日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第1課「わたしはワンです」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

日本語の授業の最初の課で、名詞の文「〜は…です」を使って自分の名前・国・仕事を言い、身のまわりの物を「これ/それ/あれ」で指して名前を言えるようになる課です。文の形は「は」と「です」の枠一つだけで、そこに人を入れれば自己紹介、物を入れれば物の説明になるので、同じ板書を課の最初から最後まで使い回します。「これ・それ・あれ」は話し手と聞き手からの距離で選ぶ言葉なので、説明するより、教室の中で実際に物を持ち、相手の机に置き、遠くを指して見せます。最後の「〜の…」で「わたしのノート」のように持ち主を足し、忘れ物を返すような小さなやり取りができるところまで進みます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 自分の名前・国・仕事を「わたしは〜です」で言い、相手にも「〜さんは〜ですか」と聞ける
  • 「〜ですか」と聞かれて「はい」「いいえ」で答え、違うときは正しい名前を言い直せる
  • 身のまわりの物を、自分と相手からの距離に合わせて「これ/それ/あれ」で指し、「〜は何ですか」と聞いて答えられる
  • 「わたしのノート」「田中さんのかさ」のように「の」で持ち主を言い、「だれの〜ですか」に答えられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)30分最初の課なので前の課はない。課の前に置かれたあいさつ・教室のことば・数・身のまわりの物の名前を、絵カードと実物で全員で声に出して確かめる。教師が名札を見せて名乗り、学生にも名札を作らせて、このあとの練習で使う
学習項目1 〜は…です50分教師の名乗りから「わたし は __ です」の枠を取り出し、名札・国旗・仕事のカードで入れ替える。文末に「か」を足して質問、「はい、〜です」で答える形まで
学習項目2 これ/それ/あれは〜です40分教師と学生の位置を棒人間で板書し、実物を手に持つ・相手の机に置く・遠くを指すの三つで言葉を分ける。「何ですか」で聞く側と答える側を入れ替える。1コマ目はここで「これ・それ・あれ」の導入まで進め、「何ですか」の聞き合いは2コマ目の頭に回してよい
学習項目3 これ/それ/あれは〜の…です35分学生の持ち物を集めて「〜さんの〜です」、返しながら「だれの〜ですか」。「英語の辞書」のような内容の「の」は最後に一言だけ
まとめの活動25分名札と持ち物を使ったペアのやり取り(名前・国・仕事を聞く → 相手の持ち物を指して何か・だれの物かを聞く)を、相手を替えて3回。最後に一人ずつ、隣の人を「〜さんです。〜人です。これは〜さんの〜です」とクラスに紹介する

学習項目 1 〜は…です

意味・はたらき学習項目 1

「〜は…です」は、「〜」について「…だ」と言う名詞の文です。「は」は何について話すか(話題)を示す助詞で、読むときは「わ」です。「です」は名詞のあとについて文を丁寧に終える言葉です。この課では「〜」に人(わたし・〜さん)、「…」に名前・国(〜人)・仕事が入り、文末に「か」をつけると、語順を変えずに質問の文になります。話題が分かっていれば「わたしは」は言わなくてよいので、自己紹介では最初の一文だけに「わたしは」をつければ十分です。否定の形(〜じゃありません)は目次の学習項目には挙がっていないので、教科書の練習で扱っているかを見てから足すかどうかを決めます。文法用語で言うと、「〜は…です」は名詞が述語になる名詞述語文で、「は」は主題(題目)を示す助詞です。試験や教師用の文法書では、この「は」と、新しい情報を示す「が」の違い(主題と主語)がよく取り上げられますが、第1課では「は」の前が話題、後ろが言いたいこと、とだけ押さえれば足ります。

接続

人の名詞+は+名詞+です(「は」は「わ」と読む。質問は文末に「か」をつけて、文の終わりを上げる)

形
わたしは〜です〜さんは〜人です〜さんは〜ですか。——はい、〜です(2文目からは「わたしは」を言わずに)会社員です

導入

  • 教師の名乗りから枠を取り出す教師が自分の胸を指して「わたしは(教師の姓)です」、地図の日本を指して「日本人です」、黒板を指して「教師です」と続けて言う。3文言ったところで「わたし は __ です」と板書し、「は」の上に小さく「わ」と書く。次に学生一人の名札を指して「〜さんです」と言い、その学生に自分で「わたしは〜です」と言わせる。
  • 名札・国旗・仕事のカードで入れ替える国旗のカードと仕事の絵カード(学生・会社員・医者・エンジニアなど)を、板書の枠の「__」の位置に差し込む動作を見せながら、全員に「わたしは〜人です」「〜です」と言わせる。次に教師が学生の名札を指して「〜さんは学生ですか」と聞き、肯定の文の最後に「か」を書き足すだけで質問になることを見せて、「はい、学生です」と答えさせる。

板書案

[人] は [名前・国・仕事] です。
わたし は 山本 です。 日本人 です。 教師 です。
〔赤〕「は」の上に小さく「わ」 〔赤〕「です」を四角で囲む
山本さん は 教師 です + か → 質問(文の終わりを↗)
はい、教師 です。

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の最初の授業で、教師に名前と国を聞かれた留学生が答える。わたしは(名前)です。ベトナム人です。学生です。
  • アルバイトの初日、店で一緒に働く日本人の大学生が、新しく入った留学生にあいさつする。田中です。大学生です。どうぞよろしく。
  • 寮の食堂で、隣に座った人が学生か会社員か分からないので確かめる。鈴木さんは会社員ですか。——はい、会社員です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が名札・国旗・仕事のカードを1枚ずつ見せ、学生が「〜さんは〜です」「わたしは〜人です」と言う代入練習から始める。慣れたら教師が「〜さんは〜ですか」と聞いて「はい、〜です」と答える形に替え、最後はペアで名前・国・仕事を聞き合い、聞いた相手のことを「〜さんは〜人です。〜です」とクラスに紹介させる。

  1. 口頭教師が名札・国旗・仕事の絵カードを1枚ずつ見せてキューにする。名札なら持ち主の学生を指して全員で「〜さんです」、国旗「タイ」なら「タイ人です」、絵「会社員」なら「会社員です」。全員で言ったあと、指名して一人ずつ。慣れたら名札と国旗を2枚同時に見せ、「〜さんはタイ人です」と一文で言わせる。最後に教師が「〜さんは学生ですか」と聞き、全員で「はい、学生です」と答える形に替える。
  2. ペア2人に、相手の知らない人物カード(名前・国・仕事が書いてある)を1枚ずつ配る。Aはカードの人になりきって名乗り、Bは「〜さんは〜人ですか」「〜ですか」と聞いて確かめる。Bの予想が合っていれば「はい、〜です」、違えば「いいえ、〜です」と正しい答えを言う。2往復ごとにカードを交換し、役も入れ替える。
  3. 産出「名札自己紹介リレー」。全員で輪になり、一人目が自分の名前・国・仕事を3文で言う。次の人は前の人を「〜さんは〜人です。〜です」と紹介してから、自分の3文を言う。教師が見るのは、「は」を「わ」と読めているか、自分に「さん」を付けていないか、国の名前に「人」が付いているか。言えなかった語は板書に足して、次の人からは使えるようにする。

つまずきと手当て

  • 助詞の「は」を「ハ」と読む、書くときに「わたしわ」と書く。板書の「は」に「わ」の読みを小さく書き、「書くときは は、読むときは わ」と毎回言う
  • 自分の名前に「さん」をつけて「わたしは〜さんです」と言う。文の形は合っているが、「さん」は相手やほかの人につける言葉なので、名札を相手に渡して呼ぶ動作で、自分には使わないことを見せる
  • 国について言うつもりで「わたしはタイです」と国の名前をそのまま入れる。人について言うときは「タイ人」と、国旗カードの下に「人」のカードを足して見せる
  • 質問に「はい」と答えたあと名詞を言わずに「*はい、です」で止まる。答えは「はい、+〜です」と枠ごと板書し、質問の名詞をそのまま答えに入れればよいと見せる
関連する文型

学習項目 2 これ/それ/あれは〜です

意味・はたらき学習項目 2

「これ・それ・あれ」は物を指す言葉で、話し手と聞き手の位置で選びます。話し手の近く(手に持っている物・自分の前にある物)は「これ」、聞き手の近くの物は「それ」、二人から離れた所にある物は「あれ」です。文の形は学習項目1と同じ「〜は…です」で、「〜」の位置に「これ・それ・あれ」が入るだけです。名前が分からない物は「これは何(なん)ですか」と聞き、聞き手の近くの物について聞かれたら、答える側から見ると自分の近くなので「それ」が「これ」に替わります。文法用語では、「これ・それ・あれ」は指示詞(いわゆるこそあど)で、目の前の物を指すこの使い方は現場指示と呼ばれます。話し手の領域と聞き手の領域を分けて「こ」と「そ」を選ぶ型(対立型)と、二人が並んで同じ側から見るときに近くを「こ」、少し離れた所を「そ」、遠くを「あ」とする型(融合型)があり、この課ではまず対立型を、教師と学生が向かい合う形で見せます。

接続

これ/それ/あれ+は+物の名詞+です(質問は「〜は何ですか」。「何ですか」は「なんですか」と読む)

形
これは〜です(自分の近くの物)それは〜です(相手の近くの物)あれは〜です(二人から遠い物)それは何ですか。——これは〜です

導入

  • 物を持って、置いて、遠くを指す教師が自分のノートを手に持って「これはノートです」、学生の机の上のペンを指して「それはペンです」、教室の後ろの時計を指して「あれは時計です」と言う。板書は教師と学生の棒人間を描き、教師の手元に「これ」、学生の手元に「それ」、二人から遠い所に「あれ」と書いて、三つの言葉の範囲を線で囲む。同じ物を教師の手元・学生の机・教室の後ろへと動かして、物は同じでも言葉が替わることを見せる。
  • 「何ですか」で聞く側と答える側を入れ替える学生の持ち物(かばん・かさ・スマートフォン)を指して教師が「それは何ですか」と聞き、学生に手に持たせて「これは〜です」と答えさせる。聞く側の「それ」が答える側では「これ」になることを、板書の棒人間の間に矢印を描いて確かめてから、学生同士で相手の持ち物を指して聞き合わせる。

板書案

これ / それ / あれ は [物] です。
〔棒人間〕教師の手元に「これ」・学生の手元に「それ」・二人から遠くに「あれ」を線で囲む
これ は ノート です。 あれ は 時計 です。
それ は 何(なん) ですか。 〔青〕→ これ は かさ です。
〔青〕聞く人の「それ」と答える人の「これ」を矢印で結ぶ

場面と発話(自作)

  • 休み時間に、留学生が先生の机の上にある見たことのない物を指して聞く。先生、それは何ですか。——これは電子辞書です。
  • 駅前で、日本人の友達が遠くに見える大きな建物を指して、留学生に教える。あれは病院です。
  • コンビニのレジで、店員が客の手にある物を見て確かめる。それはお弁当ですか。——はい、お弁当です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が教室の中の物を指し、学生がその位置に合わせて「これ/それ/あれは〜です」を選んで言う。同じ物の位置を動かしながら三つの言葉で言わせると、距離で選ぶことが体に入る。そのあと、袋に入れた身のまわりの物を一人ずつ取り出させ、ほかの学生が「それは何ですか」と聞き、取り出した学生が「これは〜です」と答えるやり取りを全員に回す。

  1. 口頭教師が実物(本・ペン・時計・かばん・かさ)を手に持つ、学生の机に置く、教室の後ろを指す、の三つの動作をキューにして、全員で「これは〜です」「それは〜です」「あれは〜です」と言わせる。同じ物を教師の手元から学生の机、教室の後ろへと動かし、物の名前は替えずに言葉だけ替える練習を入れる。慣れたら教師は物を動かすだけで何も言わず、学生に言葉を選ばせる。
  2. ペア2人を向かい合わせて座らせ、それぞれの机に絵カードを3枚ずつ伏せて置く。Aが相手の机のカードを1枚めくって指し「それは何ですか」、Bは自分の机の物なので「これは〜です」と答える。教室の壁にも絵カードを数枚貼っておき、ときどき「あれは何ですか」と二人で同じ方向を指して答えさせる。3回で交替。
  3. 産出「教室ツアー」。学生が一人ずつ教室の中を歩きながら、手に取った物・友達の机の物・遠くの物を指して「これは〜です」「それは〜です」「あれは〜です」と説明し、ほかの学生は分からない物について「それは何ですか」と聞く。教師が見るのは、物と自分の距離で言葉を選べているか、相手の物について聞かれたときに「これ」に替えて答えられているか、「何ですか」を「なんですか」と言えているか。

つまずきと手当て

  • 自分が持っている物について聞かれて、聞かれたとおり「それは〜です」と答える。文の形は合っているが、答える側から見ると自分の手元なので「これ」になると、板書の矢印に戻って立場を入れ替えて言わせる
  • 「*何はこれですか」のように、疑問の言葉を「は」の前に置く。答えの「これはノートです」の「ノート」の位置を「何」に替える、と答えと質問を上下に並べて板書する
  • 「何ですか」を「なにですか」と読む。「です」の前の「何」は「なん」と読むので、この課では「なんですか」をひと固まりで言わせる
  • 「このペン」と言いたくて「*これのペン」「*これペン」と言う。「これ」はそれだけで物を指す言葉で、後ろに名詞をつける「この」は次の課で習うと伝え、この課では「これはペンです」の形にとどめる

既習の文型との違い

  • 〜は…です(第1課 学習項目1)文の形は同じ「〜は…です」で、「〜」の位置に人ではなく「これ・それ・あれ」が入るだけです。違うのは、答える人と聞く人で言葉が入れ替わることで、学習項目1の「〜さんは〜ですか——はい、〜です」の答え方のまま「それは何ですか——それはペンです」と返す学習者が出ます。人を指すのに「これ」を使う学習者もいるので、この課では人には名前と「さん」を使い、「これ・それ・あれ」は物に使うと分けておきます。
関連する文型

学習項目 3 これ/それ/あれは〜の…です

意味・はたらき学習項目 3

「の」は名詞と名詞をつなぎ、前の名詞が後ろの名詞をくわしく説明します。この課の中心は「わたしのノート」「田中さんのかさ」のような持ち主を表す「の」で、ほかに「英語の辞書」(内容)、「日本の車」(どこの物か)のような使い方もあります。順番は必ず「説明する名詞 → の → 物の名詞」で、逆にはなりません。持ち主を聞くときは「だれの〜ですか」、内容を聞くときは「何(なん)の〜ですか」と、「の」の前に疑問の言葉を入れます。文法用語では、名詞と名詞をつなぐこの「の」は連体修飾の助詞で、前の名詞が後ろの名詞を修飾します。持ち主・内容・産地のように前と後ろの関係がいろいろあっても形は一つなので、学習者は関係ごとに別の言葉を覚える必要はなく、「前の名詞が説明」とだけ押さえればよいのが教えやすい点です。

接続

名詞+の+名詞(前の名詞が後ろの名詞を説明する。持ち主を聞くときは「だれの」、内容を聞くときは「何の」)

形
これはわたしの〜ですそれは〜さんの〜ですあれはだれの〜ですかこれは英語の辞書です/何の辞書ですか

導入

  • 学生の持ち物を集めて持ち主を言う何人かの学生からかさ・ペン・ノートを借りて教卓に並べる。一つ持ち上げて「これはわたしの…」と言いかけて首をかしげ、持ち主を見ながら「これは〜さんのペンです」と言い直す。板書は「これは [人]の [物] です」の枠にし、「の」の左に人、右に物の列を作って、左から右へ矢印を引く。
  • 「だれの〜ですか」で返していく並べた物を一つずつ持ち上げて「これはだれのかさですか」と全員に聞き、持ち主の学生に「わたしのかさです」と答えさせて返していく。最後に教師の雑誌と辞書を見せて「料理の雑誌です」「英語の辞書です」と言い、「の」の左には人だけでなく中身も入ることを、枠の左の列に書き足して見せる。

板書案

これ は [人・中身] の [物] です。
〔左の列〕わたし・鈴木さん・英語 → の → 〔右の列〕ノート・かさ・辞書
これ は 鈴木さん の かさ です。
だれ の かさ ですか。 —— わたし の かさ です。
〔赤〕「の」を丸で囲む 〔青〕左の列から右の列へ矢印

場面と発話(自作)

  • 教室に忘れ物のかさがあり、先生が授業の前に学生たちに聞く。これはだれのかさですか。——あ、わたしのかさです。
  • 寮の台所で、冷蔵庫の中の牛乳を指して、同じ寮の人に持ち主を確かめる。それは鈴木さんの牛乳ですか。——いいえ、山田さんの牛乳です。
  • 本屋で、友達が手に取った雑誌を見て、何の雑誌かを聞く。それは何の雑誌ですか。——車の雑誌です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

持ち物の絵カード(かばん・かさ・時計・辞書など)と人の名札を組み合わせて「これは〜さんの〜です」と言う代入練習から始め、教師がカードを持つ位置を変えて「これ・それ・あれ」も同時に選ばせる。そのあと、学生全員の持ち物を一つずつ集めて箱に入れ、一人が取り出して「これはだれの〜ですか」と聞き、持ち主が「わたしの〜です」と答えて受け取るまでを全員に回す。

  1. 口頭人の名札と持ち物の絵カードを左右の手に1枚ずつ持ち、「鈴木さん・かさ」とキューを出して全員で「鈴木さんのかさです」。次に持つ位置を変えて「これは/それは/あれは鈴木さんのかさです」と学習項目2と組み合わせる。キューを「わたし・ノート」「料理・雑誌」「英語・辞書」と替え、持ち主と中身の両方を混ぜる。最後は教師が絵カードだけ見せて「だれのかさですか」と聞き、全員に名札の名前で答えさせる。
  2. ペア2人に持ち主の名前が書いてある持ち物カードを5枚ずつ配る。持ち主の名前は相手に見せない。Aがカードの物を見せて「これはだれのかばんですか」、Bは当てずっぽうで「田中さんのかばんですか」と聞き返し、Aは「はい、田中さんのかばんです」か「いいえ、山田さんのかばんです」と答える。当たった数を数え、5枚で交替。
  3. 産出「忘れ物ボックス」。学生全員から持ち物を一つずつ集めて箱に入れ、一人が取り出して「これは何の辞書ですか」「これはだれの〜ですか」と全員に聞く。持ち主は「わたしの〜です」と言って受け取り、ほかの学生は持ち主を知っていれば「それは〜さんの〜です」と教える。教師が見るのは、名詞と名詞の間の「の」が落ちていないか、持ち主と物の順番が逆になっていないか、「だれの」と「何の」を使い分けられているか。

つまずきと手当て

  • 「*わたしノートです」「*鈴木さんかさです」のように「の」を落とす。名詞と名詞を並べるときは間に「の」が要ると、板書の枠の「の」を指して言い直させる
  • 「*これはノートのわたしです」のように順番を逆にする。持ち主を物の後ろに置く言語(ベトナム語・タイ語・インドネシア語など)を母語とする学習者に多い。枠の矢印(持ち主 → の → 物)に戻し、日本語では説明する名詞が先と確かめる
  • 「これはわたしのです」のように後ろの名詞を言わずに答える学生がいる。正しい日本語なので直さず、この課では「わたしの〜です」と物の名前まで言う形で練習する、とだけ伝える

既習の文型との違い

  • これ/それ/あれは〜です(第1課 学習項目2)「これはノートです」は物の名前を言う文で、「これはわたしのノートです」はその物に持ち主や中身を足した文です。「の」を足しても「これ・それ・あれ」の選び方は変わりません。学習者は持ち主を言うつもりで「これはわたしです」と言ってしまうことがあり、これでは「この物はわたしだ」という意味になるので、「の」と物の名前まで言わせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語は、国(〜人)・仕事・身のまわりの物の三つのかたまりです。国と仕事は名札・国旗・絵カードで、物は教室にある実物で入れ、単語だけで覚えさせずに「〜人です」「〜さんのかさ」のように文の形の中で練習します。学習者の国と仕事はクラスによって違うので、教科書に出ていなくても本人に必要な語はその場で足し、板書に残しておきます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 学生(がくせい) 学校で勉強している人です。 日本語学校の〜・大学の〜
    日本語学校の最初の授業で、自分の仕事を言う。
    わたしは学生です。
  • 会社員(かいしゃいん) 会社で働いている人です。 〜です
    寮で隣の部屋の人に、仕事を聞かれる。
    わたしは会社員です。
  • 〜人(〜じん) 国の名前のあとに付けて、その国の人だと言います。 日本〜・タイ〜・ベトナム〜
    教師に国を聞かれた留学生が答える。
    ベトナム人です。
  • 〜さん(〜さん) ほかの人の名前のあとに付けます。自分の名前には付けません。 鈴木〜・山田〜
    アルバイト先で、新しく入った人に確かめる。
    鈴木さんは学生ですか。——はい、学生です。
  • ノート(ノート) 字を書くための、白い紙をとじた物です。 わたしの〜・英語の〜
    授業のあと、友達の机の上のノートを見て確かめる。
    それは日本語のノートですか。——いいえ、英語のノートです。
  • 辞書(じしょ) 言葉の意味を調べる本です。 英語の〜・日本語の〜
    教室で、机の上の厚い本が何か聞かれる。
    これは英語の辞書です。
  • かさ(かさ) 雨のときにさして、ぬれないようにする物です。 わたしの〜・〜さんの〜
    教室の入り口に、かさが一本残っている。
    これはだれのかさですか。
  • かばん(かばん) 物を入れて持って歩く入れ物です。 わたしの〜・〜さんの〜
    教室の机の上に、黒いかばんがある。
    それは田中さんのかばんですか。——いいえ、山田さんのかばんです。
  • 時計(とけい) 今の時間を見る物です。 教室の〜
    教室の後ろの壁を指して教える。
    あれは時計です。
  • 何(なん) 名前が分からない物を聞く言葉です。「です」の前では「なん」と読みます。 〜ですか・〜の雑誌
    先生の机に、見たことがない物がある。
    先生、それは何ですか。
  • だれ(だれ) 知らない人や、持ち主が分からないときに聞く言葉です。 〜の〜ですか
    寮の台所に、名前のない牛乳がある。
    これはだれの牛乳ですか。

宿題と次のコマ

宿題は、自分の名前・国・仕事を「わたしは〜です」の形で3文書くことと、自分の持ち物を3つ選んで「これはわたしの〜です」と書くこと(物の名前が分からなければ辞書で調べてよい)。次のコマの最初に、宿題の文を使って何人かに自己紹介をさせ、持ち物を指して「それは何ですか」「だれの〜ですか」と聞いて復習してから、第2課の場所を指す言葉「ここ/そこ/あそこ」に入ります。

よくある質問

  • 第1課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は名札づくりと「〜は…です」の自己紹介、「これ・それ・あれ」の導入まで。2コマ目は「何ですか」の聞き合い、「〜の…」、まとめの活動です。最初の課は名札や教室のことばの確認に時間がかかるので、導入を長めに取っておきます。

  • 第1課を媒介語なしの直接法で教えられますか?

    できます。この課の文は「〜は…です」の枠一つで、入る語も名前・国・仕事・教室の物なので、名札・国旗・絵カード・実物で意味が伝わります。教師が自分で3文名乗ってから枠を板書すると、説明しなくても形が見えます。「は」の読みや「これ・それ」の距離のように見せにくい点だけ、板書の印と動作で補います。

  • 「これ・それ・あれ」の距離はどう見せればいいですか?

    教師と学生を向かい合わせに立たせ、教師の手元が「これ」、学生の手元が「それ」、二人から遠い所が「あれ」と、板書の棒人間に線で範囲を描いて見せます。同じ物を教師の手元・学生の机・教室の後ろと動かし、物は同じでも言葉が替わることを体で確かめさせます。二人が並んで同じ側から見るときの使い方は、この課では出さないほうが混乱しません。

  • 「は」を「わ」と読むことはいつ、どう教えますか?

    最初の板書で「わたし は」の「は」の上に小さく「わ」と書き、その場で「書くときは は、読むときは わ」と言います。かなを覚えたばかりの学習者は書くときに「わたしわ」と書くので、宿題の文でも毎回確かめます。理由の説明(助詞だけの読み方)は短くし、例外は「は」「へ」の二つだけだと先に言っておくと安心します。

  • 否定の「〜じゃありません」はこの課で教えますか?

    目次の学習項目には挙がっていないので、教科書の練習で扱っているかを見てから決めます。この教案では「いいえ、〜です」と正しい名前を言い直す答え方までにしています。否定の形を足す場合は、学習項目1の「はい/いいえ」の答え方の練習の中で、名詞のあとに付ける形として一つだけ出します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。