きく二つで、一つは「雨が降ったら、行きません」のように、起きるかどうか分からないことを仮に考える使い方で、前に「もし」をつけることもできます。もう一つは「授業が終わったら、電話します」のように、必ず起きることについて「それが済んだあとで」と言う使い方で、このときは「もし」をつけません。第15課の「〜と、…」と違い、後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」のような頼む・誘う・希望の文が来てもかまいません。文法の用語では条件表現の一つで、仮定の条件(もし〜たら)と、確かに起きることのあとを言う使い方の両方を持ち、「と」に比べて後ろの文の制限が少ない形として扱われます。

接続

Vた/いAかった/なAだった/Nだった +ら(タ形に「ら」をつける。否定は Vなかったら・いAくなかったら)

形
Vたら、…(雨が降ったら、行きません)いAかったら/なAだったら/Nだったら、…Vなかったら、…もし〜たら、…

導入

  • 晴れと雨の分かれ道の絵黒板に分かれ道を描き、片方に晴れの絵と海の絵、もう片方に雨の絵とうちの絵を貼る。教師が「あした、友達と海へ行きます。でも、天気がわかりません」と話し、晴れの道を指して「晴れたら、海へ行きます」、雨の道を指して「雨が降ったら、行きません」と言う。板書は「(もし)[タ形]ら、…」の枠にし、タ形の「た」の下に「ら」を赤で書き足す。
  • 時計の絵で「そのあとで」授業の時間割の絵と時計の絵を貼り、「12時に授業が終わります。授業が終わったら、図書館へ行きます」と教師の予定を言う。これは必ず起きることなので「もし」はつけないと、分かれ道の絵と見比べて確かめる。そのあと学生に「うちへ帰ったら、まず何をしますか」「あした雨が降ったら、何をしますか」と聞き、二つの使い方で答えさせる。

板書案

(もし)Vた +〔赤〕ら、…
雨が 降ったら、行きません。(もし ○)
授業が 終わったら、電話します。(もし つけない)
降った→降ったら 高かった→高かったら 暇だった→暇だったら 雨だった→雨だったら
後ろ ○〜てください ○〜ましょう ○〜たいです

場面と発話(自作)

  • 金曜日の授業のあと、日曜日の予定を友達に聞かれた留学生が答える。日曜日、雨が降ったら、うちで映画を見ます。
  • 会社で、上司が新しく入った社員に、頼んだ仕事が済んだら知らせるように言う。この仕事が終わったら、わたしに言ってください。
  • 学校で、宿題が難しいと困っている後輩に、先輩が助言する。わからなかったら、先生に聞いたほうがいいですよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、動詞のタ形カードを見せて「〜たら」に変えさせ、次に形容詞・名詞のカード(安い・暇・雨)を混ぜる。場面のやり取りでは、「もし休みが1週間あったら、何をしますか」「もしあした雨が降ったら、どうしますか」のような問いをペアで聞き合い、続けて「〜が終わったら、〜ます」で自分の一日の予定を順に言わせる。

  1. 口頭動詞・形容詞・名詞のカードで「降ります→降った→降ったら」「安い→安かった→安かったら」「暇→暇だった→暇だったら」と3段で言わせ、慣れたら「たら」だけを言わせる。次に分かれ道の絵に天気カード(晴れる・雨が降る・寒い・雪)を貼り替え、「晴れたら、…」「雨が降ったら、…」と後ろも言わせる。最後に予定カード(授業が終わる→図書館へ行く/うちへ帰る→シャワーを浴びる/駅に着く→電話する)で「そのあとで」の使い方を言わせる。
  2. ペア「もしもカード」。Aがカード(もし100万円あったら/もしあした休みだったら/もし日本語の先生になったら)を引いて「もし〜たら、何をしますか」と聞き、Bは「〜たいです」か「〜ます」で答える。3枚で交替。2回目は、Aが用事のカード(駅に着く・仕事が終わる・わからない)を引いてBに頼み(「駅に着いたら、電話してください」)、Bは「はい、わかりました」と受ける。
  3. 産出「もしもの週末プラン」。週末の予定を、晴れた場合と雨が降った場合の二通りで書き、さらに「〜が終わったら、…」で一日の流れを一つ足して、クラスに発表する。教師が見るのは、たら形の作り方(*降るたら)、頼む文の前で「と」を使っていないか、必ず起きることに「もし」をつけていないか(文の形の誤りではないが、起きるかどうか分からないように聞こえる)。

つまずきと手当て

  • 形を「*降るたら」「*高いだったら」「*静かかったら」と作る。「たら」はタ形にそのまま「ら」をつけるだけだと、タ形の表(降った・高かった・静かだった・雨だった)に戻って赤の「ら」を足させる
  • 第15課の「と」で頼んで「*駅に着くと、電話してください」と言う。後ろが頼む・誘う・希望の文なら「たら」を使うと、第15課の板書(春になると〜の型の、いつもそうなる文)と並べて見せ、「駅に着いたら、電話してください」と言い直させる
  • 「た」が入っているので過去のことだと思い、「あした」といっしょに使ってよいか迷う。「たら」の「た」は過去ではなく、文の時は後ろの「行きません」「電話します」が決めると、分かれ道の絵の「あした」を指して確かめる

既習の文型との違い

  • 〜と、…(第15課)「春になると、花が咲きます」の「と」は、前のことがあればいつも決まって後ろのことになる、という言い方です。後ろに頼む・誘う・希望の文が来られないので、「*駅に着くと、電話してください」は誤りで、「駅に着いたら、電話してください」と言います。両方を習ったあとは、後ろが頼みか誘いなら「たら」と決めておくと迷いません。
  • 〜とき、…(第18課)「うちへ帰るとき、パンを買います」は帰る途中で買う、「うちへ帰ったら、パンを食べます」は帰ったあとで食べる、という違いになります。「とき」はそのことが起きる時を言うだけで、「たら」は前のことが済んでから、またはもし起きたら後ろ、という順を持ちます。辞書形の「とき」とタ形の「たら」を2行で並べて見せると分かりやすくなります。
  • 〜あとで、…(第16課)「授業が終わったあとで、図書館へ行きます」と「授業が終わったら、図書館へ行きます」はほとんど同じ意味になります。ただし「あとで」には「もし」の意味がないので、起きるかどうか分からないこと(雨が降るかどうか)には「たら」を使います。
関連する文型

学習項目 3 〜ても、…

意味・はたらき学習項目 3

「〜ても」は、前のことがあっても、ふつう考えられる結果にはならない、と言う言い方です。項目2の「たら」の文「あした寒かったら、うちにいます」と並べて「あした寒くても、ジョギングをします」と言うと、同じ前の文から逆の結果になることがよく分かります。これから起きるかもしれないこと(あした雨が降っても)にも、本当にあったこと(薬を飲んでも、治りませんでした)にも使えます。形はテ形に「も」をつけるだけで、第13課の「〜てもいいです」の前半と同じ形です。文法の用語では逆接の条件と呼ばれ、仮定の場合(これから雨が降っても)と、実際に起きた場合(薬を飲んでも治らなかった)の両方に使えることがよく問われます。

接続

Vて/いAくて/なAで/Nで +も(否定は Vなくても・いAくなくても)

形
Vても、…(友達に電話をかけても、出ません)いAくても/なAでも/Nでも、…Vなくても、…何回〜ても、…

導入

  • 「たら」の文と上下に並べる雪の降る寒い朝の絵を貼り、教師が「わたしはジョギングが大好きです。毎朝、公園を走ります」と前置きしてから、学生に「先生は、あした寒かったら、うちにいますか」と聞かせる。教師は「いいえ、寒くても、ジョギングをします」と答える。板書は項目2の板書の下に「あした寒かったら、うちにいます」「あした寒くても、ジョギングをします」を上下に書き、「かったら」と「くても」、「うちにいます」と「ジョギングをします」を同じ色で囲んで対にする。
  • 本当にあったことで教師が頭を押さえる動作をしながら「きのう、薬を飲みました。でも、まだ頭が痛いです」と二文で言い、それを「薬を飲んでも、頭が痛いです」と一文にまとめて見せる。そのあと学生に「〜さんは、寒くても、アイスクリームを食べますか」「日曜日、雨が降っても、出かけますか」と聞き、「はい、寒くても食べます」「いいえ、雨が降ったら、出かけません」のように、ても と たら の両方で答えさせる。

板書案

あした 寒かったら、うちに います。
あした 寒くても、ジョギングを します。
Vて+〔赤〕も いAくて+〔赤〕も なAで+〔赤〕も Nで+〔赤〕も
〔青〕ふつうは しない → でも する(逆の結果)
何回 書いても、忘れます。

場面と発話(自作)

  • サッカーのクラブに入った留学生が、雨の日の練習があるかを先輩に聞いて、答えを聞く。雨が降っても、練習はありますよ。
  • デパートで、気に入った服の値段を見た留学生が、いっしょに来た友達に言う。ちょっと高いですね。でも、高くても、この服が買いたいです。
  • 授業のあと、留学生が先生に漢字の勉強で困っていることを話す。漢字は、何回書いても、すぐ忘れます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、「寒いです/ジョギングをします」のような前の文と後ろの文のカードを見せ、教師が◯の札を出したら「たら」、×の札を出したら「ても」で言わせて、二つを言い分ける。場面のやり取りでは、「〜ても、〜ますか」の形で、自分のこと(熱があっても学校へ来ますか・高くても買いたい物は何ですか)をペアで聞き合う。

  1. 口頭「降ります→降って→降っても」の3段で形を言わせ、形容詞・名詞のカード(寒い・高い・暇・雨)も混ぜる。次に前の文と後ろの文のカード(寒い/アイスクリームを食べる、熱がある/学校へ来る、高い/買いたい、何回も読む/わからない)を見せ、教師の◯×の札で「たら」と「ても」を言い分けさせる。全体のあと、一人ずつ速く当てる。
  2. ペア「それでも、しますか」アンケート。Aは質問が5つ書いた紙(熱があっても、学校へ来ますか/雨が降っても、ジョギングをしますか/高くても、ほしい物がありますか など)を持ってBに聞き、Bは「はい、〜ても、…ます」か「いいえ、〜たら、…ません」で答える。Aは答えを紙に書き取り、5問で交替する。最後に相手の答えを一つクラスに伝えさせる。
  3. 産出「わたしのゆずれないこと」。どんなときでも毎日すること・やめないことを一つ選び、「忙しくても、毎日母に電話します。母が好きですから」のように「〜ても」と理由の文で言う。教師が見るのは、形(*高いでも・*静かくても)、後ろが本当に逆の結果になっているか、「〜てもいいです」と混ざっていないか。

つまずきと手当て

  • 形を「*高いでも」「*静かくても」「*学生くても」と作る。テ形(高くて・静かで・学生で)に「も」をつけるだけだと、項目1の形容詞のテ形の表に戻って言い直させる
  • 思ったとおりの結果をつないで「薬を飲んでも、治りました」のように言う(文の形は正しいが、意味が合わない)。「ても」の後ろは「ふつうはそうならないこと」だと、分かれ道の絵の◯×に戻って確かめ、この場合は「薬を飲んだら、治りました」になると見せる
  • 第13課の「〜てもいいです」と同じ形なので、「雨が降っても」を聞くと許可の文だと思って待ってしまう。「ても」のあとに「いいです」が来るか、別の文が来るかを、後ろを最後まで聞いて判断させる

既習の文型との違い

  • 〜たら、…(この課の学習項目2)同じ前の文から、「たら」は思ったとおりの結果、「ても」は逆の結果になります。「あした寒かったら、うちにいます」と「あした寒くても、ジョギングをします」を上下に並べ、「かったら」と「くても」、「うちにいます」と「ジョギングをします」を対にして見せます。学習者が「ても」の後ろに思ったとおりの結果を置いたら、「たら」に替えさせます。
  • 〜てもいいです/〜なくてもいいです(第13課)「〜てもいいです」は許可で、「ても」の後ろが「いいです」に決まっています。この課の「ても」は後ろに別の文が来て、逆の結果を表します。形が同じなので、「ここで食べてもいいです」と「寒くても、ジョギングをします」を並べ、「ても」のあとに何が来るかを見て意味を決めさせます。
  • 〜ですが、…です(第6課)「高いですが、買います」は高いことが分かっていて買う、という事実のつなぎ方です。「高くても、買います」は値段が高い場合でも買う、という条件の言い方で、まだ値段を知らないときにも言えます。「あしたは寒いですが、ジョギングをします」と言うと寒いと決まっているように聞こえるので、天気が分からない話では「ても」を使います。
関連する文型

学習項目 4 〜し、…し、―/〜し、…から、―

意味・はたらき学習項目 4

理由や特徴をいくつか並べて、だから―だ、と言う言い方です。「この図書館は静かだし、広いし、よく来ます」のように、理由を二つ三つ重ねて言います。並べるのはふつう同じ向きのこと(どちらもいいこと、どちらも困ること)です。「し」の前は第17課の普通の形で、ナ形容詞と名詞は「静かだし」「雨だし」と「だ」が要ります。最後の理由に「から」をつけて「〜し、…から、―」と言うこともでき、理由が一つだけでも「し」を使うと、ほかにも理由がある感じが出ます。文法の用語では理由を並べる接続で、「から」と比べて理由を一つに決めず、ほかにも理由があることをにおわせる言い方だと説明されます。

接続

普通形(V・いA・なAだ・Nだ。過去の形も可)+し、…し、―(最後の理由に「から」をつけてもよい)

形
〜し、…し、―(早いし、量が多いし、よくこの食堂に来ます)なAだし/Nだし〜し、…から、―Nも〜し、Nも…し

導入

  • 部屋さがしの2枚の絵駅の近くの明るい部屋の絵と、駅から遠い暗い部屋の絵を貼り、それぞれの下に特徴(駅から近い・広い・きれい/駅から遠い・狭い・古い)を短く書く。教師が「わたしはこの部屋がいいです。駅から近いし、広いし、きれいです」と指さしながら言い、板書は「[普通形]し、[普通形]し、―」の枠にする。続けて「静かだし」の「だ」を赤で書き足し、ナ形容詞と名詞には「だ」が要ることを見せる。
  • 「どうして」に二つ以上で答える学生に「どうしてこの学校に来ましたか」「どうして日本語を勉強していますか」と聞き、理由を二つ以上言わせる。「日本の会社で働きたいし、アニメも好きだから」のような答えが出たら、最後の理由に「から」がついた形として板書に加える。そのあと教師が窓の外を見て「きょうは雨だし、寒いから、どこも行きません」と言い、困る理由を並べる使い方も見せる。

板書案

[普通形]し、[普通形]し、―
駅から 近いし、広いし、この部屋が いいです。
静か〔赤〕だし 雨〔赤〕だし
〜し、…〔青〕から、―(雨だし、寒いから、出かけません。)
〔青〕いいこと+いいこと / 困ること+困ること(同じ向き)

場面と発話(自作)

  • 昼休みに、よく行く食堂を新しいクラスメートに紹介する。この食堂は早いし、量も多いし、毎日来ます。
  • 日曜日の花見に友達から誘われたが、行けない理由を言って断る。すみません、日曜日はアルバイトがあるし、レポートも書かなければならないから、今回は行きません。
  • 会社で、引っ越してきたばかりの同僚に、自分の住んでいる町のことを話す。わたしの町は静かだし、駅も近いし、住みやすいですよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、物(部屋・店・町)の絵カードと特徴のカードを2〜3枚見せて「〜し、〜し、―」で一文にさせ、ナ形容詞と名詞のカードでは「だし」を必ず入れさせる。場面のやり取りでは、「どうして〜がいいですか」に二つ以上の理由で答える練習をしたあと、ペアで自分の町や国のいいところを「〜し、…し」で紹介し合う。

  1. 口頭物の絵カードと特徴のカード2枚(この食堂/早い・量が多い、この町/静か・駅が近い、きょう/雨・寒い)を見せ、「早いし、量が多いし、…」と言わせる。ナ形容詞と名詞のカードは「静かです→静かだ→静かだし」と普通の形を経由して言わせる。次に後ろを教師が変え(よく来ます/出かけません/タクシーで行きましょう)、最後の理由を「から」にした形でも言わせる。
  2. ペア「どっちの部屋?」。Aは部屋1、Bは部屋2の情報カード(駅から近い・古い・広い/新しい・駅から遠い・安い など)を持ち、互いに相手の部屋のことを「その部屋はどうですか」と聞いて書き取る。そのあと二人で住みたい部屋を一つ選び、「〜し、…し、こちらがいいです」と理由を言う。役を替えて別のカードでもう一度。
  3. 産出「わたしの町じまん30秒スピーチ」。自分の住んでいる町か国の町のいいところを三つ考え、「〜し、…し、―」でまとめて30秒で話す。聞いた人は一つ質問する。教師が見るのは、ナ形容詞と名詞の「だ」、並べた理由の向きがそろっているか、最後の文が理由とつながっているか。

つまずきと手当て

  • ナ形容詞と名詞で「だ」を落として「*静かし」「*雨し」と言う。第17課の普通の形の表(静かだ・雨だ)に戻り、板書の赤の「だ」を指さして言い直させる
  • 向きの違う理由を並べて「この部屋は広いし、駅から遠いし、この部屋にします」のように言う(形は正しいが、話がつながらない)。「し」で並べるのはどちらもいいこと、どちらも困ることだと確かめ、逆のことは第6課の「〜ですが、…です」でつなぐと見せる
  • 丁寧な会話の中で「広いですし、静かですし」と言う学生は誤りではないので直さない。この課では第17課の普通の形の練習も兼ねて、まず普通の形で言えるようにすると一言だけ添える

既習の文型との違い

  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(第7課)「から」は理由を一つはっきり言う形で、「雨だから、行きません」は雨が理由のすべてに聞こえます。「雨だし、行きません」は理由が一つでも、ほかにも理由があることが感じられます。誘いを断るときに「し」を使うとやわらかく聞こえる、と場面の例で見せます。
  • 〜て、…ました(この課の学習項目1)どちらも理由を言えますが、原因の「て」は起きたことの原因と結果を一つずつつなぎ、後ろに誘う・頼む文は来ません。「し」は理由を並べ、後ろに判断や誘いも置けます。「雨だし、タクシーで行きましょう」は言えますが、「*雨が降って、タクシーで行きましょう」は言えません。
  • 〜たり、…たりします(第16課)「たり」はいくつかの動作を例として並べる言い方で、「週末は掃除をしたり、買い物をしたりします」のように、何をするかを言います。「し」は理由や特徴を並べて、後ろの判断につなぎます。学習者が「*掃除をしたし、買い物をしたしします」と混ぜたら、何を並べているのか(すること・理由)を聞いて分けさせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の文型は、天気(晴れる・雨が降る)、体の調子(熱がある・頭が痛い・治る)、気持ち(びっくりする・困る・うれしい)の言葉と組み合わせるとよく働きます。新しい語は単語だけで覚えさせず、「雨が降ったら」「熱があって」「高くても」のように、この課の形をつけた言い方で絵カードと一緒に入れます。「もし」と「何回」は、項目2・3の導入の中で文の一部として出すと、意味の説明をしなくても使い方が伝わります。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 晴れます(はれます) 雨や雲がなくなって、いい天気になります。 あした〜・空が〜
    週末に友達と山へ行く約束をしている。
    「あした晴れたら、山へ行きましょう。」
  • 降ります(ふります) 雨や雪が空から落ちてきます。 雨が〜・雪が〜
    出かける前に、空が暗くなってきた。
    「雨が降ったら、うちで本を読みます。」
  • 止まります(とまります) 動いている電車やバスなどが、動かなくなります。 電車が〜・バスが〜
    授業に遅れて教室に入る。
    「すみません、電車が止まって、遅れました。」
  • 遅れます(おくれます) 決まった時間に間に合わないで、あとから着きます。 授業に〜・10分〜
    アルバイトの店長に電話する。
    「バスが来なくて、10分遅れます。すみません。」
  • 困ります(こまります) どうしたらいいか分からなくて、大変だと思います。 とても〜・お金がなくて〜
    友達に、きのうのことを話す。
    「かぎをなくして、困りました。」
  • びっくりします(びっくりします) 思っていなかったことが急に起きて、驚きます。 ニュースを見て〜・とても〜
    休み時間に、テストの結果を見た話をする。
    「点がよくて、びっくりしました。」
  • 治ります(なおります) 病気やけががよくなって、元の体に戻ります。 かぜが〜・けがが〜
    かぜをひいた同僚が、体の調子を聞かれる。
    「薬を飲んでも、まだ治りません。」
  • 熱(ねつ) 病気のとき、体がいつもより熱くなることです。 〜があります・〜が出ます
    友達に、週末どうしていたかを聞かれる。
    「土曜日は熱があって、一日寝ていました。」
  • 忘れます(わすれます) 覚えていたことが分からなくなります。持って行く物を置いてきてしまうことにも使います。 名前を〜・宿題を〜・かさを〜
    漢字の勉強が大変だと先生に話す。
    「何回書いても、すぐ忘れます。」
  • もし(もし) 本当に起きるかどうか分からないことを、仮に考えるときに文の初めにつけます。 〜時間があったら・〜雨が降ったら
    友達と、休みの日の話をしている。
    「もし1週間休みがあったら、国へ帰りたいです。」
  • 何回(なんかい) 回数をたずねる言葉です。「何回〜ても」で、たくさんしても、という意味になります。 〜も・〜読んでも
    友達に電話をかけたが、つながらない。
    「何回かけても、出ません。」
  • 便利な(べんりな) 使いやすくて、役に立つようすです。 〜町・〜所
    新しい同僚に、自分の住む町を紹介する。
    「わたしの町は駅も近いし、店も多いし、便利ですよ。」

宿題と次のコマ

宿題は、同じ前の文で「もし〜たら、…」と「〜ても、…」を1組ずつ作る文を2組(あした雨が降ったら/降っても、など)と、自分の住んでいる町を「〜し、…し、―」で紹介する文を1つ書くこと。次のコマの最初に、宿題の文を読み合って教師が「〜さんは、雨が降っても、どこへ行きますか」と聞いて復習し、項目1の「〜て、…ました」で先週困ったことを一人一言ずつ言ってから、第20課の自動詞・他動詞に入ります。

よくある質問

  • 第19課の「〜たら」と第15課の「〜と」の違いは何ですか?

    「と」は前のことがあればいつも後ろのことになる、という言い方で、後ろに頼む・誘う・希望の文が来られません。「たら」は後ろの制限が少なく、「駅に着いたら、電話してください」のように頼む文も置けます。教室では「後ろが頼みか誘いなら、たら」と決めて練習させると混乱が減ります。

  • 「〜たら」と「〜ても」の板書はどう組めばいいですか?

    同じ前の文を使い、上に「あした寒かったら、うちにいます」、下に「あした寒くても、ジョギングをします」を書いて、「かったら」と「くても」、「うちにいます」と「ジョギングをします」を同じ色で囲みます。そのうえで「たら」はタ形に「ら」、「ても」はテ形に「も」と、作り方を端に1行ずつ添えます。動詞の組(雨が降ったら/降っても)も1組足し、天気の絵を横に貼っておくと、2コマ目にもそのまま使い回せます。

  • 原因の「〜て」と「〜から」はどう違いますか?

    どちらも理由を言えますが、原因の「て」は後ろが気持ちや起きた結果に限られ、「〜てください」「〜ましょう」は置けません。「から」は後ろに頼む・誘う文も置けます。学習者には、すでに起きたことを話すならどちらでもよく、頼む・誘うときは「から」、と二つに分けて伝えます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と学習項目1「〜て、…ました」、学習項目2「〜たら」まで、2コマ目は学習項目3「〜ても」と学習項目4「〜し」、まとめの「週末の予定」インタビューです。テ形とタ形が崩れているクラスでは、1コマ目の頭の確認に10分足し、まとめの活動を短くします。

  • 「〜し」の前は普通の形だけですか?「広いですし」は誤りですか?

    「広いですし、静かですし」は丁寧な会話でふつうに使われ、誤りではありません。この課では第17課の普通の形の練習も兼ねて、まず「広いし」「静かだし」の形で言えるようにし、丁寧な形は学生から出たら認める程度にします。ナ形容詞と名詞で「だ」を落とす誤りのほうを優先して直します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。