第7課の「〜が好きです」「〜は…が―です」で「が」を使ったあとを受けて、ものや人がどこに・いくつ・どのぐらいあるか・いるかを言う課です。芯は三つで、①人と動物は「います」、ものと植物は「あります」の使い分け、②数(ひとつ・2人・3枚など)を助詞をつけずに動詞のすぐ前に置く形、③期間や時間(1年・1週間に3回・2時間)を同じ位置に置く形です。②と③は「数の言葉は動詞の前、助詞なし」という同じ骨組みなので、板書の「[場所]に [もの]が [数] あります」の枠を課の最初から最後まで残し、右から順に列を足していくと学習者の頭の中でもつながります。第2課の「ここ/そこ/あそこ」と第4課の日の読みがそのまま生きる課でもあり、教室の中の実物と学習者自身の家族・通学時間を材料にすれば、その日のうちに使える文になります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第2課の「受付はあそこです」を教室の中で2〜3問聞き、場所を言えることを確かめる。そこから教師が「窓の近くに時計があります」と言い換えて、この課は「何がどこにあるか」を言う課だと予告する。位置の言葉(上・下・中・前・後ろ・となり・近く)はここで実物と箱を使って先に入れておく |
| 学習項目1 〜います/〜あります | 45分 | 実物を机の上・中・下に置いて「〜に〜があります」、教室の人を指して「〜に〜がいます」。人・動物とものの絵カードを2列に分けて動詞を選ばせ、最後に「かぎはどこにありますか」から「〜は〜にあります」の形へ |
| 学習項目2 〜が…います/…あります | 35分 | 実物を数えて「りんごが3つあります」、教室の人数、教師の家族の写真で「姉が1人、弟が2人います」。助数詞はこの課では つ・人・枚・台・本・冊 くらいに絞り、音が変わる数だけ赤で板書する(ここまでで1コマ目) |
| 学習項目3 〜に…います/…あります/…かかります | 50分 | 第3・4課の「時の言葉+に」と、この課の「期間+助詞なし」を2列に分けて板書。滞在の長さ(来月、大阪に2週間います)→ 回数(1週間に3回あります)→ かかる時間とお金(この仕事に3日かかります)の順に |
| まとめの活動 | 40分 | 部屋の絵を2種類(少しずつ違う)ペアに配り、「机の上に何がありますか」「本が何冊ありますか」で違いを5つ探す。そのあと「うちから学校までどのぐらいかかりますか」「日本にどのぐらいいますか」をクラスで聞き合い、表にまとめる |
ものや人がある場所に存在することを言う文です。人と動物(自分で動く生き物)には「います」、ものと植物には「あります」を使い、場所には「に」をつけます。言い方は二つあり、「机の上に本があります」は〈その場所に何があるか〉を伝える文、「本は机の上にあります」は〈話題のものがどこにあるか〉を伝える文です。何があるかを聞くときは「何がありますか/だれがいますか」、どこにあるかを聞くときは「〜はどこにありますか/いますか」で、何もないときは「何もありません」「だれもいません」と答えます。文法の用語では、場所を先に言う「〜に〜があります」を存在文、話題のものの場所を言う「〜は〜にあります」を所在文と呼んで分けることがあり、「は」と「が」の使い分けを考える入口になります。
〈場所〉に+〈もの〉が+あります/〈場所〉に+〈人・動物〉が+います(話題のものの場所を言うときは〈もの・人〉は+〈場所〉に+あります/います)
口頭の代入練習では、位置の絵カード(上・下・中・前・後ろ・となり)とものの絵カードを組み合わせて「〜の〜に〜があります」と言わせ、途中に人と動物のカードを混ぜて「います」を選ばせる。場面のやり取りでは、教室の絵を見せて「〜はどこにありますか」「〜に何がありますか」の両方の質問をペアで出し合わせる。
人やものの数を言う形です。数に助数詞(数えるものの種類によって変わる言葉)をつけ、助詞をつけずに動詞のすぐ前に置きます。人は「ひとり・ふたり・3人(さんにん)・4人(よにん)」、決まった数え方(助数詞)がないものは「ひとつ〜とお」、紙のように薄いものは「〜枚」、車や機械は「〜台」、ペンのように細長いものは「〜本」、本やノートは「〜冊」です。第7課の「〜は…が―です」の形を使って「田中さんは子どもが3人います」と言えば、家族や持ち物の数も言えます。数を聞くときは「何人/何枚/何台いますか・ありますか」、ひとつ・ふたつで数えるものは「いくつありますか」です。「3つ」「2人」のような数と助数詞の組み合わせは数量詞と呼ばれ、「りんごが3つあります」のように名詞から離れて動詞の前に置く形は数量詞遊離(遊離数量詞)として扱われます。
Nが+数(助数詞つき)+います/あります(数のあとには助詞をつけない。持ち主を言うときは「わたしはNが〜」)
口頭の代入練習では、教師が実物や絵カード(りんご3つ・紙5枚・車2台・人4人など)を見せて「〜が〜あります/います」と言わせ、助数詞と動詞の両方を選ばせる。場面のやり取りでは、「兄弟が何人いますか」「かばんの中に何がありますか。いくつありますか」をペアで聞き合い、聞いた内容を「〜さんはお姉さんが1人います」と第三者として報告させる。
時間の長さや回数を言う形です。学習項目2の数と同じように、期間(1年・3か月・2週間・5日・2時間など)は助詞をつけずに動詞の前に置きます。「来月、大阪に2週間います」は、その場所にいる長さを言う文で、ます形ならこれからの予定、「去年、名古屋に半年いました」なら過去の長さです。「1週間に3回授業があります」の「に」は、どの期間の中で何回あるかを言う使い方です。「この仕事に3日かかります」は、何かのために必要な時間やお金を言う文で、「うちから学校まで電車で30分かかります」のように、移動の時間にも使います。長さを聞くときは「どのぐらい」、だいたいの数には「〜ぐらい」をつけます。文法の用語で言えば、「3時に」のように時点を表す語は「に」をとり、「3時間」のように期間を表す語は助詞をつけずに述語にかかる、という時点と期間の区別がこの項目の芯で、期間や回数を表す語も数量詞の仲間として扱われます。
〈場所〉に+期間+います/期間に+回数+Nがあります/Nに(〜から〜まで)+時間・お金+かかります(期間・回数・時間のあとには助詞をつけない)
口頭の代入練習では、時の言葉のカード(3時・4月など)と期間のカード(3時間・4か月など)を混ぜて出し、「に」をつけるかどうかを判断させながら文を言わせる。場面のやり取りでは、「うちから学校までどのぐらいかかりますか」「日本にどのぐらいいますか」「1週間に何回〜がありますか」の3つを聞くインタビュー表をペアで埋めさせる。
この課の新出語は、位置の言葉(上・下・中・前・後ろ・となり・近く)・助数詞と数え方・期間の言葉(〜時間・〜日・〜週間・〜か月・〜年)・家族の言葉の四つのかたまりに分かれます。位置の言葉は実物と箱、助数詞は実物を数える動作、期間は「時の言葉」との2列の表で入れ、どれも「机の上に」「3枚」「1年」のように文型の枠の中の形で練習します。家族の言葉は自分の家族を言う形(兄・姉・弟・妹)から入れ、相手の家族の言い方は聞いて分かる程度にとどめると負担が軽くなります。
宿題は、自分の部屋の絵をかいて「〜に〜があります」を5文、家族と持ち物の数を「〜が〜います/あります」で3文、うちから学校までの時間と日本にいる期間を1文ずつ書くこと。次のコマの最初に、学生の部屋の絵を見せ合って「〜さんの部屋に何がありますか」と聞き合ってから、第9課の「〜ほしいです」(部屋にないもの・ほしいもの)へつなぎます。
第8課の「あります」と「います」はどう区別させればいいですか?
まず「自分で動く生き物は います、ほかは あります」という一つの基準で2列を作ります。迷いやすいのは、生きていても動かない木・花(あります)と、小さい魚・虫(います)なので、この二つは例として板書に残します。乗り物は「あります」にそろえ、会話でタクシーやバスを「います」と言う人もいることは、聞いたときに説明する程度で足ります。
「机の上に本があります」と「本は机の上にあります」の違いは何ですか?
前者は場所を先に言って、そこに何があるかを伝える文、後者は話題のもの(本)がどこにあるかを伝える文です。質問で分けると教えやすく、「机の上に何がありますか」には前者、「本はどこにありますか」には後者で答えます。「何が」と聞かれて「は」で答える誤りが多いので、質問と答えの助詞をそろえて練習します。
助数詞はこの課でどこまで教えればいいですか?
つ・人・枚・台・本・冊の6つで十分です。音が変わるのは「4人(よにん)」と「〜本」の1・3・6などで、変わるものだけを赤で板書し、表を教室に貼っておきます。ほかの助数詞は、その語が出てきた課で足していけば負担になりません。
「1週間に3回」の「に」と「大阪に2週間います」の「に」は同じですか?
違います。「大阪に」の「に」は場所につく「に」で、そのあとの「2週間」には助詞がつきません。「1週間に3回」の「に」は、どの長さの中で何回かを言う「に」です。「〔長さ〕に〔回数〕」をひとまとまりの枠で見せ、「1日に」「1か月に」と言い換えて練習させると混ざりにくくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と学習項目1・2、2コマ目で学習項目3とまとめの活動をします。数の読みでつまずくクラスでは、2コマ目の最初に助数詞の読みの確認を10分入れ、まとめの活動を短くします。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。