初級Ⅰの最後の課で、同じ出来事を「ものが主語の自動詞(〜が)」と「人が主語の他動詞(〜を)」の二つの見方で言い分けることを学びます。最初に自動詞と他動詞のペアを入れ、それを土台に、変化のあとの様子を言う「自動詞+ています」、だれかがわざとした結果を言う「他動詞+てあります」と進み、最後に形容詞を使って人が様子を変える言い方「〜くします/〜にします」を足します。どの項目も「が」と「を」、「なります」と「します」の対応で一本につながるので、板書は左に自動詞(が)、右に他動詞(を)の2列を課の最後まで消さずに残すと整理しやすくなります。教室のドア・電気・カーテン・エアコンのように、その場で動かして見せられる物が教材の中心です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第19課の「〜て、…ました」で遅刻の理由を2〜3問聞く(「電車が止まって、遅れました」の型)。答えに出た「止まります」を板書し、教師が自分の手で物を止める動作をしながら「(わたしが)止めます」と並べて、この課は同じ出来事を二つの言い方で言う課だと予告する |
| 学習項目1 自動詞・他動詞 | 45分 | 教室の物を実際に動かして、「〜を〜ます(人がする)」と「〜が〜ました(ものが変わる)」を同じ物で続けて言う。ペアは黒板の左右2列に書き、最初は5〜6組に絞る。口頭→ペアのカード→「教室スイッチ実況」まで。2列の板書はここで作り、課の最後まで残す |
| 学習項目2 〜ています(4) | 35分 | 動かし終わったあとの教室の様子を指さして「〜が〜ています」。教師がまだ動かしている途中の「〜を〜ています」と並べて、手が動いているかどうかで違いを見せる。前とあとの絵の情報差で聞き合い、「大家さんへの電話」で使わせて1コマ目は終わり |
| 学習項目3 〜てあります | 35分 | 2コマ目の初めに、1コマ目のペアのカードで自動詞・他動詞を5分ほど言い直してから入る。授業の前に用意しておいた教室(黒板の字・机の上の物・壁にはった紙)を見せ、「だれかがした」ことを確かめてから「〜が〜てあります」。2列の板書の右(他動詞)の下に書く。最後に教室を会場に見立てた「パーティー準備チェック」 |
| 学習項目4 〜くします/〜にします | 30分 | 第15課の「〜くなります/〜になります」を復習してから、音・部屋・髪のように人が変える場面で「〜くします/〜にします」。板書は「なります(自動詞のなかま)」と「します(他動詞のなかま)」の2列で。状況カードのペアのあと、「部屋の模様替え相談」で3案ずつ発表 |
| まとめの活動 | 25分 | 同じ部屋の「前」と「あと」の2枚の絵を見比べて、変わった所を「〜が〜ています」「〜が〜てあります」「〜を〜くしました」で言う。最後に初級Ⅰで習った活用形を一枚の表で振り返る。活用表の振り返りを丁寧にするなら、別に45分ほど取る |
同じ出来事を言う動詞には、ものが主語で「が」をとる自動詞(ドアが開きます)と、人が主語で「を」をとる他動詞(ドアを開けます)のペアになっているものがたくさんあります。自動詞は「ものがどうなるか」、他動詞は「人がものをどうするか」を言います。形はよく似ていて、「閉まる・閉める」「始まる・始める」のように「〜まる・〜める」で対応するもの、「開く(あく)・開ける」「つく・つける」のように「〜く・〜ける」で対応するもの、「消える・消す」「出る・出す」のように「〜る・〜す」で対応するものなどがありますが、決まりで作れるわけではないので、ペアのまま覚えます。
自動詞: Nが+自動詞(ドアが開きます)/他動詞: Nを+他動詞(ドアを開けます)。他動詞の文には、する人(わたしは・先生が)がいる
口頭の代入練習では、物の絵カード(ドア・窓・電気・テレビ・エアコン)と「人の手」の印のカードを組み合わせ、手の印があれば「〜を〜ます」、なければ「〜が〜ます」と言わせる。慣れたら教師が自動詞を言って学生が他動詞で返す、他動詞を言って自動詞で返す、の両方向で速く回す。場面のやり取りでは、教師が教室の物を動かすのを見て、「〜が〜ました」と「先生が〜を〜ました」の二通りで報告させる。
「閉まる・つく・壊れる」のような、ものの様子が変わる自動詞をテ形にして「います」をつけると、変化が起きたあと、その様子が今も続いていることを表します。「ドアが閉まっています」は、閉まるという変化はもう終わっていて、今ドアが閉まった様子だということです。第10課で習った「〜ています」のうち、動作の途中を言う使い方(食べています)とは違い、今は何も動いていません。「閉まりました」は変化が起きたことを言い、「閉まっています」は今の様子を言います。
様子が変わる自動詞のテ形+います(Nが〜ています)。「降る・歩く・泳ぐ」のような動き続ける自動詞につくと、第10課と同じ動作の途中の意味になる
口頭の代入練習では、同じ物の「前」と「あと」の絵カード(電気が消えている絵とついている絵など)を用意し、「あと」の絵を見せて「〜が〜ています」と言わせる。途中に人が動かしている最中の絵を混ぜ、「〜を〜ています」と言い分けさせる。場面のやり取りでは、ペアで教室や絵の中の部屋について「〜はどうですか」「〜が〜ています」と聞き合わせる。
他動詞のテ形に「あります」をつけて「Nが〜てあります」と言うと、だれかがわざと(目的があって)したことの結果が、今そこに残っていることを表します。「黒板に地図がはってあります」は、だれかが授業のために地図をはって、今もそのままになっている、ということです。だれがしたかは言わないのが普通で、話し手の関心は今の様子にあります。同じ様子は「自動詞+ています」(電気がついています)でも言えますが、「〜てあります」(電気がつけてあります)には「人がした・準備した」という意味が加わります。
他動詞のテ形+あります(Nが〜てあります。場所は「Nに」)。自動詞には使わない
口頭の代入練習では、人が準備をした部屋の絵(花が飾ってある・机に名前が書いてある・窓が開けてある)を見せて「〜が〜てあります」と言わせ、慣れたら同じ物を自動詞で「〜が〜ています」とも言わせて形を比べる。場面のやり取りでは、パーティーの準備をした人とあとから来た人の役で「飲み物はどうしましたか」「冷蔵庫に入れてあります」のように、準備が済んでいるかを聞いて答えさせる。
イ形容詞の「〜い」を「〜く」に、ナ形容詞と名詞には「に」をつけて「します」を続けると、人が何かの様子をわざと変えることを表します。第15課の「〜くなります/〜になります」は様子が変わること、この課の「〜くします/〜にします」は人が変えることで、「なります」と「します」は、自動詞と他動詞のペアと同じ関係です(音が小さくなります/音を小さくします)。変える物には「を」をつけます。「いい」は「よくします」になります。
Nを+イ形容詞(〜い→〜く)+します/Nを+ナ形容詞・名詞+に+します(いい→よくします)
口頭の代入練習では、形容詞のカード(小さい・大きい・短い・明るい・いい・きれい・静か)と物のカード(音・部屋・字・髪)を組み合わせて「〜を〜くします/〜にします」と言わせ、次に「〜てください」をつけて頼む形に替えさせる。場面のやり取りでは、引っ越したばかりの部屋の絵を見ながら「どうしますか」「〜を〜くします」と、部屋をどう変えるか相談させる。
この課の新出語は、自動詞と他動詞のペアが中心です。ペアは1枚のカードの表に「〜が 開く」、裏に「〜を 開ける」と助詞つきで書き、教室にある物(ドア・窓・電気・カーテン・エアコン)に使う組から5〜6組ずつ入れます。自他の一覧は一度に全部覚えさせず、授業で使った組から印をつけていくと負担が減ります。形容詞は第6課で習った語の復習として、「〜くします」「〜にします」の形で口に出す回数を増やします。
宿題は、自分の部屋か教室の様子を「〜が〜ています」と「〜が〜てあります」でそれぞれ3文書くことと、この課の自動詞・他動詞のペアの表を助詞つきで埋めること。次のコマの最初に宿題の文を読ませ、ほかの学生が「だれがしましたか」と聞いて、人がしたことなら「てあります」、自然にそうなったことなら「ています」で言えているかを確かめます。この課で初級Ⅰは終わりなので、そのあと第11〜17課で習ったて形・ない形・辞書形・た形・普通体を一枚の活用表にまとめて振り返ります。初級Ⅱでは、これらの活用形と自動詞・他動詞の区別を土台に新しい形や表現が加わっていくので、活用の誤りが多い学生はここで個別に確かめておくと、次の本へ進みやすくなります。
第20課の自動詞と他動詞は、いくつのペアをどの順で出せばいいですか?
1コマ目は、教室でその場で動かせる5〜6組(開く・開ける、閉まる・閉める、つく・つける、消える・消す、始まる・始める、止まる・止める)に絞ります。「〜まる⇔〜める」「〜く⇔〜ける」「〜る⇔〜す」の対応は、ペアがいくつかそろってから気づかせる程度にし、規則として先に教えません。壊れる・落ちる・汚れる・入れる・はる・置くのような語は、「〜ています」「〜てあります」の練習で必要になったときに足していきます。
「電気がついています」と「電気がつけてあります」の違いはどう説明しますか?
どちらも今電気がついている様子を言いますが、「〜てあります」には「だれかが目的があってつけた」という意味が加わります。教室では「だれがしましたか」「どうしてですか」と聞き、答えられるときは「〜てあります」、分からないときや自然にそうなったときは「〜ています」で言わせます。動詞も自動詞(つく)と他動詞(つける)で替わるので、2列の板書の左右で確かめます。
「〜ています(4)」は第10課の「〜ています」とどう分けて教えますか?
動詞の種類で分けます。食べる・降る・歩くのように動き続ける動詞の「〜ています」は動作の途中、閉まる・壊れる・つくのように様子が変わる自動詞の「〜ています」は変わったあとの様子です。見分けるには、教師の手が動いているか、「もう〜ました」と言えるかを聞きます。他動詞に付いた「窓を開けています」は動作の途中なので、「を」があるかどうかもいっしょに見させます。
「窓を開けてあります」と「を」で言う学習者は直したほうがいいですか?
話し言葉で聞くことがある形なので、誤りとして強く直す必要はありません。ただ、この課では物の今の様子に目を向ける「〜が〜てあります」の形で練習すると伝え、板書と練習は「が」にそろえます。「を」の形は、人がしておいたことに目が向いた言い方で、準備の言い方を学ぶ段階で改めて扱うと整理しやすくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入、自動詞・他動詞のペア、「〜ています(4)」まで、2コマ目は「〜てあります」「〜くします/〜にします」とまとめの活動です。初級Ⅰの最後の課なので、て形からた形・普通体までの活用表を振り返る時間を別に45分ほど取ると、初級Ⅱに入る前に活用の弱い学生を確かめられます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。