日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第18課「これは母が作った服です」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第17課の普通表現を、文の終わりではなく文の中で使う課です。名詞の前に文を置く連体修飾、動作の順番を言う「〜まえに」、すすめる「〜ほうがいいです」、時を言う「〜とき」の4つは、どれも前に普通表現(辞書形・ない形・た形)が来るので、課の最初に「文の中は普通表現、です・ますは最後に1回」を板書で決めておくと4項目が一本につながります。形の選び方がこの課の芯で、まえに は辞書形、ほうがいい は た形かない形、とき は動作が終わったかどうかで辞書形とた形を選びます。連体修飾は学習者の母語によって語順が逆になるので、文のカードを名詞の前へ動かす作業で目に見える形にします。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 名詞の前に普通表現の文を置いて、人や物を「どの〜か」まで言い分けられる
  • 「〜まえに」と第16課の「〜あとで」を使い分けて、動作の順番を言える
  • 相手の困りごとに、理由を添えて「〜たほうがいいです」「〜ないほうがいいです」とすすめられる
  • 「〜とき」で時や状態を言い、辞書形とた形の違いで、動作の前のことか後のことかを言い分けられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)15分第17課の普通表現を、動詞カードで辞書形・ない形・た形・〜ている の形にすばやく言い換える。普通表現は友達との会話だけでなく文の中にも入る形だと予告し、この課の4項目すべてがその形を使うことを板書の端に書いておく
学習項目1 連体修飾45分実物と2文のカードで、文を名詞の前へ動かして1文にする。「は→が」「ます→普通表現」を色で示し、人の絵で「どの人か」を言い当てる活動まで
学習項目2 〜まえに、…30分教師の動作2つで順番を見せ、時間の線に「まえに」と第16課の「あとで」を並べて書く。辞書形とた形の対比を色分けする
学習項目3 …ほうがいいです30分困っている人の絵で、学生からすすめる言葉を引き出す。た形の列とない形の列に分け、理由の「〜から」を添える
学習項目4 〜とき、…35分教室のドアを使って、出るとき(辞書形)と帰ったとき(た形)を見せる。形容詞・名詞のつなぎ方は第6課の形に戻して確かめる
まとめの活動25分持ち物を1つ持ってきて「これは〜たNです」と紹介し、「日本へ来るまえに」「日本へ来たとき」の話を1つずつ足す。聞いた人は、話の中の困りごとに「〜たほうがいいです」と一言すすめる

学習項目 1 連体修飾

意味・はたらき学習項目 1

名詞の前に文を置いて、どの名詞のことかを説明する言い方です。第6課で「にぎやかな町」と形容詞が名詞を説明した位置に、第17課の普通表現の文がそのまま入ると考えます。説明の文の中の主語は「は」ではなく「が」になり、説明される名詞は説明の中では言いません(「わたしが買った本」の中に「本を」は入りません)。な形容詞と名詞の今の肯定だけは「だ」を使わず、「静かな」「日本人の」の形のままです。日本語では説明が名詞の前に来るので、説明が名詞のあとに来る母語の学習者には語順そのものが壁になります。

接続

普通表現(辞書形・ない形・た形・〜ている など)+名詞(説明の中の主語は「が」。な形容詞は「な」、名詞は「の」で、「だ」は使わない)

形
V辞書形/Vない/Vた+N(来週行く所・あまり使わない物・きのう買った本)Vている+N(めがねをかけている人・駅の前で待っている人)Aい+N/Aな+N/Nの+N(第6課の形のまま)Nは[説明の文]Nです(これはわたしが国から持ってきた写真です)

導入

  • 2つの文のカードを名詞の前へ動かす教師が自分の本を実物で見せ、「わたしはきのうこの本を買いました」「これは本です」と2つの文で言う。2つの文をカードにして黒板に貼り、1枚目から「は」を「が」に、「買いました」を「買った」に書き替え、「本を」を消してから「本」の前へ動かし、「これはわたしがきのう買った本です」と1文にする。板書は[説明の文]+[名詞]の枠にし、説明の部分を色で囲んで「中は普通表現、です は最後に1回」と書き添える。
  • 人の絵で「どの人か」を言い当てる5〜6人が描かれた絵(めがねをかけている人・本を読んでいる人・電話をかけている人・コーヒーを飲んでいる人など)を貼り、教師が「本を読んでいる人は山田さんです」と言って学生に指ささせる。次に学生が絵の中の一人を説明し、ほかの学生が当てる。第10課の「〜ています」がそのまま名詞の前に入ることを、ここで体に入れる。

板書案

[説明の文(普通表現)] + N
わたしが きのう 買った + 本
これは わたしが きのう 買った本 です。
〔赤〕は → が 〔青〕買いました → 買った 〔丸〕です は最後に1回
めがねを かけている + 人 → めがねを かけている人は 山田さんです。

場面と発話(自作)

  • 教室で、留学生が家族からもらったかばんを友達にほめられて、だれからもらったかを話す。これは姉がくれたかばんです。
  • パーティーの会場で、同僚に初めて会う人がどの人かを聞かれ、遠くから指さして教える。あそこでめがねをかけている人が田中さんです。
  • 日本へ来て半年の留学生が、先生に日本の食べ物の話をする。日本へ来てから初めて食べた料理はすしです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が2枚の文のカード(「友達が作りました」「ケーキです」など)を出して学生に1文にさせ、慣れたら説明の部分だけを替えるキュー(きのう買った/駅で見た/国から持ってきた)を語で出して速く回す。場面のやり取りでは、自分の持ち物を1つ出して「これは〜た〜です」と紹介し合い、聞いた人が「いつ買いましたか」「どこで買いましたか」のように質問を1つ足す。

  1. 口頭教師の持ち物(かさ・ペン・時計)を見せ、語のキューで1文にさせる。キューの例は「父・撮る・写真」「友達・くれる・ペン」「国から・持ってくる・写真」「きのう・買う・かさ」。全体で言ってから個人に回し、慣れたら説明の部分だけを替えて速くする。次に人の絵を指して「本を読んでいる人」「電話をかけている人」のように〜ている+人を言わせる。
  2. ペア「だれでしょうクイズ」。Aは人物の名前が書いてある絵、Bは同じ絵で名前のないものを持つ。Bが「めがねをかけている人はだれですか」と聞き、Aが「田中さんです」と答え、Bは絵に名前を書く。4人そろったら絵を見せ合って答え合わせをし、別の絵で役を替える。
  3. 産出「わたしの宝物紹介」。自分の持ち物か写真を1つ出して「これは〜が〜たNです」と紹介し、「いつ」「どこで」の文を1つ足す。聞いた人は質問を1つする。教師が見るのは、説明の中が普通表現になっているか、「は」が「が」になっているか、名詞の前に「の」を入れていないか(*買ったの本)の3点で、誤りは発表のあとにまとめて板書で直す。

つまずきと手当て

  • 「*これはわたしが買いました本です」と、説明の中を丁寧な形のまま入れる。説明の中は普通表現、「です・ます」は文の最後に1回だけ、と枠の中と外で色を変えた板書に戻る
  • 「*これはわたしは買った本です」と「は」を残す。カードの書き替えに戻って、学生自身に「は」を消して「が」にする作業をさせる
  • 「*これはわたしが買ったの本です」と「の」を入れる。中国語を母語とする学習者に多い。名詞を説明するときに「の」を使うのは名詞のあと(日本人の友達)だけ、と第6課の形と並べて見せる
  • 「*これは本、わたしが買った、です」のように、名詞を先に言ってから説明を足す。英語・タイ語・ベトナム語など説明が名詞のあとに来る母語の学習者に多い。「説明が全部終わってから名詞」を、カードを名詞の左へ動かす動作でくり返す

既習の文型との違い

  • 形容表現(2)(第6課)第6課の「にぎやかな町」は形容詞1語が名詞を説明する形で、この課はその位置に文がまるごと入ります。な形容詞と名詞のつなぎ方(静かな・日本人の)は第6課のまま変わらないので、「人が多い町」「わたしが住んでいる町」と同じ名詞に並べて見せると、新しいのは「文が入ること」だけだと分かります。学習者は文が入ったとたんに「*わたしが住んでいるの町」と「の」を足すことがあります。
  • 普通表現(第17課)第17課では普通表現を友達との会話の文の終わりに使いましたが、この課では丁寧な会話の中でも、名詞の前の部分は普通表現になります。「これは父が撮った写真です」は、相手に丁寧に話していても「撮った」のままです。文の終わりの形と名詞の前の形を分けて考えないと、「*父が撮りました写真です」のような誤りが続きます。
関連する文型

学習項目 2 〜まえに、…

意味・はたらき学習項目 2

ある動作をするより先に、別の動作をすることを言います。「まえに」の前の動詞は、いつの話でも辞書形です。「日本へ来るまえに、国で日本語を勉強しました」のように、文の終わりが過去でも「来る」のままで、「来た」にはなりません。名詞のときは「食事のまえに」と「の」をつけ、「3年」「1時間」のような期間には「の」をつけずに「3年まえに」と言います。ただし「3年まえに」は「今から数えて3年前」という時を言う形で、「AのまえにB」という動作の順番とは意味が違うので、板書では別の行に分けます。第16課の「〜あとで」はた形につくので、「まえに=辞書形、あとで=た形」と対にして覚えさせます。

接続

V辞書形+まえに/Nの+まえに/期間+まえに(文の終わりが過去でも、まえに の前は辞書形)

形
V辞書形まえに、〜ます(出かけるまえに、窓を閉めます)V辞書形まえに、〜ました(日本へ来るまえに、勉強しました)Nのまえに、〜(食事のまえに・授業のまえに)[期間]まえに(3年まえに・1時間まえに)

導入

  • 教師が動作を2つ続けて見せる教師が手を洗うまねをしてから、ご飯を食べるまねをする。黒板に左から右へ時間の線を引き、左に「手を洗います」、右に「ご飯を食べます」の絵を置いてから、「ご飯を食べるまえに、手を洗います」と言う。「まえに」の前の動作は線の右側(あとでする動作)だと矢印で示し、その動詞を辞書形の色で書く。
  • 「あとで」と同じ線に並べる同じ時間の線に、第16課の「ご飯を食べたあとで、歯をみがきます」を書き足し、辞書形とた形を2色に分ける。そのうえで学生一人ひとりに「日本へ来るまえに、何をしましたか」と聞き、答えの文が過去でも「来る」のままであることを、答えを板書しながら確かめる。

板書案

V辞書形 + まえに、〜
ご飯を 食べる まえに、手を 洗います。
〔時間の線〕手を洗う ——→ ご飯を食べる
〔赤〕辞書形+まえに 〔青〕た形+あとで(第16課)
Nの まえに(食事のまえに) 期間+まえに(3年まえに)

場面と発話(自作)

  • 学校の受付で、職員が新しい学生に書類の出し方を説明する。授業が始まるまえに、この紙を先生に出してください。
  • 初めてのクラスで、留学生が日本語をいつから勉強しているかを聞かれて答える。日本へ来るまえに、国で半年日本語を勉強しました。
  • 休み時間に、留学生どうしで朝の過ごし方を話す。学校へ来るまえに、いつも何をしますか。——コーヒーを飲みます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、動作の絵カードを2枚並べて(手を洗う/食べる、シャワーを浴びる/寝る、切符を買う/電車に乗る)「〜まえに、〜ます」と言わせ、同じ2枚で「〜たあとで、〜ます」にも言い換えさせる。場面のやり取りでは、「朝、学校へ来るまえに何をしますか」「日本へ来るまえに何をしましたか」をペアで聞き合い、聞いた答えを時間の線に書いて発表させる。

  1. 口頭動作の絵カードを2枚並べ、あとでする動作を指して「まえに」の文を言わせる。キューの例は「寝る・歯をみがく」「電車に乗る・切符を買う」「出かける・窓を閉める」「食事・手を洗う」(名詞)。全体と個人で言ったあと、同じ2枚で「〜たあとで」に言い換えさせ、辞書形とた形を交互に出す。
  2. ペア「わたしの朝」。Aは朝の動作4つが順番に並んだ絵カード、Bは同じ4つがばらばらに描かれた紙を持つ。Bが「顔を洗うまえに、何をしますか」と聞き、Aがカードを見て答え、Bは絵に1〜4の番号を書く。終わったらカードを見せ合って確かめ、別のカード(夜・休みの日)で役を替える。
  3. 産出「日本へ来るまえに」スピーチ。日本へ来るまえにしたことを2文、来たあとでしたことを1文、短く話す(書いてから話してもよい)。教師が見るのは、過去の話でも「まえに」の前が辞書形になっているか(*来たまえに)、名詞のときだけ「の」が入っているか、「あとで」のほうはた形になっているかの3点。

つまずきと手当て

  • 「*日本へ来たまえに、国で勉強しました」と、文が過去なので た形にする。時間の線に戻って、「まえに」の前の動作はまだ起きていないので辞書形、と「あとで」のた形と並べて確かめる
  • 「*寝るのまえに」と、動詞に「の」を入れる。「の」がつくのは名詞(食事のまえに)だけ、と動詞の列と名詞の列を分けて板書する
  • 「*3年のまえに日本へ来ました」と、期間に「の」をつける。期間はそのまま「まえに」がつく、と「食事のまえに」と並べて違いを見せる
  • 「手を洗うまえに、ご飯を食べます」のように、言いたい順番と逆の文を作る。文としては正しいが意味が逆になるので、時間の線の絵を指さして、どちらを先にするかを確かめてから言わせる

既習の文型との違い

  • 〜あとで、…(第16課)「あとで」は前の動作が終わってから次をするので た形、「まえに」は前の動作がまだ起きていないので辞書形です。同じ2つの動作でも「食べるまえに、手を洗います」「手を洗ったあとで、食べます」と文の順番が入れ替わります。学習者は「あとで」のた形に引かれて「*食べたまえに」と言いやすいので、2つを同じ時間の線に並べて色で分けます。
  • 〜てから、…(第11課)「手を洗ってから、食べます」は、先にする動作を先に言って順番どおりに話す形です。「まえに」は、あとでする動作を先に言うので、話す順番と動作の順番が逆になります。意味はほぼ同じなので、どちらでも言えることを見せたうえで、「まえに」の文では先にする動作が文の後半に来ることを確かめます。
関連する文型

学習項目 3 …ほうがいいです

意味・はたらき学習項目 3

相手のためにすすめたり、注意したりするときの言い方です。「早く寝たほうがいいです」のように動詞のた形につけますが、この「た」に過去の意味はありません。しないほうがいいことは「〜ないほうがいいです」で、ない形につけます。「〜てください」(第11課)が頼んだり指示したりする言い方なのに対して、「ほうがいいです」は、するのとしないのとではこちらがよい、と判断して伝える言い方なので、理由を「〜から」(第7課)で添えると自然になります。目上の人に直接言うと押しつけに聞こえることがあるので、初級では友達・同僚どうしの場面で練習します。

接続

Vた+ほうがいいです/Vない+ほうがいいです(た形でも過去の意味はない)

形
Vたほうがいいです(薬を飲んだほうがいいです)Vないほうがいいです(あまり飲まないほうがいいです)〜から、〜たほうがいいです(理由を添える)〜たほうがいいですか(自分のことを相談する)

導入

  • 困っている人の絵からすすめる言葉を引き出す頭が痛い人の絵を貼り、教師がその人になって「頭が痛いです」と言う。学生に「どうしますか」と聞いて「薬」「病院」などの語を引き出し、教師が「薬を飲んだほうがいいです」「病院へ行ったほうがいいです」と文にする。板書は「[困ったこと]→ Vた+ほうがいいです」の枠にし、た形の「た」の横に「過去ではない」と小さく書いておく。
  • 「する」列と「しない」列「あしたテストがあります」という同じ困りごとについて、学生からすすめる言葉を集め、「早く寝たほうがいい」「教科書を読んだほうがいい」はた形の列、「遅くまでゲームをしないほうがいい」はない形の列に振り分けさせる。2列がそろったら、「テストがありますから、早く寝たほうがいいです」と理由を前に足した形を教師が言い、全員でくり返す。

板書案

Vた + ほうがいいです
Vない + ほうがいいです
熱が ありますから、病院へ 行ったほうがいいです。
あしたは テストですから、遅くまで テレビを 見ないほうがいいです。
〔赤〕た(過去ではない) 〔青〕〜から(理由)

場面と発話(自作)

  • 朝の職場で、同僚の顔が赤く、熱があると聞いた社員が声をかける。顔が赤いですね。きょうは早く休んだほうがいいですよ。
  • 週末に山へ行くと話した留学生に、天気予報を見た友達が言う。あしたは雨ですから、山へ行かないほうがいいです。
  • アルバイトの面接の前に、留学生が先輩に服のことを相談する。面接の日は、スーツを着て行ったほうがいいですか。——はい、着て行ったほうがいいです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、困りごとの絵カード(のどが痛い・道がわからない・財布をなくした・あした朝早い)を見せ、すすめる動詞の語を添えて、た形とない形の両方で1文ずつ言わせる。場面のやり取りでは、学生が自分の小さな困りごと(日本の冬は寒いです・漢字がおぼえにくいです など)を言い、ペアの相手が理由を添えて「〜から、〜たほうがいいです」とすすめ、言われた人が「そうですね」と受ける。

  1. 口頭困りごとの絵カードと、すすめる動作の語をキューにして言わせる。キューの例は「のどが痛い・水をたくさん飲む」「あした朝早い・早く寝る」「道がわからない・駅の人に聞く」「熱がある・シャワーを浴びない」(ない形)。全体で言ってから個人に回し、慣れたら「〜から」の理由を前に足した形で言わせる。
  2. ペア「お悩み相談」。Aは困りごとのカードを引いて「〜です」と言い、Bが「〜から、〜たほうがいいです」か「〜ないほうがいいです」ですすめる。Aは「そうですね」か「でも、〜」で受ける。カード3枚で役を替え、2回目はBが、するほうとしないほうの両方で1つずつすすめる。
  3. 産出「新しい留学生へのアドバイス」。この町に来たばかりの留学生にすすめることを、するほうを2つ、しないほうを1つ、理由をつけて書いて発表する。教師が見るのは、た形とない形の作り方、「の」を入れていないか(*寝たのほうがいい)、理由が「〜から」で前に来ているかの3点。目上の人に向けて言う文になっていないかも見る。

つまずきと手当て

  • 「*薬を飲みたほうがいいです」「*病院へ行いたほうがいいです」と、た形の作り方を誤る。第16課のた形の作り方(て形の「て」を「た」に)に戻って、すすめる動詞だけをすばやく言い換える
  • 「*寝たのほうがいいです」と「の」を入れる。比べる言い方の「〜のほうが」に引かれたもので、「の」がつくのは名詞のときだけ、と動詞のた形は直接「ほう」につくことを板書で見せる
  • 「た」を過去だと思って、これからのことに「早く寝るほうがいいです」と辞書形を使う。辞書形の形も使われるので誤りとして直さず、相手に今すすめるときは た形が多い、とだけ伝えて た形で言い直させる
  • 先生に「先生、もっとゆっくり話したほうがいいです」と言う。文法は正しいが、目上の人には押しつけに聞こえることがあるので、目上には「〜てください」で頼むほうが安全、と場面を替えて言い比べる

既習の文型との違い

  • 〜てください(第11課)「〜てください」は相手に動作を頼む・指示する言い方です。「〜たほうがいいです」は、するほうがよいと話し手が判断して伝える言い方で、するかどうかを決めるのは相手です。先生に「ゆっくり話したほうがいいです」と言うと評価しているように聞こえるので、目上には「ゆっくり話してください」で頼む、と同じ場面で2つを言い比べます。
  • 〜なければなりません(第12課)「〜なければなりません」は規則や事情でそうするしかないことを言い、「〜たほうがいいです」はしなくてもよいが、したほうがよいことを言います。「薬を飲まなければなりません」は医者に言われた決まり、「薬を飲んだほうがいいです」は友達のすすめ、と場面で分けます。学習者は強くすすめたいときに「なければなりません」を使いがちなので、相手が困っている場面では「ほうがいい」が自然だと見せます。
  • 〜と…とどちらが―ですか(第7課)比べる問いの答えで使う「Nのほうが…です」は名詞に「の」が付きますが、この課の「ほうがいい」は動詞のた形・ない形に直接付きます。2つが混ざると「*行ったのほうがいいです」になるので、名詞の列と動詞の列を分けて板書します。
関連する文型

学習項目 4 〜とき、…

意味・はたらき学習項目 4

「〜とき」で、あることをする時や、ある状態の時を言います。前には普通表現が来て、い形容詞はそのまま、な形容詞は「な」、名詞は「の」をつけます(寒いとき・ひまなとき・子どものとき)。動詞は、「とき」の前の動作がまだ終わっていなければ辞書形、もう終わっていればた形で、文の終わりが過去か今かでは決まりません。「国へ帰るとき、空港でお土産を買います」は帰る前(日本の空港で)、「国へ帰ったとき、家族にお土産をあげます」は帰った後(国で)のことです。

接続

V辞書形/Vない/Vた・Aい・Aな・Nの+とき(動詞は、まだ終わっていなければ辞書形、もう終わっていればた形)

形
V辞書形とき、〜(うちを出るとき・国へ帰るとき)Vたとき、〜(日本へ来たとき・うちへ帰ったとき)Aいとき/Aなとき(寒いとき・ひまなとき)Nのとき(子どものとき・休みのとき)

導入

  • 教室のドアで「出るとき」と「帰ったとき」教師がドアの前に立って「行ってきます」と言ってから外へ出て、「うちを出るとき、『行ってきます』と言います」と言う。次に外から戻って「ただいま」と言い、「うちへ帰ったとき、『ただいま』と言います」と言う。板書ではドアを1本の線で描き、線の手前に辞書形、線の向こうにた形を書いて、「とき」の前の動作が終わったかどうかで形が決まることを見せる。
  • 形容詞と名詞の「とき」学生に「寒いとき、何を飲みますか」「ひまなとき、何をしますか」「子どものとき、何が好きでしたか」と順に聞き、答えを集めながら、い形容詞はそのまま、な形容詞は「な」、名詞は「の」と板書する。第6課の「にぎやかな町」「日本語の本」と同じつなぎ方だと確かめると、連体修飾(学習項目1)の形とも一つにまとまる。

板書案

普通表現 + とき、〜
うちを 出る とき、「行ってきます」と 言います。
うちへ 帰った とき、「ただいま」と 言います。
〔線〕ドア:手前=辞書形 向こう=た形
寒い とき/ひまな とき/子どもの とき

場面と発話(自作)

  • 日本へ来て1年の留学生が、クラスで来たころのことを話す。日本へ来たとき、日本語が全然わかりませんでした。
  • 休み時間に、友達と休みの日の過ごし方を話す。ひまなとき、何をしますか。——本を読んだり、料理を作ったりします。
  • 寮で、先輩が新しく入った留学生に、困ったときの連絡先を教える。わからないとき、この番号に電話をかけてください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、ドアの手前と向こうの2枚のカードと動作の語(出る・帰る・着く・寝る)を組み合わせて、辞書形かた形かを選ばせる。次に形容詞・名詞のカード(寒い・暑い・ひま・元気・子ども・休み)で「〜とき」の形を作らせる。場面のやり取りでは、「〜とき、どうしますか」(風邪のとき・道がわからないとき・国の家族に会いたいとき)をペアで聞き合い、答えに「〜たほうがいいです」で一言すすめる人を決めて、学習項目3にもつなげる。

  1. 口頭場面と決まったあいさつの組み合わせをキューにして言わせる。キューの例は「うちを出る・『行ってきます』」「うちへ帰る・『ただいま』」「ご飯を食べる・『いただきます』」「ご飯を食べる(終わった)・『ごちそうさまでした』」「寝る・『おやすみなさい』」。動詞のあとは形容詞・名詞のカード(寒い・ひま・子ども・休み)で「〜とき、何をしますか」に答えさせる。
  2. ペア「こんなとき、どうしますか」インタビュー。Aは場面のカード(かぜのとき・道がわからないとき・日本に着いたとき・ひまなとき)を持って聞き、Bは自分のことで答える。Aは答えを表にメモし、4枚で役を替える。最後に、相手の答えに「〜たほうがいいです」で一言すすめてもよい。
  3. 産出「わたしの国のあいさつ」。うちを出るとき・帰ったとき・食べるまえ・食べたあとに、自分の国では何と言うかを「わたしの国では、〜とき、『…』と言います」で発表し、「子どものとき」の思い出の文を1つ足す。教師が見るのは、辞書形とた形の選び方、「ひまなとき」「子どものとき」のつなぎ方、「〜と言います」の引用の形の3点。

つまずきと手当て

  • 「*きれいのとき」「*ひまだとき」「*子どもとき」と、な形容詞と名詞のつなぎ方を誤る。第6課の名詞の前の形(きれいな部屋・ひまな日・子どもの本)と同じだと、連体修飾の板書と並べて確かめる
  • 「うちへ帰るとき、『ただいま』と言います」と、帰ったあとのことに辞書形を使う。文としては正しいが「帰る前に」の意味になるので、ドアの線の絵に戻って、言う場所が線の手前か向こうかを確かめさせる
  • 過去の話をしているので、そのときまだ終わっていなかった動作にも た形を使い、「国へ帰ったとき、空港でお土産を買いました」と言う。これも文としては正しいが、帰ったあと(国の空港で)の意味になるので、どこの空港かを聞き返して形の違いに気づかせる

既習の文型との違い

  • 〜まえに、…(この課)/〜あとで、…(第16課)「帰るまえに」「帰ったあとで」は動作の前か後かをはっきり分けて言う形で、「帰るとき」「帰ったとき」はその動作のころの時を言う形です。「うちを出るとき、『行ってきます』と言います」は出る直前のことで、「出るまえに」と言うと出るよりずっと前のことにも聞こえます。辞書形とた形の選び方は「まえに=辞書形」「あとで=た形」とよく似ているので、3つを同じドアの絵で並べます。
  • 〜と、…(第15課)この本の第15課では、「このボタンを押すと、水が出ます」のように、前のことが起きるといつも後のことが起きる、という決まった結びつきに絞って「と」を習っています。「〜とき」は、その時に何をするか・どうだったかを言うので、「日本へ来たとき、日本語がわかりませんでした」のように一度だけのことにも使えます。「と」にも「ドアを開けると、外は雪でした」のように過去の一回のことを言う用法はありますが、まだ習っていないので、一度だけのことを言う練習では「とき」を使わせ、「と」が出たら「いつもそうなりますか」と聞いて区別させます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の中心は文の形で、語彙は連体修飾で人や物を説明するための動作の語(作る・着る・かける・くれる・持ってくる など)と、「ほうがいいです」ですすめる場面の体や生活の語(熱・のど・薬・病院 など)にまとめると練習が回ります。新しい語は単語だけで覚えさせず、「めがねをかけている人」「薬を飲んだほうがいい」のように、この課の形に入れた句のまま練習します。どの語がこの課の新出語かは、本の巻末のワードリストで確かめてから入れてください。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 作ります(つくります) 料理や服などを、材料から新しく出します。 料理を〜・服を〜・ケーキを〜
    友達のうちで、おいしいケーキが出た。
    「このケーキ、おいしいですね。だれが作りましたか。」「姉です。姉が作るケーキはいつもおいしいです。」
  • 着ます(きます) シャツや上着などを体につけます。 服を〜・シャツを〜・スーツを〜
    アルバイトの面接の前に、先輩に相談する。
    「面接の日は、スーツを着たほうがいいです。」
  • かけます(かけます) めがねを顔につけます。電話をするときにも使います。 めがねを〜・電話を〜
    パーティーで、初めて会う人がどの人かを教える。
    「めがねをかけている人が田中さんです。」
  • 持ってきます(もってきます) 物を手に持って、ここへ来ます。 写真を〜・国から〜・辞書を〜
    教室で、家族の写真をクラスに見せる。
    「これは国から持ってきた写真です。」
  • くれます(くれます) ほかの人がわたしに物をあげます。 父が〜・プレゼントを〜
    新しい時計を友達にほめられる。
    「これは誕生日に父がくれた時計です。」
  • 洗います(あらいます) 水やせっけんで、よごれを落とします。 手を〜・顔を〜・皿を〜
    昼ご飯の時間。教師が学生に声をかける。
    「ご飯を食べるまえに、手を洗ってください。」
  • 出ます(でます) 中から外へ行きます。 うちを〜・駅を〜・部屋を〜
    寮で、出かける前に先輩が言う。
    「部屋を出るまえに、電気を消してください。」
  • 着きます(つきます) 行きたい所まで行って、そこに来ます。 駅に〜・空港に〜・日本に〜
    留学生が、日本に来た日のことを話す。
    「日本に着いたとき、すぐ母に電話をかけました。」
  • 熱(ねつ) 病気のときに、体がいつもより熱くなることです。 〜があります・〜が高い
    同僚が、朝から体が熱いと言っている。
    「熱が高いときは、会社を休んだほうがいいです。」
  • 薬(くすり) 病気を治すために飲んだり、使ったりする物です。 〜を飲みます・かぜの〜
    のどが痛い友達に。
    「かぜですか。この薬を飲んだほうがいいですよ。」
  • 病院(びょういん) 医者に病気を見てもらう所です。 〜へ行きます・大きい〜
    友達が、きのうからずっと頭が痛いと言う。
    「きのうから痛いですから、病院へ行ったほうがいいです。」
  • ひま(ひま) 仕事や勉強がなくて、時間があるようすです。な形容詞です。 〜な時間・〜なとき・〜な日
    休み時間に、友達と休みの日の話をする。
    「ひまな日は、近くの公園を散歩します。」

宿題と次のコマ

宿題は、自分の持ち物か写真を1つ選んで、「これは〜た〜です」の文と、「日本へ来るまえに」「日本へ来たとき」で始まる文を1つずつ、あわせて3文書くこと。次のコマの最初に、その文で持ち物を紹介し合い、聞いた人が「いつ〜ましたか」と1つ質問してから、第19課に入ります。第19課の「〜たら、…」は、この課の「〜とき」と並べて扱うと形の違いが見えやすくなります。

よくある質問

  • 第18課の連体修飾はどう導入すればいいですか?

    実物を1つ見せて、2つの文のカード(「わたしはきのうこの本を買いました」「これは本です」)を作り、「は」を「が」に、「買いました」を「買った」に書き替えて名詞の前へ動かします。カードを動かす作業を見せると、説明が名詞の前に来るという語順が目で分かります。次に人の絵で「〜ている人」を言わせると、第10課の形がそのまま使えることが伝わります。

  • 「〜まえに」の前は、過去の話でもなぜ辞書形ですか?

    「まえに」の前の動作は、文の後半の動作をした時点ではまだ起きていないからです。文全体が過去でも、「来る」はその時から見てこれからのことなので辞書形のままです。時間の線に「来る」を後半の動作より右に置き、「あとで」のた形と並べて見せると納得しやすくなります。

  • 「〜とき」の辞書形とた形はどう教え分けますか?

    「とき」の前の動作が、後半のことをする時点で終わっていなければ辞書形、終わっていればた形、と1つの基準で教えます。教室のドアを使って、出る前(辞書形)と帰った後(た形)を見せるのが分かりやすい方法です。「国へ帰るとき、空港で買いました」と「国へ帰ったとき、空港で買いました」で、どこの空港かが変わることを確かめると、形の違いが意味の違いだと伝わります。

  • 「〜たほうがいいです」と、辞書形の「〜るほうがいいです」は、どちらを教えますか?

    この課では、相手に今すすめるときに多い「た形+ほうがいいです」を中心に教えます。辞書形の形も使われるので、学習者が言っても誤りとして直す必要はありません。「た」が過去ではないことは板書で一度だけ示し、練習では形を言えることを優先します。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と連体修飾、「〜まえに」まで、2コマ目は「〜ほうがいいです」「〜とき」とまとめの活動です。連体修飾に時間がかかるクラスでは、2コマ目の最初に「だれでしょうクイズ」を5分入れてから先へ進みます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。