日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第7課「わたしは海が好きです」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第6課でい形容詞・な形容詞の「〜です」と、名詞の前に置く形、「〜は…より―です」の比べ方を習ったあとを受けて、好き嫌い・二つのものの比べ方・ものや人の特徴を言えるようにする課です。三つの項目をつなぐ芯は助詞の「が」で、好きなものにつく「が」、「どちらが」の「が」、話題を「は」で出したあとに特徴の部分を示す「が」が続けて出てきます。第5課で「を」を習ったばかりなので「*肉を好きです」が出やすく、板書の枠は「[人]は [もの]が 好きです」から始めて、「が」の列だけ色を変えて課の最後まで残すと、三つの項目が同じ形の上にあることが見えます。理由の「から」もこの課で初めて出るので、好きなものとその日の予定を一文につなぐところまで行けると、自分のことを話せる量がぐっと増えます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 好きなもの・嫌いなものを「が」で言い、「何が好きですか」「どんな〜が好きですか」に答えられる
  • 好きなことを理由にして「〜が好きですから、…ます」と予定や習慣を一文で言える
  • 二つのものを「〜と…とどちらが―ですか」で比べて聞き、「〜のほうが―です」「どちらも―です」で答えられる
  • 町・店・人などを「は」で出し、その特徴を「〜は…が―です」の形で言える

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第6課の形容詞を絵カードで2〜3問(「この部屋は暑いです」「京都は古い町です」の型)。続けて「〜は…より―です」の文を一つ板書し、この課は「好き」と「比べる」と「特徴を言う」課だと予告する。果物・スポーツ・季節・飲み物などの絵カードはここで名前を確かめておく
学習項目1 〜が好きです/〜が好きですから、…45分教師の好き嫌いを絵カードと○×の顔で見せて導入。「を」ではなく「が」と赤で板書し、否定は「あまり好きじゃありません」まで。後半は好きなものと予定のカードを矢印でつないで「〜が好きですから、…ます」
学習項目2 〜と…とどちらが―ですか35分実物を二つ持って比べて見せる。第6課の「AはBより―です」の板書の横に、それを聞く形として質問文を書く。答えの「〜のほうが」「どちらも」まで。1コマ目はここまで
学習項目3 〜は…が―ます/です55分町の絵・人の絵で特徴を言って見せる。板書は「[話題]は [部分]が ―です」の枠。最後に「〜がわかります」を足して、「が」をとる動詞があることを見せる。2コマ目の最初の5分で、1コマ目の「が好きです」「どちらが」を絵カードで2〜3問ずつ言わせてから入る
まとめの活動35分「わたしの国・わたしの町」を3〜4文で紹介する活動。好きなもの(項目1)・日本と比べて(項目2)・町の特徴(項目3)を一つずつ入れ、ペアで聞き合ってから何人かに発表させる

学習項目 1 〜が好きです/〜が好きですから、…

意味・はたらき学習項目 1

「好き」「嫌い」はな形容詞で、好きなもの・嫌いなものには「が」をつけます。英語の like のような動詞ではないので「を」は使いません。強さは「とても好きです」「好きです」「あまり好きじゃありません」「嫌いです」の順で、「嫌いです」ははっきりした言い方です。後半の「から」は理由を表し、「〜が好きですから」のあとに、そのためにすること(予定・習慣・選んだこと)を続けます。第3課の「〜から…まで」の「から」は時間の始まりで、名詞のすぐあとにつきますが、理由の「から」は「です」「ます」の文のあとにつきます。

接続

好き・嫌いなもの(名詞)+が+好きです/嫌いです。理由は「〜です/〜ます」の文+から、+その結果の文

形
Nが好きです/Nが嫌いですNがとても好きです/あまり好きじゃありません何が好きですか/どんなNが好きですかNが好きですから、…ます

導入

  • 教師の好き嫌いを○×で見せる果物・スポーツ・季節の絵カードを黒板に貼り、教師が笑顔のマークを指して「わたしは甘いものが好きです」、困った顔のマークを指して「ねこが……あまり好きじゃありません」と言う。板書は「わたしは [もの]が 好きです」の枠にし、「が」だけ赤で書く。カードを差し替えて全員でくり返し、そのあと学生一人ひとりに「〜さんは何が好きですか」と聞いて、黒板の○×の表に名前を書き込んでいく。
  • 好きなものと予定をつなぐ左に「温泉」の絵、右に「冬休み・箱根」の絵を貼り、間に矢印を描いて「温泉が好きですから、冬休みに箱根へ行きます」と言う。矢印の上に「から」と書き、左が理由・右がそのためにすること、と指で示す。続けて学生の好きなもの(表に書いたもの)を使って「〜さんはサッカーが好きですから……」と途中まで言い、後ろを学生に作らせる。

板書案

[人]は [もの]〔赤〕が 好きです。
わたしは 甘い もの〔赤〕が 好きです。 ねこ〔赤〕が あまり 好きじゃありません。
とても好き ◎ → 好き ○ → あまり好きじゃありません △ → 嫌い ×(目盛りの線)
[温泉が好きです] =〔青〕から⇒ [冬休みに 箱根へ 行きます]
〔青〕「好きです」+から(「です」を消さない) 〔赤〕を ではなく が

場面と発話(自作)

  • 寮の食堂で、同じ寮の留学生に食べ物の好みを聞かれて答える。何が好きですか。——魚が好きです。肉はあまり好きじゃありません。
  • 会社の昼休みに、同僚に日曜日の予定を聞かれる。山が好きですから、日曜日、友達と山へ行きます。
  • 日本語学校の休み時間に、先生が学生と音楽の話をする。どんな音楽が好きですか。——日本の古い歌が好きです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、絵カードと○×のマークを見せて「〜が好きです/あまり好きじゃありません」を言わせ、次に予定のカード(場所・乗り物・食べ物)を足して「〜が好きですから、〜ます」の一文にさせる。場面のやり取りでは、ペアで好きなものを3つ聞き合い、そのうち一つについて「どうしてですか」の代わりに教師が予定のカードを渡して「〜が好きですから、〜へ行きます」と言わせる。

  1. 口頭絵カード(ケーキ・魚・肉・サッカー・テニス・夏・冬・犬・ねこ・コーヒー)と○△×のマークを並べて見せ、教師が「ケーキ・◎」とキューを出す → 全員で「わたしはケーキがとても好きです」。「肉・△」なら「わたしは肉があまり好きじゃありません」と、枠のまま「が」で言わせる(「肉は」と対比の「は」に替える言い方はここでは求めない)。次に左に好きなもの、右に予定のカード(山・日曜日・行きます/映画・土曜日・見ます/魚・スーパー・買います)を出して「山が好きですから、日曜日、山へ行きます」まで一文で。全員 → 列 → 個人の順。
  2. ペアAは好きなもの・嫌いなものを○△×で書き込んだカード(10項目)を持ち、Bは同じ項目が空欄のカードを持つ。Bが「〜さんは魚が好きですか」「どんなスポーツが好きですか」と聞いてAの答えを書き込み、全部うまったら二人のカードを見比べて答え合わせをする。交替して同じことをくり返す。最後にBがAの好きなもの一つを選び、「〜さんは山が好きですから、日曜日、山へ行きますか」と予定を聞く。
  3. 産出活動名は「好きなものインタビュー」。クラスで3人以上に「何が好きですか」「どんな〜が好きですか」と聞いて表にし、最後に自分のことを「わたしは〜が好きですから、週末、〜ます」の一文で発表する。教師が見るのは、好きなものに「を」が付いていないか、否定が「好きじゃありません」になっているか、「から」の前の「です」が落ちていないか(「*山が好きから」)の3点。直すときは板書の「が」の列と「好きです+から」の区切りを指して、学生に言い直させる。

つまずきと手当て

  • 「*肉を好きです」と「を」を使う。第5課の「〜を…ます」と混ざりやすく、英語などの like の目的語の感覚も重なる。「好き」は動詞ではなく形容詞の仲間だと、第6課の「暑いです」「にぎやかです」の列に「好きです」を並べて見せ、「が」の赤字に戻す
  • 否定を「*好きくないです」と言う。「好き」はな形容詞なので「好きじゃありません」になると、第6課の「にぎやかじゃありません」と同じ形だと確かめる
  • 「*温泉が好きから」のように「です」を落として「から」をつける。理由の「から」は「です・ます」の文のあとにつくので、「好きです+から」と板書で区切って見せる
  • 嫌いなものを聞かれて、相手が作った料理などにも「嫌いです」と言ってしまう。誤りではないが強く聞こえるので、人の前では「あまり好きじゃありません」がやわらかいと一言添える

既習の文型との違い

  • 〜を…ます(第5課)第5課の「ご飯を食べます」は動作の動詞で、その対象に「を」を付けました。「好きです」は動作ではなく気持ちを表すな形容詞なので、好きなものには「が」を付けます。学習者は「*肉を好きです」のように第5課の形を持ち込むので、「食べます」の列と「好きです」の列を板書で分け、助詞を色で区別します。
  • 形容表現(1)(第6課)「好き」は「にぎやか」と同じな形容詞で、「好きです/好きじゃありません」と同じ形で言います。違うのは、「にぎやかです」は「この町は」だけで文になるのに、「好きです」は何が好きかを「が」で言わないと文が終わらない点です。否定を「*好きくないです」とい形容詞の形で作る誤りが出たら、第6課のな形容詞の表に「好き」を書き足して見せます。
  • 〜ですが、…です(第6課)第6課の「が」は前と後ろが反対の内容になるときのつなぎで、この課の「から」は前が理由、後ろがその結果です。「雨ですが、山へ行きます」と「雨ですから、山へ行きません」を並べると、つなぎを替えると後ろの文も変わることが見えます。学習者が「温泉が好きですが、箱根へ行きます」のように理由のつもりで「が」を使ったら、前と後ろが反対かどうかを聞いて「から」に戻します。
関連する文型

学習項目 2 〜と…とどちらが―ですか

意味・はたらき学習項目 2

二つのものを比べて、どちらの程度が上かを聞く言い方です。第6課の「AはBより―です」は比べた結果を言う文で、この課はそれを聞く側の文です。答えは「Aのほうが―です」で、「より」を足して「AのほうがBより―です」とも言えます。同じぐらいのときは「どちらも―です」と答えます。「―」には形容詞が入り、項目1の「好き」も入る(「どちらが好きですか」)ので、好みを比べて聞くこともできます。「どちら」は二つから選ぶときの言葉で、くだけた会話では「どっち」になります。

接続

名詞A+と+名詞B+と+どちらが+形容詞(好き なども)+ですか。答えは「A+のほうが+形容詞+です」

形
AとBとどちらが―ですかAのほうが―ですAのほうがBより―ですどちらも―です

導入

  • 実物を二つ持って比べる大きさの違うかばんや、値札をつけたノート二冊など、実物を左右の手に一つずつ持つ。教師が両方を持ち上げて首をかしげながら「このかばんとそのかばんとどちらが大きいですか」と聞き、学生に指させてから「このかばんのほうが大きいです」と答えの形を言う。板書は「[A]と [B]と どちらが ―ですか」と「[A]のほうが ―です」を上下に並べる。
  • 第6課の「より」の文を聞く形にする黒板に第6課の形で「この店はあの店より安いです」と書き、その上に「この店とあの店とどちらが安いですか」を書いて、答えが下の文になると線で結ぶ。続けて学生の国と日本で「〜と日本とどちらが寒いですか」と一人ずつ聞くと、答えが学生ごとに違うので練習が長持ちする。同じぐらいだと答えた学生が出たら「どちらも寒いです」を板書する。

板書案

[A]と [B]と どちら〔赤〕が ―ですか。
→ [A]の ほう〔赤〕が ―です。 / → どちらも ―です。
この店と あの店と どちらが 安いですか。 → この店の ほうが 安いです。
〔青〕(第6課)この店は あの店より 安いです。 ⇔ 上の質問の答えと線で結ぶ
〔青〕二つ → どちら (「の」に丸・「の ほう」と区切る)

場面と発話(自作)

  • 駅前のバス停で、留学生が近くにいた日本人に空港までの行き方を聞く。バスと電車とどちらが便利ですか。——電車のほうが便利です。
  • スーパーのパン売り場で、留学生が友達と二つのパンを見比べる。このパンとそのパンとどちらが安いですか。——そのパンのほうが安いです。
  • 会社の休み時間に、同僚が飲み物をいれてくれる前に聞く。熱いお茶と冷たいお茶とどちらが好きですか。——冷たいお茶のほうが好きです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、二枚の絵カードと形容詞カード(大きい・高い・安い・寒い・好き)を並べて質問文を作らせ、別の学生に「〜のほうが〜です」で答えさせる。慣れたら答えに「より」を足させる。場面のやり取りでは、「自分の国と日本」を比べる質問を3つずつ作ってペアで聞き合い、聞いた答えをクラスに報告させる。

  1. 口頭二枚の絵カードと形容詞のカードを組にして見せる(この店・あの店・安い/東京・大阪・大きい/地下鉄・バス・便利/日本の料理・国の料理・好き)。教師がカードを指して質問文を全員に言わせ、続けて教師が一方を指さして「この店のほうが安いです」を言わせる。慣れたら答えに「より」を足す形(この店のほうがあの店より安いです)と、両手で同じ高さを示したときの「どちらも〜です」を混ぜる。質問を言う列と答える列に分けて掛け合いにすると、テンポが落ちない。
  2. ペア情報差を作る。Aは値段・大きさなどを書いた二つの品物のカード(かばん二つ・ノート二冊・くつ二足など)、Bは絵だけのカードを持つ。Bが「このかばんとそのかばんとどちらが安いですか」と聞き、Aはカードを見て「〜のほうが安いです」と答え、Bは答えを絵に書き込む。3組終わったら交替する。同じ値段のカードを一枚混ぜておき、「どちらも〜です」を言わせる。
  3. 産出活動名は「どちら派アンケート」。学生が「朝ご飯はパンとご飯と」「休みの日は海と山と」「日本の夏と国の夏と」のように二択の質問を自分で3つ作り、クラスの中を回って5人に聞いて記録する。結果は人ごとに「〜さんは海のほうが好きです」「〜さんはどちらも好きです」と報告させる(人数を比べて言う形はこの課では扱わない)。教師が見るのは、「*どちらは」と疑問詞に「は」を付けていないか、答えの「の」が落ちていないか(「*山ほうが」)の2点。

つまずきと手当て

  • 「*どちらは安いですか」と疑問詞に「は」をつける。疑問詞のあとは「が」になることを、第1課以来の「は」の文と区別して板書の「どちらが」の赤字で確かめ、答えも「〜のほうが」と「が」で受けると見せる
  • 答えで「*バスほうが便利です」と「の」を落とす。「バスの ほう」と区切って板書し、「の」を入れて言い直させる
  • 二つのものなのに「どれが」と聞く。「どれ」は三つ以上から選ぶときの言葉で、二つのときは「どちら」と、カードを二枚と三枚に並べ替えて見せる。三つ以上を比べる言い方はこの課では扱わないので、深入りしない
  • 「AとBとどちらが」の二つ目の「と」を落として「AとBどちらが」と言う。話し言葉ではよく使われ誤りではないので、まず板書の形で言えるようにし、落とした形は直さない

既習の文型との違い

  • 〜は…より―です(第6課)第6課の文は比べた結果を言う文で、話題の「は」と比べる相手の「より」で組みます。この課は同じ内容を聞く文と答える文で、答えは「Aのほうが」と「が」で受けます。二つを混ぜて「*この店はあの店よりのほうが安いです」と言う学習者がいるので、「より」の付く名詞と「のほう」の付く名詞は別の名詞だと、板書の線で示します。
  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(この課の学習項目1)学習項目1の「何が好きですか」は答えを自由に言わせる聞き方で、「どちらが好きですか」は二つを見せてそのどちらかを選ばせる聞き方です。答えも「魚が好きです」と「魚のほうが好きです」で形が違います。二つを示したのに「魚が好きです」と答えても誤りではありませんが、比べた感じが出ないので、「のほう」を足して言い直させます。
関連する文型

学習項目 3 〜は…が―ます/です

意味・はたらき学習項目 3

まず「は」で話題(町・店・人など)を出し、そのどの部分について言うのかを「が」で示して、最後に形容詞や動詞でその特徴を言う形です。「この町は冬が長いです」は、冬の長さについて「この町」の特徴を言っています。人なら「田中さんは背が高いです」、店なら「この店はラーメンがおいしいです」のように使い、話題全体の特徴を部分で説明するのがこの形のはたらきです。「ます」の文では、「わかります」のように「を」ではなく「が」をとる動詞が入り、「わたしは日本語が少しわかります」となります。

接続

話題の名詞+は+部分・中身の名詞+が+形容詞+です/(わかります などの)動詞+ます

形
Nは Nが い形容詞です(この町は冬が長いです)Nは Nが な形容詞です(田中さんは歌が上手です)Nは NがわかりますNは何が―ですか

導入

  • 町の絵で特徴を言う山と川が多く、店が少ない町の絵を黒板に貼り、教師が「この町は山が高いです。川がきれいです。店が少ないです」と部分を指さしながら言う。板書は「[話題]は [部分]が ―です」の枠にし、「は」の列に町の名前、「が」の列に山・川・店のカードを差し替えていく。次に、にぎやかな都会の絵を隣に貼り、学生に同じ枠で言わせると、項目2の「どちらが」にも戻れる。
  • 人の特徴と「わかります」鼻の長い象の絵を見せて「象は鼻が長いです」と言い、人の絵(背の高い人・目の大きい人)に広げる。そのあと教師が自分のこととして「わたしは英語が少しわかります。中国語はわかりません」と言い、「わかります」の前も「が」になることを赤で板書する。学生に「〜さんは何語がわかりますか」と聞いて答えを集める。

板書案

[話題]は [部分]〔赤〕が ―です。
この町は 冬〔赤〕が 長いです。 田中さんは 背〔赤〕が 高いです。
わたしは 日本語〔赤〕が 少し わかります。
〔青〕田中さんは 高いです。(? 何が?)→ 田中さんは 背が 高いです。
〔青〕この町は 冬が 長いです。 ⇒ 冬が 長い 町です。(「の」を入れない)

場面と発話(自作)

  • 日本語のクラスで、留学生が自分の生まれた町を紹介する。わたしの町は川がきれいです。冬がとても長いです。
  • 会社の近くの店に初めて入った社員が、店の人におすすめを聞く。この店は何がおいしいですか。——この店はラーメンがおいしいです。
  • 市役所の窓口で、職員が外国から来た人に、話す言葉を確かめる。日本語がわかりますか。——はい、少しわかります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、話題のカード(町・店・人・動物)、部分のカード、形容詞のカードを一枚ずつ出して「〜は〜が〜です」を言わせ、途中で「何語」「わかります」のカードを混ぜる。場面のやり取りでは、ペアで「〜さんの町は何が有名ですか」「〜は何がおいしいですか」と聞き合い、聞いた内容を「〜さんの町は〜が〜です」と第三者として報告させる。

  1. 口頭話題のカード(この町・この店・田中さん・象・北海道)、部分のカード(川・ラーメン・背・鼻・冬)、形容詞のカード(きれい・おいしい・高い・長い・寒い)を一枚ずつ出して、教師が「この町・川・きれい」とキューを出す → 全員で「この町は川がきれいです」。次に部分と形容詞のカードを伏せ、話題のカードだけを見せて学生に部分を考えさせる(「この店は…」→「ラーメンがおいしいです」)。最後に「何語」「わかります」のカードを混ぜて「わたしは英語が少しわかります」まで言わせる。
  2. ペアAは町の紹介カード(山が高い・魚がおいしい・冬が寒い などを絵で示したもの)、Bは白紙を持つ。Bが「〜は何が有名ですか」「〜は何がおいしいですか」「冬は寒いですか」と聞き、Aがカードを見て「〜は…が―です」で答える。Bは聞いた内容をメモし、最後に「この町は山が高いです。魚がおいしいです」とまとめて言い、Aがカードを見せて合っているか確かめる。交替して別の町のカードで。
  3. 産出活動名は「町当てクイズ」。学生が日本か自分の国の町を一つ選び、町の名前を言わずに「この町は〜が―です」の文を3つ作って言う(「この町は海がきれいです。冬が長いです。魚がおいしいです」)。ほかの学生は「〜ですか」と町の名前を当てる。教師が見るのは、部分に「が」が付いているか(「*この町は魚をおいしいです」とならないか)、名詞の前に置き直すときに「の」を入れていないか、「わかります」の前が「が」になっているかの3点。

つまずきと手当て

  • 「*日本語をわかります」と「を」を使う。第5課の「〜を…ます」に引きずられやすいので、「わかります」は「好きです」と同じ「が」の仲間と、項目1の板書の「が」の列に並べて見せる
  • 特徴を名詞の前に置くときに「*背が高いの人」と「の」を入れる。第6課の「い形容詞+名詞」と同じで「背が高い人」になると、形容表現(2)の板書に戻って確かめる
  • 「この町の冬は長いです」のように「の」でつないでしまう。誤りではないが、町の特徴を言いたいときは「この町は冬が長いです」が自然だと、二つの文を並べて「何について話していますか」と聞いて違いに気づかせる
  • 「この町は冬は長いです」と「は」を二つ重ねる。誤りではないが、ほかと比べる(対比の)意味が出るので、この課では「は」と「が」の形で練習し、二つ目の「は」は直さずに「が」の形で言い直して見せる

既習の文型との違い

  • 〜は…です(第1課)第1課からの「AはBです」は、話題とそれが何かを一対一で言う文でした。この課の形は、話題を「は」で出したあと、そのどこについて言うかを「が」でしぼります。「田中さんは高いです」だけでは何が高いのか分からないので、「背が」を入れる必要があります。学習者が「は」だけの文で人や町を説明しようとしたら、「何が高いですか」と聞いて部分の名詞を引き出します。
  • 形容表現(2)(第6課)第6課の「にぎやかな町です」は形容詞を名詞の前に置く形で、この課の「この町は冬が長いです」は文の終わりに形容詞を置く形です。この課の文を名詞の前に置き直すと「冬が長い町です」になり、ここで「*冬が長いの町」と「の」を入れる誤りが出ます。第6課の「高い山」と同じで、い形容詞の後ろにはそのまま名詞が来ると確かめます。
  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(この課の学習項目1)「わたしは魚が好きです」と「この店は魚がおいしいです」は、どちらも「[話題]は[名詞]が―です」の形で、板書の枠は同じです。違いは「が」の前の名詞の役割で、学習項目1では好きな気持ちが向くもの、この項目では話題の一部分や中身です。形が同じなので、学習項目1の板書を消さずに残しておき、同じ枠に入る、と見せると「を」との取り違えも減ります。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、好き嫌いの対象になる語(食べ物・飲み物・スポーツ・音楽・季節・動物)と、特徴を言うための体の部分や町の部分の語、それに「好き・嫌い・上手」「わかります」のように「が」をとる語の三つのかたまりに分かれます。単語だけで覚えさせず、「魚が好きです」「背が高いです」「英語がわかります」のように「が」つきの形で絵カードと一緒に入れると、助詞の取り違えが減ります。比べる語(速い・安い・大きいなど)は第6課の形容詞の復習を兼ねて、二つの絵を並べて出します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 好き(すき) その物や人のことを思うと、うれしい気持ちになります。好きなものには「が」を付けます。 〜が好きです・とても〜です・あまり〜じゃありません
    寮の食堂で、留学生どうしが食べ物の話をする。
    「何が好きですか。——魚と野菜が好きです。」
  • 嫌い(きらい) 「好き」の反対です。強く聞こえるので、人の前では「あまり好きじゃありません」も使います。 〜が嫌いです・〜な食べ物
    同僚に、昼ご飯の店を選ぶ前に聞かれる。
    「わたしは辛い料理が嫌いです。この店は辛いですか。」
  • あまり(あまり) 「ません」「じゃありません」といっしょに使って、程度が高くないことを表します。 〜好きじゃありません・〜わかりません
    日本語学校の先生に、スポーツが好きか聞かれる。
    「サッカーはあまり好きじゃありません。テニスが好きです。」
  • 上手(じょうず) 何かをするのがうまいようすです。ほかの人のことを言うときに使い、自分のことにはあまり使いません。 〜が上手です・歌が〜・料理が〜
    会社の歓迎会のあとで、同僚について話す。
    「田中さんは歌が上手です。」
  • わかります(わかります) 言葉や話の意味が頭に入ります。わかるものには「を」ではなく「が」を付けます。 日本語が〜・英語が少し〜・意味が〜
    市役所の窓口で、職員に話す言葉を聞かれる。
    「英語が少しわかります。日本語もわかります。」
  • どちら(どちら) 二つのものの中から一つを選ぶときに聞く言葉です。くだけた会話では「どっち」と言います。 〜が―ですか・〜も―です
    駅の前で、友達に学校までの行き方を聞く。
    「バスと地下鉄とどちらが便利ですか。」
  • ほう(ほう) 二つを比べて、こちらだ、と一つを選んで言うときに使います。前の名詞との間に「の」を入れます。 〜のほうが―です・こちらの〜
    駅で、空港への行き方を聞かれて答える。
    「電車のほうがバスより便利です。」
  • 多い(おおい) 数や量がたくさんあります。「この町は〜が多いです」の形で、町や場所のようすを言います。 人が〜・雨が〜・緑が〜
    朝、駅の前の道を見ながら、同僚と通勤の話をする。
    「この道は、朝、車が多いです。」
  • 少ない(すくない) 「多い」の反対で、数や量があまりありません。 人が〜・店が〜・雨が〜
    同僚に、住んでいる町のようすを聞かれる。
    「わたしの町は店が少ないですが、静かです。」
  • 背(せ) 立ったときの体の高さです。「背が高い」「背が低い」と言います。 〜が高いです・〜が低いです
    新しいクラスで、友達が担任の先生のことを聞く。
    「先生は背が高いです。目が大きいです。」
  • 有名(ゆうめい) 多くの人が知っています。「この町は〜が有名です」の形で、その町でよく知られているものを言います。 〜が有名です・〜な町・〜な店
    旅行の前に、北海道に住んでいた同僚に聞く。
    「北海道は何が有名ですか。——魚が有名です。」
  • 果物(くだもの) りんごやみかんのように、木などになり、そのまま食べられる甘いものです。 〜が好きです・どんな〜・〜を買います
    スーパーで、友達と買い物をしている。
    「どんな果物が好きですか。——みかんが好きです。」

宿題と次のコマ

宿題は「わたしの国とわたしの町」を4文で書くこと(好きなもの1文を「〜が好きですから、…」で、日本と比べる1文を「〜のほうが〜です」で、町の特徴2文を「〜は〜が〜です」で)。次のコマの最初に、宿題の文を使って教師が「〜さんの町は何が多いですか」「〜と日本とどちらが寒いですか」と聞いて復習し、クラスで好きなものの多い順を一言確かめてから、第8課の「〜います/〜あります」(どこに何があるか)に入ります。

よくある質問

  • 第7課で「肉を好きです」の取り違えを防ぐにはどうすればいいですか?

    第5課の「〜を…ます」の直後なので、取り違えはほぼ必ず出ると考えて準備します。「好き」をな形容詞の列(にぎやか・きれい)に並べて動詞ではないと見せ、「が」だけ赤で板書して、課の最後までその枠を消さずに残します。学習項目3の「わかります」も同じ「が」の列に加えると、「が」をとる語のまとまりとして覚えやすくなります。

  • 「泳ぐことが好きです」のような言い方はこの課で教えますか?

    この本で辞書形が出るのは第15課なので、この課では扱いません。動作の好き嫌いは「水泳が好きです」「テニスが好きです」「料理が好きです」のように名詞で言わせます。学生から動詞を使った形が出たら、言いたいことを名詞に置き換えて言い直させ、動詞で言う形はあとの課で習うと伝えておきます。

  • 「〜と…とどちらが―ですか」の答えはどこまで教えますか?

    「Aのほうが―です」「AのほうがBより―です」「どちらも―です」の三つまでです。三つ以上から選ぶ言い方はこの課では扱わないので、カードはいつも二枚にします。二つ目の「と」を落とした「AとBどちらが」は話し言葉でよく使われるので、直さずに板書の形で言い直して見せる程度にします。

  • 「象は鼻が長いです」の形は学習者にどう説明しますか?

    文法用語は使わず、「は」で話題を出し、「が」でその中のどこについて言うかを示す、と絵で見せます。象の絵の全体を指して「象は」、鼻を指して「鼻が」と言い、最後に「長いです」と続けます。「田中さんは高いです」だけでは何が高いのか分からないことを先に聞いてから、部分の名詞を入れる必要に気づかせると納得しやすくなります。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課の復習から学習項目1「〜が好きです/〜が好きですから」と学習項目2「どちらが」まで、2コマ目は学習項目3「〜は…が―です」と、三つを使う「わたしの国・わたしの町」の紹介活動です。理由の「から」に時間がかかるクラスでは、学習項目2を2コマ目の頭に回してかまいません。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。