第17課の普通表現を、文の終わりではなく文の中で使う課です。名詞の前に文を置く連体修飾、動作の順番を言う「〜まえに」、すすめる「〜ほうがいいです」、時を言う「〜とき」の4つは、どれも前に普通表現(辞書形・ない形・た形)が来るので、課の最初に「文の中は普通表現、です・ますは最後に1回」を板書で決めておくと4項目が一本につながります。形の選び方がこの課の芯で、まえに は辞書形、ほうがいい は た形かない形、とき は動作が終わったかどうかで辞書形とた形を選びます。連体修飾は学習者の母語によって語順が逆になるので、文のカードを名詞の前へ動かす作業で目に見える形にします。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 15分 | 第17課の普通表現を、動詞カードで辞書形・ない形・た形・〜ている の形にすばやく言い換える。普通表現は友達との会話だけでなく文の中にも入る形だと予告し、この課の4項目すべてがその形を使うことを板書の端に書いておく |
| 学習項目1 連体修飾 | 45分 | 実物と2文のカードで、文を名詞の前へ動かして1文にする。「は→が」「ます→普通表現」を色で示し、人の絵で「どの人か」を言い当てる活動まで |
| 学習項目2 〜まえに、… | 30分 | 教師の動作2つで順番を見せ、時間の線に「まえに」と第16課の「あとで」を並べて書く。辞書形とた形の対比を色分けする |
| 学習項目3 …ほうがいいです | 30分 | 困っている人の絵で、学生からすすめる言葉を引き出す。た形の列とない形の列に分け、理由の「〜から」を添える |
| 学習項目4 〜とき、… | 35分 | 教室のドアを使って、出るとき(辞書形)と帰ったとき(た形)を見せる。形容詞・名詞のつなぎ方は第6課の形に戻して確かめる |
| まとめの活動 | 25分 | 持ち物を1つ持ってきて「これは〜たNです」と紹介し、「日本へ来るまえに」「日本へ来たとき」の話を1つずつ足す。聞いた人は、話の中の困りごとに「〜たほうがいいです」と一言すすめる |
名詞の前に文を置いて、どの名詞のことかを説明する言い方です。第6課で「にぎやかな町」と形容詞が名詞を説明した位置に、第17課の普通表現の文がそのまま入ると考えます。説明の文の中の主語は「は」ではなく「が」になり、説明される名詞は説明の中では言いません(「わたしが買った本」の中に「本を」は入りません)。な形容詞と名詞の今の肯定だけは「だ」を使わず、「静かな」「日本人の」の形のままです。日本語では説明が名詞の前に来るので、説明が名詞のあとに来る母語の学習者には語順そのものが壁になります。
普通表現(辞書形・ない形・た形・〜ている など)+名詞(説明の中の主語は「が」。な形容詞は「な」、名詞は「の」で、「だ」は使わない)
口頭の代入練習では、教師が2枚の文のカード(「友達が作りました」「ケーキです」など)を出して学生に1文にさせ、慣れたら説明の部分だけを替えるキュー(きのう買った/駅で見た/国から持ってきた)を語で出して速く回す。場面のやり取りでは、自分の持ち物を1つ出して「これは〜た〜です」と紹介し合い、聞いた人が「いつ買いましたか」「どこで買いましたか」のように質問を1つ足す。
ある動作をするより先に、別の動作をすることを言います。「まえに」の前の動詞は、いつの話でも辞書形です。「日本へ来るまえに、国で日本語を勉強しました」のように、文の終わりが過去でも「来る」のままで、「来た」にはなりません。名詞のときは「食事のまえに」と「の」をつけ、「3年」「1時間」のような期間には「の」をつけずに「3年まえに」と言います。ただし「3年まえに」は「今から数えて3年前」という時を言う形で、「AのまえにB」という動作の順番とは意味が違うので、板書では別の行に分けます。第16課の「〜あとで」はた形につくので、「まえに=辞書形、あとで=た形」と対にして覚えさせます。
V辞書形+まえに/Nの+まえに/期間+まえに(文の終わりが過去でも、まえに の前は辞書形)
口頭の代入練習では、動作の絵カードを2枚並べて(手を洗う/食べる、シャワーを浴びる/寝る、切符を買う/電車に乗る)「〜まえに、〜ます」と言わせ、同じ2枚で「〜たあとで、〜ます」にも言い換えさせる。場面のやり取りでは、「朝、学校へ来るまえに何をしますか」「日本へ来るまえに何をしましたか」をペアで聞き合い、聞いた答えを時間の線に書いて発表させる。
相手のためにすすめたり、注意したりするときの言い方です。「早く寝たほうがいいです」のように動詞のた形につけますが、この「た」に過去の意味はありません。しないほうがいいことは「〜ないほうがいいです」で、ない形につけます。「〜てください」(第11課)が頼んだり指示したりする言い方なのに対して、「ほうがいいです」は、するのとしないのとではこちらがよい、と判断して伝える言い方なので、理由を「〜から」(第7課)で添えると自然になります。目上の人に直接言うと押しつけに聞こえることがあるので、初級では友達・同僚どうしの場面で練習します。
Vた+ほうがいいです/Vない+ほうがいいです(た形でも過去の意味はない)
口頭の代入練習では、困りごとの絵カード(のどが痛い・道がわからない・財布をなくした・あした朝早い)を見せ、すすめる動詞の語を添えて、た形とない形の両方で1文ずつ言わせる。場面のやり取りでは、学生が自分の小さな困りごと(日本の冬は寒いです・漢字がおぼえにくいです など)を言い、ペアの相手が理由を添えて「〜から、〜たほうがいいです」とすすめ、言われた人が「そうですね」と受ける。
「〜とき」で、あることをする時や、ある状態の時を言います。前には普通表現が来て、い形容詞はそのまま、な形容詞は「な」、名詞は「の」をつけます(寒いとき・ひまなとき・子どものとき)。動詞は、「とき」の前の動作がまだ終わっていなければ辞書形、もう終わっていればた形で、文の終わりが過去か今かでは決まりません。「国へ帰るとき、空港でお土産を買います」は帰る前(日本の空港で)、「国へ帰ったとき、家族にお土産をあげます」は帰った後(国で)のことです。
V辞書形/Vない/Vた・Aい・Aな・Nの+とき(動詞は、まだ終わっていなければ辞書形、もう終わっていればた形)
口頭の代入練習では、ドアの手前と向こうの2枚のカードと動作の語(出る・帰る・着く・寝る)を組み合わせて、辞書形かた形かを選ばせる。次に形容詞・名詞のカード(寒い・暑い・ひま・元気・子ども・休み)で「〜とき」の形を作らせる。場面のやり取りでは、「〜とき、どうしますか」(風邪のとき・道がわからないとき・国の家族に会いたいとき)をペアで聞き合い、答えに「〜たほうがいいです」で一言すすめる人を決めて、学習項目3にもつなげる。
この課の中心は文の形で、語彙は連体修飾で人や物を説明するための動作の語(作る・着る・かける・くれる・持ってくる など)と、「ほうがいいです」ですすめる場面の体や生活の語(熱・のど・薬・病院 など)にまとめると練習が回ります。新しい語は単語だけで覚えさせず、「めがねをかけている人」「薬を飲んだほうがいい」のように、この課の形に入れた句のまま練習します。どの語がこの課の新出語かは、本の巻末のワードリストで確かめてから入れてください。
宿題は、自分の持ち物か写真を1つ選んで、「これは〜た〜です」の文と、「日本へ来るまえに」「日本へ来たとき」で始まる文を1つずつ、あわせて3文書くこと。次のコマの最初に、その文で持ち物を紹介し合い、聞いた人が「いつ〜ましたか」と1つ質問してから、第19課に入ります。第19課の「〜たら、…」は、この課の「〜とき」と並べて扱うと形の違いが見えやすくなります。
第18課の連体修飾はどう導入すればいいですか?
実物を1つ見せて、2つの文のカード(「わたしはきのうこの本を買いました」「これは本です」)を作り、「は」を「が」に、「買いました」を「買った」に書き替えて名詞の前へ動かします。カードを動かす作業を見せると、説明が名詞の前に来るという語順が目で分かります。次に人の絵で「〜ている人」を言わせると、第10課の形がそのまま使えることが伝わります。
「〜まえに」の前は、過去の話でもなぜ辞書形ですか?
「まえに」の前の動作は、文の後半の動作をした時点ではまだ起きていないからです。文全体が過去でも、「来る」はその時から見てこれからのことなので辞書形のままです。時間の線に「来る」を後半の動作より右に置き、「あとで」のた形と並べて見せると納得しやすくなります。
「〜とき」の辞書形とた形はどう教え分けますか?
「とき」の前の動作が、後半のことをする時点で終わっていなければ辞書形、終わっていればた形、と1つの基準で教えます。教室のドアを使って、出る前(辞書形)と帰った後(た形)を見せるのが分かりやすい方法です。「国へ帰るとき、空港で買いました」と「国へ帰ったとき、空港で買いました」で、どこの空港かが変わることを確かめると、形の違いが意味の違いだと伝わります。
「〜たほうがいいです」と、辞書形の「〜るほうがいいです」は、どちらを教えますか?
この課では、相手に今すすめるときに多い「た形+ほうがいいです」を中心に教えます。辞書形の形も使われるので、学習者が言っても誤りとして直す必要はありません。「た」が過去ではないことは板書で一度だけ示し、練習では形を言えることを優先します。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と連体修飾、「〜まえに」まで、2コマ目は「〜ほうがいいです」「〜とき」とまとめの活動です。連体修飾に時間がかかるクラスでは、2コマ目の最初に「だれでしょうクイズ」を5分入れてから先へ進みます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。